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特開2017-226633ハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226633(P2017-226633A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】ハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
   C07F15/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-125399(P2016-125399)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】今野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】谷内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑠美
(72)【発明者】
【氏名】政広 泰
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA02
4H050AC50
4H050BC10
4H050BC31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法を提供。
【解決手段】式(1)で表されるイリジウム化合物と芳香族2座配位子とを溶媒中で反応する製造方法。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるイリジウム化合物と、下記の一般式(2)で表される芳香族2座配位子とを溶媒中で反応させ、下記の一般式(3)で表されるハロゲン架橋イリジウムダイマーを製造する方法において、
前記溶媒として沸点が50℃以上350℃未満の溶媒を用い、
前記芳香族2座配位子を前記イリジウム化合物1モルに対し、0.5倍モル以上10倍モル未満の範囲で添加し、
反応温度を50℃以上300℃未満として反応させることを特徴とするハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはカウンターカチオンを表す。R〜Rは各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であり、前記記載のアルキル基、又は、アリール基の水素原子が、一部又は全部がハロゲン原子で置換されても良い。また隣り合ったR〜Rは互いに結合し、環構造を形成しても良い。)
【化2】
(一般式(2)中、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Hは水素原子を表し、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、CyAとCyBとが結合し環構造を形成しても良い。)
【化3】
(一般式(3)中、Irはイリジウム原子を表し、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該窒素原子を介してイリジウムと結合しており、CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該炭素原子を介してイリジウムと結合している。CyAとCyBとが結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【請求項2】
CyAがピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環のいずれかであり、
CyBがベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、カルバゾール環、フルオレン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環のいずれかである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
CyAとCyBとが結合し、ベンゾキノキサリン環、ベンゾキノリン環、ジベンゾキノキサリン環、ジベンゾキノリン環、フェナントリジン環のいずれかを形成している特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
芳香族2座配位子が、下記の一般式(4)〜(14)のいずれかで表される化合物である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造方法。
【化4】
(式(4)〜(14)中、R〜R94は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【請求項5】
イリジウム化合物と芳香族2座配位子との反応を常圧下で行う請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電解発光(EL)素子、有機電気化学発光(ECL)素子、発光センサー、光増感色素、光触媒、発光プローブ、各種光源等に使用される燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を製造する際の前駆体となるハロゲン架橋イリジウムダイマーを良好な純度で、かつ、効率良く製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電解発光(EL)素子等の燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体は、イリジウム原子に多座配位子が環状に配位してなり、少なくとも一つのイリジウム−炭素結合を有する有機イリジウム錯体の総称である。燐光材料を用いた有機EL素子は、従来の蛍光材料を用いた有機EL素子よりも発光効率が3〜4倍高いため、シクロメタル化イリジウム錯体は有機EL素子の高効率化・省エネルギー化に必要不可欠な材料である。燐光材料として適用されるシクロメタル化イリジウム錯体には、例えば、2−フェニルキノリン誘導体等の芳香族2座配位子が配位したシクロメタル化イリジウム錯体(化1)等の多くのイリジウム錯体が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【化1】
【0004】
ここで、シクロメタル化イリジウム錯体の製造方法として、イリジウム化合物原料と配位子となる化合物とを反応させてハロゲン架橋イリジウムダイマーを製造し、この前駆体たるハロゲン架橋イリジウムダイマーから所望のシクロメタル化イリジウム錯体を得る2段階の合成ルートが知られている。即ち、特許文献1に記載されている上記化1のシクロメタル化イリジウム錯体について、以下の合成ルートが知られている。
【0005】
【化2】
【0006】
上記のような2段階の合成ルートを有するシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法の他の例として、例えば、特許文献2には、3塩化イリジウムと2−フェニルキノリン系配位子である2−(3,5−ジメチルフェニル)キノリンを反応させることで、ハロゲン架橋イリジウムダイマーを得たとの記載がある。
【0007】
【化3】
【0008】
ここで、上記のような2段階の合成ルートを経てシクロメタル化イリジウム錯体を製造する場合においては、前駆体であるハロゲン架橋イリジウムダイマーを効率的に製造することが好ましいといえる。高純度のハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く得ることができれば、有機EL素子等の燐光材料として好適に用いられるシクロメタル化イリジウム錯体の実用化に大きく貢献できる。しかし、本発明者等の検討によれば、上記の従来技術では、ハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く、かつ特に純度良く合成することは難しい。
【0009】
