特開2018-177631(P2018-177631A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-177631(P2018-177631A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】粘土膜、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/40 20060101AFI20181019BHJP
【FI】
   C01B33/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-65992(P2018-65992)
(22)【出願日】2018年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-78843(P2017-78843)
(32)【優先日】2017年4月12日
(33)【優先権主張国】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】林坂 徳之
(72)【発明者】
【氏名】石井 亮
(72)【発明者】
【氏名】志村 瑞己
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 武雄
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BB71
4G073BD13
4G073BD16
4G073BD18
4G073CM14
4G073CM15
4G073CM19
4G073CM20
4G073CM21
4G073CN03
4G073FA02
4G073FC18
4G073FD21
4G073GA03
4G073GA06
4G073GA26
4G073GB03
4G073GB08
4G073UB12
4G073UB60
(57)【要約】
【課題】粘土膜の特徴を維持しながら、耐水性に優れた粘土膜を提供することを目的とする。
【解決手段】CuKα線を用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に回折ピークが認められ、前記回折ピークの半値幅をa(deg)とし、前記回折ピークのピーク強度をb(cps)とし、CuKα線を用いたX線回折測定により得られる酸性白土のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークのピーク強度をc(cps)とする場合に、[a/(b/c)]≦5×10-1を満たす粘土膜。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土の層間イオンが水素イオンである水素型スメクタイトを含有し、
CuKα線を用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に回折ピークが認められ、
前記回折ピークの半値幅をa(deg)とし、前記回折ピークのピーク強度をb(cps)とし、CuKα線を用いたX線回折測定により得られる酸性白土のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークのピーク強度をc(cps)とする場合に、[a/(b/c)]≦5×10-1を満たす
ことを特徴とする、粘土膜。
【請求項2】
前記水素型スメクタイトの層間距離が2nm以下である、請求項1に記載の粘土膜。
【請求項3】
有機樹脂を更に含有する、請求項1又は2に記載の粘土膜。
【請求項4】
前記水素型スメクタイトが、水素型スチーブンサイト、水素型ヘクトライト、水素型サポナイト、水素型モンモリロナイト、水素型バーミキュライト、及び水素型バイデライトからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の粘土膜。
【請求項5】
前記水素型スメクタイトの含有量が30質量%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の粘土膜。
【請求項6】
前記有機樹脂が、ポリイミド樹脂である請求項3〜5のいずれかに記載の粘土膜。
【請求項7】
前記有機樹脂が、ポリイミド電着樹脂である請求項6に記載の粘土膜。
【請求項8】
前記有機樹脂が、アクリル電着樹脂である請求項3〜5のいずれかに記載の粘土膜。
【請求項9】
JIS−K5600−5−1に準拠したマンドレル屈曲試験において、粘土膜の割れが起こるマンドレルの屈曲直径が30mm以下である請求項1〜8のいずれかに記載の粘土膜。
【請求項10】
下記の工程(1)〜(3)を有する請求項1〜9のいずれかに記載の粘土膜の製造方法:
(1)スメクタイトを含む粘土分散液を調製する工程、
(2)工程(1)で調製した粘土分散液を用いて、電気泳動堆積法により電極板上に粘土を堆積させる工程、及び、
(3)工程(2)で堆積した粘土を乾燥する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘土膜、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘土粒子を利用した、耐熱性を有するガスバリア性の薄膜が提案されている。粘土粒子を利用した薄膜は、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、包装材、封止材、ディスプレイ材などの分野に適応されている(特許文献1)。しかしながら、このような粘土粒子を利用した粘土膜は、一般的には、吸湿性があり、耐湿性、耐水性、電気絶縁性は十分ではない。
【0003】
粘土膜の耐湿性、耐水性を改善するために、例えば、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、金属膜等を用い、CVD法又はPVD法等の様々な方法で、粘土膜の表面を被覆し、疎水性化して撥水性を付与し、防水性又は防湿性を向上させることが提案されている(特許文献2)。しかしながら、表面を樹脂で被覆した粘土膜は、耐熱性が十分ではない。また、表面を金属膜で被覆した粘土膜は、長期間の使用で、耐湿性や耐水性は劣化する。
【0004】
