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特開2017-212689平衡不平衡変換器、電磁界発生装置及び電磁界発生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-212689(P2017-212689A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】平衡不平衡変換器、電磁界発生装置及び電磁界発生方法
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/10 20060101AFI20171102BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
   H01P5/10 C
   H01Q21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-106539(P2016-106539)
(22)【出願日】2016年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平賀 健
(72)【発明者】
【氏名】日景 隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021CA04
5J021DB06
(57)【要約】
【課題】複数の周波数帯で動作することが可能な平衡不平衡変換器、電磁界発生装置及び電磁界発生方法を提供する。
【解決手段】送受する信号の半波長が線路長に設定された不平衡伝送線路と、前記不平衡伝送線路の芯線部分導体を短絡することで前記不平衡伝送線路の電気長を短くする開閉器と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受する信号の半波長が線路長に設定された不平衡伝送線路と、
前記不平衡伝送線路の芯線部分導体を短絡することで前記不平衡伝送線路の電気長を短くする開閉器と、
を備える平衡不平衡変換器。
【請求項2】
前記電気長が送受信する無線周波数信号の中心周波数における波長の半分になるように前記開閉器をオン状態とする開閉器制御装置をさらに備える請求項1に記載の平衡不平衡変換器。
【請求項3】
前記不平衡伝送線路は、ストリップ線路、又はマイクロストリップ線路で構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の平衡不平衡変換器。
【請求項4】
複数の高周波信号を発生させる信号発生部と、
前記信号発生部が発生させた高周波信号を請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の平衡不平衡変換器を介して取得し、取得した複数の高周波信号を電磁波に変換して空間に放射する複数の電磁界エネルギー放射部と、
前記複数の電磁界エネルギー放射部から放射される電磁界が前記空間において所望の幾何形状を有する電磁界分布を形成するように前記複数の信号発生部を制御する発振制御部と、
を備える電磁界発生装置。
【請求項5】
信号発生部が複数の高周波信号を発生させる信号発生ステップと、
前記信号発生部が発生させた高周波信号を請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の平衡不平衡変換器を介して取得し、取得した複数の高周波信号を電磁波に変換して空間に放射する放射ステップと、
前記放射ステップで放射される電磁界が前記空間において所望の幾何形状を有する電磁界分布を形成するように前記信号発生部を制御する発振制御ステップと、
を含む電磁界発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡不平衡変換器、電磁界発生装置及び電磁界発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信の技術分野において、電磁波に情報を重畳して空間に放射する手段として、変復調器と周波数変換器と電力増幅器とアンテナとを組み合わせた無線通信システムが使用されている。また、近年では、いわゆるソフトウェア無線での応用を目的として、無線周波数の信号波形を直接生成する技術であるDDS(Direct Digital Synthesizer)などが考案及び商品化され、これにより、いっそう動的に無線周波数の波形を制御することが可能となってきた。
【0003】
