【実施例】
【0056】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0057】
〔BTESPUの合成〕
滴下漏斗、磁気撹拌子を備えた200mLの二口フラスコに、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアナート2.2mL(9.0×10
−3mol)およびジクロロメタン80mLを入れ、水浴で撹拌した。そして、ジクロロメタン10mLに溶解させた3−アミノプロピルトリエトキシシラン2.1mL(9.0×10
−3mol)をゆっくり滴下し、室温で7h撹拌した。その後、減圧濃縮し、白色固体のBTESPUを収率95%で得た。
【0058】
〔コロイドゾルの調製およびゲルの評価〕
表1に示す実施例1〜3の組成について、コロイドゾルおよびゲル材料の物性を評価した。
【0059】
【表1】
【0060】
<コロイドゾルの調製および動的光散乱(DLS)測定>
表1の組成のコロイドゾルを調製するため、まず、50mLのスクリュー管に撹拌子を入れ、エタノールを秤量して加えた。次に、スターラーで撹拌しながら、秤量したBTESPUおよびBTESEをこの順に加えた後、水を1滴ずつゆっくりと滴下した。そして、スクリュー管のふたを閉め、スターラーで撹拌し、ゾル化時間:1h、3h、5hおよび24hでサンプリングした。各サンプルについて、Malvern製・Zetasizer Nano ZSを使用して、動的光散乱(DLS)測定を行った。
【0061】
図2〜
図4はそれぞれ、実施例1〜3の個数基準によるDLS測定結果を示すグラフである。
図2〜
図4に示すように、この条件では、時間変化とともに重合がさほど進まず、粒子成長があまりみられなかった。前述の通り、コロイドゾルの個数基準モード径は、1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましいとともに、5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましい。なお、後述するCO
2分離膜の製造では、実施例1〜3のいずれでも、ゾル化時間:24hのサンプルを使用した。なお、更なるゾル化を低減するため、コロイドゾルをエタノールで5wt%から0.25wt%へと希釈し、CO
2分離膜の製造まで、4℃に設定された冷蔵庫内で保管した。
【0062】
<熱重量分析(TGA)測定>
ゾル化時間:24hのサンプルについて、一晩以上60℃の炉で加熱することにより(slow dry法)、ゲル化させた。ゲル化させたサンプルについて、SHIMADZU製TGAを使用して、熱重量分析(TGA)測定を行った。測定は、N
2流量を100mL/minに設定して行った。また、ゲルに含まれていた水およびエタノール等を蒸発させるために、100℃まで加熱を行い、重量が安定するまで1時間程度保持した後で測定を開始した。
【0063】
図5は、実施例1〜3のTGA測定結果を示すグラフである。
図5に示すように、実施例1〜3のいずれも、350〜400℃付近で急激な重量減少がみられた。当該重量現象は、主鎖の熱分解が起きたためと推測される。実施例1は、実施例2および3よりも残渣の割合が高く、熱安定性が高いことが示唆されたため、以下の実験では、実施例1の組成を用いた。
【0064】
<フーリエ変換赤外分光(FT−IR)測定>
ゾル化時間:24hのサンプルを、約1.5cm角の清浄なシリコンウェハ上に滴下し、50℃に設定した乾燥機を使用して、空気中で24時間乾燥させた。乾燥後のサンプルについて、JASCO製FT−IR−4100を使用して、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)測定を行った。
【0065】
FT−IR測定後のサンプルを、窒素雰囲気下、100℃で10分間焼成し、約10分間室温で放冷した後、再度FT−IR測定を行った。更に、焼成温度150℃、200℃、250℃、300℃、350℃および400℃でも、焼成、放冷およびFT−IR測定を繰り返して行った。
