(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の半導体製造装置は、サセプタ上に載置されるウェハの上面から成膜に必要なガスが供給され、サセプタの裏面側にヒータが設けられている、所謂縦型のエピタキシャル成長装置に適用されることが望ましい。以下、本発明の半導体製造装置について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0028】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における半導体製造装置の模式的な断面平面図である。
【0029】
図1に示すように、半導体製造装置1は、サセプタS上に載置されたウェハWの表面にSiC膜を形成する成膜室2と、第1の開閉部3を介して成膜室2に接続する搬送室4と、成膜室2から取り出された後、搬送室4を通り、第2の開閉部6を介して搬送されたサセプタSをクリーニングするクリーニング室5とを有する。
【0030】
成膜室2には、導入口18と排気口19が設けられている。導入口18は、配管(図示せず)を通じて反応ガスが入ったボンベや希釈ガスが入ったボンベに接続しており、必要に応じてこれらのガスが適量供給されるようになっている。また、排気口19は、配管(図示せず)を通じて真空ポンプ(図示せず)に接続しており、成膜室2内のガスがここから排出されるようになっている。
【0031】
成膜室2では、ウェハW上へのSiCエピタキシャル膜の形成が行われる。このため、成膜室2には、ヒータによる加熱機構(図示せず)と回転機構(図示せず)が設けられていて、サセプタS上にウェハWを載置し、ウェハWを加熱するとともに、サセプタSを介してウェハWを回転させる。この状態でウェハWの表面に反応ガスを接触させることで、ウェハWの表面にSiCエピタキシャル膜が形成される。
【0032】
ウェハWとしては、例えば、SiCウェハまたはSiウェハを用いることができる。あるいは、SiO
2(石英)ウェハなどの他の絶縁性基板や、GaAs(ガリウム砒素)ウェハなどの高抵抗の半絶縁性基板などを用いることも可能である。
【0033】
SiCをエピタキシャル成長させるには、ウェハWを1500℃以上の温度まで昇温する必要がある。このため、サセプタSには高耐熱性の材料を用いる必要があり、具体的には、等方性黒鉛の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってSiCを被覆したものなどが用いられる。サセプタSの形状は、ウェハWを載置可能な形状であれば特に限定されるものではなく、リング状や円盤状など適宜選択して用いられる。
【0034】
反応ガスとしては、例えば、シラン(SiH
4)やジクロロシラン(SiH
2Cl
2)などの珪素(Si)のソースガスと、プロパン(C
3H
8)やアセチレン(C
2H
2)などのカーボン(C)のソースガスと、キャリアガスとしての水素(H
2)ガスとを混合させた混合ガスが導入される。
【0035】
成膜室2内では、
図1に示すように、1枚ずつウェハWが搬入されて成膜処理が行われる。尚、複数のウェハWが搬入され、これらのウェハに対して同時に成膜処理が行われてもよい。この場合には、枚葉処理とバッチ処理を組み合わせた方式で成膜することになり、半導体製造装置1の生産性は向上する。
【0036】
上記の通り、SiCエピタキシャル成長工程では、ウェハWを非常に高温にする必要がある。しかし、ウェハWを高温の状態にするためにヒータで加熱すると、ヒータからの輻射熱は、ウェハWだけでなく、成膜室2を構成する他の部材にも伝わってそれらを昇温させてしまう。こうしたことは、特に、ウェハWやヒータのような高温となる部分の近傍に位置する部材や、成膜室2の内壁あるいは配管において顕著である。そして、成膜室2内に生じた高温部位に反応ガスが接触すると、高温加熱されたウェハWの表面と同様に反応ガスの熱分解反応が起こる。
【0037】
例えば、ウェハWの表面にSiCエピタキシャル膜を形成しようとする場合、反応ガスとして、Si源としてのシラン(SiH
4)、C源としてのプロパン(C
3H
8)、キャリアガスとしての水素ガスなどを含んで調製された混合ガスが用いられる。反応ガスは、導入口18を通じて成膜室2の上部から成膜室2内に供給され、高温加熱されたウェハWの表面に到達して分解する。