ハロゲン架橋イリジウムダイマーの収率の問題について、その要因の一つとして挙げられるのが、出発原料となるイリジウム化合物の選定にあると考えられる。即ち、ハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造に関する先行技術の多くは、イリジウム化合物として3塩化イリジウムを用いる。本発明者等によれば、イリジウム原料として3塩化イリジウムを用いると、ハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く、かつ特に純度良く合成することは難しい。
【0010】
例えば、上記特許文献2記載の方法で得られたハロゲン架橋イリジウムダイマーは、黒灰色の固体であるとの記載がある。本来、2−(3,5−ジメチルフェニル)キノリンを有するハロゲン架橋イリジウムダイマーは赤色であり、この文献で製造されたハロゲン架橋イリジウムダイマーは不純物を多く含むことは明らかである。この不純物としては、未反応の2−(3,5−ジメチルフェニル)キノリンや、黒色分解物等が予測されるが、精製によりそれらを除去することは困難である。
【0011】
このようなハロゲン架橋イリジウムダイマー製造のための原料に関して、3塩化イリジウム以外のイリジウム化合物が全く無いわけではない。例えば、特許文献3には、イリジウム化合物として、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウムを適用し、ハロゲン架橋イリジウムダイマーを合成する工程が記載されている。この文献記載の方法では、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウムと、化4に示す特定構造の配位子をガラスアンプルに入れ、加圧下で反応させてハロゲン架橋イリジウムダイマーを合成している。
【0012】
【化4】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−345183号公報
【特許文献2】国際公開2008/109824号パンフレット
【特許文献3】国際公開2012/007086号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、本発明者等によれば、この特許文献3に記載された方法によっても、ハロゲン架橋イリジウムダイマーの収率は低く、好適な純度の化合物が得難いことが確認されている。また、この文献記載の方法は、ガラスアンプル中で加圧して反応を進行させる実験室的な方法であり、効率的・実用的な方法とは言い難く、また、危険性も高い。
【0015】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、シクロメタル化イリジウム錯体の前駆体であるハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く、かつ特に純度良く製造するための方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、原料となるイリジウム化合物としてβ−ジケトナートを有する所定のイリジウム化合物を用い、このイリジウム化合物と芳香族2座配位子とを特定の反応条件の下で反応させると、ハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く、特に純度良く製造できることを見出し、本発明に想到した。
【0017】
即ち、本発明は、一般式(1)で表されるイリジウム化合物と一般式(2)で表される芳香族2座配位子とを溶媒中で反応させ、一般式(3)で表されるハロゲン架橋イリジウムダイマーを製造する方法において、前記溶媒として沸点が50℃以上350℃未満の溶媒を用い、前記芳香族2座配位子を前記イリジウム化合物1モルに対し、0.5倍モル以上10倍モル未満の範囲で添加し、反応温度を50℃以上300℃未満として反応させることを特徴とするハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法である。
【0018】
【化5】
(一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはカウンターカチオンを表す。R〜Rは各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であり、前記記載のアルキル基、又は、アリール基の水素原子が、一部又は全部がハロゲン原子で置換されても良い。また隣り合ったR〜Rは互いに結合し、環構造を形成しても良い。)
【0019】
【化6】
(一般式(2)中、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Hは水素原子を表し、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、CyAとCyBとが結合し環構造を形成しても良い。)
【0020】
【化7】
(一般式(3)中、Irはイリジウム原子を表し、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該窒素原子を介してイリジウムと結合しており、CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該炭素原子を介してイリジウムと結合している。CyAとCyBとが結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【0021】
以上の通り、本発明に係るハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法は、一般式(1)のβ−ジケトナートを有するイリジウム化合物を用いて、一般式(2)の芳香族2座配位子を反応させている。そして、所定の溶媒を用いつつ、芳香族2座配位子とイリジウム化合物との存在比率と反応温度を一定範囲に制限することでハロゲン架橋イリジウムダイマーを合成する。本発明による効果、即ち、ハロゲン架橋イリジウムダイマーを高純度で収率良く製造できことの理由については、未だ明らかではないが、現時点で発明者は以下のように考えている。
【0022】
ハロゲン架橋イリジウムダイマーの生成反応において、イリジウム化合物と芳香族2座配位子とが反応すると、イリジウム−炭素結合が形成されることに伴いプロトンが放出される。このプロトンは、反応溶液のpH等の反応系の環境変動の要因となり、プロトンの蓄積により反応速度の低下が生じ得る。本発明では、一般式(1)で表されるイリジウム化合物から脱離したβ−ジケトナートが、前記した反応溶液中のプロトンをトラップすることにより、β−ジケトンとなり、溶液のpHを一定に保つ働きがあるものと考えられる。これにより、反応速度に影響を生じさせることなくイリジウムダイマーの生成反応を進行させることができる。上記した従来技術である、3塩化イリジウム等のハロゲン化イリジウムにおいては、このようなプロトンのトラップ作用がないので、反応系に蓄積したプロトンの影響で反応速度が遅くなっていると予測される。また、主反応であるイリジウムダイマーの生成反応以外の、望ましくない分解反応等が進行すると考えられる。このようなプロトンによる影響を排したことにより、本発明は収率良くかつ不純物発生を抑制してハロゲン架橋イリジウムダイマーを生成できると推察される。
【0023】
また、本願発明においては、ハロゲン架橋イリジウムダイマーの合成反応を所定の溶媒中で進行させる。引用文献2記載の方法では、無溶媒で反応を行っている。無溶媒での反応は、不均一反応となる傾向があり、望ましくない副反応が進行し易くなるので、生成物の純度が低下することが多い。また、反応効率も低い。本発明では、溶媒を使用しつつ、反応条件を設定することでハロゲン架橋イリジウムダイマーを製造する。
【0024】
以下、本発明に係るハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法について詳細に説明する。以下の説明では、本発明を特徴付けている、(I)イリジウム原料、(II)芳香族2座配位子、(III)反応条件について、それらの内容を説明する。