これらの問題を解決する方法の1つとして、粘土の吸湿性が、粘土結晶の層間にある陽イオンの水和力に起因することに着目して、粘土結晶の層間のナトリウム等の陽イオンを、イオン半径がより小さいリチウムイオンに置換することが提案されている(特許文献3)。また、ナトリウム等の層間の陽イオンを水素イオンに置換する方法も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−313604号公報
【特許文献2】特開2006−188408号公報
【特許文献3】特開2008−247719号公報
【特許文献4】特許2012−240868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3の方法では、150〜600℃の比較的高温の熱処理を必要とする。そのため、工程が煩雑になるばかりではなく、耐熱性の低い有機樹脂と複合化させることが困難である。また、リチウムイオンにイオン置換した粘土は比較的高価であるため、経済性にも問題が生じる。
【0007】
また、特許文献4の方法では、粘土の層間イオンを水素イオンとした水素型スメクタイトを含むコーティング膜を形成することで水蒸気バリア性を向上させている。しかしながら、前記水素型スメクタイトを用いた方法では、作成したコーティング膜は柔軟性が劣っており、クラックが入りやすいなどの問題があった。そのため自立膜の形成が困難であり、PET等の別の基材にコーティングしての使用に制限される。
【0008】
さらに、いずれの方法でも粘土膜の成型方法はキャスト法を用いており、使用する粘土分散液の調整が煩雑であるばかりでなく、粘土分散液の固形分濃度が数%程度と低濃度であり、製膜の際に多量の水や溶媒を蒸発させて乾燥させる必要があり、製造効率に問題があった。
【0009】
本発明は、粘土膜の特徴を維持しながら、耐水性に優れた粘土膜を提供することを目的とする。また、粘土膜の製造効率を向上させる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、粘土の層間イオンが水素イオンである水素型スメクタイトを含有し、CuKα線を用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に回折ピークが認められ、前記回折ピークの半値幅をa(deg)とし、前記回折ピークのピーク強度をb(cps)とし、CuKα線を用いたX線回折測定により得られる酸性白土のX線回折パターンにおける回折角2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークのピーク強度をc(cps)とする場合に、[a/(b/c)]≦5×10-1を満たす場合、粘土膜を構成する粘土結晶の配向が良好となり、耐水性に優れた粘土膜となり得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 粘土の層間イオンが水素イオンである水素型スメクタイトを含有し、
CuKα線を用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に回折ピークが認められ、
前記回折ピークの半値幅をa(deg)とし、前記回折ピークのピーク強度をb(cps)とし、CuKα線を用いたX線回折測定により得られる酸性白土のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークのピーク強度をc(cps)とする場合に、[a/(b/c)]≦5×10-1を満たす
ことを特徴とする、粘土膜。
項2. 前記水素型スメクタイトの層間距離が2nm以下である、項1に記載の粘土膜。
項3. 有機樹脂を更に含有する、項1又は2に記載の粘土膜。
項4. 前記水素型スメクタイトが、水素型スチーブンサイト、水素型ヘクトライト、水素型サポナイト、水素型モンモリロナイト、水素型バーミキュライト、及び水素型バイデライトからなる群より選択される少なくとも1種である項1〜3のいずれかに記載の粘土膜。
項5. 前記水素型スメクタイトの含有量が30質量%以上である項1〜4のいずれかに記載の粘土膜。
項6. 前記有機樹脂が、ポリイミド樹脂である項3〜5のいずれかに記載の粘土膜。
項7. 前記有機樹脂が、ポリイミド電着樹脂である項6に記載の粘土膜。
項8. 前記有機樹脂が、アクリル電着樹脂である項3〜5のいずれかに記載の粘土膜。
項9. JIS−K5600−5−1に準拠したマンドレル屈曲試験において、粘土膜の割れが起こるマンドレルの屈曲直径が30mm以下である項1〜8のいずれかに記載の粘土膜。
項10. 下記の工程(1)〜(3)を有する項1〜9のいずれかに記載の粘土膜の製造方法:
(1)スメクタイトを含む粘土分散液を調製する工程、
(2)工程(1)で調製した粘土分散液を用いて、電気泳動堆積法により電極板上に粘土を堆積させる工程、及び、
(3)工程(2)で堆積した粘土を乾燥する工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐水性に優れた粘土膜を提供することができる。また、本発明によれば、耐水性に優れた粘土膜を効率良く製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】回折ピークの半値幅とピーク強度を示す図である。
図2】粘土膜の層間距離d(001)を模式的に示した図である。
図3】実施例1の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図4】実施例2の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図5】実施例3の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図6】実施例4の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図7】実施例5の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図8】実施例6の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図9】参考例1の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図10】比較例1の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図11】比較例2の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図12】比較例3の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図13】比較例4の粘土膜のX線回折パターンを示す図である。
