特開2021-133390(P2021-133390A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2021-133390被接合部材を接合する方法、および接合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-133390(P2021-133390A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】被接合部材を接合する方法、および接合体
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/18 20060101AFI20210816BHJP
   B23K 26/324 20140101ALI20210816BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20210816BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20210816BHJP
   C03B 23/203 20060101ALI20210816BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
   B23K26/18
   B23K26/324
   B23K26/53
   B23K26/57
   C03B23/203
   H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2020-30890(P2020-30890)
(22)【出願日】2020年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 章広
(72)【発明者】
【氏名】長澤 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佑介
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直之
(72)【発明者】
【氏名】杉田 直彦
(72)【発明者】
【氏名】長藤 圭介
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AE02
4E168AE03
4E168AE05
4E168BA02
4E168BA90
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA13
4E168DA32
4E168DA40
4E168DA42
4E168DA45
4E168DA46
4E168EA02
4E168EA04
4E168EA08
4E168EA09
4E168FD01
4E168FD04
4E168JA12
4E168JA13
4E168JA14
4E168JA15
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】迅速に接合処理を行うことが可能な上、2つの被接合部材の間に間隙が存在しても、適正に接合を行うことが可能な接合方法。
【解決手段】第1の被接合部材と第2の被接合部材とを配置して、組立体を構成する工程と、前記組立体に第1および第2のレーザを照射する工程であって、第1のレーザは、第1の被接合部材または第2の被接合部材の表面に、加工起点となる光吸収性の領域を形成し、第2のレーザは、前記加工起点となる位置を含むように照射され、これにより、光吸収性の領域から溶融物が生成される工程と、第2のレーザの照射を継続する工程であって、前記溶融物の内部にガスが発生し、前記ガスの圧力により、前記溶融物を介して、第1の被接合部材と第2の被接合部材が接合される、工程と、を有する、方法。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部材を接合する方法であって、
(I)第1の表面および第2の表面を有する第1の被接合部材と、第3の表面および第4の表面を有する第2の被接合部材とを、前記第2の表面と前記第3の表面が相互に対面するように配置して、組立体を構成する工程と、
(II)前記組立体に第1のレーザおよび第2のレーザを照射する工程であって、
前記第2のレーザの照射は、
(a)前記第1のレーザの照射前、
(b)前記第1のレーザの照射と同時、または
(c)前記第1のレーザの照射後
のいずれかのタイミングで開始され、
前記第1のレーザは、短パルスレーザであり、前記第1の被接合部材の側から照射され、前記第2の表面または前記第3の表面に、加工起点となる光吸収性の領域を形成し、
前記第2のレーザは、連続波レーザであり、前記加工起点となる位置を含むように照射される、工程と、
(III)前記(II)の工程において、前記光吸収性の領域から溶融物が生成される工程と、
(IV)前記第2のレーザの照射を継続する工程であって、前記溶融物の内部にガスが発生し、前記ガスの圧力により、前記溶融物が前記第2の表面および/または前記第3の表面の面方向に広がり、これにより、前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材の間に接合領域が形成される、工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
前記第1のレーザは、前記第1の被接合部材に対して透明な波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のレーザは、前記第1または第2の被接合部材に対して透明な波長を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の被接合部材は、ガラス、サファイア、またはシリコンで構成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の被接合部材は、ガラス、サファイア、樹脂、半導体、またはセラミックスで構成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の被接合部材は、前記第1の被接合部材と同じ材料で構成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記(II)の工程において、前記第2のレーザは、前記第1の被接合部材の側から照射される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記(II)の工程において、前記第2のレーザは、前記第2の被接合部材の側から照射される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記(I)の工程において、前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材は、両者の間に、0〜20μmの間隙が生じるようにして相互に配置される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記(II)の工程において、前記第1のレーザは、前記第2の表面、前記第3の表面、または前記第2の表面と前記第3の表面の間の間隙で、焦点化されるように照射される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記(II)の工程において、前記第2のレーザは、前記第1のレーザの焦点化位置で焦点化されるように照射される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記組立体の別の位置において、
