)とアゾメチン基を共に有する配位子、及び化学式(III)で示されるβ−ジケトナト配位子が、共に配位し、少なくとも1種の陰イオンが更に配位してよい、希土類金属を含む、希土類金属錯体である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態の、水酸基又はチオール基とアゾメチン基を有する配位子と、β−ジケトナト配位子が、共に配位した希土類金属を含む希土類金属錯体及びそれを含む光機能材料用透明固定担体等を詳細に説明する。
【0015】
本発明の実施形態の希土類金属錯体は、
化学式(I):
【化4】
[化学式(I)において、
A
1は、OH基又はSH基を示し、
A
2は、水素、重水素、C1〜C30のアルキル基(−C
nH
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18、より好ましくはn=1〜6、特に好ましくはn=1〜3)、C3〜C30のシクロアルキル基(−C
nH
2n−1:ここでn=3〜30、好ましくはn=3〜18、より好ましくはn=3〜6、特に好ましくはn=3)、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基(−C
nF
2n+1及び−C
nCl
2n+1等、好ましくは−C
nF
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18、より好ましくはn=1〜6、特に好ましくはn=1〜3)及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基(−C
nF
2n−1及び−C
nCl
2n−1等、好ましくは−C
nF
2n−1:ここでn=3〜30、好ましくはn=3〜18、より好ましくはn=3〜6、特に好ましくはn=3)から選択され、C1〜C30のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基は、下記群(G1):
フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族基;
パーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、パーフルオロビフェニル基、パークロロフェニル基、パークロロナフチル基、及びパークロロビフェニル基等のパーハロゲン化芳香族基;
N、O、及びS等から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を環中に含むヘテロ芳香族基;
直鎖又は分枝を有するC1〜C30のアルキル基(C
nH
2n+1:n=1〜30);
パーフルオロアルキル基(C
nF
2n+1:n=1〜30)及びパークロロアルキル基(C
nCl
2n+1:n=1〜30)等の、直鎖又は分枝を有するC1〜C30のパーハロゲン化アルキル基;
ブテニル基等の直鎖又は分枝を有するC3〜C30のアルケニル基;
パーフルオロビニル基、パーフルオロアリル基及びパーフルオロブテニル基等のパーフルオロアルケニル基及びパークロロアルケニル基等の、直鎖又は分枝を有するC3〜C30のパーハロゲン化アルケニル基;
C3〜C30のシクロアルキル基(C
nH
2n−1:n=3〜30);
パーフルオロシクロアルキル基(C
nF
2n−1:n=3〜30)及びパークロロシクロアルキル基(C
nCl
2n−1:n=3〜30)等のC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基;
シクロペンテニル基及びシクロヘキセニル基等のC3〜C30のシクロアルケニル基;
パーフルオロシクロアルケニル基及びパークロロシクロアルケニル基等のC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルケニル基;及び
C3〜C30のアルキニル基、並びに
ハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
A
3は、C2〜C30のアルキレン基(−C
nH
2n−:ここでn=2〜30、好ましくは、n=4〜12)から選択され、そのアルキレン基は、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
A
1とアゾメチン基が共に結合するベンゼン環について、A
1とアゾメチン基が結合していない、ベンゼン環の隣接する2つの炭素原子は、−C
4H
4−で接続されてナフタレン環を形成することができ、
そのベンゼン環と形成され得るナフタレン環は、両方共、更に、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができる]
で示される、二組の水酸基又はチオール基とアゾメチン基を有する配位子;及び
化学式(II):
【化5】
[化学式(II)において、
A
1及びA
2は、化学式(I)のものと同じであり、
A
4は、C1〜30のアルキル基(−C
nH
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18)から選択され、そのアルキル基は、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
A
1とアゾメチン基が共に結合するベンゼン環について、化学式(I)のベンゼン環と同様にナフタレン環を形成してよく、
そのベンゼン環と形成され得るナフタレン環は、両方共、更に、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができる]
で示される、一組の水酸基又はチオール基とアゾメチン基を有する配位子からなる群から選択される、水酸基又はチオール基とアゾメチン基を共に有する配位子、並びに
化学式(III)
【化6】
[化学式(III)において、
Xは、両方共同一であっても各々が異なってもよい、上記群(G1)から選択される置換基を示し、
Zは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、メチル基、エチル基、フェニル基、水素原子又は重水素原子を示す]
で示されるβ−ジケトナト配位子
が、共に配位し、
過塩素酸イオン、硝酸イオン、カルボン酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選択される少なくとも1種の陰イオンが更に配位してよい、
希土類金属を含む。
【0016】
化学式(I)の配位子の片方のA
1、化学式(II)の配位子のA
1及び化学式(III)の配位子の二つの酸素に各々点線が記載されている。各々の点線は、希土類金属との間に1つの配位結合を形成することを示す。従って、β−ジケトナト配位子は、合計2つの配位結合を形成することを示す。化学式(I)中の他方のA
1には、点線を記載していない。これは、配位結合を形成しても、配位結合を形成しなくてもよいことを示す。
【0017】
更に、本発明の実施形態の希土類金属錯体は、
下記化学式(IV)、(V)、(VI)、及び(VII)で示される化学構造から選択される少なくとも1種の化学構造を含むことが好ましい。
化学式(IV):
【化7】
[化学式(IV)において、
Lnは、希土類金属原子を示し、n1は、2又は3を示し、
β−ジケトナト配位子について、Xは、両方共同一であっても各々が異なってもよい、下記群(G1):
フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族基;
パーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、パーフルオロビフェニル基、パークロロフェニル基、パークロロナフチル基、及びパークロロビフェニル基等のパーハロゲン化芳香族基;
N、O、及びS等から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を環中に含むヘテロ芳香族基;
