比が16以上50以下であることCHA型ゼオライト。このようなCHA型ゼオライトは、シリカ源、アルミナ源、ホスホニウムカチオン源及びアンモニウムカチオン源を含む組成物を結晶化する結晶化工程、を有する製造方法により得ることが好ましい。
シリカ源、アルミナ源、ホスホニウムカチオン源及びアンモニウムカチオン源を含む組成物を結晶化する結晶化工程、を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載のCHA型ゼオライトの製造方法。
上記ホスホニウムカチオン源が、テトラエチルホスホニウム水酸化物、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムクロライド及びテトラエチルホスホニウムヨージドからなる群の少なくとも1種である請求項7に記載の製造方法。
上記アンモニウムカチオン源が、トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム水酸化物、トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムブロミド、トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムクロライド及びトリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヨージドからなる群の少なくとも1種である請求項7又は8に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のチャバザイト(CHA)型ゼオライトについて詳細に説明する。
本発明のCHA型ゼオライトは、CHA構造を有する。CHA構造は、国際ゼオライト学会で定義される構造コードでCHA構造となる結晶構造である。
また、本発明のCHA型ゼオライトは、CHA構造を有する結晶性アルミノシリケートである。結晶性アルミノシリケートは、骨格金属(以下、「T原子」ともいう。)がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)であり、これら骨格金属と酸素(O)のネットワークからなる骨格構造を有する。したがって、CHA構造を有し、なおかつ、そのT原子にリン(P)を含むネットワークからなる骨格構造を有するアルミノフォスフェートやシリコアルミノホスフェートなどのゼオライト類縁物質と、本発明のCHA型ゼオライトとは異なる。
【0011】
本発明のCHA型ゼオライトは、リンを含有する。これにより、骨格アルミニウムの熱安定性が向上し、本発明のCHA型ゼオライトの耐熱性が高くなる。これに加え、ゼオライト酸点がリンで修飾され、特定の触媒反応に適した酸強度が得られる。リンは、CHA型ゼオライトの骨格以外、すなわち、T原子以外として含有される。例えば、リンはCHA型ゼオライトの細孔内に含有されており、特に酸素8員環細孔内に含有されていることが好ましい。上記のとおり、本発明のCHA型ゼオライトにおけるT原子とは、その骨格に含まれる金属、即ち、Si及びAlである。
本発明のCHA型ゼオライトに含有されるリンの状態は、リン酸イオン又はリン化合物のなくともいずれかであることが挙げられる。
【0012】
本発明のCHA型ゼオライトにおける、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO
2/Al
2O
3比」ともいう。)は16以上であり、18以上、更には20以上であることが好ましい。SiO
2/Al
2O
3比が16未満では、本発明のCHA型ゼオライトの触媒等の用途における実用的な耐熱性を有さない。一方、SiO
2/Al
2O
3比が100以下、更には50以下、また更には35以下であれば、本発明のCHA型ゼオライトが触媒として十分な量の酸点を有する。特に好ましいSiO
2/Al
2O
3比として、18以上30以下、更には20以上28以下を挙げることができる。
なお、本発明のCHA型ゼオライトの組成はICP法により測定することができる。
【0013】
本発明のCHA型ゼオライトは、リンを細孔内に含むものが好ましい。すなわち、本発明のCHA型ゼオライトは、酸点、即ち、T原子であるAlの近傍にリンを含有することが好ましい。これにより、アルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び窒素酸化物還元触媒などの各種の触媒又は、各種触媒の基材として使用することができる。
【0014】
本発明のCHA型ゼオライトのT原子に対するリンのモル比(以下、「P/T比」ともいう。)は0.06以下、更には0.05以下、また更には0.04以下である。0.06を超えるとCHA型ゼオライトの細孔がリンによって閉塞される。そのため、細孔を触媒反応等に有効に使うことができない。P/T比は0.0005以上、更には0.001以上であればよい。P/T比が0.001以上であることでCHA型ゼオライトの耐熱性が高くなる。特に好ましいP/T比として0.005以上0.05以下、更には0.008以上0.02以下を挙げることができる。
【0015】
