【解決手段】αFeに少なくとも1種のα相安定化元素が固溶した合金を作製する合金作製工程と、粉末状の少なくとも1種のα相安定化元素と、SiCとを混合して第1混合物を作製する第1混合工程と、前記合金と、前記第1混合物とを混合して第2混合物を作製する第2混合工程と、前記第2混合物を焼結する焼結工程と、を含む。
前記第2混合工程において、αFe−SiC複合材料におけるFeに対してα相安定化元素を5.0at.%以上含む前記第2混合物を作製することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
前記第3混合工程において、αFe−SiC複合材料におけるFeに対してα相安定化元素を5.0at.%以上含む前記第3混合物を作製することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0013】
以下に、本実施形態におけるαFe−SiC複合材料およびその製造方法について説明する。本実施形態におけるαFe−SiC複合材料は、高強度と高熱伝導性とを兼ね備えており、熱間プレス成型などに用いる金型の材料などに好適に使用することができる。
【0014】
<1.αFe−SiC複合材料の製造方法>
本実施形態におけるαFe−SiC複合材料の製造方法は、合金作製工程と、第1混合工程と、第2混合工程と、焼結工程とを含む。
【0015】
[1−1.合金作製工程]
合金作製工程は、αFeに少なくとも1種のα相安定化元素が固溶した合金を作製する工程である。換言すれば、合金作成工程において作製する合金は、αFeと、少なくとも1種のα相安定化元素とを含む。合金作成工程では、ガスアトマイズ法、またはボールミリングなどの方法によって上記合金を作製する。
【0016】
αFeは、上記合金の主となる成分であり、室温での熱伝導率がおよそ67W/m・Kである。なお、合金におけるFeがα相となればよく、合金の作製に用いるFeの相は限定されない。
【0017】
α相安定化元素は、オーステナイト温度域にてαFeがγFeへ相変態することを抑制する元素である。α相安定化元素として、Be(ベリリウム)、Al(アルミニウム)、P(リン)、Si(ケイ素)、Zn(亜鉛)、Sn(スズ)、Sb(アンチモン)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、V(バナジウム)およびTi(チタン)などが挙げられる。なかでも、Ti、Nb、VおよびTaは、少量の添加でFeのα相を安定化させることができるため好ましい。なお、上記合金は、1種類のみのα安定化元素を含んでもよいし、複数の種類のα安定化元素を含んでもよい。
【0018】
また、α相安定化元素は、炭素と反応し炭化物として析出する炭化物形成元素であることが好ましい。α相安定化元素が炭化物として析出することにより、αFe−SiC複合材料の硬度を向上させることができる。炭化物形成元素として、Ti、Nb、VおよびTaを挙げることができ、少量の添加によりFeのα相を安定化させることができるため好ましい。
【0019】
[1−2.第1混合工程]
第1混合工程は、粉末状の少なくとも1種のα相安定化元素と、SiCとを混合した混合物(以降では、第1混合物と称する)を作製する工程である。したがって、第1混合物は、少なくとも1種のα相安定化元素と、SiCとを含む。
【0020】
α相安定化元素は、合金作製工程にて用いたα相安定化元素と同じ元素を用いてもよく、異なる元素を用いてもよい。また、第1混合工程では、合金作製工程と同様に複数のα相安定化元素を併用することもできる。
【0021】
SiCは、硬度がおよそ2200HV、室温での熱伝導率がおよそ270W/m・Kであり、SiCを含ませた材料を金型に使用することにより、金型の硬度および熱伝導率を向上させることができる成分である。
【0022】