【0066】
図6は、実施例1の各焼成温度でのFT−IR測定結果を示すグラフである。
図6に示すように、温度が上昇するにつれて、960cm
−1付近のSiOH基が減少し1000〜1100cm
−1付近のSi−O−Si結合が増加していることから、縮合反応が進んでいることがわかる。また、2100cm
−1付近のイソシアナートの−NCOピークが400℃で大きく発現していることから、ウレア部分の分解が350〜400℃の間で起きていることが示された。このことは、
図5に示したTGA測定結果からも示唆される。
【0067】
また、一般に縮合反応が進むと3000〜3700cm
−1付近の−OHのピークが減少するが、
図6では、3000〜3700cm
−1付近のピークの変化が少ないように見える。この理由は、ウレア部分の分解により生じる−NHのピークが、3000〜3700cm
−1付近の−OHのピークと重なっているためと推測される。以上より、シロキサン結合の生成を促進するとともに、ウレア部分の分解を防ぐため、後述するCO
2分離膜の製造では、焼成温度は、300℃または350℃とした。
【0068】
〔CO
2分離膜の製造〕
<多孔性支持体の作製>
以下の手順により、非対称構造を有する多孔質管が2本の無孔質管で接続された多孔性支持体を作製した。まず、長さL=100mm、外径Φ=10mm、肉厚1mm、公称平均細孔径1μm、空孔率50%、膨張係数β=63×10
−7/℃のα−アルミナ多孔質管の両端に、外径Φ=8mmの無孔アルミナ管(無孔質管)を接合し、接合体を作製した。接合は、アルミナペースト(ノリタケカンパニーリミテド)を使用して、950℃での焼成を2〜3回繰り返すことにより行った。接合後、アルミナ管をエタノール中に浸漬した状態で、アルミナ管内部から窒素で25kPaの圧力を掛け、接合部分から気泡が出ないことを確認した(バブルポイント法)。
【0069】
次に、SiO
2−ZrO
2ゾル(1.0〜2.0wt%)をバインダーとし10wt%程度にイオン交換水で希釈したアルミナ微粒子(住友化学工業(株)製、個数平均粒子径:1.9μm)を旭化成(株)製のベンコットM−1に少量とり、接合体の多孔質管部分にコールドコーティングした。自然乾燥させたのち、乾いたベンコットM−1で余分な粒子を拭き取り、200℃の乾燥機で余熱した後、いすゞ製作所電気管状炉EKR−29で空気雰囲気下において550℃で10分間焼成した。バブルポイント法で60kPaの圧力を掛けても気泡が出ないようになるまで、アルミナ微粒子の塗布、乾燥および焼成を繰り返し、第1中間層を形成した。
【0070】
次に、SiO
2−ZrO
2ゾル(1.0〜2.0wt%)をバインダーとし10wt%程度にイオン交換水で希釈したアルミナ微粒子(住友化学工業(株)製、個数平均粒子径:0.2μm)を、接合体の多孔質管部分にコールドコーティングした。自然乾燥させたのち、乾いたベンコットM−1で余分な粒子を拭き取り、200℃の乾燥機で余熱した後、空気雰囲気下において550℃で10分間焼成した。バブルポイント法で100kPaの圧力を掛けても気泡が出ないようになるまで、アルミナ微粒子の塗布、乾燥および焼成を繰り返し、第2中間層を形成した。
【0071】
次に、SiO
2−ZrO
2ゾル(個数平均粒子径:20〜30nm、0.5〜1.0wt%)を、200℃で10分間加熱した接合体の多孔質管部分にホットコーティングし、空気雰囲気下において550℃で10分間焼成した。更に、SiO
2−ZrO
2ゾル(個数平均粒子径:約10nm、0.5wt%)を、200℃で10分間加熱した接合体の多孔質管部分にホットコーティングし、空気雰囲気下において550℃で10分間焼成した。シンプルナノパームポロメータにより測定される平均細孔径が1nm以上2nm以下になるまで、SiO
2−ZrO
2ゾル(個数平均粒子径:約10nm、0.5wt%)の塗布および焼成を繰り返すことにより、第3中間層を形成し、多孔性支持体を作製した。
【0072】
