(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射ビームの断面にパターンを与えてパターン付き放射ビームを形成することが可能であるパターニングデバイスを支持するための支持体であって、第1の流れ制限表面を有する第1の平面要素を備える支持体と、
基板の目標部分に前記パターン付き放射ビームを投影するための投影系と、
前記第1の流れ制限表面に対向する第2の流れ制限表面を備える第2の平面要素と、
前記第2の平面要素に対する前記支持体の移動を駆動する支持体駆動部と、を備え、
前記第1の流れ制限表面、前記第2の流れ制限表面、または、前記第1及び第2の流れ制限表面の両方は、前記第1及び第2の流れ制限表面間に凸部及び/又は凹部を備え、
前記支持体駆動部は、前記第2の平面要素に対し前記支持体をある方向に沿って直線的に駆動するよう構成され、
前記第1及び/又は第2の流れ制限表面の前記凸部及び/又は凹部は、流れに垂直な前記第1及び/又は第2の流れ制限表面単位幅につき、前記ある方向に垂直な流れに対してよりも前記ある方向に平行な流れに対して小さい流れ抵抗を提供するよう配設されている、リソグラフィ装置。
前記第1及び第2の流れ制限表面と、前記第1及び第2の流れ制限表面の一方または両方のすべての凸部及び/又は凹部とは、前記第1の流れ制限表面のいかなる部位も前記第2の流れ制限表面に接触することなく前記ある方向に沿って前記第1の流れ制限表面が前記第2の流れ制限表面に対し移動可能であるように配設されており、及び/又は、前記第1及び第2の流れ制限表面の各々は、使用時に前記放射ビームが通り抜ける閉ループ又は準閉ループを形成する、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
前記第1及び/又は第2の流れ制限表面の前記凸部及び/又は凹部は、流れに垂直な前記第1及び/又は第2の流れ制限表面単位幅につき、前記閉ループ又は準閉ループへの流入方向又は流出方向の流れに対して、前記ある方向に実質的に垂直な前記閉ループ又は準閉ループの一部分においてよりも前記ある方向に実質的に平行な前記閉ループ又は準閉ループの一部分において大きい流れ抵抗を提供するよう配設されている、請求項2に記載のリソグラフィ装置。
前記第1及び/又は第2の流れ制限表面は、前記ある方向に実質的に垂直な前記閉ループ又は準閉ループの一部分においてよりも前記ある方向に実質的に平行な前記閉ループ又は準閉ループの一部分において高密度の凸部及び/又は凹部を備えており、及び/又は、前記第1及び/又は第2の流れ制限表面は、前記ある方向に実質的に垂直な前記閉ループ又は準閉ループの側部において凸部及び/又は凹部を実質的に備えておらず、及び/又は、前記第1及び/又は第2の流れ制限表面は、細長い凹部を備え、各流れ制限表面において細長い凹部が存在しない領域は実質的に同一平面であり、前記細長い凹部は、前記ある方向に実質的に平行な前記閉ループ又は準閉ループの側部及び前記ある方向に実質的に垂直な前記閉ループ又は準閉ループの側部の両方に形成されており、及び/又は、少なくとも1つの凸部及び/又は凹部は、前記ある方向に平行な気体流れに対してよりも前記ある方向に垂直な気体流れに対して大きい抵抗を提供する外形を有しており、及び/又は、少なくとも1つの凸部及び/又は凹部は、前記ある方向に整列された細長い外形を有しており、及び/又は、前記第1及び/又は第2の流れ制限表面は、複数の凸部及び/又は凹部を備えており、及び/又は、前記第1及び/又は第2の流れ制限表面は、互いに均等に離れて配置された複数の凸部及び/又は凹部を備えており、及び/又は、前記第1及び/又は第2の流れ制限表面は、各細長凸部の幅が直接隣り合う細長凸部間の間隔より小さい複数の細長凸部、又は、各細長凸部の幅が直接隣り合う細長凸部間の間隔より大きい複数の細長凸部を備える、請求項2に記載のリソグラフィ装置。
少なくとも1つの凸部の高さ及び/又は少なくとも1つの凹部の深さは、前記第1及び第2の流れ制限表面間の平均距離の2%より大きい、請求項1から5のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
前記第1及び第2の流れ制限表面上の凸部の高さ又は前記第1及び第2の流れ制限表面上の凹部の深さは、前記支持体の可動範囲全体について、前記第1の平面要素に垂直な軸に沿って見たとき前記第1の流れ制限表面上の1つの凸部又は2つの隣接する凹部間の領域が前記第2の流れ制限表面上の1つの凸部又は2つの隣接する凹部間の領域と重なるときは常に、重なり合う凸部又は重なり合う領域が互いに接触しないようになっており、及び/又は、前記第1の流れ制限表面上の凸部及び/又は隣接凹部間領域と前記第2の流れ制限表面上の凸部及び/又は隣接凹部間領域とが、前記支持体の可動範囲全体について、前記第1の平面要素の平面に垂直な方向に沿って見たとき仮に重なるとしたら互いに接触する部分を生じさせるであろう高さを有する前記第1の流れ制限表面上のある1つの凸部の一部分又は2つの隣接する凹部間の領域の一部分と前記第2の流れ制限表面上のある1つの凸部の一部分又は2つの隣接する凹部間の領域の一部分との間に重なりが実質的に存在しないように配置されており、及び/又は、
前記ある方向に垂直であり前記第1の平面要素の平面に平行である方向から見たとき、前記第1の流れ制限表面上の少なくとも1つの凸部又は隣接凹部間領域が前記第2の流れ制限表面上の少なくとも1つの凸部又は隣接凹部間領域と重なる、請求項4から6のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
前記第1及び第2の流れ制限表面の一方は、前記第1及び第2の流れ制限表面の他方にある複数の凹部と各々が相対する複数の細長い凸部を備える、請求項1から8のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
前記複数の細長い凸部の各々は、当該細長い凸部に相対する複数の凹部の1つの中心に位置が合わされており、及び/又は、複数の細長い凸部の各々は、当該細長い凸部に相対する複数の凹部の1つの幅よりも小さい幅を有する、請求項9に記載のリソグラフィ装置。
前記複数の細長い凸部の各々の幅は、前記複数の細長い凸部のうち隣接する凸部間の間隔より小さく、及び/又は、一方の流れ制限表面の前記複数の凸部のうち隣接する凸部間の間隔と、他方の流れ制限表面の前記複数の凹部のうち隣接する凹部間の間隔との差は、前記複数の凸部の各々の先端と当該凸部に相対する凹部の底との間の距離の少なくとも2倍に等しい、請求項9または10に記載のリソグラフィ装置。
前記第1及び第2の流れ制限表面は、使用時に前記放射ビームが前記パターニングデバイスに到達した後に通る内部気体環境への気体流入を限定するよう構成されており、前記第1及び第2の流れ制限表面は、使用時に前記パターニングデバイスに到達する前に前記放射ビームが通る内部気体環境への気体流入を限定するよう構成されている、請求項1から11のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
更なる2つの流れ制限表面を備える更なる平面要素をさらに備え、前記更なる平面要素は前記第1及び第2の流れ制限表面間に位置しており、及び/又は、前記パターニングデバイスの領域における内部気体環境に気体を供給する気体供給システムをさらに備え、前記リソグラフィ装置は、前記内部気体環境を出る気体流れが前記第1及び第2の流れ制限表面間の隙間を通り抜けるよう構成されている、請求項1から12のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
前記第1及び第2の流れ制限表面は、使用中に発熱する前記支持体駆動部の構成要素に気体流れの少なくとも一部分を向けるよう配設されており、及び/又は、前記第1の平面要素は、内側平面要素と外側平面要素とを備え、前記内側平面要素の流れ制限表面は、前記内部気体環境から使用時に発熱する支持体駆動部の構成要素と前記外側平面要素との間の領域への気体流れのための導管を形成する少なくとも1つの凸部及び/又は凹部を備える、請求項13に記載のリソグラフィ装置。
