特許第5658431号(P5658431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658431
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】包装袋のヒートシール方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/10 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   B65B51/10 103
   B65B51/10 Y
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2008-307159(P2008-307159)
(22)【出願日】2008年12月2日
(65)【公開番号】特開2010-132290(P2010-132290A)
(43)【公開日】2010年6月17日
【審査請求日】2011年5月16日
【審判番号】不服2013-18608(P2013-18608/J1)
【審判請求日】2013年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100077827
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 弘男
(72)【発明者】
【氏名】野村 光生
【合議体】
【審判長】 千葉 成就
【審判官】 熊倉 強
【審判官】 渡邊 豊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−331792(JP,A)
【文献】 特表2004−530000(JP,A)
【文献】 特開平9−137132(JP,A)
【文献】 特開平9−30514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の包装袋の開口部を一対のヒートシールバーの間で挟持してシール部を形成するヒートシール方法であって、
ヒートシール直後の前記シール部の温度と、該シール部のシール強度との関係を予め測定して該関係を表す曲線である温度−強度曲線を作成する工程と、
前記温度−強度曲線の傾きが変化する折れ曲がり点のうち、低温側から2つ目の折れ曲がり点を第2の折れ曲がり点とし、低温側から3つ目の折れ曲がり点を第3の折れ曲がり点としたとき、前記温度−強度曲線の前記第2の折れ曲がり点と前記第3の折れ曲がり点との間の区間の温度帯を、最適ヒートシール温度帯として求める工程と、
ヒートシール時の前記ヒートシールバーの設定温度と、ヒートシール直後の前記シール部の温度との関係を予め測定して該関係を表す曲線である設定温度曲線を作成する工程と、
前記設定温度曲線に基づいて、前記最適ヒートシール温度帯に対応する前記ヒートシールバーの設定温度帯である最適設定温度帯を求める工程と、
前記ヒートシールバーの設定温度を前記最適設定温度帯内に設定し、該ヒートシールバーによって前記包装袋の開口部を挟持して前記シール部を形成する工程と、
ヒートシール直後の前記シール部の温度を、該シール部の一端から他端にわたって計測して、包装袋表面温度を取得する工程と、
前記包装袋表面温度が、前記最適ヒートシール温度帯の下限値よりも大きくない場合には該包装袋は不良品であると判定する工程と、
前記包装袋表面温度が、前記最適ヒートシール温度帯の上限値よりも小さくない場合には該包装袋は不良品であると判定する工程と、
を有し、
前記合成樹脂製の包装袋は、前記第2の折れ曲がり点及び前記第3の折れ曲がり点を有する材質の袋である、
ことを特徴とするヒートシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋の口封温度を制御することができる、包装袋のヒートシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香辛料や小麦粉等の粉粒体、またはパスタソース等の液状物を一般消費者向けに販売するような場合、包装袋である小袋にそれらの内容物を3g〜2kg程度の一定量充填して包装し、家庭用小袋として流通させるようにしている。このような家庭用小袋の充填、包装工程は機械化され、充填包装装置として提供されている。
【0003】
家庭用小袋の包装袋として、合成樹脂製の包装袋が多く用いられている。合成樹脂製の袋は、密閉性が高く外部からの湿分の侵入を防止でき、また材質によっては遮光性を持たせることができるといったメリットがある。
