【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(1)で示される希土類錯体ポリマーが高い熱安定性を有し、キラルな光物性をもつことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
一般式(1)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Aは2価の有機基を表し、Lはアセチルアセトン基を表し、AとLの少なくともいずれか一方は光学活性である。R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族基を表す。nは1〜20の整数を表す。mは1〜4の整数を表す。lは1〜100000の整数を表す。Lnは3価の希土類イオンを表す。)で示される希土類錯体ポリマーに関する。
また本発明は
一般式(5)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、Aおよびnは一般式(1)のR
1、R
2、R
3、R
4、Aおよびnと同義を表す。)で示されるホスフィンオキサイドと、
一般式(6)
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、Yは配位分子を表す。jは0〜6の整数を表す。L、Lnおよびmは一般式(1)のL、Lnおよびmと同義を表す。)で示される希土類錯体を反応させる希土類錯体ポリマーの製造方法に関する。
【0015】
本発明は、一般式(1)で示される希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とする光学機能材料に関する。
【0016】
また本発明は、一般式(1)で示される希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とする円偏光フィルタに関する。
【0017】
さらに本発明は、一般式(1)で示される希土類錯体ポリマーを含むことを特徴とするインクに関する。
【0018】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0019】
一般式(1)のAは2価の有機基を表し、2価の有機基としては一般式(3)で表されるアリーレン基、フラン−ジイル基、チオフェン−ジイル基、フェニルカルバゾール−ジイル基等のヘテロアリーレン基、メチレン基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよく、直鎖状、又は分岐鎖状のいずれでもよい。これらの中でも特に一般式(3)で表されるアリーレン基が好ましい。
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、nは一般式(1)のnと同義を表す。R
12はハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、kは0からR
12が結合している環における置換可能な部位の数までの整数である。kが2以上である場合、複数のR
12は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(A)の中で好ましく用いられる一般式(3)で表されるアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、テルフェニレン基、クアテルフェニレン基、キンクフェニレン基、セキシフェニレン基、ナフタレン−ジイル基、アントラセン−ジイル基、ビナフチル−ジイル基、フェナントレン−ジイル基、フルオレン−ジイル基等が挙げられ、その中でもフェニレン基、ビフェニレン基が好ましい。
【0022】
一般式(1)のLnは3価の希土類イオンを表し、具体的な3価の希土類イオンとしてはCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等が挙げられ、その中でもEuが好ましい。
【0023】
一般式(1)のLはアセチルアセトン基を表し、一般式(2)の光学活性なアセチルアセトン配位子が好ましく、特に一般式(2a)のアセチルアセトン配位子が好ましい。
【0024】
本発明の希土類錯体ポリマーは、AとLの少なくともいずれか一方が光学活性である。前記要件を満たすことにより、本発明の希土類錯体ポリマーはキラルな光物性を有し、優れた光学機能材料となるものである。
【0025】
まず、一般式(1)、(2)、(2a)、(3)、(4)中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12の定義について説明する。
【0026】
一般式(1)のR
1、R
2、R
3およびR
4の炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基、アダマンチル基などを例示することができ、置換基を有していてもよい1価の芳香族基は、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メシチル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2,4−ジプロピルフェニル基、3,5−ジプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジブチルフェニル基、3,5−ジブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基など例示することができる。本発明の希土類錯体ポリマー(1)が光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、フェニル基が好ましい。
【0027】
一般式(2)のR
5の炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することができ、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基は、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、イソヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、イソノナフルオロブチル基、sec−ノナフルオロブチル基、tert−ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロシクロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基などが例示できる。本発明の希土類錯体ポリマー(1)が光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、メチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、又はヘプタフルオロプロピル基が好ましく、トリフルオロメチル基、又はヘプタフルオロプロピル基が特に好ましい。
【0028】
一般式(2a)、および(4)のR
6、R
7、R
8、R
9、R
10およびR
11のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など例示することができ、炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することができ、メチレンスルホン酸誘導体基としてはメチレンスルホン酸基、メチレンスルホン酸メチル基、メチレンスルホン酸エチル基、メチレンスルホン酸プロピル基、メチレンスルホン酸イソプロピル基等が挙げられる。安価である点で、水素、又はメチル基が好ましい。
【0029】
一般式(3)のR
12のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など例示することができ、炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基などを例示することができる。安価である点でメチル基が好ましい。
【0030】
一般式(2)のX
1、X
2は、互いに結合して環構造を形成しており、該環構造に置換基や二重結合を有していてもよく、二重結合を有する場合、その二重結合位置に由来するいずれの構造異性体でもよい。具体的な環構造としてはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロプロペン、シクロブタエン、シクロブタジエン、シクロペンタエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサエン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、シクロヘプタエン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロオクタテトラエン、ピロリジン、ピペラジン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、テトラヒドロフラン、フラン、テトラヒドロチオフェン、チオフェン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタジエン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、アダマンタン等が挙げられ、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタンが好ましい。
【0031】
一般式(1)、(3)のnは、1〜20の整数を表し、好ましくは1〜3である。
【0032】
一般式(1)のmは1〜4の整数を表し、好ましくは3である。
【0033】
一般式(1)のlは1〜100000の整数を表し、好ましくは3〜10000である。
【0034】
一般式(3)のkは0〜4の整数を表し、好ましくは0である。
【0035】