【0025】
(I)イリジウム原料について
上記の通り、本発明で適用するイリジウム原料は、一般式(1)で表されるイリジウム化合物である。この一般式(1)中のIrはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表す。
【0026】
Xはハロゲン原子を表す。具体的には、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子、又は、臭素原子がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0027】
Yはカウンターカチオンを表す。カウンターカチオンは、一般式(1)で表されるイリジウム化合物全体の電荷を0にして、塩を形成する役割を果たすものであれば何でも良い。その中でも1価のカチオンが好ましい。具体的には、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、又は、プロトン等が挙げられ、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、又は、スルホニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオンがより好ましく、ナトリウムイオン、又は、カリウムイオンが特に好ましい。
【0028】
尚、以上のIr、O、H、X、Yの説明は、一般式(2)〜(14)でも共通する。
【0029】
そして、一般式(1)中のR〜Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であり、前記記載のアルキル基、又は、アリール基の水素原子が、一部又は全部がハロゲン原子で置換されても良い。また隣り合ったR〜Rは互いに結合し、環構造を形成しても良い。R〜Rがアルキル基、アリール基である場合、それらの望ましい範囲は、後述するCyA及びCyBに結合可能なアルキル基とアリール基の範囲と同様である。
【0030】
、R、R及びRは、アルキル基、又は、アリール基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。ハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基も好ましい。具体的には、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、又は、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0031】
及びRは、水素原子、又は、アルキル基であることが好ましく、水素原子、又は、メチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0032】
また、R、R、R、及び、Rについては、R=R、R=Rのように、対称のβ−ジケトン配位子でも良いし、R≠R、R≠Rのように、非対称のβ−ジケトン配位子でも良い。この中でも、RとRとが異なる置換基であり、RとRとが異なる置換基であることがより好ましい。つまり、本発明の製造方法で用いられるイリジウム化合物は非対称なβ−ジケトン配位子を具備していることがより好ましい。これは、イリジウム化合物の安定性や反応性を適切に調整し、ハロゲン架橋イリジウムダイマーの合成を好適に進行させるためである。
【0033】
本発明の製造方法に用いられる一般式(1)で表されるイリジウム化合物にはトランス体とシス体があるが、どちらかを選択的に用いても良く、シス体とトランス体の混合物を用いていても良い。一般式(1)で表されるイリジウム化合物のシス体は一般式(15)であり、トランス体は一般式(16)である。
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
(一般式(15)及び(16)中の記号は、一般式(1)中の記号と同義であり、望ましい範囲も同じである。)
【0036】
また、上記で言及した、イリジウム化合物の配位子が非対称構造である場合(すなわち、R≠R、R≠Rとなる場合)、複数の幾何異性体が存在する。例えば、後述する化11の(Ir−17)の場合は、化10に記載の幾何異性体が存在する(ここで、X=Clであり、カウンターカチオンであるYは省略している)。本発明の製造方法で用いられるイリジウム化合物は、これらの幾何異性体のいずれかのみからなる状態であっても良いし、2種以上の幾何異性体の混合状態にあっても良い。本発明のハロゲン架橋イリジウムダイマーを製造する目的において、原料となるイリジウム化合物が幾何異性体の混合状態にあるか否かは特段の影響を与えるものではない。
【0037】
【化10】
【0038】
一般式(1)で表されるイリジウム化合物の例を化11に示すが、本発明ではこれらのイリジウム化合物に限定されない。
【0039】
【化11】
【0040】
(II)芳香族2座配位子について
本発明に係るハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法は、上記で説明したイリジウム化合物(一般式(1))からなる原料と、一般式(2)の芳香族2座配位子とを反応させる。
【0041】
本発明の芳香族2座配位子を示す一般式(2)において、式中のNは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Hは水素原子を表す。CyAは、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該窒素原子を介してイリジウムと結合している。CyAは、5員環又は6員環の含窒素芳香族複素環であることが好ましい。
【0042】
窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、又は、チアジアゾール環が挙げられる。この中でも好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、又は、トリアゾール環、であり、より好ましくは、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、又は、イミダゾール環である。
【0043】
CyAは、置換基がついても良く、隣り合った置換基が結合し環構造を形成しても良く、更に置換されても良い。具体的には、後述の置換基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、シリルオキシ基)が挙げられる。これらの置換基の望ましい範囲は後述の通りであり、上記の置換基で更に置換されても良い。
【0044】
また、一般式(2)の式中のCyBは、炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該炭素原子を介してイリジウムと結合している。CyBは、5員環又は6員環の芳香族炭素環又は芳香族複素環であることが好ましく、5員環又は6員環の芳香族炭素環又は含窒素芳香族複素環であることがより好ましく、5員環又は6員環の芳香族炭素環であることが特に好ましい。
【0045】
炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、カルバゾール環、フルオレン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、又は、チアジアゾール環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、又は、ピリミジン環が好ましく、ベンゼン環、ピリジン環、又は、ピリミジン環がより好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0046】
CyBは、置換基がついても良く、隣り合った置換基が結合し環構造を形成しても良く、更に置換されても良い。具体的には、後述の置換基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、シリルオキシ基)が挙げられる。これらの置換基の望ましい範囲は後述の通りであり、上記の置換基で更に置換されても良い。