(V)前記(II)〜前記(IV)の工程を繰り返す工程
を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
2つの部材が相互に接合された接合体であって、
第1の表面を有する第1の部材と、
第2の表面を有する第2の部材と、
前記第1の表面と前記第2の表面の間に、前記第1の表面および前記第2の表面に沿って配置された接合部と、
前記接合部から、前記第1の部材または前記第2の部材の内部に延在する1または2以上の空洞と、
を有し、
前記第1の部材の第1の表面に垂直な方向から見たとき、前記接合部の投影面積は、前記空洞の投影面積の総和よりも広い、接合体。
【請求項14】
前記第1の表面と前記第2の表面の間の距離は、0〜20μmの範囲である、請求項13に記載の接合体。
【請求項15】
前記接合部は、前記第1の部材の前記第1の表面に枠状に配置され、前記第1の部材と前記第2の部材の間に密閉空間が形成される、請求項13または14に記載の接合体。
【請求項16】
前記接合部は、前記第1の部材と前記第2の部材の間の複数のスポット領域として配置される、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項17】
前記第1の部材は、ガラス、サファイア、またはシリコンで構成される、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項18】
前記第2の部材は、ガラス、サファイア、樹脂、半導体、またはセラミックスで構成される、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項19】
前記第1の部材は、前記第2の部材と同じ材料で構成される、請求項13乃至18のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項20】
前記第1の部材および前記第2の部材は、ガラス基板であり、
前記接合部の仮想温度は、前記第1の部材および前記第2の部材の仮想温度よりも高い、請求項13乃至19のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項21】
前記接合部の投影面積は、前記空洞の投影面積の総和よりも2倍以上広い、請求項13乃至20のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項22】
前記接合部の体積は、前記空洞の総体積の15%〜250%の範囲である、請求項13乃至21のいずれか一項に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接合部材を接合する方法、および接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ照射を利用して、2つの被接合部材を接合する技術が知られている。
【0003】
例えば、2枚のガラス基板同士の間にガラスフリットを設置して組立体を構成した後、該組立体にレーザを照射してガラスフリットを溶融、固化させることにより、2枚のガラス基板を接合することができる(例えば特許文献1)。
【0004】
また、2枚の透明部材の当接部に超短パルスレーザを照射して、照射領域を溶融させることにより、透明部材同士を接合することができる。最近では、この応用例として、2本の超短パルスレーザを使用することにより、異種材料同士の接合が可能となることが提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019−140128号公報
【特許文献2】特開2003−298620号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】NEW GLASS Vol.27,No.104,2012,p49−52
【非特許文献2】NEW GLASS Vol.27,No.105,2012,p15−19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のレーザ照射により2つの被接合部材を接合する技術は、「接着剤介在法」と「直接接合法」に大別できる。
【0008】
「接着剤介在法」は、被接合部材同士の間に、レーザ照射により溶融する「接着剤」を介在させる方法である。「接着剤介在法」には、例えば、前述の特許文献1に記載の方法が含まれる。一方、「直接接合法」は、接着剤を使用せず、2つの被接合部材を直接接合する方法である。「直接接合法」には、例えば、前述の特許文献2に記載の方法が含まれる。
【0009】
このうち、「接着剤介在法」は、被接合部材と接着剤が異なる材料で構成される場合、熱膨張差による影響を受けやすく、接合強度の面で問題がある。
【0010】
一方、「直接接合法」では、接合部に「接着剤」のような異種材料が含まれないため、熱膨張差による強度低下の影響が軽減される。しかしながら、「直接接合法」は、接合処理速度の点で問題がある。すなわち、この方法で使用される超短パルスレーザは、多量の熱エネルギーを供給することには不向きであり、大きな接合部を形成するためには、膨大な回数のパルス照射を実施する必要がある。
【0011】
また、「直接接合法」では、2つの被接合部材の間に間隙が存在すると、適正な接合を行うことが難しくなる。このため、間隙を高精度に制御する必要があり、相応の接合装置が必要となる。
【0012】
このように、従来のレーザを用いた接合方法では、「接着剤介在法」および「直接接合法」のいずれにおいても、改善の余地がある。
【0013】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものである。すなわち、本発明では、「接着剤」を使用しなくても、比較的迅速に接合処理を行うことが可能な上、2つの被接合部材の間に多少の間隙が存在する場合であっても、適正に接合を行うことが可能な接合方法を提供することを目的とする。また、本発明では、そのような接合方法で製造された接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、被接合部材を接合する方法であって、
(I)第1の表面および第2の表面を有する第1の被接合部材と、第3の表面および第4の表面を有する第2の被接合部材とを、前記第2の表面と前記第3の表面が相互に対面するように配置して、組立体を構成する工程と、
(II)前記組立体に第1のレーザおよび第2のレーザを照射する工程であって、
前記第2のレーザの照射は、
(a)前記第1のレーザの照射前、
(b)前記第1のレーザの照射と同時、または
(c)前記第1のレーザの照射後
のいずれかのタイミングで開始され、
前記第1のレーザは、短パルスレーザであり、前記第1の被接合部材の側から照射され、前記第2の表面または前記第3の表面に、加工起点となる光吸収性の領域を形成し、
前記第2のレーザは、連続波レーザであり、前記加工起点となる位置を含むように照射される、工程と、
(III)前記(II)の工程において、前記光吸収性の領域から溶融物が生成される工程と、
(IV)前記第2のレーザの照射を継続する工程であって、前記溶融物の内部にガスが発生し、前記ガスの圧力により、前記溶融物が前記第2の表面および/または前記第3の表面の面方向に広がり、これにより、前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材の間に接合領域が形成される、工程と、
を有する、方法が提供される。
【0015】
また、本発明では、2つの部材が相互に接合された接合体であって、
第1の表面を有する第1の部材と、