放射ビームの断面にパターンを与えてパターン付き放射ビームを形成することが可能であるパターニングデバイスを、第1の流れ制限表面を有する第1の平面要素を備える支持体を使用して支持することと、
前記第1の流れ制限表面に対向する第2の流れ制限表面を備える第2の平面要素に対して、前記支持体及び前記第1の平面要素を移動させることと、
基板の目標部分に前記パターン付き放射ビームを投影することと、を備え、
前記第1の流れ制限表面、前記第2の流れ制限表面、または、前記第1及び第2の流れ制限表面の両方は、前記第1及び第2の流れ制限表面間の隙間に凸部及び/又は凹部を備え、
前記支持体は、前記第2の平面要素に対しある方向に沿って直線的に移動され、
前記第1及び/又は第2の流れ制限表面の前記凸部及び/又は凹部は、流れに垂直な前記第1及び/又は第2の流れ制限表面単位幅につき、前記ある方向に垂直な流れに対してよりも前記ある方向に平行な流れに対して小さい流れ抵抗を提供するよう配設されている、デバイス製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明のある実施の形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、
− 放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明系(イルミネータ)ILと、
− パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、いくつかのパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
− 基板(例えばレジストを塗布されたウェーハ)Wを保持するよう構成され、いくつかのパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
− パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つまたは複数のダイからなる)目標部分Cに投影するよう構成されている投影系(例えば屈折投影レンズ系)PSと、を備える。
【0030】
照明系は、放射の方向や形状の調整またはその他の制御用に、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、反射屈折光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0031】
支持構造MTは、パターニングデバイスMAを支持する。支持構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の構成、及びその他の条件(例えばパターニングデバイスが真空環境下で保持されるか否か)に応じた方式でパターニングデバイスを保持する。支持構造においてはパターニングデバイスを保持するために、機械的固定、真空固定、静電固定、または他の固定用技術が用いられる。支持構造は例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影系に対して所望の位置に位置決めされることを保証してもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
【0032】
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、例えば基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用され得るいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。このような場合には例えば、放射ビームのパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合がある。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスの特定の機能層に対応する。
【0033】
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、例えばマスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルなどがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
【0034】
本明細書では「投影系」という用語は、使用される露光放射あるいはその他の要因(例えば液浸や真空の利用など)に関して適切とされるいかなる投影系をも包含するよう広く解釈されるべきである。投影系には例えば屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影系」と同義に用いられ得る。
【0035】
ここに説明されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイや反射型マスクなどを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
【0036】
リソグラフィ装置は、2つ以上のテーブル(またはステージまたは支持体)、例えば、2以上の基板テーブル、あるいは1以上の基板テーブルと1以上のセンサテーブル又は計測テーブルとの組合せ、を備える形式であってもよい。このような多重ステージ型の装置においては追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。リソグラフィ装置は、2つ以上のパターニングデバイステーブル(またはステージまたは支持体)を有してもよく、これらは、基板テーブル、センサテーブル、及び計測テーブルと同様にして並行に使用されてもよい。
【0037】
リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部が液体で覆われるものであってもよい。この液体は比較的高い屈折率を有する例えば水などの液体であり、投影系と基板との間の空隙を満たす。液浸液は、例えばマスクと投影系との間などのリソグラフィ装置の他の空間に適用されるものであってもよい。液浸技術は投影系の開口数を増大させる技術として周知である。本明細書では「液浸」という用語は、基板等の構造体が液体に完全に浸されているということを意味するのではなく、露光の際に投影系と基板及び/またはマスクとの間に液体が存在するということを意味するに過ぎない。液浸は、液体に浸される基板等の構造体を含んでも、含まなくてもよい。参照符号IMは、液浸技術を実施するための装置が配置されうる場所を示す。こうした装置は、液浸液のための供給システムと、関心領域に液体を収容させる液体閉じ込め構造と、を含んでもよい。こうした装置は、基板テーブルを液浸液で完全に覆うように構成されることもあり得る。
【0038】
図1に示すようにイルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば放射源がエキシマレーザである場合には、放射源とリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは放射源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを備える。あるいは放射源が例えば水銀ランプである場合には、放射源はリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。放射源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射系と総称され得る。