ただし、高周波信号を電磁波に変換して空間に放射する手段としては、依然としてアンテナが用いられている。通常、アンテナの利用周波数、電磁界放射特性、放射効率等の空間放射特性は、そのアンテナ素子を構成する導体の形状や給電点の設置形態、あるいはアンテナの設置位置等により定まる。そのため、この種のアンテナの空間放射特性は時間的に静的であり、動的に変更することはできない。したがって、従来の無線通信システムでは、情報を電磁界分布の形状に重畳することは困難である。
【0004】
空間放射特性を動的に変更することが可能なアンテナとして、アダプティブアレーアンテナ(Adaptive array antenna)がある。アダプティブアレーアンテナは、電子的制御により放射指向特性を動的に変更することができる。ただし、アダプティブアレーアンテナの各アンテナ素子は、特定の周波数帯において使用することを想定して設計されているため、特定の空間放射特性を持つ。すなわち、アダプティブアレーアンテナの各アンテナ素子の電磁界放射特性は固定的である。そのため、その周波数特性を動的に変化させることや、任意の電磁界放射形状を生成することはできない。アダプティブアレーアンテナのアンテナ素子には、予め設定された複数の空間放射特性を切り替えて使用するものや、複数の周波数帯域に対して同時的に対応可能なものもある。ただし、その空間放射特性を任意に変更することまではできない。したがって、アダプティブアレーアンテナによっても、情報を電磁界分布の形状に重畳することは困難である。その解決手段として、特許文献1に記載の電磁界発生方法が提案された。
【0005】
特許文献1に記載の電磁界発生方法では、空間内に、画像表示用ディスプレイ装置のように任意の形状の電磁界分布を発生させ、任意の空間放射特性を実現することができる。特許文献1に記載の電磁界分布を発生させる電磁界発生装置は、高周波信号を発生させる複数の信号発生部と、複数の信号発生部のそれぞれが発生させた高周波信号を電磁界として空間へ放射する複数の電磁界エネルギー放射部と、複数の電磁界エネルギー放射部からそれぞれ放射された電磁界が前記空間において所望の幾何形状を有する電磁界分布を形成するように複数の信号発生部を制御する発振制御部とを備える。
【0006】
電磁界エネルギー放射部は、使用する無線周波数の波長に対して、例えば1/20程度以下の微小なサイズの導体で構成されている。
無線通信装置内の高周波電気回路は、マイクロストリップ線路や同軸線路等の不平衡伝送線路を用いて配線されている場合がほとんどである。ただし、アンテナの放射器としては、ごく小さい面積に多数の素子を配置し、さらに、直交する偏波の素子を交互に並べる必要がある。そのため、アンテナの放射器として、直線状での微小サイズのダイポールアンテナを多数使用することが主となる。そのため、上記のような電磁界発生装置を実現するためには、平衡伝送線路を伝送する平衡信号と不平衡伝送線路を伝送する不平衡信号とを相互に変換する平衡不平衡変換器が必要不可欠である。このような平衡不平衡変換器は、バランやバラントランスとも呼ばれている。以下において、平衡不平衡変換器をバランと称す。
【0007】
前記の電磁界発生方法では、給電線路との整合が取れていない微小サイズのアンテナ素子を使用する。そのため、そのアンテナ素子としてダイポールアンテナ等の平衡型アンテナ素子を使用する場合には、バランが重要な構成品となる。広帯域なバランはトランス等で構成可能であるが、マイクロ波以上の周波数帯での構成は難しく、Uバランのように平面回路で構成可能なものが必要である(例えば、特許文献2及び非特許文献1参照)。
【0008】
以下に、従来のUバラン100の概略構成について、説明する。
図4は、従来のUバラン100の構成を示す概略構成図の一例を示す図である。図4に示すように、Uバランは、不平衡伝送線路101と平衡伝送線路104とを有している。例えば、不平衡伝送線路101は、同軸ケーブルである。不平衡伝送線路101の一方の端には、入力端子が設けられている。不平衡伝送線路101の他方の端103には、平衡伝送線路104の第1導体105の出力端子が接続される。また、不平衡伝送線路101の他方の端103には、Uバラン100の内導体の端106が接続される。Uバランの端107は、平衡伝送線路104の第2導体108に接続される。また、不平衡伝送線路10の端103は、Uバランの端106と端107の外導体とに接続される。
【0009】
不平衡伝送線路101の一方の端子(入力端子)102に電流が入力された場合、平衡伝送線路104に平衡モードの電流が出力される。不平衡伝送線路101は、完全に線形受動回路であるため、可逆の特性を有している。したがって、平衡伝送線路104に入力した電流は、不平衡モードに変換され不平衡伝送線路の入力端子102に出力される。