本発明のCHA型ゼオライトは、T原子としてのAlに対するリンのモル比(以下、「P/Al比」ともいう。)が0.55未満、更には0.5以下であることが好ましい。P/Alが0.55未満であれば、触媒として必要とされる酸点を有し、なおかつ、触媒用途として実用的な耐熱性を有するCHA型ゼオライトとなる。また、T原子としてのAlは酸点として機能する。P/Al比は0.01以上、更には0.02以上であれば、触媒活性を示す酸点としてのAlが多いCHA型ゼオライトとなる。触媒特性及び耐熱性の観点から、P/Al比は0.05以上0.5以下、更には0.1以上0.2以下であることが特に好ましい。
【0016】
なお、本発明のCHA型ゼオライトは、フッ素(F)を実質的に含んでいないこと、すなわちフッ素含有量が0ppmであることが好ましい。一般的に、ゼオライトに含まれるフッ素は、原料に由来する。原料にフッ素を含む化合物を使用して得られたゼオライトは、その製造コストが高くなりやすい。
ランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法など、通常の組成分析法により得られる測定値の測定限界を考慮すると、本発明のCHA型ゼオライトのフッ素含有量は100ppm以下、更には50ppm以下であればよい。
【0017】
本発明のCHA型ゼオライトは、結晶粒径が4μm以下、更には3μm以下、また更には2μm以下であることが好ましい。結晶粒径が4μm以下であることで、反応性が改善されるため、触媒性能が向上する。
なお、本発明において結晶粒径は走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)観察により確認することができる。すなわち、本発明のCHA型ゼオライトの結晶粒子は、略立方体形状又は略立方体の双晶形状の少なくともいずれかの形状を有する。結晶粒径は、これら結晶粒子の辺の長さを観察することで確認できる。
【0018】
本発明のCHA型ゼオライトは、銅又は鉄の少なくともいずれか、更には銅を含有していてもよい。銅又は鉄の少なくともいずれかを含有するCHA型ゼオライトは、窒素酸化物還元特性を有する触媒として使用することができる。本発明のCHA型ゼオライトは、特に高温高湿雰囲気に晒された後において、200℃以下、更には150℃以下の低温でSCR触媒として、高い窒素酸化物還元率を示す。
ここで、高温高湿雰囲気として、900℃で、10体積%のH
2Oを含む空気を300mL/分で流通させた雰囲気を挙げることができる。当該雰囲気に晒される時間が長くなることで、ゼオライトへの熱負荷が大きくなる。一般的には高温高湿下に晒される時間が長くなるほど、脱アルミニウムをはじめとする、ゼオライトの結晶性の低下が生じやすくなる。
【0019】
次に、本発明のCHA型ゼオライトの製造方法について説明する。
本発明のCHA型ゼオライトは、シリカ源、アルミナ源、ホスホニウムカチオン源、及びアンモニウムカチオン源を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する結晶化工程、を有する製造方法により得られる。
【0020】
結晶化工程では、ホスホニウムカチオン源を含有する原料組成物を結晶化する。ホスホニウムカチオンは、構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)としての機能を有するだけでなく、リンの供給源となる。CHA型ゼオライトを結晶化すると同時にリンを含有させることができる。これにより、結晶化工程の後にリンを修飾するための後処理工程を必須とすることがない。
【0021】
ホスホニウムカチオン源は、ホスホニウムカチオンを含む化合物、更にはホスホニウムカチオンの硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及び水酸化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。ホスホニウムカチオンは、テトラエチルホスホニウムカチオン(以下、「TEP」ともいう。)又はテトラメチルホスホニウムカチオンの少なくともいずれか、更にはTEPであることが好ましい。
特に好ましいホスホニウムカチオン源として、テトラエチルホスホニウム水酸化物(以下、「TEPOH」ともいう。)、テトラエチルホスホニウムブロミド(以下、「TEPBr」ともいう。)、テトラエチルホスホニウムクロライド(以下、「TEPCl」ともいう。)、及びテトラエチルホスホニウムヨージド(以下、「TEPI」ともいう。)からなる群の少なくとも1種、更にはTEPOHを挙げることができる。
【0022】
原料組成物は、アンモニウムカチオン源を含有する。原料組成物がアンモニウムカチオン源を含有することで、SiO
2/Al
2O
3比の高いCHA型ゼオライトが得られる。これに加え、ホスホニウムカチオン源とアンモニウムカチオン源との割合を調整することで、CHA型ゼオライトに含まれるリンの量を調整することができる。アンモニウムカチオン源としては、アンモニウムカチオンを含む化合物、更にはアンモニウムカチオンの硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及び水酸化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。アンモニウムカチオンは、トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム(以下、「TMAda」ともいう。)、コリン及びトリメチルベンジルアンモニウムからなる群の少なくとも1種、更にはTMAdaを挙げることができる。
