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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-177868(P2021-177868A)
(43)【公開日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】細胞遮蔽膜とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/42 20060101AFI20211022BHJP
   A61L 27/08 20060101ALI20211022BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20211022BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20211022BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20211022BHJP
【FI】
   A61L27/42
   A61L27/08
   A61L27/54
   B82Y5/00
   B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-83834(P2020-83834)
(22)【出願日】2020年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 陽子
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 俊也
(72)【発明者】
【氏名】平田 恵理
(72)【発明者】
【氏名】横山 敦郎
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB04
4C081AB06
4C081BA12
4C081BB02
4C081BB06
4C081CA132
4C081CA172
4C081CD082
4C081CD122
4C081CD27
4C081CD28
4C081CD29
4C081CD34
4C081CE01
4C081CF161
4C081DA02
4C081DB07
4C081DC14
4C081EA06
4C081EA14
(57)【要約】
【課題】感染症の発症が抑制でき、骨組織などの組織形成促進機能を有する細胞遮蔽膜を提供すること。
【解決手段】細胞遮蔽膜は、カーボンナノチューブ膜、およびカーボンナノチューブ膜に担持された組織再生促進剤を含む。カーボンナノチューブ膜は、直径が10nm以上60nm未満のカーボンナノチューブバンドルを含むことができ、カーボンナノチューブバンドルは網目構造を形成してもよい。カーボンナノチューブバンドルは、複数の単層カーボンナノチューブを含むことができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ膜、および
前記カーボンナノチューブ膜に担持された組織再生促進剤を含む、細胞遮蔽膜。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ膜は、網目構造を形成する直径10nm以上60nm未満のカーボンナノチューブのバンドルを含む、請求項1に記載の細胞遮蔽膜。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ膜の30像の20万倍走査型電子顕微鏡像画像のそれぞれにおいて観察される画像中央横断線を横切る10本のカーボンナノチューブのバンドルを含む合計300のバンドルのうち、直径が60nm以上のバンドルの存在確率が10%以下である、請求項1に記載の細胞遮蔽膜。
【請求項4】
前記バンドルは、複数の単層カーボンナノチューブを含む、請求項2に記載の細胞遮蔽膜。
【請求項5】
前記組織再生促進剤は骨再生促進剤であり、
前記骨再生促進剤は、ヒアルロン酸、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、塩基性線維芽細胞増殖因子、骨形成タンパク質、血管内皮細胞増殖因子、および血小板由来成長因子から選択される、請求項1に記載の細胞遮蔽膜。
【請求項6】
ポリテトラフルオロエチレン、ポリ乳酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、牛または豚由来のコラーゲン、および脱細胞化ヒト真皮から選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の細胞遮蔽膜。
