特開2017-226632(P2017-226632A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-226632イリジウム化合物及び該イリジウム化合物を用いたイリジウム錯体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226632(P2017-226632A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】イリジウム化合物及び該イリジウム化合物を用いたイリジウム錯体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 49/92 20060101AFI20171201BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C07C49/92CSP
   C07F15/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-125398(P2016-125398)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】今野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】谷内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑠美
(72)【発明者】
【氏名】政広 泰
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB82
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB82
4H050WB11
4H050WB13
4H050WB14
4H050WB17
4H050WB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機EL素子等の燐光材料であるシクロメタル化イリジウム錯体を収率良く製造することができる新規な化合物の提供。
【解決手段】一般式(1)で表されるイリジウム化合物。

(Xはハロゲン原子、Yはカウンターカチオン、RとRは各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基。但し、RとRのいずれか一方のみが分岐アルキル基。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されることを特徴とするイリジウム化合物。
【化1】
(一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはカウンターカチオンを表す。RとRは各々独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。但し、RとRのいずれか一方のみが分岐アルキル基である。)
【請求項2】
とRのいずれか一方がメチル基であり、もう一方が炭素数3以上10以下の分岐アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のイリジウム化合物。
【請求項3】
とRのいずれか一方がイソプロピル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイリジウム化合物。
【請求項4】
Xは、塩素原子又は臭素原子であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のイリジウム化合物。
【請求項5】
イリジウム化合物からなる原料と配位子とを反応させてイリジウム錯体を製造する方法において、
前記原料として請求項1〜請求項4のいずれかに記載のイリジウム化合物を用い、前記配位子として下記一般式(2)で表される配位子を反応させることにより、前記イリジウム錯体として下記一般式(3)で表されるイリジウム錯体を製造する方法。
【化2】
【化3】
(一般式(2)及び(3)中、Irはイリジウム原子を表す。Nは窒素原子を表す。R〜Rは各々独立に、水素原子又は置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電解発光(EL)素子、有機電気化学発光(ECL)素子、発光センサー、光増感色素、光触媒、発光プローブ、各種光源等に使用される燐光材料の出発原料となる新規なイリジウム化合物に関する。また、このイリジウム化合物を用いたイリジウム錯体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燐光材料を用いた有機EL素子は、従来の蛍光材料を用いた有機EL素子よりも発光効率が3〜4倍高いことが知られている。そのため、燐光材料は、有機EL素子の高効率化・省エネルギー化に必要不可欠なものとなっている。この燐光材料に用いられている化合物として知られているのがシクロメタル化イリジウム錯体である。シクロメタル化イリジウム錯体は、イリジウム原子に多座配位子が環状に配位してなり、少なくとも一つのイリジウム−炭素結合を有する有機イリジウム錯体の総称である。
【0003】
燐光材料に有用なシクロメタル化イリジウム錯体の具体例としては、例えば、化1に示す、イリジウムに2−フェニルピリジン誘導体が配位したシクロメタル化イリジウム錯体が燐光材料として良く知られている(トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(Ir(ppy)):特許文献1)。また、化2に示す、イリジウムに2−フェニルイミダゾール誘導体が配位したシクロメタル化イリジウム錯体も知られている(特許文献2:以下、この2−フェニルイミダゾール誘導体が配位するシクロメタル化イリジウム錯体を、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体と称するときがある)。これらのシクロメタル化イリジウム錯体は、イリジウム化合物からなる原料と配位子とを反応させることで製造することができる。
【0004】
【化1】
【0005】
【化2】
【0006】