【0010】
このように、一般的に、Uバラン100は、不平衡伝送線路101をUの形状に折り曲げて構成される。不平衡伝送線路101の電気長は、使用される周波数において180°でなければならない。そのため、Uバラン100は、使用できる周波数が限定される。トランスを用いたバランは、周波数特性が広いがマイクロ波での実施が困難であり、広帯域化による、いわゆる広く浅くという特性がある。そのため、外導体への漏れの少ない強力な平衡不平衡変換特性を得るためには、Uバランで、周波数を可変にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014−22832号公報
【特許文献2】特開2009−171031号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「RFワールド」、No.17、p.101、CQ出版社、2012年2月1日.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したように、Uバランは使用する周波数における波長の半分の値が線路長であることが条件となる。したがって、平衡不平衡変換性能が十分に得られる周波数帯域幅はトランス等に比べて狭い。特許文献2には、マイクロストリップ線路で製造されたUバランの内側をくりぬき、その中に誘電体ブロックを抜き差しして周波数を調整する周波数可変バランが開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の発明では、信号発生部から発生させる高周波信号の周波数の変化に合わせてバランの周波数特性を制御することは困難である。すなわち、特許文献2に記載のバランでは、複数の周波数帯で動作することができない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の周波数帯で動作することが可能な平衡不平衡変換器、電磁界発生装置及び電磁界発生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、送受する信号の半波長が線路長に設定された不平衡伝送線路と、前記不平衡伝送線路の芯線部分導体を短絡することで前記不平衡伝送線路の電気長を短くする開閉器と、を備える平衡不平衡変換器である。
【0016】
また、本発明の一態様は、上述の平衡不平衡変換器であって、前記電気長が送受信する無線周波数信号の中心周波数における波長の半分になるように前記開閉器をオン状態とする開閉器制御装置をさらに備える。
【0017】
また、本発明の一態様は、前記不平衡伝送線路は、ストリップ線路、又はマイクロストリップ線路で構成されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様は、複数の高周波信号を発生させる信号発生部と、前記信号発生部が発生させた高周波信号を、上述の平衡不平衡変換器を介して取得し、取得した複数の高周波信号を電磁波に変換して空間に放射する複数の電磁界エネルギー放射部と、前記複数の電磁界放射部から放射される電磁界が前記空間において所望の幾何形状を有する電磁界分布を形成するように前記複数の信号発生部を制御する発振制御部と、を備える電磁界発生装置である。
【0019】
また、本発明の一態様は、信号発生部が複数の高周波信号を発生させる信号発生ステップと、前記信号発生部が発生させた高周波信号を請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の平衡不平衡変換器を介して取得し、取得した複数の高周波信号を電磁波に変換して空間に放射する放射ステップと、前記放射ステップで放射される電磁界が前記空間において所望の幾何形状を有する電磁界分布を形成するように前記信号発生部を制御する発振制御ステップと、を含む電磁界発生方法である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、複数の周波数帯で動作することが可能な平衡不平衡変換器、電磁界発生装置及び電磁界発生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態における平衡不平衡変換器1の概略構成の一例を示す図である。
図2】第2の実施形態における平衡不平衡変換器1Aの概略構成の一例を示す図である。
