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特開2018-141141半導体ナノ粒子およびその製造方法ならびに発光デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-141141(P2018-141141A)
(43)【公開日】2018年9月13日
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子およびその製造方法ならびに発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/62 20060101AFI20180817BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20180817BHJP
【FI】
   C09K11/62
   H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-25251(P2018-25251)
(22)【出願日】2018年2月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-37477(P2017-37477)
(32)【優先日】2017年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
【住所又は居所】徳島県阿南市上中町岡491番地100
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】鳥本 司
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】亀山 達矢
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】岸 まり乃
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】宮前 千恵
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】桑畑 進
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号 国立大学法人大阪大学内
(72)【発明者】
【氏名】上松 太郎
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号 国立大学法人大阪大学内
(72)【発明者】
【氏名】小谷松 大祐
【住所又は居所】徳島県阿南市上中町岡491番地100 日亜化学工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】仁木 健太
【住所又は居所】徳島県阿南市上中町岡491番地100 日亜化学工業株式会社内
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA04
4H001CF02
4H001XA16
4H001XA31
4H001XA47
4H001XA49
4H001XB12
4H001XB31
4H001XB61
5F142DA02
5F142DA12
5F142DA14
5F142DA22
5F142DA56
5F142DA64
5F142DA72
5F142DA73
5F142GA11
5F142GA14
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】バンド端発光を示し、短波長の発光ピーク波長を有する半導体ナノ粒子を提供する。
【解決手段】Ag、In、GaおよびSを含み、InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比が0.95以下であり、500nm以上590nm未満の範囲に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値幅が70nm以下である光を発し、平均粒径が10nm以下である半導体ナノ粒子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ag、In、GaおよびSを含み、
InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比が0.95以下であり、
500nm以上590nm未満の範囲に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値幅が70nm以下である光を発し、平均粒径が10nm以下である半導体ナノ粒子。
【請求項2】
前記InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比が0.2以上0.9以下である、請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項3】
前記AgとInとGaの原子数の合計に対するAgの原子数の比が0.05以上0.55以下である、請求項1または2に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項4】
前記AgとInとGaの原子数の合計に対するAgの原子数の比が0.3以上0.55以下であって、
前記InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比が0.5以上0.9以下である、請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項5】
前記AgとInとGaの原子数の合計に対するAgの原子数の比が0.05以上0.27以下であって、
前記InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比が0.25以上0.75以下である、請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子を含むコアと、
前記コアの表面に配置され、実質的に第13族元素および第16族元素からなる半導体材料を含むシェルと、を備え、
光照射により発光する、コアシェル型の半導体ナノ粒子。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子を含むコアと、
前記コアの表面に配置され、実質的に第1族元素、第13族元素および第16族元素からなる半導体材料を含むシェルと、を備え、
光照射により発光する、コアシェル型の半導体ナノ粒子。
【請求項8】
前記シェルが、前記第13族元素としてGaを含む請求項6または7に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項9】
前記シェルが、前記第16族元素としてSを含む請求項6から8のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項10】
前記シェル表面に、負の酸化数を有するPを少なくとも含む第15族元素を含む化合物が配置される請求項6から9のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項11】
酢酸銀と、アセチルアセトナートインジウムと、アセチルアセトナートガリウムと、硫黄源と、有機溶媒とを含む混合物を準備することと、
前記混合物を熱処理することと、
を含む、半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記混合物の熱処理を、290℃以上310℃以下の温度で、5分間以上行うことを含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記有機溶媒が、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有するチオールから選択される少なくとも1種と、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有するアミンから選択される少なくとも1種とを含む、請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記硫黄源が、硫黄単体である請求項11から13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子を含む光変換部材と、半導体発光素子とを備える、発光デバイス。
【請求項16】
前記半導体発光素子はLEDチップである、請求項15に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノ粒子およびその製造方法ならびに発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体粒子はその粒径が例えば10nm以下になると、量子サイズ効果を発現することが知られており、そのようなナノ粒子は量子ドット(半導体量子ドットとも呼ばれる)と呼ばれる。量子サイズ効果とは、バルク粒子では連続とみなされる価電子帯と伝導帯のそれぞれのバンドが、ナノ粒子では離散的となり、粒径に応じてバンドギャップエネルギーが変化する現象を指す。
【0003】