第1混合工程では、SiCとα相安定化元素とを混合し、SiCの表面にα相安定化元素を略均一に分散させる。第1混合工程において使用する方法または装置は、SiCの表面にα相安定化元素が略均一に分散させることができる方法または装置であれば特に制限されるものではない。例えば、ボールミリング装置(例えば、V型混合機、遊星ボールミル)などの装置を用いて、第1混合物を作製することができる。
【0023】
[1−3.第2混合工程]
第2混合工程は、合金作製工程にて作製した合金と、第1混合工程にて混合した第1混合物とを混合した混合物(以降では、第2混合物と称する)を作製する工程である。
【0024】
第2混合工程において使用する方法または装置は、合金作製工程にて作製した合金と第1混合物とを混合できる方法または装置であれば特に制限されるものではないが、例えば、ボールミリング装置(例えば、V型混合機、遊星ボールミル)などの装置を用いることができる。また、ボールミリング装置を用いて混合する際に、助剤としてエタノールなどを用いた湿式条件で混合することにより第2混合物を作製することもできる。湿式条件にて混合することによりSiCの粉砕が抑制され、最終的に製造されるFe−SiC複合材料において、界面熱抵抗に起因する熱伝導率の低下を抑制することができる。
【0025】
第2混合工程では、第2混合物に含まれるFeがすべてαFeとなるために必要となる量のα相安定化元素を含むように、第2混合物を作製することが好ましい。また、当該量は、計算によって求めることができる。計算によって求めた必要なα相安定化元素の量の一例を
図1に示す。
図1は、1373Kにおける、SiCが分解した量に対する、すべてのFeがαFeとなるために必要となるα相安定化元素の最小添加量の関係を示すグラフである。当該グラフは、JMatPro(Sente Software社製)を用いて作成した。
図1に示すように、例えば、SiCの分解した量が15vol.%の場合(グラフの横軸が15vol.%の場合)において、αFe−SiC複合材料におけるFeに対してTiを5at.%以上含んだ合金の場合(グラフの縦軸が5at.%以上の場合)、1373KにおいてすべてのFeがα相となる。
【0026】
具体的には、例えば、α相安定化元素としてTiおよびNbを用いた場合では、αFe−SiC複合材料におけるFeに対してα相安定化元素を5.0at.%以上含むことが好ましい。
【0027】
合金作成工程におけるα相安定化元素の添加量、および、第1混合工程におけるα相安定化元素の添加量を適宜調整することにより、第2混合物が、当該第2混合物に含まれるFeがすべてαFeとなるために必要となる量のα相安定化元素を含むようにすることができる。
【0028】
第2混合物に含まれるFeがすべてαFeとなるために必要となる量のα相安定化元素を含むように第2混合物を作製することにより、後述する焼結工程において、FeがγFeに相変態しないようにすることができる。なお、Fe−SiC複合材料の熱伝導率を高くするためには、α相安定化元素の添加量をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0029】
第2混合工程においてボールミリングを用いた場合、例えばガスアトマイズ法で合金を作製した場合に比べて、Fe−SiC界面にα相安定化元素が不均一に分布する。これにより、後述する焼結工程において、SiCの分解を抑制することができる。
【0030】
[1−4.焼結工程]
焼結工程は、第2混合工程で得られた第2混合物を焼結する工程であり、焼結工程を行うことにより、本実施形態のαFe−SiC複合材料が得られる。
【0031】
ここで、γFeは、αFeと比べて原子間距離が長いため、αFeと比べて原子空孔移動が容易である。そのため、γFeにSiC(炭化ケイ素)を添加したときに、SiCに含まれるSiがγFe中に拡散しやすくなる。また、γFeは、αFeと比べて格子間の隙間の距離が長い。そのため、γFeにSiCを添加したときに、SiCに含まれるCがαFe中に侵入しやすくなる。すなわち、SiCに含まれるCが拡散しやすくなる。これらの理由により、γFeにSiCが含まれる場合では、αFeにSiCが含まれる場合と比べて、オーステナイト温度領域において、SiCが分解しやすくなる。