【0004】
特許文献1には、一対のシール用金型の間で容器形成用素材フィルムを挟持し加熱加圧してシール部を形成するに際し、形成直後のシール部から光検出装置を介して光情報を得、この光情報の演算処理結果に基づき、前記シール用金型の温度、押圧力等を制御操作部を介し所定値に制御する発明が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平09−030514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、形成(加熱)直後のシール部から光情報を得ること、その光情報に基づいてシール用金型の温度、押圧力等を所定値に制御することについては開示されているものの、容器形成用素材はフィルムと記載されているのみであって、フィルムの材質に関して、またフィルムが様々な材質なものに変更された場合の最適ヒートシール条件に関しては何ら開示されていない。
【0007】
従来のヒートシール方法では、フィルムの材質の差異や用いる包装装置の差異等により、ヒートシール条件がその都度異なり、ひいてはヒートシールの不良率もまちまちであった。同機種の包装装置を2基以上用いている場合、それら複数のヒートシールバーを同じ設定温度としても、得られるシール強度は包装装置毎に異なるものであった。包装装置の使用頻度や使用年数、あるいはメンテナンス状態の差異、また、包装装置のシール動作回転数、ヒートシールバーの温度ムラ、ヒートシールバーの形状や材質、季節変化による包装装置周辺の雰囲気温度変動等、さらにはそれらが複雑に絡み合い、同機種であっても個体の異なる複数の包装装置において、同じシール強度が実現できることの方が寧ろ稀であった。結局は包装装置のオペレーターが経験や勘といったもので、ヒートシールバーの設定温度の調整を行っているのが実状であった。
【0008】
ヒートシールの最適設定温度がよく分からず、その調整が上手く行かなかった場合、そこそこの条件でヒートシールを施して正常品と差がないように見えても、実はそれらが加熱不足気味であった場合には、最終的に多量のシール不良品を発生させてしまうというトラブルも生じていた。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、フィルムの材質の差異や用いる包装装置の差異によらず、どんな材質のフィルムやどんな包装装置を用いても、加熱不足による擬似接着や過加熱によるエッジ切れや薄肉化が発生せず、また、オペレーターの経験や勘といったものに頼ることなく良好なヒートシールを行うことができる包装袋のヒートシール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、合成樹脂製の包装袋の開口部を一対のヒートシールバーの間で挟持してシール部を形成するヒートシール方法であって、ヒートシール直後の前記シール部の温度と、該シール部のシール強度との関係を予め測定して該関係を表す曲線である温度−強度曲線を作成する工程と、前記温度−強度曲線の傾きが変化する折れ曲がり点のうち、低温側から2つ目の折れ曲がり点を第2の折れ曲がり点とし、低温側から3つ目の折れ曲がり点を第3の折れ曲がり点としたとき、前記温度−強度曲線の前記第2の折れ曲がり点と前記第3の折れ曲がり点との間の区間の温度帯を、最適ヒートシール温度帯として求める工程と、ヒートシール時の前記ヒートシールバーの設定温度と、ヒートシール直後の前記シール部の温度との関係を予め測定して該関係を表す曲線である設定温度曲線を作成する工程と、前記設定温度曲線に基づいて、前記最適ヒートシール温度帯に対応する前記ヒートシールバーの設定温度帯である最適設定温度帯を求める工程と、前記ヒートシールバーの設定温度を前記最適設定温度帯内に設定し、該ヒートシールバーによって前記包装袋の開口部を挟持して前記シール部を形成する工程と、ヒートシール直後の前記シール部の温度を、該シール部の一端から他端にわたって計測して、包装袋表面温度を取得する工程と、前記包装袋表面温度が、前記最適ヒートシール温度帯の下限値よりも大きくない場合には該包装袋は不良品であると判定する工程と、前記包装袋表面温度が、前記最適ヒートシール温度帯の上限値よりも小さくない場合には該包装袋は不良品であると判定する工程と、を有し、前記合成樹脂製の包装袋は、前記第2の折れ曲がり点及び前記第3の折れ曲がり点を有する材質の袋である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルムの材質の差異や用いる包装装置の差異によらず、どんな材質のフィルムや包装装置を用いても、加熱不足による擬似接着や過加熱によるエッジ切れや薄肉化が発生せず良好なヒートシールを行うことができる。