【0023】
特に好ましいアンモニウムカチオン源として、トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム水酸化物(以下、「TMAdaOH」ともいう。)、トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムブロミド(以下、「TMAdaBr」ともいう。)、トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムクロライド(以下、「TMAdaCl」ともいう。)、及びトリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヨージド(以下、「TMAdaI」ともいう。)からなる群の少なくとも1種、更にはTMAdaOHを挙げることができる。
【0024】
原料組成物に含まれるシリカ源及びアルミナ源は、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)であることが好ましい。結晶性アルミノシリケートは、規則性がある結晶構造をしている。構造指向剤の存在下で結晶性アルミシリケートを処理すると、結晶構造の規則性が適度に維持されながら結晶化が進行すると考えられる。そのため、シリカ源とアルミナ源が個別の化合物である場合、若しくはシリカ源及びアルミナ源が非結晶性の化合物である場合と比べ、シリカ源及びアルミナ源が結晶性アルミノシリケートであることで、CHA型ゼオライトがより効率よく結晶化する。
【0025】
単一相のCHA型ゼオライトを得られやすくなるため、結晶性アルミノシリケートはFAU型ゼオライト、更にはX型ゼオライト又はY型ゼオライトの少なくともいずれか、また更にはY型ゼオライトであることが好ましい。
結晶性アルミノシリケートのSiO
2/Al
2O
3比として1.25以上、更には10以上、更には20以上が挙げられる。一方、SiO
2/Al
2O
3比は100以下、更には50以下であればよい。好ましい結晶性アルミノシリケートのSiO
2/Al
2O
3比として18以上40以下、更には20以上40以下を挙げることができる。
【0026】
原料組成物が含有する結晶性アルミノシリケートのカチオンタイプは任意である。カチオンタイプとして、ナトリウム型(Na型)、プロトン型(H
+型)及びアンモニウム型(NH
4型)からなる群の少なくとも1種、更にはプロトン型であることが好ましい。
【0027】
原料組成物は、結晶性アルミノシリケート以外のシリカ源又はアルミナ源を含有しなくてもよい。CHA型ゼオライトの結晶化の効率化の観点から、原料組成物は非晶質のシリカ源及びアルミナ源を含んでいないことが好ましく、シリカ源及びアルミナ源は結晶性アルミノシリケートのみであることがより好ましい。
【0028】
原料組成物は、シリカ源、アルミナ源、ホスホニウムカチオン源及びアンモニウムカチオン源に加え、アルカリ源、及び水を含んでいてもよい。
アルカリ源は、アルカリ金属を含む水酸化物を挙げることができる。より具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群からなる少なくとも1種を含む水酸化物であり、更にはナトリウム又はカリウムの少なくともいずれかを含む水酸化物であり、また更にはナトリウムを含む水酸化物である。また、シリカ源及びアルミナ源がアルカリ金属を含む場合、当該アルカリ金属もアルカリ源とすることができる。
水は純水を使用してもよいが、各原料を水溶液として使用してもよい。
【0029】
原料組成物のアルミナに対するシリカのモル比(SiO
2/Al
2O
3比)は18以上、更には20以上であればよい。一方、SiO
2/Al
2O
3比は100以下、更には50以下であればよい。好ましいSiO
2/Al
2O
3比として18以上40以下、更には20以上40以下を挙げることができる。
【0030】
原料組成物のシリカに対するホスホニウムカチオンのモル比(以下、「P−SDA/SiO
2比」ともいう。)は0.01以上、更には0.05以上であることが好ましい。P−SDA/SiO
2比が0.01以上で得られるCHA型ゼオライト中にリンが含まれやすくなる。P−SDA/SiO
2比は0.5以下、更には0.3以下であれば、リン含有による耐熱性向上の効果が得られやすくなる。
【0031】
原料組成物のシリカに対するアンモニウムカチオンのモル比(以下、「N−SDA/SiO
2比」ともいう。)は0.01以上、更には0.02以上である。一方、N−SDA/SiO
2比は0.5以下、更には0.3以下であれば、単一相でCHA型ゼオライトが得られる。
【0032】
原料組成物はホスホニウムカチオン及びアンモニウムカチオンを含む。そのため、原料組成物のシリカに対する、ホスホニウムカチオン及びアンモウムカチオンのモル比(以下、「SDA/SiO
2比」ともいう。)は0を超える。さらに、SDA/SiO