【0032】
本実施形態では、第2混合物がα相安定化元素を含んでいる。これにより、焼結工程において、αFeがγFeへ相変態することを抑制することができる。その結果、Fe中のSiCが分解することを抑制することができる。
【0033】
本実施形態では、焼結工程において、放電プラズマ焼結法により焼結を行う。ただし、本発明における焼結方法は、放電プラズマ焼結法に限られずその他の焼結方法(例えば、通電焼結法、ホットプレス法、またはHIP(熱間等方圧加圧法)など)によって焼結を行ってもよい。
【0034】
放電プラズマ焼結法は、放電を利用しているため、原料粉末の酸化膜を除去することができる。さらに、放電プラズマ焼結法は従来の焼結方法に比べて短い時間で焼結することができる。そのため、SiCが分解することを抑制することができる。
【0035】
本実施形態における焼結工程では、1273K以上の温度で放電プラズマ焼結を行う。また、本実施形態における焼結工程では、最高温度まで昇温した後、当該最高温度にて保持せず、加熱を停止することが好ましい。これにより、SiCが分解することをさらに抑制することができる。
【0036】
<2.αFe−SiC複合材料>
上記の製造方法で作成されたαFe−SiC複合材料は、αFeに少なくとも1種のα相安定化元素が固溶した合金と、SiCとを含む。さらに、本実施形態におけるαFe−SiC複合材料は、上記合金の体積に対するSiCの体積の割合が1.0%以上であり、SiCの平均粒径が、1μm〜100μmとなる。これにより、熱伝導パス(すなわち、αFe−SiC複合材料において熱を伝導させる効率が高い経路)を形成することができ、かつ、SiCに起因して強度および熱伝導率を向上させることができる。すなわち、高強度かつ高熱伝導性を有する複合材料とすることができる。
【0037】
なお、SiCの粒子径を100μm以下とすることにより、分散強化が働き複合材料の硬度を向上させることができる。また、SiCの粒子径を1μm以上とすることにより、界面熱抵抗による複合材料の熱伝導率の低下を抑制できる。界面熱抵抗による複合材料の熱伝導率の低下の抑制に関して、「アルミニウム基複合材料の有効熱伝導率に対する界面熱抵抗の影響、日本金属学会誌、第81巻、第10号、(2017)467−474」の式(9)等を用いて理論計算により好ましい粒子径を計算することもできる。上述した式を用いた理論計算の結果では、SiCの粒子径が約208nm以上であれば熱伝導率の低下を抑制することができる。しかし、粒子の凝集など操作性を考慮し、1μm以上であればよい。なお、SiCの平均粒子径については、SEMまたはEPMAなどの画像から求めることができる。
【0038】
また、本実施形態におけるαFe−SiC複合材料では、上記合金の体積に対するSiCの体積の割合の上限については、特に制限しない。しかし、SiC粒子を球と仮定した場合における最密充填構造の充填率は74%となるため、SiCの体積を74%以下であればよい。一方、上記合金の体積に対するSiCの体積の割合の下限については、少量でもSiC粒子が複合材料に含まれると硬度および熱伝導率の向上が期待出来るため、1.0%とした。
【0039】
また、SiCの平均粒子径を1μm以上とすることにより界面熱抵抗による熱伝導率の低下を抑制できる。さらに、SiCの平均粒子径が100μm以下とすることにより混合性を良好とすることができる。なお、平均粒子径については、SEMまたはEPMAなどの画像から求めることができる。
【0040】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0041】
<3.αFe−SiC複合材料の製造方法>
本実施形態におけるαFe−SiC複合材料の製造方法は、合金作製工程と、第3混合工程と、第4合工程と、焼結工程とを含む。なお、合金作製工程は、上述した実施形態1と同様のため、その説明を省略する。
【0042】
[3−1.第3混合工程]