【請求項7】
カーボンナノチューブと組織再生促進剤を含む分散液を調製すること、
前記分散液を濾過して得られる濾物を用いて膜を形成することを含む、細胞遮蔽膜の製造方法。
【請求項8】
前記膜に対して親水化処理を行うことをさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブは、複数種の炭素源を用いる気相流動法によって合成される、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記炭素源は、メタン、エチレン、およびアセチレンから選択される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記組織再生促進剤は骨再生促進剤であり、
前記骨再生促進剤は、ヒアルロン酸、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、塩基性線維芽細胞増殖因子、骨形成タンパク質、血管内皮細胞増殖因子、および血小板由来成長因子から選択される、請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
分散液はさらに、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ乳酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、牛または豚由来のコラーゲン、および脱細胞化ヒト真皮から選択される添加剤を含む、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、組織の再生誘導において使用可能な細胞遮蔽膜とその製造方法に関する。例えば、本発明の実施形態の一つは、細胞遮蔽膜として機能する、組織形成を促進する薬剤が担持されたカーボンナノチューブ膜、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療における組織を再生する方法の一つとして組織誘導再生(GTR)法や骨再生誘導(GBR)法が知られている。これらの再生方法では、非吸収性または吸収性の細胞遮蔽膜を歯根膜や骨の欠損部に配置することで、歯根膜組織や骨組織が再生するための空間が提供されるとともに、再生すべき組織以外の組織細胞の侵入や成長が防止される。これにより、欠損部に選択的に歯根膜や骨組織の再生を促進することができる(非特許文献1から3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】リム,グレンダーレ等、「インターナショナル ジャーナル オブ オーラル&マキシロフェイシャル インプラント」、2018年、33巻、p.41−50
【非特許文献2】クヘラー,ウリーケ等、「インターナショナル ジャーナル オブ オーラル&マキシロフェイシャル インプラント」、2014年、29巻、p.14−24
【非特許文献3】メンデス,エム.レナト等、「ライフ サイエンス」、2010年、87巻、p.215−222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、感染症の発症が抑制でき、歯根膜や骨組織などの組織の形成促進機能を有する細胞遮蔽膜とその製造方法を提供することを課題の一つとする。例えば本発明の実施形態の一つは、骨や組織の再生誘導において使用可能なカーボンナノチューブ系細胞遮蔽膜とその製造方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは細胞遮蔽膜である。この細胞遮蔽膜は、カーボンナノチューブ膜、およびカーボンナノチューブ膜に担持された組織再生促進剤を含む。
【0006】
本発明の実施形態の一つは細胞遮蔽膜の製造方法である。この製造方法は、カーボンナノチューブと組織再生促進剤を含む分散液を調製すること、および分散液を濾過して得られる濾物を用いて膜を形成することを含む。
【0007】
本発明の実施形態の一つは組織の再生方法である。この再生方法は、組織欠損部を細胞遮蔽膜で覆うことを含む。細胞遮蔽膜は、カーボンナノチューブ膜、およびカーボンナノチューブ膜に担持された組織再生促進剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の一つに係る細胞遮蔽膜の製造方法を示すフローチャート。