本発明の希土類錯体ポリマー(1)の具体例としては、トリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(アセチル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(アセチル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(ピバロイル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(ピバロイル)カンファー}{1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(アセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(アセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(+)−3−(ピバロイル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(ピバロイル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマーなどを例示することができる。好適な光物性を持つ点で、一般式(4)の錯体ポリマーが好ましく、特にトリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマー、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}{4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル}ユーロピウムポリマーが好ましい。
【0036】
次に、本発明の希土類錯体ポリマー(1)の製造方法について説明する。本製造方法はホスフィンオキサイド(5)、希土類錯体(6)を反応させることにより、希土類錯体ポリマー(1)を製造する方法である。
【0037】
【化5】
【0038】
(式中、Aは2価の有機基を表し、Lはアセチルアセトン基を表し、AとLの少なくともいずれか一方は光学活性である。R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族基を表す。Yは配位分子を表す。nは1〜20の整数を表す。mは1〜4の整数を表す。jは0〜6の整数を表す。lは1〜100000の整数を表す。Lnは3価の希土類イオンを表す。)
一般式(5)で示されるホスフィンオキサイドの具体的な例としては、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)、4,4’’−ビス(ジフェニルホスホリル)テルフェニル、4,4’’’−ビス(ジフェニルホスホリル)クアテルフェニル、4,4’’’’−ビス(ジフェニルホスホリル)キンクフェニル、4,4’’’’’−ビス(ジフェニルホスホリル)セキシフェニル、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ナフチル、9,10−ビス(ジフェニルホスホリル)アントラセン、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビナフチル、2,7−ビス(ジフェニルホスホリル)フェナントレン、2,7−ビス(ジフェニルホスホリル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン、2,5−ビス(ジフェニルホスホリル)チオフェン、2,5−ビス(ジフェニルホスホリル)フラン、5,5’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビチオフェン、5,5’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフラン、3,6−ビス(ジフェニルホスホリル)−9−フェニルカルバゾール、1,1−ビス(ジフェニルホスホリル)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスホリル)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスホリル)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ブタン、1,5−ビス(ジフェニルホスホリル)ペンタン、1,6−ビス(ジフェニルホスホリル)ヘキサン、1,4−ビス(ジトリルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジトリルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジメチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジメチルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジエチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジエチルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジイソプロピルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジイソプロピルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジtert−ブチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジtert−ブチルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジシクロペンチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジシクロペンチルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジシクロヘキシルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジシクロヘキシルホスホリル)ビフェニル、1,4−ビス(ジアダマンチルホスホリル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジジアダマンチルホスホリル)ビフェニルなどを例示することができる。本発明の希土類錯体ポリマー(1)が光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、又は4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニルが好ましい。
【0039】
一般式(6)のYは配位分子を表し、反応を阻害しない限り制限はなく、具体的には、水、重水、テトラヒドロフラン、ピリジン、イミダゾール、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどを例示することができ、好ましくは水である。
【0040】
一般式(6)のjは0〜6の整数を表し、好ましくは2である。
【0041】
希土類錯体(6)の具体的な例としては、トリス{(+)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(−)−3−(トリフルオロアセチル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(+)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(−)−3−(ヘプタフルオロブチリル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(+)−3−(アセチル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(−)−3−(アセチル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(+)−3−(ピバロイル)カンファー}ユーロピウム水和物、トリス{(−)−3−(ピバロイルル)カンファー}ユーロピウム水和物などを例示することができる。
【0042】
本製造方法は、希土類錯体ポリマー(1)の収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミルなどのエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル類、tert−ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、水を挙げることが出来る。これら溶媒のうち一種類を単独で用いることができ、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。希土類錯体ポリマー(1)の収率が良い点で、溶媒としてはメタノール、又はエタノールが好ましい。
【0043】
次に本製造方法を実施するときのホスフィンオキサイド(5)および希土類錯体(6)のモル比に関して説明する。希土類錯体(6)1モルに対して0.1〜10.0モル、更に好ましくは0.5〜1.5モルのホスフィンオキサイド(5)を用いることが好ましい。
【0044】
本製造方法では、反応温度および反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、−80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによって希土類錯体ポリマー(1)を収率良く製造することができる。
【0045】
本製造方法によって製造した希土類錯体ポリマー(1)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィーなどを挙げることができる。
【0046】
本製造方法で用いることができるホスフィンオキサイド(5)は、本明細書の参考例1に記載の方法やJournal of Organic Chemistry、第32巻、1572ページ(1967年)などに記載の方法によって入手することができる。
【0047】
本製造方法で用いることができる希土類錯体(6)は、本明細書の参考例2に記載の方法やJournal of the American Chemical Society、第87巻、5254ページ(1965年)などに記載の方法によって入手することができる。
【0048】
本発明の希土類錯体ポリマーは、光物性に優れることから、光学機能材料に好適である。光学機能材料としては、円偏光フィルム、インク等が挙げられる。