図14】実施例1〜6の粘土膜のX線回折パターンにおいて2θ=2〜10°に認められた回折ピークを示す図である。
図15】比較例1〜4、参考例1の粘土膜のX線回折パターンにおいて2θ=2〜10°に認められた回折ピークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.粘土膜
本発明の粘土膜は、粘土の層間イオンが水素イオンである水素型スメクタイトを含有し、CuKα線を用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に回折ピークが認められ、前記回折ピークの半値幅をa(deg)とし、前記回折ピークのピーク強度をb(cps)とし、CuKα線を用いたX線回折測定により得られる酸性白土のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークのピーク強度をc(cps)とする場合に、[a/(b/c)]≦5×10-1を満たすことを特徴とする。
【0015】
本発明の粘土膜は、CuKα線を用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおいて、2θ=5〜9°、好ましくは2θ=5〜8°、より好ましくは2θ=6〜7°の範囲に回折ピークが認められる。本発明の粘土膜は、X線回折パターンにおいて、特定範囲の位置に認められる回折ピークの半値幅をa(deg)とし、ピーク強度をb(cps)とし、更に、酸性白土について同様に測定して得られるX線回折パターンにおいて同様の位置に認められる回折ピークのピーク強度をc(cps)とした場合の、比[a/(b/c)]が、特定の数値範囲にあるため、粘土膜の特徴を維持しながら耐水性に優れたものとなる。図1に、回折ピークにおける半値幅aと、ピーク強度bを示す。図1中のFWHMが半値幅aを示し、Iがピーク強度を示す。回折ピークの半値幅aとは、回折強度が当該ピーク強度の50%の値での幅(半値全幅、FWHM)である。
なお、本明細書においては、CuKα線を用いたX線回折測定により得られる粘土膜のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークのピーク強度をbとし、同様にCuKα線を用いたX線回折測定により得られる酸性白土のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークのピーク強度をcとする場合、酸性白土のピーク強度に対する粘土膜のピーク強度の比(b/c)の値を「相対ピーク強度」とも称する。
【0016】
本発明の粘土膜は、CuKα線を用いたX線回折測定により得られる回折パターンにおいて、2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークの半値幅aと、前記の酸性白土のピーク強度cに対するピーク強度bの相対ピーク強度(b/c)とが、[a/(b/c)]≦5×10-1を満たす。粘土膜のX線回折パターンにおいて、前記回折ピークの半値幅aと前記相対ピーク強度との比が前記の数値範囲を満たすことにより、粘土膜を構成する粘土が均一に積層され、結晶の配向が良好となり、その結果、耐水性に優れた自立膜とすることができる。本発明において、前記半値幅aと前記相対ピーク強度(b/c)は、粘土膜の結晶配向がより一層良好となり、その結果、より優れた耐水性を得ることから、[a/(b/c)]≦2×10-1を満たすことが好ましく、[a/(b/c)]≦1.5×10-1を満たすことがより好ましい。[a/(b/c)]値の下限としては、具体的には[a/(b/c)]≧1×10-5、好ましくは[a/(b/c)]≧1×10-3が挙げられ、より好ましくは[a/(b/c)]≧0.4×10-1が挙げられる。
【0017】
なお、前記回折パターンにおいて、2θ=5〜9°の範囲に2つ以上の回折ピークが存在する場合は、2θ=5〜9°の範囲に存在する層間イオンが水素イオンである水素型スメクタイトの回折ピークの半値幅aと酸性白土のピーク強度c(cps)に対するピーク強度b(cps)の相対ピーク強度(b/c)が前述の範囲を満たすことを要する。層間イオンが水素イオンである水素型スメクタイトの回折ピークは、通常は2θ=6〜6.5°の範囲に認められる。
【0018】
回折ピークのピーク強度は、測定装置の違い等によって測定値が変動することがあるので、本発明では、標準物質として酸性白土を使用し、その回折ピークのピーク強度cによって当該変動を補正する。酸性白土は、モンモリロナイトを主成分とし、水に懸濁させるとH+を放出する粘土であり、一般的な化学成分として、SiO2、Al23、Fe23、CaO、MgO等を含有する。本発明において、標準物質として使用される酸性白土は、層間距離が1.4〜1.6nmであり、かつNaとKの組成値の総和が1質量%以下であり、具体的には、商品名「オドアース」(グレード:オドアース04)」(黒崎白土工業株式会社製)が使用される。
【0019】
本発明において、X線回折測定の測定条件としては、具体的には以下が挙げられる。
<X線回折の測定条件>
X線源:Cu−Kα(1.54184Å)
X線管電流:30mA
X線管電圧:40kV
走査範囲:2θ=2〜90°
測定法:反射法
サンプル調製:シリコン無反射試料ホルダーに、作成した粘土膜(膜厚は25μm以下)を乗せ両面テープで固定する。なお、酸性白土を測定する場合には、酸性白土の粉体をシリコン無反射板に載せ、測定を行う。
【0020】
