特開2021-143101(P2021-143101A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人北海道大学の特許一覧

<>
  • 特開2021143101-移動式改質システム 図000003
  • 特開2021143101-移動式改質システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-143101(P2021-143101A)
(43)【公開日】2021年9月24日
(54)【発明の名称】移動式改質システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20210827BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20210827BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20210827BHJP
【FI】
   C01B3/38
   B01J23/889 M
   B01J23/46 301M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-43547(P2020-43547)
(22)【出願日】2020年3月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】森 智比古
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 將行
(72)【発明者】
【氏名】上野 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尋子
(72)【発明者】
【氏名】粕川 秋彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆夫
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EB01
4G140EB41
4G169AA03
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BC68B
4G169BC70B
4G169EC06Y
4G169EC09Y
(57)【要約】
【課題】バイオガスや天然ガス、二酸化炭素などの原料ガスを長期間にわたって効率よく安定して改質できる移動式改質システムを提供する。
【解決手段】移動式改質システムは、移動体と、前記移動体に搭載される改質システムとを備え、前記改質システムは、硫黄成分を含む原料ガスを投入する原料ガス投入部と、前記原料ガスの少なくとも一部が供給され、前記原料ガスを脱硫する脱硫部と、前記脱硫部から排出される排出ガスが供給され、改質触媒を具備し、前記排出ガスを改質する少なくとも1つの改質部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、前記移動体に搭載される改質システムとを備え、
前記改質システムは、
硫黄成分を含む原料ガスを投入する原料ガス投入部と、
前記原料ガスの少なくとも一部が供給され、前記原料ガスを脱硫する脱硫部と、
前記脱硫部から排出される排出ガスが供給され、改質触媒を具備し、前記排出ガスを改質する少なくとも1つの改質部と
を有することを特徴とする移動式改質システム。
【請求項2】
前記原料ガス投入部から投入される前記原料ガスの全てが前記脱硫部に供給される、請求項1に記載の移動式改質システム。
【請求項3】
前記原料ガスはバイオガスである、請求項1または2に記載の移動式改質システム。
【請求項4】
前記原料ガスは複数のプラントからの収集ガスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動式改質システム。
【請求項5】
前記改質部に設けられる前記改質触媒は、多孔体に包摂されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動式改質システム。
【請求項6】
前記脱硫部から排出される前記排出ガス中の硫黄成分の含有割合を測定する測定部をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動式改質システム。
【請求項7】