【0038】
しかしながら、上記組成の反応ガスは、反応性に富んでいるために、一定の温度条件を満たす部材に接触すると、ウェハW上でなくとも分解反応を起こしてしまう。その結果、成膜室2内の部材、具体的には、サセプタS、成膜室2の内壁、成膜室内のガスを排気する配管などに、反応ガスに由来する多結晶と思われるSiC膜が付着する。この膜が剥離するとダストとなり、ウェハW上に形成されるエピタキシャル膜に欠陥を生じさせるので、付着した膜をクリーニング除去する作業が必要になる。
【0039】
図2を用いてこの様子を説明する。
図2(a)は、SiC膜を形成する前のサセプタSとウェハWを示す図である。ここで、サセプタSは、黒鉛S
1とこれを被覆するSiC膜S
2とを用いて構成されている。一方、
図2(b)は、SiC膜を形成した後のサセプタSとウェハWを示す図である。これらに示すように、SiCエピタキシャル成長工程によって、ウェハWの上に単結晶のSiC膜301が形成されるとともに、サセプタSの表面には多結晶と思われるSiC膜302が形成される。
【0040】
そこで、本実施の形態では、後述するように、クリーニング室5においてサセプタSに付着したSiC膜302を除去する。一方、成膜室2の内壁や配管に付着したSiC膜については、成膜室2内が高温、具体的には400℃以上の温度となっている状態で、導入口18からClF
3ガスなどのエッチングガスを供給することにより、エッチング除去することができる。
【0041】
成膜室2の内壁には、サセプタSと同様に、等方性黒鉛の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってSiCを被覆したものが用いられる。そこで、内壁に付着したSiC膜を除去する際のエッチング量は、時間で管理することが好ましい。内壁に付着するSiC膜は、内壁を構成する緻密な多結晶のSiC膜とは異なり、緻密でない多結晶の膜と考えられる。この緻密でない多結晶のSiC膜のエッチングレートは、緻密な多結晶のSiC膜に比較して速くなると予想されるが、同一成分であるので、100%のClF
3ガスを用いた場合の選択比は十分でないことが考えられる。そこで、クリーニング処理には、水素ガスで希釈した10%〜20%濃度のClF
3ガスをエッチングガスとして用いる。単結晶のSiC膜のエッチングには、通常、100%ClF
3ガスが使用されるが、この場合は、希釈したClF
3ガスを用いることで、緻密な多結晶のSiC膜と、緻密でない多結晶のSiC膜との間のエッチングレートに明確な差を設けることができる。つまり、エッチングレートの差を利用し、エッチングの終点を時間で管理することで、内壁を構成するSiC膜を実質的にエッチングすることなく、内壁に付着したSiC膜をエッチング除去することができる。尚、配管に付着した緻密でない多結晶のSiC膜については、配管を取り外して適当な薬液でクリーニングする。
【0042】
成膜室2内での成膜処理が終了した後は、第1の開閉部3を開き、搬送用ロボット17によってウェハWを搬送室4に搬送する。
【0043】
搬送室4にも、導入口15と排気口16が設けられている。導入口15は、配管(図示せず)を通じて窒素ガスが入ったボンベに接続しており、搬送室4内に窒素ガスを導入できるようになっている。また、排気口16は、配管(図示せず)を通じて真空ポンプ(図示せず)に接続しており、搬送室4内のガスがここから排出されるようになっている。
【0044】
搬送用ロボット17のサセプタSやウェハWが載置される部分には、回転部材17aが接続していて、支点部17bからサセプタSやウェハWが配置される部分までの距離を調節できるよう伸縮可能に構成されている。搬送用ロボット17は、例えば、カーボンにシリコンコートされた耐熱性の材料で構成されている。
【0045】
搬送用ロボット17のウェハWやサセプタSが載置される部分には、加熱手段としてヒータまたはランプを設けることができる。これにより、成膜室2またはクリーニング室5から取り出された直後の高温のウェハWまたはサセプタSが載置されても、急激な温度変化を生じさせないようにすることができる。例えば、サセプタSやウェハWが配置される部分に、電熱線を可撓性の耐熱樹脂で被覆したテープ状の構造を有するヒータを設け、電熱線に電流を流すことで発熱させて、ウェハWやサセプタSが配置される部分の温度を調節可能とすることができる。尚、搬送用ロボット17に加熱手段を設けずに、搬送室4の全体を外側から加熱可能な構造としてもよい。