【0047】
CyAとCyBとが結合し新たに環構造を形成しても良い。この場合、CyAとCyBとが結合し、新たな飽和環もしくは不飽和環を形成することが好ましく、不飽和環を形成することがより好ましい。より具体的には、CyAとCyBとが結合することでベンゾキノキサリン環、ベンゾキノリン環、ジベンゾキノキサリン環、ジベンゾキノリン環、フェナントリジン環を形成することが好ましく、ベンゾキノリン環、ジベンゾキノキサリン環、フェナントリジン環を形成することがより好ましい。ベンゾキノリン環としてはベンゾ[h]キノリン環が好ましい。ジベンゾキノキサリン環としては、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環が好ましい。フェナントリジン環としては、イミダゾ[1,2−f]フェナントリジン環が好ましい。
【0048】
CyAとCyBとが結合することで生成した環には、置換基がついても良く、隣り合った置換基が結合し更に環構造を形成しても良く、更に置換されても良い。具体的には、後述の置換基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、シリルオキシ基)が挙げられる。これらの置換基の望ましい範囲は後述の通りであり、上記の置換基で更に置換されても良い。
【0049】
CyA、CyB、及び、CyAとCyBとが結合することで生成した環に結合する置換基としては、例えば、以下のものがある。
【0050】
・アルキル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上10以下であり、例えばメチル、エチル、Iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)
・アルケニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)
・アルキニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)
・アリール基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられる。)
・アミノ基(好ましくは炭素数0以上30以下、より好ましくは炭素数0以上20以下、特に好ましくは炭素数0以上10以下であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ等が挙げられる。)
・アルコキシ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上10以下であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシ等が挙げられる。)
・アリールオキシ基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)
・複素環オキシ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシ等が挙げられる。)
・アシル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)
・アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上12以下であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7以上30以下、より好ましくは炭素数7以上20以下、特に好ましくは炭素数7以上12以下であり、例えばフェニルオキシカルボニル等が挙げられる。)
・アシルオキシ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)
・アシルアミノ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上12以下であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7以上30以下、より好ましくは炭素数7以上20以下、特に好ましくは炭素数7以上12以下であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)
・スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0以上30以下、より好ましくは炭素数0以上20以下、特に好ましくは炭素数0以上12以下であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)
・カルバモイル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)
・アルキルチオ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)
・複素環チオ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオ等が挙げられる。)
・スルホニル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)
・スルフィニル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)
・ウレイド基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)
・リン酸アミド基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)
・ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上12以下であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基等が挙げられる。)
・シリル基(好ましくは炭素数3以上40以下、より好ましくは炭素数3以上30以下、特に好ましくは炭素数3以上24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。)
・シリルオキシ基(好ましくは炭素数3以上40以下、より好ましくは炭素数3以上30以下、特に好ましくは炭素数3以上24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ等が挙げられる。)
【0051】
以上の置換基の中で、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、複素環基、又は、シリル基が好ましく、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、又は、複素環基がより好ましく、アルキル基、又は、アリール基が特に好ましい。これらの置換基として望ましい範囲は前記の通りであり、R〜R94で定義される置換基で更に置換されていてもよい。また隣り合った置換基は互いに結合し環構造を形成して良い。
【0052】
アリール基や複素環基の望ましい形態として、デンドロン(原子又は環を分岐点とする規則的な樹枝状分岐構造を有する基)であることも好ましい。デンドロンの例としては、国際公開第02/067343号、特開2003−231692号公報、国際公開第2003/079736号、国際公開第2006/097717号、国際公開第2016/006523号等の文献に記載の構造が挙げられる。
【0053】
本発明で用いられる芳香族複素環2座配位子の具体的な構造としては、例えば、一般式(4)〜(14)で表されるものが挙げられる。これらの中でも、一般式(4)〜(7)で示す構造を有するものが好ましく、一般式(5)で示す構造を有するものがより好ましい。
【0054】
【化12】
(式(4)〜(14)中、R〜R94は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【0055】