<分離層の形成>
多孔性支持体の多孔質管部分の表面に、エタノールで0.25wt%に希釈した実施例1のコロイドゾル(ゾル化時間:24h)を、ベンコットを用いてコーティングし、コロイドゾルを多孔性支持体の表面に担持させた。コーティングは、多孔性支持体を200℃の乾燥機で10分間加熱した後、室温の大気中で15秒程度放冷した後に行った。コーティング後、多孔性支持体を窒素雰囲気下、300℃または350℃で30分間焼成した。10分間で室温まで冷却した後、炉から取り出し、すぐに透過実験装置の中に取り付け、He、N
2およびSF
6について、後述する気体透過実験を行った。気体透過実験の後、必要に応じてコロイドゾルの塗布および焼成を繰り返した。
【0073】
図7は、300℃で焼成した分離層について、塗布回数と透過率およびHe/SF
6の透過選択性との関係を示すグラフである。また、
図8は、350℃で焼成した分離層について、塗布回数と透過率およびHe/SF
6の透過選択性との関係を示すグラフである。
【0074】
図7および
図8に示すように、コーティングを繰り返すことにより、He/SF
6の透過選択性は上昇し、各測定ガス種の透過率は低下した。この理由は、塗布を繰り返すことにより、分離層の膜厚が増加したためと推測される。
【0075】
図7に示す例では、3回の塗布により、He/SF
6の透過選択性が3000以上に増加したため、3回の塗布をもってCO
2分離膜の完成とした。以下の説明では、このCO
2分離膜を実施例1−Aと称する。
【0076】
一方、
図8に示す例では、6回の塗布を行っても、He/SF
6の透過選択性は約230と低かった。また、6回以上塗布を繰り返しても、He/SF
6の透過選択性の増加の見込みが低く、透過率が減少してしまうだけであると予想されたため、5回の塗布をもってCO
2分離膜の完成とした。以下の説明では、このCO
2分離膜を実施例1−Bと称する。
【0077】
〔気体透過実験〕
CO
2分離膜の透過率は、各測定ガス種について、下記式(4)で算出することができる。
【0078】
Q=V/(22.4×A×ΔP) (4)
式(4)中、Qは透過率[mol/m
2 s Pa]であり、Vは単位時間当たりの体積流量[L/s]であり、AはCO
2分離膜の表面積であり、ΔPは、CO
2分離膜の上流側と下流側との圧力差[Pa]である。なお、本実施例では、多孔質管の外部をCO
2分離膜の上流側とし、多孔質管の内部をCO
2分離膜の下流側とした。また、本実施例では、CO
2分離膜の上流側の圧力を約100kPaに設定した。
【0079】
体積流量Vは、その流量に応じて、(株)堀場エステックソープフィルムメータ(VP−1(0.2〜10mL/min)、VP−2(2〜100mL/min)、VP−3 (20〜1000mL/min))で測定した。本実施例に用いる測定ガス種は、He、H
2、CO
2、N
2、CH
4、CF
4およびSF
6である。各測定ガス種の物性値を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
〔CO
2分離膜の気体分離特性〕
作成したCO
2分離膜を用いて、気体透過実験を行った。測定する気体の順番はHe、H
2、N
2、CO
2、CH
4、CF
4、SF
6とし、測定温度は200℃、150℃、100℃および50℃とした。吸着性のない無機ガスであるHe、H
2、N
2は、各温度で全てのガスの測定が終了後、次の温度での測定を行った。吸着性のあるガスであるCO
2、CH
4、CF
4、SF
6は全ての温度での測定が終了後、次のガスの測定を開始した。測定ガスを変更するときは、CO
2分離膜の上流側および下流側を十分に置換し、特に吸着性ガスの後はN
2の透過率が測定前の透過率と同程度まで回復したのを確認し、温度が安定した後で測定を行った。
【0082】
図9は、測定ガス種の動的分子径と200℃での透過率との関係を示すグラフである。なお、