【0039】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも半径方向外径及び/または内径の大きさ(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータはビーム断面における所望の均一性及び強度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられる。放射源SOと同様に、イルミネータILはリソグラフィ装置の一部とみなされてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一体的部分であってもよいし、リソグラフィ装置と別体であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置は、イルミネータILを搭載可能に構成されていてもよい。イルミネータILが取り外し可能であり、(例えばリソグラフィ装置の製造業者によって、または他の供給業者によって)別に提供されてもよい。
【0040】
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、当該パターニングデバイスによりパターンが付与される。パターニングデバイスMAを通過した放射ビームBは投影系PSに進入する。投影系PSは基板Wの目標部分Cにビームの焦点合わせをする。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを順次位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(
図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えば、マスクライブラリからのマスクの機械的交換後、あるいは走査中に行われる。一般に支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現される。ステッパでは(スキャナとは逆に)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイがある場合にはパターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0041】
図示の装置は例えば次のうちの少なくとも1つのモードで使用され得る。
1.ステップモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回の照射(すなわち単一静的露光)で目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写される目標部分Cのサイズを制限することになる。
2.スキャンモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間(すなわち単一動的露光の間)、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分の(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードでは、他のモード同様、パルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続する放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0042】
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別のモードでリソグラフィ装置を使用してもよい。
【0043】
上述のように、制御された内部気体環境をパターニングデバイスMAの領域において(パターニングデバイスMAの上方及び/又は下方に)維持することが望ましい。
【0044】
図2は、ある実施の形態を示しており、これは内部気体環境の制御が支持体MTの上方の領域でどのように実現されるかを示す。本例における内部気体環境4は、一方側にあるパターニングデバイスMA及び支持体MTと、他方側にある照明系ILの最終素子(及びそれを取り巻く設備類)2との間に位置する。よって、図示される内部気体環境4は、パターニングデバイスMAに到達する前に放射ビームが通過する容積である。
【0045】
本例においては、気体供給システム5が、出口7を介して内部気体環境4に気体を供給するために設けられている。この気体は、制御された組成及び/又は制御された流速を有して供給されてもよい。任意的に、内部気体環境内に高圧が維持される。この高圧により、模式的に矢印6で図示されるように、外向き気体流れが生じる。気体供給システム5及び/又は出口7は、パターニングデバイス支持体MTの内部に(図示)、及び/又はパターニングデバイス支持体MTの上方及び/又は下方の要素の内部に、搭載されていてもよい。例えば、気体供給システム5及び/又は出口7は、照明系ILの最終素子2内または最終素子2上に搭載されていてもよい。それに代えて、又はそれとともに、気体供給システム5及び/又は出口7は、投影系PSの第1素子3内または第1素子3上に搭載されていてもよい。
【0046】
流れ・速度の空間的な分布は、第1及び第2の平面要素8A、10Aによって制御することができる。第1平面要素8Aは、第1流れ制限表面8Bを提供するためのものである。第2平面要素10Aは、第2流れ制限表面10Bを提供するためのものである。平面要素8A、10Aは通常、第1及び第2の流れ制限表面8B、10Bが略平面である(すなわち、意図的に形成された凸部及び/又は凹部(後述)は無視すれば、標準的な工学的公差の範囲内の平面である)ように構成されている。平面要素8A、10Aの一方又は両方は、別個の要素として形成され、リソグラフィ装置の構成要素(例えば、第1平面要素8Aの場合には支持体MT)に取り付けられていてもよい。それに代えて、又はそれとともに、平面要素8A、10Aの一方又は両方は、ある別の構成要素の一体的部分として形成されてもよい。平面要素8A、10Aの一方又は両方は、Z軸に沿って互いに隔てられ実質的に平行である2つの平面を備えてもよい。あるいは、平面要素8A、10Aの一方又は両方は、1つの平面のみを備えてもよい(この場合、流れ制限表面8B、10Bであろう)。
【0047】
流れ制限表面8B、10Bは互いに対向しており、両者間の隙間を通る内向き及び外向きの気体流れに抵抗を与えるよう構成されている。内向き気体流れに抵抗を与えることは、内部気体環境4の汚染を低減するのに役立つ。外向き気体流れに抵抗を与えることは、気体供給システム5が実質的に安定な高圧を内部気体環境4に維持するのに役立つ。また、流れ制限表面8B、10Bは、流出気体が通過する比較的小さい隙間を提供する。これにより、流出気体の速度が増加される。この増速は、内側への汚染物質の拡散に対抗する。流出速度が速いことは下記の理由により利点がある。パターニングデバイス支持体MTがY方向に沿って第1の向きに移動するとき、支持体はその航跡に低圧領域を生じさせ、そこは、(内部気体環境への進入を阻止することが望まれている)環境気体で満たされる傾向にある。次いでパターニングデバイス支持体MTがY方向に沿って逆向きに反転走査するとき、環境気体の内部気体環境への顕著な流入を低減し最小化し又は完全に避けるためには、出力速度は少なくとも、パターニングデバイス支持体MTの走査速度より高速(望ましくは、走査速度と、低圧領域への環境気体流入最大速度との和より高速)であるべきことが望まれる。
【0048】
流れ制限表面8B、10Bは典型的には、実質的に互いに平行に配列される。流れ制限表面8B、10Bの間隔は、内部気体環境4における所与の高圧のための流出速度の所望の水準を与えるのに十分なほどに小さい。
【0049】
図3は、内部気体環境4がパターニングデバイスMAの下方に位置することを除いて、
図2の構成と同様の構成を示す。よって、図示される内部気体環境4は、放射ビームがパターニングデバイスMAに到達した後に通過する容積である。内部気体環境4は、一方側にある支持体MT及びパターニングデバイスMAと、他方側にある投影系PSの第1素子(及びそれを取り巻く設備類)3とに収容されている。本例においては支持体MTは、その下側の部位に形成された第1平面要素9Aを備える。第1平面要素9Aは、第1流れ制限表面9Bを有する。投影系PSの第1素子は、その上側の表面に取り付けられた第2平面要素11Aを有する。第2平面要素11Aは、第2流れ制限表面11Bを有する。第2流れ制限表面11Bは、第1流れ制限表面9Bに対向するよう構成されている。平面要素9A、11Aの一方又は両方は、Z軸に沿って互いに隔てられ実質的に平行である2つの平面を備えてもよい。あるいは、平面要素9A、11Aの一方又は両方は、1つの平面のみを備えてもよい(この場合、流れ制限表面9B、11Bであろう)。