上記式中、R〜R94は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。R〜R94の置換基としては、上記した、CyA及びCyBに結合し得る置換基と同様のものが適用でき、また、各種置換基における望ましい範囲も同様である。
【0056】
(III)反応条件について
そして、本発明に係るハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造方法では、一般式(1)で表されるイリジウム化合物と一般式(2)で表される芳香族2座配位子とを所定の溶媒中で、特定条件の下で反応させることで行われる。
【0057】
本発明で使用される溶媒は、その沸点が50℃以上350℃未満のものである。溶媒の沸点は、50℃以上300℃未満が好ましく、100℃以上300℃未満がより好ましく、150℃以上250℃未満が更に好ましく、150℃以上220℃未満がより特に好ましい。尚、ここで示す沸点とは常圧での値である。
【0058】
溶媒としては上記沸点を有すれば特に限定されないが、例えば、アルコール類、飽和脂肪族炭化水素、エステル類、エーテル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、ケトン類、アミド類、芳香族炭化水素、含窒素芳香族化合物、イオン性液体、水が好ましい。この中でも、アルコール類、飽和脂肪族炭化水素、エステル類、エーテル類、非プロトン性極性溶媒、又は、アミド類がより好ましく、アルコール類、又は、非プロトン性極性溶媒(DMF、DMSOなど)が特に好ましく、アルコール類(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、更に好ましくは炭素数1以上10以下)がより特に好ましく、アルコール類の中でもジオール(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、更に好ましくは炭素数1以上10以下)が最も好ましい。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールが好ましい。
【0059】
上記溶媒は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上の溶媒を組み合わせて用いても良い。
【0060】
本発明に係るハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造において、原料イリジウム化合物(一般式(1))の反応系内の濃度は、特に制限されるものではない。本発明においては10−4モル/L以上10モル/L以下の範囲が好ましく、10−3モル/L以上10モル/L以下の範囲がより好ましく、10−2モル/L以上10モル/L以下の範囲が更に好ましく、10−2モル/L以上10モル/L以下の範囲が特に好ましく、5×10−2モル/L以上1モル/L以下の範囲が最も好ましい。
【0061】
一方、芳香族2座配位子(一般式(2))の使用量については、イリジウム化合物(一般式(1))1モルに対し、0.5倍モル以上10倍モル未満とすることを要する。
【0062】
芳香族2座配位子の使用量が上記範囲より多くなると、ハロゲン架橋イリジウムダイマーの純度や収率が大きく低下する傾向にある。更に、未反応の芳香族2座配位子がハロゲン架橋イリジウムダイマーに混じると、芳香族2座配位子の除去が困難になる。よって、芳香族2座配位子の使用量は、一般式(1)で表されるイリジウム化合物1モルに対し10倍モル未満とする。
【0063】
また、芳香族2座配位子の使用量が少ないと、一般式(1)で表されるイリジウム化合物が分解しやすくなり、その除去が困難になる。そこで、芳香族2座配位子の使用量は、イリジウム化合物1モルに対し、0.5倍モル以上とする。
【0064】
尚、芳香族2座配位子の使用量は、一般式(1)で表されるイリジウム化合物1モルに対し、0.5倍モル以上4倍モル未満が好ましく、1倍モル以上3倍モル未満がより好ましく、1倍モル以上2.4倍モル未満が更に好ましく、1.5倍モル以上2.4倍モル未満が特に好ましく、1.7倍モル以上2.2倍モル未満が最も好ましい。
【0065】
本発明に係るハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造において、反応温度は、50℃以上300℃未満とする。反応温度については、50℃以上250℃未満が好ましく、100℃以上250℃未満がより好ましく、150℃以上250℃未満が更に好ましく、150℃以上220℃未満が特に好ましい。尚、このときの加熱手段は特に限定されない。具体的には、オイルバス、サンドバス、マントルヒーター、ブロックヒーター、熱循環式ジャケットによる外部加熱、更にはマイクロ波照射による加熱等を利用できる。
【0066】
本発明に係るハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造において、イリジウム化合物と芳香族2座配位子との配合比及び反応温度を上記のように適切にすれば、反応時間は特に限定されない。本発明においては、反応時間は、0.5時間以上72時間未満が好ましく、1時間以上48時間未満がより好ましく、1時間以上24時間未満が更に好ましく、1時間以上10時間以下が特に好ましい。
【0067】
また、ハロゲン架橋イリジウムダイマーの合成反応は、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0068】
そして、本発明におけるハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造は常圧(大気圧下)で行うことが好ましい。以上説明した条件を満足することで、反応系を加圧することなく反応を進行させることができる。上記した特許文献2記載の方法では、ガラスチューブ中での加圧を適用するが、ガラス容器破裂の危険性があるため好ましくない。
【0069】
以上説明した製造方法により得られたハロゲン架橋イリジウムダイマーは、一般的な後処理方法で処理した後、必要があれば精製し、又は、精製せずに高純度品として用いることができる。後処理の方法としては、例えば、抽出、冷却、水や有機溶媒を添加することによる晶析、反応混合物からの溶媒を留去する操作等を、単独又は組み合わせて行うことができる。精製の方法としては、再結晶、蒸留、昇華又はカラムクロマトグラフィー等を、単独又は組み合わせて行うことができる。
【0070】
本発明で得られたハロゲン架橋イリジウムダイマーは、ビスシクロメタル化イリジウム錯体の前駆体や、トリスシクロメタル化イリジウム錯体の前駆体として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0071】
以上説明したように、本発明では、一般式(1)で表されるイリジウム化合物を用い、特定条件下で、高純度のハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く製造できる。また、本発明を用いて得られるハロゲン架橋イリジウムダイマーを用いて、有機EL素子等の燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を純度良く、かつ、収率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は一例でありこれに限定されない。本実施形態では、まず、イリジウム化合物(上記化11の(Ir−1)、(Ir−17)、(Ir−23))を原料としてハロゲン架橋イリジウムダイマーを製造した(実施例1〜21、比較例1〜5)。そして、製造したハロゲン架橋イリジウムダイマーを用いてシクロメタル化イリジウム錯体を合成した。(実施例22、23、比較例6、7)。
【0073】
まず、ハロゲン架橋イリジウムダイマーの製造に関する実施例、比較例を説明する。以下の説明において、配位子(L−1〜L−16)とハロゲン架橋イリジウムダイマー(D−1〜D−17:以下の説明で目的化合物と称するときがある)の構造は、各実施例及び各比較例記載の反応式に示されている。尚、本実施形態で使用したイリジウム化合物(Ir−1)、(Ir−17)、(Ir−23)については、下記のように、3塩化イリジウム水和物と必要な置換基R〜Rを有するβ−ジケトン配位子とを、炭酸水素ナトリウムを含む水溶液中で加熱反応させて製造した。
