特開2017-226634(P2017-226634A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-226634シクロメタル化イリジウム錯体の製造方法、及び、当該方法に好適に用いられる新規なイリジウム化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226634(P2017-226634A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】シクロメタル化イリジウム錯体の製造方法、及び、当該方法に好適に用いられる新規なイリジウム化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
   C07F15/00 ECSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-125400(P2016-125400)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】今野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】谷内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑠美
(72)【発明者】
【氏名】政広 泰
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機EL素子等の燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を収率良くかつ純度良く製造する方法の提供。
【解決手段】イリジウム化合物と芳香族2座配位子とを反応させる際、式(4)で表されるβ−ジケトナート塩を反応系に共存させることで反応中間体の安定性を向上させ、結果としてシクロメタル化イリジウム錯体の収率が向上する製造方法。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるイリジウム化合物と、下記の一般式(2)で表される芳香族2座配位子とを反応させ、下記の一般式(3)で表されるシクロメタル化イリジウム錯体を製造する方法において、
下記の一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩を反応系に共存させて反応させることを特徴とするイリジウム錯体の製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはカウンターカチオンを表す。R〜Rは各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であり、前記記載のアルキル基、又は、アリール基の水素原子が、一部又は全部がハロゲン原子で置換されても良い。また隣り合ったR〜Rは互いに結合し、環構造を形成しても良い。)
【化2】
(一般式(2)中、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Hは水素原子を表し、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、CyAとCyBとが結合し環構造を形成しても良い。)
【化3】
(一般式(3)中、Irはイリジウム原子を表し、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該窒素原子を介してイリジウムと結合しており、CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該炭素原子を介してイリジウムと結合している。CyAとCyBとが結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【化4】
(一般式(4)中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、Oは酸素原子を表す。mは1又は2を表す。Mがアルカリ金属のときはm=1であり、Mがアルカリ土類金属のときはm=2である。R〜Rは各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であり、前記記載のアルキル基、又は、アリール基の水素原子が、一部又は全部がハロゲン原子で置換されても良い。また隣り合ったR〜Rは互いに結合し、環構造を形成しても良い。)
【請求項2】
CyAがピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環のいずれかであり、
CyBがベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、カルバゾール環、フルオレン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環のいずれかである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
CyAがピリジン環、又は、イミダゾール環であり、CyBがベンゼン環である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(1)で表されるイリジウム化合物と一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩との混合物からなる組成物。
【請求項5】
一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩の混合モル比が、一般式(1)で表されるイリジウム化合物1モルに対して0.01倍モル以上1000倍モル以下の範囲にある請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
一般式(15)で表されることを特徴とするイリジウム化合物。
【化5】
(一般式(15)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはカウンターカチオンを表す。R、R、R、及び、Rは各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基を表す。但し、R又はRの少なくともいずれか一方がフッ素で置換されたアルキル基であり、かつ、R又はRの少なくともいずれか一方がフッ素で置換されたアルキル基である。)
【請求項7】