本発明の粘土膜は、水素型スメクタイトを含有する。水素型スメクタイトを含有することで水蒸気バリア性を備えることができるが、本発明の粘土膜は、上記の特性を有する水素型スメクタイトを含有することによって、優れた耐水性も備えることができる。本発明の粘土膜における水素型スメクタイトとは、結晶層間に水素イオンを含むスメクタイトである。スメクタイトは、ケイ酸からなる四面体層が、金属酸化物及び/又は水酸化物である八面体層を挟んで存在する2:1層構造の単位結晶層からなる結晶構造を有する粘土鉱物の一種であり、天然物であっても、合成物であってもよい。具体的には、スチーブンサイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、バイデライト等が挙げられる。本発明において、水素型スメクタイトとしては、好ましくは水素型スチーブンサイト、水素型ヘクトライト、水素型サポナイト、水素型モンモリロナイト、水素型バーミキュライト、及び水素型バイデライトからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは水素型モンモリロナイトが挙げられる。水素型スメクタイトは、天然物であっても、合成物であってもよい。また、本発明の粘土膜は、これらの水素型スメクタイトの1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0021】
本発明における水素型スメクタイトの層間距離としては、結晶配向が良好となり、耐水性がより一層優れた自立膜とすることができる点で、2nm以下が好ましく、1.5nm以下がより好ましい。前記層間距離の下限としては、1.0nm以上が挙げられる。本明細書中において層間距離とは、図2に示すように、水素型スメクタイトの単位層の厚みと単位層間の空隙の距離の和である。なお、層間距離は、水素型スメクタイトの結晶構造の(001)面のX線回折測定により求めることができる。具体的には、層間距離d(001)は、下記式(1):
d(001)=λ/2sinθ (1)
(式中、λはX線の波長であり、2θは(001)面からの回折ピークが得られるX線の入射角度である。)により求めることができる。
【0022】
前記水素型スメクタイトの平均粒子径としては、例えば0.02〜2μmが挙げられ、好ましくは0.05〜2μm、より好ましくは0.1〜1μmが挙げられる。前記水素型スメクタイトの平均粒子径は、光散乱法により測定して得られる値である。
【0023】
前記水素型スメクタイトのアスペクト比(平面方向の円相当直径/厚み)としては、例えば10以上、好ましくは15以上、より好ましくは20〜500が挙げられる。アスペクト比は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、観察した粘土粒子の平面方向の円相当直径と厚さの比率(平面方向の円相当直径/厚さ)を求めることにより得られる値である。
【0024】
本発明の粘土膜における水素型スメクタイトの含有量としては、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60〜100質量%、特に好ましくは70〜100質量%が挙げられる。
【0025】
本発明の粘土膜は、更に有機樹脂を含んでいてもよい。有機樹脂を含有し、複合化(コンポジット化)することによって、耐水性又は水蒸気バリア性をより一層向上させ、更に粘土膜の成膜性、耐クラック性、耐熱性を向上させることができる。
【0026】
有機樹脂との複合化の方法としては、粘土を水等の溶媒に分散させた分散液に有機樹脂を混合し、粘土と有機樹脂を同時に電気泳動させて、電極上に積層させることで、有機樹脂と粘土を複合化する方法;電極上に堆積した粘土膜を有機樹脂のワニスに浸漬する方法;電極上に堆積した粘土膜に有機樹脂のワニスを塗布することで複合化する方法等が挙げられる。
【0027】
有機樹脂としては、電気泳動を用いて複合化する場合は、アニオン電着可能な有機樹脂が好ましく、例えば、アクリル電着樹脂、ポリイミド電着樹脂のアニオン電着樹脂が好ましく挙げられる。
【0028】
浸漬又は塗布により複合化する場合は、ワニスを用いることができ、前記有機樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、アクリル樹脂、カルボキシルメチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリジアリルアミン系樹脂、メトキシメチル化ポリアミド樹脂、メトキシエチレンマレイン酸系樹脂、テトラメチルアンモニウムクロリド樹脂、フェノール樹脂、カプロラプタム、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリアミノ樹脂、ポリ乳酸、スルフォン酸ポリマー、ブチルラバー、ポリイソブチレン、ラテックスポリマー、シリコーン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。
【0029】
これらの有機樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、本発明の粘土膜において使用する有機樹脂としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂が好ましく、粘土膜の耐熱性が向上し得る点で、ポリイミド樹脂がより好ましい。
【0030】
本発明の粘土膜における有機樹脂の含有量としては、好ましくは70質量%以下、より好ましくは0〜40質量%、更に好ましくは0〜30質量%が挙げられる。
【0031】
本発明の粘土膜は、前記水素型スメクタイト、有機樹脂以外に、本発明の効果に影響を与えない範囲内で他の成分を更に含有していてもよい。本発明の粘土膜に使用される他の成分としては、例えば、無機繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0032】
本発明の粘土膜の厚さとしては、通常1〜50μm、好ましくは2〜40μm、より好ましくは10〜30μmが挙げられる。
【0033】