量子ドットは、光を吸収して、そのバンドギャップエネルギーに対応する光に波長変換可能であるため、量子ドットの発光を利用した白色発光デバイスが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。具体的には、発光ダイオード(LED)チップから発せされる光の一部を量子ドットに吸収させて、量子ドットからの発光とLEDチップからの発光との混合色として白色光を得ることが提案されている。これらの特許文献では、CdSeおよびCdTe等の第12族−第16族、PbSおよびPbSe等の第14族−第16族の二元系の量子ドットを使用することが提案されている。またバンド端発光が可能で低毒性組成となり得る三元系の半導体ナノ粒子として、テルル化合物ナノ粒子(例えば、特許文献3参照)、硫化物ナノ粒子(例えば、特許文献4参照)が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−212862号公報
【特許文献2】特開2010−177656号公報
【特許文献3】特開2017−014476号公報
【特許文献4】特開2017−025201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3および4に記載の半導体ナノ粒子は、発光ピーク波長を比較的長波長の領域に有している。従って本発明の一態様は、バンド端発光を示し、短波長の発光ピーク波長を有する半導体ナノ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様は、Ag、In、GaおよびSを含み、InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比が0.95以下あり、光照射により500nm以上590nm未満の範囲に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値幅が70nm以下である光を発し、平均粒径が10nm以下である半導体ナノ粒子である。
【0007】
第二の態様は、酢酸銀と、アセチルアセトナートインジウムと、アセチルアセトナートガリウムと、硫黄源と、有機溶媒とを含む混合物を準備することと、前記混合物を熱処理することと、を含む、半導体ナノ粒子の製造方法である。
【0008】
第三の態様は、前記半導体ナノ粒子を含む光変換部材と、半導体発光素子とを備える、発光デバイスである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、バンド端発光を示し、短波長の発光ピーク波長を有する半導体ナノ粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半導体ナノ粒子の発光スペクトルを示す図である。
図2】半導体ナノ粒子の吸収スペクトルを示す図である。
図3】実施例4に係る半導体ナノ粒子のXRDパターンである。
図4】半導体ナノ粒子の発光スペクトルを示す図である。
図5】半導体ナノ粒子の吸収スペクトルを示す図である。
図6】実施例12から16に係るコアシェル型半導体ナノ粒子の発光スペクトルを示す図である。
図7】実施例17および18に係るコアシェル型半導体ナノ粒子の発光スペクトルを示す図である。
図8】実施例19のTOP修飾コアシェル型半導体ナノ粒子の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、半導体ナノ粒子およびその製造方法ならびに発光デバイスを例示するものであって、本発明は、以下に示す半導体ナノ粒子およびその製造方法ならびに発光デバイスに限定されない。また本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
半導体ナノ粒子
第一の実施形態である半導体ナノ粒子は、銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)および硫黄(S)を含む。半導体ナノ粒子は、InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比(Ga/(Ga+In))が0.95以下である。半導体ナノ粒子は、光照射により500nm以上590nm未満の範囲に発光ピーク波長を有して発光し、発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅が70nm以下である。また半導体ナノ粒子は、平均粒径が10nm以下である。
【0013】
半導体ナノ粒子は、Ag、In、GaおよびSを含み、InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比が所定の範囲であることで、励起光よりも長波長であり、可視領域である500nm以上590nm未満の範囲に発光ピーク波長を有してバンド端発光することができる。
【0014】
半導体ナノ粒子の結晶構造は、正方晶、六方晶、および斜方晶からなる群より選ばれる少なくとも1種とすることができる。Ag、InおよびSを含み、かつその結晶構造が正方晶、六方晶、または斜方晶である半導体ナノ粒子は、一般的には、AgInSの組成式で表されるものとして、文献等において紹介されている。本実施形態に係る半導体ナノ粒子は、例えば第13族元素であるInの一部を同じく第13族元素であるGaで置換したものと考えることができる。すなわち半導体ナノ粒子の組成は例えば、Ag−In−Ga−SまたはAg(In,Ga)Sで表される。
【0015】
なお、Ag−In−Ga−Sなどの組成式で表される半導体ナノ粒子であって、六方晶の結晶構造を有するものはウルツ鉱型であり、正方晶の結晶構造を有する半導体はカルコパイライト型である。結晶構造は、例えば、X線回折(XRD)分析により得られるXRDパターンを測定することによって同定される。具体的には、半導体ナノ粒子から得られたXRDパターンを、AgInSの組成で表される半導体ナノ粒子のものとして既知のXRDパターン、または結晶構造パラメータからシミュレーションを行って求めたXRDパターンと比較する。既知のパターンおよびシミュレーションのパターンの中に、半導体ナノ粒子のパターンと一致するものがあれば、当該半導体ナノ粒子の結晶構造は、その一致した既知またはシミュレーションのパターンの結晶構造であるといえる。
【0016】
半導体ナノ粒子の集合体においては、異なる結晶構造の半導体ナノ粒子が混在していてよい。その場合、XRDパターンにおいては、複数の結晶構造に由来するピークが観察される。
【0017】
半導体ナノ粒子は、実質的にAg、In、GaおよびSのみから構成され得る。ここで「実質的に」という用語は、不純物の混入等に起因して不可避的にAg、In、GaおよびS以外の他の元素が含まれることを考慮して使用している。
【0018】
InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比Ga/(Ga+In)(以下、「Ga比」ともいう)が0.95以下とすることができ、より好ましくは0.2以上0.9以下とすることができる。
【0019】
AgとInとGaの原子数の合計に対するAgの原子数の比Ag/(Ag+In+Ga)(以下、「Ag比」ともいう)は、0.05以上0.55以下とすることができる。
【0020】
Ag比が0.3以上0.55以下であり、Ga比が0.5以上0.9以下とすることができ、好ましくは、Ag比が0.35以上0.53以下であり、Ga比が0.52以上0.86以下とすることができる。
【0021】
Ga比が0.2以上0.9以下であり、Ga比+2×Ag比の値が1.2以上1.7以下でとすることができ、好ましくは、Ga比が0.2以上0.9以下であり、Ag比が0.3以上0.55以下であり、Ga比+2×Ag比の値が1.2以上1.7以下とすることができる。
【0022】
Ag比が0.05以上0.27以下であり、Ga比が0.25以上0.75以下とすることができる。好ましくは、Ag比が0.06以上0.27以下であり、Ga比が0.26以上0.73以下とすることができる。
【0023】
Ga比が0.2以上0.8以下であり、Ga比+2×Ag比の値が0.6以上1以下とすることができ、好ましくは、Ga比が0.2以上0.8以下であり、Ag比が0.05以上0.4以下であり、Ga比+2×Ag比の値が0.6以上1以下とすることができる。
【0024】
AgとInとGaの原子数の合計に対するSの原子数の比S/(Ag+In+Ga)(以下、「S比」ともいう)は例えば、0.6以上1.6以下とすることができる。
【0025】
半導体ナノ粒子の化学組成は、例えば、蛍光X線分析法(XRF)によって同定することができる。Ga/(Ga+In)で算出されるGa比、Ag/(Ag+In+Ga)で算出されるAg比およびS/(Ag+In+Ga)で算出されるS比は、この方法で測定した化学組成に基づいて算出される。
【0026】
半導体ナノ粒子は、10nm以下の平均粒径を有する。平均粒径は例えば、10nm未満であり、好ましくは5nm以下とすることができる。平均粒径が10nmを越えると量子サイズ効果が得られ難くなり、バンド端発光が得られ難くなる。また平均粒径の下限は例えば、1nmである。
【0027】
半導体ナノ粒子の粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影されたTEM像から求めることができる。具体的には、ある粒子についてTEM像で観察される粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分であって、当該粒子の内部を通過する線分のうち、最も長い線分の長さをその粒子の粒径とする。
【0028】