【0050】
図2の構成及び
図3の構成の両方において矢印6は、気体供給システム5の出口7から内部気体環境4の中央領域を通り、更に流れ制限表面8B、9B、10B、11B間の隙間を通り、内部気体環境4の外側の領域に至る気体流れを模式的に示す。
【0051】
図2及び
図3の内部気体環境4は別々の位置に示されている。内部気体環境4は互いに隔離されている必要はない。内部気体環境4はつながっていることもあり得る。その場合、単一の気体供給システム5が設けられていてもよい。単一の気体供給システム5は、パターニングデバイスMAの上方又は下方のいずれかに単一の出口7を有してもよい。パターニングデバイスMA上方の内部気体環境4とパターニングデバイスMA下方の内部気体環境4との間で、パターニングデバイスMA上方の内部気体環境4とパターニングデバイスMA下方の内部気体環境4との接続によって、気体が流れることが可能であってもよい。ある実施の形態においては、単一の気体供給システム5は、複数の出口7を、パターニングデバイスMAの下方に、上方に、又は、下方及び上方に、有することもあり得る。
【0052】
図示の例においては、気体供給システム5及び出口7は支持体MTに組み込まれている。ある実施の形態においては、気体供給システム5及び/又は出口7は、他の構成要素に搭載されていてもよい。例えば、気体供給システム5及び/又は出口7は、照明系ILの最終素子(及びそれを取り巻く設備類)2及び/又は投影系PSの第1素子(及びそれを取り巻く設備類)3に取り付けられていることもあり得る。
【0053】
図に埋め込まれた軸により示されるように、
図2及び
図3の構成は、リソグラフィ装置の使用時の典型的な向きに対し横から見ている。紙面において縦方向はZ軸(通常、投影系PSの光軸に平行である)に平行である。紙面において横方向はX軸に平行である。X軸及びZ軸はともに支持体MTの特有の移動方向(Y方向、又はY軸に平行な方向とも称される)に垂直である。よってY軸は紙面に垂直である。
【0054】
図2及び
図3の例においては、第1流れ制限表面8B、9Bは、第2流れ制限表面10B、11Bに直接対向するよう構成されている(すなわち、両者間に他の要素が無い)。ある実施の形態においては、1つ又は複数の追加の平面要素が第1及び第2の流れ制限表面8B、9B、10B、11B間に設けられてもよい。
図4は、追加の平面要素13を1つ備える例示的構成を示す。
図5は、追加の平面要素13、15を2つ備える例示的構成を示す。追加の平面要素13、15の各々は、直接隣接する平面要素の流れ制限表面に対向する流れ制限上面及び流れ制限下面を有する。追加の平面要素を設置することは、導流及び/又は流れ抵抗制御に大きな柔軟性をもたらす。
【0055】
パターニングデバイスMAのための支持体MTには、支持体駆動部25が設けられている。支持体駆動部25は、
図1を参照して既に説明した位置決め装置PMの一部を構成するとみなされてもよい。支持体駆動部25は、上記特有の方向に沿って直線的に支持体MTを駆動するよう構成されていてもよい。
【0056】
図6は、ある流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの模式的な上面図であり、支持体MTの移動と外向き気体流れの方向との関係を示す。Y軸に沿う支持体MTの移動は、相対する流れ制限表面間に、対応する相対移動(矢印12)を引き起こす。例えば、
図2の構成においては、Y軸に沿う支持体MTの移動は第1及び第2の流れ制限表面8B、10B間に相対移動を引き起こす。
図3の構成においては、Y軸に沿う支持体MTの移動は第1及び第2の流れ制限表面9B、11B間に相対移動を引き起こす。
【0057】
流れ制限表面8B、9B、10B、11Bは、内部気体環境4から出る流れを制限するよう設けられている。したがって、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bは、使用時において放射ビームが通り抜ける閉ループ又は準閉ループを形成するよう構成されていてもよい(すなわち、閉ループ又は準閉ループは、使用時に放射ビームを少なくとも部分的に包囲する)。準閉ループは、方位角につきほとんどの方向で放射ビームを包囲するが流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの存在しない切れ目を含むループである。よって、Z軸に沿って見たとき、流れ制限表面8B、9B、10B、11BはパターニングデバイスMAを完全に又は部分的に包囲してもよい。矢印14、16は、流れ制限表面8B、10B間または流れ制限表面9B、11B間の隙間を外へと通る気体流れを示す。
【0058】
支持部MT及び内部気体環境4の外部気体環境に対する動きは、内部気体環境4に進入する汚染物質のリスクを高める。少なくとも次の2つの要因がこの現象に寄与しうる。第1に、支持体MTの前縁及び支持体MTに取り付けられたいずれかの流れ制限表面8B、9B(例えば、支持体MTが
図6の紙面で上向きに動くときには、縁17Aであり、支持体MTが
図6の紙面で下向きに動くときには、縁17Bである)は、外部気体環境から気体の向かい風を受ける。外部環境からの気体は、内部気体環境4に注意深く供給されている気体と同レベルの純度には制御されていない。そのため、外部気体環境から内部気体環境4への気体の進入を最小化または回避することが望まれる。前縁から見れば、そこに向かう正味の気体流れがある。前縁に向かう正味気体流れは、前縁でシールを突破して内部気体環境4に進入する汚染物質の可能性を高める。第2に、支持体MTの移動はその航跡に低圧の領域を生成する。この低圧領域とその周囲の領域との差圧によって、外部環境(比較的低純度の気体)から低圧領域に向かう正味の気体流れが生じる。支持体MTがその運動の終端に達して方向転換するとき、前縁は、低圧領域に向けて、低圧領域へと流入する気体の中を駆動されることになる。そのため、前縁に対する正味気体流れは支持体WTが方向転換するときに相当に大きくなる。よって、内部気体環境4の汚染物質リスクは更に高まる。
【0059】
開示された実施の形態によると、汚染物質のリスクは、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bによってもたらされる流れ抵抗を、流れに垂直な当該流れ制限表面の所与の幅について、Y軸に平行に向く流れ(例えば、支持体MTの上記特有の直線移動方向に実質的に平行であり、
図6においては矢印16)に対してよりもX軸に平行に向く流れ(例えば、支持体MTの上記特有の直線移動方向に実質的に垂直であり、
図6においては矢印14)に対して大きくするように調整することによって、低減される。これによって、内部気体環境4には所与の高圧があるために、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの前縁での外向き流速が大きくなる。したがって、前縁を通じて内部気体環境に進入する汚染のリスクが低減される。
【0060】
流れ抵抗は原理上、相対する流れ制限表面の間隔を前縁(例えば、X軸に平行な縁)よりも側縁(例えば、Y軸に平行)にて小さくすることによって、前縁よりも側縁にて大きくすることが可能であり得る。このことは、前縁で間隔を大きくすることによって、または、側縁で間隔を小さくすることによって、またはその両方によって、実現されうる。前縁で間隔を大きくすることは、それが全体的な高圧を低くする作用をもつという点で望ましくないかもしれない。側縁で間隔を小さくすることは、製造上の公差を厳しくするという点で望ましくないかもしれない。
【0061】