【0014】
すなわち、本発明では、良好なヒートシールを行うことができる。
【0015】
本発明の包装袋のヒートシール方法は、合成樹脂製の包装袋が、PET/・・・/LDPE系以外にも、PET/・・・/レトルトCPP系、OPP/・・・/CPP系、ONY/・・・/LDPE系といった多層構成やLDPE系の単層構成に限らず、ありとあらゆるフィルムに適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明が適用された充填包装装置の概略を示す平面図である。
【0018】
図1に示すように、この充填包装装置1は、包装袋を供給する給袋部2と、包装袋に対して内容物の充填、包装を行う本体部3と、内容物が充填され、包装された包装体を排出する排出部4とから構成される。
【0019】
給袋部2は、コンベヤ2aを有し、このコンベヤ2aに載せられた包装袋5を本体部3に供給するように搬送する。
【0020】
本体部3は時計回りに回転するロータリー8を有し、ロータリー8の外周には爪15および16の組み合わせが10組設けられており、ロータリー8の回転に伴い、爪15および16によって挟持した包装袋5を各工程へと運ぶ。
【0021】
本体部3では、給袋部2から供給された包装袋5を取り上げ、ロータリー8の位置8aにおいて爪15および16によって包装袋5の両脇を挟持する。
【0022】
ロータリー8が時計回りに回転し、爪15および16によって挟持された包装袋5が位置8bに達したならば、充填部7によって包装袋5に内容物の充填が行われる。
【0023】
なお、ここでは、内容物充填前の袋を包装袋と呼び、内容物の充填包装途中の袋を充填包装袋と呼び、内容物の充填包装完了後の袋を包装体と呼ぶこととする。
【0024】
さらに工程が進み、位置8cでは、口封部であるヒートシール装置17で充填包装袋50の上部を熱でヒートシールして、内容物の包装を完了する。ヒートシール装置17は、ヒートシールバー17aおよび17bを有し、後述のヒータ20aおよび20bによって加熱されたヒートシールバー17aおよび17bで充填包装袋50の上部を挟むことによってヒートシールを行う。
【0025】
温度センサ18および19は充填包装袋50のヒートシール箇所の温度を検出するものであり、詳しくは後述する。
【0026】
内容物が充填包装された包装体500は、位置8dで排出部4のコンベヤ4aに載せられて排出される。このとき、本体部3での充填、包装工程中に何らかの異常が検出された包装体500は、フリッパ装置4bによってはじかれる。
【0027】
次に、図1に示したヒートシール装置17の構造について、図面を参照して詳しく説明する。図2は、図1に示した充填包装装置1のヒートシール装置17を示す概略斜視図である。図3は、図2に示したヒートシール装置17を側方から見た断面図である。
【0028】
上述したように、充填包装袋50は、爪15、16によって両脇を挟持された状態で内容物が充填され、その後、充填口50aが熱圧着されヒートシールされることによって充填包装袋50は密封される。
【0029】
ヒートシール装置17のヒートシールバー17aおよび17bのそれぞれはヒータ20aおよび20bを有し、このヒータ20aおよび20bによって加熱されたヒートシールバー17aおよび17bによって充填包装袋50の充填口50aを加熱してヒートシールする。合成樹脂製の包装袋5は、たとえばPET/・・・/LDPE系の多層構造である。包装袋5の材質は、PET/PE/・・・/LLDPE、ONY/・・・/LLDPE、OPP/・・・/CPP、PET//ONY//レトルトCPPの多層フィルム全般や、LDPE等の単層といったどんなものでもよい。
【0030】
ヒートシール装置17でヒートシールを行う際のヒートシールバー17aおよび17bの温度が低すぎたり、高すぎたり、ヒートシール圧力が高かったり、低かったり、ヒートシール時間が長かったり、短かったり、包材温度が高かったり低かったり等々すると、適正にヒートシールすることができず、不良品となってしまう。本実施の形態では、このような不良品の検出、および温度を最適にするための制御を行う。
【0031】
図4は、図1に示した充填包装装置1の温度センサ18を示す概略斜視図である。
【0032】