前記移動体は陸上移動体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の移動式改質システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動式改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地球温暖化を抑制する研究が盛んに行われている。例えば、原料ガスとして広く使用されている液化石油ガス(LPG)などの天然ガスは、原油やガソリンに比べて、地球温暖化の原因の1つである二酸化炭素の排出量が少ない。このような天然ガスには、硫黄成分が含まれている。
【0003】
非特許文献1には、LPGボンベと燃料電池との間にLPG用の脱硫装置を備える定置式燃料電池システムが記載されている。非特許文献1では、住宅外に設置されるLPGボンベと住宅内に設置される定置式の燃料電池との間に、定置式のLPG用の脱硫装置が設けられている。LPG用の脱硫装置は、LPGボンベから住宅内の燃料電池に供給されるLPGを脱硫する。
【0004】
ところで、近年では、地球温暖化を抑制可能なエネルギー資源のなかでも、再生可能なエネルギー資源であるバイオガスが注目されている。バイオガスは、燃料として使用することができる。また、バイオガスを改質することによって、水素や一酸化炭素などの有用な物質を得ることができる。
【0005】
原料ガスは、液化や、燃料ガスや化学原料などへの改質を通じてエネルギー密度を向上させて輸送することや、それらの中間体の製造を容易にすること、などへの要望がある。しかし、例えばバイオガスは、家畜の糞尿、食品残渣、木質廃材などの有機性廃棄物から生成され、バイオガスを生成するプラントは点在していることが多く、まとまった量のガスを回収するのに多大な労力、輸送設備が必要となる。特に、バイオガスの様に比較的中小規模の製造拠点が多い場合、上記の液化などの改質設備を自前で導入することは容易ではない。また、バイオガスなどは、環境に優れている一方で、硫黄成分を含んでいる。また、原料ガス中の硫黄成分は、ガスを改質する改質触媒を劣化させる。そのため、改質触媒の寿命が低下し、改質効率が低下することがある。このようなことから、原料ガス、特にバイオガスを効率的に活用することが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of the Japan Petroleum Institute、49、(2)、98−101(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、バイオガスや天然ガス、二酸化炭素などの原料ガスを長期間にわたって効率よく安定して改質できる移動式改質システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 移動体と、前記移動体に搭載される改質システムとを備え、前記改質システムは、硫黄成分を含む原料ガスを投入する原料ガス投入部と、前記原料ガスの少なくとも一部が供給され、前記原料ガスを脱硫する脱硫部と、前記脱硫部から排出される排出ガスが供給され、改質触媒を具備し、前記排出ガスを改質する少なくとも1つの改質部とを有することを特徴とする移動式改質システム。
[2] 前記原料ガス投入部から投入される前記原料ガスの全てが前記脱硫部に供給される、上記[1]に記載の移動式改質システム。
[3] 前記原料ガスはバイオガスである、上記[1]または[2]に記載の移動式改質システム。
[4] 前記原料ガスは複数のプラントからの収集ガスである、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の移動式改質システム。
[5] 前記改質部に設けられる前記改質触媒は、多孔体に包摂されている、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の移動式改質システム。
[6] 前記脱硫部から排出される前記排出ガス中の硫黄成分の含有割合を測定する測定部をさらに備える、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の移動式改質システム。
[7] 前記移動体は陸上移動体である、上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の移動式改質システム。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、バイオガスや天然ガス、二酸化炭素などの原料ガスを長期間にわたって効率よく安定して改質できる移動式改質システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の移動式改質システムの一例を示す概略図である。