ただし、粒子がロッド形状を有するものである場合には、短軸の長さを粒径とみなす。ここで、ロッド形状の粒子とは、TEM像において短軸と短軸に直交する長軸とを有し、短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.2より大きいものを指す。ロッド形状の粒子は、TEM像で、例えば、長方形状を含む四角形状、楕円形状、または多角形状等として観察される。ロッド形状の長軸に直交する面である断面の形状は、例えば、円、楕円、または多角形であってよい。具体的にはロッド状の形状の粒子について、長軸の長さは、楕円形状の場合には、粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指し、長方形状または多角形状の場合、外周を規定する辺の中で最も長い辺に平行であり、かつ粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指す。短軸の長さは、外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、前記長軸の長さを規定する線分に直交し、かつ最も長さの長い線分の長さを指す。
【0029】
半導体ナノ粒子の平均粒径は、50,000倍以上150,000倍以下のTEM像で観察される、すべての計測可能な粒子について粒径を測定し、それらの粒径の算術平均とする。ここで、「計測可能な」粒子は、TEM像において粒子全体が観察できるものである。したがって、TEM像において、その一部が撮像範囲に含まれておらず、「切れて」いるような粒子は計測可能なものではない。1つのTEM像に含まれる計測可能な粒子数が100以上である場合には、そのTEM像を用いて平均粒径を求める。一方、1つのTEM像に含まれる計測可能な粒子の数が100未満の場合には、撮像場所を変更して、TEM像をさらに取得し、2以上のTEM像に含まれる100以上の計測可能な粒子について粒径を測定して平均粒径を求める。
【0030】
半導体ナノ粒子は、Ag、In、GaおよびSを含み、InとGaの原子数の合計に対するGaの原子数の比が所定の範囲であることで、バンド端発光が可能である。半導体ナノ粒子は、365nm付近にピークを有する光を照射することにより、500nm以上590nm未満の範囲に発光ピーク波長を有して発光する。発光ピーク波長は例えば、500nm以上580nm以下、500nm以上575nm以下505nm以上575未満とすることができる。また、570nm以上585nm以下または575nm以上580nm以下とすることができる。発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は例えば、70nm以下、60nm以下、55nm以下または50nm以下とすることができる。半値幅の下限値は例えば、10nm以上または20nm以上とすることができる。
【0031】
半導体ナノ粒子は、バンド端発光とともに、他の発光、例えば欠陥発光を与えるものであってよい。欠陥発光は一般に発光寿命が長く、またブロードなスペクトルを有し、バンド端発光よりも長波長側にそのピークを有する。バンド端発光と欠陥発光がともに得られる場合、バンド端発光の強度が欠陥発光の強度よりも大きいことが好ましい。
【0032】
半導体ナノ粒子のバンド端発光は、半導体ナノ粒子の形状および/または平均粒径、特に平均粒径を変化させることによって、そのピーク位置を変化させることができる。例えば、半導体ナノ粒子の平均粒径をより小さくすれば、量子サイズ効果により、バンドギャップエネルギーがより大きくなり、バンド端発光のピーク波長を短波長側にシフトさせることができる。
【0033】
また半導体ナノ粒子のバンド端発光は、半導体ナノ粒子の組成を変化させることによって、そのピーク位置を変化させることができる。例えば、Ga比を大きくすることでバンド端発光のピーク波長を短波長側にシフトさせることができる。
【0034】
半導体ナノ粒子は、その吸収スペクトルがエキシトンピークを示すものであることが好ましい。エキシトンピークは、励起子生成により得られるピークであり、これが吸収スペクトルにおいて発現しているということは、粒径の分布が小さく、結晶欠陥の少ないバンド端発光に適した粒子であることを意味する。エキシトンピークが急峻になるほど、粒径がそろった結晶欠陥の少ない粒子が半導体ナノ粒子の集合体により多く含まれていることを意味するので、発光の半値幅は狭くなり、発光効率が向上すると予想される。本実施形態の半導体ナノ粒子の吸収スペクトルにおいて、エキシトンピークは、例えば、450nm以上590未満nmの範囲内で観察される。
【0035】
半導体ナノ粒子は、その表面が表面修飾剤で修飾されていてよい。表面修飾剤は、例えば、半導体ナノ粒子を安定化させて粒子の凝集または成長を防止するためのものであり、および/または粒子の溶媒中での分散性を向上させるためのものである。
【0036】
表面修飾剤としては例えば、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物等を挙げることができる。炭素数4以上20以下の炭化水素基としては、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などの飽和脂肪族炭化水素基;オレイル基などの不飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、ナフチルメチル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられ、このうち飽和脂肪族炭化水素基や不飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。含窒素化合物としてはアミン類やアミド類が挙げられ、含硫黄化合物としてはチオール類が挙げられ、含酸素化合物としては脂肪酸類などが挙げられる。
【0037】
表面修飾剤としては、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物が好ましい。そのような含窒素化合物としては、例えばn−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどのアルキルアミン、およびオレイルアミンなどのアルケニルアミンが挙げられる。
【0038】
表面修飾剤としては、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物もまた好ましい。そのような含硫黄化合物としては、例えば、n−ブタンチオール、イソブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等のアルキルチオールが挙げられる。
【0039】
表面修飾剤は、異なる2以上のものを組み合わせて用いてよい。例えば、上記において例示した含窒素化合物から選択される一つの化合物(例えば、オレイルアミン)と、上記において例示した含硫黄化合物から選択される一つの化合物(例えば、ドデカンチオール)とを組み合わせて用いてよい。
【0040】
半導体ナノ粒子の製造方法
第二の実施形態に係る半導体ナノ粒子の製造方法は、銀塩と、インジウム塩と、ガリウム塩と、硫黄源と、有機溶媒とを含む混合物を準備することと、準備した混合物を熱処理することとを含む。好ましくは混合物として、酢酸銀と、アセチルアセトナートインジウムと、アセチルアセトナートガリウムと、硫黄源として硫黄またはチオ尿素と、有機溶媒とを含む混合物を準備する。
【0041】
混合物は、銀塩と、インジウム塩と、ガリウム塩と、硫黄源とを有機溶媒に添加して混合することで調製することができる。混合物におけるAg、In、GaおよびSの含有比は、目的とする組成に応じて適宜選択する。例えば、InとGaの合計モル量に対するGaのモル比は0.2以上0.9以下とする。また例えば、AgとInとGaの合計モル量に対するAgのモル比は0.05以上0.55以下とする。また例えば、AgとInとGaの合計モル量に対するSのモル比は0.6以上1.6以下とする。
【0042】
有機溶媒としては、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有するアミン、特に、炭素数4以上20以下のアルキルアミンもしくはアルケニルアミン、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有するチオール、特に炭素数4以上20以下のアルキルチオールもしくはアルケニルチオール、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有するホスフィン、特に炭素数4以上20以下のアルキルホスフィンもしくはアルケニルホスフィンである。これらの有機溶媒は、最終的には、得られる半導体ナノ粒子を表面修飾するものとなり得る。これらの有機溶媒は2以上組み合わせて使用してよく、特に、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有するチオールから選択される少なくとも1種と、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有するアミンから選択される少なくとも1種とを組み合わせた混合溶媒を使用してよい。これらの有機溶媒はまた、他の有機溶媒と混合して用いてよい。
【0043】
半導体ナノ粒子の製造方法では、混合物を熱処理することで有機溶媒中に半導体ナノ粒子が生成する。混合物の熱処理の温度は例えば、230℃以上310℃以下であり、好ましくは260℃より高く310℃以下であり、より好ましくは290℃以上310℃以下である。熱処理の時間は例えば、5分間以上20分間以下であり、好ましくは5分間以上15分間以下である。混合物の熱処理は、2以上の温度で行ってもよい。例えば、30℃以上155℃以下の温度で1分間以上15分間以下加熱した後、230℃以上310℃以下の温度で5分間以上20分間以下加熱して行ってもよい。