図3】第3の実施形態における、平衡不平衡変換器1又は平衡不平衡変換器1Aを用いた電磁界発生装置7の概略構成の一例を示す図である。
図4】従来のUバラン100の構成を示す概略構成図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における平衡不平衡変換器1の概略構成の一例を示す図である。なお、図1に示すように、平衡不平衡変換器1は、制御装置2を備えて構成されてもよいし、備えずに構成されてもよい。
【0024】
平衡不平衡変換器(Uバラン)1は、第1不平衡伝送線路3、第2不平衡伝送線路4、開閉器5、平衡伝送線路6及び制御装置2を備える。
【0025】
第1不平衡伝送線路3は、不平衡伝送線路であり、例えば、ストリップ線路やマイクロストリップ線路で構成される。
第2不平衡伝送線路4は、Uの形状に折り曲げられた不平衡伝送線路であり、例えば、ストリップ線路やマイクロストリップ線路で構成される。第2不平衡伝送線路4は、平衡不平衡変換器1が送受する信号の半波長が、線路長に設定されている。
例えば、平衡伝送線路6は、コプレーナ線路等で構成される。
【0026】
開閉器5は、Uの形状に折り曲げられた第2不平衡伝送線路4に設けられている。本実施形態では、開閉器5は、第2不平衡伝送線路4のU字の折り返し部分に近いほうから間隔をあけて複数設置される。開閉器5は、制御装置2により、オン状態に制御されることで第2不平衡伝送線路4が短絡されて、その電気長を短くする。そのため、平衡不平衡変換器1は、開閉器5がすべてオフ状態(開放状態)である時よりも高い周波数の無線周波数信号に対応することができる。例えば、平衡不平衡変換器1は、使用する無線周波数に基づいて開閉器5のオン/オフ状態を制御する。このように、開閉器5は、第2不平衡伝送線路4の芯線部分導体を短絡する。
【0027】
ここで、すべての開閉器5(5−1〜5−3)をオフ状態にすると、所定の無線周波数(以下、「第1の無線周波数」という。)において、第2不平衡伝送線路4が最もよく動作するとする。この時、例えば、第1の無線周波数より高い第2の無線周波数に対応させて第2不平衡伝送線路4を使用する場合には、開閉器5−1のみ、開閉器5−1と開閉器5−2、開閉器5−1と開閉器5−2と開閉器5−3、の順に、第2不平衡伝送線路4の折り返し部分に近い開閉器5から順にオン状態に制御することで、対応する周波数を徐々に高くすることができる。
【0028】
本実施形態では、3個の開閉器5を第2不平衡伝送線路4に設置しているが、これに限定されず、開閉器5の数はこれよりも多くても少なくてもよく、その設置する間隔も自由に設定可能である。また、開閉器5は機械的なスイッチでもよいし、バラクタダイオードやトランジスタを用いた電子的なスイッチであってもよい。
【0029】
第2不平衡伝送線路4の回路には、オン状態である開閉器5より図1の下方向に、U字線路の折り返し部分が構成するコの字線路が存在する。そのため、第2不平衡伝送線路4は、オン状態である開閉器5とコの字線路とが並列に接続された状態として機能することが想定される。図1に示す第2不平衡伝送線路4の構成では、開閉器5と第2不平衡伝送線路4との間に有限の長さの線路(接続線路)41を設ける必要がある。このため、接続線路41とオン状態である開閉器5とを合わせたインピーダンスは0にはならず有限の値を持つ。したがって、開閉器5の手前よりU字折り返し部分側を見込んだインピーダンスが0に近くなるように、第2不平衡伝送線路4と接続線路41とオン状態である開閉器5とを合わせたインピーダンスを設定しておくことにより、平衡不平衡変換器1全体として所望の特性を得ることができる。
【0030】
制御装置2は、送受信回路31、使用周波数検出器32及び開閉器制御装置23を備える。制御装置2の各部は、ハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。また、プログラムが実行されることにより、コンピュータが、制御装置2の一部として機能してもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されていてもよく、ネットワークに接続された記憶装置に記憶されていてもよい。
【0031】
送受信回路31は、使用周波数検出器32に接続される。送受信回路31は、通信に使用する無線周波数信号を使用周波数検出器32に出力する。
使用周波数検出器32は、送受信回路31から出力された、通信に使用する無線周波数信号の無線周波数を読み取る。使用周波数検出器32は、読み取った無線周波数に基づいて開閉器5のオン状態又はオフ状態の制御パターンを算出して、その算出した制御パターンを開閉器制御装置23に出力する。