図2図2は、第2実施形態の移動式改質システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、原料ガスのプラントが点在していることに着目した。そして、改質システムを移動体に搭載し、プラントを巡回することによって、効率的に原料ガスを収集しながら改質することを図った。
【0013】
特に、バイオガスは様々な種類の有機性廃棄物から生成される。そのため、有機性廃棄物の種類に応じて、生成されるバイオガスの成分が大きく異なる。すなわち、各プラントで生成されるバイオガス中の硫黄成分の量は、均一ではなく、それぞれ大きく異なる。仮に各プラントでバイオガスの脱硫を行ったとしても、各プラントで生成されるバイオガスの成分の違い、各プラントでの脱硫処理の程度の違いなどから、脱硫後のガスに含まれる硫黄成分が所定量以下にならないおそれがあることに着目した。その上で、バイオガスの脱硫処理を行う脱硫部を改質システムに設けることによって、複数のプラント(改質装置)でバイオガスを収集した後に、脱硫部でバイオガスの脱硫処理を行って、長期間にわたって効率的で安定な改質処理を図った。さらには、天然ガスにも硫黄成分は含まれていることから、改質システムに脱硫部を設けることによって、長期間にわたって効率的で安定な改質処理を図った。
【0014】
実施形態の移動式改質システムは、移動体と、前記移動体に搭載される改質システムとを備え、前記改質システムは、硫黄成分を含む原料ガスを投入する原料ガス投入部と、前記原料ガスの少なくとも一部が供給され、前記原料ガスを脱硫する脱硫部と、前記脱硫部から排出される排出ガスが供給され、改質触媒を具備し、前記排出ガスを改質する少なくとも1つの改質部とを有する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の移動式改質システムの一例を示す概略図である。
【0016】
図1に示すように、移動式改質システム1は、移動体10と改質システム20とを備える。改質システム20は、移動体10に搭載される。移動式改質システム1は、移動式のガスの改質システムである。
【0017】
移動体10は、図1に示すような陸上を移動する陸上移動体、水上を移動する水上移動体、空中を移動する空中移動体などを含む。陸上移動体としては、例えば自動車のような道路上を走行できる車両などが挙げられる。水上移動体としては、海、河川、湖などの水上を航行できる移動体、例えば船舶などが挙げられる。例えば、改質システム20は、移動体10の荷台やデッキなどに載積される。特に、移動体の大きさに制限がある場合に、本発明は有効である。特に、大型移動体のサイズが道路幅により制限を受ける陸上移動体において、本発明は最も有効である。
【0018】
改質システム20は、バイオガス、天然ガス、二酸化炭素などの炭素成分を含む原料ガスを投入する原料ガス投入部21と、脱硫部22と、少なくとも1つの改質部23とを有する。改質システム20、すなわち、原料ガス投入部21、脱硫部22、改質部23、後述する改質ガス取出部25などの改質システム20を構成する各構成要素は、図1に示すように、筐体30内に収容されてもよい。
【0019】
原料ガス投入部21には、硫黄成分を含む原料ガスが移動式改質システム1の外部から投入される。原料ガスに含まれる硫黄成分としては、硫化水素などの硫黄化合物が挙げられる。原料ガス中の硫黄成分の含有割合は、例えば5質量ppm以上3質量%以下である。
【0020】
脱硫部22には、原料ガスの少なくとも一部が供給される。図1に示すように、全ての原料ガスが脱硫部22に供給されてもよいし、一部の原料ガスが脱硫部22に供給され、残りの原料ガスが改質部23に供給されてもよい。この場合には、原料ガス投入部21は、脱硫部22および改質部23と接続する。
【0021】
脱硫部22は、原料ガスを脱硫する。また、脱硫部22は、原料ガス中の硫黄成分を脱硫する脱硫剤を具備する。脱硫部22の形式は、常温脱硫、乾式脱硫、水添脱硫、生物脱硫などが挙げられる。脱硫部22の形式に応じて、脱硫部22の脱硫剤は適宜選択される。例えば、脱硫部22が常温脱硫である場合、脱硫剤としては、ゼオライトや活性炭などの多孔体が挙げられる。
【0022】