第2の表面を有する第2の部材と、
前記第1の表面と前記第2の表面の間に、前記第1の表面および前記第2の表面に沿って配置された接合部と、
前記接合部から、前記第1の部材または前記第2の部材の内部に延在する1または2以上の空洞と、
を有し、
前記第1の部材の第1の表面に垂直な方向から見たとき、前記接合部の投影面積は、前記空洞の投影面積の総和よりも広い、接合体が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、「接着剤」を使用しなくても、比較的迅速に接合処理を行うことが可能な上、2つの被接合部材の間に多少の間隙が存在する場合であっても、適正に接合を行うことが可能な接合方法を提供することができる。また、本発明では、そのような接合方法で製造された接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による接合方法のフローを模式的に示した図である。
図2】本発明の一実施形態による接合方法を実施するための装置の構成の一例を模式的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態による接合方法において使用される組立体を模式的に示した断面図である。
図4】本発明の一実施形態による接合方法における一工程を模式的に示した断面図である。
図5】本発明の一実施形態による接合方法における一工程を模式的に示した断面図である。
図6】本発明の一実施形態による接合方法における一工程を模式的に示した断面図である。
図7】本発明の一実施形態による接合方法における一工程を模式的に示した断面図である。
図8】本発明の一実施形態による接合方法における一工程を模式的に示した断面図である。
図9】本発明の一実施形態による接合方法における一工程を模式的に示した断面図である。
図10】本発明の一実施形態による接合方法により得られた接合体の断面の一例を模式的に示した図である。
図11】本発明の一実施形態による接合体の模式的な斜視図である。
図12図11におけるI−I線に沿った断面を模式的に示した図である。
図13図12に示した断面の模式的な拡大図である。
図14】本発明の別の実施形態による接合体の模式的な斜視図である。
図15図14におけるII−II線に沿った断面を模式的に示した図である。
図16】本発明のさらに別の実施形態による接合体の模式的な斜視図である。
図17図16におけるIII−III線に沿った断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
前述のように、従来の「接着剤介在法」は、被接合部材と接着剤が相互に異なる材料で構成される場合、接合部が熱膨張差による影響を受けやすく、接合強度の面で問題がある。また、「直接接合法」では、接合処理速度、および2つの被接合部材の間の間隙の寸法制御の点で問題がある。
【0020】
本願発明者らは、このような問題に対処するため、鋭意研究開発を実施してきた。そして、レーザ照射によって、被接合部材の加熱部に溶融物および揮発ガスを発生させ、この揮発ガスの圧力を利用して、溶融物を被接合箇所に搬送するというアイデアを得た。
【0021】
これが実現できれば、「直接接合法」においても、比較的容易に、広い範囲にわたって接合部を形成することができる。また、揮発ガスの圧力により溶融物を搬送する方法では、2つの被接合部材の間に比較的大きな間隙があっても、溶融物を両者の間に介在させることができる。従って、間隙の寸法をあまり意識することなく、接合処理を行うことができる。
【0022】
ただし、この新たな方法を実現するためには、空間的選択性および時間的連続性の確保が必須となる。すなわち、新たな方法の実現には、被接合部材の所望の位置を選択的に加熱する技術と、当該所望の位置を連続的に加熱し続ける技術とを組み合わせる必要がある。
【0023】
本願発明者らは、2本のレーザを使用することにより、この問題を解決できることを見出した。
【0024】
すなわち、第1のレーザとして短パルスレーザを使用すれば、所定の位置にのみ、光吸収性の領域を形成することができ、これにより空間的選択性の問題が解決できる。また、第2のレーザとして連続波レーザを使用すれば、溶融物から揮発ガスを形成するために必要なエネルギーを供給し続けることが可能となる。従って、時間的連続性の問題が解決できる。
【0025】
以上の検討に基づき、本願発明者らは本願発明を完成させた。
【0026】
従って、本発明の一実施形態では、被接合部材を接合する方法であって、
(I)第1の表面および第2の表面を有する第1の被接合部材と、第3の表面および第4の表面を有する第2の被接合部材とを、前記第2の表面と前記第3の表面が相互に対面するように配置して、組立体を構成する工程と、
(II)前記組立体に第1のレーザおよび第2のレーザを照射する工程であって、
前記第2のレーザの照射は、
(a)前記第1のレーザの照射前、
(b)前記第1のレーザの照射と同時、または
(c)前記第1のレーザの照射後
のいずれかのタイミングで開始され、
前記第1のレーザは、短パルスレーザであり、前記第1の被接合部材の側から照射され、前記第2の表面または前記第3の表面に、加工起点となる光吸収性の領域を形成し、
前記第2のレーザは、連続波レーザであり、前記加工起点となる位置を含むように照射される、工程と、
(III)前記(II)の工程において、前記光吸収性の領域から溶融物が生成される工程と、
(IV)前記第2のレーザの照射を継続する工程であって、前記溶融物の内部にガスが発生し、前記ガスの圧力により、前記溶融物が前記第2の表面および/または前記第3の表面の面方向に広がり、これにより、前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材の間に接合領域が形成される、工程と、
を有する、方法が提供される。
【0027】
本発明の一実施形態による接合方法では、「接着剤」のような異種材料を使用しない。すなわち、製造される接合体において、接合部は、被接合部材由来の成分で構成される。このため、被接合部材と接合部の間に、熱膨張差による強度低下の影響が生じ難い。
【0028】
また、本発明の一実施形態による接合方法では、第2のレーザとして、連続波レーザが使用される。このため、従来の「直接接合法」に比べて迅速に、被接合部材同士を接合することができる。
【0029】
さらに、本発明の一実施形態による接合方法では、溶融物の内部に生成されるガスの圧力で、溶融物が外方に噴出される。この「噴出物」は、相応の体積を有するため、両接合部材の間に多少の間隙があっても、該噴出物を介して、両被接合部材を接合することができる。従って、本発明の一実施形態による接合方法では、被接合部材同士の間に多少の間隙が存在しても、両接合部材を適正に接合することができる。そのため、被接合部材同士の間の間隙を高精度に制御する装置が不要となり、比較的簡便に接合処理を行うことが可能となる。
【0030】
(本発明の一実施形態による接合方法)
以下、図1図10を参照して、本発明の一実施形態による接合方法について説明する。
【0031】
図1には、本発明の一実施形態による接合方法のフローを模式的に示す。
【0032】
図1に示すように、本発明の一実施形態による接合方法(以下、「第1の方法」と称する)は、
第1の表面および第2の表面を有する第1の被接合部材と、第3の表面および第4の表面を有する第2の被接合部材とを、前記第2の表面と前記第3の表面が相互に対面するように配置して、組立体を構成する工程(工程S110)と、