2比は0.15以上、更には0.21以上であることが好ましい。しかしながら、ホスホニウムカチオン及びアンモウムカチオンが多くなりすぎると、CHA型ゼオライトの製造コストが高くなる。そのため、SDA/SiO
2比は0.6以下、更には0.4以下であることが好ましい。
【0033】
原料組成物のホスホニウムカチオン及びアンモニウムカチオンの割合は、目的とするCHA型ゼオライトのリン含有量により任意の割合とすることができる。ホスホニウムカチオン及びアンモにオウムカチオンの合計に対するアンモニウムカチオンのモル比(以下、「N−SDA/SDA比」ともいう。)は0を超え1未満であればよい。本発明の製造方法においては、N−SDA/SDA比が0.01以上0.9以下、更には0.05以上0.9以下であることが挙げられる。高温高湿雰囲気に晒された後の触媒活性が特に高いCHA型ゼオライトを得るため、N−SDA/SDA比は0.1以上0.4以下を挙げることができる。
【0034】
原料組成物のシリカに対するアルカリ金属のモル比(以下、「アルカリ/SiO
2比」ともいう。)は0.3以下であることが好ましい。アルカリ/SiO
2比が0.3以下であることで、高いSiO
2/Al
2O
3比を有するCHA型ゼオライトが得られやすくなる。より高いSiO
2/Al
2O
3比のCHA型ゼオライトを得るため、アルカリ/SiO
2比は0.2以下、更には0.15以下であることが好ましい。
【0035】
シリカに対するOHのモル比(以下、「OH/SiO
2比」ともいう。)は0.5以下である。OH/SiO
2比が0.5以下であることで、より高い収率でCHA型ゼオライトを得ることができる。原料組成物のOH/SiO
2比は、0.1以上、更には0.26以上であればよい。
【0036】
シリカに対する水(H
2O)のモル比(以下、「H
2O/SiO
2比」ともいう。)は20以下、更には15以下であれば、より効率よくCHA型ゼオライトが得られる。適度な流動性を有する原料組成物とするため、H
2O/SiO
2比は3以上、更には5以上であればよい。
【0037】
特に好ましい原料組成物の組成として以下のものを挙げることができる。
SiO
2/Al
2O
3比 =18以上、50以下
アルカリ/SiO
2比 =0.01以上、0.3以下
P−SDA/SiO
2比 =0.01以上、0.5以下
N−SDA/SiO
2比 =0.01以上、0.5以下
N−SDA/SDA比= =0.01以上、0.9以下
OH/SiO
2比 =0.1以上、0.5以下
H
2O/SiO
2比 =3以上、20以下
【0038】
なお、原料組成物にフッ素を含む化合物が含まれると、製造コストが高くなりやすい。そのため、原料組成物はフッ素(F)を実質的に含んでいないことが好ましい。
なお、本発明の原料組成物の組成は、ICP法により測定することができる。
【0039】
結晶化工程では、上記の各原料を含む原料組成物を水熱合成することにより、これを結晶化処理する。結晶化処理は、原料組成物を密閉容器に充填し、これを加熱すればよい。
結晶化温度は80℃以上であれば、原料組成物の結晶化が結晶化する。温度が高いほど、結晶化が促進される。そのため、結晶化温度は100℃以上、更には120℃以上であることが好ましい。原料組成物が結晶化すれば、必要以上に結晶化温度を高くする必要はない。そのため、結晶化温度は200℃以下、更には160℃以下、また更には150℃以下であればよい。また、結晶化は原料組成物を攪拌した状態、又は静置した状態のいずれの状態で行うことができる。
【0040】
本発明の製造方法は、ホスホニウムカチオンを有する原料組成物からCHA型ゼオライトを結晶化させる製造方法であるにもかかわらず、従来のCHA型ゼオライトの工業的な製造方法と同等の高い収率を示す。本発明の製造方法の収率として、例えば、70%以上、更には80%以上を挙げることができる。
【0041】
なお、本発明において、収率は以下の式から求めればよい。
収率(%) =(W
CHA/W
raw)×100
上記式において、W
CHAは得られたCHA型ゼオライトの乾燥重量(g)及び、W
rawは原料組成物中のSiをSiO
2として換算した重量と、AlをAl
2O
3として換算した重量との合計重量(g)である。
W
CHAは、得られたCHA型ゼオライトを大気中、50℃以上90℃以下、6時間以上24時間以下で乾燥し、その重量を求めることができる。また、W
rawは、ICP等により原料組成物中のSi及びAlを求め、これをそれぞれ換算して求めることができる。
本発明の製造方法では、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程及びイオン交換工程の少なくともいずれか(以下、「後処理工程」とする。)を含んでいてもよい。
【0042】
洗浄工程は、結晶化後のCHA型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるCHA型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0043】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後のCHA型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後のCHA型ゼオライトを、大気中、50℃以上、150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0044】