【0032】
開閉器制御装置23は、開閉器5のオン状態又はオフ状態を制御する。例えば、開閉器制御装置23は、使用周波数検出器32から出力された制御パターンに基づいたバイアス電圧を開閉器5に印加することで、開閉器5のオン状態又はオフ状態を制御する。すなわち、開閉器制御装置23は、通信に使用する無線周波数信号の周波数に応じて開閉器5のオン状態又はオフ状態にすることで、第2不平衡伝送線路4の電気長を可変する。具体的には、開閉器制御装置23は、第2不平衡伝送線路4の電気長が、送受信する無線周波数信号の中心周波数における波長の半分になるように、開閉器5のオン状態又はオフ状態を切り替える。これにより、通信に使用する無線周波数信号の周波数が大きく変化しても、その周波数に合わせて開閉器5のオン状態又はオフ状態を切り替えることで、平衡不平衡の変換が可能となる。
【0033】
上述したように、第1の実施形態における平衡不平衡変換器1は、送受する信号の半波長が線路長に設定された第2不平衡伝送線路4と、第2不平衡伝送線路4の芯線部分導体を短絡することで第2不平衡伝送線路4の電気長を短くする開閉器5と、を備える。これにより、通信に使用する無線周波数信号の周波数が大きく変化しても、その周波数に合わせて開閉器5のオン状態又はオフ状態を切り替えることで、平衡不平衡の変換が可能となる。すなわち、平衡不平衡変換器1は、複数の周波数帯で動作することが可能となる。
【0034】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態の平衡不平衡変換器1Aを、図面を用いて説明する。
図2は、第2の実施形態における平衡不平衡変換器1Aの概略構成の一例を示す図である。なお、図2に示すように、平衡不平衡変換器1Aは、制御装置2を備えて構成されてもよいし、備えずに構成されてもよい。
【0035】
平衡不平衡変換器1Aは、第1不平衡伝送線路3、第2不平衡伝送線路4A、開閉器5、平衡伝送線路6及び制御装置2を備える。
第2の実施形態における第2不平衡伝送線路4Aは、第1の実施形態と比較して、U字型線路の両側の直線部分の線路を開閉器5の接続位置で近接させた波型形状の線路に置き換えた構成を備える。この構成によれば、開閉器5とU字型線路である第2不平衡伝送線路4Aとの間の接続線路41を無視することができる。よって、開閉器5がオン状態の時のインピーダンスが0であれば、上述したコの字線路は平衡不平衡変換器1Aの回路特性に影響を及ぼさない。
【0036】
(第3の実施形態)
以下に、上述の実施形態における平衡不平衡変換器1又は平衡不平衡変換器1Aを用いた電磁界発生装置7について、説明する。図3は、平衡不平衡変換器1又は平衡不平衡変換器1Aを用いた電磁界発生装置7の概略構成の一例を示す図である。
【0037】
電磁界発生装置7は、信号発生部60、複数の増幅器61−1,61−2,61−3,…,61−m(mは自然数)、複数の電磁界エネルギー放射部62−1,62−2,62−3,…,62−m及び発振制御部63を備える。本実施形態では、mは7の場合について、説明する。
【0038】
信号発生部60は、発振制御部63の制御の下に、発振制御部63で決定された複数の高周波信号を発生させる。本実施形態では、信号発生部60は、高周波信号を発生させるための発振器を備えるが、シンセサイザーとしての機能も備えている。これにより、電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7のそれぞれは、所望の幾何形状を有する電磁界分布を形成するために必要とされる任意の周波数、位相、振幅、波形を有する高周波信号を発生させることが可能なように構成されている。
【0039】
増幅器61−1〜61−7は、信号発生部60が発生させた高周波信号を増幅し、電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7のそれぞれに出力する。なお、信号発生部60が発生させた高周波信号が十分に大きければ、増幅器を省略することができる。
【0040】