とRについて、いずれか一方がトリフルオロメチル基であり、他方がメチル基であり、かつ、RとRについて、いずれか一方がトリフルオロメチル基であり、他方がメチル基である請求項6に記載のイリジウム化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電解発光(EL)素子、有機電気化学発光(ECL)素子、発光センサー、光増感色素、光触媒、発光プローブ、各種光源等に使用される燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を高収率で、かつ、高純度で製造するための技術に関する。また、このシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法に好適に用いることができるイリジウム化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電解発光(EL)素子等の燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体は、イリジウム原子に多座配位子が環状に配位してなり、少なくとも一つのイリジウム−炭素結合を有する有機イリジウム錯体の総称である。燐光材料を用いた有機EL素子は、従来の蛍光材料を用いた有機EL素子よりも発光効率が3〜4倍高いため、シクロメタル化イリジウム錯体は有機EL素子の高効率化・省エネルギー化に必要不可欠な材料である。燐光材料として適用されるシクロメタル化イリジウム錯体には、例えば、2−フェニルピリジンや1−フェニルイソキノリン等の芳香族2座配位子が配位したシクロメタル化イリジウム錯体(化1参照)等の多くのイリジウム錯体が知られている。
【0003】
【化1】
【0004】
上記のようなシクロメタル化イリジウム錯体の製造法として、特許文献1には、原料であるイリジウム化合物としてビス(アセチルアセトナト)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウムを用い、このイリジウム化合物と、2−フェニルピリジンや1−フェニルイソキノリン等の芳香族2座配位子とを反応させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2004/085449号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の知見によれば、特許文献1記載の方法により、2−フェニルピリジンや1−フェニルイソキノリンを配位子として有するシクロメタル化イリジウム錯体を製造する場合、芳香族2座配位子を大量に使用する必要がある。具体的には、イリジウム原料1モルに対し、10倍モル以上の相当に過剰量の芳香族2座配位子を使用しなければ実用的な効率でシクロメタル化イリジウム錯体を製造できないことがわかっている。芳香族2座配位子は高価なものが多く、この方法ではシクロメタル化イリジウム錯体のコストを大きく上昇させることとなる。
【0007】
また、特許文献1記載の方法における上記の芳香族2座配位子の使用量の問題に関しては、使用量を相当過剰にしなくても、一応はシクロメタル化イリジウム錯体が生成できる。しかし、その場合、シクロメタル化イリジウム錯体と共に、ハロゲン架橋イリジウムダイマー等の副生成物が生成し、所望のシクロメタル化イリジウム錯体のみを得ることができない。むしろ、副生成物の収率の方が高くなることも多く、効率的にシクロメタル化イリジウム錯体を得ることができないという問題が明らかになった。
【0008】
更に、本発明者の更なる検討によると、特許文献1記載の方法では、2−フェニルピリジンや1−フェニルイソキノリン以外の配位子を反応させたとき、反応物の分解等の副反応が進行し、所望とするシクロメタル化イリジウム錯体が低収率でしか得られないケースがあることも明らかになった。このようなケースでは、たとえ配位子の使用量を増やしたとしても、所望とするシクロメタル化イリジウム錯体の収率は向上しない。
【0009】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、有機EL素子等の燐光材料として好適に用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を、高収率で製造することができ、かつ、高純度の錯体を製造できる方法を開示する。また、当該製造方法に特に好適に用いられる新規イリジウム化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、下記の一般式(1)で表されるイリジウム化合物と、下記の一般式(2)で表される芳香族2座配位子とを反応させ、下記の一般式(3)で表されるシクロメタル化イリジウム錯体を製造する方法において、下記の一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩を反応系に共存させて反応させることを特徴とするイリジウム錯体の製造方法である。
【0011】
【化2】
(一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはカウンターカチオンを表す。R〜Rは各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であり、前記記載のアルキル基、又は、アリール基の水素原子が、一部又は全部がハロゲン原子で置換されても良い。また隣り合ったR〜Rは互いに結合し、環構造を形成しても良い。)
【0012】
【化3】
(一般式(2)中、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Hは水素原子を表し、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、CyAとCyBとが結合し環構造を形成しても良い。)
【0013】
【化4】
(一般式(3)中、Irはイリジウム原子を表し、Nは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該窒素原子を介してイリジウムと結合しており、CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該炭素原子を介してイリジウムと結合している。CyAとCyBとが結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【0014】
【化5】
(一般式(4)中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、Oは酸素原子を表す。mは1又は2を表す。Mがアルカリ金属のときはm=1であり、Mがアルカリ土類金属のときはm=2である。R〜Rは各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であり、前記記載のアルキル基、又は、アリール基の水素原子が、一部又は全部がハロゲン原子で置換されても良い。また隣り合ったR〜Rは互いに結合し、環構造を形成しても良い。)
【0015】
本発明は、シクロメタル化イリジウム錯体の製造方法について、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、見出されたものであり、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロイリジウム(III)酸ナトリウム等の上記一般式(1)で示されるイリジウム化合物に、芳香族2座配位子を反応させるシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法について、反応系にβ−ジケトナート塩を共存させることを特徴とする。本発明者等によれば、この反応系にβ−ジケトナート塩を共存させると、意外にも、当該反応が活性化され、芳香族2座配位子を大過剰に用いることなく、シクロメタル化イリジウム錯体の収率が劇的に向上する。
【0016】
本発明の方法により、シクロメタル化イリジウム錯体を収率良く製造できる理由については未だ明らかではないが、現時点で発明者は以下のように考えている。