図2】実施例1におけるヒアルロン酸の標準水溶液、およびヒアルロン酸とカーボンナノチューブの分散液を濾過して得られた濾液の紫外吸収スペクトル。
図3】実施例1の細胞遮蔽膜の走査型電子顕微鏡(SEM)像。
図4】実施例1の細胞遮蔽膜のSEM像。
図5】実施例1の細胞遮蔽膜に含まれるカーボンナノチューブのバンドルの直径のヒストグラムとパレート曲線。
図6】実施例1の細胞遮蔽膜で被覆した、ラット頭蓋冠に形成した骨欠損部の術後28日後のマイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)像。
図7】実施例1の細胞遮蔽膜で被覆した、ラット頭蓋冠に形成した骨欠損部の前断面の術後28日後の光学顕微鏡像。
図8】実施例2におけるエピガロカテキン(EGCG)の標準水溶液、およびEGCGとカーボンナノチューブの分散液を濾過して得られた濾液の紫外吸収スペクトル。
図9】実施例2における、EGCGの添加量に対するカーボンナノチューブ膜に担持されたEGCGの量のプロット。
図10】実施例2の細胞遮蔽膜のSEM像。
図11】実施例2の細胞遮蔽膜に含まれるカーボンナノチューブのバンドルの直径のヒストグラムとパレート曲線。
図12】実施例2の細胞遮蔽膜で被覆した、ラット頭蓋冠に形成した骨欠損部の術後28日後のマイクロCT像。
図13】実施例2の細胞遮蔽膜を埋入した、ラット皮下組織の術後56日後の光学顕微鏡像。
図14】比較例のカーボンナノチューブ膜のSEM像。
図15】比較例のカーボンナノチューブ膜に含まれるカーボンナノチューブのバンドルの直径のヒストグラムとパレート曲線。
図16】比較例のカーボンナノチューブ膜で被覆した、ラット頭蓋冠に形成した骨欠損部の術後14日後の軟X線写真像。
図17】比較例のカーボンナノチューブ膜を埋入した、ラット皮下組織の術後14日後の光学顕微鏡像。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態や実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
以下の実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【0011】
本発明の実施形態の一つはカーボンナノチューブ系細胞遮蔽膜(以下、CNT系細胞遮蔽膜または細胞遮蔽膜とも記す)であり、例えばGBR法やGTR法を用いる組織の再生において組織再生を阻害する細胞を遮蔽し、再生すべき組織の再生を促進する機能を有する。以下、CNT系細胞遮蔽膜の構成、製造方法、およびCNT系細胞遮蔽膜を用いる組織再生方法について説明する。
【0012】
1.構成
CNT系細胞遮蔽膜は、カーボンナノチューブ(以下、単にCNTとも記す)を含むCNT膜、およびこのCNT膜に担持された組織再生促進剤を含む。任意の構成として、CNT系細胞遮蔽膜は添加剤を含んでもよい。
【0013】
CNT膜に含まれるCNTの各々は、実質的にsp2炭素原子から構成される円筒状の主骨格を有する棒状分子であり、その直径や長さは任意に選択することができる。例えば直径は0.60nm以上10nm以下、0.60nm以上5.0nm以下、または0.60nm以上3.0nm以下の範囲、長さは0.1μm以上5mm、10μm以上1mm以下、または10μm以上100μ以下の範囲から適宜選択される。また、CNTはピーポットなどの、他の分子やイオンを内包したCNTでもよく、表面が分子修飾されていてもよい。あるいは、両端部がキャップされたCNTでもよく、片方または両方の端部が開いた構造を有するCNTでもよい。さらに、CNTは単層CNT(SWCNT)でもよく、多層CNT(MWCNT)でもよい。
【0014】
CNTはその高い分子間力によって容易に会合し、複数のCNT分子で構成される束(バンドル)を形成する。CNT系細胞遮蔽膜では、複数のバンドルが緻密な網目構造を形成する。より具体的には、比較的細い複数のバンドルがランダムに絡み合うことで網目構造が形成される。このような緻密な網目構造を有するため、CNT系細胞遮蔽膜は高い強度を備える自立膜として存在することができるだけではなく、生体内に長時間埋入されても膜構造が崩壊することなく細胞遮蔽膜としての機能、すなわち、治癒対象である骨や組織の欠損部に対して骨細胞や組織細胞が選択的に成長するための空間を確保するという機能を維持することができる。ここで自立膜とは、基板などの他の支持部材を用いることなく、膜形状を維持できる膜のことを意味する。
【0015】