ある実施の形態においては、1つ又は複数の流れ制限表面には、少なくとも1つの凸部及び/又は凹部が、相対する流れ制限表面間の隙間において設けられてもよい。複数の凸部及び/又は凹部が1つ又は複数の流れ制限表面の各々に設けられてもよい。これら凸部及び/又は凹部が流れ制限表面間の隙間を通る気体流れを妨げる。これが実現されるのは、例えば気体流れ中の乱流レベルを高めることに因るかもしれない。これに代えて又はこれとともに、凸部及び/又は凹部が隙間を通る気体の運動距離を大きくするかもしれない。こうして凸部及び/又は凹部が流れ抵抗を大きくする。
【0062】
用語「凸部」及び「凹部」は、流れ制限表面の表面輪郭を表現するために使用されている。用語「凸部」は概して、流れ制限表面のある部位が他の部位よりも外向きに突き出していることをいう。用語「凸部」は概して、流れ制限表面のある部位が他の部位よりも内向きに突き出していることをいう。
【0063】
例示的な実施形態においては、流れ制限表面は、実質的に平面の(平らな)シートに溝またはその他の形状の凹部を削ることにより形成される。この場合当然、結果として得られる表面輪郭は、溝またはその他の形状の凹部の形状と、溝またはその他の形状の凹部間の区域の形状とを表現するであろう。しかし、溝またはその他の形状の凹部間の区域は凸部とも称することができるであろう。よって、この表面輪郭と同一のものを原理的には凸部と凸部間の区域というように表現することもできるであろう。
【0064】
一方、表面輪郭は、既に凸部が形成されているシートにおいてその凸部間の領域に凹部を削ることによって形成されてもよい。こうして3つの異なる高さをもつ表面輪郭が生成される。最低の高さは凹部の底に相当し、中間の高さは凹部と凸部との間の領域に相当し、最高の高さは凸部の頂に相当する。この種の構成においては、表面輪郭を凸部及び凹部の両方で表現することが自然であるかもしれない。一般化すると、表面輪郭は、4つ以上の異なる高さレベルを定義する凸部及び/又は凹部で形成されていてもよい。表面輪郭は、連続的な高さレベルの範囲を有する凸部及び/又は凹部で形成されていてもよい。
【0065】
次に述べる特定の実施例においては、例示される表面輪郭はいずれも2つの高さのみを有する。そのため表面輪郭は凸部のみで、あるいは凹部のみで表現することが可能である。しかし、本発明はそうした二値的な輪郭には限定されないものと理解されたい。
【0066】
用語「凹部」及び「凸部」を使用することは、特定の製造方法を暗示するものではない。特に、用語「凹部」の使用は、平面であったはずのシートから材料を削り又は除去したことを暗示するものではない。同様に、用語「凸部」の使用は、表面に材料が付加されたことを暗示するものではない。
【0067】
また、「凹部」のみでの表面輪郭の表現は、凹部に関連する表面積が凹部間の領域(凸部とも表現されうる)に関連する表面積より小さいことを暗示しない。同様に、「凸部」のみでの表面輪郭の表現は、凸部に関連する表面積が凸部間の領域(凹部とも表現されうる)に関連する表面積より小さいことを暗示しない。例えば、1つの狭く細長い凹部を備えるとして表現された平面は、2つの広く細長い凸部を有し、それらの間に狭い間隔をもつ平面とも表現されることがあり得る。
【0068】
凸部及び/又は凹部は、前縁よりも側縁にて大きい流れ抵抗を効率的に作るのに使用することができる。いくつかの手法が可能である。例えば、凸部及び/又は凹部の数または密度を前縁よりも側縁にて大きくしてもよい。所与の流れ制限表面の所与の領域における凸部及び/又は凹部の密度は、その領域において凸部及び/又は凹部の占める表面積の、その領域の全表面積に対する比として定義されうる。一般化すると、使用時の気体流れ方向が支持体MTの上記特有の移動方向(例えばY方向)よりも支持体MTの上記特有の移動方向に垂直な方向(例えばX方向)に平均的に近接する第1及び第2流れ制限表面間の領域に比べて、使用時の気体流れ方向が支持体MTの上記特有の移動方向に垂直な方向(例えばX方向)よりも支持体MTの上記特有の移動方向(例えばY方向)に平均的に近接する第1及び第2流れ制限表面間の領域において、凸部及び/又は凹部の数または密度を小さくしてもよい。この手法の例を
図7A及び
図7Bを参照して後述する。それに代えて、またはそれとともに、支持体MTの上記特有の移動方向(例えばY方向)に平行な流れよりも支持体MTの上記特有の移動方向に垂直な方向(例えばX方向)に平行な流れを制限するように、個々の凸部及び/又は凹部の形状が定められていてもよい。この手法の例を
図9乃至
図14を参照して後述する。
【0069】
すべての又は一部の凸部の高さ、及び/又はすべての又は一部の凹部の深さは、一組の流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの相対する流れ制限表面間の平均距離の2%より大きく、5%より大きく、または、10%より大きくてもよい。
【0070】
凸部及び/又は凹部は、それらが流れ制限表面間の相対移動を妨げないように構成されている。凸部及び/又は凹部は、一方の流れ制限表面上のある1つの凸部(2つの凹部間の領域)と別の流れ制限表面上のある1つの凸部(2つの凹部間の領域)とが相対移動によって接触しないように配設されている。
【0071】
干渉を防止する1つの方法は、各流れ制限表面上の凸部の高さ(又は凹部の深さ)を、支持体MTの移動範囲の全体で(流れ制限表面が、Z軸に沿って見たとき各表面の凸部(又は凹部間の領域)が重なるような相対位置にあるときでさえも)接触不能であるよう流れ制限表面間の間隔に対して小さくすることである。このような構成の例を
図10及び
図11に示す。
【0072】
支持体MTの移動中の凸部(又は凹部間の領域)どうしの干渉を防止する代替的な又は追加の手法の1つは、Z軸に沿って見たとき仮に重なりが生じるとしたら互いに接触するほどの高さをもつ凸部の一部分(又は、隣接凹部間の領域の一部分)どうしが決して重ならないように、凸部及び/又は凹部を配置することである。
図14はこの形式の構成例を示す。
【0073】
図7A及び
図7Bは、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの側縁のみへの凸部・凹部の配置を示す。よってこれらの実施形態は、前縁よりも側縁に沿って凸部・凹部の数又は密度を大きくするという手法の具体的適用を表す。
図7A及び
図7Bの構成においては、前縁は凸部又は凹部を1つも有しない。任意的に、前縁の表面は側縁の凸部(隣接凹部間の領域)の頂上と同一平面である。任意的に、前縁は、側縁の凸部間の領域(凹部)の底と同一表面である。
【0074】
図7Aにおいては、凸部又は凹部19は、細長く、Y軸に整列されている。流れ抵抗は、下記の2つの理由によって、Y軸に平行な流れに対してよりもX軸に平行な流れに対して大きい。(1)細長い外形の凸部又は凹部19は、細長方向に平行な(即ちY軸に平行な)流れよりも細長方向に垂直な(即ちX軸に平行な)流れを制限する。(2)凸部又は凹部19は側縁に位置するのみであり、そこではX軸に平行な流れが支配的である。
【0075】
図7Bにおいては、凸部又は凹部21は細長くない。しかし、凸部又は凹部21はやはり流れの抵抗を大きくする。凸部又は凹部21は側縁に位置するのみであるから、Y軸に平行な流れに対してよりもX軸に平行な流れに対して大きい抵抗を与える効果がある。
【0076】
図8A及び
図8Bは、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの前縁領域にも凸部又は凹部19が設けられている構成を示す。
【0077】
図8Aの例においては、凸部又は凹部19は、前縁領域においても同様に、細長くかつY軸に平行に整列されている。
図8Aにおける前縁領域の凸部又は凹部19の外形及び向きは、前縁に流れを向けることに役立つとともに、汚染流入を防ぐことにも役立つ。任意的に、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bのそれぞれにおいて、凸部又は凹部19の存在しない領域(例えば、隣り合う凸部19間又は凹部19間の領域、凸部又は凹部19と流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの外縁又は内縁との間の領域など)は、ある共通の平面内にある。この表面輪郭が生じるのは例えば、初期平面に溝を切ることにより凸部又は凹部19が形成された場合である。この場合、凸部又は凹部19は、前縁を通過する気体流れが利用可能である断面積を(凸部又は凹部の形成前の平面に対して)大きくする。断面積の増加は流れにとって、流れ抵抗を小さくする傾向がある。それと同時に、側縁における凸部又は凹部19は流れ抵抗を大きくする傾向がある。それは、側縁では凸部又は凹部19が流れに平行に向けられていないからである。平行な凸部又は凹部をある初期平面に製造するのは比較的効率的である。したがって、この手法によれば、容易に製造される構造体によって、側縁にて流れ抵抗を大きくし、前縁にて流れ抵抗を小さくすることができる。
