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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-91460(P2017-91460A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】計算ノードネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 15/173 20060101AFI20170421BHJP
【FI】
   G06F15/173 683C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-224988(P2015-224988)
(22)【出願日】2015年11月17日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省、SCOPE若手ICT研究者等育成型研究開発「光無線によるビッグデータ処理向け相互結合網の研究開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤田 聡
(72)【発明者】
【氏名】鯉渕 道紘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一毅
【テーマコード(参考)】
5B045
【Fターム(参考)】
5B045BB28
5B045KK06
(57)【要約】
【課題】ネットワークの直径が極力小さい計算ノードネットワークシステムを提供する。
【解決手段】計算ノードネットワークシステム(100A)は、矩形領域(30)に収まるように2次元配置された複数の計算ノード(10)と、複数の計算ノード(10)の任意のものどうしを接続する複数の通信リンク(20)とを備え、複数の計算ノード(10)のそれぞれが仮想的な第1のグリッド(40)の格子点に配置されており、複数の通信リンク(20)のそれぞれが仮想的な第2のグリッド(50)に沿って配線されており、第1のグリッド(40)の向きと第2のグリッド(50)の向きとが一致しており、第1のグリッド(40)および第2のグリッド(50)が矩形領域(30)に対して45°傾いている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形領域に収まるように2次元配置された複数の計算ノードと、
前記複数の計算ノードの任意のものどうしを接続する複数の通信リンクとを備え、
前記複数の計算ノードのそれぞれが仮想的な第1のグリッドの格子点に配置されており、
前記複数の通信リンクのそれぞれが仮想的な第2のグリッドに沿って配線されており、
前記矩形領域の縦横方向、前記第1のグリッドの向き、および前記第2のグリッドの向きの三つのうち少なくとも二つが互いに異なる
ことを特徴とする計算ノードネットワークシステム。
【請求項2】
前記第1のグリッドの向きと前記第2のグリッドの向きとが一致しており、
前記第1のグリッドおよび前記第2のグリッドが前記矩形領域に対して45°傾いている、請求項1に記載の計算ノードネットワークシステム。
【請求項3】
前記矩形領域の縦横方向と前記第1のグリッドの向きとが一致しており、
前記第2のグリッドが前記矩形領域および前記第1のグリッドに対して45°傾いている、請求項1に記載の計算ノードネットワークシステム。
【請求項4】
前記矩形領域の縦横方向と前記第2のグリッドの向きとが一致しており、
前記第1のグリッドが前記矩形領域および前記第2のグリッドに対して45°傾いている、請求項1に記載の計算ノードネットワークシステム。
【請求項5】
前記複数の通信リンクが、ランダムにネットワークを構成した後、ネットワークの直径および平均ホップ数が小さくなるように局所的に任意の通信リンクを置き換えることを繰り返して得られたものである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の計算ノードネットワークシステム。
【請求項6】
前記計算ノードがスーパーコンピュータを構成する個々のラックである、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の計算ノードネットワークシステム。
【請求項7】