【0017】
即ち、シクロメタル化イリジウム錯体(一般式(3))の合成反応においては、一般式(1)のイリジウム化合物と一般式(2)の芳香族2座配位子との反応により反応中間体が生成し、この反応中間体と芳香族2座配位子との反応を経て、所望のシクロメタル化イリジウム錯体が生成すると考えられる。このような反応中間体を経由するシクロメタル化イリジウム錯体の生成反応において、シクロメタル化イリジウム錯体の収率が低下する要因としては、まず、反応中間体と芳香族2座配位子との反応が遅く、反応系内に反応中間体が残存する場合が考えられる。そして、反応中間体が残存する場合において、反応中間体が熱的に不安定であると反応中間体が分解してしまい、所望のシクロメタル化イリジウム錯体の収率をより低下させていると考えられる。
【0018】
本発明のようにβ−ジケトナート塩を反応系中に添加することで、シクロメタル化イリジウム錯体の収率が向上する理由としては、β−ジケトナート塩が上記した反応中間体の安定性を向上させる作用を有するからであると考察している。これにより、反応中間体が芳香族2座配位子と反応する前に分解するのを抑制し、シクロメタル化イリジウム錯体の収率が向上すると考えている。また、β−ジケトナート塩は、反応中間体と芳香族2座配位子との反応が活性化作用を有し、この作用によってもシクロメタル化イリジウム錯体の収率が向上するものと考えている。
【0019】
以下、本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法、及び、この製造方法で適用可能な新規イリジウム化合物について詳細に説明する。以下の説明においては、本発明を構成する(I)イリジウム原料、(II)芳香族2座配位子、(III)β−ジケトナート塩、(IV)好適な反応条件について説明し、更に、(V)本発明に係る方法に好適な新規イリジウム化合物を提示する。
【0020】
(I)イリジウム原料について
上記の通り、本発明で適用するイリジウム原料は、一般式(1)で表されるイリジウム化合物である。この一般式(1)中のIrはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表す。
【0021】
Xはハロゲン原子を表す。具体的には、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子、又は、臭素原子がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0022】
Yはカウンターカチオンを表す。カウンターカチオンは、一般式(1)で表されるイリジウム化合物全体の電荷を0にして、塩を形成する役割を果たすものであれば何でも良い。その中でも1価のカチオンが好ましい。具体的には、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、又は、プロトン等が挙げられ、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、又は、スルホニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオンがより好ましく、ナトリウムイオン、又は、カリウムイオンが特に好ましい。
【0023】
尚、以上のIr、O、H、X、Yの説明は、一般式(2)〜(15)でも共通する。
【0024】
そして、一般式(1)中のR〜Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基である。アルキル基、又は、アリール基の水素原子が、一部又は全部がハロゲン原子で置換されても良い。また隣り合ったR〜Rは互いに結合し、環構造を形成しても良い。R〜Rがアルキル基、アリール基である場合、それらの望ましい範囲は、後述するCyA及びCyBに結合可能なアルキル基とアリール基の範囲と同様である。
【0025】
、R、R、Rは、各々独立に、アルキル基、又は、アリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、イソプロピル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基が更に好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。R、R、R、Rがアルキル基の場合の好適範囲は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、又は、トリフルオロメチル基が好ましい。尚、R、R、R、及び、Rについては、RとRとが異なる置換基であり、RとRとが異なる置換基(すなわち、R≠R、R≠Rとなる場合)であっても良い。
【0026】
、R、R、Rは、分岐アルキル基であることも好ましい。この場合、特にR及びRの少なくともいずれか一方が分岐アルキル基であることが好ましく、R及びRの少なくともいずれか一方が分岐アルキル基であることが好ましい。R及びRのいずれか一方のみが分岐アルキル基であることがより好ましく、R及びRのいずれか一方のみが分岐アルキル基であることがより好ましい。R及びRのいずれか一方が分岐アルキル基であり、他方がメチル基であることが特に好ましく、R及びRのいずれか一方が分岐アルキル基であり、他方がメチル基であることが特に好ましい。分岐アルキル基として好ましいものは、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基であり、イソプロピル基がより好ましい。
【0027】
、R、R、Rは、ハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基であることも好ましい。この場合、特にR及びRの少なくともいずれか一方がハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基であることが好ましく、R及びRの少なくともいずれか一方がハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基であることが好ましい。R及びRのいずれか一方のみがハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基であることがより好ましく、R及びRのいずれか一方のみがハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基であることがより好ましい。R及びRのいずれか一方がハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基であり、他方がメチル基であることが特に好ましく、R及びRのいずれか一方がハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基であり、他方がメチル基であることが特に好ましい。ハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基として好ましいものは、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基であり、トリフルオロメチル基がより好ましい。一般式(1)で表されるイリジウム化合物に、電子吸引性基であるハロゲン原子(好ましくはフッ素)を導入することにより、一般式(1)で表されるイリジウム化合物のイリジウム−酸素結合が弱まり、その反応性が向上するためである(後述する実施例4と実施例5を参照)。