【0046】
ウェハWを搬送室4内に搬送した後は、第3の開閉部11を開け、搬送用ロボット17によって、ウェハWを第1のロードロック室8内に搬送する。
【0047】
第1のロードロック室8には、導入口13と排気口14が設けられており、真空ポンプなどを用いて導入口13から第1のロードロック室8内のガスが排出できるとともに、排気口14を通じて第1のロードロック室8内に窒素ガスやアルゴンガスなどを導入できるようになっている。また、第1のロードロック室8には、第4の開閉部12が設けられていて、第4の開閉部12を開くことにより、外部から第1のロードロック室8内へウェハWを搬入したり、第1のロードロック室8から外部へウェハWを搬出したりできるようになっている。
【0048】
成膜処理後のウェハWを第3の開閉部11から第1のロードロック室8内に搬送した後は、第3の開閉部11を閉じ、導入口13から窒素ガスを流して第1のロードロック室8内を大気圧まで戻す。次いで、第4の開閉部12を開けて、ウェハ搬送用ロボット10でウェハWをカセット27に収納する。一方、成膜処理前のウェハWについては、第3の開閉部11を閉じた状態で第4の開閉部12を開き、ウェハWを第1のロードロック室8内に搬入する。第1のロードロック室8を設けることにより、外部の空気が、搬送室4、成膜室2およびクリーニング室5に直接侵入しないようにすることができる。特に、空気中の水分や有機物が成膜室2内に入り込んで、成膜処理に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0049】
本実施の形態の半導体製造装置1では、搬送室4に第2の開閉部6を介してクリーニング室5が接続している。クリーニング室5では、成膜室2での成膜処理を終えたサセプタSに対するクリーニングが行われる。すなわち、クリーニング室5は、SiCのエピタキシャル成長過程でサセプタSに付着したSiC膜を除去する目的で設けられる。半導体製造装置1にクリーニング室5を設けることで、成膜室2内で成膜処理を中断してクリーニング処理を行う必要がなくなる。つまり、成膜室2で成膜処理を行っている間にクリーニング室5でクリーニング処理を並行して行えるので、成膜処理の効率を高めることができる。
【0050】
クリーニング室5には、導入口20と排気口21が設けられている。導入口20は、配管(図示せず)を通じてエッチングガスが入ったボンベに接続しており、クリーニング処理を行う際にクリーニング室5にガスが適量供給されるようになっている。また、排気口21は、配管(図示せず)を通じて真空ポンプ(図示せず)に接続しており、クリーニング室5内のガスがここから排出されるようになっている。
【0051】
エッチングガスとしては、ClF
3ガスが好ましく用いられる。クリーニング室5にClF
3ガスが供給されると、下記式(1)にしたがってSiCと反応する(Y.Miura, H.Habuka, Y.Katsumi, S.Oda, Y.Fukai, K.Fukae, T.Kato, H.Okumura, K.Arai, Japanese Journal of Applied Physics. Vol.46, No.12, 2007, pp.7875−7879)。この反応により、サセプタSに付着したSiC膜がエッチング除去される。
【0052】
また、クリーニング室5には、加熱手段が設けられており、クリーニング処理の際にサセプタSを加熱できるようになっている。加熱手段としては、例えば、SiC材料を用いて構成された抵抗加熱用のヒータが挙げられ、クリーニング室5内に載置されたサセプタSを下方から加熱するよう構成することができる。
【0053】
ClF
3ガスによるSiCのエッチングは高温下で進行する。本実施の形態では、クリーニング処理を400℃以上で行うことが好ましい。また、あまり高温にするとクリーニング室5全体に高い耐熱性が必要になることから、クリーニング処理は600℃以下で行うことが好ましい。
【0054】
さらに、クリーニング室5には、クリーニングの際にサセプタSを回転させる回転手段が設けられていることが好ましい。