【0078】
図8Bの例においては、凸部又は凹部19は同様に細長いが、前縁領域でX方向に平行に整列されている。この構成は、前縁領域で流れ抵抗を大きくすることに役立ち、内部気体環境における安定的な高圧の維持を促進する。
【0079】
図7A、
図7B、
図8A、
図8Bに示される凸部又は凹部19、21は原寸ではない。たいていの実用の状況においては、凸部又は凹部は、図示よりも相当に小さく、及び/又は相当に接近して配置されるだろう。
【0080】
代替的に、又は追加的に、凸部又は凹部19、21は斜めの角度で設けられていてもよい。より一般的には、例示的な実施の形態においては、細長い凸部又は凹部19、21は、Y軸に平行な気体流れに対してよりもX軸に平行な気体流れに対して大きい流れ抵抗を与えるよう向き及び外形が定められている。
【0081】
図9ないし
図14は凸部又は凹部のための例示的な構成を示す。細長い凸部又は凹部19に言及しているが、ある実施の形態においては、凸部又は凹部21に適用されてもよい。
図9ないし
図14のそれぞれにおいては、断面の輪郭が示されている。これらの例における表面輪郭はすべて二値的(2つの高さのみ)であるから、上述のように、凸部のみ、あるいは凹部のみで表現することができる。しかし、わかりやすくするために、凸部19A及び凹部19Bの両方に言及する。輪郭の断面は、凸部19A及び凹部19Bが整列されている方向に垂直である。概して、凸部19A及び凹部19BはY軸に実質的に平行に整列されるよう配設されることが望ましい。
図9ないし
図14に示される各構成においては、流れ制限表面の各組9B、10Bと8B、11Bとは互いに平行である。ある実施の形態においては、流れ制限表面の組9B、10Bと8B、11Bとは非平行に配設されてもよい。例えば、流れ制限表面の組9B、10Bと8B、11Bとはそれぞれが他方に対し傾斜して配設されてもよい。
図9ないし
図14に示される凸部19A及び凹部19Bにより定義される表面輪郭は、直線要素から形成されている。しかし、他の形状が用いられてもよい。例えば、凸部19A及び凹部19Bの一方又は両方は、傾斜角を有してもよいし、曲線要素を備えてもよい。
【0082】
図9は、ある一組の流れ制限表面9B、10B及び8B、11Bを示す。本例においては、凸部19A及び凹部19Bは、流れ制限表面9B、10B及び8B、11Bの組のうち、一方の流れ制限表面8B、11Bのみに形成されている(本例では下側の流れ制限表面であるが、凸部19A及び凹部19Bが同様に上側の流れ制限表面に形成されることもあり得る)。本例の凸部19A及び凹部19Bは均等な間隔で配置されている。ある実施の形態においては、間隔が異なる。加えて、各凸部19Aの幅28は各凸部19A間の間隔(各凹部19Bの幅)に等しい。ある実施の形態においては、凸部19A間の間隔は各凸部19Aの幅と異なる。凸部19Aの高さ24(凹部19Bの深さ)は本例では一定であるが、高さは異なってもよい。各凸部19Aの幅28は本例では一定であるが、幅28は異なってもよい。
【0083】
矢印20及び22は、凸部19A及び凹部19Bに垂直な流れ制限表面8B、9B、10B、11B間の隙間を通る流れが、凸部19A及び凹部19Bにどのような影響を受けるかを模式的に示す。凸部19A及び凹部19BがY軸に平行に整列されている場合、凸部19A及び凹部19Bに垂直な流れはX軸に平行である。図示されるように、凸部19A及び凹部19Bの存在は、層流であったはずの気体流れを乱流へと乱す原因となりがちである。したがって、X軸に平行な流れに関して流れ抵抗が大きくなる。よって気体の流速は小さくなる。反時計回りの渦が示されているが、これは純粋に模式的に、流れの乱れの概要を視覚的に示すものである。特定の条件下では、支配的な渦はこれと異なり、例えば時計回りであり、または、ある場所で時計回りであり他の場所で反時計回りであり得る。
【0084】
図10は、凸部19A及び凹部19Bのための、ある別の構成を示す。本例においては、凸部19A及び凹部19Bは、流れ制限表面9B、10B及び8B、11Bの組のうち、両方の流れ制限表面に形成されている。凸部19A及び凹部19Bの外形は
図9に示す凸部及び凹部と類似している。ある実施の形態においては、流れ制限表面9B、10B及び8B、11Bの組の一方又は両方の凸部19A及び凹部19Bの外形は、
図9を参照して説明した1つ又は複数の方法によって異ならせてあることもあり得る。本例においては、流れ制限表面9B、10B及び8B、11Bの組の両方の流れ制限表面上の凸部19A及び凹部19Bの外形は、同一である。加えて、凸部19A及び凹部19Bは、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの面に垂直な方向に互いに位置が合わせられている。ある実施の形態においては、凸部19A及び/又は凹部19Bの外形は、組のうち一方の流れ制限表面に対し他方の流れ制限表面では、異なり、及び/又は、位置がずらされている。
図13はこうした実施の形態の例を示す。
【0085】
図11は、凸部19A及び凹部19Bのための、ある別の構成を示す。本例においては、凸部19A及び凹部19Bは、凸部19Aの幅30が凸部19A間の間隔32(即ち、凹部19Bの幅)よりも実質的に小さいよう構成されている。
図10の例と同様に、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの組の両方の流れ制限表面上の凸部19Aの外形は、同一である。加えて、凸部19A及び凹部19Bは、流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの面に垂直な方向に互いに位置が合わせられている。ある実施の形態においては、凸部19A及び/又は凹部19Bの外形は、組のうち一方の流れ制限表面に対し他方の流れ制限表面では、異なり、及び/又は、位置がずらされている(例は
図13を参照)。ある実施の形態においては、凸部19A及び/又は凹部19Bの幅は、凸部19A間の間隔32(即ち、凹部19Bの幅)よりも実質的に大きいよう構成されている。
【0086】
図12は、ある点を除いて
図10に示す構成と同一の、ある別の構成を示す。流れ制限表面9B、10B及び8B、11Bの組の一方の凸部19A及び凹部19Bがその組の他方の流れ制限表面の凸部19A及び凹部19Bに対して互い違いの関係にある点で異なる。よって、一方の表面9B、10Bの凸部19Aが反対側の表面8B、11Bの凹部19Bに相対する。ある実施の形態においては、距離34と距離36とは等しい。
【0087】
図13は、ある点を除いて
図12に示す構成と同一の、ある別の構成を示す。一方の流れ制限表面の各凸部19Aの幅56が他方の流れ制限表面の各凸部19Aの幅58よりも小さい点で異なる。ある実施の形態においては、一方の流れ制限表面の各凹部19Bの幅60が他方の流れ制限表面の各凹部19Bの幅62よりも大きい。ある実施の形態においては、一方の流れ制限表面の凸部19A及び凹部19Bの幅が異なるとともに、他方の流れ制限表面の凸部19A及び凹部19Bの幅が同じである。ある代替的な実施形態においては、一方の流れ制限表面の凸部19A及び凹部19Bの幅が異なるとともに、他方の流れ制限表面の凸部19A及び凹部19Bの幅も異なる。ある実施の形態においては、ある流れ制限表面の凸部19Aの先端と別の流れ制限表面の凹部19Bの底との距離を表している距離34と距離36とは等しい。他の実施の形態においては、距離34と距離36とは等しくない。ある実施の形態においては、距離35はゼロより大きく、このことは、X方向に沿って見たとき、ある流れ制限表面の凸部19Aと別の流れ制限表面の凸部19Aとが重ならないことを意味する。ある実施の形態においては、一方の流れ制限表面の各凸部19Aは、他方の流れ制限表面の凹部19Bの中心に位置を合わせてある。ある実施の形態においては、一方の流れ制限表面の1つ又は複数の凸部19Aの各々は、他方の流れ制限表面のいずれの凹部19Bの中心からも位置をずらしてある。この形式のある実施形態においては、1つ又は複数の凸部19Aは、他方の流れ制限表面の凹部19Bの1つに対向する領域内に部分的に又は完全に包含されている。ある実施の形態においては、一方の流れ制限表面の各凸部19Aの幅は、他方の流れ制限表面で当該凸部19Aに相対する凹部19Bの幅より小さい。