前記組立体に前記第1の被接合部材の側から第1のレーザを照射する工程であって、前記第1のレーザは、短パルスレーザであり、前記第2の表面または前記第3の表面に、光吸収性の領域が形成される、工程(工程S120)と、
前記光吸収性の領域に第2のレーザを照射する工程であって、前記第2のレーザは、連続波レーザであり、前記光吸収性の領域から溶融物が生成される、工程(工程S130)と、
前記第2のレーザの照射を継続する工程であって、前記溶融物の内部にガスが発生し、前記ガスの圧力により、前記溶融物が前記第2の表面および/または前記第3の表面の面方向に広がり、これにより、前記第2のレーザの照射の完了後に、前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材の間に接合領域が形成される、工程(工程S140)と、
組立体の別の位置において、工程S120〜工程S140を繰り返す工程(工程S150)と、
を有する。
【0033】
ただし、工程S150は、必要な際に実施される工程であり、第1の方法において必須の工程ではない。
【0034】
図2には、第1の方法を実施するための装置の構成の一例を模式的に示す。
【0035】
図2に示すように、この装置1は、第1のレーザ光源10と、第2のレーザ光源20と、ダイクロイックミラー30と、レンズ40と、台50とを有する。
【0036】
第1のレーザ光源10は、第1のレーザ12をダイクロイックミラー30に向かって出射することができる。
【0037】
第1のレーザ12は、短パルスレーザである。第1のレーザ12のパルス幅は、例えば、50ナノ秒(nsec)以下である。第1のレーザ12のパルス幅は、1nsec以下であることが好ましく、20ピコ秒(psec)以下であることがより好ましい。
【0038】
第1のレーザ12の波長は、例えば、1064nm、1030nm、780nm、532nm、515nm、390nm、355nm、343nm、266nm、または257nm等であってもよい。
【0039】
第1のレーザ12におけるパルスエネルギーは、特に限られない。第1のレーザ12におけるパルスエネルギーは、例えば、1μJ/ショット以上であり、10μJ/ショット以上であることが好ましく、100μJ/ショット以上であることがより好ましい。
【0040】
第2のレーザ光源20は、第2のレーザ22をダイクロイックミラー30に向かって出射することができる。
【0041】
第2のレーザ22は、連続波レーザである。第2のレーザ22の波長は、例えば、400nm〜2000nmの範囲である。ここでいう連続波のレーザとは、照射時間中に途切れることなく、パワー密度が一定以上に維持されるレーザを示す。すなわち、連続波のレーザは、照射時間が例えば50μ秒であれば、50μ秒の期間、パワー密度が一定以上に維持される。また、連続波のレーザは、照射時間が例えば100秒であれば、100秒の期間、パワー密度が一定以上に維持される。
【0042】
第2のレーザ22のパワー密度は、例えば、1MW/cm〜100GW/cmの範囲である。
【0043】
ダイクロイックミラー30は、第1のレーザ12を透過し、第2のレーザ22を反射する機能を有する。ダイクロイックミラー30については、上記例以外にも第1のレーザ12を反射し、第2のレーザ22を透過する機能を有する物品を使用してもよく、この場合、第1のレーザと第2のレーザの配置が入れ替えられる。
【0044】
またダイクロイックミラー以外にも例えば偏光ビームスプリッターなどの他の手段で第1のレーザ12と第2のレーザ22を合流させても良い。
【0045】
台50は、被接合部材を有する組立体60を保持する機能を有する。
【0046】
以下、図2に記載の装置1を参照しながら、第1の方法の各工程について説明する。
【0047】
(工程S110)
まず、第1の被接合体および第2の被接合体を含む組立体60が準備される。
【0048】
第1の被接合体および第2の被接合体の形態は、特に限られない。ここでは、一例として、第1の被接合体および第2の被接合体がいずれも基板の形態を有するものと仮定する。従って、第1の被接合体および第2の被接合体を、それぞれ、第1の基板および第2の基板と称する。
【0049】
図3には、組立体60の断面を模式的に示す。
【0050】
図3に示すように、組立体60は、第1の基板110および第2の基板120を有する。
【0051】
第1の基板110は、相互に対向する第1の表面112および第2の表面114を有する。また、第2の基板120は、相互に対向する第3の表面122および第4の表面124を有する。第1の基板110および第2の基板120は、第2の表面114と第3の表面122が相互に対面するように配置して配置される。
【0052】
なお、図3に示した例では、第1の基板110と第2の基板120の間に間隙130が存在する。しかしながら、間隙130は、実質的に存在しなくてもよい。例えば、間隙130の寸法(第1の基板110と第2の基板120の間の距離)は、例えば、0〜20μmの範囲であってもよい。
【0053】
後述するように、第1のレーザ12は、組立体60における第1の基板110の側から入射される。従って、第1の基板110は、第1のレーザ12の波長に対して透明な材料で構成される。
【0054】
また、第2のレーザ22が第1の基板110の側から入射される場合、第1の基板110は、第2のレーザ22の波長に対しても、透明な材料で構成される。
【0055】
第1の基板110は、例えば、ガラス、サファイア、またはシリコンなどで構成されてもよい。
【0056】
一方、第2の基板120には、第1の基板110のような材料的な制約はない。第2の基板120は、第1のレーザ12および第2のレーザ22に対して不透明な材料で構成されてもよい。第2の基板120は、例えば、ガラス、サファイア、樹脂、半導体、またはセラミックスなどで構成されてもよい。
【0057】
ただし、後述するように、第1のレーザ12および第2のレーザ22が第2の基板120の第3の表面122もしくは第2の基板120の内部に焦点化される場合、第2の基板120は、第1のレーザ12および第2のレーザ22の波長に対して透明な材料で構成される。また、第2のレーザ22が第2の基板120の側から入射される場合、第2の基板120は、第2のレーザ22の波長に対して透明な材料で構成される。ここでいう透明な波長とは、被加工対象の吸収係数αが100/cm以下となる波長を意味する。
【0058】
この場合、第2の基板120は、例えば、ガラス、サファイア、またはシリコンなどで構成されてもよい。
【0059】
特に、第2の基板120は、第1の基板110と同じ材料で構成されてもよい。
【0060】
組立体60は、台50の上に載置される。
【0061】
(工程S120)
次に、組立体60の第1の基板110の側から、第1のレーザ12が照射される。前述のように、第1のレーザ12は、短パルスレーザである。
【0062】
第1のレーザ12は、第1の基板110の第2の表面114、または第2の基板120の第3の表面122の少なくとも一方に、光吸収性の領域が形成されるように照射される。なお、これが実現される限り、第1のレーザ12の焦点位置は、特に限られない。
【0063】
例えば、第1のレーザ12は、組立体60の断面視、
(1)第1の基板110の第2の表面114上、
(2)第1の基板110の第2の表面114の表面よりも第1の基板110の内部側、特に第2の表面114から1μm〜10μmの範囲の深さ位置、
(3)間隙130内のいずれかの高さ位置、
(4)第2の基板120の第3の表面122上、または
(5)第2の基板120の第3の表面122の表面よりも第2の基板120の内部側、特に第3の表面122から1μm〜30μmの範囲の深さ位置、