【0028】
、Rは、各々独立に、水素原子、又は、アルキル基であることが好ましく、水素原子、又は、メチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0029】
本発明の製造方法に用いられる一般式(1)で表されるイリジウム化合物にはシス体(一般式(5))とトランス体(一般式(6))があるが、どちらかを選択的に用いても良く、シス体とトランス体の混合物を用いても良い。
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
(一般式(5)及び(6)中の記号は、一般式(1)中の記号と同義であり、望ましい範囲も同じである。)
【0032】
また、一般式(1)で表されるイリジウム化合物の配位子が非対称構造である場合(すなわち、R≠R、R≠Rとなる場合)、更に幾何異性体が存在する。例えば、後述するイリジウム化合物の具体例である(Ir−2)には、表8に示す幾何異性体が存在する(ここで、X=Clであり、カウンターカチオンであるYは省略している)。本発明の製造方法で用いられるイリジウム化合物は、これらの幾何異性体のいずれかのみからなる状態であっても良いし、2種以上の幾何異性体の混合状態にあっても良い。本発明のシクロメタル化イリジウム錯体を製造する目的において、原料となるイリジウム化合物が幾何異性体の混合状態にあるか否かは特段の影響を与えるものではない。
【0033】
【化8】
【0034】
一般式(1)で表されるイリジウム化合物の例を化9に示すが、本発明ではこれらのイリジウム化合物に限定されない。化9に記載のイリジウム化合物の中でも好ましいものは、(Ir−1)〜(Ir−3)であり、より好ましいものは、(Ir−2)または(Ir−3)である。
【0035】
【化9】
【0036】
(II)芳香族2座配位子について
本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法は、上記で説明したイリジウム化合物(一般式(1))に、一般式(2)の芳香族2座配位子と反応させる。
【0037】
本発明の芳香族2座配位子を示す一般式(2)において、式中のNは窒素原子を表し、Cは炭素原子を表し、Hは水素原子を表す。CyAは窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該窒素原子を介してイリジウムと結合している。CyAは、5員環又は6員環の含窒素芳香族複素環であることが好ましい。
【0038】
CyBは炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基を表し、当該炭素原子を介してイリジウムと結合している。CyBは、5員環又は6員環の芳香族炭素環又は芳香族複素環であることが好ましく、5員環又は6員環の芳香族炭素環又は含窒素芳香族複素環であることがより好ましく、5員環又は6員環の芳香族炭素環であることが特に好ましい。
【0039】
CyAとCyBとが結合し新たに環構造を形成しても良い。この場合、CyAとCyBとが結合し、新たな飽和環もしくは不飽和環を形成することが好ましく、不飽和環を形成することがより好ましい。
【0040】
窒素原子を含む5員環又は6員環の環状基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、又は、チアジアゾール環が挙げられる。この中でも好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、又は、トリアゾール環、であり、より好ましくは、ピリジン環、又は、イミダゾール環である。
【0041】
炭素原子を含む5員環又は6員環の環状基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、カルバゾール環、フルオレン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、又は、チアジアゾール環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、又は、ピリミジン環が好ましく、ベンゼン環、ピリジン環、又は、ピリミジン環がより好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0042】
CyAとCyBとが結合することで生成した環は、CyAとCyBとが結合することでベンゾキノキサリン環、ベンゾキノリン環、ジベンゾキノキサリン環、ジベンゾキノリン環、フェナントリジン環を形成することが好ましく、ベンゾキノリン環、ジベンゾキノキサリン環、フェナントリジン環を形成することがより好ましい。ベンゾキノリン環としてはベンゾ[h]キノリン環が好ましい。ジベンゾキノキサリン環としては、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環が好ましい。フェナントリジン環としては、イミダゾ[1,2−f]フェナントリジン環が好ましい。
【0043】
CyA、CyB、及び、CyAとCyBとが結合することで生成した環は、置換基がついても良く、隣り合った置換基が結合し環構造を形成しても良く、更に置換されても良い。
【0044】
CyA、CyB、及び、CyAとCyBとが結合することで生成した環に結合する置換基としては、例えば、以下のものがある。
【0045】
・アルキル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上10以下であり、例えばメチル、エチル、Iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)
・アルケニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)
・アルキニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)
・アリール基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられる。)
・アミノ基(好ましくは炭素数0以上30以下、より好ましくは炭素数0以上20以下、特に好ましくは炭素数0以上10以下であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ等が挙げられる。)
・アルコキシ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上10以下であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシ等が挙げられる。)
・アリールオキシ基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)
・複素環オキシ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシ等が挙げられる。)
・アシル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)
・アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上12以下であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7以上30以下、より好ましくは炭素数7以上20以下、特に好ましくは炭素数7以上12以下であり、例えばフェニルオキシカルボニル等が挙げられる。)
・アシルオキシ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)
・アシルアミノ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上12以下であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7以上30以下、より好ましくは炭素数7以上20以下、特に好ましくは炭素数7以上12以下であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)
・スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0以上30以下、より好ましくは炭素数0以上20以下、特に好ましくは炭素数0以上12以下であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)
・カルバモイル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)
・アルキルチオ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)
・複素環チオ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオ等が挙げられる。)
・スルホニル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)
・スルフィニル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)
・ウレイド基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)
・リン酸アミド基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)
・ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上12以下であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基等が挙げられる。)
・シリル基(好ましくは炭素数3以上40以下、より好ましくは炭素数3以上30以下、特に好ましくは炭素数3以上24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。)
・シリルオキシ基(好ましくは炭素数3以上40以下、より好ましくは炭素数3以上30以下、特に好ましくは炭素数3以上24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ等が挙げられる。)
【0046】
以上の置換基の中で、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、複素環基、又は、シリル基が好ましく、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、又は、複素環基がより好ましく、アルキル基、又は、アリール基が特に好ましい。これらの置換基として望ましい範囲は前記の通りであり、上記置換基で更に置換されていてもよい。また隣り合った置換基は互いに結合し環構造を形成して良い。
【0047】
アリール基や複素環基の望ましい形態として、デンドロン(原子又は環を分岐点とする規則的な樹枝状分岐構造を有する基)であることも好ましい。デンドロンの例としては、国際公開第02/067343号、特開2003−231692号公報、国際公開第2003/079736号、国際公開第2006/097717号、国際公開第2016/006523号等の文献に記載の構造が挙げられる。
【0048】
本発明で用いられる一般式(2)で表される芳香族2座配位子の具体的な好ましい構造としては、例えば、化10に示す一般式(7)〜(14)で表されるものが挙げられる。これらの中でも、一般式(7)又は(10)で示す構造を有するものがより好ましい。
【0049】
【化10】
(式(7)〜(14)中、R10〜R76は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。R10〜R76の置換基は、CyA及びCyBに記載の置換基と同義であり、望ましい範囲も同じである。)
【0050】
(III)β−ジケトナート塩について
そして、本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、前記一般式(1)で表されるイリジウム化合物と前記一般式(2)で表される芳香族複素環2座配位子とを、前記一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩の共存下で反応させることを特徴とする。
【0051】
この一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩において、Mはアルカリ金属又はアルカリ金属土類金属を表し、アルカリ金属であることが好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
【0052】
mは1又は2を表す。Mがアルカリ金属のときはm=1であり、Mがアルカリ土類金属のときはm=2である。mは1であることが好ましい。
【0053】
、Rは、アルキル基、又は、アリール基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。ハロゲン原子(好ましくはフッ素)で置換されたアルキル基も好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャルブチル基、又は、トリフルオロメチル基が好ましい。Rは、水素原子、又は、アルキル基であることが好ましく、水素原子、又は、メチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0054】
本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩には結晶水がついていることが好ましい。
【0055】
(IV)好適な反応条件について
そして、本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、一般式(1)で表されるイリジウム化合物と一般式(2)で表される芳香族2座配位子とを、一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩が共存する反応系で反応させる。以下、この方法における好ましい反応条件について説明する。
【0056】