【0088】
図13に示す形式のある実施の形態においては、凸部19A及び凹部19Bの寸法は、(図示される向きにおいて)横方向及び/又は(図示される向きにおいて)縦方向に充分な空間をもつように選択されている。ある実施の形態においては、ある流れ制限表面の凸部19Aと別の流れ制限表面の凸部19Aとが、面に垂直な方向(図示される向きにおいて縦方向)に重なる。こうした実施形態においては、距離35が負であるとみなしてもよい。この形式のある実施形態においては、相対する表面間の距離34及び/又は36は、互いに異なる流れ制限表面の凸部19A間の重なり距離(負の距離35の大きさ)以上である。ある実施の形態においては、一方の流れ制限表面の複数の凸部19Aの隣接凸部の間隔60と、他方の流れ制限表面の複数の凹部19Bの隣接凸部の間隔58との差は、(各凸部19Aの先端と相対する凹部19Bの底との間の)距離34及び/又は36の少なくとも2倍に等しい。
【0089】
図14は、組のうち一方の表面9B、10Bの1つ又は複数の凸部19AがX方向に沿って見たとき他方の表面8B、11Bの1つ又は複数の凸部19Aに重なるように、凸部19A(即ち、隣接凹部19B間の領域)の高さが大きい場合の例を示す。
図14の構成において重なりが生じるのは、上側表面9B、10Bの凸部19Aの高さ48と下側表面8B、11Bの凸部19Aの高さ40との合計が、流れ制限表面8B、9B、10B、11B間の最大距離50よりも大きいからである。凸部19A間の間隔38、46(凹部19Bの幅)は、凸部19Aの幅42、44より大きい。それによって、一方の流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの凸部19Aの幅42が相対する流れ制限表面8B、9B、10B、11Bの凹部19Bに収まるようになっている。
【0090】
任意的に、隣接凸部19Aの間隔の幅(即ち凹部19Bの幅)は、凸部19Aの高さ(即ち凹部19Bの深さ)より大きい。この構成は、隣接凸部19Aの間隔(凹部19Bの幅)が凸部19Aの高さ(凹部19Bの深さ)より小さい構成であった場合に対して、大きな流れ抵抗をもたらす傾向にある。大きな流れ抵抗が生じるのは例えば、誘起される乱流の程度が大きくなるからである。
【0091】
代替的に、又は追加的に、流れ制限表面間の間隔35は、凸部19A間の間隔の幅(凹部19Bの幅)より小さい。ここで、流れ制限表面間の間隔35は、各流れ制限表面において最接近の複数点を含む平面間の間隔を指す。典型的には、これらの平面は、凸部の最高点又は凹部間領域の最高点を含む。この構成は、流れ制限表面間の間隔が凸部19A間の間隔の幅(凹部19Bの幅)より大きい構成であった場合に対して、大きな流れ抵抗をもたらす傾向にある。大きな流れ抵抗が生じるのは例えば、誘起される乱流の程度が大きくなるからである。この定義による間隔35は
図9ないし
図12に示す各例に示されている。
【0092】
代替的に、又は追加的に、流れ制限表面間の間隔35は、凸部19Aの高さ(凹部19Bの深さ)より小さい。この構成は、流れ制限表面間の間隔が凸部19Aの高さ(凹部19Bの深さ)より大きい構成であった場合に対して、大きな流れ抵抗をもたらす傾向にある。大きな流れ抵抗が生じるのは例えば、誘起される乱流の程度が大きくなるからである。
【0093】
(上に定義した)流れ制限表面間の間隔35は、具体的な設計要求に従って変更可能である。しかし、通常、この間隔は、1mmないし3mmの範囲、例えば1.3mmないし1.8mmの範囲にあると予想される。
【0094】
上述の実施形態では、X軸に平行な流速を小さくすることによってY軸に平行な流速を大きくしている。Y軸に平行な流速を増すことの潜在的な利点を上述している。更なる利点が本書で以下に説明される。X軸に平行な流速を減らすこともまた、以下の理由により、有利であり得る。
【0095】
パターニングデバイスMAのための支持体MTの位置は正確に監視されるべきである。これは典型的には、支持体MT上の標的から反射された放射の特性(例えば干渉パターン)を計測する検出器を使用することにより達せられる。支持体MTが主にY軸に沿って移動するよう構成されているので、主にY軸に沿って並ぶ1つ又は複数の側部における支持体MTの部位と相互作用をする検出器を準備することがしばしば有利である。このようにして、支持体MTの関連部分に検出器を、支持体MTの運動範囲全体にわたって近接させることが可能である。そうではなくて仮に検出器が支持体MTの前縁又は後縁の1つ又は複数(例えば、X軸に平行な側部の1つ)と相互作用をするよう構成されていたとすると、支持体MTがY軸に沿って往復駆動されるとき支持体MTの関連部分と検出器との距離が変化するであろう。この運動のために、検出器と前縁・後縁との距離は平均すると、検出器が側縁と相互作用する場合に比べて大きくなるであろう。
【0096】
検出器の精度は、検出器と支持体MTの関連部分との間に存在する気体の1つ又は複数の特性の変動によって影響を受け得る。例えば屈折率の変動が精度に影響し得る。屈折率の変動は、例えば湿度の変動が一因であり得る。制御された内部気体環境内の気体の湿度水準は概して、外部環境の気体湿度より相当に低い。流れ制限表面間を通じて出る気体と外部環境からの気体との混合は、流れ制限表面の領域での湿度の変動につながりうる。こうした湿度変動は、もしそれが検出器の領域で生じるならば、検出器の精度を低下させ得る。
【0097】
本明細書の実施の形態においては、検出器(即ちY軸に平行な支持体MTの側部にある)に隣接する流れ制限表面の区域を通る流速を小さくすることによって、検出器の領域における例えば湿度変動を低減することができる。これら領域における流れはX軸に実質的に平行であり、本発明の実施形態による流れ制限表面は、この方向への流れを、Y軸に平行な流れに比べて流れにくくするよう具体的に設計されている。
【0098】
流れ制限表面を使用するシステムに生じ得る別の問題は、支持体駆動部25の過熱である。支持体駆動部25のある構成部品、例えば、支持体駆動部の磁石システムに関連するコイルは、使用時に熱を生成する。こうした発熱構成部品の上方に大きな平面要素を配置することによって、効率的な熱の輸送又は除去が制限されるかもしれない。熱の輸送又は除去の効率性が下がると、支持体駆動部25は望まれない高温に達しがちである。
【0099】
開示された実施の形態によれば、支持体駆動部25の過熱問題は次の2つの方法で対処されうる。これらは別々に適用されてもよいし、組み合わせて適用されてもよい。
【0100】
第1に、流れ制限表面は、詳しくは上述のように、X軸に平行な流れを犠牲にしてY軸に平行な流れを支援するよう構成されうる。したがって、内部気体環境内の所与の高圧のために、流れ抵抗がX軸及びY軸に関し一様であった場合に得られる流速よりも速い速度の流れ(Y軸に平行な流れ)を、流れ制限表面が生成する。この高速流れは、支持体駆動部25の発熱構成部品から熱を運ぶのを助けるよう用いられ得る。
【0101】
第2に、流れ制限表面は、高速流れの一部分を支持体駆動部25の発熱構成部品へと方向を変えるよう構成されていてもよい。
【0102】
図15は、支持体駆動部25の磁石システム54の表面に高速流れが向けられる、ある例示的な実施の形態を示す。磁石システム54を述べているが、ある実施の形態においては、これに加えて又はこれに代えて、コイルシステムにも適用されうる。本構成は、Y軸に沿ってではなくX軸に沿って見ている点を除いて、