直鎖又は分枝を有するC1〜C30のアルキル基(C
nH
2n+1:n=1〜30);
パーフルオロアルキル基(C
nF
2n+1:n=1〜30)及びパークロロアルキル基(C
nCl
2n+1:n=1〜30)等の直鎖又は分枝を有するC1〜C30のパーハロゲン化アルキル基;
ブテニル基等の直鎖又は分枝を有するC3〜C30のアルケニル基;
パーフルオロビニル基、パーフルオロアリル基及びパーフルオロブテニル基等のパーフルオロアルケニル基及びパークロロアルケニル基等の直鎖又は分枝を有するC3〜C30のパーハロゲン化アルケニル基;
C3〜C30のシクロアルキル基(C
nH
2n−1:n=3〜30);
パーフルオロシクロアルキル基(C
nF
2n−1:n=3〜30)及びパークロロシクロアルキル基(C
nCl
2n−1:n=3〜30)等のC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基;
シクロペンテニル基及びシクロヘキセニル基等のC3〜C30のシクロアルケニル基;
パーフルオロシクロアルケニル基及びパークロロシクロアルケニル基等のC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルケニル基;及び
C3〜C30のアルキニル基、
から選択される置換基を示し
Zは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、メチル基、エチル基、フェニル基、水素原子又は重水素原子を示し、n2は、1〜3の整数を示し、
Yは、過塩素酸イオン、硝酸イオン、カルボン酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選択される少なくとも1種でありえ、n3は、0〜2の整数を示し、
二組の水酸基又はチオール基とアゾメチン基を有する配位子について、
A
1は、OH基又はSH基を示し、
A
2は、水素、重水素、C1〜C30のアルキル基(−C
nH
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18、より好ましくはn=1〜6、特に好ましくはn=1〜3)、C3〜C30のシクロアルキル基(−C
nH
2n−1:ここでn=3〜30、好ましくはn=3〜18、より好ましくはn=3〜6、特に好ましくはn=3)、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基(−C
nF
2n+1及び−C
nCl
2n+1等、好ましくは−C
nF
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18、より好ましくはn=1〜6、特に好ましくはn=1〜3)及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基(−C
nF
2n−1及び−C
nCl
2n−1等、好ましくは−C
nF
2n−1:ここでn=3〜30、好ましくはn=3〜18、より好ましくはn=3〜6、特に好ましくはn=3)から選択され、C1〜C30のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基は、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
A
3は、C2〜C30のアルキレン基(−C
nH
2n−:ここでn=2〜30、好ましくは、n=4〜12)から選択され、そのアルキレン基は、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
A
1とアゾメチン基が共に結合するベンゼン環について、A
1とアゾメチン基が結合していない、ベンゼン環の隣接する2つの炭素原子は、−C
4H
4−で接続されてナフタレン環を形成することができ、
そのベンゼン環と形成され得るナフタレン環は、両方共、更に、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
n4は、1〜3の整数を示す]、
化学式(V):
【化8】
[化学式(V)において、
n5は、2以上の整数を示すほかは、化学式(IV)のものと同様である]、
化学式(VI):
【化9】
[化学式(VI)において、
n6は、1以上の整数を示すほかは、化学式(IV)のものと同様である]、
化学式(VII):
【化10】
[化学式(VII)において、
一組の水酸基又はチオール基とアゾメチン基を有する配位子について、
A
1は、OH基又はSH基を示し、
A
2は、水素、重水素、C1〜C30のアルキル基(−C
nH
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18、より好ましくはn=1〜6、特に好ましくはn=1〜3)、C3〜C30のシクロアルキル基(−C
nH
2n−1:ここでn=3〜30、好ましくはn=3〜18、より好ましくはn=3〜6、特に好ましくはn=3)、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基(−C
nF
2n+1及び−C
nCl
2n+1等、好ましくは−C
nF
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18、より好ましくはn=1〜6、特に好ましくはn=1〜3)及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基(−C
nF
2n−1及び−C
nCl
2n−1等、好ましくは−C
nF
2n−1:ここでn=3〜30、好ましくはn=3〜18、より好ましくはn=3〜6、特に好ましくはn=3)から選択され、C1〜C30のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基は、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)を含む群から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
A
4は、C1〜30のアルキル基(−C
nH
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18)から選択され、そのアルキル基は、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)を含む群から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
A
1とアゾメチン基が共に結合するベンゼン環について、化学式(IV)と同様にナフタレン環を形成してよく、
そのベンゼン環と形成され得るナフタレン環は、両方共、更に、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)を含む群から選択される一又は複数の置換基を有することができ、
n4は、1〜3の整数を示す
ほかは、化学式(IV)のものと同様である]。
【0018】
更に、化学式(IV)〜(VII)中のA
1とLnの間の点線及びOとLnとの間の点線は、各々1つの配位結合を示す。従って、β−ジケトナト配位子は、希土類金属との間に、二つの配位結合を形成することを示す。
一方、Yが希土類金属との間に形成し得る配位結合の数は、1〜3まで変わり得るので、YとLnの間は、単なる点線ではなく、幅の広い点線(ハッシュ線:hashed line)で示す。
【0019】
化学式(IV)〜(VII)の化学構造に含まれる、化学式(I)〜(II)の水酸基又はチオール基(A
1)とアゾメチン基(又はシッフ塩基:−CA
2=N−)を共に有する配位子について更に説明する。
化学式(I)の配位子は、二組の水酸基又はチオール基とアゾメチン基を有し、化学式(II)の配位子は、一組の水酸基又はチオール基とアゾメチン基を有する。
化学式(I)〜(II)の配位子は、A