本発明の粘土膜は、JIS−K5600−5−1に準拠したマンドレル屈曲試験において、粘土膜の割れが起こるマンドレルの屈曲直径が30mm以下であることが好ましい。前記マンドレルの屈曲直径が30mm以下であれば、優れた柔軟性を備えることができる。本発明の粘土膜の割れが起こるマンドレルの屈曲直径としては、15mm以下がより好ましく、5mm以下が更に好ましい。マンドレル屈曲試験におけるマンドレルの屈曲直径とは、JIS−K5600−5−1に準拠したマンドレル屈曲試験法において得られる値であり、具体的には、異なる直径を有するマンドレル棒に粘土膜を巻きつけ、粘土膜が破損する直前のマンドレル棒の直径をいう。また、破損とは、膜に亀裂が入る程度に粘土膜が破損した場合をいう。
【0034】
2.粘土膜の製造方法
本発明の粘土膜を製造する方法については、前述の特性を有する粘土膜が得られることを限度として特に制限されないが、製造効率が優れる点で、好ましくは、粘土分散液を用いて電気泳動堆積法により粘土膜を形成する方法が挙げられる。電気泳動堆積法は、粘土分散液に電極板を浸漬し、電流を流すことにより、負に帯電した粘土粒子が陽極板表面に積層して膜を形成する方法である。
【0035】
前記電気泳動堆積法を用いることにより、層間距離がより小さい粘土膜を製造することができ、特に水素型スメクタイトを含む粘土膜を効率よく製造することができる。例えば、結晶層間にナトリウムイオン等の交換性陽イオンを含むスメクタイトの粘土分散液を用いて電気泳動を行うことにより、電極板表面にスメクタイトが積層して膜が形成される際に、層間の陽イオンの交換が行われて、水素型スメクタイトが積層した粘土膜を形成することができる。また、こうして形成された粘土膜は、基材に担持されなくてもそれ自身で膜形状を維持できる、いわゆる自立膜として得ることができる。またこの電気泳動堆積法を用いることにより、粘土膜を構成する粘土が均一に積層され、結晶の配向が良好となり、前述の特性を有する本発明の粘土膜を製造することができる。すなわち、CuKα線を用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に回折ピークが認められ、前記回折ピークの半値幅をa(deg)とし、前記回折ピークのピーク強度をb(cps)とし、更にCuKα線を用いたX線回折測定により得られる酸性白土のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=5〜9°の範囲に認められる回折ピークのピーク強度をc(cps)とする場合、[a/(b/c)]≦5×10-1を満たす、粘土膜を製造することができる。
【0036】
具体的には、本発明の粘土膜の製造方法の好適な一態様は、以下の工程(1)〜(3)を有する。
(1)スメクタイトを含む粘土分散液を調製する工程
(2)工程(1)で調製した粘土分散液を用いて、電気泳動堆積法により電極板上に粘土を堆積させる工程
(3)工程(2)で堆積した粘土を乾燥させる工程
以下に、各工程について詳細に説明する。
【0037】
工程(1)
本発明の粘土膜の製造方法においては、まず、スメクタイトを含む粘土分散液を調製する。
前記粘土分散液は、スメクタイトを公知の方法で溶媒に分散させることにより調製することができる。スメクタイトの種類については、特に制限されないが、例えば、スチーブンサイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、バイデライトが挙げられ、好ましくはモンモリロナイトが挙げられる。スメクタイトとしては、これらのうち1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
水素型スメクタイトの粘土膜を形成するには、結晶層間にナトリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン等の交換性陽イオンを含むスメクタイトである、ナトリウム型スメクタイト、リチウム型スメクタイト、カルシウム型スメクタイト等を使用することができる。なかでも、入手性に優れ、安価であり、水素型スメクタイトの粘土膜の製造効率が良好な点で、ナトリウム型スメクタイトが好ましい。
【0039】
粘土分散液に使用する溶媒としては、好ましくは水、又は水と有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えばエタノール、メタノール等のアルコール系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−3−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。
【0040】
粘土分散液におけるスメクタイトの濃度としては、分散した粘土のナノシート(層間剥離させた粘土の結晶)の泳動のしやすさ、ハンドリング性の悪化を防止する観点から、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜10質量%が挙げられる。
【0041】
工程(2)
次に、工程(1)で調製した粘土分散液を用いて電気泳動堆積法により電極板上に粘土を堆積させる。
【0042】
使用する電極板の材料としては、好ましくは銅、アルミ、鉄、ニッケル、ステンレス、金銀等の、金属板又は金属フィルムが挙げられる。また、電極板として、カーボン板やシート、導電性を持った有機樹脂板やフィルムを用いてもよい。特に、積層させた粘土膜の剥離の容易さや電極の腐食、電気の流れやすさの観点からは、銅、又はアルミが好適に用いられる。
【0043】
電気泳動堆積法は、公知の方法で行うことができる。粘土を電気泳動堆積させる際の電圧としては、電極上に水素の気泡が発生して粘土膜を破壊するおそれがあるため低い方が好ましく、具体的には、例えば50V以下が挙げられる。また、使用する電源としては、直流電源が好ましい。電圧、通電時間を適宜調整することにより、形成する粘土膜の厚さを調整することができるが、通常、電圧10〜200V、通電時間1〜30分で行うとよい。
【0044】
粘土を堆積させる際の温度としては特に限定されないが、操作性の観点から10〜50℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
【0045】
なお、工程(2)により、電極板上に堆積させた粘土は、疎水性となっており、堆積させた粘土の含水率は極めて低い。そのため、粘土膜の乾燥のための蒸発させる溶媒が非常に少なく、製造効率が高い。