などで焦点化されるように照射されてもよい。
【0064】
なお、以降の記載では、一例として、前記(1)の場合、すなわち第1のレーザ12が第1の基板110の第2の表面114上に焦点化される場合を想定して、第1の方法について説明する。ただし、前述の(2)〜(5)の場合も、以下の記載が参照されることは明らかである。
【0065】
第1のレーザ12が第1の基板110の第2の表面114上に焦点化される場合、第1のレーザ12の第2の表面114上のスポット径は、例えば、0.5μm〜50μmの範囲である。
【0066】
図4は、第1のレーザ12が第1の基板110の第2の表面114上に焦点化された状態を模式的に示す。図4において、破線R1は、第1のレーザ12の中心軸を表している。
【0067】
組立体60への第1のレーザ12の照射により、第1の基板110の第2の表面114に、光吸収性の領域160が形成される。
【0068】
なお、第1のレーザ12は、1ショット照射されることが好ましい。
【0069】
(工程S130)
次に、工程S120において生じた光吸収性の領域160に、第2のレーザ22が照射される。
【0070】
第2のレーザ22は、光吸収性の領域160が存在する間、すなわち第2の表面114および/または第3の表面122の該当位置が高温になっている間に、照射が開始される。
【0071】
図5には、第1の基板110の第2の表面114における光吸収性の領域160に、第2のレーザ22が照射された状態を模式的に示す。図5において、破線R2は、第2のレーザ22の中心軸を表している。
【0072】
前述のように、第2のレーザ22は、連続波レーザである。
【0073】
第2のレーザ22は、第1の基板110の第2の表面114に、第1のレーザ12よりも大きなスポットを形成するように照射されることが好ましい。例えば、第2の表面114における第2のレーザ22のスポットは、1μm〜100μmの範囲の寸法を有してもよい。
【0074】
第2のレーザ22の照射により、光吸収性の領域160が加熱されると、光吸収性の領域160を中心として溶融物が生成し、ここに溶融部が形成される。
【0075】
図6には、光吸収性の領域160およびその近傍に、溶融物162を含む溶融部164が形成された状態を模式的に示す。
【0076】
図6に示すように、最初の溶融物162は、通常、光吸収性の領域160およびその上方(第2の表面114に近い第1の基板110の内部)で生じる。これは、第2のレーザ22の照射中、これらの位置の温度が最も上昇する傾向にあるためである。
【0077】
(工程S140)
さらに第2のレーザ22の照射を続けると、溶融部164がさらに拡張して行く。また、溶融部164の内部で溶融物162の一部が揮発し、ガスが発生し始める。
【0078】
発生したガスは、溶融部164の内部から、第1の基板110と第2の基板120の間の間隙130に向かって放出される。
【0079】
このガスの放出にともない、溶融物162も第1の基板110の第2の表面114から外方に噴出される。その結果、間隙130にわたって、溶融物162が拡散される。以下、この放出された溶融物を、特に「放出溶融物166」と称する。
【0080】
なお、第1の基板110と第2の基板120の間に間隙130が実質的に存在しない場合、放出溶融物166は、第2の表面114と第3の表面122の間の界面にわたって拡散される。
【0081】
図7には、第1の基板110の第2の表面114および第2の基板120の第3の表面122の面方向に沿って、放出溶融物166が広がっている状態を模式的に示す。図7において、破線R2は、第2のレーザ22の中心軸を表している。
【0082】
図7に示すように、ガスの噴出により、溶融部164の内部には、空洞168が生じる。
【0083】
さらに第2のレーザ22の照射を続けると、溶融部164がさらに拡張される。また、これに伴い、ガスの放出量も増加する。従って、放出溶融物166の広がりがさらに助長される。また、溶融部164に含まれる空洞168も増大する。
【0084】
図8には、第1の基板110の第2の表面114および第2の基板120の第3の表面122の面方向にわたって、広い範囲に放出溶融物166が広がっている状態を模式的に示す。図8において、破線R2は、第2のレーザ22の中心軸を表している。
【0085】
図8に示すように、第2のレーザ22の照射の継続により、溶融部164はバルーン状に拡張する。
【0086】
その後、第2のレーザ22の照射を止めると、ガス発生の熱源がなくなるため、ガス放出が完了し、これに伴い溶融物162の放出も停止される。また、放出溶融物166が凝固し、この際に、第1の基板110と第2の基板120が接合される。
【0087】
図9には、工程S140後の組立体60の断面を模式的に示す。
【0088】
第2のレーザ22の照射完了後、放出溶融物166は、接合領域170に変化する。従って、接合領域170を介して、第1の基板110と第2の基板120が接合される。
【0089】
なお、溶融部164は、溶融痕172に変化する。
【0090】
第1の方法において、空洞168は、工程S140後にも、そのまま残存する。従って、接合領域170の上部に、空洞168を有する溶融痕172が形成される。
【0091】
このように、第1の方法では、特徴的な接合形態を有する接合体が形成される。
【0092】
(工程S150)
さらに、必要な場合、組立体60の別の位置において、工程S120〜工程S140が繰り返されてもよい。
【0093】
例えば、第1の基板110の第2の表面114の別の位置において、光吸収性の領域160が生じるように、第1のレーザ12が照射される。その後、第2のレーザ22が照射され、接合領域170が形成される。
【0094】
これを繰り返すことにより、複数の接合領域170を介して、第1の基板110と第2の基板120が接合される。
【0095】
図10には、第1の方法により得られた接合体の断面の一例を模式的に示す。
【0096】
図10に示すように、この例では、接合体200は、第1の基板110の第2の表面114の6箇所に、溶融痕172を有する。従って、接合体200の製造の際には、少なくとも6箇所の異なる位置において、前述の工程S120〜工程S140が繰り返されていることがわかる。
【0097】
各溶融痕172は、空洞168を有する。
【0098】
なお、接合体200では、各溶融痕172に対応する接合領域が相互に連結され、その結果、一つの大きな接合部278が形成されている。従って、それぞれの接合領域は不明である。
【0099】
ここで、本願において、「接合部」とは、接合体に含まれる、1または2以上の接合領域の集合を意味する。また、「接合領域」とは、前述のように、一つの光吸収性の領域160から放出される放出溶融物166が固化することにより生じる領域を表す。
【0100】
例えば、接合体に含まれる接合領域が一つの場合、接合部は、該一つの接合領域を表す。また、例えば、接合体が複数の接合領域を有する場合、全ての接合領域をまとめて接合部と称される。また、例えば、図10に示した例のように、複数の接合領域(図からはそれぞれの位置は視認できない)が結合され、単一の大きな領域が形成されている場合、該単一の領域が、接合部278と称される。
【0101】
なお、図9では、上面視、溶融痕172(および空洞168)は、接合領域170の中心に存在する。換言すれば、接合領域170は、溶融痕172(および空洞168)の周囲に円形に延在している。しかしながら、これは単なる一例であって、溶融痕172(および空洞168)と接合領域170の相対位置関係は、特に限られない。すなわち、溶融痕172(および空洞168)は、必ずしも接合領域170の中心位置にあるとは限られない。