1で示す水酸基(OH)又はチオール基(SH)で希土類金属原子に配位する。
【0020】
水酸基又はチオール基(A
1)とアゾメチン基の両方が、ベンゼン環と結合しており、ベンゼン環は更にナフタレン環を形成してもよい。
水酸基又はチオール基(A
1)とアゾメチン基の位置は、目的とする錯体を得ることができる限り特に制限されることはなく、o−置換、m−置換、p−置換等のいずれでもよいが、o−置換であることが発光特性の観点からより好ましい。
アゾメチン基の炭素原子は、置換基A
2を有することができる。A
2は、水素、重水素、C1〜C30のアルキル基(−C
nH
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18、より好ましくはn=1〜6、特に好ましくはn=1〜3)、C3〜C30のシクロアルキル基(−C
nH
2n−1:ここでn=3〜30、好ましくはn=3〜18、より好ましくはn=3〜6、特に好ましくはn=3)、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基(−C
nF
2n+1及び−C
nCl
2n+1等、好ましくは−C
nF
2n+1:ここでn=1〜30、好ましくはn=1〜18、より好ましくはn=1〜6、特に好ましくはn=1〜3)及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基(−C
nF
2n−1及び−C
nCl
2n−1等、好ましくは−C
nF
2n−1:ここでn=3〜30、好ましくはn=3〜18、より好ましくはn=3〜6、特に好ましくはn=3)から選択される。
【0021】
A
2のC1〜C30のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基は、下記群(G1):
フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族基;
パーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、パーフルオロビフェニル基、パークロロフェニル基、パークロロナフチル基、及びパークロロビフェニル基等のパーハロゲン化芳香族基;
N、O、及びS等から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を環中に含むヘテロ芳香族基;
直鎖又は分枝を有するC1〜C30のアルキル基(C
nH
2n+1:n=1〜30);
パーフルオロアルキル基(C
nF
2n+1:n=1〜30)及びパークロロアルキル基(C
nCl
2n+1:n=1〜30)等の直鎖又は分枝を有するC1〜C30のパーハロゲン化アルキル基;
ブテニル基等の直鎖又は分枝を有するC3〜C30のアルケニル基;
パーフルオロビニル基、パーフルオロアリル基及びパーフルオロブテニル基等のパーフルオロアルケニル基及びパークロロアルケニル基等の直鎖又は分枝を有するC3〜C30のパーハロゲン化アルケニル基;
C3〜C30のシクロアルキル基(C
nH
2n−1:n=3〜30);
パーフルオロシクロアルキル基(C
nF
2n−1:n=3〜30)及びパークロロシクロアルキル基(C
nCl
2n−1:n=3〜30)等のC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基;
シクロペンテニル基及びシクロヘキセニル基等のC3〜C30のシクロアルケニル基;
パーフルオロシクロアルケニル基及びパークロロシクロアルケニル基等のC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルケニル基;及び
C3〜C30のアルキニル基、並びに
ハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができる。
尚、本明細書では、群(G1)と群(G)の二種類の置換基の群を示すが、群(G)は、群(G1)のより簡潔な記載であり、実質的に同じである。
【0022】
更に、A
2のC1〜C30のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基の置換基として選択され得る群(G1)に含まれる置換基は、例えば、重水素原子、ハロゲノ基(F、Cl、Br及びI)、水酸基、ニトロ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メトキシ基、アミド基、カルボキシル基、及びメルカプト基等の置換基で置換されてもよい。
【0023】
A
2のC1〜C30のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基の置換基として選択され得る群(G1)は、希土類金属錯体又はそれを含む透明固体担体の安定性及び発光強度などを考慮すると、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基、芳香族基、パーハロゲン化芳香族基及びヘテロ芳香族基及びパーハロゲン化ヘテロ芳香族基を含むことが好ましく、炭素数1〜30のアルキル基、C1〜C30のパーフルオロアルキル基、及びC3〜C30のシクロアルキル基を含むことがより好ましく、ブチル基、ドデシル基及びシクロヘキシル基を含むことが特に好ましい。
【0024】
また、A
2のC1〜C30のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基及びC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基は、その中の任意の位置のC−C単結合の間に−O−、−COO−、−N<を、一又は複数挿入することで、エーテル構造、エステル構造、及び/又は第三級アミンを含んでも良い。
更に、A
2は、アゾメチン基と共役系を形成しない限り、上述したようにアルケニル基等の不飽和基を有することができる。
A2は、水素、重水素、メチル基、トリフルオロメチル基、及びシクロプロピル基から選択されることが更により好ましい。
【0025】
化学式(I)の配位子は、二組のA
1とアゾメチン基を有し、例えば化学式(IV)の化学構造で示すように、片方のA
1のみで、希土類金属と配位結合を形成してもよく、例えば化学式(V)及び(VI)の化学構造で示すように、両方のA
1で、同じ希土類金属と配位結合を形成しても、別々の希土類金属と配位結合を形成してもよい。
化学式(II)の配位子は、一組のA
1とアゾメチン基を有し、例えば化学式(VII)の化学構造で示すように、一つのA
1で、希土類金属と配位結合を形成する。
【0026】
化学式(IV)及び(VII)の化学構造は、希土類金属原子を1つ含む単核錯体であり、化学式(V)及び(VI)の化学構造は、希土類金属原子を2つ以上含む複核錯体であり得る。化学式(V)の化学構造は、複数の希土類金属を介して複数の配位子が環状につながることで形成される、環状の複核錯体を示し、化学式(VI)の化学構造は、複数の希土類金属を介して複数の配位子が鎖状につながることで形成される、鎖状の複核錯体を示す。
【0027】
化学式(I)の配位子では、二つのアゾメチン基の窒素原子同士は、連結基A
3で連結される(例えば、化学式(I)、(IV)〜(VI)参照)。
A
3は、C2〜C30のアルキレン基(−C
nH
2n−、ここでn=2〜30、好ましくは、n=4〜18、より好ましくは、n=4〜12)から選択される。
【0028】
A
3は、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができる。
【0029】
更に、A
3が有する置換基として選択され得る群(G1)に含まれる置換基は、例えば、重水素原子、ハロゲノ基(F、Cl、Br及びI)、水酸基、ニトロ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メトキシ基、アミド基、カルボキシル基、及びメルカプト基等の置換基で置換されてもよい。