【0074】
[イリジウム化合物(Ir−1)の製造方法]
3塩化イリジウム三水和物37.1g(105mmol)と純水200mlを三口フラスコに入れて溶解し、続いて、1Mの炭酸水素ナトリウムを200ml添加し、更にアセチルアセトン20.5ml(200mmol)を添加して95℃10時間反応させた。反応後真空乾燥により乾固し、続いてメタノールを400ml添加し、8時間還流後、ろ過した。ろ液を濃縮し、冷メタノールを加えて、オレンジ色のイリジウム化合物(Ir−1)結晶13.0gを得た。単離収率は26.8%であった。
【0075】
[イリジウム化合物(Ir−17)の製造方法]
3塩化イリジウム三水和物40.6g(115mmol)と純水530mlを三口フラスコに入れて溶解し、続いて、5−メチル−2、4−ヘキサンジオン45.7g(357mmol)を添加して95℃1時間反応させ、そこへ、炭酸水素カリウム47.5g(475mmol)を少量ずつ加え、pH8程度に調整した。更に、5時間加熱し反応させた。反応後一晩置いて上澄みの水層から、ヘキサンを用いて未反応の5‐メチル−2、4−ヘキサンジオンを抽出除去し、続いて酢酸エチルでイリジウム化合物(Ir−17)を抽出し、その抽出液を濃縮乾固することでオレンジ色のイリジウム化合物(Ir−17)の粗結晶12gを得た。更に、粗結晶をカラム精製してオレンジ色のイリジウム化合物(Ir−17)結晶10.2gを得た。単離収率は16%であった。
【0076】
[イリジウム化合物(Ir−23)の製造方法]
3塩化イリジウム三水和物4.0g(11.0mmol)と純水43mlを三口フラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で攪拌し、続いてトリフルオロアセチルアセトン5.26g(34.11mmol)を加えて、アルゴン雰囲気下、1時間還流させた。さらに、炭酸水素カリウム4.52g(45.11mmol)を添加し、90℃5時間反応させた。反応後一晩置いて上澄みの水層から、クロロホルムを用いて未反応のトリフルオロアセチルアセトンを抽出除去し、続いて、酢酸エチルでイリジウム化合物(Ir−23)を抽出し、その抽出液を濃縮乾固することで褐色のイリジウム化合物(Ir−23)粗体を1.8g得た。更に、粗体をカラム精製して橙色のイリジウム化合物(Ir−23)固体1.5gを得た。単離収率は20%であった。
【0077】
<実施例1> 化合物(D−1)の合成
【化13】
【0078】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−1)280.0mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で8時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、ジクロロメタンと水を加えて抽出し、有機層を回収した。この溶液をセライト層に通してろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をジクロロメタンとヘキサンを用いて再結晶し、目的化合物(D−1)を赤色固体として得た。単離収率62%であった。生成物はH−NMRで分析した。
【0079】
<実施例2> 化合物(D−1)の合成
【化14】
【0080】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−1)280.0mg、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、210℃で1時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、ジクロロメタンと水を加えて抽出し、有機層を回収した。この溶液をセライト層に通してろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をジクロロメタンとヘキサンを用いて再結晶し、目的化合物(D−1)を赤色固体として得た。単離収率85%であった。生成物はH−NMRで分析した。
【0081】
<比較例1> 化合物(D−1)の合成(出発原料として3塩化イリジウムn水和物を使用)
【化15】
【0082】
3塩化イリジウムn水和物211.6mg、配位子(L−1)320.5mg、2−エトキシエタノール17ml、及び、水2mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、105℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液を約5mlまで濃縮した。この溶液へ水を加えると固体が析出した。これをろ過し、水とヘキサンで洗浄することで黒黄土色固体を360.4mg得た。黒黄土色固体をH−NMRで分析した結果、目的化合物(D−1)のほか、配位子(L−1)や未同定不純物が多く含まれており、目的化合物の純度は50%程度であった。
【0083】
<比較例2> 化合物(D−1)の合成(溶媒を使用せずに合成)
【化16】
【0084】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、及び、配位子(L−1)1.4gを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、210℃で1時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、ジクロロメタンと水を加えて抽出し、有機層を回収した。この溶液をセライト層に通してろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をジクロロメタンとヘキサンを用いて再結晶し、目的化合物(D−1)を赤色固体として得た。単離収率40%であった。生成物はH−NMRで分析した。
【0085】
<実施例3> 化合物(D−2)の合成
【化17】
【0086】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−2)246.4mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、ジクロロメタンと水を加えて抽出し、有機層を回収した。セライト層を通してろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をジクロロメタンとヘキサンを用いて再結晶し、目的化合物(D−2)を赤色固体として得た。単離収率は79%であった。生成物はH−NMRで分析した。
【0087】
<比較例3> 化合物(D−2)の合成(出発原料として3塩化イリジウムn水和物を使用)
【化18】
【0088】
3塩化イリジウムn水和物211.6mg、配位子(L−2)271.0mg、2−エトキシエタノール17ml、及び、水2mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、105℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液を約5mlまで濃縮した。この溶液へ水を加えると固体が析出した。これをろ過し、水とヘキサンで洗浄することで黒赤色固体を351.9mg得た。この黒赤色固体をH−NMRで分析した結果、目的化合物(D−2)のほか、配位子(L−2)や未同定不純物が多く含まれており、目的化合物の純度は50%程度であった。
【0089】
<実施例4> 化合物(D−3)の合成
【化19】
【0090】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−3)264.0mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液を室温まで冷却しろ過した。得られた明るい黄色固体をメタノールで洗浄し、目的化合物(D−3)を単離収率73%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0091】