結晶化後のCHA型ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、これをアンモニウムイオン(NH
4+)や、プロトン(H
+)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換は、CHA型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換は、CHA型ゼオライトをアンモニアでイオン交換した後、これを焼成することが挙げられる。
【0045】
本発明のCHA型ゼオライトに銅(Cu)又は鉄(Fe)を含有させる場合、銅又は鉄の少なくともいずれかを含む化合物(以下、「銅化合物等」ともいう。)と本発明のCHA型ゼオライトとを接触させる金属含有工程、を有する製造方法により得ることができる。
金属含有工程は、CHA型ゼオライトのイオン交換サイト又は細孔の少なくともいずれかに銅又は鉄の少なくともいずれかが含有される方法であればよい。具体的な方法として、イオン交換法、蒸発乾固法及び含浸担持法からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、含浸担持法、更には遷移金属化合物を含む水溶液とCHA型ゼオライトとを混合する方法であることが好ましい。
銅化合物等は、銅又は鉄の少なくともいずれかを含む無機酸塩、更には銅又は鉄の少なくともいずれかを含む硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩及び塩化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0046】
金属含有工程の後、洗浄工程、乾燥工程、又は活性化工程の少なくともいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
洗浄工程は、不純物等が除去されれば、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、金属含有工程後のCHA型ゼオライトを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
乾燥工程は水分を除去すればよく、大気中で、100℃以上、200℃以下で処理することが例示できる。
活性化工程は有機物を除去する。金属含有CHA型ゼオライトを、大気中、200℃を超え、600℃以下で処理することが例示できる。
【0047】
銅又は鉄の少なくともいずれか、更には銅を含有するCHA型ゼオライトは、例えば、アルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び排気ガスからの窒素酸化物還元触媒として使用することできる。特に、窒素酸化物還元触媒として使用することが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「比」は特に断らない限り、「モル比」である。
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:Mini Flex、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定範囲は2θとして5°から50°の範囲で測定した。
得られたXRDパターンと、非特許文献1のFig.1(f)に記載のXRDパターンとを比較することで、試料の構造を同定した。
【0049】
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定した。
得られたSi、Al及びPの測定値から、試料のSiO
2/Al
2O
3比、P/Al比を求めた。
【0050】
(収率)
CHA型ゼオライトの収率は、以下の式から求めればよい。
収率(%) =(W
CHA/W
raw)×100
W
CHAは、得られたCHA型ゼオライトを大気中、70℃×12時間で乾燥し、その重量を測定した。また、W
rawは、原料組成物に含まれるシリカ源及びアルミナ源であるFAU型ゼオライトの重量である。
【0051】
実施例1
純水、水酸化ナトリウム、FAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:プロトン型、SiO
2/Al
2O
3比=32)及び25%TMAdaOH水溶液を、40%TEPOH水溶液に添加し、これを混合して以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0.05
TMAda/SiO
2比 =0.25
N−SDA/SDA比 =0.83
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、この容器を10rpmで回転させた状態で150℃、7日間の条件で原料組成物を結晶化させた。結晶化後の原料組成物を固液分離し、純水で洗浄した後、70℃で乾燥して本実施例のゼオライトを得た。当該ゼオライトは、CHA構造の単一相からなるCHA型ゼオライトであり、なおかつ、SiO