【0030】
A
3が有する置換基として選択され得る群(G1)は、希土類金属錯体又はそれを含む透明固体担体の安定性及び発光強度などを考慮すると、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基、芳香族基、パーハロゲン化芳香族基及びヘテロ芳香族基及びパーハロゲン化ヘテロ芳香族基を含むことが好ましく、炭素数1〜30のアルキル基、C1〜C30のパーフルオロアルキル基、及びC3〜C30のシクロアルキル基を含むことがより好ましく、ブチル基、ドデシル基及びシクロヘキシル基を含むことが特に好ましい。
【0031】
また、A
3は、その中の任意の位置のC−C単結合の間に−O−、−COO−、−N<を、一又は複数挿入することで、エーテル構造、エステル構造、及び/又は第三級アミンを含んでも良い。
更に、A
3は、アゾメチン基と共役系を形成しない限り、上述したようにアルケニル基等の不飽和基を有することができる。
【0032】
化学式(II)の配位子では、一つのアゾメチン基の窒素原子は、置換基A
4を有することができる(例えば、化学式(II)及び(VII)参照)。
A
4は、C1〜30のアルキル基(−C
nH
2n+1、ここでn=1〜30、好ましくは、n=1〜18、より好ましくは、n=4〜12)から選択される。
A
4は、上記のA
3で記載した群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができる。:
【0033】
更に、A
4として選択され得る群(G1)に含まれる置換基は、例えば、重水素原子、ハロゲノ基(F、Cl、Br及びI)、水酸基、ニトロ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メトキシ基、アミド基、及びメルカプト基等の置換基で置換されていてもよい。
【0034】
A
4として選択され得る群(G1)は、希土類金属錯体又はそれを含む透明固体担体の安定性及び発光強度などを考慮すると、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基、芳香族基、パーハロゲン化芳香族基及びヘテロ芳香族基及びパーハロゲン化ヘテロ芳香族基を含むことが好ましく、炭素数1〜30のアルキル基、C1〜C30のパーフルオロアルキル基、及びC3〜C30のシクロアルキル基を含むことがより好ましく、ブチル基、ドデシル基及びシクロヘキシル基を含むことが特に好ましい。
【0035】
また、A
4は、その中の任意の位置のC−C単結合の間に−O−、−COO−を、一又は複数挿入することで、エーテル構造及び/又はエステル構造を含んでも良い。
【0036】
上述の化学式(I)〜(II)の配位子、化学式(IV)〜(VII)の化学構造中の、水酸基又はチオール基(A
1)とアゾメチン基(−CA
2=N−)を共に有する配位子について、A
1及びアゾメチン基を共に有するベンゼン環及び形成され得るナフタレン環は、更に、上記群(G1)並びにハロゲノ基(例えば、F、Cl等、好ましくはF)から選択される一又は複数の置換基を有することができる。
【0037】
更に、ベンゼン環及び形成され得るナフタレン環が有し得る、上述の群(G1)に含まれる置換基は、例えば、重水素原子、ハロゲノ基(F、Cl、Br及びI)、水酸基、ニトロ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メトキシ基、アミド基、及びメルカプト基等の置換基で置換されていてもよい。
【0038】
ベンゼン環及びナフタレン環が有し得る置換基を含む群(G1)は、希土類金属錯体又はそれを含む透明固体担体の安定性及び発光強度などを考慮すると、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のパーハロゲン化アルキル基、芳香族基、パーハロゲン化芳香族基及びヘテロ芳香族基及びパーハロゲン化ヘテロ芳香族基を含むことが好ましく、炭素数1〜30のアルキル基、C1〜C30のパーフルオロアルキル基、及びC3〜C30のシクロアルキル基を含むことがより好ましく、ブチル基、ドデシル基及びシクロヘキシル基を含むことが特に好ましい。
【0039】
上述の化学式(IV)〜(VII)の化学構造に含まれる、化学式(III)のβ−ジケトナト配位子について説明する。
β−ジケトナト配位子は、1価のアニオンであって、2つの酸素原子で希土類金属に配位することができる。
本発明の実施形態の金属錯体は、上述の水酸基又はチオール基とアゾメチン基を共に有する配位子と一緒に、β−ジケトナト配位子が配位した希土類金属を有する。
【0040】
β−ジケトナト配位子は、2つのXを有するが、両者は同じでも、異なっていてもよい。
Xは、下記群(G1):
フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族基;
パーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、パーフルオロビフェニル基、パークロロフェニル基、パークロロナフチル基、及びパークロロビフェニル基等のパーハロゲン化芳香族基;
N、O、及びS等から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を環中に含むヘテロ芳香族基;
直鎖又は分枝を有するC1〜C30のアルキル基(C
nH
2n+1:n=1〜30);
パーフルオロアルキル基(C
nF
2n+1:n=1〜30)及びパークロロアルキル基(C
nCl
2n+1:n=1〜30)等の直鎖又は分枝を有するC1〜C30のパーハロゲン化アルキル基;
ブテニル基等の直鎖又は分枝を有するC3〜C30のアルケニル基;
パーフルオロビニル基、パーフルオロアリル基及びパーフルオロブテニル基等のパーフルオロアルケニル基及びパークロロアルケニル基等の直鎖又は分枝を有するC3〜C30のパーハロゲン化アルケニル基;
C3〜C30のシクロアルキル基(C
nH
2n−1:n=3〜30);
パーフルオロシクロアルキル基(C
nF
2n−1:n=3〜30)及びパークロロシクロアルキル基(C
nCl
2n−1:n=3〜30)等のC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルキル基;
シクロペンテニル基及びシクロヘキセニル基等のC3〜C30のシクロアルケニル基;
パーフルオロシクロアルケニル基及びパークロロシクロアルケニル基等のC3〜C30のパーハロゲン化シクロアルケニル基;及び
C3〜C30のアルキニル基
から選択される。
【0041】
更に、Xとして選択され得る上述の群(G1)に含まれる置換基は、例えば、重水素原子、ハロゲノ基(F、Cl、Br及びI)、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、及びメルカプト基等の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
Xとして選択され得る群(G1)は、パーフルオロアルキル基(C
nF
2n+1:n=1〜30)、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基を含むことが好ましく、パーフルオロアルキル基(C
nF
2n+1:n=1〜6)、フェニル基、ナフチル基を含むことがより好ましく、パーフルオロアルキル基(C
nF
2n+1:n=1〜3)、フェニル基、ナフチル基を含むことが特に好ましい。
【0043】
β−ジケトナト配位子のZは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、メチル基、エチル基、フェニル基、水素原子又は重水素原子を含むことが好ましく、
水素原子、重水素原子、フッ素原子を含むことが特に好ましい。
【0044】