第3混合工程は、合金作製工程にて作製した合金と、粉末状の少なくとも1種のα相安定化元素とを混合した混合物(以降では、第3混合物と称する)を作製する工程である。第3混合工程において使用する方法または装置は、合金作製工程にて作製した合金と、粉末状の少なくとも1種のα相安定化元素とを混合できる方法または装置であれば特に制限されるものではない。例えば、ボールミリング装置(例えば、V型混合機、遊星ボールミル)などの装置を用いることができる。
【0043】
第3混合工程では、第3混合物に含まれるFeがすべてαFeとなるために必要となる量のα相安定化元素を含むように、第3混合物を作製することが好ましい。その理由は、実施形態1において説明した理由と同じである。具体的には、例えば、α相安定化元素としてTiおよびNbを用いた場合では、αFe−SiC複合材料におけるFeに対してα相安定化元素を5.0at.%以上含むことが好ましい。
【0044】
合金作成工程におけるα相安定化元素の添加量、および、第3混合工程におけるα相安定化元素の添加量を適宜調整することにより、第3混合物に含まれるFeがすべてαFeとなるために必要となる量のα相安定化元素を含むようにすることができる。
【0045】
[3−2.第4混合工程]
第4混合工程は、第3混合物と、SiCとを混合した混合物(以降では、第4混合物と称する)を作製する工程である。第4混合工程において使用する方法または装置は、第3混合物とSiCとを混合できる方法または装置であれば特に制限されるものではない。例えば、ボールミリング装置(例えば、V型混合機、遊星ボールミル)などの装置を用いることができる。
【0046】
また、ボールミリング装置を用いて混合する際に、助剤としてエタノールなどを用いた湿式条件で混合することにより第4混合物を作製することもできる。湿式条件にて混合することによりSiCの粉砕が抑制され、最終的に製造されるFe−SiC複合材料において、界面熱抵抗に起因する熱伝導率の低下を抑制することができる。
【0047】
第4混合工程においてボールミリングを用いた場合、例えばガスアトマイズ法で合金を作製した場合に比べて、Fe−SiC界面にα相安定化元素が不均一に分布する。これにより、焼結工程において、SiCの分解を抑制することができる。
【0048】
<4.αFe−SiC複合材料>
上記の製造方法によって製造した本実施形態におけるαFe−SiC複合材料は、実施形態1におけるαFe−SiC複合材料と同様に、αFeに少なくとも1種のα相安定化元素が固溶した合金と、SiCとを含む。さらに、本実施形態におけるαFe−SiC複合材料は、上記合金の体積に対するSiCの体積の割合が1.0%以上であり、SiCの平均粒径が、1μm〜100μmとなる。これにより、熱伝導パスを形成することができ、かつ、SiCに起因して硬度および熱伝導率を向上させることができる。すなわち、高強度かつ高熱伝導性を有する複合材料とすることができる。
【実施例】
【0049】
本発明のαFe−SiC複合材料の実施例および比較例について説明する。
図2の(a)および(b)は、合金作成工程で作製した合金のSEM画像である。
図3の(a)および(b)は、上記合金の粒径分布を示すグラフである。本実施例では、αFe−SiC複合材料の実施例としての実施例1〜3のαFe−SiC複合材料、および、αFe−SiC複合材料の実施例としての比較例1〜7のαFe−SiC複合材料を作製した。実施例1〜3および比較例1〜7のそれぞれにおける、α相安定化元素およびSiCの添加量、ならびに焼結条件を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(実施例1)
実施例1は、下記の製法1によって作製した。製法1は、実施形態1に記載の製造方法である。
【0052】
[製法1]
〈1−1.合金作製工程〉
α相安定化元素として、TiおよびNbを用い、ガスアトマイズ法を用いて粉末状の合金を作製した。合金は、当該合金に含まれるFeに対してTiが4at.%、Nbが8at.%となるように作製した。作製した合金のSEM画像および粒径分布を
