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特開2017-137415キラル型希土類錯体ポリマーおよびそれを用いた光学機能材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-137415(P2017-137415A)
(43)【公開日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】キラル型希土類錯体ポリマーおよびそれを用いた光学機能材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 79/04 20060101AFI20170714BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20170714BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20170714BHJP
   C07F 9/53 20060101ALN20170714BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20170714BHJP
【FI】
   C08G79/04
   C07F19/00
   C09D11/00
   C07F9/53
   C07F5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-19164(P2016-19164)
(22)【出願日】2016年2月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(72)【発明者】
【氏名】小礒 尚之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 靖哉
(72)【発明者】
【氏名】三浦 由衣
(72)【発明者】
【氏名】北川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中西 貴之
(72)【発明者】
【氏名】伏見 公志
【テーマコード(参考)】
4H048
4H050
4J030
4J039
【Fターム(参考)】
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA70
4H048VB10
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB76
4H050AB92
4J030CB33
4J030CC12
4J030CD11
4J030CE02
4J030CG01
4J030CG06
4J039AE12
4J039BC56
4J039EA27
4J039EA48
(57)【要約】      (修正有)
【課題】キラルな光物性を示す希土類錯体ポリマーおよびそれを利用した光学機能材料の提供。
【解決手段】式(1)で示される希土類錯体ポリマー。好ましくはパーフルオロアルキル、又はアルキルを有する光学アセチルアセトン基である希土類錯体ポリマー。

(Aは2価の有機基;Lはアセチルアセトン基;AとLの少なくともいずれか一方は光学活性;R〜Rは夫々独立に置換/非置換の1価の芳香族基;nは1〜20の整数;mは1〜4の整数;lは1〜100000の整数;Lnは3価の希土類イオン)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、Aは2価の有機基を表し、Lはアセチルアセトン基を表し、AとLの少なくともいずれか一方は光学活性である。R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族基を表す。nは1〜20の整数を表す。mは1〜4の整数を表す。lは1〜100000の整数を表す。Lnは3価の希土類イオンを表す。)で示される希土類錯体ポリマー。
【請求項2】
Lが一般式(2)
【化2】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基のいずれかを表す。XとXは互いに結合して環構造を形成している。)で表される光学活性なアセチルアセトン配位子である請求項1に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項3】
Lが一般式(2a)
【化3】
(式中、Rは、一般式(2)のRと同義を表す。R、R、R、R、R10およびR11はそれぞれ独立に水素、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、メチレンスルホン酸誘導体基を表す。)で表される光学活性なアセチルアセトン配位子である請求項1又は2に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項4】
Aが一般式(3)
【化4】
(式中、nは一般式(1)のnと同義を表す。R12はハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、kは0からR12が結合している環における置換可能な部位の数までの整数である。kが2以上である場合、複数のR12は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で表されるアリーレン基である請求項1〜3に記載の希土類錯体ポリマー。
【請求項5】
希土類イオンがEu(3価)である請求項1〜4に記載の錯体ポリマー。
【請求項6】
化学式(4)
【化5】
(式中、R、Rのいずれか一方がメチル基であり、他方が水素原子である。)で表される請求項1〜5のいずれかに記載の錯体ポリマー。
【請求項7】
一般式(5)
【化6】
(式中、R、R、R、R、Aおよびnは一般式(1)のR、R、R、R、Aおよびnと同義を表す。)で示されるホスフィンオキサイドと、
一般式(6)
【化7】
(式中、Yは配位分子を表す。jは0〜6の整数を表す。L、Lnおよびmは一般式(1)のL、Lnおよびmと同義を表す。)で示される希土類錯体を反応させる、請求項1〜6のいずれかに記載の希土類錯体ポリマーの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とする光学機能材料。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とする円偏光フィルタ。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とするインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラルな光物性を示すキラル型希土類錯体ポリマーおよびそれを利用した光学機能材料に関する。
【背景技術】
【0002】
円偏光発光性(CPL)や円偏光二色性(CD)はキラルな光物性である。円偏光発光は、電場および磁場の振動が伝播に伴い円を描く発光で、右円偏光発光と左円偏光発光とがある。
【0003】
近年、円偏光発光性を示す光学機能材料は三次元表示ディスプレイやセキュリティインクの原料としても注目を集めている。現在、三次元表示ディスプレイでは直線偏光を発する液晶に円偏光フィルタを組み合わせた技術が用いられるが、円偏光発光する発光素子を光源に用いれば、円偏光フィルタが不要となり、かつフィルタによるロスがなくエネルギー効率の向上が期待できる。またセキュリティインクでは右円偏光および左円偏光をセキュリティ情報として付与でき、高度なセキュリティ性を有するインクの開発が期待できる。このような光学機能材料の一つに希土類錯体がある。例えば、ホスフィンオキサイド配位子とアセチルアセトン誘導体配位子が希土類イオンに配位した希土類錯体が特許文献1〜2に報告されている。これらの希土類錯体はその構造に由来する不斉配位子場により、右円偏光および左円偏光を選択的に発光する、即ち円偏光発光性を有することが分かっている。
【0004】
一方、上記のような光学機能材料はプラスチック材料に混合されることが多いが、一般には高温で溶融させ成形加工(ポリカーボネート製品では300℃程度)する必要があり、発光体は十分な熱耐久性が求められる。このような耐熱性を有する発光体としては、例えば特許文献3に記載の希土類錯体ポリマーが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−327590号公報