本発明の実施形態の希土類金属錯体に関する希土類元素(例えば、化学式(IV)〜(VII)中、Lnで示す)として、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLu等のランタン系列元素を例示でき、Eu、Sm及びDyが好ましい。これらの希土類元素は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
本発明の実施形態の希土類金属錯体は、更に他の配位子を含むことができる。他の配位子は、本発明の実施形態が目的とする希土類金属錯体を得ることができる限り特に制限されることはないが、例えば、過塩素酸イオン、硝酸イオン、カルボン酸イオン、又はハロゲン化物イオンから選択される陰イオン等を例示することができる。他の配位子は、例えば、化学式(IV)〜(VII)では、Yで示される。他の配位子は、炭酸イオン、硫酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸から選択されることが好ましい。
【0046】
化学式(IV)〜(VII)の化学構造を含む本発明の実施形態の希土類金属錯体について、
希土類元素の陽電荷を示すn1は、2又は3であり、好ましくは3である。
β−ジケトナト配位子の数を示すn2は、1〜3である。
その他の配位子の数を示すn3は、0〜2のいずれかである。
アゾメチン基を有する配位子の数を示すn4は1〜3である。
希土類金属の配位数は、3〜11である。
n2とn3が、n2+n3=3となる組み合わせであることが好ましい。
更に、n2は、より好ましくは3であり、n3は、より好ましくは0である。
n4は、より好ましくは2である。
複数の配位子が環状に続く数を示すn5は、2以上の整数であることが好ましく、より好ましくは2〜8である。
複数の配位子が鎖状に続く数を示すn6は、任意の整数であることが望ましく、より好ましくは3以上である。
【0047】
本実施形態は、水酸基又はチオール基とアゾメチン基(シッフ塩基)を有する配位子とβ−ジケトナト配位子を共に有する、新たな三価希土類錯体を提供することができる。
その新たな三価希土類錯体は、好ましくは波長変換部材として使用することができ、より好ましくは紫外から青色光の領域の光を吸収し、発光することができる。
更にその三価希土類金属錯体は、より好ましくは、より広範囲なより可視光領域の励起波長領域を有し、より吸光率が大きく、より反射率が小さく、外部量子効率がより高い。
本発明の実施形態の希土類金属錯体は、新規な希土類金属錯体を提供し、その配位子の構造及び/又は希土類原子の種類等を変更することにより、吸収波長領域を変化させることができ、発光波長領域を変化させることができる。従って、本発明の実施形態の希土類金属錯体は、新たな種々の特性を有する波長変換材料を提供することができる。
【0048】
本発明の実施形態の希土類金属錯体(より具体的には、例えば、化学式(IV)〜(VII)の化学構造を含む錯体)は、それが得られる限り、その製造方法は特に制限されることはない。
本発明の実施形態の希土類金属錯体は、例えば、後述する実施例に示すように、希土類金属塩(例えば、希土類金属の塩化物及び酢酸塩等)、上述のβ−ジケトナト配位子と対応するβ−ジケトンと、水酸基又はチオール基とアゾメチン基を共に有する配位子を反応させて得ることができる。希土類金属塩とこれらの配位子を反応させる順序、反応温度、反応時間、反応濃度等の反応条件等は、適宜選択することができる。
【0049】
尚、β−ジケトナト配位子(例えば、化学式(III)参照)のZ=Dの錯体を製造する場合、Z=Hの錯体(例えば、化学式(IV)〜(VII)参照)を製造し、その後、Z=HをZ=Dに変換して、Z=Dの錯体を得ることができる。
ZがHである、本発明の実施形態の希土類金属錯体に、重水素化剤を作用させて、重水素置換反応することにより、本発明の実施形態の重水素化された錯体(Zが重水素原子Dである錯体)を得ることができる。
【0050】
そのような重水素化剤は、例えば、重水素を含むプロトン性化合物、具体的には、重水;重水素化メタノール及び重水素化エタノールなどの重水素化アルコール;重塩化水素;及び重水素化アルカリなどを含む。
重水素置換反応を促進するために、トリメチルアミン及びトリエチルアミンなどの塩基剤及び添加剤を加えてもよい。
【0051】
重水素置換反応は、本発明の実施形態の希土類金属錯体と重水素化剤を混合することにより行うことができ、反応時に非プロトン性の溶媒を加えてもよい。
非プロトン性溶媒は、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及び塩化メチレン等のハロゲン系溶媒;DMSO及びDMF等を含む。本発明の実施形態の希土類金属錯体が溶解可溶な溶媒が、好ましい。
【0052】
重水素化剤は、重水素置換反応の際に、本発明の実施形態の希土類金属錯体の総量(1重量部とする)に対して、約1〜100重量部の量で使用することが好ましく、約1〜20重量部の量で使用することがより好ましい。
【0053】
本発明の実施形態の希土類金属錯体と重水素化剤を混合する方法は、重水素化された錯体が得られる限り特に限定されることはない。そのような混合方法として、例えば、室温から150℃の温度で、好ましくは30℃から100℃の温度で、必要に応じて撹拌しながら、0.1〜100時間、好ましくは0.1〜20時間混合する方法を例示することができる。
撹拌後、重水素化剤及び溶媒を蒸留で除くことにより、本発明の実施形態の重水素化された希土類金属錯体(Z=重水素D)を得ることができる。
必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー及び昇華等の方法を用いて、更に精製することができる。
【0054】
本発明の実施形態の希土類金属錯体は、例えば、発光補助体、光学レンズ、蛍光プローブ、セキュリティインク等の種々の光機能材料として用いることができる。
更に、本発明の実施形態の希土類金属錯体を、透明固体担体に含有させることにより、同様に種々の光機能材料に用いることができる。透明固体担体に、希土類金属錯体を含有させることで、取り扱い易さ、安定性及び成形加工性等が向上するので好ましい。
従って、本発明は、本発明の実施形態の希土類金属錯体を含む光機能材料用透明固体担体、及び本発明の実施形態の希土類金属錯体を透明固体担体に含有させることを含む光機能材料用透明固体担体の製造方法を提供する。
【0055】
本発明の実施形態の透明固体担体は、透明で固体であり、本発明の実施形態の希土類金属錯体の担体として使用することができる限り、特に制限されるものではない。例えば、透明ポリマーマトリックス及び透明ガラス等を使用することができる。
【0056】
透明ポリマーマトリクスとして、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、含フッ素ポリメタクリレート、ポリアクリレート、含フッ素ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテン等)、含フッ素ポリオレフィン、ポリビニルエーテル、含フッ素ポリビニルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、及びそれらの共重合体、セルロース、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、ナフィオン、石油樹脂、ロジン、ケイ素樹脂などを例示できる。
透明ポリマーマトリクスとして、ポリメチルメタクリレート、含フッ素ポリメタクリレート、ポリアクリレート、含フッ素ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリビニルエーテル、及びそれらの共重合体、ケイ素樹脂、及びエポキシ樹脂等を使用することが好ましい。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