2/Al
2O
3比=24、P/Al比=0.02、及びP/T比=0.015であった。また、収率は90%であった。
原料組成物の主な組成及び本実施例のCHA型ゼオライトの評価結果を表1に示した。また、本実施例のCHA型ゼオライトのXRDパターンを
図1に、SEM写真を
図2に示した。
図2より、本実施例のCHA型ゼオライトの一次粒子は1μm以下であることが確認できた。
【0052】
実施例2
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0.1
TMAda/SiO
2比 =0.2
N−SDA/SDA比 =0.67
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
当該ゼオライトは、CHA構造の単一相からなるCHA型ゼオライトであった。組成は、SiO
2/Al
2O
3比=22、P/Al比=0.05、P/T比=0.042であった。また、収率は90%であった。
原料組成物の主な組成及び本実施例のCHA型ゼオライトの評価結果を表1に示した。
【0053】
実施例3
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0.15
TMAda/SiO
2比 =0.15
N−SDA/SDA比 =0.50
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
当該ゼオライトは、CHA構造の単一相からなるCHA型ゼオライトであった。組成は、SiO
2/Al
2O
3比=22、P/Al比=0.06、P/T比=0.005であった。また、収率は90%であった。
原料組成物の主な組成及び本実施例のCHA型ゼオライトの評価結果を表1に示した。
【0054】
実施例4
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0.2
TMAda/SiO
2比 =0.1
N−SDA/SDA比 =0.33
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
当該ゼオライトは、CHA構造の単一相からなるCHA型ゼオライトであった。組成は、SiO
2/Al
2O
3比=22、P/Al比=0.12、P/T比=0.010であった。また、収率は90%であった。
原料組成物の主な組成及び本実施例のCHA型ゼオライトの評価結果を表1に示した
【0055】
実施例5
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0.25
TMAda/SiO
2比 =0.05
N−SDA/SDA比 =0.17
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
当該ゼオライトは、CHA構造の単一相からなるCHA型ゼオライトであった。組成は、SiO
2/Al
2O
3比=22、P/Al比=0.19、P/T比=0.016であった。また、収率は85%であった。
原料組成物の主な組成及び本実施例のCHA型ゼオライトの評価結果を表1に示した。
また、本実施例のCHA型ゼオライトのSEM写真を
図3に示した。
図3より、本実施例のCHA型ゼオライトの一次粒子は1μm以下であることが確認できた。
【0056】
実施例6
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0.27
TMAda/SiO
2比 =0.03
N−SDA/SDA比 =0.1
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
当該ゼオライトは、CHA構造の単一相からなるCHA型ゼオライトであった。組成は、SiO
2/Al
2O
3比=22、P/Al比=0.47、P/T比=0.038であった。また、収率は90%であった。
原料組成物の主な組成及び本実施例のCHA型ゼオライトの評価結果を表1に示した。
【0057】
比較例1
従来のCHA型ゼオライトの合成として、原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0
TMAda/SiO
2比 =0.3
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
当該ゼオライトは、CHA構造の単一相からなるCHA型ゼオライトであった。組成は、SiO
2/Al
2O
3比=24、P/Al比=0、P/T比=0であった。また、収率は100%であった。
原料組成物の主な組成及び本比較例のCHA型ゼオライトの評価結果を表1に示した。
【0058】
比較例2
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0.15
TMAda/SiO
2比 =0
OH/SiO
2比 =0.25
H
2O/SiO
2比 =5
当該ゼオライトは、AEI型ゼオライトとMFI型ゼオライトの混合物であった。本比較例より、TEPが少ない場合、CHA型ゼオライトが得られないことが確認できた。