【特許文献2】WO2008/111293
【特許文献3】WO2012/150712
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱耐久性の高い希土類錯体ポリマーとして、特許文献3ではアセチルアセトン誘導体配位子を持つEu錯体がホルフィンオキサイド二座配位子で架橋された構造をもつトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート){4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマーなどが報告されているが、これらの希土類錯体ポリマーは円偏光発光性や円偏光二色性などのキラルな光物性を有さない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(1)で示される希土類錯体ポリマーが高い熱安定性を有し、キラルな光物性をもつことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
一般式(1)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Aは2価の有機基を表し、Lはアセチルアセトン基を表し、AとLの少なくともいずれか一方は光学活性である。R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族基を表す。nは1〜20の整数を表す。mは1〜4の整数を表す。lは1〜100000の整数を表す。Lnは3価の希土類イオンを表す。)で示される希土類錯体ポリマーに関する。
また本発明は
一般式(5)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R、R、R、R、Aおよびnは一般式(1)のR、R、R、R、Aおよびnと同義を表す。)で示されるホスフィンオキサイドと、
一般式(6)
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、Yは配位分子を表す。jは0〜6の整数を表す。L、Lnおよびmは一般式(1)のL、Lnおよびmと同義を表す。)で示される希土類錯体を反応させる希土類錯体ポリマーの製造方法に関する。
【0015】
本発明は、一般式(1)で示される希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とする光学機能材料に関する。
【0016】
また本発明は、一般式(1)で示される希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とする円偏光フィルタに関する。
【0017】
さらに本発明は、一般式(1)で示される希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とするインクに関する。
【0018】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0019】
一般式(1)のAは2価の有機基を表し、2価の有機基としては一般式(3)で表されるアリーレン基、フラン−ジイル基、チオフェン−ジイル基、フェニルカルバゾール−ジイル基等のヘテロアリーレン基、メチレン基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよく、直鎖状、又は分岐鎖状のいずれでもよい。これらの中でも特に一般式(3)で表されるアリーレン基が好ましい。
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、nは一般式(1)のnと同義を表す。R12はハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、kは0からR12が結合している環における置換可能な部位の数までの整数である。kが2以上である場合、複数のR12は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(A)の中で好ましく用いられる一般式(3)で表されるアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、テルフェニレン基、クアテルフェニレン基、キンクフェニレン基、セキシフェニレン基、ナフタレン−ジイル基、アントラセン−ジイル基、ビナフチル−ジイル基、フェナントレン−ジイル基、フルオレン−ジイル基等が挙げられ、その中でもフェニレン基、ビフェニレン基が好ましい。
【0022】
一般式(1)のLnは3価の希土類イオンを表し、具体的な3価の希土類イオンとしてはCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等が挙げられ、その中でもEuが好ましい。
【0023】
一般式(1)のLはアセチルアセトン基を表し、一般式(2)の光学活性なアセチルアセトン配位子が好ましく、特に一般式(2a)のアセチルアセトン配位子が好ましい。
【0024】
本発明の希土類錯体ポリマーは、AとLの少なくともいずれか一方が光学活性である。前記要件を満たすことにより、本発明の希土類錯体ポリマーはキラルな光物性を有し、優れた光学機能材料となるものである。
【0025】
まず、一般式(1)、(2)、(2a)、(3)、(4)中のR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12の定義について説明する。
【0026】
一般式(1)のR、R、RおよびRの炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基、アダマンチル基などを例示することができ、置換基を有していてもよい1価の芳香族基は、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メシチル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2,4−ジプロピルフェニル基、3,5−ジプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジブチルフェニル基、3,5−ジブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基など例示することができる。本発明の希土類錯体ポリマー(1)が光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、フェニル基が好ましい。
【0027】
一般式(2)のRの炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することができ、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基は、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、イソヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、イソノナフルオロブチル基、sec−ノナフルオロブチル基、tert−ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロシクロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基などが例示できる。本発明の希土類錯体ポリマー(1)が光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、メチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、又はヘプタフルオロプロピル基が好ましく、トリフルオロメチル基、又はヘプタフルオロプロピル基が特に好ましい。
【0028】