前記計算ノードがNoC(ネットワーク・オン・チップ)における個々のプロセッサコアである、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の計算ノードネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の計算ノードを通信リンクで接続した計算ノードネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセッサのメニーコア化、計算機システムの大規模並列化(チップ内:数十コア、チップ間:10万ノード規模)が進むにつれて、計算機システムのメモリ、ストレージ、プロセッサコアなどの構成要素間を接続するネットワークである相互結合網(Interconnection Networks)の通信遅延が、計算システム全体に与える性能の割合が大きくなってきている。例えば、次世代の高性能システムにおける多くのマルチコア並列アプリケーションは、数百ナノ秒〜1マイクロ秒のMPI(Message Passing Interface)通信遅延を必要とすることが予測されている。また、そのメニーコアプロセッサチップ内の(パケット)ネットワークに関しては、プロセッサコア間通信遅延、およびL2キャッシュとの通信遅延が高々数サイクルであることが求められている。これらの設計では、コア間をどのように効率的に相互接続すべきか?というネットワーク構成(以下、ネットワークトポロジと呼ぶ)の設計の問題に直面している。
【0003】
チップ間、チップ内ともに、相互結合網の通信遅延を削減する有効な1つの方法は、直径・平均最短パス長の小さいネットワークトポロジを採用することである。実際に、チップ内、チップ間とも直径、平均最短パス長の小さなネットワークトポロジを採用することにより、多くの並列アプリケーションの性能が向上することがシミュレーション、解析結果から報告されている。現在、興味深いことに、有力なグラフはランダム性を持つグラフ(例:リンクにランダムなショートカットリンクを加えたトポロジ)である。
【0004】
実際にランダムトポロジをチップ内ネットワーク、スパコンで用いる場合、通信リンク長に関する制約がある。例えば、チップ内ネットワークにおいて、メタル配線のリンク遅延は、65nmプロセスにおいて、理想的には50ps/mm以下となる。そのため動作周波数に合った配線長に抑える必要がある。また、チップ間ネットワークでは、40Gbps以上のリンクバンド幅が標準となりつつある。この場合、電気ケーブルは、InfiniBandの場合7m、イーサネット(登録商標)の場合5mまでに限定される。ビット化けなどのソフトエラー率を重視した場合、さらにケーブル長が短くなる。下記非特許文献1には、ランダムトポロジの生成アルゴリズムが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高藤大介、藤田聡、中野浩嗣、藤原一毅、鯉渕道紘、「ランダムトポロジの生成アルゴリズムの改良」、信学技報、電子情報通信学会、2015年8月、第115巻、第174号、p.217-221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7は、従来の計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図である。従来の計算ノードネットワークシステムでは、複数の計算ノード10が矩形領域30において仮想的なグリッド40の格子点に配置され、任意の計算ノード10どうしが仮想的なグリッド50(実質的にグリッド40と同じグリッド)に沿って配線された通信リンク20によって接続されている。例えば、図7では、8×8=64個の計算ノード10が格子状に並んでいる。
【0007】
一般に、計算ノードネットワークシステムにおいて対角に位置する計算ノード間のリンク距離が最も長くなるという問題がある。例えば、図7に示した計算ノードネットワークシステムでは、左上の計算ノード10と右下の計算ノード10との間のリンク距離が最も長くなる。そのため、通信リンク長に厳しい制限がある場合、これらノード間のホップ数が直径(ネットワークの直径ともいう)となる可能性が極めて高い。ネットワークの直径が大きくなると最大通信遅延が大きくなるため、ネットワークの直径はできるだけ小さいことが望ましい。
【0008】
上記問題に鑑み、本発明は、ネットワークの直径が極力小さい計算ノードネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従った計算ノードネットワークシステムは、矩形領域に収まるように2次元配置された複数の計算ノードと、複数の計算ノードの任意のものどうしを接続する複数の通信リンクとを備え、複数の計算ノードのそれぞれが仮想的な第1のグリッドの格子点に配置されており、複数の通信リンクのそれぞれが仮想的な第2のグリッドに沿って配線されており、矩形領域の縦横方向、第1のグリッドの向き、および第2のグリッドの向きの三つのうち少なくとも二つが互いに異なるものである。
【0010】
これによると、計算ノード間の最長リンク距離を従来よりも短くすることができ、ネットワークの直径を低減することができる。
【0011】
例えば、第1のグリッドの向きと第2のグリッドの向きとが一致しており、第1のグリッドおよび第2のグリッドが矩形領域に対して45°傾いている。
【0012】
あるいは、矩形領域の縦横方向と第1のグリッドの向きとが一致しており、第2のグリッドが矩域領域および第1のグリッドに対して45°傾いている。
【0013】
あるいは、矩形領域の縦横方向と第2のグリッドの向きとが一致しており、第1のグリッドが矩形領域および第2のグリッドに対して45°傾いている。