【0102】
むしろ、接合領域170は、上面視、溶融痕172(および空洞168)に対して偏在するように分布する場合が多いことが発明者らによって確認されている。
【0103】
ところで、図9に示した接合領域170は、図8における放出溶融物166に由来する。また、放出溶融物166は、元来空洞168に存在した溶融物162の一部である。このため、理想的には、接合領域170の体積(Vp1とする)は、空洞168の体積(Vq1とする)に近い値となる。また、その結果、接合領域170の集合体である接合部278(図10参照)の体積(Vpとする)は、理想的には、空洞168の総体積(Vqとする)とほぼ等しくなる。
【0104】
ただし、溶融物162の一部は、ガスとして揮発したり、溶融再凝固の過程で密度が変化したりする。従って、実際には、接合部278の体積Vpは、空洞168の総体積Vqの15%〜250%の範囲となる場合がある。特に、接合部の体積Vpは、空洞168の総体積Vqの30%〜120%の範囲となり得る。
【0105】
以上、第1の方法を例に、本発明の一実施形態による接合方法について説明した。しかしながら、上記記載は、本発明の一実施形態による接合方法の単なる一例に過ぎない。すなわち、本発明の一実施形態による接合方法は、第1の方法に限られるものではなく、各種変更が可能である。
【0106】
例えば、第1の方法では、第2のレーザ22は、第1のレーザ12と同じ側、すなわち第1の基板110の側から照射される。
【0107】
しかしながら、これに代えて、第2のレーザ22は、第1のレーザ12と反対の側、すなわち第2の基板120の側から照射されてもよい。この場合、第2の基板120として、第2のレーザ22の波長に対して透明な材料が使用される。
【0108】
あるいは、第2のレーザ22は、第1の基板110の側と、第2の基板120の側の双方から照射されてもよい。この場合、光吸収性の領域160がより速やかに昇温され、より迅速な接合処理を行うことが可能となる。
【0109】
また、第1の方法では、第2のレーザ22は、第1のレーザ12の照射が開始された後に、照射が開始される。
【0110】
しかしながら、第2のレーザ22の照射は、
(a)第1のレーザ12の照射前、
(b)第1のレーザ12の照射と同時、または
(c)第1のレーザ12の照射後
のいずれのタイミングで開始されてもよい。
【0111】
すなわち、本発明の一実施形態では、光吸収性の領域160を起点に溶融部164が生成され、該溶融部164から外部に向かって溶融物162が噴出される限り、第1のレーザ12および第2のレーザ22は、相互に対していかなるタイミングで照射が開始されてもよい。
【0112】
その他にも、各種変更が可能である。
【0113】
(本発明の一実施形態による接合体)
次に、図11図13を参照して、本発明の一実施形態による接合体について説明する。
【0114】
図11には、本発明の一実施形態による接合体の模式的な斜視図を示す。また、図12には、図11におけるI−I線に沿った断面を模式的に示す。さらに、図13には、図12に示した断面の一部の拡大図を示す。
【0115】
図11および図12に示すように、本発明の一実施形態による接合体(以下、「第1の接合体」と称する)500は、第1の部材510と、第2の部材520と、両者の間に配置された接合部578とを有する。
【0116】
なお、図11および図12に示した例では、第1の接合体500は、第1の部材510と第2の部材520の間に、間隙530を有する。ただし、この間隙530は、実質的に存在しなくてもよい。すなわち、第1の部材510と第2の部材520は、相互に接触していてもよい。
【0117】
第1の部材510は、相互に対向する第1の表面512および第2の表面514を有する。第2の部材520は、相互に対向する第3の表面522および第4の表面524を有する。
【0118】
接合部578は、複数のスポット状の接合領域570を含む。例えば、図11に示した例では、接合部578は、上面視、5行5列に配列された合計25個のスポット状の接合領域570により構成される。
【0119】
なお、図11に示した接合領域570の態様は単なる一例であって、接合領域570の数および配置形態等は、特に限られないことに留意する必要がある。
【0120】
図13には、一つの接合領域570の断面の模式的な拡大図を示す。
【0121】
図13に示すように、接合領域570は、第1の部材510と第2の部材520の間の間隙530にわたって延在する。以降、第1の部材510と第2の部材520の間で接合領域570が延在する方向を、「面内」方向とも称する。
【0122】
接合領域570の上部には、第1の部材510の第2の表面514から第1の部材510の内部に延在する溶融痕572が存在する。
【0123】
なお「溶融痕572」とは、前述のように、レーザ照射により生成した溶融部が急冷されて形成された部分を意味する。溶融痕572の内部には、空洞568が生じている。従って、溶融痕572は、容易に識別することができる。
【0124】
図13から明らかなように、面内方向に垂直な方向から見たとき、接合領域570の投影面積(Sp1とする)は、空洞568の投影面積(Sq1とする)よりも広くなっている。
【0125】
また、その結果、第1の接合体500では、面内方向に垂直な方向から見たとき、各接合領域570の投影面積の総和で表される接合部578の投影面積(Spとする)が、空洞568の投影面積の総和(Sqとする)よりも広くなっている。
【0126】
例えば、比Sp/Sqは、2以上であってもよい。比Sp/Sqは、4以上11以下であることが好ましい。
【0127】
このような特徴を有する第1の接合体500は、各接合領域570に接着剤のような異種材料を含まない。従って、第1の接合体500は、第1の部材510または第2の部材520と接合領域570との間で熱膨張差が生じ難く、良好な接合強度を有する。
【0128】
このような第1の接合体500は、例えば、前述の第1の方法により製造されてもよい。
【0129】
以下、第1の接合体500の各部分について、より詳しく説明する。
【0130】
(第1の部材510)
第1の部材510の材質および形状は、特に限られない。
【0131】
第1の部材510は、例えば、ガラス、サファイア、またはシリコンで構成されてもよい。
【0132】
また、第1の部材510は、例えば、図11に示したような基板状、シート状、またはブロック状の形態を有してもよい。
【0133】
第1の部材510が基板の場合、第1の部材510の厚さは、特に限られない。第1の部材510の厚さは、例えば、20μm〜10000μmの範囲であってもよい。
【0134】
(第2の部材520)
第2の部材520の材質および形状は、特に限られない。
【0135】
第2の部材520は、例えば、ガラス、サファイア、樹脂、半導体、またはセラミックスで構成されてもよい。
【0136】
また、第2の部材520は、例えば、図11に示したような基板状、シート状、またはブロック状の形態を有してもよい。
【0137】
第2の部材520が基板の場合、第2の部材520の厚さは、特に限られない。第2の部材520の厚さは、例えば、20μm〜10000μmの範囲であってもよい。
【0138】
なお、第2の部材520は、第1の部材510と同じ材料で構成されてもよい。
【0139】
(接合領域570)
接合領域570は、第1の部材510に由来する成分を含む。
【0140】
空洞568は、例えば、面内方向に沿った断面の最大寸法が1μm〜100μmの範囲である。
【0141】