一般式(2a)、および(4)のR、R、R、R、R10およびR11のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など例示することができ、炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することができ、メチレンスルホン酸誘導体基としてはメチレンスルホン酸基、メチレンスルホン酸メチル基、メチレンスルホン酸エチル基、メチレンスルホン酸プロピル基、メチレンスルホン酸イソプロピル基等が挙げられる。安価である点で、水素、又はメチル基が好ましい。
【0029】
一般式(3)のR12のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など例示することができ、炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することができる。安価である点でメチル基が好ましい。
【0030】
一般式(2)のX、Xは、互いに結合して環構造を形成しており、該環構造に置換基や二重結合を有していてもよく、二重結合を有する場合、その二重結合位置に由来するいずれの構造異性体でもよい。具体的な環構造としてはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロプロペン、シクロブタエン、シクロブタジエン、シクロペンタエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサエン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、シクロヘプタエン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロオクタテトラエン、ピロリジン、ピペラジン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、テトラヒドロフラン、フラン、テトラヒドロチオフェン、チオフェン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタジエン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、アダマンタン等が挙げられ、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタンが好ましい。
【0031】
一般式(1)、(3)のnは、1〜20の整数を表し、好ましくは1〜3である。
【0032】
一般式(1)のmは1〜4の整数を表し、好ましくは3である。
【0033】
一般式(1)のlは1〜100000の整数を表し、好ましくは3〜10000である。
【0034】
一般式(3)のkは0〜4の整数を表し、好ましくは0である。
【0035】
本発明の希土類錯体ポリマー(1)の具体例としては、トリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(アセチル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(アセチル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(ピバロイル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(ピバロイル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(アセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(アセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(ピバロイル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(ピバロイル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマーなどを例示することができる。好適な光物性を持つ点で、一般式(4)の錯体ポリマーが好ましく、特にトリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマーが好ましい。
【0036】
次に、本発明の希土類錯体ポリマー(1)の製造方法について説明する。本製造方法はホスフィンオキサイド(5)、希土類錯体(6)を反応させることにより、希土類錯体ポリマー(1)を製造する方法である。
【0037】
【化5】
【0038】
(式中、Aは2価の有機基を表し、Lはアセチルアセトン基を表し、AとLの少なくともいずれか一方は光学活性である。R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族基を表す。Yは配位分子を表す。nは1〜20の整数を表す。mは1〜4の整数を表す。jは0〜6の整数を表す。lは1〜100000の整数を表す。Lnは3価の希土類イオンを表す。)
一般式(5)で示されるホスフィンオキサイドの具体的な例としては、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)、4,4’’−ビス(ジフェニルホスホリル)テルフェニル、4,4’’’−ビス(ジフェニルホスホリル)クアテルフェニル、4,4’’’’−ビス(ジフェニルホスホリル)キンクフェニル、4,4’’’’’−ビス(ジフェニルホスホリル)セキシフェニル、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ナフチル、9,10−ビス(ジフェニルホスホリル)アントラセン、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビナフチル、2,7−ビス(ジフェニルホスホリル)フェナントレン、2,7−ビス(ジフェニルホスホリル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン、2,5−ビス(ジフェニルホスホリル)チオフェン、2,5−ビス(ジフェニルホスホリル)フラン、5,5’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビチオフェン、5,5’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフラン、3,6−ビス(ジフェニルホスホリル)−9−フェニルカルバゾール、1,1−ビス(ジフェニルホスホリル)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスホリル)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスホリル)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ブタン、1,5−ビス(ジフェニルホスホリル)ペンタン、1,6−ビス(ジフェニルホスホリル)ヘキサン、1,4−ビス(ジトリルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジトリルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジメチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジメチルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジエチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジエチルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジイソプロピルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジイソプロピルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジtert−ブチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジtert−ブチルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジシクロペンチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジシクロペンチルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジシクロヘキシルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジシクロヘキシルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジアダマンチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジジアダマンチルホスホリル)ビフェニルなどを例示することができる。本発明の希土類錯体ポリマー(1)が光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、又は4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニルが好ましい。