網目構造は、例えばCNT系細胞遮蔽膜のSEM像中に観察されるバンドルの直径を用いて評価することができる。CNT系細胞遮蔽膜に含まれるCNTは、主に直径10nm以上50nm以下のバンドルを含み、直径が60nm以上のバンドルの存在確率が10%以下、または5%以下である。存在確率は0%よりも高くてもよい。ここで、直径が60nm以上のバンドルの存在確率とは、CNT系細胞遮蔽膜の20万倍のSEM像を30像取得し、それぞれの画像において画像中央横断線を横切るバンドル10本を含む合計300のバンドルのうち、60nm以上の直径を有するバンドルの割合である。画像中央横断線を横切るバンドルが10本を超える場合には、SEM像において観測される表面から順に10本のバンドルが選択される。
【0016】
CNT系細胞遮蔽膜の大きさも任意に決定することができ、配置される組織欠損部に適合するように調整すればよい。CNT系細胞遮蔽膜の厚さも任意であり、例えば100nm以上500μm以下、1μm以上300μm以下、あるいは10μm以上200μmの範囲から適宜選択すればよい。この範囲の厚さを選択することにより、細胞遮断膜としての機能が発現可能な強度が確保されるとともに、治癒対象の形状に応じて任意の形状に変形することができる。
【0017】
組織再生促進剤にも制約はなく、歯根膜組織や骨組織などを構成する細胞の再生を促す機能を有する化合物を用いることができる。例えばヒアルロン酸、カテキンおよびその異性体もしくは誘導体、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)などを使用することができる。カテキンの異性体や誘導体としては、例えばエピカテキン、エピガロカテキン(EGCG)、ガロカテキンなどが挙げられる。好ましくは、CNT系細胞遮蔽膜は、CNTの水中での分散を促進する能力を有する骨再生促進剤を含む。このような骨再生促進剤としては、上述したヒアルロン酸、あるいはカテキンおよびその異性体もしくは誘導体が例示される。
【0018】
組織再生促進剤とCNT膜の組成比も、CNT膜の組織再生促進剤に対する吸着能に応じて任意に決定すればよい。CNT膜に対する組織再生組成剤の重量比は、例えば3.0重量%以上75重量%以下、5.0重量%以上60重量%、あるいは10重量%以上50重量%以下の範囲から選択することができる。
【0019】
任意の構成である添加剤は、CNT系細胞遮蔽膜の強度や生体内での耐性、親水性、ガス透過性、水透過性などの特性を調整するために用いることができる。具体的には、再生セルロースやポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリシロキサン、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体などの生体適合性を有する合成高分子でもよく、牛または豚などの動物由来のコラーゲンに例示される生体高分子、あるいは脱細胞化ヒト真皮などの脱細胞化組織を用いてもよい。
【0020】
添加剤は、CNT膜に担持されていてもよい。この場合、例えばCNT膜に対する添加剤の重量比は、5%以上200%以下、30%以上100%以下、あるいは50%以上80%以下とすればよい。あるいは、添加剤を一つの膜として用い、CNT膜と積層していてもよい。例えば、CNT系細胞遮蔽膜は、添加剤を含む膜を二つのCNT膜で挟持した構造を有してもよい。あるいは、CNT膜を添加剤を含む膜で挟持してもよい。添加剤を含む膜とCNT膜を積層する場合においても、これらの膜の重量比は上述した範囲から選択すればよい。
【0021】
2.CNT系細胞遮蔽膜の製造方法
【0022】
図1にCNT系細胞遮蔽膜の製造法の一例のフローを示す。CNT系細胞遮蔽膜の製造方法の一つは、CNTの合成、組織再生促進剤のCNTへの担持、および組織再生促進剤が吸着されたCNTの回収と成膜を含む。
【0023】
CNT膜を構成するCNTは、アーク放電法やレーザーアブレーション法、化学気相合成法などの様々な方法を利用して合成することができる。例えば化学気相合成法では、鉄、ニッケル、またはコバルトなどの金属触媒粒子を担持した基板を用い、これらの基板や粉体の表面からCNTを成長させてもよい。より具体的には、金属触媒粒子が担持された基板を電気炉などの加熱炉に設置する。その後、ベンゼンやアセチレン、エチレン、一酸化炭素、メタン、エタノールなどのCNT成長用ガス(炭素源)、および水などの触媒賦活物質を加熱炉内に供給し、600℃から1200℃の温度範囲で加熱することで、金属触媒粒子の表面からCNTの化学的成長を開始することができる。加熱炉内にはCNT成長用ガスを希薄するためのアルゴンなどの不活性ガスを供給してもよい。この方法により、スーパーグロースCNTと呼ばれる、100μmあるいは1mmを超える長尺のSWCNTを合成することができる。