なお、面内方向に垂直な方向から見たとき、接合領域570と空洞568との位置関係は、接合領域570内に空洞568が含まれる限り、特に限られない。
【0142】
例えば、空洞568は、面内方向に垂直な方向から見たとき、接合領域570の中心に配置されてもよい。ただし、多くの場合、空洞568は、接合領域570の中心からずれた位置に配置される。
【0143】
第1の部材510および第2の部材520がともにガラスで構成される場合、接合領域570は、第1の部材510および第2の部材520の仮想温度よりも高い仮想温度を有してもよい。
【0144】
ここで、「仮想温度」とは、ガラスの化学的構造を示す指標値の一つである。簡単に言えば、ガラスは組成が同じでも、冷却挙動の差異により異なる物理的性質を示し、仮想温度が変化する。従って、ガラスの仮想温度を評価することにより、冷却履歴の異同を把握することができる。
【0145】
第1の接合体500が第1の方法により製造された場合、接合領域570は、他の場所とは異なる急冷環境に晒される。従って、接合領域570は、第1の部材510および第2の部材520の仮想温度よりも高い「仮想温度」を示す。
【0146】
仮想温度は、例えば、ラマン分光法または赤外分光法などの分光学的評価により評価することができる。仮想温度に関しては、非特許文献1、2に詳しく記載されている。
【0147】
第1の接合体500において、接合領域570の仮想温度と、第1の部材510または第2の部材520の仮想温度の差ΔTkは、例えば、10℃〜200℃の範囲である。
【0148】
(間隙530)
第1の部材510の第2の表面514と第2の部材520の第3の表面522との間の距離、すなわち間隙530の寸法は、特に限られない。間隙530は、例えば、0〜20μmの範囲であり、10μm〜20μmの範囲であってもよい。
【0149】
なお、前述のような特許文献2に記載の「直接接合法」では、第1の部材510と第2の部材520の間に間隙が存在すると、両者を接合することは難しい。
【0150】
これに対して、第1の接合体500では、例えば前述の第1の方法を用いることにより、間隙530が20μmの接合体も、製造することができる。
【0151】
(本発明の別の実施形態による接合体)
次に、図14および図15を参照して、本発明の別の実施形態による接合体について説明する。
【0152】
図14には、本発明の別の実施形態による接合体の模式的な斜視図を示す。また、図15には、図14におけるII−II線に沿った断面を模式的に示す。
【0153】
図14および図15に示すように、本発明の別の実施形態による接合体(以下、「第2の接合体」と称する)600は、第1の部材610と、第2の部材620と、両者の間に配置された接合部678とを有する。
【0154】
第1の部材610は、相互に対向する第1の表面612および第2の表面614を有する。第2の部材620は、相互に対向する第3の表面622および第4の表面624を有する。
【0155】
なお、図14および図15に示した例では、第2の接合体600は、第1の部材610と第2の部材620の間に、間隙630を有する。ただし、この間隙630は、実質的に存在しなくてもよい。
【0156】
第1の部材610、第2の部材620、および間隙630の特徴については、前述の第1の接合体500における第1の部材510、第2の部材520、および間隙530に関する記載が参照できる。従って、ここではこれ以上説明しない。
【0157】
接合部678は、第1の部材610と第2の部材620の間に枠状に配置される。その結果、第1の部材610と第2の部材620の間に、密閉空間680が形成される。
【0158】
接合部678は、第1の部材610に由来する成分を含む。
【0159】
図15には明確に示されていないが、接合部678は、複数の溶融痕を有する。溶融痕は、例えば、前述の図10に示すような配置を有してもよい。具体的には、溶融痕は、第1の部材610の第2の表面614の面内方向に沿って、枠状に配列されてもよい。また、この場合、溶融痕は、周期的に配置されても、ランダムに配置されてもよい。
【0160】
なお、溶融痕については、前述の第1の接合体500における記載が参照できる。従って、ここではこれ以上説明しない。
【0161】
ここで、第2の接合体600は、面内方向に垂直な方向から見たとき、接合部678の投影面積Spが、空洞(図15には示されていない)の投影面積の総和Sqよりも広いという特徴を有する。
【0162】
例えば、面内方向に垂直な方向から見たとき、比Sp/Sqは、2以上であり、4以上11以下であってもよい。
【0163】
また、第2の接合体600では、接合部678の体積Vpが、空洞の総体積Vqの15%〜250%の範囲、例えば、30%〜120%の範囲であるという特徴を有する。このため、空洞の総体積Vqを所望の値に設定することにより、接合部678の体積Vpを調整することができる。
【0164】
このような特徴を有する第2の接合体600は、接合部678に接着剤のような異種材料を含まない。従って、第2の接合体600は、第1の部材610または第2の部材620と接合部678との間で熱膨張差が生じ難く、良好な接合強度を有する。
【0165】
このような第2の接合体600は、例えば、前述の第1の方法により製造されてもよい。
【0166】
(本発明のさらに別の実施形態による接合体)
次に、図16および図17を参照して、本発明のさらに別の実施形態による接合体について説明する。
【0167】
図16には、本発明のさらに別の実施形態による接合体の模式的な斜視図を示す。また、図17には、図16におけるIII−III線に沿った断面を模式的に示す。
【0168】
図16および図17に示すように、本発明のさらに別の実施形態による接合体(以下、「第3の接合体」と称する)700は、第1の部材710と、第2の部材720と、両者の間に配置された接合部778とを有する。
【0169】
第1の部材710は、相互に対向する第1の表面712および第2の表面714を有する。第2の部材720は、相互に対向する第3の表面722および第4の表面724を有する。
【0170】
なお、図16および図17に示した例では、第3の接合体700は、第1の部材710と第2の部材720の間に、間隙730を有する。ただし、この間隙730は、実質的に存在しなくてもよい。
【0171】
第1の部材710、第2の部材720、および間隙730の特徴については、前述の第1の接合体500における第1の部材510、第2の部材520、および間隙530に関する記載が参照できる。従って、ここではこれ以上説明しない。
【0172】
第2の接合体600において、接合部778は、第1の部材610と第2の部材620の間に、一定以上の表面積を有する「層」として配置される。表面積は、例えば、100cm以上である。
【0173】
接合部778は、第1の部材610に由来する成分を含む。
【0174】
図17には明確に示されていないが、接合部778は、複数の溶融痕を有する。溶融痕は、例えば、前述の図10に示すような配列を二次元的に有してもよい。
【0175】
なお、溶融痕については、前述の第1の接合体500における記載が参照できる。従って、ここではこれ以上説明しない。
【0176】
ここで、第3の接合体700は、面内方向に垂直な方向から見たとき、接合部778の投影面積Spが、空洞(図17には示されていない)の投影面積の総和Sqよりも広いという特徴を有する。
【0177】
例えば、面内方向に垂直な方向から見たとき、比Sp/Sqは、2以上である。比Sp/Sqは、4以上11以下であることが好ましい。
【0178】