【0044】
熱処理の雰囲気は、不活性雰囲気、特にアルゴン雰囲気または窒素雰囲気が好ましい。不活性雰囲気とすることで、酸化物の副生および半導体ナノ粒子表面の酸化を、低減ないしは防止することができる。
【0045】
半導体ナノ粒子の生成が終了した後、得られた半導体ナノ粒子を処理後の有機溶媒から分離してよく、必要に応じて、さらに精製してよい。分離は、例えば、生成終了後、ナノ粒子を含む有機溶媒を遠心分離に付して、ナノ粒子を含む上澄み液を取り出すことにより行う。精製は、例えば、上澄み液に有機溶媒を添加して遠心分離に付し、半導体ナノ粒子を沈殿として取り出すことができる。なお、上澄み液を揮発させることによっても取り出すことができる。取り出した沈殿は、例えば、真空脱気、もしくは自然乾燥、または真空脱気と自然乾燥との組み合わせにより、乾燥させてよい。自然乾燥は、例えば、大気中に常温常圧にて放置することにより実施してよく、その場合、20時間以上、例えば、30時間程度放置してよい。
【0046】
あるいは、取り出した沈殿は、有機溶媒に分散させてもよい。精製(アルコールの添加と遠心分離)は必要に応じて複数回実施してよい。精製に用いるアルコールとして、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール等の炭素数1から4の低級アルコールを用いてよい。沈殿を有機溶媒に分散させる場合、有機溶媒として、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン等の炭化水素系溶媒等を用いてよい。
【0047】
コアシェル型半導体ナノ粒子
半導体ナノ粒子は、第一の実施形態に係る半導体ナノ粒子および第二の実施形態に係る製造方法により得られる半導体ナノ粒子の少なくとも一方をコアとして、コアよりもバンドギャップエネルギーが大きく、コアとヘテロ接合するシェルとを備えるコアシェル型半導体ナノ粒子とすることができる。半導体ナノ粒子はコアシェル構造を有することでより強いバンド端発光を示すことができる。
【0048】
シェルは、実質的に第13族元素および第16族元素からなる半導体材料であることが好ましい。第13族元素としては、B、Al、Ga、In、およびTlが挙げられ、第16族元素としては、O、S、Se、TeおよびPoが挙げられる。
【0049】
またシェルは、実質的に第1族元素、第13族元素および第16族元素からなる半導体材料であってもよい。第13族元素および第16族元素に加えて第1族元素を含むことで欠陥発光が抑制される傾向がある。第1族元素としては、Li、Na、K、RbおよびCsが挙げられ、イオン半径がAgに近い点でLiが好ましい。
【0050】
コアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーはその組成にもよるが、第11族−第13族−第16族の三元系の半導体は一般に、1.0eV以上3.5eV以下のバンドギャップエネルギーを有し、特に組成が、Ag−In−Ga−Sから成る半導体は、2.0eV以上2.5eV以下のバンドギャップエネルギーを有し、したがって、シェルは、コアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーに応じて、その組成等を選択して構成するとよい。あるいは、シェルの組成等が先に決定されている場合には、コアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーがシェルのそれよりも小さくなるように、コアを設計してよい。
【0051】
具体的には、シェルは、例えば2.0eV以上5.0eV以下、特に2.5eV以上5.0eV以下のバンドギャップエネルギーを有することができる。また、シェルのバンドギャップエネルギーは、コアのバンドギャップエネルギーよりも、例えば0.1eV以上3.0eV以下程度、特に0.3eV以上3.0eV以下程度、より特には0.5eV以上1.0eV以下程度大きいものとすることができる。シェルのバンドギャップエネルギーとコアのバンドギャップエネルギーとの差が小さいと、コアからの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が多くなり、バンド端発光の割合が小さくなることがある。
【0052】
さらに、コアおよびシェルのバンドギャップエネルギーは、コアとシェルのヘテロ接合において、シェルのバンドギャップエネルギーがコアのバンドギャップエネルギーを挟み込むtype−Iのバンドアライメントを与えるように選択されることが好ましい。type−Iのバンドアライメントが形成されることにより、コアからのバンド端発光をより良好に得ることができる。type−Iのアライメントにおいて、コアのバンドギャップとシェルのバンドギャップとの間には、少なくとも0.1eVの障壁が形成されることが好ましく、特に0.2eV以上、より特には0.3eV以上の障壁が形成されてよい。障壁の上限は、例えば1.8eV以下であり、特に1.1eV以下である。障壁が小さいと、コアからの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が多くなり、バンド端発光の割合が小さくなることがある。
【0053】
シェルは、第13族元素としてGaを含み、第16族元素としてSを含むものとすることができる。GaとSを含む半導体は、第11族−第13族−第16族の三元系の半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体となる傾向にある。
【0054】
シェルはまた、その半導体の晶系がコアの半導体の晶系となじみのあるものとすることができる。またその格子定数が、コアの半導体のそれと同じまたは近いものとすることができる。晶系になじみがあり、格子定数が近い(ここでは、シェルの格子定数の倍数がコアの格子定数に近いものも格子定数が近いものとする)半導体からなるシェルは、コアの周囲を良好に被覆することがある。例えば、第11族−第13族−第16族の三元系の半導体は、一般に正方晶系であるが、これになじみのある晶系としては、正方晶系、斜方晶系が挙げられる。Ag−In−Ga−S半導体が正方晶系である場合、その格子定数は5.828Å、5.828Å、11.19Åであり、これを被覆するシェルは、正方晶系または立方晶系であって、その格子定数またはその倍数が、Ag−In−Ga−S半導体の格子定数と近いものであることが好ましい。あるいは、シェルはアモルファス(非晶質)とすることができる。
【0055】
アモルファス(非晶質)のシェルが形成されているか否かは、コアシェル型半導体ナノ粒子を、HAADF−STEMで観察することにより確認できる。HAADF−STEMによれば、結晶性物質のように規則的な構造を有するものは、規則的な模様を有する像として観察され、非晶性物質のように規則的な構造を有しないものは、規則的な模様を有する像としては観察されない。そのため、シェルがアモルファスである場合には、規則的な模様を有する像として観察されるコア(前記のとおり、正方晶系等の結晶構造を有する)とは明確に異なる部分として、シェルを観察することができる。
【0056】
また、コアがAg−In−Ga−Sからなり、シェルがGaSからなる場合、GaがAgおよびInよりも軽い元素であるために、HAADF−STEMで得られる像において、シェルはコアよりも暗い像として観察される傾向にある。
【0057】
アモルファスのシェルが形成されているか否かは、高解像度の透過型電子顕微鏡(HRTEM)でコアシェル型半導体ナノ粒子を観察することによっても確認できる。HRTEMで得られる画像において、コアの部分は結晶格子像(規則的な模様を有する像)として観察され、シェルの部分は結晶格子像として観察されず、白黒のコントラストは観察されるが、規則的な模様は見えない部分として観察される。
【0058】
シェルは、第13族元素および第16族元素の組み合わせとして、GaとSとの組み合わせを含む半導体である場合、GaとSとの組み合わせは硫化ガリウムの形態とすることができる。シェルを構成する硫化ガリウムは化学量論組成のもの(Ga)でなくてよく、その意味で、本明細書では硫化ガリウムを式GaS(xは整数に限られない任意の数字、例えば0.8以上1.5以下)で表すことがある。
【0059】
硫化ガリウムは、そのバンドギャップエネルギーが2.5eV以上2.6eV以下程度であり、晶系が正方晶であるものについては、その格子定数が5.215Åである。ただし、ここに記載された晶系等は、いずれも報告値であり、実際のコアシェル型半導体ナノ粒子において、シェルがこれらの報告値を満たしているとは限らない。硫化ガリウムはシェルを構成する半導体として、バンドギャップエネルギーがより大きいことから好ましく用いられる。シェルが硫化ガリウムである場合、より強いバンド端発光を得ることができる。
【0060】
またシェルが、第1族元素、第13族元素および第16族元素の組合せとして、Li、GaおよびSとの組合せを含む半導体である場合、例えば、硫化リチウムガリウムの形態とすることができる。硫化リチウムガリウムは、化学量論組成(例えば、LiGaS)でなくてもよく、例えば組成がLiGaSx(xは整数に限られない任意の数、例えば1.1から2)で表されてもよい。また例えば硫化ガリウムにLiが固溶したアモルファス形態であってもよい。シェルにおけるLiのGaに対するモル比(Li/Ga)は、例えば、1/20から4、または1/10から2である。