【0024】
あるいは、気相中に浮遊した金属触媒微粒子の表面からCNTを成長させてもよい(気相流動法)。この場合、分解特性の異なるCNT成長用ガスを用いて反応場を最適化してもよい。この方法は、改良直噴熱分解合成法(eDIPS法)と呼ばれる。eDIPS法を適用することで、直径が精密に制御された単層CNTを選択的に高純度で合成することができる。
【0025】
組織再生促進剤の担持は、CNTと組織再生促進剤を溶媒(以下、分散用溶媒)中で処理し、分散用溶媒中で分散したCNT表面に組織再生促進剤を吸着することで行われる。分散用溶媒としては、水、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどの炭酸エステル類、N,N−ジメチルアセトアミドやN,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられるが、中でも毒性が無く、安価な水が好ましい。この際、CNTと組織再生促進剤を含む分散液に対して超音波を照射してCNTの分散を加速してもよい。
【0026】
上述した方法で合成されたCNTは強く会合しているが、分散用溶媒中でCNTの会合状態が一部解け、バンドルが形成される。この際、CNTの分散を促進する分散剤としても機能する組織再生促進剤を用いることで、より幅の小さいバンドルの集合体を与えることができる。上述したように、ヒアルロン酸、あるいはカテキンおよびその異性体もしくは誘導体などを用いることにより、効果的にCNTの分散が促進される。
【0027】
組織再生促進剤の存在下CNTを分散用溶媒中で分散させることで得られる分散液を吸引濾過または自然濾過し、濾液と濾物に分離する。濾過に用いるフィルターとしては濾紙やガラスフィルターを用いてもよく、あるいはメンブレンフィルターと呼ばれるポリエチレンを含むフィルターを用いてもよい。その後、濾物を回収して膜状に成形し、乾燥(すなわち、分散用溶媒を留去)することでCNT系細胞遮蔽膜を製造することができる。例えば、フィルター上に堆積した濾物からフィルターを取り除いてCNT系細胞遮蔽膜として用いてもよい。
【0028】
なお、分散用溶媒における組織再生促進剤の溶解度が低い場合には、分散用溶媒を用いてCNTを分散し、濾過、製膜を行ってCNT膜を作製し、その後、組織再生促進剤を溶解する溶媒中に組織再生促進剤を溶解し、この溶液にCNT膜を浸漬させることで組織再生促進剤を担持することができる。
【0029】
添加剤を用いる場合には、上述した分散液中に添加剤を溶解または分散させ、その後濾過すればよい。あるいは、別途作製した添加剤を含む膜とCNT系細胞遮蔽膜を積層してもよい。
【0030】
上述した製造方法では、組織再生促進剤はCNTの分散液中でCNT表面に吸着されてCNT膜上に担持されるが、分散剤を用いてCNT膜を作製した後に組織再生促進剤を担持してもよい。例えば、CNTを含む分散用溶媒に分散剤を添加してCNTの分散を促進し、その後濾過によってCNTを回収し、膜状に成形する。その後、CNT膜を分散剤が可溶な溶媒で処理することで分散剤を除去する。さらにCNT膜を組織再生促進剤または組織再生促進剤を含む溶液に浸漬させて組織再生促進剤を担持してもよい。
【0031】
この時用いられる分散剤としては、イオン性または非イオン性の界面活性剤が例示される。イオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム塩などの第四級アンモニウム塩に例示される陽イオン性界面活性剤、アンモニウムカチオンとカルボキリルアニオンを有するベタインやアミンオキシドなどの両イオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩、カルボン酸塩などの陰イオン性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステルやポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステルやポリオキシエチレン脂肪酸ジエチルなどの脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなどのエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテルやポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテルなどの芳香族系界面活性剤が挙げられる。