ここで、シクロメタル化イリジウム錯体製造のための原料を構成するイリジウム化合物としては、従来から、イリジウムのアセチルアセトナート化合物が良く知られている。例えば、特許文献1では、ビス(アセチルアセトナート)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウムと2−フェニルピリジンとを反応させることで、化1のシクロメタル化イリジウム錯体が高収率で得られることが開示されている。また、特許文献2には、トリスアセチルアセトナートイリジウム(III)と2−フェニルイミダゾール誘導体配位子を反応させることで、化2のイミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2004/085449号パンフレット
【特許文献2】国際公開2006/046980号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献1のビス(アセチルアセトナート)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウムは、化1のシクロメタル化イリジウム錯体については良好な収率で製造が可能であるが、化2のイミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を製造した場合、その収率が大きく低下する問題がある。
【0009】
また、特許文献2のトリスアセチルアセトナートイリジウム(III)についてみても、このイリジウム化合物は反応性が乏しく、錯体製造に際し非常に高い反応温度(一般的には200℃以上)が必要であるという問題がある。更に、このイリジウム化合物は、化2のイミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体の製造が可能であるとしても、その収率が35%程度と低いことも問題であった。
【0010】
このように、従来から知られているイリジウムのアセチルアセトナート化合物は、製造目的となるシクロメタル化イリジウム錯体の種類によっては、原料化合物として好適に作用するとは限らない。
【0011】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、有機EL素子等の燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を製造するための出発原料となるイリジウム化合物として好適なものを提供する。特に、従来のイリジウム化合物では高収率での製造が困難であった、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を高収率で製造することができる新規なイリジウム化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体の合成、つまり、イミダゾール系の配位子の配位を従来よりも好適に進行させることができるイリジウム化合物の構造について鋭意検討を行った。その結果、出発原料としてイリジウムに非対称のβ−ジケトン配位子が導入された、下記一般式(1)で表される特定構造のイリジウム化合物を開発するに至った。本発明者等によれば、この新規なイリジウム化合物を用いると、従来原料であるアセチルアセトナート系化合物を用いる場合と比較して、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体の収率が大きく向上する。
【0013】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表されることを特徴とするイリジウム化合物である。
【0014】
【化3】
(一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはカウンターカチオンを表す。RとRは各々独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。但し、RとRのいずれか一方のみが分岐アルキル基である。)
【0015】
以下、本発明に係るイリジウム化合物について詳細に説明する。
【0016】
上記の通り、本発明に係るイリジウム化合物は、一般式(1)で表される構造を有する。ここで、一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表す。
【0017】
そして、Xはハロゲン原子を表す。具体的には、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子、又は、臭素原子がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0018】
Yはカウンターカチオンを表す。カウンターカチオンは、本発明に係るイリジウム化合物全体の電荷を0にして、塩を形成する役割を果たす。Yは、この作用を有するカチオンであれば特に限定されない。好ましくは1価のカチオンである。具体的には、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、又は、プロトン等が挙げられ、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、又は、スルホニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオンがより好ましく、ナトリウムイオン、又は、カリウムイオンが特に好ましく、カリウムイオンがより特に好ましい。
【0019】
とRは各々独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、いずれか一方のみが分岐アルキル基である。つまり、本発明では、RとRの炭素数を制限しつつイリジウム原子に配位する配位子に非対称を具備させている。これは、イリジウム化合物の安定性や反応性を適切に調整し、シクロメタル化イリジウム錯体、特に、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を合成する際の条件(反応温度等)をマイルドにしつつ、収率を確保するためである。
【0020】
この非対称性を有するβ−ジケトン配位子において、RとRのいずれか一方を構成する分岐アルキル基は、炭素数3以上10以下の分岐アルキル基が好ましく、炭素数3以上6以下の分岐アルキル基がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0021】
また、RとRの他方を構成するアルキル基としては、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、炭素数1のアルキル基が特に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0022】