【0059】
比較例3
非特許文献4を参照し、リンを含有するCHA型ゼオライトを製造した。すなわち、原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.4
TEP/SiO
2比 =0.2
TMAda/SiO
2比 =0
OH/SiO
2比 =0.6
H
2O/SiO
2比 =5
当該ゼオライトは、CHA構造の単一相からなるCHA型ゼオライトであった。組成は、SiO
2/Al
2O
3比=13、P/Al比=0.55、P/T比=0.071であった。また、収率は50%であった。これより、非特許文献4で開示された製造方法では、得られるCHA型ゼオライトのSiO
2/Al
2O
3比が低くなる傾向があり、また、本発明の製造方法と比べ、収率が著しく低くなることが確認できた。
なお、本比較例のCHA型ゼオライトのSiO
2/Al
2O
3比をEDX(装置名:S−4800、日立製作所製)によって測定したところ、SiO
2/Al
2O
3比は15.6であった。
【0060】
【表1】
【0061】
表1より、いずれの実施例においてもリンを含有するCHA型ゼオライトが得られることが確認できた。また、TEP量を変化させることでCHA型ゼオライトのリンを容易に制御することができ、更には、P/T比が0.04以下、更には0.02以下、また更には0.01以下である、リン含有量が少ないCHA型ゼオライトが製造できることが確認できた。さらに、実施例1と比較例1より、本発明ではTEPを含む製造方法であるにもかかわらず、従来のリンを含まないCHA型ゼオライトの製造方法に匹敵する高い収率を有することが確認できた。
また、比較例2及び3より、SDAがTEPのみであると、SiO
2/Al
2O
3比の低いCHA型ゼオライトしか製造できず、また、リン含有量が低いCHA型ゼオライトが得られないことが分かった。
【0062】
測定例1
実施例5のCHA型ゼオライト、及び、比較例1のCHA型ゼオライトを、それぞれ、空気中600℃で6時間焼成してSDAを除いた後、塩化アンモニウム水溶液でイオン交換してアンモニア型とした。その後空気中550℃で1時間焼成してプロトン型のCHA型ゼオライトとした。
得られたプロトン型のCHA型ゼオライトを空気中1,050℃で1時間焼成し、焼成後の粉末X線回折測定を行った。結果を
図4に示す。
図4中、a)は実施例5のXRDパターンで、b)は比較例1のXRDパターンである。
図4より、実施例5のCHA型ゼオライトは、1,050℃の熱処理後であってもCHA構造を維持していることが確認できた。一方、比較例1のCHA型ゼオライトは1,050℃の焼成でCHA型構造が崩壊していることが確認できた。このように、リンを含む本発明のCHA型ゼオライトは900℃を超える温度による熱処理後であっても結晶構造が崩壊することがなく、耐熱性が高いことが確認できた。
【0063】
実施例7
実施例3のCHA型ゼオライトを、大気中、600℃で10時間焼成した後、塩化アンモニウム水溶液を用いてイオン交換して、NH
4型のゼオライトとした。NH
4型ゼオライト1.3gに硝酸銅水溶液を添加し、これを乳鉢で混合した。なお、硝酸銅水溶液は硝酸銅3水和物60mgを純水0.5gに溶解して硝酸銅水溶液を調製したものを使用した。
混合後の試料を110℃で一晩乾燥した後、空気中、550℃で1時間焼成し、これを本実施例の銅含有CHA型ゼオライトとした。評価結果を表2に示す。
【0064】
実施例8
実施例5のCHA型ゼオライトを使用したこと以外は、実施例7と同様な方法で本比較例の銅含有CHA型ゼオライトを得た。評価結果を表2に示す。
【0065】
実施例9
実施例6のCHA型ゼオライトを使用したこと以外は、実施例7と同様な方法で本比較例の銅含有CHA型ゼオライトを得た。評価結果を表2に示す。
【0066】
比較例4
比較例1のCHA型ゼオライトを使用したこと以外は、実施例7と同様な方法で本比較例の銅含有CHA型ゼオライトを得た。評価結果を表2に示す。
【0067】
比較例5
純水、水酸化ナトリウム、及びFAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:プロトン型、SiO
2/Al
2O
3比=23)を40%TEPOH水溶液に添加し、これを混合して以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =23
Na/SiO
2比 =0.1
TEP/SiO
2比 =0.2
N−SDA/SDA比 =0
OH/SiO
2比 =0.3
H
2O/SiO
2比 =5
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、この容器を静置した状態で150℃、7日間の条件で原料組成物を結晶化させた。結晶化後の原料組成物を固液分離し、純水で洗浄した後、70℃で乾燥して本実施例のゼオライトを得た。当該ゼオライトは、AEI構造の単一相からなるAEI型ゼオライトであった。