本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、溶媒を使用することが好ましい。溶媒として、例えば、アルコール類、飽和脂肪族炭化水素、エステル類、エーテル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、ケトン類、アミド類、芳香族炭化水素、含窒素芳香族化合物、イオン性液体、水が好ましい。この中でも、アルコール類、飽和脂肪族炭化水素、エステル類、エーテル類、非プロトン性極性溶媒、又は、アミド類がより好ましく、アルコール類、又は、非プロトン性極性溶媒(DMF、DMSOなど)が特に好ましく、アルコール類(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、更に好ましくは炭素数1以上10以下)がより特に好ましく、アルコール類の中でもジオール(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、更に好ましくは炭素数1以上10以下)が最も好ましい。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールが好ましい。
【0057】
上記溶媒は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上の溶媒を組み合わせて用いても良い。
【0058】
本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、一般式(1)で表されるイリジウム化合物の反応系内の濃度は特に制限されるものではないが、0.001モル/L以上10.0モル/L以下が好ましく、0.001モル/L以上1.0モル/L以下がより好ましく、0.01モル/L以上1.0モル/L以下が更に好ましく、0.05モル/L以上0.5モル/L以下が特に好ましい。
【0059】
本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、一般式(2)で表される芳香族複素環2座配位子の使用量は、一般式(1)で表されるイリジウム化合物1モルに対し、2倍モル以上10倍モル未満が好ましく、2.5倍モル以上8倍モル未満がより好ましく、3倍モル以上6倍以下が更に好ましく、3倍モル以上4.5倍モル以下が特に好ましい。
【0060】
そして、本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法において反応系に添加する一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩の添加量については、一般式(1)で表されるイリジウム化合物1モルに対して、0.01倍モル以上1000倍モル以下の範囲が好ましく、0.1倍モル以上100倍モル以下の範囲がより好ましく、1倍モル以上100倍モル以下の範囲が更に好ましく、1倍モル以上30倍モル以下の範囲が特に好ましい。
【0061】
本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、イリジウム化合物、芳香族複素環2座配位子、及び、β−ジケトナート塩で構成される反応系を加熱することが好ましい。このときの反応温度は、
50℃以上300℃未満とする。反応温度については、50℃以上250℃未満が好ましく、100℃以上250℃未満がより好ましく、150℃以上250℃未満が更に好ましく、150℃以上220℃未満が特に好ましい。尚、このときの加熱手段は特に限定されない。具体的には、オイルバス、サンドバス、マントルヒーター、ブロックヒーター、熱循環式ジャケットによる外部加熱、更にはマイクロ波照射による加熱等を利用できる。
【0062】
本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、反応時間は特に限定されない。但し、反応時間は、0.5時間以上72時間未満が好ましく、1時間以上48時間未満がより好ましく、1時間以上24時間未満が更に好ましい。
【0063】
本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。また、常圧(大気圧下)で行うことが好ましい。
【0064】
尚、反応系を構成するイリジウム化合物、芳香族複素環2座配位子、及び、β−ジケトナート塩の混合の順序については特に制限はない。また、β−ジケトナート塩の添加については、イリジウム化合物と別々にいずれかを先に、又は、同時に溶媒と添加しても良いし、両者の混合物を使用しても良い。この一般式(1)で表されるイリジウム化合物と一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩との混合物からなる組成物は、シクロメタル化イリジウム錯体製造用の原料ということができる。そして、本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、このからなる組成物と、一般式(2)で表される芳香族複素環2座配位子とを反応させることでも所望のシクロメタル化イリジウム錯体を製造することができる。
【0065】
上記のイリジウム化合物とβ−ジケトナート塩との混合物からなる組成物は、両者を一定比で混合することで得られる。この混合比については、一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩が一般式(1)で表されるイリジウム化合物1モルに対して0.01倍モル以上1000倍モル以下の範囲にあるものが好ましく、0.1倍モル以上100倍モル以下の範囲にあるものがより好ましく、1倍モル以上100倍モル以下の範囲にあるものが更に好ましく、1倍モル以上30倍モル以下の範囲にあるものが特に好ましい。
【0066】
尚、このイリジウム化合物とβ−ジケトナート塩との混合物からなる組成物と芳香族複素環2座配位子とを反応させる場合における好ましい条件は、上記と同様である。
【0067】
そして、製造されたシクロメタル化イリジウム錯体については、一般的な後処理方法で処理した後、必要があれば精製し、又は、精製せずに高純度品として用いることができる。後処理の方法としては、例えば、抽出、冷却、水や有機溶媒を添加することによる晶析、反応混合物からの溶媒を留去する操作等を、単独又は組み合わせて行うことができる。精製の方法としては、再結晶、蒸留、昇華又はカラムクロマトグラフィー等を、単独又は組み合わせて行うことができる。
【0068】
以上説明した方法により、上記の一般式(3)で表されるシクロメタル化イリジウム錯体が製造される。尚、一般式(3)における、N、C、CyA、CyBの意義は、一般式(2)と同義であり、それらの内容及び結合し得る置換基の範囲も同様となる。
【0069】
本発明で得られたシクロメタル化イリジウム錯体については、有機EL素子等の燐光材料として好適に用いることができる。
【0070】
(V)本発明に係る方法に好適な新規イリジウム化合物について
これまで説明したように、本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法では、一般式(1)で表されるイリジウム化合物と、一般式(2)で表される芳香族2座配位子とを反応させる方法であって、反応系に一般式(4)で表されるβ−ジケトナート塩を共存させている。ここで本発明者等は、本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造法に好適に用いることができる新規なイリジウム化合物を見出している。