本発明に係るイリジウム化合物には、トランス体とシス体があるが、原料化合物として用いるときにはトランス体とシス体のどちらを用いても良い。また、シス体とトランス体の混合物を原料としても良い。
【0023】
更に、本発明に係るイリジウム化合物には、複数の幾何異性体が存在し得る。例えば、下記化4の(Ir−1)とした化合物には、化5に示す幾何異性体が存在する(化5の記載において、カウンターカチオンの表示は省略している)。本発明に係るイリジウム化合物は、これらの幾何異性体のいずれかのみからなる状態であっても良いし、2種以上の幾何異性体の混合状態にあっても良い。シクロメタル化イリジウム錯体を製造する目的において、原料となるイリジウム化合物が幾何異性体の混合状態にあるか否かは特段の影響を与えるものではない。
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
本発明に係るイリジウム化合物の例を化6に示すが、本発明ではこれらのイリジウム化合物に限定されない。
【0027】
【化6】
【0028】
化6に記載のイリジウム化合物の中でも好ましいものは、(Ir−1)〜(Ir−6)であり、より好ましいものは、(Ir−1)〜(Ir−3)であり、特に好ましいものは、(Ir−1)である。
【0029】
以上説明した本発明に係るイリジウム化合物は、その製造自体は困難性を伴うものではなく、適宜のイリジウム化合物に、アルキル基と分岐アルキル基(R、R)を有するβ−ジケトン配位子を反応させることで製造できる。例えば、3塩化イリジウムn水和物とβ−ジケトン配位子を、炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)を含む水溶液中で加熱反応させることで、本発明に係るイリジウム化合物を合成できる。
【0030】
次に、本発明に係るイリジウム化合物を適用するシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法について説明する。本発明に係るイリジウム化合物によって製造可能なシクロメタル化イリジウム錯体に制限を加える必要は無い。例えば、上記化1の、イリジウムに2−フェニルピリジン誘導体が配位したシクロメタル化イリジウム錯体(Ir(ppy))を製造することが可能である。シクロメタル化イリジウム錯体の製造に際しては、本発明に係るイリジウム化合物を原料とし、この原料に配位子となる化合物を反応させることとなる。
【0031】
但し、本発明に係るイリジウム化合物がその効果を特に発揮するのは、イリジウムに2−フェニルイミダゾール誘導体が配位するイミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を製造するときである。本発明に係るイリジウム化合物を原料とすることで、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を高い収率で製造でき、この収率は従来から知られているイリジウム化合物では達成できないからである。
【0032】
即ち、本発明に係るイリジウム錯体の製造方法は、本発明に係るイリジウム化合物と、一般式(2)で表される配位子(2−フェニルイミダゾール誘導体)とを反応させることにより、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体である一般式(3)のイリジウム錯体の製造方法である。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
(一般式(2)及び(3)中、Irはイリジウム原子を表す。Nは窒素原子を表す。R〜Rは各々独立に、水素原子又は置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【0035】
一般式(2)で表される2−フェニルイミダゾール誘導体と、一般式(3)で表されるイミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体において、式中のIrはイリジウム原子を表し、Nは窒素原子を表し、Oは酸素原子を表す。そして、各一般式中の置換基R〜Rは各々独立に、水素原子又は置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。置換基R〜Rは、例えば、以下の置換基が挙げられる。
【0036】
・アルキル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上10以下であり、例えばメチル、エチル、Iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)
・アルケニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)
・アルキニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)
・アリール基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられる。)
・アミノ基(好ましくは炭素数0以上30以下、より好ましくは炭素数0以上20以下、特に好ましくは炭素数0以上10以下であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ等が挙げられる。)
・アルコキシ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上10以下であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシ等が挙げられる。)
・アリールオキシ基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)
・複素環オキシ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシ等が挙げられる。)
・アシル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)
・アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上12以下であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7以上30以下、より好ましくは炭素数7以上20以下、特に好ましくは炭素数7以上12以下であり、例えばフェニルオキシカルボニル等が挙げられる。)
・アシルオキシ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)