【0061】
硫化リチウムガリウムのバンドギャップエネルギーは4eV程度と比較的大きく、より強いバンド端発光を得ることができる。またLiはコアを形成するAgとイオン半径の大きさが同等であるため、例えば、シェルがコアと類似する構造をとることができ、コア表面の欠陥が補償されて、欠陥発光をより効果的に抑制することができると考えられる。
【0062】
コアシェル型半導体ナノ粒子は、そのシェル表面が表面修飾剤で修飾されていてもよい。表面修飾剤の具体例としては、既述の炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物、および炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物に加えて、負の酸化数を有するリンを含む化合物(以下、「特定修飾剤」ともいう)を挙げることができる。シェルの表面修飾剤が特定修飾剤を含んでいることで、コアシェル型半導体ナノ粒子のバンド端発光における量子収率が向上する。
【0063】
特定修飾剤は、第15族元素として負の酸化数を有するPを含む。Pの酸化数は、Pに水素原子またはアルキル基が1つ結合することで−1となり、酸素原子が単結合で1つ結合することで+1となり、Pの置換状態で変化する。例えば、トリアルキルホスフィンおよびトリアリールホスフィンにおけるPの酸化数は−3であり、トリアルキルホスフィンオキシドおよびトリアリールホスフィンオキシドでは−1となる。
【0064】
特定修飾剤は、負の酸化数を有するPに加えて、他の第15族元素を含んでいてもよい。他の第15族元素としては、N、As、Sb等を挙げることができる。
【0065】
特定修飾剤は、例えば、炭素数4以上20以下の炭化水素基を含リン化合物であってよい。炭素数4以上20以下の炭化水素基としては、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などの直鎖または分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基;オレイル基などの直鎖または分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基;ベンジル基、ナフチルメチル基などのアリールアルキル基などが挙げられ、このうち飽和脂肪族炭化水素基や不飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。特定修飾剤が複数の炭化水素基を有する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
特定修飾剤として具体的には、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリス(エチルヘキシル)ホスフィン、トリデシルホスフィン、トリドデシルホスフィン、トリテトラデシルホスフィン、トリヘキサデシルホスフィン、トリオクタデシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンオキシド、トリイソブチルホスフィンオキシド、トリペンチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリス(エチルヘキシル)ホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリドデシルホスフィンオキシド、トリテトラデシルホスフィンオキシド、トリヘキサデシルホスフィンオキシド、トリオクタデシルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0067】
コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法
コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法は、半導体ナノ粒子を含む分散液を準備することと、半導体ナノ粒子の分散液に半導体原料を添加することとを含み、半導体ナノ粒子の表面に半導体層を形成することを含む製造方法である。半導体ナノ粒子をシェルで被覆するに際しては、これを適切な溶媒に分散させた分散液を調整し、当該分散液中でシェルとなる半導体層を形成する。半導体ナノ粒子が分散した液体においては、散乱光が生じないため、分散液は一般に透明(有色または無色)のものとして得られる。半導体ナノ粒子を分散させる溶媒は、半導体ナノ粒子を作製するときと同様、任意の有機溶媒(特に、エタノール等のアルコールなどの極性の高い有機溶媒)とすることができ、有機溶媒は、表面修飾剤、または表面修飾剤を含む溶液とすることができる。例えば、有機溶媒は、半導体ナノ粒子の製造方法に関連して説明した表面修飾剤である、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物から選ばれる少なくとも1つとすることができ、あるいは、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1つとすることができ、あるいは炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物から選ばれる少なくとも1つと炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1つとの組み合わせでとすることができる。含窒素化合物としては、特に、特に純度の高いものが入手しやすい点と沸点が290℃を超える点とから、n‐テトラデシルアミン、オレイルアミン等が好ましい。含硫黄化合物としては、ドデカンチオール等が好ましく挙げられる。具体的な有機溶媒としては、オレイルアミン、n‐テトラデシルアミン、ドデカンチオール、またはその組み合わせが挙げられる。
【0068】
半導体ナノ粒子の分散液は、分散液に占める粒子の濃度が、例えば、5.0×10−7モル/リットル以上5.0×10−5モル/リットル以下、特に1.0×10−6モル/リットル以上、1.0×10−5モル/リットル以下となるように調製してよい。分散液に占める粒子の割合が小さすぎると貧溶媒による凝集・沈澱プロセスによる生成物の回収が困難になり、大きすぎるとコアを構成する材料のオストワルド熟成、衝突による融合の割合が増加し、粒径分布が広くなる傾向にある。
【0069】
シェルの形成
シェルとなる半導体の層の形成は、例えば、第13族元素を含む化合物と、第16族元素の単体または第16族元素を含む化合物とを、上記分散液に加えて実施する。
【0070】
第13族元素を含む化合物は、第13族元素源となるものであり、例えば、第13族元素の有機塩、無機塩、および有機金属化合物等である。具体的には、第13族元素を含む化合物としては、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩、アセチルアセトナト錯体が挙げられ、好ましくは酢酸塩等の有機塩、または有機金属化合物である。有機塩および有機金属化合物は有機溶媒への溶解度が高く、反応をより均一に進行させやすいことによる。
【0071】
第16族元素の単体または第16族元素を含む化合物は、第16族元素源となるものである。例えば、第16族元素として硫黄(S)をシェルの構成元素とする場合には、高純度硫黄のような硫黄単体を用いることができ、あるいは、n−ブタンチオール、イソブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等のチオール、ジベンジルスルフィドのようなジスルフィド、チオ尿素、チオカルボニル化合物等の硫黄含有化合物を用いることができる。
【0072】
第16族元素として、酸素(O)をシェルの構成元素とする場合には、アルコール、エーテル、カルボン酸、ケトン、N−オキシド化合物を、第16族元素源として用いてよい。第16族元素として、セレン(Se)をシェルの構成元素とする場合には、セレン単体、またはセレン化ホスフィンオキシド、有機セレン化合物(ジベンジルジセレニドやジフェニルジセレニド)もしくは水素化物等の化合物を、第16族元素源として用いてよい。第16族元素として、テルル(Te)をシェルの構成元素とする場合には、テルル単体、テルル化ホスフィンオキシド、または水素化物を、第16族元素源として用いてよい。
【0073】
第13族元素源および第16族元素源を分散液に添加する方法は特に限定されない。例えば、第13族元素源および第16族元素源を、有機溶媒に分散または溶解させた混合液を準備し、この混合液を分散液に少量ずつ、例えば、滴下する方法で添加してよい。この場合、混合液は、0.1mL/時間以上10mL/時間以下、特に1mL/時間以上5mL/時間以下の速度で添加してよい。また、混合液は、加熱した分散液に添加してよい。具体的には、例えば、分散液を昇温して、そのピーク温度が200℃以上310℃以下となるようにし、ピーク温度に達してから、ピーク温度を保持した状態で、混合液を少量ずつ加え、その後、降温させる方法で、シェル層を形成してよい(スローインジェクション法)。ピーク温度は、混合液の添加を終了した後も必要に応じて保持してよい。
【0074】