電磁界エネルギー放射部62−1,…,62−mは、各々が放射する電磁界の波長λを一定とした場合、電磁界エネルギー放射部62−1,…,62−mの個数(即ちmの値)を大きくする程、各導体の長さLは小さく設定される。すなわち、電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7のそれぞれは微小サイズの素子(微小素子)となる。このように各導体の長さLを十分に小さくして、電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7のそれぞれを微小素子として構成すれば、後述する電磁界分布の幾何形状を精緻に制御することが可能になる。この電磁界分布の幾何形状を制御する観点からすれば、電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7の各導体の長さLは、半波長λに対して可能な限り小さく設定することが望ましい。例えば、電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7は、使用する無線周波数の波長に対して、1/20程度以下の微小なサイズの導体で構成されている。例えば、電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7は、平衡型放射導体である微小なダイポールアンテナである。図3に示す例では、複数の電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7は、無線周波数(送信周波数)における半波長(λ/2)の区間に一次元状に均等に配列されている。
【0041】
電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7は、信号発生部60がそれぞれ発生させた高周波信号を、上述の平衡不平衡変換器1(2−1〜2−7)(又は平衡不平衡変換器1A)を介して取得し、取得した高周波信号を電磁波に変換して空間へ放射する。
【0042】
発振制御部63は、信号発生部60の入力部が接続されている。発振制御部63は、複数の電磁界エネルギー放射部62−1〜62−7から放射される電磁界が空間において所望の幾何形状を有する電磁界分布を形成するように、信号発生部60を制御する。例えば、発振制御部63は、外部から入力される入力情報信号に応じて、信号発生部60が発生させる高周波信号の周波数、振幅、位相、波形のうちの1または2以上を決定し、信号発生部60に出力する。
【0043】
電流分布30−1,…,30−7は、発振制御部63が、信号発生部60を制御することにより決定される。すなわち、本実施形態では、発振制御部63は、入力情報信号に応じて、信号発生部60が発生させる高周波信号の周波数、振幅、位相、波形のうちの1または2以上を変化させることにより、電磁界エネルギー放射部62−1,…,62−7がそれぞれ生成する電流分布30−1,…,30−7を調整し、これらを重ね合わせて得られる電流分布30を制御する。これにより、発振制御部63は、入力情報信号に応じて、電磁界エネルギー放射部62−1,…,62−7から放射される電磁界の電磁界分布の幾何形状を変調する。
【0044】
ここで、従来の電磁界発生装置について、説明する。従来の電磁界発生装置は、不平衡伝送線路から平衡伝送線路への変換が十分ではなく、且つ、微小アンテナ素子を利用して反射電力が大きい場合には、不平衡伝送線路の接地導体(例えば、同軸ケーブルの外導体)に想定外の電流が流れる。これにより、設計した際の想定では接地された導体によるシールドにより、外部への想定外の電磁界放射を防止できるはずの不平衡伝送線路から、設計想定外の電磁界放射がなされてしまう。そして、この電磁界放射が、上記電磁界発生方法により空間に描こうとしている電磁界形状の実現の妨げとなる。すなわち、グラウンドに想定しない電流分布が発生し、不平衡伝送線路である同軸ケーブルにそのエネルギーが反射すると、電流が同軸ケーブルの外導体に発生する。そのため、不平衡伝送線路である同軸ケーブルが放射素子として機能してしまう。したがって、微小アンテナ素子を放射素子として使用して任意形状の電磁界を空間に生成することが困難である。
【0045】
第3の実施形態における電磁界発生装置7は、平衡不平衡変換器1(又は平衡不平衡変換器1A)を用いることで、不平衡伝送線路の接地導体に想定外の電流が流れることを低減することができる。すなわち、電磁界発生装置7は、不平衡伝送線路から、設計想定外の電磁界が放射することがない。これにより、電磁界発生装置7は、微小アンテナ素子を放射素子として使用して任意形状の電磁界を空間に生成することが可能である。
【0046】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 平衡不平衡変換器
2 制御装置
3 第1不平衡伝送線路
4 第2不平衡伝送線路
5 開閉器
6 平衡伝送線路
7 電磁界発生装置
図1
図2
図3
図4