原料ガスが脱硫部22に供給されると、原料ガス中の硫黄成分が脱硫剤によって除去される。こうして、脱硫部22は、原料ガスから排出ガスを生成する。排出ガス中の硫黄成分の含有割合は、原料ガスに比べて小さい。排出ガス中の硫黄成分の含有割合は、好ましくは2.0質量ppm以下、より好ましくは0.1質量ppm以下である。排出ガス中の硫黄成分の含有割合が上記数値範囲内であると、改質部23に設けられる改質触媒24の劣化が抑制されるため、原料ガスを長期間にわたって安定して改質できる。脱硫部22は、脱硫処理によって得られる排出ガスを改質部23に排出する。
【0023】
改質部23には、脱硫部22から排出される排出ガスが供給される。改質部23は、排出ガスを改質する。
【0024】
また、改質部23は、改質触媒24を具備する。改質部23内に収容される改質触媒24が排出ガスを改質する。原料ガスに比べて、排出ガスに含まれる硫黄成分の含有割合が低下しているため、硫黄成分による改質触媒24の劣化が抑制される。改質触媒24は、所望の改質成分に応じて適宜選択され、ルテニウム(Ru)系、ニッケル(Ni)系などの改質触媒が挙げられる。
【0025】
Ru系の改質触媒の一例としては、酸化マグネシウムの焼成体である担体に、金属換算量で10質量ppm以上5000質量ppmのRuを担持した改質触媒が挙げられる。この改質触媒では、担体の外表面から1500μmまでの範囲内に、総Ru担持量のうちの85モル%以上のRuが担持されている。
【0026】
Ru系の改質触媒の他の例としては、細孔径500Å以下の細孔の容積が0.15ml/g以上であり、細孔径500Å以上の細孔の容積が0.14ml/g以下であり、平均細孔径が90Å以上である担体に、Ruを担持した改質触媒が挙げられる。
【0027】
Ni系の改質触媒の一例としては、MgAlMn(0.01≦a≦0.99、0.01≦b≦0.99、c≧0.1、a+b+c=1.0、dは電荷中性条件を満たすのに必要な数)で表される複合酸化物にNiを担持した改質触媒が挙げられる。この改質触媒において、aは、複合酸化物に含まれるMgのモル比である。bは、複合酸化物に含まれるAlのモル比である。cは、複合酸化物に含まれるMnのモル比である。
【0028】
Ni系の改質触媒の他の例としては、孔径0.1μm以上0.5μm以下の細孔容積が0.2ml/g以上であり、孔径0.5μm以上10μm以下の細孔容積が0.05ml/g以上であり、加熱乾燥後の純度が98重量%以上である酸化アルミニウム多孔体に、Niを含有する溶液を含浸して乾燥させた後に焼成して得られる改質触媒が挙げられる。この改質触媒では、触媒全体重量中に、酸化ニッケルに換算して3重量%以上20重量%以下のNiが含有している。
【0029】
排出ガスが改質部23に供給されると、排出ガス中の炭化水素や二酸化炭素のような炭素成分や水が改質触媒24によって改質される。こうして、改質部23は、排出ガスから改質ガスを生成する。改質ガスには、改質成分として発生した水素(H)、一酸化炭素(CO)に加え、水(HO)や二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)などが原料ガスの残余成分などとして含まれる。改質成分は気体である。改質部23は、改質処理によって得られる改質ガスを改質ガス取出部25に排出する。
【0030】
改質システム20に設けられる改質ガス取出部25には、改質部23から排出される改質ガスが供給される。改質ガスは、改質ガス取出部25から移動式改質システム1の外部に取出すことができる。
【0031】
このような構成を有する移動式改質システム1は、移動体10を備える。そのため、原料ガスのプラントが点在する場合であっても、移動体10を稼動してプラントを巡回することによって、移動式改質システム1は原料ガスを任意の時機に効率よく収集できる。さらには、移動式改質システム1の巡回中に、改質システム20によって原料ガスを改質できる。特に、移動式改質システム1のプラント間の移動時に、原料ガスを改質できる。すなわち、移動式改質システム1は、移動しながら、原料ガスを改質処理できる。そのため、移動式改質システム1は、原料ガスの収集および改質を効率的に行うことができる。
【0032】
また、移動式改質システム1には、原料ガスを脱硫する脱硫部22が設けられる。そのため、従来の定置式の改質装置で行われていた測定のように、改質部23に供給される原料ガス中の硫黄成分を測定しなくても、原料ガスに含まれる硫黄成分による改質触媒24の劣化を抑制できる。移動式改質システム1は、長期間にわたって効率よく安定して、原料ガスの改質処理を行って、改質ガスを製造できる。