【0014】
また、複数の通信リンクが、ランダムにネットワークを構成した後、ネットワークの直径および平均ホップ数が小さくなるように局所的に任意の通信リンクを置き換えることを繰り返して得られたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ネットワークの直径が極力小さい計算ノードネットワークシステムを実現することができる。これにより、計算ノードネットワークシステムにおける計算ノード間の通信遅延を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図
図2】本発明の第2の実施形態に係る計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図
図3】本発明の第3の実施形態に係る計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図
図4】本発明の第4の実施形態に係る計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図
図5】配線最適化処理のフローチャート
図6】2つの通信リンクの入れ替えを説明する図
図7】従来の計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0018】
なお、発明者らは、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、図面に描かれた各要素の大きさ、細部の詳細形状などは実際のものとは異なることがある。
【0019】
≪第1の実施形態≫
図1は、本発明の第1の実施形態に係る計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図である。本実施形態に係る計算ノードネットワークシステム100Aは、矩形領域30に収まるように2次元配置された複数の計算ノード10と、これら計算ノード10の任意のものどうしを接続する複数の通信リンク20とを備える。なお、便宜上、図1では通信リンク20を数本しか描いていないが、実際にはもっと多くの通信リンク20が配線される。また、計算ノード10の上を通過する通信リンク20はその計算ノード10に接続されていないことを表す。
【0020】
計算ノードネットワークシステム100Aは、具体的にはスーパーコンピュータやNoC(ネットワーク・オン・チップ)などである。スーパーコンピュータの場合、計算ノード10は、CPUやメモリなどが搭載されたシステムボード、磁気ディスク装置、電源装置、I/Oシステムボード(スイッチ装置)、冷却機構等を収容した個々のラックに相当する。スーパーコンピュータは、計算機室にこのようなラックを数百個規則的に並べて構成される。NoCの場合、計算ノード10は、演算回路、論理回路、キャッシュメモリ、通信ポート(スイッチ回路)等が実装された個々のプロセッサコアに相当する。NoCは、半導体基板上にこのようなプロセッサコアを数百個規則的に並べて構成される。
【0021】
計算ノードネットワーク100Aにおいて、各計算ノード10(具体的にはラックやプロセッサコア)は仮想的なグリッド40の格子点に配置されている。ここで、グリッド40は、矩形領域30の縦横方向に対して45°傾いている。
【0022】
通信リンク20は、仮想的なグリッド50に沿って配線されている。スーパーコンピュータの場合、通信リンク20は、光ファイバーや電気ケーブルなどに相当する。NoCの場合、通信リンク20は、メタル配線などに相当する。ここで、グリッド50もまた矩形領域30の縦横方向に対して45°傾いており、グリッド50とグリッド40は実質的に同じグリッドである。
【0023】
すなわち、計算ノードネットワーク100Aでは、計算ノード10の配置の基準となるグリッド40の向きと通信リンク20の配線の基準となるグリッド50の向きとが一致しており、グリッド40およびグリッド50が矩形領域30に対して45°傾いている。
【0024】
本実施形態によると、計算ノードネットワークシステム100Aにおいて最も距離が離れた対角の2つの計算ノード10を対角線で接続することができる。これにより、計算ノード間の最長リンク距離を従来比で1/√2(約70%)に低減することができる。
【0025】
また、本実施形態では、いずれの計算ノード10も平面視略正方形の縦辺または横辺、すなわち、計算ノード10の側方辺部に通信リンク20を接続することができる。一般に、計算ノード10において通信リンク20の引き出し口は計算ノード10の辺部に配置されているため、上記のように通信リンク20は計算ノード10の側方辺部に接続可能にすることは好ましいことである。
【0026】
≪第2の実施形態≫
図2は、第2の実施形態に係る計算ノードネットワークシステム100Bを模式的に示す平面図である。本実施形態に係る計算ノードネットワークシステム100Bは、矩形領域30に収まるように2次元配置された複数の計算ノード10と、これら計算ノード10の任意のものどうしを接続する複数の通信リンク20とを備える。なお、便宜上、図2では通信リンク20を数本しか描いていないが、実際にはもっと多くの通信リンク20が配線される。また、計算ノード10の上を通過する通信リンク20はその計算ノード10に接続されていないことを表す。