【0055】
上記式(1)の反応を効率よく進めるには、反応生成物である3種類のガス(3SiF
4、3CF
4、4Cl
2)を効率よく除去しながら、エッチングガスであるClF
3ガスを効率よくSiC表面に供給する必要がある。そこで、半導体製造装置1では、エッチングガスをクリーニング室5の内部に供給する際には、サセプタSの上方からエッチングガスが供給されるようにするとともに、サセプタSを回転させながらクリーニングすることが好ましい。サセプタSを高速で回転させるほど、反応ガスが反応を起こす領域(反応境界層)の厚さが薄くなる。すると、生成ガスが除去されやすくなる一方、反応ガスが供給されやすくなるので、式(1)のエッチング反応が起こりやすくなる。
【0056】
クリーニング処理は、例えば、次のようにして行われる。
【0057】
まず、クリーニングが必要なサセプタSをクリーニング室5の内部に搬入する。
【0058】
次いで、成膜室2内での成膜処理の際にサセプタS上でウェハWが載置されていた個所に、ダミーウェハを載置する。ウェハWが載置されていた部分のサセプタS上にSiC膜は付着しないので、ダミーウェハを置かずにクリーニング処理を行うと、この部分のサセプタSを構成するSiC膜がエッチングされてしまう。したがって、ダミーウェハを載置して、サセプタSを構成するSiC膜がエッチングされないようにする。尚、ダミーウェハは、第1のロードロック室8を通じて搬送室4に搬入し、搬送用ロボット17によってクリーニング室5に搬送する。
【0059】
次に、50rpm程度の回転数でサセプタSを回転させる。また、加熱手段によってサセプタSを加熱する。そして、放射温度計などを用いた温度測定でサセプタSの温度が400℃以上に達したことを確認した後は、徐々にサセプタSの回転数を上げていく。回転数は、300rpm〜900rpmとすることが好ましい。但し、クリーニング処理の際の回転数には、成膜処理における回転数ほどの厳密性は要求されない。
【0060】
続いて、サセプタSの上方からエッチングガスを供給し、エッチングガスをサセプタSの方に流下させる。このとき、シャワープレートなどの整流板を介してエッチングガスを整流することが好ましい。エッチングガスは、サセプタSに向かってほぼ鉛直に流下して、いわゆる縦フローを形成し、サセプタSの表面上で整流状態となる。そして、加熱されたサセプタSの表面にエッチングガスが到達すると、式(1)の反応を起こしてサセプタSの表面に付着したSiC膜をエッチングする。
【0061】
クリーニング室5でのクリーニング処理は、成膜室2での成膜処理が1回終わる毎にサセプタSを成膜室2から搬出して行うことができる。また、成膜処理が所定の回数に達するまではウェハWのみを成膜室2から搬出し、所定の回数になったところでウェハWと一緒にサセプタSを搬出した後、サセプタSをクリーニング室5に搬送してクリーニングすることも可能である。
【0062】
サセプタSを搬出するタイミングは、サセプタSに付着したSiC膜に起因するパーティクルが発生し始めるより前に行う事が必要である。パーティクルの発生と、サセプタSに付着したSiC膜の厚さとの間の関係性を予め把握できれば、サセプタSの表面に付着したSiC膜の厚さによって決定することもできる。例えば、サセプタS上に付着したSiC膜の厚さが100μmとなったところで、ウェハWと一緒に取り出して、サセプタSをクリーニングすることができる。本発明によれば、サセプタSをどのタイミングで搬出しても成膜処理の効率に殆ど影響を与えることがない。
【0063】
クリーニング処理の終了は、時間で管理することができる。サセプタSの表面に付着するSiC膜は、サセプタSを構成する緻密な多結晶のSiC膜(黒鉛の表面にコートされたSiC膜)とは異なり、緻密でない多結晶の膜と考えられる。ここで、緻密な多結晶とは、緻密でない多結晶に比べて多結晶の中で単結晶に近いことを意味する。
【0064】
この緻密でない多結晶のSiC膜のエッチングレートは、緻密な多結晶のSiC膜に比較して速くなると予想されるが、同一成分であるので100%ClF
3ガスを用いた場合の選択比は十分でない事が考えられる。そこで、クリーニング処理には、水素ガスで希釈した10%〜20%濃度のClF
3ガスをエッチングガスとして用いる。これにより、緻密な多結晶のSiC膜と、緻密でない多結晶のSiC膜との間のエッチングレートに明確な差を設けることができる。