ピーク温度が前記温度以上であると、半導体ナノ粒子を修飾している表面修飾剤が十分に脱離し、またはシェル生成のための化学反応が十分に進行する等の理由により、半導体の層(シェル)の形成が十分に行われる傾向がある。ピーク温度が前記温度以下であると、半導体ナノ粒子に変質が生じることが抑制され、良好なバンド端発光が得られる傾向がある。ピーク温度を保持する時間は、混合液の添加が開始されてからトータルで1分間以上300分間以下、特に10分間以上120分間以下とすることができる。ピーク温度の保持時間は、ピーク温度との関係で選択され、ピーク温度がより低い場合には保持時間をより長くし、ピーク温度がより高い場合には保持時間をより短くすると、良好なシェル層が形成されやすい。昇温速度および降温速度は特に限定されず、降温は、例えばピーク温度で所定時間保持した後、加熱源(例えば電気ヒーター)による加熱を停止して放冷することにより実施してよい。
【0075】
あるいは、第13族元素源および第16族元素源は、直接、全量を分散液に添加してよい。それから、第13族元素源および第16族元素源が添加された分散液を加熱することにより、シェルである半導体層を半導体ナノ粒子の表面に形成してよい(ヒーティングアップ法)。具体的には、第13族元素源および第16族元素源を添加した分散液は、例えば、徐々に昇温して、そのピーク温度が200℃以上310℃以下となるようにし、ピーク温度で1分間以上300分間以下保持した後、徐々に降温させるやり方で加熱してよい。昇温速度は例えば1℃/分以上50℃/分以下としてよく、降温速度は例えば1℃/分以上100℃/分以下としてよい。あるいは、昇温速度を特に制御することなく、所定のピーク温度となるように加熱してよく、また、降温を一定速度で実施せず、加熱源による加熱を停止して放冷することにより実施してもよい。ピーク温度が前記範囲であることの有利な点は、上記混合液を添加する方法(スローインジェクション法)で説明したとおりである。
【0076】
ヒーティングアップ法によれば、スローインジェクション法でシェルを形成する場合と比較して、より強いバンド端発光を与えるコアシェル型半導体ナノ粒子が得られる傾向にある。
【0077】
いずれの方法で第13族元素源および第16族元素源を添加する場合でも、両者の仕込み比は、第13族元素と第16族元素とからなる化合物半導体の化学量論組成比に対応させて仕込み比を決めてもよく、必ずしも化学量論組成比にしなくてもよい。仕込み比を化学量論組成比にしない場合、目的とするシェルの生成量よりも過剰量で原料を仕込んでもよく、例えば、第16族元素源を化学量論組成比より少なくしてよく、例えば、仕込み比を1:1(第13族:第16族)としてもよい。例えば、第13族元素源としてIn源を、第16族元素源としてS源を用いる場合、仕込み比はInの組成式に対応した1:1.5(In:S)から1:1とすることが好ましい。同様に、第13族元素源としてGa源を、第16族元素源としてS源を用いる場合、仕込み比はGaの組成式に対応した1:1.5(Ga:S)から1:1とすることが好ましい。
【0078】
また、分散液中に存在する半導体ナノ粒子に所望の厚さのシェルが形成されるように、仕込み量は、分散液に含まれる半導体ナノ粒子の量を考慮して選択する。例えば、半導体ナノ粒子の、粒子としての物質量10nmolに対して、第13族元素および第16族元素から成る化学量論組成の化合物半導体が1μmol以上10mmol以下、特に5μmol以上1mmol以下生成されるように、第13族元素源および第16族元素源の仕込み量を決定してよい。ただし、粒子としての物質量というのは、粒子1つを巨大な分子と見なしたときのモル量であり、分散液に含まれるナノ粒子の個数を、アボガドロ数(N=6.022×1023)で除した値に等しい。
【0079】
コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法においては、第13族元素源として、酢酸インジウムまたはガリウムアセチルアセトナトを用い、第16族元素源として、硫黄単体、チオ尿素またはジベンジルジスルフィドを用いて、分散液として、オレイルアミンとドデカンチオールの混合液を用いて、硫化インジウムまたは硫化ガリウムを含むシェルを形成することが好ましい。
【0080】
また、ヒーティングアップ法で、分散液にオレイルアミンとドデカンチオールの混合液を用いると、欠陥発光に由来するブロードなピークの強度がバンド端発光のピークの強度よりも十分に小さい発光スペクトルを与えるコアシェル型半導体ナノ粒子が得られる。上記の傾向は、第13族元素源としてガリウム源を使用した場合にも、有意に認められる。
【0081】
このようにして、シェルを形成してコアシェル型半導体ナノ粒子が形成される。得られたコアシェル型半導体ナノ粒子は、溶媒から分離してよく、必要に応じて、さらに精製および乾燥してよい。分離、精製および乾燥の方法は、先に半導体ナノ粒子に関連して説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。
【0082】
またシェルとなる半導体が、実質的に第1族元素、第13族元素および第16族元素からなる場合も、上記と同様にしてシェルを形成することができる。すなわち、第1族元素を含む化合物と、第13族元素を含む化合物と、第16族元素の単体または第16族元素を含む化合物とを、コアとなる半導体ナノ粒子の分散液に加えてシェルを形成することができる。
【0083】
第1族元素を含む化合物は、例えば、第1族元素の有機塩、無機塩、および有機金属化合物等である。具体的に第1族元素を含む化合物としては、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩、アセチルアセトナト錯体が挙げられ、好ましくは酢酸塩等の有機塩、または有機金属化合物である。有機塩および有機金属化合物は有機溶媒への溶解度が高く、反応をより均一に進行させやすいことによる。
【0084】
コアシェル型半導体ナノ粒子のシェル表面が、特定修飾剤で修飾されている場合は、上記で得られるコアシェル型半導体ナノ粒子を修飾工程に付してもよい。修飾工程では、コアシェル型半導体ナノ粒子と、酸化数が負のリン(P)を含む特定修飾剤とを接触させて、コアシェル粒子のシェル表面を修飾する。これにより、より優れた量子収率でバンド端発光を示す半導体ナノ粒子が製造される。
【0085】
コアシェル型半導体ナノ粒子と特定修飾剤との接触は、例えば、コアシェル型半導体ナノ粒子の分散液と特定修飾剤とを混合することで行うことができる。またコアシェル粒子を、液状の特定修飾剤と混合して行ってもよい。特定修飾剤には、その溶液を用いてもよい。コアシェル型半導体ナノ粒子の分散液は、コアシェル型半導体ナノ粒子と適当な有機溶媒とを混合することで得られる。分散に用いる有機溶剤としては、例えばクロロホルム等のハロゲン溶剤;トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶剤などを挙げることができる。コアシェル型半導体ナノ粒子の分散液における物質量の濃度は、例えば、1×10−7mol/L以上1×10−3mol/L以下であり、好ましくは1×10−6mol/L以上1×10−4mol/L以下である。ここでいう物質量とはシェル形成で述べた通りである。
【0086】
特定修飾剤のコアシェル型半導体ナノ粒子に対する使用量は、例えば、モル比で1倍以上50,000倍以下である。また、コアシェル型半導体ナノ粒子の分散液における物質量の濃度が1.0×10−7mol/L以上1.0×10−3mol/L以下であるコアシェル型半導体ナノ粒子の分散液を用いる場合、分散液と特定修飾剤とを体積比で1:1000から1000:1で混合してもよい。
【0087】
コアシェル型半導体ナノ粒子と特定修飾剤との接触時の温度は、例えば、−100℃以上100℃以下または−30℃以上75℃以下である。接触時間は特定修飾剤の使用量、分散液の濃度等に応じて適宜選択すればよい。接触時間は、例えば、1分以上、好ましくは時間以上であり、100時間以下、好ましくは48時間以下である。接触時の雰囲気は、例えば、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス雰囲気である。
【0088】
発光デバイス
第三の実施形態に係る発光デバイスは、半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子を含む光変換部材および半導体発光素子を含む。この発光デバイスによれば、例えば、半導体発光素子からの発光の一部を、半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子が吸収してより長波長の光が発せられる。そして、半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子からの光と半導体発光素子からの発光の残部とが混合され、その混合光を発光デバイスの発光として利用できる。
【0089】
具体的には、半導体発光素子としてピーク波長が400nm以上490nm以下程度の青紫色光または青色光を発するものを用い、半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子として青色光を吸収して黄色光を発光するものを用いれば、白色光を発光する発光デバイスを得ることができる。あるいは、半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子として、青色光を吸収して緑色光を発光するものと、青色光を吸収して赤色光を発光するものの2種類を用いても、白色発光デバイスを得ることができる。
【0090】