図9には、実施例1−Aおよび実施例1−Bの測定結果と併せて、実施例1−BのHeの透過率に基づいて、Knudsen状態を仮定して算出した透過率も示す。ここで、Knudsen状態とは、気体分子相互の衝突がほとんど起こらず、細孔内の壁から壁へ分子が衝突を繰り返しながら拡散透過していく状態を意味する。Knudsen状態では分子分離性は発現するが、分子ふるいに比べて透過選択性が低いため、分子分離膜としての有用性は低い。
【0083】
図9に示すように、実施例1−Aおよび実施例1−Bはいずれも、N
2、CH
4、CF
4およびSF
6の透過率が、Knudsen状態よりも低かった。したがって、実施例1−Aおよび実施例1−Bはいずれも、Knudsen状態よりも良好な透過選択性を有することが示唆された。
【0084】
また、実施例1−Aおよび実施例1−Bを比較すると、HeおよびH
2のような小さい分子においては、実施例1−Bの方が透過率が低かった。この理由は、実施例1−Bでは分離層形成時の塗布回数が多く、膜厚が大きいため、測定ガスが透過する抵抗が実施例1−Aより大きいためであると考えられる。一方、CF
4およびSF
6のような大きい分子では、実施例1−Bの方が透過率が高かった。これは、350℃で焼成することにより、シリカネットワークの架橋部分が分解してしまい、細孔径が大きくなったためと推測される。
【0085】
図10は、実施例1−AのCO
2分離膜について、測定温度Tの逆数と透過率の対数との関係を示すアレニウスプロットである。また、
図11は、実施例1−BのCO
2分離膜について、測定温度Tの逆数と透過率の対数との関係を示すアレニウスプロットである。
【0086】
図10および
図11に示すように、CO
2以外の測定ガス種(He、H
2、N
2、CH
4、CF
4およびSF
6)については、測定温度Tが高い、すなわち測定温度Tの逆数(1/T)が低い程、透過率が上昇した。これは、(1)CO
2分離膜のシリカネットワークが熱によって振動することにより、CO
2分離膜の細孔サイズが大きくなること、および(2)測定ガス種の分子が持つ運動エネルギーが増大することにより、測定ガス種の分子の拡散が促進されるためと推測される。このように、測定温度Tが高い程、透過率が上昇するガス透過機構は、「活性化拡散」と称される。
【0087】
一方、
図11に示すように、実施例1−Bでは、CO
2について、測定温度Tが高い、すなわち測定温度Tの逆数(1/T)が低い程、透過率が低下した。これは、「表面拡散」と称されるガス透過機構により、CO
2分子がCO
2分離膜を透過しているためと推測される。表面拡散では、CO
2分子がCO
2分離膜の表面に吸着することにより、CO
2分離膜の上流側から下流側に向かってCO
2濃度の勾配が生じ、この濃度勾配に沿って二次元的に分子が移動する。測定温度Tが低い程、CO
2分子の持つエネルギーが低くなり、CO
2分子がCO
2分離膜の表面に吸着されやすくなるので、その濃度勾配に従って起こる拡散移動は促進される。したがって、表面拡散では、測定温度Tが高い程、透過率が低下する。
【0088】
また、
図10および
図11に示すように、実施例1−Aでは、実施例1−Bよりも、CO
2の透過率の温度依存性が小さかった。この理由は、実施例1−Bでは、シリカネットワークの分解によって細孔径が大きくなり、表面拡散の機構に適する細孔径に達したため、活性化拡散よりも表面拡散の寄与が支配的になったためと推測される。また、
図6のFT−IR測定結果より、実施例1−Bでは、ウレア部分の分解により−NHピークが増加していると示唆される。そのため、実施例1−Bでは、塩基性が増加し、CO
2との親和性が増加することにより、低温での吸着がより促進され、その濃度勾配に従って起こる拡散移動が促進されたと推測される。
【0089】
また、
図10および
図11に示すように、CO
2以外の測定ガス種(He、H
2、N
2、CH
4、CF
4およびSF