【0027】
計算ノードネットワークシステム100Bは、具体的にはスーパーコンピュータやNOCなどである。計算ノードネットワーク100Bにおいて、各計算ノード10(具体的にはラックやプロセッサコア)は仮想的なグリッド40の格子点に配置されている。ここで、グリッド40の向きは、矩形領域30の縦横方向と一致している。
【0028】
通信リンク20は、仮想的なグリッド50に沿って配線されている。ここで、グリッド50は、グリッド40の格子点を斜めに結ぶようなグリッドであり、矩形領域30およびグリッド40に対して45°傾いている。
【0029】
すなわち、計算ノードネットワーク100Bでは、複数の計算ノード10が配置される矩形領域30の縦横方向と計算ノード10の配置の基準となるグリッド40の向きとが一致しており、通信リンク20の配線の基準となるグリッド50が矩形領域30およびグリッド40に対して45°傾いている。
【0030】
本実施形態では、計算ノード10の角部に通信リンク20を接続する必要があるため、第1の実施形態と比較して、計算ノード10への通信リンク20の接続が複雑になるものの、計算ノードネットワークシステム100Bにおいて最も距離が離れた対角の2つの計算ノード10を対角線で接続することができる。これにより、計算ノード間の最長リンク距離を従来比で1/√2(約70%)に低減することができる。
【0031】
特に、本実施形態では計算ノード10の配置自体は従来の構成と同じ格子状であるから、従来の計算ノードネットワークシステムにおける計算ノード10の配列はそのままで通信リンク20の配線パターンを変えるだけで、従来の計算ノードネットワークシステムを本実施形態に係る計算ノードネットワークシステム100Bに変更することができる。例えば、既存のスーパーコンピュータにおいてラックの配置を変えることなく、通信リンク20を本実施形態のように配線するだけで計算ノード間の最長リンク距離を低減する効果が得られる。
【0032】
≪第3の実施形態≫
図3は、本発明の第3の実施形態に係る計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図である。本実施形態に係る計算ノードネットワークシステム100Cは、矩形領域30に収まるように2次元配置された複数の計算ノード10と、これら計算ノード10の任意のものどうしを接続する複数の通信リンク20とを備える。なお、便宜上、図3では通信リンク20を数本しか描いていないが、実際にはもっと多くの通信リンク20が配線される。また、計算ノード10の上を通過する通信リンク20はその計算ノード10に接続されていないことを表す。
【0033】
計算ノードネットワークシステム100Cは、具体的にはスーパーコンピュータやNOCなどである。計算ノードネットワーク100Cにおいて、各計算ノード10(具体的にはラックやプロセッサコア)は仮想的なグリッド40の格子点に配置されている。ここで、グリッド40は、矩形領域30の縦横方向に対して45°傾いている。
【0034】
通信リンク20は、仮想的なグリッド50に沿って配線されている。ここで、グリッド50は、グリッド40の格子点を斜めに結ぶようなグリッドであり、グリッド50の向きは、矩形領域30の縦横方向と一致している。
【0035】
すなわち、計算ノードネットワーク100Cでは、複数の計算ノード10が配置される矩形領域30の縦横方向と通信リンク20の配線の基準となるグリッド50の向きとが一致しており、計算ノード10の配置の基準となるグリッド40が矩形領域30およびグリッド50に対して45°傾いている。
【0036】
本実施形態では、計算ノード10の角部に通信リンク20を接続する必要があるため、第1の実施形態と比較して、計算ノード10への通信リンク20の接続が複雑になるものの、最小の通信リンク長で接続できる計算ノード10の数を増やすことができる。すなわち、本実施形態および第1の実施形態のいずれにおいてもある計算ノード10の周りに8個の計算ノード10が配置されているが、第1の実施形態では最小の通信リンク長で接続できる計算ノード10は4個であるのに対して、本実施形態では周りの8個すべての計算ノード10に最小の通信リンク長で接続可能となる。これにより、平均ホップ数を低減することができる。
【0037】
≪第4の実施形態≫
図4は、本発明の第4の実施形態に係る計算ノードネットワークシステムを模式的に示す平面図である。本実施形態に係る計算ノードネットワークシステム100Dは、矩形領域30に収まるように2次元配置された複数の計算ノード10と、これら計算ノード10の任意のものどうしを接続する複数の通信リンク20とを備える。なお、便宜上、図4では通信リンク20を数本しか描いていないが、実際にはもっと多くの通信リンク20が配線される。また、計算ノード10の上を通過する通信リンク20はその計算ノード10に接続されていないことを表す。