・アシルアミノ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上12以下であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7以上30以下、より好ましくは炭素数7以上20以下、特に好ましくは炭素数7以上12以下であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)
・スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0以上30以下、より好ましくは炭素数0以上20以下、特に好ましくは炭素数0以上12以下であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)
・カルバモイル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)
・アルキルチオ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)
・複素環チオ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオ等が挙げられる。)
・スルホニル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)
・スルフィニル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)
・ウレイド基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)
・リン酸アミド基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)
・ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上12以下であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基等が挙げられる。)
・シリル基(好ましくは炭素数3以上40以下、より好ましくは炭素数3以上30以下、特に好ましくは炭素数3以上24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。)
・シリルオキシ基(好ましくは炭素数3以上40以下、より好ましくは炭素数3以上30以下、特に好ましくは炭素数3以上24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ等が挙げられる。)
【0037】
以上の置換基の中で、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、複素環基、又は、シリル基が好ましく、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、又は、複素環基がより好ましく、アルキル基、又は、アリール基が特に好ましい。これらの置換基は、R〜Rで定義される置換基で更に置換されていてもよい。
【0038】
アリール基や複素環基の望ましい形態として、デンドロン(原子又は環を分岐点とする規則的な樹枝状分岐構造を有する基)であることも好ましい。デンドロンの例としては、国際公開第02/067343号、特開2003−231692号公報、国際公開第2003/079736号、国際公開第2006/097717号、国際公開第2016/006523号等の文献に記載の構造が挙げられる。
【0039】
〜Rの望ましい形態について、更に詳しく説明する。
【0040】
、R、R〜Rは、水素原子、アルキル基、複素環基、又は、アリール基が好ましく、水素原子、アルキル基、又は、アリール基がより好ましく、水素原子がより好ましい。
【0041】
は、アルキル基、又は、アリール基が好ましく、アリール基がより好ましく、フェニル基、又は、アルキル基で置換されたフェニル基がより好ましい。
【0042】
本発明に係るイリジウム錯体の製造方法について、以下、詳細に説明する。本発明に係るイリジウム錯体の製造方法においては、溶媒を用いて溶媒中で反応を進行させることが好ましい。この溶媒としては、アルコール類、飽和脂肪族炭化水素、エステル類、エーテル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、ケトン類、アミド類、芳香族炭化水素、含窒素芳香族化合物、イオン性液体、水が好ましい。この中でも、アルコール類、飽和脂肪族炭化水素、エステル類、エーテル類、非プロトン性極性溶媒、又は、アミド類がより好ましく、アルコール類、又は、非プロトン性極性溶媒(DMF、DMSOなど)が特に好ましく、アルコール類(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、更に好ましくは炭素数1以上10以下)がより特に好ましく、アルコール類の中でもジオール(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、更に好ましくは炭素数1以上10以下)が最も好ましい。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。以上の溶媒は、いずれか1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0043】
本発明に係るイリジウム錯体の製造方法においては、上記の溶媒に原料となるイリジウム化合物(一般式(1))を溶解させ、更に、一般式(2)で表される配位子を添加し、加熱して反応する。ここで、原料であるイリジウム化合物の反応系内の濃度は特に制限されるものではないが、0.001モル/L以上10.0モル/L以下が好ましく、0.001モル/L以上1.0モル/L以下がより好ましく、0.01モル/L以上1.0モル/L以下が更に好ましく、0.05モル/L以上0.5モル/L以下が特に好ましい。
【0044】
一方、一般式(2)で表される2−フェニルイミダゾール誘導体からなる配位子の使用量は、原料のイリジウム化合物1モルに対し、2倍モル以上10倍モル未満が好ましく、3倍モル以上10倍モル未満がより好ましく、3倍モル以上8倍モル未満が特に好ましい。2−フェニルイミダゾール誘導体を必要以上に過剰に加えると、その除去に手間がかかることになる。また、2−フェニルイミダゾール誘導体は高価であるので、過剰の使用は製造コストを上昇させることとなる。よって、配位子の添加量は上記範囲内であることが好ましい。