得られたAEI型ゼオライトをプレス成形後、凝集径12メッシュ〜20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子3gを常圧固定床流通式反応管に充填し、水素5容量%、窒素95容量%のガスを500mL/分流通下、750℃で1時間熱処理してリン量を調整した。熱処理後、空気雰囲気、600℃で2時間焼成してSDAを除去した。焼成後のAEI型ゼオライトを20%塩化アンモニウムで処理した後、大気中110℃で1晩乾燥した。これにより、NH
4型のAEI型ゼオライトとした。
得られたNH
4型AEI型ゼオライト2gに硝酸銅水溶液を添加し、これを乳鉢で混合した。なお、硝酸銅水溶液は硝酸銅3水和物139mgを純水0.5gに溶解して硝酸銅水溶液を調製したものを使用した。
混合後の試料を110℃で一晩乾燥した後、空気中、550℃で1時間焼成し、これを本比較例のAEI型ゼオライトとした。評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
測定例2
実施例8乃至9及び比較例4の銅含有CHA型ゼオライトを、それぞれ8時間の水熱耐久処理を施した。水熱耐久処理前後の窒素酸化物還元特性の評価結果を表3に示す。
【0070】
ここで、本発明のCHA型ゼオライトに銅を含有させ、選択還元触媒としての窒素酸化物還元特性を評価した際の処理条件及び評価条件は、以下のとおりである(測定例3も同様)。
(水熱耐久処理)
試料をプレス成形後、凝集径12メッシュ〜20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管に充填し、これに10体積%のH
2Oを含む空気を300mL/分で流通させて水熱耐久処理を行った。水熱耐久処理は、900℃で行った。
【0071】
(窒素酸化物還元率の測定)
試料の窒素酸化物還元率は、以下に示すアンモニアSCR方法により測定した。
すなわち、試料をプレス成形した後、凝集径12〜20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子体を1.5mL量りとり、これを反応管に充填した。その後、150℃、200℃、300℃、400℃及び500℃のいずれかの温度で、窒素酸化物を含む以下の組成からなる処理ガスを当該反応管に流通させた。処理ガスの流量は1.5L/分、及び空間速度(SV)は60,000h
−1として測定を行った。
<処理ガス組成>
NO :200ppm
NH
3 :200ppm
O
2 :10容量%
H
2O :3容量%
残部 :N
2
反応管に流通させた処理ガス中の窒素酸化物濃度(200ppm)に対する、触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)を求め、以下の式に従って、窒素酸化物還元率を求めた。
窒素酸化物還元率(%)={1−(接触後の処理ガス中の窒素酸化物濃度/接触前の処理ガス中の窒素酸化物濃度)}×100
【0072】
【表3】
【0073】
表3より、水熱耐久処理前の200℃以上の窒素酸化物還元率は比較例が実施例と同等であった。これより、本実施例のCHA型ゼオライトは、従来のCHA型ゼオライトと同程度の初期活性を有することが確認できた。しかしながら、実施例のCHA型ゼオライトは、比較例のCHA型ゼオライトよりもSiO
2/Al
2O
3比が低いにもかかわらず、いずれの温度における水熱耐久処理後の窒素酸化物還元率も、比較例よりも高くなり、低温、特に150℃以下における窒素酸化物還元率が顕著に高くなった。これより、本発明のCHA型ゼオライトは、耐熱性が高く、高温高湿下に晒された後でも高い窒素酸化物還元特性を示す触媒となることが確認できた。
【0074】
測定例3
実施例7乃至9の銅含有CHA型ゼオライトを、それぞれ4時間の水熱耐久処理を施した。水熱耐久処理後の窒素酸化物還元特性の評価結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
触媒活性を示す銅の含有量は、実施例7及び9と比べ、実施例8が少ない。しかしながら、表4より、実施例8の窒素酸化物還元率はいずれの温度でも高くなり、より低温において窒素酸化物還元率が高くなることが確認できた。
【0077】
測定例4
実施例8及び比較例5の銅含有ゼオライトを使用したこと、処理温度を150℃としたこと、並びに、処理時間を1、4及び8時間のいずれかとしたこと以外は測定例2と同様な方法で水熱耐久処理を施した。水熱耐久処理前後の窒素酸化物還元特性の評価結果を表5に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
実施例8のCHA型ゼオライトは、比較例5のAEI型ゼオライトと同程度のP/T比を有し、なおかつ、触媒活性種である銅含有量が少ない。それにも関わらず、実施例8のCHA型ゼオライトは、比較例5のAEI型ゼオライトと同等以上の窒素酸化物還元特性を示し、特に初期から水熱耐久処理4時間後の窒素酸化物還元率が比較例5のAEI型ゼオライトよりも高かった。従来のCHA型ゼオライトは、AEI型ゼオライトよりも窒素酸化物還元特性、特に150℃以下における窒素酸化物還元特性が低いことが知られている。これより、本願発明のCHA型ゼオライトは従来CHA型ゼオライトよりも高い窒素酸化物特性を有していることのみならず、AEI型ゼオライトと同等以上の窒素酸化物還元特性を有することが確認できた。