【0038】
計算ノードネットワークシステム100Dは、具体的にはスーパーコンピュータやNOCなどである。計算ノードネットワーク100Dにおいて、各計算ノード10(具体的にはラックやプロセッサコア)は仮想的なグリッド40の格子点に配置されている。ここで、グリッド40は、矩形領域30の縦横方向に対しておよそ18.5°傾いている。
【0039】
通信リンク20は、仮想的なグリッド50に沿って配線されている。ここで、グリッド50は、グリッド40の格子点を斜めに結ぶようなグリッドであり、グリッド40に対して45°傾き、かつ、矩形領域30に対しておよそ26.5°傾いている。
【0040】
すなわち、計算ノードネットワーク100Dでは、複数の計算ノード10が配置される矩形領域30の縦横方向、計算ノード10の配置の基準となるグリッド40の向き、および通信リンク20の配線の基準となるグリッド50の向きの三つが互いに異なっている。
【0041】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、いずれの計算ノード10も平面視略正方形の縦辺または横辺、すなわち、計算ノード10の側方辺部に通信リンク20を接続することができる。さらに、本実施形態では、最小の通信リンク長で接続できる計算ノード10の数を、第1の実施形態よりも増やすことができる。すなわち、本実施形態および第1の実施形態のいずれにおいてもある計算ノード10の周りに8個の計算ノード10が配置されているが、第1の実施形態では最小の通信リンク長で接続できる計算ノード10は4個であるのに対して、本実施形態では周りの8個すべての計算ノード10に最小の通信リンク長で接続可能となる。これにより、平均ホップ数を低減することができる。
【0042】
以上のように、第1ないし第4の各実施形態によると、計算ノードネットワークにおいて、計算ノード間の最長リンク距離を短くしたり、平均ホップ数を低減したりすることができる。これにより、計算ノードネットワークシステムにおけるネットワークの直径を極力小さくすることができる。
【0043】
≪配線最適化≫
一般に、計算ノードネットワークシステムは計算ノードと通信リンクで定義され、グラフ理論ではそれぞれノードとエッジで表される。そして、計算ノードネットワークシステムの性能は、ネットワークの直径とASPL(Average Shortest Path Length)(平均最短パス長あるいは平均ホップ数)で評価される。直径は、ノード間の最小ホップ数の最大値である。平均ホップ数は、全ノード間の最小ホップ数の平均値である。
【0044】
通信リンクが長いと通信遅延が大きくなるため、通信リンク長には上限が設けられる。例えば、スーパーコンピュータにおいて電気ケーブルを用いて伝送速度40Gbpsを実現するには、通信リンク長は7mが限界だと言われている。したがって、通信リンクで直接つながっていない遠く離れたノード間で通信を行う場合、他のノードを経由(ホップ)して通信を行う必要がある。しかし、経由数(ホップ数)が多いほどノード間遅延が大きくなり、また、消費電力も大きくなる。したがって、計算ノードネットワークシステムでは直径および平均ホップ数をともに少なくすることが望まれる。
【0045】
そこで、計算ノードネットワークシステムにおいて直径および平均ホップ数をともに少なくするような配線最適化アルゴリズムを開示する。図5は、配線最適化処理のフローチャートである。なお、当該配線最適化処理は、図略のコンピュータを用いて実行することができる。
【0046】
まず、計算ノードネットワークシステムにおいて通信リンクをランダムに設定する(S1)。ただし、通信リンク長の上限および計算ノードのポート数は超えないようにする。一般に、通信リンクに長さ制限がなければこのようなランダムネットワークは優れた配線であることが知られている、しかし、通信リンクに強い長さ制限があればランダムネットワークはさほどよくない。
【0047】
ランダムネットワークが完了すると、任意の2つの通信リンクを選択する(S2)。そして、選択した2つの通信リンクの代替候補となる2つの通信リンクを設定する(S3)。
【0048】
図6は、2つの通信リンクの入れ替えを説明する図である。ステップS2で2つの通信リンクL1、L2を選択したとする。通信リンクL1は、計算ノードAと計算ノードBとを繋ぐリンクである。通信リンクL2は、計算ノードCと計算ノードDとを繋ぐリンクである。この場合、代替候補として2つの通信リンクL3、L4が設定される。通信リンクL3は、計算ノードAと計算ノードCとを繋ぐリンクである。通信リンクL4は、計算ノードBと計算ノードDとを繋ぐリンクである。
【0049】
図5へ戻り、ステップS2で選択した2つの通信リンクをステップS3で設定した代替候補の2つの通信リンクに置換した場合に、通信リンクの長さ制限の条件を満たすか否かを判定する。なお、各計算ノードには接続可能な通信リンク数、すなわちポート数の制限もあるが、図6に示したように通信リンクを置換するのであれば置換前後で各計算ノードに接続された通信リンク数は変化しないため、ポート数の制限については考慮しなくてもよくなる。