本発明の実施形態の希土類金属錯体は、450nmの入射光に関する反射率が、50%以下であることが好ましく、40〜1%であることがより好ましく、30〜1%であることが特に好ましい。
本発明の実施形態の希土類金属錯体は、550nmの入射光に関する反射率が、60%以上であることが好ましく、70〜120%であることがより好ましく、80〜120%であることが特に好ましい。
ここで、反射率は、リン酸カルシウムの反射率を100%(基準)とする、相対値である。
【0058】
本発明の実施形態の希土類金属錯体は、外部量子効率が、5%以上であることが好ましく、5〜99%であることがより好ましく、10〜99%であることが更により好ましく、30〜99%であることが特に好ましい。
外部量子効率は、380nm及び450nmの励起光で励起したときの値である。
【0059】
本発明の実施形態の希土類金属錯体およびそれを含む透明固体担体の450nmの入射光に関する反射率は、従来の希土類金属錯体の450nmの入射光に関する反射率より低くなり得るので、従来の希土類金属錯体と比較して、450nmの入射光に関しより高い波長変換効率を有し得る。また、本発明の実施形態の希土類金属錯体を用いることにより、より好ましくは発光効率の高い発光装置を得ることができる。
【0060】
本発明の実施形態の発光装置は、本発明の実施形態の希土類金属錯体又はそれを含む透明固体担体と、発光ダイオード又はレーザーダイオードと組み合わせることによって構成される。
本発明の実施形態の希土類金属錯体又はそれを含む透明固体担体は、従来の蛍光体と同様、導光板の上面(光射出面)、側面(発光ダイオードの光入射面)、発光装置のカップ内及び発光ダイオードを封止する樹脂内等に配置することができる。
【0061】
発光ダイオード又はレーザーダイオードは、本発明の実施形態の希土類金属錯体の中心イオンのf−f遷移又は配位子の吸収に対応する励起スペクトルのピーク波長にほぼ一致する波長の光を発することが好ましい。発光ダイオード又はレーザーダイオードとして、例えば、Inを含む窒化物半導体層を発光層として含む窒化物半導体発光素子を用いることができる。この窒化物半導体発光素子の発光ピーク波長は、発光層のInの含有率を変化させることにより、発光ピーク波長の調整が可能である。
【0062】
さらに、後述の実施例で示すように、本発明の実施形態の希土類金属錯体は、より好ましくは紫外から可視の広域領域で励起スペクトルを示し得る。そのような場合、それぞれの波長に対応する複数の発光素子を用いて発光装置を構成することもできる。
【0063】
本発明の実施形態の発光装置は、例えば、一般照明装置、信号装置及び表示装置等として使用することができる。より具体的には、例えば、自動車のブレーキランプ、ドアの表示灯、店舗等に設置する装飾用パネル、パソコン、携帯端末、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどの表示装置用バックライト及びサイドライト等を例示することができる。
【実施例】
【0064】
以下に本発明に係る実施形態を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は本発明に係る実施形態を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0065】
実施例及び比較例の錯体を合成するために使用した原料等を以下に示す。
水酸基又はチオール基とアゾメチン基を有する配位子(A)
(a1)N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン(H
2salen)[HO−C
6H
4−CH=N−(CH
2)
2−N=CH−C
6H
4−OH](ベンゼン環は共にオルト置換である)
(a2)N,N’−ビス(サリチリデン)1,4−ブチレンジアミン(H
21,4−salbn)[HO−C
6H
4−CH=N−(CH
2)
4−N=CH−C
6H
4−OH](ベンゼン環は共にオルト置換である)
(a3)N,N’−ビス(サリチリデン)1,6−ヘキシレンジアミン(H
21,6−salhxn)[HO−C
6H
4−CH=N−(CH
2)
6−N=CH−C
6H
4−OH](ベンゼン環は共にオルト置換である)
(a4)N,N’−ビス(p−ヒドロキシフェニルアセチリデン)1,4−ブチレンジアミン(H
21,4−acebn)[HO−C
6H
4−C(CH
3)=N−(CH
2)
4−N=C(CH
3)−C
6H
4−OH](ベンゼン環は共にオルト置換である)
(a5)N,N’−ビス(2−ヒドロキシナフチル−1−メチリデン)1,4−ブチレンジアミン(H
21,4−napbn)[HO−C
10H
6−CH=N−(CH
2)
4−N=CH−C
10H
6−OH]
【0066】
【化11】
【0067】
β−ジケトン(B)
(b1)ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)[CF
3−CO−CH
2−CO−CF
3]
1価のアニオンであるβ−ジケトナト配位子を「hfa
−」」ともいう。
(b2)ベンゾイルトリフルオロアセトン(btfa)[CF
3−CO−CH
2−CO−C
6H
5]
1価のアニオンであるβ−ジケトナト配位子を「btfa
−」ともいう。
【0068】
【化12】
【0069】
金属塩(C)
(c1)酢酸ユウロピウム[Eu(CH
3COO)
3(H
2O)]
(c2)塩化ユウロピウム[EuCl
3(H
2O)
6]
その他(D)
ビス[(2−ジフェニルホスホリル)フェニル]エーテル(DPEPO)[(C
6H
5)
2P(=O)−C
6H
4−O−C
6H
4−P(=O)(C
6H
5)
2]
【0070】
実施例1:H
2salenとhfa
−が共に配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c1)酢酸ユウロピウム[Eu(CH
3COO)
3(H
2O):0.5g]を50mLのエタノールに溶かした。(b1)ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)[CF
3−CO−CH
2−CO−CF
3:0.9g]を加えて、室温で1時間攪拌した。
(a1)N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン(H
2salen)[HO−C
6H
4−CH=N−(CH
2)
2−N=CH−C
6H
4−OH:0.77g](ベンゼン環は共にオルト置換である)を入れ、室温で24時間撹拌した。攪拌後、沈澱した固体を濾過した。エタノールを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。エタノールとジクロロメタンとの混合溶媒を用いて再結晶を行い、実施例1の錯体を得た。
【0071】
実施例1の錯体の構造解析は、単結晶X線構造解析により行なった。その結果得られたORTEP図を
図3に示す。
図3から、実施例1の錯体は、Eu(H
2salen)
2(hfa
−)
2(CH
3COO
−)の化学式を有し、中心の1つのEu
3+に、1つのCH
3COO
−が2つの酸素で配位し、2つのhfa
−が各々2つの酸素で配位し、2つのH
2salenが各々1つの酸素で配位していることが明らかになった。つまり、β−ジケトナトと、アゾメチン基を有するフェノールが、ユーロピウムに同時に配位していることが確認された。合計8つの酸素原子が配位しており、8配位と考えられる。2つの1価アニオンのβ−ジケトナトが、1価の酢酸イオンと一緒に、電荷のバランスを取っていると考えられる。実施例1の錯体では、H
2salenの片方の水酸基がEu
3+に配位して錯体を形成する、単純な単核錯体を形成している。
元素分析の結果は、下記のように単結晶X線構造解析の結果を支持した。
元素分析:計算値 C 45.49% H 3.21% N 4.82%、測定値 C 45.70% H 3.17% N 4.79%