6)については、実施例1−Aよりも実施例1−Bの方が、温度依存性が小さいことが示された。この原因として、実施例1−Aは有機膜に近いのに対し、実施例1−Bはシリカネットワークの分解によって無機膜に近くなったためと推測される。有機膜では、シリカネットワーク構造が熱によって振動することによって細孔の大きさが変化する。一方、無機膜では、細孔の大きさが温度に依存することが少ない。
【0090】
透過ガスが細孔を通るときに必要となるエネルギーである活性化エネルギー(ΔE)は、
図10および
図11における直線の傾きから、下記式(5)を用いて算出することができる。
【0091】
ln Q=ln Q
0−ΔE/RT (5)
上記式(5)中、Qは透過率であり、Rは気体定数である。このように算出したCO
2分離膜の活性化エネルギーを、透過率および透過選択性とともに、表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示すように、実施例1−Bにおいて、実施例1−AよりもH
2/SF
6、He/N
2およびCO
2/N
2の透過選択性が低下し、活性化エネルギーが減少するとともに、CO
2透過率が上昇した。この理由は、実施例1−Bでは、350℃の焼成により、シリカネットワークの有機架橋部分が分解し、細孔径が大きくなったためと推測される。特に、CO
2の動的分子径(0.33nm)は、N
2(0.364nm)の動的分子径と同程度であるので、大きな細孔径では分子ふるい的に分離することは難しく、CO
2透過率の上昇と同時に、N
2透過率も同様に上昇してしまったと推測される。
【0094】
また、実施例1−AのCO
2の活性化エネルギーは正の値となり、実施例1−Bのような負に大きな値をとらなかった。この理由は、実施例1−Aでは、シリカネットワークの剛直なウレア構造で多孔質的な構造となったため、細孔が緻密であり、表面拡散的な透過機構に加えて、活性化拡散的な透過の寄与も大きかったためと推測される。
【0095】
また、非特許文献1で説明されているように、活性化エネルギーが低い程、CO2分離膜の性質が無機膜に近くなり、剛直性が高くなることが一般的に知られている。この理由は、有機膜の場合、高温で有機鎖が振動し、細孔サイズが変動するのに対し、無機膜の場合、構造が剛直であるため、高温でも細孔サイズの変動が小さいためである。
【0096】
ここで、非特許文献1では、N
2透過の活性化エネルギーは、ポリエチレン(PE)ベース分離膜で33.6kJ/mol、ビス[(トリエトキシシリル)プロピル]オキサリルウレア(BTESPOU)分離膜で30.0kJ/mol、ビス[(トリエトキシシリル)メチル]オキサリルウレア(BTESMOU)分離膜で14.4kJ/mol、BTESE分離膜で3.5kJ/molと報告されている。
【0097】
実施例1−AのN
2透過の活性化エネルギーは10.1kJ/molであるので、PEベース分離膜、BTESPOU分離膜およびBTESMOU分離膜の活性化エネルギーよりも小さい。そのため、実施例1−Aは、PEベース分離膜、BTESPOU分離膜およびBTESMOU分離膜よりも無機膜に近く、剛直性が高いことが示唆される。
【0098】
また、実施例1−BのN
2透過の活性化エネルギーは3.10kJ/molであるので、PEベース分離膜、BTESPOU分離膜、BTESMOU分離膜およびBTESE分離膜よりも小さい。そのため、実施例1−Bは、PEベース分離膜、BTESPOU分離膜、BTESMOU分離膜およびBTESE分離膜よりも無機膜に近く、剛直性が高いことが示唆される。
【0099】
図12は、N
2の透過率とCO
2/N
2の透過選択性との関係を示すグラフである。
図12に示すように、測定温度が高い程、CO
2/N
2の透過選択性が高かった。この理由は、N
2のガス透過機構は活性化拡散の寄与が高いため、測定温度が低い程、透過率が低下するのに対し、CO
2のガス透過機構は表面拡散の寄与が高いため、測定温度が低い程、透過率が上昇するためであると推測される。
【0100】
以上のように、実施例1−Aおよび実施例1−Bに係るCO
2分離膜は、良好なCO
2透過選択性および高い剛直性を両立することが示された。