【0033】
仮に、各プラントで定置式の脱硫装置や改質装置を設置する場合、複数の脱硫装置や改質装置が必要になると共に、原料ガスの成分が各プラントで異なるために、脱硫処理や改質処理の程度は各プラントで異なる。複数のプラントで得られる脱硫ガスには、所定値以上の含有割合の硫黄成分が含まれるおそれがある。複数のプラントで得られる各改質ガスの成分が大きく異なるおそれもある。また、仮に、原料ガスを各プラントから収集した後に脱硫および改質を行う場合には、大規模の定置式の脱硫装置および改質装置が必要になる。一方で、移動式改質システム1は、1台で、移動しながら、収集、脱硫、改質を実施できる。脱硫部22および改質部23は、移動体10に積載できる程度に小型化であり、移動体10の稼動によって移動可能である。このように、移動式改質システム1によって、脱硫装置および改質装置の設置数を減らせることに加えて、脱硫装置および改質装置を移動可能な程度に小型化できる。そのため、原料ガスの改質コストを削減できる。さらには、複数のプラントで収集した原料ガスに対して、移動式改質システム1は、脱硫部22および改質部23によって、同一の脱硫処理および改質処理を行うことができる。
【0034】
また、移動式改質システム1では、原料ガス投入部21から投入される原料ガスの全てが脱硫部22に供給されることが好ましい。この場合、原料ガス投入部21は、脱硫部22に接続される。原料ガス投入部21は、改質部23には接続されない。
【0035】
脱硫部22には、移動式改質システム1の外部から投入される全ての原料ガスが原料ガス投入部21から供給される。脱硫部22は、全ての原料ガスを脱硫する。改質部23に供給される全てのガスに対して、脱硫処理が行われる。そのため、硫黄成分による改質触媒24の劣化がさらに抑制される。
【0036】
また、移動式改質システム1に供給される原料ガスはバイオガスであることが好ましい。バイオガスは、様々な種類の有機性廃棄物から生成される。一般的に、各プラントで用いられる有機性廃棄物の種類は異なるため、各プラントで生成されるバイオガスの成分は大きく異なる。バイオガスには、原料である有機性廃棄物に由来する硫黄成分が含まれる。バイオガス中の硫黄成分の含有割合は、食品残渣などの有機性廃棄物から生成される場合には100質量ppm以上3質量%以下であり、家畜の糞尿などの有機性廃棄物から生成される場合には100質量ppm以上4000質量ppm以下である。また、プラントの違いによる硫黄成分の含有割合の差は、10質量ppm以上80質量ppm以下である。このように、バイオガス中の硫黄成分の含有割合がプラント間で大きく異なっていても、移動式改質システム1はバイオガスを長期間にわたって安定して良好に改質できる。また、バイオガスは再生可能なエネルギー資源であるため、移動式改質システム1は環境調和型の技術である。
【0037】
また、原料ガスは複数のプラントからの収集ガスであることが好ましい。収集ガスとは、複数のプラントから収集した複数の原料ガスの混合ガス、すなわち成分の異なる複数の原料ガスの混合ガスである。移動式改質システム1は、1つのプラントに限らず、複数のプラントを巡回して、成分の異なる複数の原料ガスを収集できる。こうして得られた収集ガスであっても、移動式改質システム1は長期間にわたって安定して良好に改質できる。
【0038】
また、移動式改質システム1の改質部23に設けられる改質触媒24は、多孔体に包摂されていることが好ましい。多孔体としては、ゼオライト、活性炭などが挙げられ、特にゼオライトが好ましい。改質触媒24を包摂する多孔体は、脱硫剤として機能する。すなわち、多孔体は脱硫特性を有する。仮に、脱硫部22の脱硫性能の低下などによって、所定値以上の含有割合の硫黄成分が改質部23に供給される場合でも、改質触媒24を包摂する多孔体が排出ガスを脱硫するため、排出ガス中の硫黄成分を低下できる。そのため、硫黄成分による改質触媒24の劣化がさらに抑制される。
【0039】
また、移動式改質システム1の移動体10は陸上移動体であることが好ましい。陸上移動体は、道路を自由に走行できる。そのため、原料ガスのプラントが広域に点在しても、移動式改質システム1は原料ガスを効率的に収集できる。
【0040】
上記したように、第1実施形態の移動式改質システムによれば、プラントを巡回しながら、原料ガスの収集、脱硫、改質を行うことができる。さらに、移動式改質システムは、脱硫部を備えるので、硫黄成分による改質部の改質性能の低下を抑制できる。そのため、移動式改質システムは、原料ガスを長期間にわたって効率よく安定して改質できる。