本実施の形態では、図1に示したように、温度センサ18および19を設けているが、温度センサ18または温度センサ19の一方のみを設けてもかまわない。温度センサ18および19は赤外線を検出し、非接触で対象物の温度を計測するものである。
【0033】
温度センサ18は赤外線放射温度計であり、被測定物からの赤外線を点で検出する赤外線センサを有し、ロータリー8の回転によって包装体500が移動するのに伴い、包装体500のヒートシール箇所(シール部)500aにおける、たとえば向かって左端から右端にかけての温度を順に検出し、ヒートシール箇所500aの横方向の温度波形を取得する。この構成によればヒートシール箇所500aの横方向の温度ムラを検出でき、部分的なヒートシール不良も検出することができる。
【0034】
温度センサ19は赤外線カメラであり、被測定物からの赤外線を面で撮影するものである。この温度センサ19によれば、ロータリー8が停止しているときに、包装体500のヒートシール箇所500aの全面を撮影し、ヒートシール箇所500aの温度分布を取得する。この構成によれば、やはりヒートシール箇所500aの横方向の温度ムラを検出でき、部分的なヒートシール不良も検出することができる。
【0035】
ヒートシール装置17によってヒートシールされた包装体500のヒートシール箇所500aは、ヒートシールに必要な所定温度まで加熱されていることが望ましい。そこで、ヒートシール箇所500aの温度を検出することによってヒートシールが正しくなされたか否かを検出することができる。すなわち、検出温度が所定の温度範囲(たとえば90℃以上130℃以下)であればヒートシールが正しくされたものと判断し、また、検出温度が所定の温度範囲になければヒートシールが正しくなされなかったものと判断する。充填包装装置1は制御部100を有し、この判断は後述の制御部100によって行われる。
【0036】
上述のようにして内容物が包装されヒートシールされた包装体500は、排出部4のコンベヤ4aに載せられて排出される。
【0037】
このとき、温度センサ18および19による検出結果に基づいた制御部100の判断の結果、ヒートシールが正しくなされたものと判断された場合には、その包装体500はコンベヤ4aに載って通過していく。
【0038】
これに対して、温度センサ18および19による検出結果に基づいた制御部100の判断の結果、ヒートシールが正しくなされなかったものと判断された場合には、図1に示したフリッパ装置4bが駆動され、その包装体500はこのフリッパ装置4bによってはじかれる。
【0039】
ところで、本実施の形態の制御部100では、温度センサ18および19による検出結果に基づいて、ヒータ20aおよび20bの温度制御も行う。制御部100による制御に関する構成のブロック図を図5に示す。
【0040】
制御部100は、温度センサ18および19の検出結果を入力し、ヒートシールバー17aおよび17bの開閉制御を行い、ヒータ20aおよび20bの温度制御を行い、フリッパ装置4bの駆動制御を行う。
【0041】
図6は、制御部100によるヒータ20aおよび20bの温度制御処理を示すフローチャートである。
【0042】
ヒートシールバー17aおよび17bには図示しない温度センサが設けられており、制御部100はこの温度センサで検出した温度が設定温度Tsとなるようにヒータ20aおよび20bによる加熱を行う(A−1:No、A−2)。この設定温度Tsは、包装袋5の材質に応じて予め定めて、制御部100の図示しない不揮発性メモリに記憶しておけばよい。合成樹脂製の包装袋5の材質がPET/・・・/LDPE系の多層構造であれば、設定温度Tsをたとえば120℃程度に設定する。この設定温度Tsは、後述の最適設定温度帯の範囲内のものである。
【0043】
ヒートシールバー17aおよび17bの温度が設定温度Tsになったならば(A−1:Yes)、ヒートシールバー17aおよび17bにより充填包装袋50のヒートシールを行う(A−3)。
【0044】
続いて、温度センサ18および19によって、包装体500のヒートシール箇所500aの温度Tmを検出する(A−4)。この温度Tmは、包装体500の横幅における部分的なヒートシール不良を防ぐため、包装体500の横幅の各箇所での数値を採用するのがよい。
【0045】
本実施の形態では、ヒートシールが良好に行われる温度範囲(すなわち最適設定温度帯)を予め設定し、制御部100の図示しない不揮発性メモリに記憶しておく。この温度範囲は、包装袋5の材質に応じて定めればよい。この温度範囲について図7図8および図9を参照しながら以下に説明する。