【0039】
一般式(6)のYは配位分子を表し、反応を阻害しない限り制限はなく、具体的には、水、重水、テトラヒドロフラン、ピリジン、イミダゾール、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどを例示することができ、好ましくは水である。
【0040】
一般式(6)のjは0〜6の整数を表し、好ましくは2である。
【0041】
希土類錯体(6)の具体的な例としては、トリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(+)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(−)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(+)−3−(アセチル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(−)−3−(アセチル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(+)−3−(ピバロイル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(−)−3−(ピバロイルル)カンファー}ユーロピウム水和物などを例示することができる。
【0042】
本製造方法は、希土類錯体ポリマー(1)の収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミルなどのエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル類、tert−ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、水を挙げることが出来る。これら溶媒のうち一種類を単独で用いることができ、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。希土類錯体ポリマー(1)の収率が良い点で、溶媒としてはメタノール、又はエタノールが好ましい。
【0043】
次に本製造方法を実施するときのホスフィンオキサイド(5)および希土類錯体(6)のモル比に関して説明する。希土類錯体(6)1モルに対して0.1〜10.0モル、更に好ましくは0.5〜1.5モルのホスフィンオキサイド(5)を用いることが好ましい。
【0044】
本製造方法では、反応温度および反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、−80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによって希土類錯体ポリマー(1)を収率良く製造することができる。
【0045】
本製造方法によって製造した希土類錯体ポリマー(1)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィーなどを挙げることができる。
【0046】
本製造方法で用いることができるホスフィンオキサイド(5)は、本明細書の参考例1に記載の方法やJournal of Organic Chemistry、第32巻、1572ページ(1967年)などに記載の方法によって入手することができる。
【0047】
本製造方法で用いることができる希土類錯体(6)は、本明細書の参考例2に記載の方法やJournal of the American Chemical Society、第87巻、5254ページ(1965年)などに記載の方法によって入手することができる。
【0048】
本発明の希土類錯体ポリマーは、光物性に優れることから、光学機能材料に好適である。光学機能材料としては、円偏光フィルム、インク等が挙げられる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の希土類錯体ポリマー(1)を材料として用いることにより、キラルな光物性をもつ光学機能材料を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施例1の単結晶X線構造解析の結果である。
図2】実施例1のTGによる熱重量分析の結果である。
図3】実施例1の発光スペクトルの結果である。
図4】実施例1、実施例2の円偏光二色性スペクトルの結果である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各種分析は、次の条件で行った。H−NMR測定は、日本電子社製ECS400(400MHz)を用いて行い、テトラメチルシランを内部標準として化学シフトを決定した。元素分析はジェイ・サイエンス・ラボ社製JM10またはエグゼター・アナリティカル社製CE−440を用いた。ESI−MS測定は日本電子社製JMS−T100LPまたはサーモフィッシャーサイエンティフィック社製Thermo Scientific Exactiveを用いた。FAB−MS測定は日本電子社製JMS−700TZを用いた。単結晶X線構造解析はリガク社製R−AXISを用いた。熱重量測定は、セイコーインスツルメンツEXSTAR6000(TG−DTA6300)を用い、アルゴン雰囲気下、5℃/分の昇温速度で行った。発光スペクトルの測定は、堀場製作所Fluorolog−3スペクトロフルオロメーターを用いた。円偏光二色性スペクトル測定は、日本分光J−1100を用いた。メタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、無水MgSOは関東化学、テトラヒドロフランは脱水品を和光純薬工業よりそれぞれ購入したものを用いた。酢酸ユウロピウム水和物は和光純薬工業より購入し、化学式中の配位水の数を表すxは任意の数である。
【0052】
参考例1
【0053】
【化6】
【0054】
窒素ガス雰囲気下、東京化成工業製の4,4’−ジブロモビフェニル(1.91g, 6.1 mmol)に脱水テトラヒドロフラン30mLを加えた溶液に、−78℃で関東化学製のブチルリチウムのヘキサン溶液9.3mL(1.54mol/L,14.3mmol)を加えた。この混合物を−10℃で3時間撹拌した後、−78℃で東京化成工業製のジフェニルクロロホスフィン3.2g(14.5mmol)を加えた。この混合物を室温で14時間撹拌した後、酢酸エチル70ml、飽和食塩水溶液100mL加え分液操作を行った。続いて、得られた有機層を2回飽和食塩水溶液100mLで洗浄し、得られた有機層を無水MgSOで脱水した後、溶媒を乾固し白色固体を得た。得られた白色固体にジクロロメタン40mLを加えた溶液に、0℃で和光純薬工業製の30%H水溶液を5 mL加えた。この混合物を室温で2時間撹拌した後、飽和食塩水溶液40mLを加え分液操作を行った。続いて、得られた有機層を2回飽和食塩水溶液80mLで洗浄し、得られた有機層を無水MgSOで脱水した後、溶媒を乾固し4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)を白色結晶として得た。(0.780g、1.4mmol、収率23%)H−NMR(400MHz,CDCl,δ/ppm)7.65−7.79 (m,16H,Ar),7.54−7.59(m,4H, Ar),7.42−7.53(m,8H,Ar).