図2の(b)および
図3の(b)にそれぞれ示す。なお、ガスアトマイズ法の噴射温度は、1823Kとした。
【0053】
〈1−2.第1混合工程〉
第1混合工程では、合金に含まれるFeに対して4at.%のTiと、後述する第2混合工程にて使用する合金の体積に対して40%のSiCとをV型混合機を用いて混合し、第1混合物を作製した。第1混合工程では、アルミニウム製の容器およびアルミナボールを用いて混合した。混合に用いた原料(SiCおよびTi)の合計質量に対して10倍の質量のアルミナボールを加え、50rpm、6時間、乾式で混合を行った。
【0054】
〈1−3.第2混合工程〉
第1混合物と、合金作製工程にて作製した合金とをV型混合機を用いて混合し、第2混合物を作製した。なお、V型混合機は、上記第1混合工程と同様にアルミナ製のボールを加え、50rpm、3時間、湿式で混合を行った。第2混合工程では、助剤としてエタノールを、混合に用いた原料が浸る程度まで加えて混合を行った。
【0055】
〈1−4.焼結工程〉
焼結工程では、第2混合工程にて得られた第2混合物を成形した後に、予備焼結として15MPa、500Kにて15分間放電プラズマ焼結を行った。予備焼結が終了した後に、本焼結として50MPa、1373Kにて保持を行わず放電プラズマ焼結を行った。これにより、実施例1のαFe−SiC複合材料を得た。
【0056】
(実施例2)
実施例2は、下記の製法2によって作製した。製法2は、実施形態2に記載の製造方法である。
【0057】
[製法2]
合金作製工程、および焼結工程は、実施例1と同じ条件にて作製を行った。
【0058】
〈2−1.第3混合工程〉
上述した実施例1の合金作製工程にて作製した合金と、当該合金に含まれるFeに対して8at.%のTiとを遊星ボールミルを用いて混合し、第3混合物を作製した。混合条件は、混合時間を3時間とした以外は、実施例1の第1混合工程と同条件とした。
【0059】
〈2−2.第4混合工程〉
第3混合工程にて作製した第3混合物と、第3混合物の体積に対して30%のSiCとをV型混合機を用いて混合し、第4混合物を作製した。混合条件は、実施例1の第2混合工程と同条件とした。
【0060】
(実施例3)
実施例3のαFe−SiC複合材料は、以下の(A)および(B)以外の点については、実施例2のαFe−SiC複合材料と同じ方法で作製した。
(A)合金作製工程において、α相安定化元素としてTiを用い、ガスアトマイズ法を用いて粉末状の合金を作製した。合金は、当該合金に含まれるFeに対してTiが2at.%となるように作製した。作製した合金のSEM画像および粒径分布を
図2の(a)および
図3の(a)にそれぞれ示す。
(B)第3混合工程において、Tiの添加量を合金に含まれるFeに対して13at.%とした。
【0061】
(比較例1)
比較例1は、下記の製法3によって作製した。
【0062】
[製法3]
比較例1は、実施例3における合金作製工程にて作製した合金と、SiCとを実施例1の第2混合工程と同条件で混合し、焼結することにより作製した。なお、SiCは、合金の体積に対して20%混合した。焼結は、実施例1の焼結工程と同条件で行った。
【0063】
(比較例2)
比較例2は、下記の製法4によって作製した。
【0064】
[製法4]
比較例2は、実施例3における合金作製工程にて作製した合金と、Tiと、SiCとを実施例1の第2混合工程と同条件で混合し、焼結することにより作製した。なお、Tiは、合金に含まれるFeに対して3at.%となるように混合し、SiCは、合金の体積に対して30%混合した。焼結は、実施例1の焼結工程と同条件で行った。
【0065】
(比較例3)
比較例3は、合金に含まれるFeに対して7at.%となるようにTiを混合した点以外については、比較例2と同様に作製した。
【0066】
(比較例4)
比較例4は、合金に含まれるFeに対して39.7at.%となるようにTiを混合した点以外については、比較例3と同様に作製した。