【0032】
任意の工程として、CNT系細胞遮蔽膜に対して親水化処理を施してもよい。親水化処理は、例えばアルゴンまたは空気存在下でのプラズマ処理、オゾン存在下での紫外線照射などによって行うことができる。
【0033】
3.組織再生方法
組織の再生は、組織の欠損部分を覆うようにCNT系細胞遮蔽膜を配置、固定すればよい。固定方法としては公知の方法が適用され、例えば治癒対象の形状に適合するようにCNT細胞遮蔽膜を成形し、CNT細胞遮蔽膜の辺縁に吸収性または非吸収性の縫合糸を付し、治癒対象に結紮固定すればよい。組織の再生が完了した後にCNT系細胞遮蔽膜は除去(リエントリー)される。
【0034】
CNTは膜から脱離しなければ、生体内で吸収、分解されないため、本発明の実施形態の一つに係るCNT系細胞遮蔽膜は非吸収性の細胞遮蔽膜に分類される。このため、吸収性の細胞遮蔽膜を用いて組織再生を行う際に問題となる炎症の発生を抑制することができ、組織再生前の分解や崩壊などを懸念する必要がない。例えばポリ乳酸を細胞遮蔽膜として用いると、生体内で急速に溶解するために強い炎症を惹起する場合があるが、CNT系細胞遮蔽膜を用いることで炎症を抑制することが可能である。
【0035】
一方、非吸収性の細胞遮蔽膜としてポリテトラフルオロエチレンやチタンを含む細胞遮蔽膜を用いる場合、治癒対象に緊密に縫合しないと十分な組織再生ができず、感染症の発症原因となる。しかしながら、CNTは生体内において異物反応や拒絶反応を引き起こしにくいため、実施例において示されるように、本発明の実施形態の一つに係るCNT系細胞遮蔽膜を用いることで、炎症反応や感染症の発症を抑制することができる。また、CNTの高い分子量と剛直性およびCNTのバンドルの緻密な網目構造に起因し、CNT系細胞遮蔽膜を容易に自立膜として製造することができる。このため、生体内で分解・崩壊することが無く、骨細胞が成長するための空間を長時間にわたって確保すること(スペースメーキング)が可能である。
【0036】
また、吸収性、非吸収性の細胞遮蔽膜のいずれを用いても、組織の再生には非常に長い時間(例えば6か月以上)を要するのに対し、本発明の実施形態の一つに係るCNT系細胞遮蔽膜には比較的大量の組織再生促進剤を担持することができるので、組織再生促進剤が効果的に作用し、速やかな組織再生が可能となる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施形態の一つに係るCNT系細胞遮蔽膜を用いて骨組織の再生を行った例を説明する。
【0038】
1.実施例1:ヒアルロン酸が担持されたCNT系細胞遮蔽膜
1−1.CNT系細胞遮蔽膜の作製
eDIPS法により合成された高純度のSWCNT(10mg)を0.1wt%濃度に調整したヒアルロン酸水溶液(20mL)に加え、得られた分散液に対して室温にて約30分超音波処理を行った。その溶液をさらに、チップ型超音波処理機(SONICS社製、型番VCX500、以下同じ)にて10分間処理した。その後、直径47mmのメンブレンフィルター(メルク社製、型番JGWP04700、以下同じ)を用いて分散液を吸引濾過した。メンブレンフィルター上に回収された濾物を60℃の乾燥機内で24時間乾燥した後、メンブレンフィルターから剥離し、さらにUVオゾンクリーナー(メイワフォーシス社製、型番PC450、以下同じ)で表面を親水化処理することでヒアルロン酸が担持されたCNT系細胞遮蔽膜を得た。
1−2.CNT系細胞遮蔽膜の評価
【0039】
図2に濾液およびヒアルロン酸の標準水溶液(0.1mg/mL、すなわち、0.01wt%)の紫外吸収スペクトルを示す。紫外吸収スペクトルは、島津製作所社製紫外可視近赤外分光光度計(型番UV−3100、以下同じ)を用いて取得した。濾液と標準水溶液の吸収強度の差からCNT膜に担持されたヒアルロン酸を定量したところ、10mgのCNTあたり1.2mgのヒアルロン酸が担持されていることが分かった。
【0040】
図3は、得られたヒアルロン酸担持CNT系細胞遮蔽膜の10万倍のSEM(日立ハイテク社製走査型電子顕微鏡、型番SU8200)像である。このSEM像から、直径5nmから50nm程度の細いCNTのバンドルが網目構造を形成していることが確認された。
【0041】