【0046】
工程(3)
工程(2)で堆積した粘土を乾燥させることによって、粘土膜を得ることができる。本発明の粘土膜は、電極板表面上に形成された粘土膜のままでも、粘土膜のコーティング膜として使用できるが、電極板から粘土膜を剥離させることで自立膜として得ることができる。粘土膜を乾燥させる際の乾燥温度としては、一般的に60〜200℃が挙げられる。乾燥時間としては、通常60分〜1440分が挙げられる。
【0047】
以上の工程により、粘土の結晶の層が高度に積層し、緻密に配向した、本発明の粘土膜を簡便に製造することができる。得られた粘土膜は耐水性に優れる。
【0048】
また、本発明の粘土膜が、有機樹脂として電着樹脂を使用し、粘土と有機樹脂の複合体を含む場合は、前述の粘土分散液に電着樹脂を混合した後、前述と同様に電気泳動堆積法により電極板上に粘土と有機樹脂とを複合化した粘土膜を形成して、乾燥することにより製造することができる。有機樹脂としては、前記の有機樹脂が挙げられる。粘土分散液における有機樹脂の含有量としては、好ましくは70質量%以下、より好ましくは0〜40質量%、更に好ましくは0〜30質量%が挙げられる。
【0049】
また、前述の工程(2)により粘土が堆積した電極板を、粘土分散液から取り出し、電極上に堆積した粘土膜を水洗して原料粘土を洗い流した後、電極板を有機樹脂のワニスに浸漬、もしくは有機樹脂のワニスを塗布し、次いでワニスの溶媒を乾燥させた後、電極から剥離することで粘土と有機樹脂を含む粘土膜を製造することができる。有機樹脂のワニスにおける有機樹脂の含有量としては、好ましくは70質量%以下、より好ましくは0〜40質量%、更に好ましくは0〜30質量%が挙げられる。ワニスの溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。
【0050】
ワニスの乾燥温度としては、ワニスの種類に応じて適宜選択すればよい。一般的に、60〜200℃が挙げられる。また、熱硬化性樹脂のワニスの場合は、乾燥後に硬化のための焼成を行ってもよい。例えば、ポリイミドワニスの場合は、乾燥後にイミド化のための焼成工程を行うとよい。この場合の焼成温度としては、300〜350℃が挙げられる。
【0051】
有機樹脂と複合化した場合の粘土と有機樹脂の割合としては、特に限定されないが、粘土膜の特性を維持する観点から、粘土の割合として50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0052】
以上の工程により、耐水性に優れた自立膜である本発明の粘土膜を効率よく製造することができる。
【0053】
3.用途
本発明の粘土膜は、耐水性に優れた自立膜とすることができ、且つ水蒸気バリア性に優れる。このため、耐水性、又は水蒸気バリア性が要求されるものに好適に使用することができる。具体的には、本発明の粘土膜は、包装材、封止剤、ディスプレイ材、電気絶縁材等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【0055】
(実施例1)粘土膜(I)の製造
クニピアF(精製ベントナイト(主成分モンモリロナイト)、ナトリウム型、クニミネ工業製)を水(溶媒)に分散させて、濃度が0.5質量%の粘土分散液を調製した。前記粘土分散液中に電極(陽極はアルミ板、陰極はステンレス板)を挿入し、前記粘土分散液を約100rpmで撹拌しながら、昇圧速度1V/秒で電圧を印加した。印加電圧20Vで、アルミ電極表面に層間イオンが水素イオンであるベントナイトが析出した。電極を分散液から引き上げ、110℃で30分乾燥させ、ベントナイトの白色膜を得た。得られた粘土膜の膜厚は、3.3μmであった。
【0056】
得られた粘土膜について、下記の測定条件でX線回折測定を行い、X線回折パターンを得た。2θ=6.00°に回折ピークが認められ、当該回折ピークの半値幅a(deg)と、当該回折ピークのピーク強度b(cps)の値を得た。また、酸性白土の粉末(商品名「オドアース」(グレード:オドアース04)」、黒崎白土工業株式会社製)について同じ測定条件でX線回折測定を行い、X線回折パターンを得た(参考例1)。当該酸性白土において2θ=5.92°に回折ピークが認められ、当該回折ピークのピーク強度c(cps)の値を得て、相対ピーク強度x(b/c)を算出した。そして、a/xの値を算出した。また、d(001)の値を得た。
【0057】
<X線回折の測定条件>
装置:SmartLab(株式会社Rigaku製)
X線源:Cu−Kα
X線管電流:30mA
X線管電圧:40kV
走査範囲:2θ=2〜90°
測定法:反射法
サンプル調製:シリコン無反射試料ホルダー(ホルダー形状:円筒、直径24mm、深さ0.2mm)に、作成した粘土膜を直径23mmの円状に切り出したものを乗せ、両面テープで固定した。なお、酸性白土(参考例1)は、酸性白土の粉体(0.098g)をシリコン無反射試料ホルダーに充填し、測定を実施した。
【0058】
(実施例2)粘土膜(II)の製造
印加電圧を50Vにした以外は実施例1と同様にして白色の粘土膜を作製した。得られた粘土膜の膜厚は8.3μmであった。得られた粘土膜について、実施例1と同様にX線回折測定を行った。2θ=5.82°に回折ピークが認められ、当該回折ピークの半値幅a(deg)と当該回折ピークのピーク強度b(cps)の値を得た。また、実施例1と同様に、酸性白土のピーク強度に対する相対ピーク強度x(b/c)を算出し、a/xの値を得た。また、d(001)の値を得た。
【0059】
<プロトン交換率の評価>
また、実施例2で得られた粘土膜について、下記の方法でプロトン交換率を評価した。得られた粘土膜0.1gをテフロン製蓋付き瓶に入れ、そこへ1Mの酢酸アンモニウム水溶液を10ml加え、30℃の恒温槽で3時間振とうした。得られた分散液を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液を回収した。この濾液を10倍に希釈してICP発光分光分析(SPS3100、SII社製)に供した。対照として、材料として用いたクニピアF(精製ベントナイト(主成分モンモリロナイト)、ナトリウム型、クニミネ工業製)粉末について同様にして分析した。対照であるクニピアFの濾液のナトリウム濃度は22ppm、水素型スメクタイト含有粘土膜の濾液のナトリウム濃度は1.5ppmと計算された。結果として、ナトリウムイオン濃度の比較からクニピアF中の約93%のナトリウムイオンが水素イオンに交換されたことが分かった。なおICP発光分光分析は、ICP発光分光分析装置(SPS3100、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて以下の条件で行った。