図2に示すものと類似している。よって、
図15の紙面内において第1及び第2の流れ制限表面8B、10B間の外向き流れは、X軸ではなくY軸に実質的に平行である。
【0103】
本例においては、支持体MTの平面要素は、内側平面要素8A1と外側平面要素8A2とを備える。本例においては、内側平面要素8A1及び外側平面要素8A2はともに、内部気体環境4からの気体流れを導流するように、及び/又は当該気体流れに対する流れ抵抗を与えるように、相対する流れ制限表面10Bと協働するよう構成されている流れ制限表面8Bを備える。本例においては、外側平面要素8A2は、使用時に発熱する傾向にある磁石システム54の上方に位置する。この配置は例えば、熱の影響を受けやすいリソグラフィ装置の構成要素を磁石システム54から熱的に隔離するのに役立ちうる。これに代えて又はこれとともに、この配置は、導流のために、及び/または、所望の流れ抵抗を与えるために、流れ制限表面8Bの面積を大きくし得る。
【0104】
本例においては、流れ制限表面8B、10Bは、X軸に平行な流れに対してよりもY軸に平行な流れに対して小さい流れ抵抗を提供する。したがって、内部気体環境内に所与の高圧があるために流れ制限表面8B、10Bの
図15に示す部分を通る流速は、流れ制限表面8B、10Bの
図2に示す部分を通る流速より実質的に大きい。これにより、磁石システム54に接する流速が大きくなる。流速増加により(直接には圧力勾配の生成により、又は両者により)、磁石システムの周辺領域での気体循環の程度が増すようになる。循環が増えることで、磁石システムに熱せられた気体の磁石システムからの移動が促進される。したがって、流速増加は、磁石システム54の冷却改善に役立つ。
【0105】
加えて、
図15に示す実施形態においては、内側平面要素8A1の流れ制限表面8Bが、外側平面要素8A2の下側表面よりも下方にある内側平面要素8A1内の底位8Cへと下向きに突き出す細長い凹部(溝)を備える。このようにして、内側平面要素8A1の凹部は、磁石システム54と外側平面要素8A2との間の空間へとつながる導管を効果的に提供する。この導管によって、内部気体環境4から磁石システム54の上へと気体が、磁石システム54の上方に追加のプレート(外側平面要素8A2)が存在するにもかかわらず、直接的に流れる。磁石システム54の上への直接の気体流れは磁石システム54の冷却を改善する。
【0106】
外側平面要素8A2の流れ制限表面8Bは、内部気体環境4を出る気体流れの制御及び/または導流のために上述の凸部又は凹部を備えてもよい。あるいは、外側平面要素8A2の流れ制限表面8Bは、凸部又は凹部をまったく有しなくてもよい。
【0107】
図示の例においては、外側平面要素8A2の流れ制限表面8Bが、外側平面要素8A2の流れ制限表面8Bの上方に位置する流れ制限表面10Bと協働する。ある実施の形態においては、外側平面要素8A2は、その上側の流れ制限表面8Bの一部分のみが相対する流れ制限表面と協働するように構成されていてもよい(例えば、外側平面要素8A2は、部分的に流れ制限表面10Bを横方向に越えて突出するよう構成されていてもよい。)。あるいは、外側平面要素8A2は、その上側の流れ制限表面8Bのいずれの部分も相対する流れ制限表面と協働しないように構成されていてもよい(例えば、外側平面要素8A2は、完全に流れ制限表面10Bを横方向に越えて突出するよう構成されていてもよい。)。
【0108】
本例においては、流れ制限表面8B、10Bは、縁部(Y軸に実質的に平行な部位)を通る流速よりも前縁部位(Y軸に実質的に垂直な部位)を通る流速が大きくなるよう配設され、流れ制限表面8B、10Bは、外側平面要素8A2の下方領域への気体流出を導流する溝を備える。しかし、これらの特徴は、独立に作動させることが可能であり、個別に設けられることもあり得る。前縁部位で流速を大きくすることによって、(任意的に外側平面要素8A2下方にある)磁石システム54に直接流れを向けるための溝がたとえ存在しない場合であっても、磁石システム54の冷却の改善が可能である。同様に、(任意的に外側平面要素8A2下方にある)磁石システム54に直接的に導流する溝を設けることによって、側部領域の流速に対し前縁領域の流速をたとえ高めていない場合であっても、磁石システム54の冷却の改善が可能である。
【0109】
図示の例においては、内側平面要素8A1の流れ制限表面8Bにある溝の底位8C(深さ)は、実質的に平坦である(すなわち、流れ制限表面8Bの上側表面に平行である)。ある実施の形態においては、底位8Cは、勾配を有して、好ましくは、(内部気体環境4からの距離に応じて凹部の深さが増すように)内部気体環境4から離れるほうへと導く勾配を有して設けられている。こうした勾配は、外側平面要素8A2と磁石システム54との間の空間に向けて下向きへと流れ方向を変えるのに役立つだろう。任意的に、この勾配は、水平方向(又は流れ制限表面8Bの上面をなす平面)から7度未満の角度で傾斜している。この角度範囲は、凹部底面と流れとの間の望ましくない剥離を避けるのに役立つ。
【0110】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を例として説明しているが、リソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。基板は露光前または露光後においてトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は既に処理されている多数の処理層を含む基板をも意味する。
【0111】
ここでは特に光リソグラフィを本発明に係る実施形態に適用したものを例として説明しているが、本発明は例えばインプリントリソグラフィなど文脈が許す限り他にも適用可能であり、光リソグラフィに限られるものではない。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスにおけるトポグラフィが基板上に生成されるパターンを定義する。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に与えられたレジスト層に押しつけられ、その状態で電磁放射、熱、圧力またはそれらの組合せを与えることによりレジストが硬化される。レジストの硬化後にパターニングデバイスはレジストから取り外され、そこにパターンが残される。
【0112】
本明細書において「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約436nm、405nm、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)、極紫外(EUV)放射(例えば5乃至20nmの範囲の波長を有する)、及び、イオンビームまたは電子ビーム等の粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を示す。
【0113】
「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学素子、反射光学素子、反射屈折光学素子、磁気的光学素子、電磁的光学素子、及び静電的光学素子を含む1つまたは各種の光学素子の組み合わせを指し示すものであってもよい。
【0114】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。例えば、本発明は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式をとってもよいし、そのコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)であってもよい。
【0115】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、この開示に基づく請求項の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、当業者には明らかなことである。