【0065】
しかしながら、ClF
3ガスに上記組成のものを用いてもサセプタSを構成するSiC膜のエッチングを完全に防ぐことは難しい。このため、クリーニング処理を繰り返すうちに下地の黒鉛が露出するおそれがある。
【0066】
図2(c)は、クリーニング処理後のサセプタSとダミーウェハW’とを示す図である。SiCエピタキシャル成長工程でサセプタSの表面に付着したSiC膜302は除去されており、さらに、下層のSiC膜S
2の一部も除去されている。クリーニング処理を繰り返すことによって、このままSiC膜S
2のエッチングが進行して行くと、やがて黒鉛S
1が露出するおそれがある。
【0067】
そこで、本実施の形態においては、クリーニング処理を終えた後に、サセプタSに対してSiC膜の再生処理を行う。具体的には、クリーニング室5内でサセプタS上にSiC膜をエピタキシャル成長させる。このときも、クリーニング処理の場合と同様に、サセプタS上にダミーウェハを載置しておくことが好ましい。そして、ダミーウェハ下のSiC膜と同程度の膜厚となるまでSiC膜をエピタキシャル成長させることで、サセプタS表面のSiC膜を再生させることができる。尚、この再生処理は、クリーニング処理を終える毎に行ってもよく、所定回数のクリーニング処理を終える毎に行ってもよい。
【0068】
尚、サセプタSにおいて、黒鉛の表面にコートされるSiC膜の膜厚は、100μm〜150μm程度である。また、ダミーウェハ下のSiC膜とそれ以外の部分のSiC膜との膜厚差は、触針式の膜厚測定計を用いて測定することができる。したがって、この膜厚差に相当する膜厚のSiC膜を形成すればよい。
【0069】
サセプタS上へのSiC膜の形成に対しては、SiCエピタキシャルウェハを作製する際の成膜条件のような厳密性は要求されない。すなわち、温度などの管理の許容幅は、サセプタS上へのSiC膜の形成の方が大きくなる。下記にその一例を挙げる。この条件でのSiC膜の成膜速度は、約1μm/分であった。
成膜温度:1500℃
反応ガス:ジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)、プロパン(C
3H
8) 、水素(H
2)
圧力 :4×10
−4Pa
【0070】
サセプタSについてSiC膜の再生処理を終えた後は、クリーニング室5から成膜室2内に戻し、引き続きSiCエピタキシャルウェハの作製を行うことができる。
【0071】
また、場合に応じて、再生処理後のサセプタSを、搬送室4から第5の開閉部22を通じて第2のロードロック室24に搬送し、第6の開閉部23から外部に搬出してもよい。
【0072】
尚、クリーニング処理までを終えた段階のサセプタSについても同様であり、クリーニング室5から搬送用ロボット17によって搬送室4に搬送した後、成膜室2に戻してSiCエピタキシャルウェハの製造に使用してもよい。さらに、クリーニング室5から搬送室4を経た後、第5の開閉部22を通じて第2のロードロック室24に搬送し、第6の開閉部23から外部に搬出してもよい。
【0073】
第2のロードロック室24には、排気口25と導入口26が設けられており、真空ポンプなどを用いて排気口25から第2のロードロック室24内のガスが排出できるとともに、導入口26を通じて第2のロードロック室24内に窒素ガスやアルゴンガスなどを導入できるようになっている。また、第2のロードロック室24に設けられた第6の開閉部23を開くことにより、外部から第2のロードロック室24内へサセプタSを搬入したり、第2のロードロック室24から外部へサセプタSを搬出したりできるようになっている。
【0074】
サセプタSを第5の開閉部22から第2のロードロック室24に搬送した後は、第5の開閉部22を閉じ、導入口26から窒素ガスを流して第2のロードロック室24内を大気圧まで戻す。次いで、第6の開閉部23を開けて、サセプタ搬送用ロボット7でサセプタSをカセット28に収納する。
【0075】
一方、カセット28からサセプタSを第2のロードロック室24に搬入する際には、第5の開閉部22を閉じた状態で第6の開閉部23を開き、サセプタSを第2のロードロック室24内に搬入する。次いで、第6の開閉部23を閉じた後、真空ポンプなどを用いて排気口25から第2のロードロック室24内の空気を排出する。次いで、導入口26を通じて第2のロードロック室24内に窒素ガスを導入する。尚、窒素ガスに代えてアルゴンガスなどを導入してもよい。その後、第5の開閉部22を開いて搬送室4内にサセプタSを搬送する。