Na標準液(関東化学株式会社製、1004mg/ml[20℃])を蒸留水にて希釈し、ナトリウムイオンが0.5、1、5、10ppm(mg/L)の溶液を調製した。これらの溶液について、ナトリウムイオン由来の発光強度を求め、検量線を作成した。その検量線に従い、上記粘土膜及びクニピアFの濾液中のナトリウムイオンの濃度を定量した。
【0060】
(実施例3)粘土膜(III)の製造
クニピアF(精製ベントナイト(主成分モンモリロナイト)、ナトリウム型、クニミネ工業製)とエレコートAE−X(アクリル系樹脂アニオン電着塗料、株式会社シミズ製)を質量比9:1で含み、これらの総量が10質量%となるよう、水に分散させて粘土分散液を調製した。調製した粘土分散液中に電極(陽極はアルミ板、陰極はステンレス板)を挿入し、電圧(50V)・昇圧速度1V/秒で印加した。300秒印加して、アルミ電極表面に白色の析出物を得た。電極を粘土分散液から引き上げ、110℃で30分乾燥させ、ベントナイトの白色膜を得た。得られた粘土膜の膜厚は5.0μmであった。得られた粘土膜について、実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて2θ=6.30°に回折ピークが認められた。実施例1と同様にして、a/x値、及びd(001)を求めた。
【0061】
また、実施例3で得られた粘土膜について、熱重量分析(Thermo plus Evo2 TG8120(株式会社Rigaku社製)、設定温度:1000℃、昇温速度:10℃/min、雰囲気:空気)を行った。具体的には、熱重量分析の結果によれば、200℃から600℃の範囲で有機物の分解に起因する重量減少が観察された。その重量は、6.49質量%であった。重量減少値は、分散液に含まれる電着塗料の比率と対応しており、電着塗料が粘土膜に含まれることが確認された。以上から、層間イオンが水素イオンであるベントナイトとアクリル樹脂からなる複合化膜が得られたことが確認された。
【0062】
(実施例4)粘土膜(IV)の製造
クニピアF(精製ベントナイト(主成分モンモリロナイト)、ナトリウム型、クニミネ工業製)とエレコートAE−X(アクリル系樹脂アニオン電着塗料、株式会社シミズ製)を質量比8:2で含み、これらの総量が10質量%となるよう、水に分散させて調製した粘土分散液を用いた以外は、実施例3と同様にして膜厚が5.3μmの粘土膜を得た。得られた粘土膜について、実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて2θ=5.94°に回折ピークが認められ、実施例1と同様にして、a/x値、及びd(001)を求めた。
【0063】
また、実施例3と同様に、得られた粘土膜について熱重量分析を行ったところ、200℃から600℃の範囲で有機物の分解に起因する重量減少が観察された。その質量は、18.02質量%であった。
【0064】
(実施例5)粘土膜(V)の製造
(ポリアミド酸ワニスの合成)
撹拌機と温度計を備えた5Lの4つ口フラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル400gとN−メチル−2−ピロリドン(NMP)4104gを仕込み、撹拌しながら液温を50℃に昇温して溶解させた。次に、前記溶液に、無水ピロメリット酸220gとビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物280gを徐々に添加した。添加終了後、同温度で1時間撹拌し、NMPに、式(I)で表される芳香族ポリアミド酸が18.0質量%の濃度で溶解されてなるポリアミド酸ワニスを得た。
【0065】
【化1】
(式(I)中、nは2以上の整数である。)
【0066】
(粘土−有機樹脂複合膜の製造)
クニピアF(精製ベントナイト(主成分モンモリロナイト)、ナトリウム型、クニミネ工業製)を水に分散させ、濃度0.5質量%の粘土分散液を調製した。前記粘土分散液に電極(陽極:アルミ板/陰極:ステンレス板)を挿入し、50Vの電圧を300秒印加した。白色膜が析出した電極を分散液から引き上げ、ブロアーによって余分な水を取り除いた。その後、その電極を、前記ポリアミド酸ワニスをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で8.2質量%に希釈したワニスに30分浸漬した。浸漬後、電気炉で80℃2時間乾燥後、さらに200℃で20分、300℃で30分加熱した。得られた膜はポリイミド由来の茶褐色を呈しており、ポリイミドが含浸していることが示唆された。この粘土膜は電極から容易に分離し、自立膜として得ることができた。得られた粘土膜の膜厚は、13μmであった。得られた粘土膜について、実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて2θ=6.64°に回折ピークが認められ、実施例1と同様にして、a/x値、及びd(001)を求めた。
【0067】
(実施例6)粘土膜(VI)の製造
クニピアF(精製ベントナイト(主成分モンモリロナイト)、ナトリウム型、クニミネ工業製)を水に分散させ、濃度0.5質量%の粘土分散液を調製し、これをSUS容器(5cm×10cm×15cm)に入れた。その後、この容器にアルミ板(縦6.7cm、横3.0cm)を挿入した。当該容器を陰極、アルミ板を陽極に用いて、30Vで5分間印加させ、アルミ板表面上に白色の析出物を得た。この膜を、そのまま実施例5と同様の方法で作成したポリアミド酸ワニスをN−メチル−2−ピロリドンで8.2質量%に希釈したワニスに一晩含浸させた。その後、60℃60分、100℃60分、130℃20分、200℃20分、270℃20分、300℃30分の順番に乾燥・加熱し、イミド化を行い、粘土膜を得た。得られた粘土膜の膜厚は、11μmであった。得られた粘土膜について、実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて2θ=6.68°に回折ピークが認められたが、2θ=2〜6周辺のブロードなピークと重なっており、低値側のピーク形状が明確ではなかった。ピーク形状は左右対称となるので、高値側のピーク形状で低値側のピークを補正し、a/x値、及びd(001)を求めた。