【0046】
ヒートシール包材のシール強度は、JIS(JIS Z 0238)により、15〜20mm幅の試験片を引っ張り試験することが定められている。
【0047】
図7は、従来の方法を説明するものであって、ヒートシールバーの設定温度毎にヒートシール強度を測定したヒートシールカーブを示す図である。なお、ここで使用した包材の構成は、PET12μm/PE20μm/LDPE40μmであり、フィルムのLDPE側の面を互いに接触するように2枚重ねてヒートシールを施す。
【0048】
図7中で、例えば「PA4(40rpm)」とあるのは、パッキングマシン4号機にて毎分40回でヒートシール包装を実施した場合のことであり、また、「ヒートシールテスター0.3MPa」とあるのは、テスター産業株式会社製のヒートシールテスター(TP−701−B)を用いて、圧力0.3MPaのもとでフィルム2枚を重ねてヒートシールを施した場合のことである。
【0049】
図7によれば、ヒートシールバーの設定温度毎にヒートシール強度が定まることが分かるので、従来は、この曲線を利用してヒートシールバーの設定温度を定めていた。この方法は、一般によく使用される包材のシール強度確認方法である。ただし、これは、1つの包材に対してであっても、機械の種類や、回転数等の運転条件、あるいはシール面の圧力ムラやヒートシールバー表面へのテフロン(登録商標)テープの貼り付け(ヒートシールバーへの包材付着防止が目的)等の諸条件により、多数のヒートシールカーブが存在してしまうことを示している。また、このヒートシールカーブは包材温度や外気、装置の暖まり等の外乱によっても変動するため、機械の運転条件の最適化には利用できなかった。
【0050】
そこで、本実施の形態では、以下に示す方法によって、運転条件の最適化を行う。まず、最適ヒートシール温度帯を求める。
【0051】
図8は、ヒートシール直後の包装体500のヒートシール箇所500aの温度と、その温度でヒートシールされた箇所を剥がそうとしたときに剥がれずに耐え得る引張り応力(ヒートシール強度)との関係を示すグラフである。すなわち、この曲線が温度−強度曲線である。ヒートシール強度は図7と同様にJIS(JIS Z 0238)により測定したものである。
【0052】
図8に示すグラフは、包装袋5の材質は図7の場合と同じにして、温度などが異なる環境で行った4つの実験のデータを表したもので、ヒートシール箇所500aの温度が90℃〜130℃あれば十分な引張り応力が得られていることが分かる(最適ヒートシール温度帯(ここではヒートシールによるものであるため最適ヒートシール温度帯と呼ぶ))。一方90℃以下であると疑似接着と呼ばれる状態で剥がれ易くなっており(疑似接着危険領域)、130℃以上であると、温度が高すぎて部分的にちぎれてしまったり(エッジ切れ)、ヒートシール部分が薄くなってしまったり(薄肉化)する問題が生じる(エッジ切れ薄肉化危険領域)。
【0053】
図8を参照すると、この曲線は、その傾きが変わる折れ曲がり点を3つ有する特性を有し、包装袋5のヒートシール箇所500aの温度が低いほうから見て、曲線が立ち上がる箇所の折れ曲がり点(第1の折れ曲がり点)を過ぎた次の折れ曲がり点(第2の折れ曲がり点)までが疑似接着危険領域であり、その後の折れ曲がり点(第3の折れ曲がり点)までが最適ヒートシール温度帯であり、その後がエッジ切れ薄肉化危険領域である。
【0054】
そこで、本実施の形態では、ヒートシールが良好に行われる温度範囲である最適ヒートシール温度帯として90℃〜130℃(図8参照)を制御部100の図示しない不揮発性メモリに記憶しておく。
【0055】
図9は、ヒートシールバー17aおよび17bの設定温度と、その際のヒートシール直後の包装体500のヒートシール箇所500aの温度との関係を示すグラフである。すなわち、この曲線が設定温度曲線である。
【0056】
この設定温度曲線は、包装体500をヒートシールした直後のヒートシール箇所500aの温度を、図8を参照して求めた最適ヒートシール温度帯にするためには、ヒートシールバー17aおよび17bの設定温度をどのようにすればよいかを求めるためのものである。この図9に、最適ヒートシール温度帯をあてはめることにより、最適設定温度帯を求めることができる。
【0057】
図9によれば、ヒートシールバーの設定温度xとヒートシール直後の包材温度yは、一次関数で表すことができ、y=0.8551x−11.676となっていることが分かる。それを書き換えるとx=1.1695y+13.655となり、例えばヒートシール直後の包材温度を100℃にしたいときは、yに100を代入して、x=130、つまりヒートシールバーを130℃に設定すれば良いということになる。