【0045】
本発明に係るイリジウム錯体の製造方法における反応温度は、100℃以上250℃未満がより好ましく、150℃以上250℃未満が特に好ましく、150℃以上200℃未満がより特に好ましい。また、反応時間は、0.5時間以上72時間以下が好ましく、1時間以上48時間以下がより好ましく、1時間以上24時間以下が特に好ましい。反応系の加熱手段は特に限定されない。具体的には、オイルバス、サンドバス、マントルヒーター、ブロックヒーター、熱循環式ジャケットによる外部加熱、更にはマイクロ波照射による加熱等も利用できる。
【0046】
尚、本発明に係るイリジウム錯体の製造方法においては、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。また、本発明に係るイリジウム錯体の製造方法における圧力は、特に限定されないが、常圧(大気圧下)で行うことが好ましい。
【0047】
以上説明した方法により得られた一般式(3)で表されるイリジウム錯体は、一般的な後処理方法で処理した後、必要があれば精製し、又は、精製せずに高純度品として用いることができる。後処理の方法としては、例えば、抽出、冷却、水や有機溶媒を添加することによる晶析、反応混合物からの溶媒を留去する操作等を、単独又は組み合わせて行うことができる。精製の方法としては、再結晶、蒸留、昇華又はカラムクロマトグラフィー等を、単独又は組み合わせて行うことができる。
【0048】
そして、本発明で得られた一般式(3)で表されるイリジウム錯体は、有機EL素子等の燐光材料として好適に用いることができる。尚、本発明で製造可能な一般式(3)で表されるイリジウム錯体について、その例を化9に示す。
【0049】
【化9】
【発明の効果】
【0050】
本発明に係るイリジウム化合物は、有機EL素子等の燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を製造するための出発原料として好適である。本発明は、特に、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を製造する場合においても、収率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は一例でありこれに限定されない。
【0052】
本実施形態では、上記化6のイリジウム化合物(Ir−1)を原料として、下記の2−フェニルイミダゾール誘導体(L−1)を反応させて、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体(T−1)を製造した。
【0053】
【化10】
【0054】
[イリジウム化合物(Ir−1)の製造]
三塩化イリジウム三水和物40.6g(115mmol)と純水530mlを三口フラスコに入れて溶解し、続いて、5−メチル−2、4−ヘキサンジオン45.7g(357mmol)を添加して95℃1時間反応させ、そこへ、炭酸カリウム47.5g(475mmol)を少量ずつ加え、pH8程度に調整した。更に、5時間加熱し反応させた。反応後一晩置いて上澄みの水層から、ヘキサンを用いて未反応の5−メチル−2、4−ヘキサンジオンを抽出除去し、続いて酢酸エチルでイリジウム化合物(Ir−1)を抽出し、その抽出液を濃縮乾固することでオレンジ色のイリジウム化合物(Ir−1)の粗結晶12gを得た。更に、粗結晶をカラム精製してオレンジ色のイリジウム化合物(Ir−1)結晶10.2gを得た。単離収率は16%であった。
【0055】
[イリジウム錯体の製造]
上記で製造したイリジウム化合物(Ir−1)167.0mg(0.3mmol)、2−フェニルイミダゾール誘導体(L−1)396.0mg(1.8mmol)、及び、溶媒であるエチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた固体をメタノールで洗浄し、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体(T−1)を得た。単離収率73%であった。なお、生成物はH−NMRで分析し確認した。
【0056】
比較例:この比較例は、上記特許文献1のビス(アセチルアセトナート)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウムを原料とし、2−フェニルイミダゾール誘導体(L−1)を反応させて、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体(T−1)を製造した。
【0057】
【化11】
【0058】
ビス(アセチルアセトナート)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウム145.3mg(0.3mmol)、2−フェニルイミダゾール誘導体(L−1)396.0mg(1.8mmol)、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた固体をメタノールで洗浄し、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体(T−1)を得た。単離収率は52%であった。
【0059】
以上の結果から、本実施形態のイリジウム化合物(Ir−1)を用いることで、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム(T−1)を高い収率で製造できることが確認された。本実施形態と比較例とを対比すると、従来化合物である比較例のビス(アセチルアセトナート)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウムを用いた場合と比較して、本実施形態のイリジウム化合物(Ir−1)の収率は、40%以上向上したこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、シクロメタル化イリジウム錯体を効率的に製造することができる。特に、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を製造する場合においても、収率良く製造することができる。本発明は、有機電解発光(EL)素子、有機電気化学発光(ECL)素子、発光センサー、光増感色素、光触媒、発光プローブ、各種光源等に使用される燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を製造するための原料として好適である。