【0068】
実施例6で得られた粘土膜について、耐熱性・不燃性試験を行った。確認方法は、ライターで30秒間炙り、炙っている状態を観察した。粘土膜自体が燃焼し発火している様子は見られなかった。加熱後の膜は、煤により、黒い箇所があったが、燃焼による発泡跡なども見られなかった。さらに、煤を落とし観察すると、表面状態は加熱前と変化なかった。即ち、実施例6で得られた粘土膜は、優れた耐熱性及び不燃性を有していることが確認された。
【0069】
また、実施例6で得られた粘土膜の絶縁耐力を測定した。絶縁耐力の測定には、絶縁破壊耐電圧試験機(安田精機製作所製)を用いた。試験電源条件は周波数60Hz、昇圧速度0.5kV/s、破断電流5mA、最大電圧10kVに設定した。その結果、実施例6で得られた粘土膜の絶縁耐力は203kV/mmであり、優れた絶縁耐力を有していることが確認された。
【0070】
(比較例1)
クニピアF(精製ベントナイト(主成分モンモリロナイト)、ナトリウム型、クニミネ工業製)を水に分散させ、濃度4質量%の粘土分散液を調製した。前記粘土分散液を、プラスチックトレイ(縦約10cm、横約7cm、深さ約1.3cm)に流し込み、100℃で1日以上乾燥した。乾燥後、膜厚約0.15mmのベントナイトからなる粘土膜を得た。得られた粘土膜の膜厚は、18μmであった。得られた粘土膜について、実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて、2θ=7.04°付近に回折ピークが認められ、実施例1と同様にして、a/x値、及びd(001)を求めた。
【0071】
(比較例2)
粘土の層間イオンが水素イオンである合成スメクタイト(スチーブンサイト、クニミネ工業製)を水に分散させ、濃度1質量%の粘土分散液98gを調製した。更に、添加物としてカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMCNa)を1g加え、2時間振蕩させた。次にPETフィルム上にバーコーターでwet膜厚500μmの複合化膜を製膜し、50℃で乾燥させた。得られた膜をPETフィルムから剥離させようとしたところ、膜が壊れてしまい、自立膜として得ることはできなかった。なお、膜厚は、22μmであった。
得られた固形物について、実施例1と同様にしてX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて、2θ=3.74°に回折ピークが認められ、実施例1と同様にして、a/x値、及びd(001)を求めた。
【0072】
(比較例3)
比較例2と同様の条件で、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩に代えて、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩(CMCNH4)を用いて複合化膜を作製した。得られた膜をPETフィルムから剥離させようとしたところ、膜が壊れてしまい、自立膜として得ることはできなかった。なお、膜厚は、5.7μmであった。得られた固形物について、実施例1と同様にしてX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて、2θ=3.54に回折ピークが認められ、実施例1と同様にして、a/x値、及びd(001)を求めた。
【0073】
(比較例4)
比較例1において、クニピアFの代わりにクニピアM(商品名、リチウム型スメクタイト、クニミネ工業社製)を使用した以外は、比較例1と同様の方法にて粘土膜を得た。なお、膜厚は、22μmであった。得られた粘土膜について実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて2θ=7.08°に回折ピークが認められ、実施例1と同様にして、a/x値、及びd(001)を求めた。
【0074】
<評価>
また、前記で得られた粘土膜について、下記の評価を行った。なお、比較例2〜3では、自立膜が得られなかったため、評価を行わなかった。また、実施例6では、自立膜を得ていないので評価を行わなかった。
【0075】
(マンドレル屈曲試験)
実施例及び比較例で得られた粘土膜について、JIS−K5600−5−1に準拠して、直径1〜32mmのマンドレル棒に順に巻きつけた際に粘土膜が破損するかどうかを観察し、粘土膜が破壊されなかったマンドレル棒の最小直径値を、粘土膜の屈曲直径として求めた。
【0076】
(耐水試験)
実施例及び比較例で得られた粘土膜をイオン交換水(約20℃)に浸漬し、粘土膜の形態が水中で保持されるかどうかを下記の基準にて評価した。
◎:膜形状を70時間以上保持することができた。
○:膜形状を24時間以上保持することができた。
×:膜形状を24時間保持することができなかった。
【0077】
【表1】
【0078】
結果を表1に示す。実施例1〜6の粘土膜は、比較例1及び比較例4の粘土膜と比べて、耐水性に優れていることが分かる。また、実施例1〜6の粘土膜は、X線回折パターンにおける2θ=5〜9°に認められる回折ピークのa/x値が5×10-1以下であり、粘土膜を構成する粘土結晶の配向が良好となり、粘土膜の積層構造の規則性が高いことが認められた。
また、図14及び図15に、実施例1〜6、比較例1〜4、参考例1のX線回折パターンの2θ=2〜10°に認められる回折ピークをまとめたグラフを示す。図14からは、実施例1〜6のピークは、比較例2や比較例3に比してシャープであり、比較例1や比較例4のピークと同程度にシャープである。この結果から、実施例1〜6の粘土膜は、積層構造の規則性が高いことが認められた。
図1
図2
図3
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