【0076】
第2のロードロック室24を設けることにより、外部の空気が、搬送室4、成膜室2およびクリーニング室5に直接侵入しないようにすることができる。特に、空気中の水分や有機物が成膜室2内に入り込んで、成膜処理に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0077】
図3は、本実施の形態のクリーニング室の一例であり、その構成を示す模式的な断面図である。このクリーニング室は、SiC膜の再生処理を行う再生室を兼ねている。尚、本実施の形態においては、クリーニング室とは別に再生室を設けてもよく、また、成膜室が再生室を兼ねていてもよい。但し、クリーニング室が再生室を兼ねる構成の方が汎用性があり、また、成膜室へのダストの持ち込みを低減できるという利点もある。
【0078】
図3において、201はチャンバ、202はチャンバ内壁を被覆して保護する中空筒状のライナ、203a、203bはチャンバを冷却する冷却水の流路、20はClF
3ガスを導入する導入口、21は反応後のClF
3ガスの排気口、Sはサセプタ、208は支持部(図示せず)に支持されてサセプタSを加熱するヒータ、209はチャンバ201の上下部を連結するフランジ部、210はフランジ部209をシールするパッキン、211は排気口21と配管を連結するフランジ部、212はフランジ部211をシールするパッキンである。
【0079】
ライナ202の頭部には、シャワープレート220が取り付けられている。シャワープレート220は、サセプタSの表面にエッチングガス225を均一に供給する機能を備えたガス整流板である。
【0080】
クリーニング室5では、サセプタSを回転手段で回転させながら、加熱手段としてのヒータ208で加熱して、クリーニング処理を行う。すなわち、搬送室4から搬送されたサセプタSは、略円筒状の回転部232の上部に載置される。回転部232は、上部に比べ下部が細く形成されており、チャンバ201の外で回転機構(図示せず)に接続している。そして、回転部232の水平断面の中心を直交する線を回転軸として所定の回転数で回転する構造となっている。クリーニングを行う際には、サセプタSが回転した状態で、エッチングガス供給手段により、サセプタSの上方からSiC膜のエッチングガスを供給する。具体的には、導入口20からシャワープレート220の貫通孔221を介して、チャンバ201内にエッチングガス225を供給する。ライナ202の頭部231は、サセプタSが載置されるライナ202の胴部230より内径が小さくなっており、エッチングガス225は、頭部231を通過してサセプタSの表面に向かって流下する。
【0081】
クリーニング室5において、サセプタSは、下方に設けられたヒータ208によって加熱される。尚、ヒータの形状は
図3の構造に限定されるものではなく、また、インヒータとアウトヒータの2種類のヒータによって加熱するようにしてもよい。
【0082】
図3において、サセプタSは円盤状を呈しており、成膜室2での成膜処理の際には、サセプタSの上にウェハWが載置される。尚、サセプタSの形状はこれに限られるものではなく、例えば、リング状であってもよい。また、サセプタSは、
図4に示す形状とすることもできる。
【0083】
図4は、サセプタSの他の例であり、ウェハWが載置された状態の断面図および対応する上面図である。
図4において、サセプタSは、ウェハWを支持する第1の部材103と、第1の部材103に支持されてウェハWとの間に所定の隙間を置いて配置される第2の部材107とからなる。
【0084】
成膜の際には、成膜室2に設けられるSiC製の略円筒状の回転部材(図示せず)の上部に第1の部材103が配置される。第1の部材103は中央に開口部を有するリング状であり、その内端部には、上下二段の座ぐりが形成されている。上段の座ぐりである第1座ぐり103aには、ウェハWが載置される。第1座ぐり103aの内径は、ウェハWの直径よりも僅かに大きく形成されおり、ウェハWの略水平方向への移動が拘束される。第1の部材103の上面から第1座ぐり103aの水平な面までの深さは、ウェハWの厚さと略同一かまたはこれ以下に形成されており、第1座ぐり103aにウェハWが載置されると、ウェハWの上面は、第1の部材103の上面と略同じ位置、または、上面よりも高い位置になる。よって、ClF