網目構造の定量的な評価は以下のように行った。まず、CNT系細胞遮蔽膜上の任意に選択される30か所で20万倍のSEM像を30像取得した。SEM像の一例を図4に示す。図4に示すように、各SEM像において画像中央横断線(図4において、横方向の点線)を横切る10本のバンドルの直径(図中、番号が付された直線の長さ)を測定した。なお、画像中央横断線を横切るバンドルが10本を超える場合には、CNT系細胞遮蔽膜の表面側から10本のバンドルを選択した。30像のSEM像に対して同様の測定を行い、合計300のバンドルについて得られた結果をヒストグラムとパレート曲線を用いて図5に示す。図5に示すように、CNT系細胞遮蔽膜に含まれるCNTは、大部分が直径50nm以下のバンドルによって構成されていることが分かる。バンドルの直径の平均値は25.6nm、標準偏差は16.5nmであり、直径60nm未満のバンドルが95%であった。このことから、直径が60nm以上のバンドルのCNT系細胞遮蔽膜における存在確率が5%であることが分かった。このような緻密な網目構造が自立膜形成能をCNT膜に付与し、生体内での膜構造の崩壊を抑制し、その結果、炎症反応の誘発を抑制すると考えられる。なお、本実施例では、CNTの分散液の調製において界面活性剤は添加しなかった。しかしながら、緻密な網目構造はCNTが界面活性剤の非存在下でも水中で良好な分散性を示すことを示唆する。このことは、ヒアルロン酸が分散剤としても機能することを意味している。
【0042】
1−3.CNT系細胞遮蔽膜を用いる骨形成
ラット頭蓋冠に骨欠損部(直径約7mm)を形成し、骨欠損部をヒアルロン酸担持CNT系細胞遮蔽膜で被覆し、骨形成を観察した。図6(A)から図6(D)は、術後28日後の骨欠損部のマイクロCT像である。図6(A)と図6(B)は水平面像であり、図6(C)と図6(D)は断面像である。細胞遮蔽膜を被覆しなかった場合(図6(A)および図6(C))と比較し、細胞遮蔽膜を被覆した場合には骨再生が明確に確認された(図6(B)および図6(D))。
【0043】
図7は骨欠損部の中央部の前断面の術後28日後の光学顕微鏡像である。図7に示すように、細胞遮蔽膜(↑)の下面には活発な新生骨の形成(*)が認められ、細胞遮蔽膜の上面には薄い線維性結合組織(△)が観察されたが、結合組織内には炎症性の細胞はほとんど認められなかった。
【0044】
2.実施例2:EGCGが担持されたCNT系細胞遮蔽膜
2−1.CNT系細胞遮蔽膜の作製
eDIPS法により合成された高純度のSWCNT(10mg)を0.2wt%濃度に調整したEGCG水溶液(20mL)に加え、得られた分散液に対して室温にて約30分超音波処理を行った。その溶液をさらに、チップ型超音波処理機にて10分間処理した。その後、直径47mmのメンブレンフィルターを用いて分散液を吸引濾過した。メンブレンフィルター上に回収された濾物を60℃の乾燥機内で24時間乾燥した後、メンブレンフィルターから剥離し、さらにUVオゾンクリーナーで表面を親水化処理することでEGCGが担持されたCNT系細胞遮蔽膜を得た。
【0045】
2−2.CNT系細胞遮蔽膜の評価
図8に濾液およびEGCGの標準水溶液(0.1mg/mL、すなわち0.01wt%)の紫外吸収スペクトルを示す。濾液と標準水溶液の吸収強度の差からからCNT膜に担持させたEGCGを定量したところ、濾液中にはEGCGがほとんど認められず、10mgのCNTあたり4mgのEGCGが担持されていることが分かった。また、添加したEGCGに対する担持されたEGCGの量のプロット(図9)に対してカーブフィッティングを行った結果、10mgのSWCNTに対するEGCGの最大担持量は7.52mgであることが見積もられた。CNT膜上に大量のEGCGを担持することができるのは、おそらくCNT膜のsp2炭素とEGCG中の芳香環との間のπ−πスタッキング相互作用に基づく強い分子間力に起因するものと考えられる。
【0046】
図10は、得られたEGCG担持CNT系細胞遮蔽膜のSEM像(10万倍)である。このSEM像から、直径10nmから100nm程度の細いバンドルが網目構造を形成していることがわかる。
【0047】
実施例1と同様に網目構造の定量的な評価を行った。図11に30像のSEM像から得られる合計300のバンドルの直径のヒストグラムとパレート曲線を示す。図11から理解されるように、実施例1のCNT系細胞遮蔽膜と同様、本実施例のCNT系細胞遮蔽膜に含まれるCNTも大部分が直径50nm以下のバンドルによって構成されていることが分かる。バンドルの直径の直径の平均値は30.7nm、標準偏差は21.6nmであり、直径60nm未満のバンドルが90%であった。このことから、直径が60nm以上のバンドルのCNT系細胞遮蔽膜における存在確率が10%であることが分かった。なお、本実施例においても、CNTの分散液の調製において界面活性剤は添加しなかった。しかしながら、緻密な網目構造から、CNTが界面活性剤の非存在下でも良好な分散性を示していることが分かる。このことは、EGCGもCNTを分散させるための分散剤としても機能することを意味している。