参考例2
【0055】
【化7】
【0056】
和光純薬工業製の酢酸ユウロピウム水和物(430.9mg)を純水170mLに溶かし、室温で1.5時間撹拌した。この溶液にシグマアルドリッチ製の(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー[(+)−facam](802.0mg,3.23mmol)をメタノール20mLに溶かした溶液を添加し、室温で17時間撹拌した。得られた黄色懸濁液をろ別することで、Eu[(+)−facam](HO)錯体を黄色固体として得た。(775.5mg、0.83mmol) ESI−MS(m/z)=917.19{Eu[(+)−facam]Na},Anal.Calcd.for[C3646EuF]:C,46.51%;H,4.99%.Found:C,47.15%;H,4.87%.
参考例3
【0057】
【化8】
【0058】
和光純薬工業製の酢酸ユウロピウム水和物(592.4mg)を純水200mLに溶かし、室温で0.5時間撹拌した。この溶液にシグマアルドリッチ製の(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー[(−)−facam](255.9mg,1.03mmol)のメタノール溶液12mLを添加し、室温で6時間撹拌した。得られた黄色懸濁液をろ別することで、Eu[(−)−facam](HO)錯体を黄色固体として得た。(299.4mg、0.32mmol)
実施例1
【0059】
【化9】
【0060】
参考例2で調製したEu[(+)−facam](HO)錯体(185.9mg,0.20mmol)にメタノール3mLを加えた溶液に、参考例1で調製した4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)(110.9mg,0.20mmol)にメタノール7.7mLを加えた溶液を添加した。この混合物を70℃で24時間撹拌した。得られた白色懸濁液をろ別することで、トリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー[Eu(dpbp)[(+)−facam]を白色固体として得た。(154.2mg、0.106mmol、53%) FAB−MS(m/z)=1201.2[Eu(dpbp)[(+)−facam](dpbp)],Anal.Calcd.for[C7270EuF]:C,59.71%;H,4.87%.Found:C,59.47%;H,4.86%.
単結晶X線構造解析に用いた結晶は以下の方法で合成した。参考例1で調製した4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)(16.5mg,0.03mmol)のジクロロメタン溶液0.5mLに、参考例2で調製したEu[(+)−facam](HO)錯体(18.3mg, 0.02mmol)のメタノール溶液0.5mLを界面が形成されるよう加え、室温にて8日間静置後したところ、[Eu(dpbp)[(+)−facam]の結晶を得た。
【0061】
得られた[Eu(dpbp)[(+)−facam]を単結晶X線構造解析により解析した。得られた結果を図1に示す。1つのEu(III)イオンに対し、2分子のdpbpが2箇所において配位し、また3分子の[(+)−facam]が6箇所において配位しており、8配位型の錯体構造が形成されていることが分かった。
【0062】
[Eu(dpbp)[(+)−facam]について、TGによる熱重量分析を行った。得られた結果を図2に示す。[Eu(dpbp)[(+)−facam]の熱分解温度は、356℃であることが分かった。
【0063】
[Eu(dpbp)[(+)−facam]の380nm励起(配位子励起)による固体状態の発光スペクトルを図3に示す。Eu(III)のf−f電子遷移に基づく593nm、612nm、655nmおよび699nmの発光が観察された。
【0064】
[Eu(dpbp)[(+)−facam]の円偏光二色性スペクトルを図4に示す。測定は和光純薬工業製の分光分析用テトラヒドロフランを用い、2.0×10−5Mの濃度の溶液を測定に用いた。結果、キラルな光物性が観測された。
【0065】
実施例2
【0066】
【化10】
【0067】
参考例3で調製したEu[(−)−facam](HO)錯体(184.6mg,0.20mmol)にメタノール3.2mLを加えた溶液に、参考例1で調製した4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)(110.2mg,0.20mmol)にメタノール8.7mLを加えた溶液を添加した。この混合物を70℃で14時間撹拌した。得られた白色懸濁液をろ別することで、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー[Eu(dpbp)[(−)−facam]を白色固体として得た。(183.0mg、0.13mmol、64%)
[Eu(dpbp)[(−)−facam]の円偏光二色性スペクトルを図4に示す。測定は和光純薬工業製の分光分析用テトラヒドロフランを用い、2.0×10−5Mの濃度の溶液を測定に用いた。結果、キラルな光物性が観測された。
図1
図2
図3
図4