【0041】
なお、上記では、改質システム20が1つの改質部23を有する例について示したが、改質システム20は、複数の改質部23を有してもよい。この場合、複数の改質部で行われる改質プロセスは、同じでもよいし、異なってもよい。所望の改質成分に応じて、改質部の設置数や、各改質部で行われる改質プロセスは適宜設定される。
【0042】
また、改質システム20は、原料ガス投入部21と脱硫部22との間に、不図示の原料ガス貯蔵タンクを有してもよい。原料ガス貯蔵タンクには、原料ガス投入部21から原料ガスが供給される。原料ガス貯蔵タンクに貯蔵される原料ガスは、脱硫部22に供給される。原料ガス貯蔵タンクは、脱硫部22の脱硫状況や改質部23の改質状況に応じて、原料ガスを脱硫部22に供給する。脱硫部22や改質部23には、処理能力以上のガスが供給されない。脱硫部22や改質部23へのガスの過剰供給を回避できるため、原料ガスを長期間にわたって効率よく安定して改質できる。
【0043】
また、改質システム20は、改質部23と改質ガス取出部25との間に、不図示の改質ガス貯蔵タンクを有してもよい。改質ガス貯蔵タンクには、改質部23から改質ガスが供給される。改質ガス貯蔵タンクに貯蔵される改質ガスは、改質ガス取出部25に供給される。改質ガス貯蔵タンクは、状況に応じて、改質ガスを改質ガス取出部25に供給する。そのため、移動式改質システム1のプラントへの巡回回数を増やすことができる。
【0044】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態の移動式改質システムの一例を示す概略図である。
【0045】
なお、以下に示す実施形態では、第1実施形態の移動式改質システムの構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0046】
第2実施形態の移動式改質システム2において、測定部26の構成が追加されること以外は、第1実施形態の移動式改質システム1の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
【0047】
図2に示すように、改質システム20は、原料ガス投入部21と、脱硫部22と、少なくとも1つの改質部23と、測定部26とを有する。図2に示すように、改質システム20を構成する測定部26などの各構成要素は、筐体30内に収容されてもよい。移動式改質システム2は、脱硫部22から排出される排出ガス中の硫黄成分の含有割合を測定する測定部26をさらに備える。
【0048】
測定部26は、改質部23に供給される前の排出ガス中の硫黄成分の含有割合を測定する。測定部26で測定される排出ガス中の硫黄成分の含有割合が所定値よりも小さいと、脱硫部22の脱硫性能が良好であるため、脱硫部22や改質部23の出力を上げるまたは維持できる。また、測定部26で測定される排出ガス中の硫黄成分の含有割合が所定値以上になると、脱硫部22の脱硫性能が低下したことがわかる。この場合、脱硫部22や改質部23の出力を下げることによって、改質触媒24の短時間による性能劣化を抑制できる。また、脱硫部22の脱硫性能が低下したことがわかるため、脱硫剤の交換時期を容易に判断できる。使用中の脱硫剤を新品の脱硫剤と交換することによって、脱硫部22の脱硫性能を回復できる。測定部26で測定される硫黄成分の含有割合の測定値に応じて、脱硫部22や改質部23の出力を調整することによって、移動式改質システム2は、原料ガスを長期間にわたって安定して改質できると共に、プラントへの巡回回数を増やすことができる。
【0049】
上記したように、第2実施形態の移動式改質システムによれば、測定部26で得られる硫黄成分の測定値に応じて、脱硫部22や改質部23の出力を調整することによって、改質触媒24の短期劣化が抑制される。そのため、原料ガスを長期間にわたって安定して改質できると共に、プラントへの巡回回数を増やすことができる。また、測定部26の測定値から、脱硫部22内の脱硫剤の交換時期が容易にわかる。
【0050】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、2 移動式改質システム
10 移動体
20 改質システム
21 原料ガス投入部
22 脱硫部
23 改質部
24 改質触媒
25 改質ガス取出部
26 測定部
30 筐体
図1
図2