【0072】
実施例2:H
21,4−salbnとhfa
−が共に配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c1)酢酸ユウロピウム[5.0g]を40mLの蒸留水に溶かした。(b1)ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)[8.1g]を加えて、室温で4時間攪拌した。攪拌後、沈澱した固体を濾過した。蒸留水を減圧留去により取り除き、白色生成物を得た。得られた白色生成物1.62gを40mlジエチルエーテルに溶かした。
(a2)N,N’−(サリチリデン)1,4−ブタンジアミン(H
21,4−salbn)[HO−C
6H
4−CH=N−(CH
2)
4−N=CH−C
6H
4−OH:1.19g](ベンゼン環は共にオルト置換である)を入れ、室温で24時間攪拌した。沈澱した固体を濾過した。ジエチルエーテルを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。テトラヒドロフランとヘキサンとの混合溶媒を用いて再結晶を行い、実施例2の錯体を得た。
【0073】
実施例2の錯体の構造解析は、単結晶X線構造解析により行なった。その結果得られたORTEP図を
図4に示す。
図4から、実施例2の錯体は、Eu
2(H
21,4−salbn)
2(hfa
−)
4(CH
3COO
−)
2の化学式を有し、2つのEuの各々に、1つの酢酸イオンが2つの酸素で配位し、2つのhfa
−が各々2つの酸素で配位し、2つのH
21,4−salbnが各々1つの酸素で配位していることが明らかになった。つまり、各々のEuに、β-ジケトナトと、アゾメチン基を有するフェノールが同時に配位していることが確認された。各々のEuに8つの酸素原子が配位しており、8配位と考えられる。各々のEuについて、2つの1価アニオンのβ−ジケトナトが、1価の酢酸イオンと一緒に、電荷のバランスを取っていると考えられる。実施例2の錯体では、H
21,4−salbnの両端の2つの水酸基が各々別のEuと配位することで、複核の環状構造の錯体を形成している。
元素分析の結果は、下記のように単結晶X線構造解析の結果を支持した。
元素分析:計算値 C 39.10% H 2.73% N 3.04%、測定値 C39.26%、H2.66%、N2.94%
【0074】
実施例3:H
21,6−salhxnとhfa
−が共に配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c1)酢酸ユウロピウム[5.0g]を40mLの蒸留水に溶かした。(b1)ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)[8.1g]を加えて、室温で4時間攪拌した。攪拌後、沈澱した固体を濾過した。蒸留水を減圧留去により取り除き、白色生成物を得た。得られた白色生成物0.81gを40mlジエチルエーテルに溶かした。
(a3)N,N’−ビス(サリチリデン)1,6−ヘキサンジアミン(H
21,6−salhxn)[HO−C
6H
4−CH=N−(CH
2)
6−N=CH−C
6H
4−OH:0.65g](ベンゼン環は共にオルト置換である)を入れ、室温で24時間攪拌した。沈澱した固体を濾過した。ジエチルエーテルを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。ジクロロメタン、エタノールの混合溶媒を用いて再結晶を行い、実施例3の錯体を得た。
【0075】
実施例3の錯体の構造解析を、単結晶X線構造解析により行なった。その結果得られたORTEP図を
図5に示す。
図5から、実施例3の錯体は、[Eu(H
21,6−salhxn)(hfa
−)
2(CH
3COO
−)]nの化学式を有し、各々のEuに、1つの酢酸イオンが2つの酸素で配位し、2つのhfa
−が各々2つの酸素で配位し、2つのH
21,6−salhxnが各々1つの酸素で配位していることが明らかになった。つまり、各々のEuに、β-ジケトナトと、アゾメチン基を有するフェノールが同時に配位していることが確認された。各々のEuに8つの酸素原子が配位しており、8配位と考えられる。各々のEuについて、2つの1価アニオンのβ−ジケトナトが、1価の酢酸イオンと一緒に、電荷のバランスを取っていると考えられる。実施例3の錯体では、H
21,6−salhxnの両端の2つの水酸基が各々別のEuと配位することで、多核の鎖状ポリマー構造の錯体を形成している。
図5のオルテップ図は、実施例3の鎖状ポリマー構造の錯体について、およそ3つの繰り返し単位の構造を示す。
元素分析の結果は、下記のように単結晶X線構造解析の結果を支持した。
元素分析:計算値 C 40.48% H 3.08% N 2.95%、測定値 C40.34%、H2.96%、N2.88%
【0076】
実施例4:H
21,4−salbnとbtfa
−が共に配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c2)塩化ユウロピウム[EuCl
3(H
2O)
6:2.2g]を30mLのメタノールに溶かした。(b2)ベンゾイルトリフルオロアセトン(btfa)[CF
3−CO−CH
2−CO−C
6H
5:3.9g]を加えて、アンモニア水溶液でpH7に調整し、室温で4時間攪拌した。攪拌後、300mlの純水を入れ12時間攪拌させ沈澱した固体を濾過した。蒸留水を減圧留去により取り除き、白色生成物を得た。得られた白色生成物1.67gを40mlジエチルエーテルに溶かした。
(a2)H
21,4−salbn(ベンゼン環は共にオルト置換である)、0.60gを入れ、室温で24時間攪拌した。沈澱した固体を濾過した。ジエチルエーテルを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。ジエチルエーテル溶媒により再結晶を行うことにより、実施例4の錯体を得た。
【0077】
実施例4の錯体の構造解析は、単結晶X線構造解析により行なった。その結果得られたORTEP図を
図6に示す。
図6から、実施例4の錯体は、Eu
4(H
21,4−salbn)
4(btfa
−)
12の化学式を有し、各々のEuに、3つのbtfa
−が各々2つの酸素で配位し、2つのH
21,4−salbnが各々1つの酸素で配位していることが明らかになった。つまり、各々のEuに、β-ジケトナトと、アゾメチン基を有するフェノールが同時に配位していることが確認された。各々のEuに8つの酸素原子が配位しており、8配位と考えられる。各々のEuについて、3つの1価アニオンのβ−ジケトナトが、電荷のバランスを取っていると考えられる。実施例4の錯体では、H
21,4−salbnの両端の2つの水酸基が各々別のEuと配位することで、四核の環状(四面体)構造の錯体を形成している。
図6のオルテップ図は、2つの実施例4の四核の環状構造の錯体が、並んでいることを示す。
元素分析の結果は、下記のように単結晶X線構造解析の結果を支持した。
元素分析:計算値 C 52.71% H 3.50% N 2.56%、測定値 C52.49%、H3.36%、N2.50%
【0078】
実施例5:H
21,4−acebnとbtfa
−が共に配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c2)塩化ユウロピウム[2.2g]を30mLのメタノールに溶かした。(b2)ベンゾイルトリフルオロアセトン(btfa)[3.9g]を加えて、アンモニア水溶液でpH7に調整し、室温で4時間攪拌した。攪拌後、300mlの純水を入れ12時間攪拌させ沈澱した固体を濾過した。蒸留水を減圧留去により取り除き、白色生成物を得た。得られた白色生成物1.68gを50mlジクロロメタンに分散させた。
(a4)N,N’−ビス(ヒドロキシフェニルアセチリデン)1,4−ブタンジアミン(H
21,4−acebn)[HO−C
6H
4−C(CH