あるいは、ピーク波長が400nm以下の紫外線を発光する半導体発光素子を用い、紫外線を吸収して青色光、緑色光、赤色光をそれぞれ発光する、3種類の半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子を用いる場合でも、白色発光デバイスを得ることができる。この場合、発光素子から発せられる紫外線が外部に漏れないように、発光素子からの光をすべて半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子に吸収させて変換させることが望ましい。
【0091】
本実施形態の半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子は、他の半導体量子ドットと組み合わせて用いてよく、あるいは他の半導体量子ドットではない蛍光体(例えば、有機蛍光体または無機蛍光体)と組み合わせて用いてよい。他の半導体量子ドットは、例えば、背景技術の欄で説明した二元系の半導体量子ドットである。半導体量子ドットではない蛍光体として、アルミニウムガーネット系等のガーネット系蛍光体を用いることができる。ガーネット蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。他にユウロピウムおよび/またはクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体、β−SiAlON系蛍光体、CASN系またはSCASN系等の窒化物系蛍光体、LnSiN11系またはLnSiAlON系等の希土類窒化物系蛍光体、BaSi:Eu系またはBaSi12:Eu系等の酸窒化物系蛍光体、CaS系、SrGa系、SrAl系、ZnS系等の硫化物系蛍光体、クロロシリケート系蛍光体、SrLiAl:Eu蛍光体、SrMgSiN:Eu蛍光体、マンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体としてのKSiF:Mn蛍光体などを用いることができる。
【0092】
発光デバイスにおいて、半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子を含む光変換部材は、例えばシートまたは板状部材であってよく、あるいは三次元的な形状を有する部材であってよい。三次元的な形状を有する部材の例は、表面実装型の発光ダイオードにおいて、パッケージに形成された凹部の底面に半導体発光素子が配置されているときに、発光素子を封止するために凹部に樹脂が充填されて形成された封止部材である。
【0093】
または、光変換部材の別の例は、平面基板上に半導体発光素子が配置されている場合にあっては、前記半導体発光素子の上面および側面を略均一な厚みで取り囲むように形成された樹脂部材である。あるいはまた、光変換部材のさらに別の例は、半導体発光素子の周囲にその上端が半導体発光素子と同一平面を構成するように反射材を含む樹脂部材が充填されている場合にあっては、前記半導体発光素子および前記反射材を含む樹脂部材の上部に、所定の厚さで平板状に形成された樹脂部材である。
【0094】
光変換部材は半導体発光素子に接してよく、あるいは半導体発光素子から離れて設けられていてよい。具体的には、光変換部材は、半導体発光素子から離れて配置される、ペレット状部材、シート部材、板状部材または棒状部材であってよく、あるいは半導体発光素子に接して設けられる部材、例えば、封止部材、コーティング部材(モールド部材とは別に設けられる発光素子を覆う部材)またはモールド部材(例えば、レンズ形状を有する部材を含む)であってよい。また、発光デバイスにおいて、異なる波長の発光を示す2種類以上の本開示の半導体ナノ粒子またはコアシェル型の半導体ナノ粒子を用いる場合には、1つの光変換部材内で前記2種類以上の本開示の半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子が混合されていてもよいし、あるいは1種類の量子ドットのみを含む光変換部材を2つ以上組み合わせて用いてもよい。この場合、2種類以上の光変換部材は積層構造を成してもよいし、平面上にドット状ないしストライプ状のパターンとして配置されていてもよい。
【0095】
半導体発光素子としてはLEDチップが挙げられる。LEDチップは、GaN、GaAs、InGaN、AlInGaP、GaP、SiC、およびZnO等から成る群より選択される1種または2種以上から成る半導体層を備えたものであってよい。青紫色光、青色光、または紫外線を発光する半導体発光素子は、好ましくは、一般式がInAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表わされるGaN系化合物を半導体層として備えたものであることが好ましい。
【0096】
発光デバイスは、光源として液晶表示装置に組み込まれることが好ましい。本開示の半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子によるバンド端発光は発光寿命の短いものであるため、これを用いた発光デバイスは、比較的速い応答速度が要求される液晶表示装置の光源に適している。また、本開示の半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子は、バンド端発光として半値幅の小さい発光ピークを示し得る。したがって、発光デバイスにおいて:
− 青色半導体発光素子によりピーク波長が420nm以上490nm以下の範囲内にある青色光を得るようにし、本開示の半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子により、ピーク波長が510nm以上550nm以下、好ましくは530nm以上540nm以下の範囲内にある緑色光、およびピーク波長が600nm以上680nm以下、好ましくは630nm以上650nm以下の範囲内にある赤色光を得るようにする;または、
− 発光デバイスにおいて、半導体発光素子によりピーク波長400nm以下の紫外光を得るようにし、本開示の半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子によりピーク波長430nm以上470nm以下、好ましくは440nm以上460nm以下の範囲内にある青色光、ピーク波長が510nm以上550nm以下、好ましくは530nm以上540nm以下の緑色光、およびピーク波長が600nm以上680nm以下、好ましくは630nm以上650nm以下の範囲内にある赤色光を得るようにする
ことによって、濃いカラーフィルターを用いることなく、色再現性の良い液晶表示装置が得られる。本実施形態の発光デバイスは、例えば、直下型のバックライトとして、またはエッジ型のバックライトとして用いられる。
【0097】
あるいは、本開示の半導体ナノ粒子および/またはコアシェル型の半導体ナノ粒子を含む、樹脂もしくはガラス等からなるシート、板状部材、またはロッドが、発光デバイスとは独立した光変換部材として液晶表示装置に組み込まれていてよい。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
0.1402mmolの酢酸銀(AgOAc)、0.1875mmolの酢酸インジウム(In(OAc))、0.047mmolの酢酸ガリウム(Ga(OAc))および硫黄源として0.3744mmolのチオ尿素を、0.05cmの1−ドデカンチオールと2.95cmのオレイルアミンの混合液に投入して分散させた。分散液を、撹拌子とともに試験管に入れ、窒素置換を行った後、窒素雰囲気下で、試験管内の内容物を撹拌しながら、第1段階の加熱処理として150℃で10分、第2段階の加熱処理として250℃で10分の加熱処理を実施した。加熱処理後、得られた懸濁液を放冷した後、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、上澄みである分散液を取り出した。これに半導体ナノ粒子の沈殿が生じるまでメタノールを加えて、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、半導体ナノ粒子を沈殿させた。沈殿物を取り出して、クロロホルムに分散させて半導体ナノ粒子分散液を得た。原料の仕込み組成を表1に示す。
【0100】
(実施例2、3)
原料の仕込み組成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして半導体ナノ粒子分散液を得た。
【0101】
【表1】
【0102】
(実施例4)
0.125mmolの酢酸銀(AgOAc)、0.0375mmolのアセチルアセトナートインジウム(In(CHCOCHCOCH;In(AcAc))、0.0875mmolのアセチルアセトナートガリウム(Ga(CHCOCHCOCH;Ga(AcAc))および硫黄源として0.25mmolの硫黄を、0.25cmの1−ドデカンチオールと2.75cmのオレイルアミンの混合液に投入して分散させた。分散液を、撹拌子とともに試験管に入れ、窒素置換を行った後、窒素雰囲気下で、試験管内の内容物を撹拌しながら、300℃で10分の加熱処理を実施した。加熱処理後、実施例1と同様に後処理して半導体ナノ粒子分散液を得た。原料の仕込み組成を表2に示す。
【0103】
(実施例5から8)
原料の仕込み組成と熱処理条件を表2に示すように変更したこと以外は、実施例4と同様にして半導体ナノ粒子分散液を得た。
【0104】
(実施例9)
半導体ナノ粒子コアの作製
原料の仕込み組成と熱処理条件を表2に示すようにし、上記と同様に加熱処理して半導体ナノ粒子コア分散液を得た。
【0105】
(実施例10、11)
コアシェル型の半導体ナノ粒子の作製