3ガスがウェハWの中心付近から周縁部方向へ流れるとき、第1座ぐり103aの垂直な面にガス流が当たらず、スムーズなガス流が形成される。
【0085】
サセプタSにおいて、下段の座ぐりである第2座ぐり103bには第2の部材107が載置される。第2の部材107は、リング状の第1の部材103の中央に形成された開口部よりも直径が大きく、またその周端部はつば状に形成されているため、第2座ぐり103bの水平な面に懸架するように載置される。つまり、第1の部材103の開口部を第2の部材107で蓋をしたような状態となる。第2の部材107が第2座ぐり103bに載置され、第1の部材103と組み合わされることで、サセプタSが完成する。
【0086】
サセプタSが
図3や
図4に示すような形状であると、クリーニング室5において、エッチングガスが供給されてクリーニング処理が行われる領域と、回転部232内の下部の領域とが実質的に区画される。これにより、回転部232内に配置された機械や電気配線がエッチングガスによって腐食されるのを防ぐことができる。
【0087】
また、成膜室2の回転機構や反応ガス供給機構は、
図3に示すクリーニング室5内の構成と同様にすることができるので、サセプタSが上記形状であれば、成膜室2においても同様の効果が得られる。すなわち、成膜が行われる領域と、回転部内の下部領域とが実質的に区画されるので、回転部内に配置された機械や電気配線を構成する金属が反応ガスによって腐食されるのを防ぐことができる。また、かかる金属に由来する不純物が成膜の行なわれる領域に入りにくくなるので、ウェハW上に形成されるエピタキシャル膜に不純物が混入するのを防いで、エピタキシャル膜の品質低下を抑制することができる。
【0088】
上記したように、クリーニング室5では、サセプタSを回転させながらヒータ208で加熱してクリーニング処理を行う。すなわち、サセプタSが回転した状態で、導入口20からシャワープレート220の貫通孔221を介して、チャンバ201内にエッチングガス225を供給する。ライナ202の頭部231は、サセプタSが載置されるライナ202の胴部230より内径が小さくなっており、エッチングガス225は、頭部231を通過してサセプタSの表面に向かって流下する。
【0089】
エッチングガス225がサセプタSの表面に到達すると、上記した式(1)の反応が起こり、サセプタSの表面に付着したSiC膜がエッチングされる。そして、反応の結果生成したガスや未反応のClF
3ガスは、チャンバ201の下部に設けられた排気口21から随時排気される。
【0090】
チャンバ201のフランジ部209と、排気口21のフランジ部211には、シールのためにパッキン210、212が用いられる。チャンバ201の外周部には、冷却水を循環させる流路203a、203bが設けられており、熱によるパッキン210、212の劣化が防止される。
【0091】
クリーニング処理の際の温度は、400℃以上であることが好ましく、600℃以下とすることがより好ましい。
【0092】
サセプタSの表面温度は、チャンバ201の上部に設けられた放射温度計226によって測定することができる。放射温度計226の具体例としては、ファイバ放射温度計が挙げられる。この温度計は被測定物から放射される放射光を集光する光学レンズと、この光学レンズにより集光された放射光を温度変換部へ伝送する光ファイバと、光学レンズを保持するレンズホルダと、光ファイバ端面を支持固定する受光部ケースと、光ファイバにより伝送された光の強度に基づいて被測定物の温度を測定する温度変換部とを備える。例えば、シャワープレート220を透明石英製とすることにより、サセプタSからの放射光をシャワープレート220を介して放射温度計226で受光できる。測定した温度データは、制御機構(図示せず)に送られた後、ヒータ208の出力制御にフィードバックされる。これにより、サセプタSを所望の温度となるように加熱できる。但し、クリーニング処理の際の温度管理には、成膜処理における温度管理ほどの厳密性は要求されない。
【0093】