<比較例4> 化合物(D−3)の合成(出発原料として3塩化イリジウムn水和物を使用)
【化20】
【0092】
3塩化イリジウムn水和物211.6mg、配位子(L−3)396.4mg、2−エトキシエタノール10ml、及び、水3mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、105℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、茶色の反応溶液を室温まで冷却しろ過した。得られた暗黄色固体をメタノールで洗浄し、目的化合物(D−3)を単離収率30%で得た。
【0093】
<実施例5> 化合物(D−4)の合成
【化21】
【0094】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−4)314.8mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で10時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで明るい黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−4)を単離収率73%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0095】
<実施例6> 化合物(D−5)の合成
【化22】
【0096】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−5)186.0mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで明るい黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−5)を単離収率97%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0097】
<実施例7> 化合物(D−5)の合成
【化23】
【0098】
イリジウム化合物(Ir−17)333.9mg、配位子(L−5)186.0mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで明るい黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−5)を単離収率92%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0099】
<実施例8> 化合物(D−5)の合成
【化24】
【0100】
イリジウム化合物(Ir−23)182.5mg、配位子(L−5)93.0mg、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで明るい黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−5)を単離収率97%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0101】
<比較例5> 化合物(D−5)の合成(溶媒を使用せずに合成)
【化25】
【0102】
イリジウム化合物(Ir−17)333.9mg、及び、配位子(L−5)223.2mgをシュレンク管へ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、メタノールを入れ、黄色の反応溶液をろ過することで、くすんだ黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−5)を収率18%で得た。
【0103】
<実施例9> 化合物(D−6)の合成
【化26】
【0104】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−6)215.1mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−6)を単離収率91%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0105】
<実施例10> 化合物(D−7)の合成
【化27】
【0106】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−7)313.6mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、赤色の反応溶液をろ過することで赤色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−7)を単離収率92%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0107】
<実施例11> 化合物(D−8)の合成
【化28】
【0108】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−8)294.4mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−8)を単離収率97%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0109】
<実施例12> 化合物(D−9)の合成
【化29】
【0110】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−9)173.0mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、薄黄色の反応溶液をろ過することで薄黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−9)を単離収率83%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0111】
<実施例13> 化合物(D−9)の合成
【化30】
【0112】
イリジウム化合物(Ir−17)333.9mg、配位子(L−9)173.0mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、薄黄色の反応溶液をろ過することで薄黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−9)を単離収率92%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0113】
<実施例14> 化合物(D−10)の合成
【化31】
【0114】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−10)277.6mg、及び、ジエチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−10)を単離収率87%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0115】
<実施例15> 化合物(D−11)の合成
【化32】
【0116】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−11)278.7mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、化合物(D−11)を単離収率90%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0117】
<実施例16> 化合物(D−12)の合成
【化33】
【0118】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−12)329.1mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−12)を単離収率93%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0119】