また、第3の接合体700では、接合部778の体積Vpが、空洞の総体積Vqの15%〜250%の範囲、例えば、30%〜120%の範囲であるという特徴を有する。このため、空洞の総体積Vqを所望の値に設定することにより、接合部778の体積Vpを調整することができる。
【0179】
このような特徴を有する第3の接合体700は、接合部778に接着剤のような異種材料を含まない。従って、第3の接合体700は、第1の部材710または第2の部材720と接合部778との間で熱膨張差が生じ難く、良好な接合強度を有する。
【0180】
このような第3の接合体700は、例えば、前述の第1の方法により製造されてもよい。
【0181】
以上、第1の接合体500〜第3の接合体700を例に、本発明の一実施形態による接合体について説明した。ただし、本発明の一実施形態による接合体が、上記構成に限定されるものものではないことは明らかである。
【0182】
例えば、第1の接合体500において、各接合領域570における溶融痕572および空洞568は、第1の部材510の側に延伸している。しかしながら、これとは別に、溶融痕572および空洞568は、第2の部材520の側に延伸してもよい。この場合、接合部578は、第2の部材520に由来する成分で構成される。
【0183】
第2の接合体600および第3の接合体700においても同様のことが言える。
【0184】
また、本発明の一実施形態による接合体において、接合部の形態は、特に限られない。例えば、接合部は、第1の接合体500のようなスポット状の接合領域570と、第2の接合体600のような枠状の接合部678との組み合わせを含んでもよい。あるいは、接合部は、第1の接合体500のようなスポット状の接合領域570と、第3の接合体700のような面状の接合部778との組み合わせを含んでもよい。
【0185】
その他にも、各種変更が可能である。
【実施例】
【0186】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の説明において、例1〜例17は、実施例であり、例21〜例25は、比較例である。
【0187】
(例1)
第1および第2の表面を有する第1のガラス基板と、第3および第4の表面を有する第2のガラス基板と、を準備した。両ガラス基板には、厚さが100μmの無アルカリガラスを使用した。
【0188】
第1および第2のガラス基板を、第2の表面と第3の表面が相互に対面するようにして配置し、組立体を構成した。なお、両ガラス基板の間には、12μmの間隙を設けた。
【0189】
次に、組立体の同じ位置に向かって、第1のガラス基板の側から第1のレーザおよび第2のレーザを照射した。
【0190】
第1のレーザは、波長780nmの超短パルスレーザとした。パルス幅は228フェムト秒(fsec)であり、パルスエネルギーは、200μJ/ショットとした。
【0191】
第1のレーザは、第1のガラス基板の第1の表面に対して垂直に照射した。また、第1のレーザは、下側の第2のガラス板の第3の表面で焦点化されるように照射した。第3の表面上のスポット径は、1.18μmであった。
【0192】
第1のレーザの照射回数は、1回である。
【0193】
第2のレーザは、波長1070nmの連続波レーザとした。第2のレーザの平均パワーは40Wである。第2のレーザは、第1のガラス基板の第1の表面に対して垂直に照射した。また、第2のレーザは、第2のガラス基板の第3の表面で焦点化されるように照射した。第3の表面上のスポット径は、1.62μmであった。また、第3の表面でのパワー密度は1940.6MW/cmであった。
【0194】
第2のレーザの照射時間は40マイクロ秒(μsec)である。
【0195】
なお、第1のレーザと第2のレーザは、同時に照射した。
【0196】
レーザ照射後に、焦点位置およびその近傍の上部に接合領域が形成され、これを介して第1のガラス基板と第2のガラス基板が接合された。
【0197】
(例2〜例17)
例1と同様の方法により、2枚のガラス基板を接合した。
【0198】
ただし、例2〜例17では、第1のレーザおよび/または第2のレーザの照射条件を、例1の場合とは変化させた。
【0199】
例2〜例17のいずれにおいても、レーザ照射後に、焦点位置およびその近傍の上部に接合領域が形成され、これを介して第1のガラス基板と第2のガラス基板が接合された。
【0200】
(例21〜例25)
例1と同様の方法により、2枚のガラス基板を接合した。
【0201】
ただし、例21〜例25では、第1のレーザおよび第2のレーザの焦点位置を、例1の場合とは変化させた。
【0202】
例21〜例25では、いずれの場合も、第1のガラス基板と第2のガラス基板を接合することはできなかった。
【0203】
以下の表1には、各例において使用した第1のレーザの条件をまとめて示す。また、表2には、各例において使用した第2のレーザの条件をまとめて示す。
【0204】
【表1】
【0205】
【表2】
なお、表1において、「焦点位置」の欄の−(マイナス)は、第1および第2のレーザの焦点が第2のガラス基板の第3の表面よりも外側であること、すなわち第1および第2のレーザが、間隙または第1のガラス基板に焦点化されていることを表す。
【0206】
表1における「焦点位置」の数値から、例21〜例22では、第1のレーザの焦点が第1のガラス基板の第2の表面から遠すぎたため、第2の表面に光吸収性の領域を形成することができなかったものと予想される。その結果、第2のレーザにより照射位置を加熱しても、溶融部から第1のガラス基板の外方に向かって溶融物を噴出させることができず、接合部が形成されなかったと考えられる。
【0207】
また、例23〜例25では、第1のレーザの焦点が第2のガラス基板の第3の表面から遠すぎたため、第3の表面に光吸収性の領域を形成することができなかったものと予想される。その結果、第2のレーザにより照射位置を加熱しても、溶融部から第2のガラス基板の外方に向かって溶融物を噴出させることができず、接合部が形成されなかったと考えられる。
【0208】
(評価)
例1〜例17において得られた接合体において、接合部(接合領域)の投影面積Sp、空洞の投影面積の総和Sq、および比Sp/Sqを評価した。また、接合部(接合領域)の体積Vp、空洞の総体積Vq、および比Vp/Vqを評価した。
【0209】
結果を以下の表3に示す。
【0210】
【表3】
【符号の説明】
【0211】
1 装置
10 第1のレーザ光源
12 第1のレーザ
20 第2のレーザ光源
22 第2のレーザ
30 ダイクロイックミラー
40 レンズ
50 台
60 組立体
110 第1の基板
112 第1の表面
114 第2の表面
120 第2の基板
122 第3の表面
124 第4の表面
130 間隙
160 光吸収性の領域
162 溶融物
164 溶融部
166 放出溶融物
168 空洞
170 接合領域
172 溶融痕
200 接合体
278 接合部
500 第1の接合体
510 第1の部材
512 第1の表面
514 第2の表面
520 第2の部材
522 第3の表面
524 第4の表面
530 間隙
568 空洞
570 接合領域
572 溶融痕
578 接合部
600 第2の接合体
610 第1の部材
612 第1の表面
614 第2の表面
620 第2の部材
622 第3の表面
624 第4の表面
630 間隙
678 接合部
680 密閉空間
700 第3の接合体
710 第1の部材
712 第1の表面
714 第2の表面
720 第2の部材
722 第3の表面
724 第4の表面
730 間隙
778 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17