【0048】
2−3.CNT系細胞遮蔽膜を用いる骨形成
ラット頭蓋冠に骨欠損部(直径約7mm)を形成し、EGCG担持CNT系細胞遮蔽膜で被覆し、骨形成を観察した。図12(A)から図12(D)は、術後28日後の骨欠損部のマイクロCT像である。図12(A)と図12(B)は水平面像であり、図12(C)と図12(D)は断面像である。細胞遮蔽膜を被覆しなかった場合(図12(A)および図12(C))と比較し、細胞遮蔽膜を被覆した場合には骨再生が明確に確認された(図12(B)および図12(D))。
【0049】
図13はEGCG担持CNT系細胞遮蔽膜をラット皮下に埋入後56日の光学顕微鏡像である。図13から、CNT系細胞遮蔽膜(↑)が線維性結合組織(△)によって被覆されているのが観察された。線維性結合組織内には線維芽細胞は観察されたが、炎症性細胞はほとんど認められず、炎症は軽度であった。
【0050】
3.比較例:骨再生促進剤非担持CNT膜
比較例として、骨再生促進剤を用いず、クロロホルム中にCNTを分散することで作製されたCNT膜を使用した例について説明する。
【0051】
3−1.CNT膜の作製
eDIPS法により合成された高純度のSWCNT(10mg)をクロロホルム(20mL)に加え、得られた分散液に対して室温にて約30分超音波処理を行った。その溶液をさらに、チップ型超音波処理機にて10分間処理した。その後、直径47mmのメンブレンフィルターを用いて分散液を吸引濾過した。メンブレンフィルター上に回収された濾物を60℃の乾燥機内で24時間乾燥した後、メンブレンフィルターから剥離し、さらにUVオゾンクリーナーで表面を親水化処理することでCNT膜を得た。
【0052】
3−2.CNT膜の評価
図14に比較例のCNT膜のSEM像を示す。実施例1、2と異なり、直径10nmから200nm程度の太いバンドルが粗い網目構造を形成していることがわかる。なお、分散剤を用いない場合CNTは水中には殆ど分散しないため、クロロホルムに替えて水を分散用溶媒として用いると、より太いバンドルが形成されることになる。
【0053】
実施例1、2と同様に網目構造の定量的な評価を行った。図15に30像のSEM像から得られる合計300のバンドルの直径のヒストグラムとパレート曲線を示す。このヒストグラムにおけるデータ幅は、実施例1、2のそれと同じである。図15図5図10と比較すると分かるように、実施例1、2のCNT系細胞遮蔽膜と異なってバンドル直径とその分布は大きく、直径が150nmを超えるバンドルも存在し、最大のバンドル直径は521nmであった。バンドルの直径の平均値は63.5nm、標準偏差は64.5nmであった。また、直径60nm未満のCNT束状構造が67%であり、直径が60nm以上のバンドルのCNT膜における存在確率が37%であることが確認された。
【0054】
3−3.CNT膜を用いる骨形成
ラット頭蓋冠に骨欠損部(直径約7mm)を形成し、骨欠損部を比較例の骨再生促進剤非担持CNT膜で被覆し、骨形成を観察した。図16は術後14日後の骨欠損部の軟X線写真像である。比較例のようにCNT膜に骨再生促進剤を担持させなかった場合、骨欠損部にCNT膜を被覆しても不透過像がほとんど認められなかったことから骨再生が進んでいないことが明らかとなった。
【0055】
図17は皮下組織の術後14日後の光学顕微鏡像である。CNT膜(左図↑)は間葉系細胞を多数含む線維性結合組織に被覆されているが、中等度の炎症細胞浸潤(*)が認められ、異物巨細胞(△)も多数観察された。また、CNT膜の構造が組織内で大きく崩壊し(左図円囲み)、SWCNTの一部が膜から脱落して異物として細胞内(右図↑)に混入されることが確認された。
【0056】
上述した実施例で示されるように、本発明の実施形態の一つに係るCNT系細胞遮蔽膜を用いることにより、膜の崩壊や炎症の発生が抑制され、短期間で組織細胞の再生が可能であることが確認された。このことは、本発明の実施形態の一つに係るCNT系細胞遮蔽膜は、感染症の発症が抑制できるとともに、組織形成を促進する細胞遮蔽膜として機能することを明確に示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17