【0050】
もし、通信リンクの長さ制限の条件を満たしていない、すなわち、代替候補の2つの通信リンクに置換することで、通信リンクの上限を超えるようであれば(S4でNO)、ステップS2に戻り、別の2つの通信リンクを選択する。一方、通信リンクの長さ制限の条件を満たしていれば(S4でYES)、代替候補の2つの通信リンクに置換後の計算ノードネットワークシステムについて、ネットワークの直径と平均ホップ数を計算する(S5)。
【0051】
そして、ステップS5で計算したネットワークの直径と平均ホップ数が、代替候補の2つの通信リンクに置換前の計算ノードネットワークシステムのネットワークの直径と平均ホップ数よりも小さくなるか否かを判定する。もし、小さくならなければ(S6でNO)、ステップS2に戻り、別の2つの通信リンクを選択する。一方、2つの通信リンクを置換することでネットワークの直径と平均ホップ数がともに以前よりも小さくなるようであれば(S6でYES)、ステップS2で選択した2つの通信リンク(図6の例では通信リンクL1、L2)を削除して、ステップS3で設定した代替候補の2つの通信リンク(図6の例では通信リンクL3、L4)を採用し、ステップS2に戻って新たな2つの通信リンクを選択する。
【0052】
以上のステップを繰り返すことで計算ノードネットワークシステムの直径と平均ホップ数はローカルミニマム値に収束する。
【0053】
次に、従来構成(図7参照)、第1の実施形態、および第2の実施形態の各タイプの計算ノードネットワークシステムを上記の配線最適化アルゴリズムで配線した例を示す。なお、各例において、隣接する2つの計算ノードを接続するときの通信リンク長を1単位として、通信リンクの長さ上限を4単位とする。また、各計算ノードの最大ポート数を4とする。
【0054】
≪比較例≫
比較例では、32×32=1024個の計算ノードを用いて従来タイプ(図7参照)の計算ノードネットワークシステムを構成した。比較例に係る計算ノードネットワークシステムにおいてランダムネットワークを形成したところ、直径が23、平均ホップ数が9.576506であった。このようなランダムネットワークに上記の配線最適化アルゴリズムを適用すると、直径が16、平均ホップ数が6.685486に低下した。この直径は、32×32=1024個の計算ノードからなる計算ノードネットワークシステムにおける最適値である。
【0055】
≪実施例1≫
実施例1では、23×46=1058個の計算ノードを用いて第1の実施形態のタイプの計算ノードネットワークシステムを構成した。実施例1に係る計算ノードネットワークシステムを上記の配線最適化アルゴリズムで配線したところ、直径が12、平均ホップ数が6.790274であった。
【0056】
実施例1と比較例とを比較すると、計算ノード数が比較例よりもわずかに多いにもかかわらず直径が小さくなっている。この直径は、23×46=1058個の計算ノードからなる第1の実施形態のタイプの計算ノードネットワークシステムにおける最適値である。
【0057】
≪実施例2≫
実施例1では、32×32=1024個の計算ノードを用いて第2の実施形態のタイプの計算ノードネットワークシステムを構成した。実施例2に係る計算ノードネットワークシステムを上記の配線最適化アルゴリズムで配線したところ、直径が11、平均ホップ数が6.604497であった。なお、厳密に言うと、実施例2では通信リンクを斜めに配線する都合上、通信リンクの長さ上限は3√2(およそ4.2)単位となる。
【0058】
実施例2と比較例とを比較すると、計算ノード数が比較例と同じでも直径が小さくなっている。この直径は、32×32=1024個の計算ノードからなる第2の実施形態のタイプの計算ノードネットワークシステムにおける最適値である。
【0059】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0060】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0061】
例えば、計算ノード10の平面視形状は略正方形である必要はなく矩形であってもよい。また、計算ノード10の配置間隔は等間隔でなくてもよい。例えば、行間隔よりも列間隔を広めにしてもよい。したがって、グリッド40の傾きも45度である必要はない。計算ノード10の平面視形状や配置間隔に応じてグリッド40の傾きを変えてもよい。
【0062】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
100A、100B、100C 計算ノードネットワークシステム
10 計算ノード
20 通信リンク
30 矩形領域
40 グリッド(第1のグリッド)
50 グリッド(第2のグリッド)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7