【0058】
【数1】
この例では、最適ヒートシール温度帯(y)が90℃〜130℃であるとすると、最適設定温度帯(x)はおよそ120℃〜170℃となる。
【0059】
図6の説明に戻り、ステップ(A−5)では、検出温度Tmが最適ヒートシール温度帯の下限値Ti(ここでは90℃)より高いかを判定する。
【0060】
検出温度Tmが最適ヒートシール温度帯の下限値Ti(ここでは90℃)より高くなければ(A−5:No)、不良品であると判定し(A−6)、その包装体500をフリッパ装置4bによってはじく(A−7)。その後、ヒートシールバー17aおよび17bの温度を高めるように、前述の数1における係数(ここでは、1.1695)を(Ti−Tm)に乗じ、これを設定温度Tsに足し、新たな設定温度Tsとし(A−8)、まだ運転中であれば(A−14:Yes)、ステップ(A−1)に戻り、ステップ(A−8)で更新した設定温度Tsを用いて処理を継続する。
【0061】
ステップ(A−5)において、検出温度Tmが最適ヒートシール温度帯の下限値Tiより高ければ(A−5:Yes)、次にステップ(A−9)では、検出温度Tmが最適ヒートシール温度帯の上限値Th(ここでは130℃)より低いかを判定する。
【0062】
検出温度Tmが最適ヒートシール温度帯の上限値Th(ここでは130℃)より低くなければ(A−9:No)、不良品であると判定し(A−10)、その包装体500をフリッパ装置4bによってはじく(A−11)。その後、ヒートシールバー17aおよび17bの温度を低めるように、前述と同じ係数(ここでは、1.1695)を(Tm−Th)に乗じ、これを設定温度Tsから引き、新たな設定温度Tsとし(A−12)、まだ運転中であれば(A−14:Yes)、ステップ(A−1)に戻り、ステップ(A−12)で更新した設定温度Tsを用いて処理を継続する。
【0063】
ステップ(A−9)において、検出温度Tmが最適ヒートシール温度帯の下限値Thより低ければ(A−9:Yes)、良品であると判定し(A−13)、その包装体500をコンベヤ4aによって搬送し、まだ運転中であれば(A−14:Yes)、ステップ(A−1)に戻る。
【0064】
ステップ(A−14)において、処理完了したならば(A−14:No)終了である。
【0065】
なお、本発明は、包装袋5としてさまざまな形態の袋に対して適用することができ、4方シール袋(全周にヒートシールを行うもの)、3方シール袋(3辺にヒートシールを行うもの)、3方背貼りシール袋(トップ+ボトム+背中の合掌貼りの3方でヒートシールを行うもの)、チューブロール袋(インフレーションチューブのトップとボトムでヒートシールを行うもの)、ガゼット袋などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明の一実施の形態による充填包装装置の概略を示す平面図である。
図2図1に示した充填包装装置1のヒートシール装置17を示す概略斜視図である。
図3図2に示したヒートシール装置17を側方から見た断面図である。
図4図1に示した充填包装装置1の温度センサ18を示す概略斜視図である。
図5】制御部100による制御に関する構成のブロック図をである。
図6】制御部100によるヒートシールバー17aおよび17bの温度制御処理を示すフローチャートである。
図7】ヒートシールバーの設定温度毎にヒートシール強度を測定した、従来のヒートシールカーブを示す図である。
図8】ヒートシール直後の包装体500のヒートシール箇所500aの温度と、ヒートシールされた箇所を剥がそうとしたときに剥がれずに耐え得る引張り応力との関係を示すグラフである。
図9】ヒートシールバー17aおよび17bの設定温度と、その際のヒートシール直後の包装体500のヒートシール箇所500aの温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
1 充填包装装置
2 給袋部
2a コンベヤ
3 本体部
4 排出部
4a コンベヤ
4b フリッパ装置
5 包装袋
7 充填部
8 ロータリー
15、16 爪
17 ヒートシール装置
17a、17b ヒートシールバー
18、19 温度センサ
20a、20b ヒータ
50 充填包装袋
100 制御部
500 包装体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9