3)=N−(CH
2)
4−N=C(CH
3)−C
6H
4−OH:0.65g](ベンゼン環は共にオルト置換である)を入れ、室温で4時間攪拌した。沈澱した固体を濾過した。ジクロロメタンを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。冷エタノール溶媒で洗浄し、減圧留去によりエタノールを取り除き、実施例5の錯体を得た。
【0079】
実施例6:H
21,4−napbnとbtfa
−が配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c2)塩化ユウロピウム[2.2g]を30mLのメタノールに溶かした。(b2)ベンゾイルトリフルオロアセトン(btfa)[3.9g]を加えて、アンモニア水溶液でpH7に調整し、室温で4時間攪拌した。攪拌後、300mlの純水を入れ12時間攪拌させ沈澱した固体を濾過した。蒸留水を減圧留去により取り除き、白色生成物を得た。得られた白色生成物1.68gを50mlジクロロメタンに分散させた。
(a5)N,N’−ビス(ヒドロキシナフチルメチリデン)1,4−ブタンジアミン(H
21,4−napbn)[HO−C
10H
6−CH=N−(CH
2)
4−N=CH−C
10H
6−OH:0.40g](ベンゼン環は共にオルト置換である)を入れ、室温で4時間攪拌した。沈澱した固体を濾過した。ジクロロメタンを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。黄色生成物を冷エタノールで洗浄し、減圧留去によりエタノールを取り除き実施例6の錯体を得た。
【0080】
比較例1:Eu(hfa
−)
3(DPEPO)錯体の合成
(c1)酢酸ユウロピウム、(b1)ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)及びビス[(2−ジフェニルホスホリル)フェニル]エーテル(以下「DPEPO」ともいう)[(C
6H
5)
2P(=O)−C
6H
4−O−C
6H
4−P(=O)(C
6H
5)
2]を用いて、非特許文献1に記載した方法に基づいて、比較例1の錯体を合成した。この比較例1の錯体の構造は、元素分析、及び単結晶X線構造解析などによって、確認した。
【0081】
実施例1〜6の錯体は、いずれも水酸基又はチオール基とアゾメチン基を共に有する配位子と、β−ジケトナト配位子が、共に配位した希土類金属を含む。
実施例1〜6の錯体は、いずれも紫外光から可視光領域の波長の光を吸収して、吸収した光よりも波長が長い光を発生し、波長変換材料として機能し得ることが判った。
実施例1〜6の錯体は、青色の光を吸収して、青色より波長が長い光を発生した。
なかでも、実施例1〜4の錯体の発光特性は、以下に更に説明するように、より優れていた。
【0082】
図7に、実施例1〜4及び比較例1の錯体の励起スペクトルを示す。励起光の波長(横軸)に対する吸光率(光子数%)(縦軸)をプロットして示す。
実施例1〜4の錯体では、紫外領域(300nm)から可視光領域(500nm)まで幅広い吸収を有する。これらの吸収はβ-ジケトナト配位子とアゾメチン基を有する配位子によるものである。
これに対し、比較例1の錯体では、350nmから吸収は低下し、450nmでは、10%以下になった。
【0083】
図8aに実施例1〜4の錯体及び比較例1の錯体の発光スペクトル、
図8bに、
図8aの発光スペクトルの一部を拡大したものを示す。波長(横軸)に対して、発光強度がプロットされている。
図8aは、波長500〜750nmに対する発光強度を示し、
図8bは、
図8aの波長600〜640nmに対する発光強度の部分を示す。実施例1〜4の錯体のスペクトルと比較例1の錯体のスペクトルを比較すると、615nmのスペクトル形状に顕著な差が観測された。実施例1〜4の錯体では、比較例1の錯体と比較して、615nm付近のピーク強度が著しく大きくなった。
図7及び
図8a、
図8bを参照すると、実施例1〜4の錯体では、比較例1の錯体と比べて、450nm付近の励起光で励起したとしても顕著に発光し得ることがわかる。
【0084】
380nmの励起光及び450nm励起光による実施例1〜4及び比較例1の錯体の外部量子効率、及び450nmの入射光及び550nmの入射光に関する実施例1〜4及び比較例1の錯体の反射率を、表1に示す。
ここで、外部量子効率は、下記式(1)によって定義される。
量子効率測定では、測定する試料は励起光を透過しない十分な厚さの試料条件で測定しており、試料表面から発せられた発光量子数に対する量子効率を算出している。
外部量子効率(以下EQE)は、試料の励起光スペクトルをE(λ)、試料の発光スペクトルをP(λ)としたときに、下式(1)によって定義される。
【0085】
【数1】
[式(1)において、λ1、λ2は励起光および試料の発光スペクトルが過不足なく含まれる波長の範囲であれば、任意の波長であってよい。]
【0086】
図9に、実施例1〜4の希土類錯体及び比較例1の希土類錯体の反射スペクトルを示す。波長(横軸)に対して、反射率がプロットされている。ここで、反射率は、リン酸カルシウムの反射率を、100%(基準)とする、相対値である。
実施例1〜4の錯体のスペクトルと比較例1の錯体のスペクトルを比較すると、500nm以下の波長のスペクトル形状に顕著な差が観測された。実施例1〜4の錯体では、400〜430nmの光について反射率は10%以下であるが、440nmから反射率は増加して500nmで80%を超えた。比較例1の錯体では、400nmの光では反射率は約80%であり、500nmの光では約90%であった。従って、実施例1〜4の錯体は、500nm以下の波長の反射率が低いこと、即ち、500nm以下の波長の光を吸収し得ることを示す。
【0087】
実施例1〜4の錯体の外部量子効率と、比較例1の錯体の外部量子効率を比較すると、380nmでの外部量子効率については、実施例2の外部量子効率は高く、実施例1及び3〜4の外部量子効率は、比較例1の外部量子効率と同程度である。
比較例1の450nmの反射率と比べると、実施例1〜4の450nmの反射率は低いので、比較例1は、可視光領域の光で励起することは困難であるが、実施例1〜4の錯体は、可視光領域の光で励起することができることがわかる。
従って、比較例1の錯体は紫外光で励起して使用できるが、実施例1〜4の錯体は更に可視領域の光で励起して使用できることを示す。
【0088】
【表1】
【0089】
透明固体担体及び発光装置の製造と発光特性の評価
実施例2の錯体を、シリコーン樹脂に分散させて加熱硬化して、透明固体担体を得た。この透明固体担体を青色発光ダイオードに実装して、発光装置を得た。その発光装置の発光スペクトルを測定して、
図10に示す。
発光波長の中心が450nmである青色発光ダイオードを使用した。実施例2の錯体に由来する大きな発光ピークが、615nmに現れている。更に、小さな発光ピークが、590nm付近、660nm付近、及び700nm付近にも現れている。表1に示すように、実施例2の錯体では、約44%という高い外部量子効率が得られた。
【0090】
図10の発光スペクトルから明らかなように、実施例2の錯体を用いて製造される発光装置は、従来の白色発光装置において欠けていた赤色成分を補うことができる。この発光装置を用いた光源は非常に演色性の高い白色光源となる。これは、手術や商品ディスプレイ等、色識別力或いは演色性が特に必要とされる分野において有用な光源として利用することができる。
【0091】
本実施形態の希土類金属錯体は、このような吸光特性及び発光特性を有し得るので、その励起光源として発光ダイオード又はレーザーダイオードと組み合わせることによって、より高効率な波長変換光機能材料としてより有用に利用することができる。
【0092】
更に、本実施形態の希土類金属錯体及びそれを含む透明固体担体である光機能材料、更にそれと発光ダイオード、レーザーダイオード及びその他の発光体を組み合わせた発光装置も、同様に有用である。