実施例9で得た半導体ナノ粒子コアの分散液のうち、ナノ粒子としての物質量(粒子数)で1.0×10−5mmolを量りとり、試験管内で溶媒を蒸発させた。5.33×10−5molのGa(acac)(19.3mg)とチオ尿素(2.75mg)を2.75mLのオレイルアミンと0.25mLのドデカンチオールの混合溶媒に分散させた分散液を得、これを窒素雰囲気下で300℃120分間撹拌した。加熱源から取り出し、常温まで放冷し、遠心分離(半径150mm、4000rpm、5分間)し、上澄み部分と沈殿部分とに分けた。その後、それぞれにメタノールを加えて、コアシェル型半導体ナノ粒子の析出物を得た後、遠心分離(半径150mm、4000rpm、5分間)により固体成分を回収した。さらにエタノールを加えて同様に遠心分離し、それぞれをクロロホルムに分散し、各種測定を行った。また、シェルで被覆された粒子の平均粒径を測定したところ、沈殿から得たコアシェル粒子で4.3nm、上澄みから得た粒子で3.5nmであり、半導体ナノ粒子コアの平均粒径との差からシェルの厚さはそれぞれ平均で約0.75nmおよび0.35nmであった。以下では、上澄み部分から得られたコアシェル型半導体ナノ粒子分散液を実施例10とし、沈殿部分から得られたコアシェル型半導体ナノ粒子分散液を実施例11とした。
【0106】
【表2】
【0107】
(比較例1)
酢酸銀(AgOAc)および酢酸インジウム(In(OAc))を、Ag/Ag+Inがそれぞれ0.3(比較例1)、0.4(比較例3)、および0.5(比較例2)となり、かつ2つの金属塩を合わせた量が0.25mmolとなるように量り取った。酢酸銀(AgOAc)、酢酸インジウム(In(OAc))、および0.25mmolのチオ尿素を、0.10cmのオレイルアミンと2.90cmの1−ドデカンチオールの混合液に投入し、分散させた。分散液を、撹拌子とともに試験管に入れ、窒素置換を行った後、窒素雰囲気下で、試験管内の内容物を撹拌しながら、第1段階の加熱処理として150℃にて10分間加熱し、さらに第2段階の加熱処理として250℃にて10分間加熱した。加熱処理後、得られた懸濁液を放冷した後、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付して半導体ナノ粒子を沈殿させた。
【0108】
比較例1については、得られた沈殿をメタノールで洗浄した後、沈殿にクロロホルムを加えて遠心分離(半径146mm、4000rpm、15分間)に付し、上澄みを回収し、半導体ナノ粒子分散液を得た。比較例3および比較例2については、上澄みである分散液にナノ粒子の沈殿が生じるまでメタノールを加えて、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、半導体ナノ粒子を沈殿させた。沈殿物を取り出して、クロロホルムに分散させて半導体ナノ粒子分散液をそれぞれ得た。
【0109】
(組成分析)
得られた半導体ナノ粒子ついて、蛍光X線分析装置を用いて、半導体ナノ粒子に含まれるAg、In、GaおよびSの原子数を合わせて100としたときに、各原子の割合がどれだけであるかを求め、Ga/(Ga+In)で算出されるGa比、Ag/(Ag+In+Ga)で算出されるAg比およびS/(Ag+In+Ga)で算出されるS比をそれぞれ算出した。結果を表3に示す。
【0110】
(平均粒径)
得られた半導体ナノ粒子の形状を観察するとともに、平均粒径を測定した。得られた粒子の形状は、球状もしくは多角形状であった。平均粒径を表3に示す。
【0111】
(発光特性)
得られた半導体ナノ粒子について、吸収および発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルは、ダイオードアレイ式分光光度計(アジレントテクノロジー社製、商品名Agilent 8453A)を用いて、波長を190nm以上1100nm以下として測定した。発光スペクトルは、マルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製、商品名PMA11)を用いて、励起波長365nmにて測定した。実施例3、4、6および比較例3の発光スペクトルを図1に、吸収スペクトルを図2に示す。実施例10および11の発光スペクトルを図4に、吸収スペクトルを図5に示す。各発光スペクトルにて観察された急峻な発光ピークの発光ピーク波長(バンド端発光)および半値幅を表3に示す。またDAP(ドナーアクセプタ対)遷移の発光ピーク強度に対するバンド端発光強度の比(Bandedge/DAP)を求めた。
【0112】
(X線回折パターン)
実施例4で得られた半導体ナノ粒子についてX線回折(XRD)パターンを測定し、正方晶(カルコパイライト型)のAgInS、および斜方晶のAgInSと比較した。測定したXRDパターンを図3に示す。XRDパターンより、実施例4の半導体ナノ粒子の結晶構造は、正方晶のAgInSとほぼ同じ構造であることがわかった。XRDパターンは、リガク社製の粉末X線回折装置(商品名SmartLab)を用いて測定した。
【0113】
【表3】
【0114】
表3から、本実施形態の半導体ナノ粒子は、比較例3に比べて短波長の発光ピーク波長を有するバンド端発光を示すことがわかる。また実施例10及び11の結果から、半導体ナノ粒子の製造方法が同じであっても、得られた半導体ナノ粒子の平均粒径が小さい方がバンド端発光の発光波長が短くなることが分かる。
【0115】
(実施例12)
0.0833mmolの酢酸銀(AgOAc)、0.050mmolのIn(acac)、0.075mmolのGa(acac)および硫黄源として0.229mmolの硫黄を、0.25cmの1−ドデカンチオールと2.75cmのオレイルアミンの混合液に投入して分散させた。分散液を、撹拌子とともに試験管に入れ、窒素置換を行った後、窒素雰囲気下で、試験管内の内容物を撹拌しながら、300℃で10分加熱処理を実施した。加熱処理後、得られた懸濁液を放冷した後、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、上澄みである分散液を取り出した。これに半導体ナノ粒子の沈殿が生じるまでメタノールを加えて、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、半導体ナノ粒子を沈殿させた。沈殿物を取り出して、クロロホルムに分散させて半導体ナノ粒子分散液を得た。
【0116】
コアシェル型半導体ナノ粒子の作製
上記で得られた半導体ナノ粒子コアの分散液のうち、ナノ粒子としての物質量(粒子数)で1.0×10−5mmolを量りとり、試験管内で溶媒を蒸発させた。5.33×10−5molのGa(acac)と、5.33×10−5molのチオ尿素と、2.67×10−5molの酢酸リチウムと、3.0mLのオレイルアミンとを加えて分散させた分散液を得た。分散液中のGaに対するLiのモル比(Li/Ga)は、1/2であった。次いで分散液を窒素雰囲気下で300℃、15分間撹拌した。加熱源から取り出し、常温まで放冷し、遠心分離(半径150mm、4000rpm、5分間)し、上澄み部分と沈殿部分とに分けた。その後、上澄み部分にメタノールを加えて、コアシェル型半導体ナノ粒子の析出物を得た後、遠心分離(半径150mm、4000rpm、5分間)により固体成分を回収した。さらにエタノールを加えて同様に遠心分離し、それぞれをクロロホルムに分散し、各種測定を行った。また、シェルで被覆された粒子の平均粒径を測定したところ、4.7nmであり、半導体ナノ粒子コアの平均粒径との差からシェルの厚さはそれぞれ平均で約0.75nmであった。
【0117】
得られたコアシェル型半導体ナノ粒子について、上記と同様にして組成分析および発光スペクトルの測定をおこなった。結果を表4に示す。また発光スペクトルを図6に示す。
【0118】
(実施例13から16)
Ga(acac)とチオ尿素量を5.33×10−5molと固定し、分散液中のGaに対するLiのモル比(Li/Ga)を、下表に示すように酢酸リチウムの添加量を変更したこと以外は実施例12と同様にして、コアシェル型半導体ナノ粒子を作製した。結果を表4に示す。また発光スペクトルを図6に示す。
【0119】
(実施例17から18)
酢酸リチウムとチオ尿素量を5.33×10−5molと固定し、分散液中のGaに対するLiのモル比(Li/Ga)を、下表に示すようにGa(acac)の添加量を変更したこと以外は実施例12と同様にして、コアシェル型半導体ナノ粒子を作製した。
結果を表4に示す。また発光スペクトルを図7に示す。
【0120】
【表4】
【0121】
シェルが第1族元素であるLiを含むことで、欠陥発光であるDAP発光が減少し、バンド端発光の強度が向上する。GaよりもLiを多くすると、バンド端発光の発光波長が短波長にシフトする。
【0122】
(実施例19)
実施例12で得られたコアシェル型半導体ナノ粒子の分散液に対して、窒素雰囲気下で、ほぼ同体積のトリオクチルホスフィン(TOP)を加えた。室温で10分振り混ぜた後、遮光下に室温で20時間静置し、TOP修飾されたコアシェル型半導体ナノ粒子の分散液を得た。
【0123】
得られたTOP修飾コアシェル型半導体ナノ粒子について、上記と同様にして発光スペクトルの測定をおこない、また内部量子収率の測定を行った。コアシェル型半導体ナノ粒子の内部量子収率が13.5%だったのに対して、TOP修飾コアシェル型半導体ナノ粒子の内部量子収率は31.4%であった。また発光スペクトルを図8に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8