<実施例17> 化合物(D−13)の合成
【化34】
【0120】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−13)361.7mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、ジクロロメタンと水を加えて抽出した。有機層を回収し減圧濃縮した。得られた黄色固体をジクロロメタンとヘキサンを用いて再結晶し、目的化合物(D−13)を単離収率80%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0121】
<実施例18> 化合物(D−14)の合成
【化35】
【0122】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−14)253.5mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−14)を単離収率73%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0123】
<実施例19> 化合物(D−15)の合成
【化36】
【0124】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−15)253.5mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、赤茶色の反応溶液をろ過することで赤茶色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−15)を単離収率87%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0125】
<実施例20> 化合物(D−16)の合成
【化37】
【0126】
イリジウム化合物(Ir−1)290.6mg、配位子(L−16)207.8mg、及び、エチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、黄色の反応溶液をろ過することで明るい黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、目的化合物(D−16)を単離収率90%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0127】
<実施例21> 化合物(D−17)の合成
【化38】
【0128】
イリジウム化合物(Ir−17)333.9mg、配位子(L−17)292.8mg、及び、ジエチレングリコール5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、210℃で5時間加熱反応させた。反応終了後、薄黄色の反応溶液をろ過することで薄黄色固体を得た。これをメタノールで洗浄し、その後、ジクロロメタンとメタノールで再結晶し、目的化合物(D−17)を単離収率61%で得た。生成物はH−NMRで分析した。
【0129】
以上の実施例1〜21の結果より、本発明の製造方法を用いると、ハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く製造できることが明らかになった。一方、比較例1、3、4より、出発原料として塩化イリジウムを用いると、反応が十分に進行せず、ハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く製造することができなかった。また、比較例2及び5より、無溶媒条件下でのハロゲン架橋イリジウムダイマーの合成収率は、溶媒中での反応と比較して、いずれも低いことが明らかになった。
【0130】
尚、実施例7、13、21の結果より、原料となるイリジウム化合物である(Ir−17)は、その配位子の置換基がR≠R、R≠Rとなるイリジウム化合物である。このイリジウム化合物においても良好な収率が得られる。また、実施例8の結果から、置換基としてフッ素で置換されたアルキル基を有するイリジウム化合物も有用であることが確認された。
【0131】
次に、実施例及び比較例の製造方法で得られたハロゲン架橋イリジウムダイマーからシクロメタル化イリジウム錯体(C−1、C−2)を合成した。
【0132】
<実施例22>シクロメタル化イリジウム錯体(C−1)の合成
【化39】
【0133】
実施例2で得られた塩素架橋イリジウムダイマー(D−1)6.0mgとナトリウムアセチルアセトナート水和物6.0mgをDMSO−d(0.75ml)に加熱溶解させた後、NMRチューブに入れた。この反応溶液をH−NMRで分析したところ、塩素架橋イリジウムダイマー(D−1)は完全に消失しており、シクロメタル化イリジウム錯体(C−1)が定量的に生成していることがわかった。このことから、実施例2で得られた塩素架橋イリジウムダイマー(D−1)の純度が極めて高いことが明らかになった。
【0134】
<比較例6>シクロメタル化イリジウム錯体(C−1)の合成
比較例1で得られた塩素架橋イリジウムダイマー(D−1)6.0mgとアセチルアセトンナトリウム6.0mgをDMSO−d(0.75ml)に加熱溶解させた後、NMRチューブに入れた。この反応溶液をH−NMRで分析したところ、シクロメタル化イリジウム錯体(C−1)のほか、未反応配位子(L−1)や未同定不純物が50%以上含まれていた。このことから、比較例1で得られた塩素架橋イリジウムダイマー(D−1)の純度は低いことが明らかになった。
【0135】
<実施例23>シクロメタル化イリジウム錯体(C−2)の合成
【化40】
【0136】
実施例3で得られた塩素架橋イリジウムダイマー(D−2)6.0mgとアセチルアセトンナトリウム6.0mgをDMSO−d(0.75ml)に加熱溶解させた後、NMRチューブに入れた。この反応溶液をH−NMRで分析したところ、塩素架橋イリジウムダイマー(D−2)は完全に消失し、シクロメタル化イリジウム錯体(C−2)が定量的に生成していることがわかった。このことから、実施例3で得られた塩素架橋イリジウムダイマー(D−2)の純度が極めて高いことが明らかになった。
【0137】
<比較例7>シクロメタル化イリジウム錯体(C−2)の合成
比較例3で得られた塩素架橋イリジウムダイマー(D−2)6.0mgとアセチルアセトンナトリウム6.0mgをDMSO−d(0.75ml)に加熱溶解させた後、NMRチューブに入れた。この反応溶液をH−NMRで分析したところ、シクロメタル化イリジウム錯体(C−2)のほか、未反応配位子(L−2)や未同定不純物が50%以上含まれていた。比較例3で得られた塩素架橋イリジウムダイマー(D−2)の純度は低いことが明らかになった。
【0138】
実施例22、23から、本発明の製造方法で得られたハロゲン架橋ダイマーを用いると、所望のシクロメタル化イリジウム錯体を高純度で得ることができることが明らかになった。そして、比較例6、7の結果から、出発原料として塩化イリジウムを用いる従来公知の方法で得られたハロゲン架橋イリジウムダイマーには、未反応配位子や黒色分解物を多量に含んでおり、これを用いると、所望のシクロメタル化イリジウム錯体の収率や純度が極めて低くなることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によれば、シクロメタル化イリジウム錯体の前駆体となるハロゲン架橋イリジウムダイマーを収率良く、かつ、純度良く製造することができる。そして、本発明により製造されたハロゲン架橋イリジウムダイマーを用いることで、シクロメタル化イリジウム錯体を収率良くかつ純度良く製造することが可能になる。本発明は、有機電解発光(EL)素子、有機電気化学発光(ECL)素子、発光センサー、光増感色素、光触媒、発光プローブ、各種光源等に使用される燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を製造するための原料として好適である。