【0071】
本発明者等による新規イリジウム化合物は、下記の一般式(15)で表されるイリジウム化合物である。
【0072】
【化11】
【0073】
本発明に係る上記一般式(15)のイリジウム化合物において、R、R、R、及び、Rは各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基である。そして、R又はRの少なくともいずれか一方がフッ素で置換されたアルキル基であり、かつ、R又はRの少なくともいずれか一方がフッ素で置換されたアルキル基であることを要する。
【0074】
本発明に係るイリジウム化合物は、一般式(1)で表されるイリジウム化合物に属する化合物であるが、R、R、R、及び、Rに炭素数が限定されたアルキル基を導入することとしている。そして、これらのアルキル基にフッ素を導入している。このようにするのは、電子吸引性基であるフッ素の導入により、イリジウム化合物のイリジウム−酸素結合が弱まり、反応性が向上するからである。そして、このイリジウム化合物を用いることで、所望のシクロメタル化イリジウム錯体を効率よく製造することができる。
【0075】
そして、本発明に係る上記一般式(15)のイリジウム化合物においては、RとRについて、いずれか一方がトリフルオロメチル基であり、他方がメチル基であり、かつ、RとRについて、いずれか一方がトリフルオロメチル基であり、他方がメチル基であるものが特に好ましい。
【0076】
以上説明したように、本発明に係る上記一般式(15)のイリジウム化合物は、シクロメタル化イリジウム錯体の製造のための原料として有用である。従って、本発明に係るシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法への適用にあたっては、一般式(15)のイリジウム化合物と芳香族複素環2座配位子とを反応させることができる。また、一般式(15)のイリジウム化合物とβ−ジケトナート塩との混合物からなる組成物をシクロメタル化イリジウム錯体の原料として用いることもできる。この混合物の混合比については、上記と同様の範囲が適用できる。
【発明の効果】
【0077】
本発明によれば、有機EL素子等の燐光材料として好適に用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を、高収率で製造することができ、かつ、高純度の錯体を製造できる。本発明は、従来のシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法に対して、反応系にβ−ジケトナート塩を添加させるだけの比較的簡易な方法であり、それでありながらシクロメタル化イリジウム錯体の製造効率を大きく向上させることができる。
【0078】
そして、本発明に係る新規なイリジウム化合物は、シクロメタル化イリジウム錯体の製造のための原料として有用である。この化合物を用いることで所望のシクロメタル化イリジウム錯体を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、複数種のイリジウム化合物と芳香族複素環2座配位子とを反応させてシクロメタル化イリジウム錯体を製造した。尚、本実施形態は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されない。本実施形態で使用・製造された化合物(Ir1〜Ir3:イリジウム化合物、L1〜L2:芳香族複素環2座配位子、T−1〜T−2:シクロメタル化イリジウム錯体、D−1〜D−2:副生成物(ハロゲン架橋イリジウムダイマー))について、それらの構造を化11に示す。尚、本実施形態で原料として使用したイリジウム化合物(Ir−1)〜(Ir−3)については、下記のように、3塩化イリジウム水和物と必要な置換基を有するβ−ジケトン配位子とを、炭酸水素ナトリウムを含む水溶液中で加熱反応させて製造した。
【0080】
【化12】
【0081】
[イリジウム化合物(Ir−1)の製造方法]
3塩化イリジウム三水和物37.1g(105mmol)と純水200mlを三口フラスコに入れて溶解し、続いて、1Mの炭酸水素ナトリウムを200ml添加し、更にアセチルアセトン20.5ml(200mmol)を添加して95℃10時間反応させた。反応後真空乾燥により乾固し、続いてメタノールを400ml添加し、8時間還流後、ろ過した。ろ液を濃縮し、冷メタノールを加えて、オレンジ色のイリジウム化合物(Ir−1)結晶13.0gを得た。単離収率は26.8%であった。
【0082】
[イリジウム化合物(Ir−2)の製造方法]
3塩化イリジウム三水和物40.6g(115mmol)と純水530mlを三口フラスコに入れて溶解し、続いて、5‐メチル−2、4−ヘキサンジオン45.7g(357mmol)を添加して95℃1時間反応させ、そこへ、炭酸水素カリウム47.5g(475mmol)を少量ずつ加え、pH8程度に調整した。更に、5時間加熱し反応させた。反応後一晩置いて上澄みの水層から、ヘキサンを用いて未反応の5‐メチル−2、4−ヘキサンジオンを抽出除去し、続いて酢酸エチルでイリジウム化合物(Ir−2)を抽出し、その抽出液を濃縮乾固することでオレンジ色のイリジウム化合物(Ir−2)の粗結晶12gを得た。粗結晶をカラム精製してオレンジ色のイリジウム化合物(Ir−2)結晶10.2gを得た。単離収率は16%であった。
【0083】
[イリジウム化合物(Ir−3)の製造方法]
3塩化イリジウム三水和物4.0g(11.0mmol)と純水43mlを三口フラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で攪拌し、続いてトリフルオロアセチルアセトン5.26g(34.11mmol)を加えて、アルゴン雰囲気下、1時間還流させた。さらに、炭酸水素カリウム4.52g(45.11mmol)を添加し、90℃5時間反応させた。反応後一晩置いて上澄みの水層から、クロロホルムを用いて未反応のトリフルオロアセチルアセトンを抽出除去し、続いて、酢酸エチルでイリジウム化合物(Ir−3)を抽出し、その抽出液を濃縮乾固することで褐色のイリジウム化合物(Ir−3)粗体を1.8g得た。粗体をカラム精製して橙色のイリジウム化合物(Ir−3)固体1.5gを得た。単離収率は20%であった。
【0084】
<実施例1> (T−1)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加える場合)
イリジウム化合物(Ir−1)を145.3mg(0.3mmol)、配位子(L−1)を279.0mg(1.8mmol)、β−ジケトナート塩としてナトリウムアセチルアセトナート水和物を91.6mg(0.75mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、所望のイリジウム錯体(T−1)であり、収率は80%であった。
【0085】
<比較例1> (T−1)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加えない場合)
イリジウム化合物(Ir−1)を145.3mg(0.3mmol)、配位子(L−1)を279.0mg(1.8mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、(T−1)と(D−1)の混合物であった。(T−1)と(D−1)の収率は、H−NMRの積分値から、それぞれ71%と22%と算出された。