【0067】
(比較例5)
比較例5は、下記の製法5によって作製した。
【0068】
[製法5]
比較例5は、実施例1における合金作製工程にて作製した合金と、SiCとを実施例1の第2混合工程と同条件で混合し、焼結することにより作製した。なお、SiCは、合金の体積に対して30%混合した。焼結は、実施例1の焼結工程と同条件で行った。
【0069】
(比較例6)
比較例6は、焼結条件以外については、比較例5と同様に作製した。比較例6では、1273Kにて焼結を行い、該温度で10分間保持することにより焼結を行った。
【0070】
(比較例7)
比較例7は、焼結条件以外については、比較例5と同様に作製した。比較例7では、1273Kにて焼結を行い、該温度で20分間保持することにより焼結を行った。
【0071】
<評価方法>
作製したαFe−SiC複合材料は、アルキメデス法による相対密度、定常熱伝導測定、ビッカース硬さ試験、およびSiCの面積率等にて評価した。
【0072】
相対密度は、Sartorius社製LA120Sを用いて測定した。
【0073】
定常熱伝導測定は、データ収集/スイッチユニット(Agilent社製34970A)を用い測定を行った。
【0074】
ビッカース硬さ試験は、ビッカース硬度計(Future-Tech社製FV-810)を用い測定を行った。
【0075】
SiCの面積率(Area fraction of SiC)は、作製したαFe−SiC複合材料におけるSiCの残存率を指し、(αFe−SiC複合材料のSiCの面積率/(SiCの添加量))から求めた。なお、αFe−SiC複合材料のSiCの面積率は、光学顕微鏡の画像などより求めた。
【0076】
<結果>
上述した評価方法により評価した結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例1〜3のαFe−SiC複合材料は、いずれもSiCの分解を抑制することができた。その結果、熱伝導率が約24W/m・K以上、かつビッカース硬さが600HV以上と硬度および熱伝導性に優れたαFe−SiC複合材料が得られた。
【0079】
比較例1〜7は、実施例1〜3と比べて、いずれもビッカース硬さに劣る結果となった。なお、比較例4は、αFe−SiC複合材料におけるFeに対してα相安定化元素を約40%近く加えたため、SiCの分解を抑制することができたがビッカース硬さにて劣る結果となった。
【0080】
また、製法2(実施例2、3)では、ガスアトマイズおよび粉末混合によりα相安定化元素を添加した。一方、製法5(比較例5〜7)では、製法2にて添加したα相安定化元素と略同一量のα相安定化元素をガスアトマイズのみにより添加した。α相安定化元素の添加方法によるSiCの残存率を評価すると、
図4に示すように粉末混合も行うことが好ましいことが認められた。これは、粉末混合を行うことによりα相安定化元素がαFeとSiCとの境界に局在化し、SiCの分解を抑制したと考えられる。
【0081】
また、比較例4および比較例6は、SiCの分解は抑制することができたが、相対密度が低かった。すなわち、比較例4および比較例6は、空孔を多く含んでいた。その結果、比較例4および比較例6は、硬度が低かった。また、比較例4および比較例6は、相対密度が低いため、引張強度および疲労特性が低いことが予想される。
【0082】
また、比較例6および比較例7は、焼結条件を変更した。焼結時にαFe−SiC複合材料に加えられる熱量を略同等とするため、焼結温度を低下させる代わりに一定時間該焼結温度で保持した。比較例6は100K温度を低下させ(1273K)10分間保持した。また、比較例7では、比較例6と同じ温度で20分間保持した。
図5に示すように、保持時間を長くすることによりSiCの分解が促進された。また、焼結温度が低いため相対密度も低下した。これは、焼結温度を低下させるよりも、短時間で焼結することによりSiCの分解を抑制でき、かつ、相対密度の高い、換言すれば硬度の高い試料を作製できることを示している。