【0086】
<実施例2> (T−1)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加える場合)
イリジウム化合物(Ir−2)を167.0mg(0.3mmol)、配位子(L−1)を162.7mg(1.05mmol)、β−ジケトナート塩としてナトリウムアセチルアセトナート水和物を44.0mg(0.36mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、所望のイリジウム錯体(T−1)であり、収率は87%であった。
【0087】
<比較例2> (T−1)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加えない場合)
イリジウム化合物(Ir−2)を167.0mg(0.3mmol)、配位子(L−1)を162.7mg(1.05mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、(T−1)と(D−1)の混合物であった。(T−1)と(D−1)の収率は、H−NMRの積分値から、それぞれ22%と73%と算出された。
【0088】
<実施例3> (T−2)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加える場合)
イリジウム化合物(Ir−2)を167.0mg(0.3mmol)、配位子(L−2)を472.2mg(1.8mmol)、β−ジケトナート塩としてナトリウムアセチルアセトナート水和物を366.3mg(3.0mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、所望のイリジウム錯体(T−2)であり、収率は63%であった。
【0089】
<比較例3> (T−2)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加えない場合)
イリジウム化合物(Ir−2)を167.0mg(0.3mmol)、配位子(L−2)を472.2mg(1.8mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、(T−2)と(D−2)の混合物であった。(T−2)と(D−2)の収率は、H−NMRの積分値から、それぞれ27%と20%と算出された。
【0090】
<実施例4> (T−2)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加える場合)
イリジウム化合物(Ir−1)を145.3mg(0.3mmol)、配位子(L−2)を472.2mg(1.8mmol)、β−ジケトナート塩としてナトリウムアセチルアセトナート水和物を183.2mg(1.5mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、所望のイリジウム錯体(T−2)であり、収率は52%であった。
【0091】
<比較例4> (T−2)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加えない場合)
イリジウム化合物(Ir−1)を145.3mg(0.3mmol)、配位子(L−2)を472.2mg(1.8mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で17時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、(T−2)と(D−2)の混合物であった。(T−2)と(D−2)の収率は、H−NMRの積分値から、それぞれ13%ずつと算出された。
【0092】
<実施例5> (T−2)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加える場合)
イリジウム化合物(Ir−3)を182.5mg(0.3mmol)、配位子(L−2)を472.2mg(1.8mmol)、β−ジケトナート塩としてナトリウムアセチルアセトナート水和物を366.3mg(3.0mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、180℃で34時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、所望のイリジウム錯体(T−2)であり、収率は68%であった。
【0093】
<実施例6> (T−2)の合成(反応系にβ−ジケトナート塩を加える場合)
イリジウム化合物(Ir−2)を167.0mg(0.3mmol)、配位子(L−2)を472.2mg(1.8mmol)、β−ジケトナート塩としてナトリウムアセチルアセトナート水和物を366.3mg(3.0mmol)、及び、エチレングリコール2.5mlを三口フラスコへ入れ、アルゴン雰囲気下、160℃で34時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出してきた黄色固体をメタノールで洗浄した。H−NMRの分析結果から、析出してきた黄色固体は、所望のイリジウム錯体(T−2)であり、収率は60%であった。
【0094】
以上の実験結果から、反応系にβ−ジケトナート塩を加える本発明の製造方法の実施例1〜実施例6では、所望とするトリスシクロメタル化イリジウム錯体のみが得られる。一方、反応系にβ−ジケトナート塩を加えない従来の製造方法では、目的物であるトリスシクロメタル化イリジウム錯体に副生成物が混入し、所望のシクロメタル化イリジウム錯体の収率や純度が大きく低下することが明らかになった。
【0095】
また、実施例3〜実施例5では、いずれも、シクロメタル化イリジウム錯体として(T−2)を製造している。これらにおいて適用したイリジウム化合物を収率の高い順番で並べると、(Ir−3)、(Ir−2)、(Ir−1)となる。この結果から、一般式(1)中のR又はRの少なくともいずれか一方がフッ素で置換されたアルキル基であり、かつ、R又はRの少なくともいずれか一方がフッ素で置換されたアルキル基であることにより、所望とするシクロメタル化イリジウム錯体(T−2)の収率が68%へと大きく向上したことがわかる。これは、イリジウム化合物に電子吸引性基であるフッ素原子を導入することにより、イリジウム化合物(Ir−3)のイリジウムと配位子の結合が弱まり、配位子(L−2)と反応しやすくなったためである。
【0096】
以上の通り、本発明の製造方法を用いると、高価な有機配位子の使用量を低減でき、また、高純度のシクロメタル化イリジウム錯体が得られることから、精製や製造に係るコストも大きく低下できる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、有機EL素子等の燐光材料であるシクロメタル化イリジウム錯体を収率良く、かつ、純度良く製造することができる。更に、本発明の方法で製造したシクロメタル化イリジウム錯体を用いることで、高効率の有機EL素子等を製造することが可能になる。本発明は、有機電解発光(EL)素子、有機電気化学発光(ECL)素子、発光センサー、光増感色素、光触媒、発光プローブ、各種光源等に使用される燐光材料として用いられるシクロメタル化イリジウム錯体を製造方法として極めて有用である。