次に、クリーニング室5におけるSiC膜の再生処理について説明する。但し、サセプタS上へのSiC膜の形成に対しては、SiCエピタキシャルウェハを作製する際の成膜条件のような厳密性は要求されないので、再生処理における温度などの管理の許容幅は、下記例より大きくすることが可能である。
【0094】
まず、クリーニング処理を終えた後のサセプタSの上にダミーウェハを載置し、50rpm程度でサセプタSを回転させる。
【0095】
ヒータ208に電流を供給して作動させ、ヒータ208から発せられる熱によってサセプタSを加熱する。サセプタSの温度が、成膜温度である1500℃〜1700℃までの間の所定の温度、例えば、1650℃に達するまで徐々に加熱する。このとき、チャンバ201の壁部分に設けた流路203a、203bに冷却水を流すことで、過度にチャンバ201が昇温するのを防止できる。
【0096】
放射温度計226による測定でサセプタSの温度が1650℃に達した後は、徐々にサセプタSの回転数を上げていく。例えば、900rpm程度の回転数とするのがよい。
【0097】
また、導入口20から反応ガスを供給し、シャワープレート220を介して、反応ガスをサセプタSの上に流下させる。このとき、反応ガスは、整流板であるシャワープレート220を通過して整流され、下方のサセプタSに向かって略鉛直に流下して、いわゆる縦フローを形成する。
【0098】
反応ガスとしては、例えば、シラン(SiH
4)やジクロロシラン(SiH
2Cl
2)などの珪素(Si)のソースガスと、プロパン(C
3H
8)やアセチレン(C
2H
2)などのカーボン(C)のソースガスと、キャリアガスとしての水素(H
2)ガスとを混合させた混合ガスを使用することができる。
例えば、成膜温度を1450℃〜1550℃とし、反応ガスをジクロロシラン(SiH
2Cl
2)、テトラクロロシラン(SiCl
4、略称:TCS)、メタン(CH
4)、水素(H
2)および窒素(N
2)とし、圧力を1.3×10
−4Pa〜9.3×10
−4P
aとして成膜することができる。
【0099】
サセプタSの表面に到達した反応ガスは、熱分解反応または水素還元反応を起こす。これにより、サセプタSの表面にSiC膜が形成される。反応ガスの内で気相成長反応に使用されたもの以外のガスは、変性された生成ガスとなり、チャンバ201の下部に設けられた排気口21から排気される。
【0100】
サセプタSの表面に、所定の膜厚のSiC膜を形成した後は、反応ガスの供給を終了する。そして、サセプタSが所定の温度まで冷却されたのを確認してから、クリーニング室5の外部にサセプタSを搬出する。
【0101】
図2(d)は、再生処理後のサセプタSとダミーウェハW’’を示す図である。尚、ダミーウェハW’’は、
図2(c)のダミーウェハW’と同じであってもよい。
【0102】
図2(d)に示すように、再生処理によってサセプタSとダミーウェハW’’の上にSiC膜303が形成される。サセプタSの上からダミーウェハW’’を取り除けば、ダミーウェハW’’の下のSiC膜S
2の膜厚と、それ以外の部分におけるSiC膜の膜厚(SiC膜S
2とSiC膜303とを合わせた膜厚)とが略等しくなり、サセプタSを構成するSiC膜が再生されたことが分かる。
【0103】
以上述べたように、本実施の形態の半導体製造装置によれば、サセプタの表面に形成されたSiC膜の再生処理を行うことができる。したがって、SiCエピタキシャル成長過程でサセプタに付着した膜をClF
3ガスで除去する際に、サセプタの構成材料であるSiC膜が一緒に除去されても、この再生処理によってSiC膜を再生することができる。よって、サセプタの表面に付着したSiC膜に起因する不良を抑制して、製造歩留まりを向上することのできる半導体製造装置が提供される。
【0104】
実施の形態2.
本実施の形態の半導体製造装置は、サセプタに載置されるウェハ上にSiCエピタキシャル膜を形成する成膜室と、サセプタに付着したSiC膜を除去するクリーニング室と、サセプタの表面にSiC膜を形成する再生室とを有する。クリーニング室は再生室を兼ねることができる。また、クリーニング室は、サセプタが搬送される搬送手段を有する搬送室を介して成膜室に連結されている。
【0105】
クリーニング室は、サセプタを400℃以上の温度で加熱する加熱手段と、サセプタの上方からエッチングガスを供給してSiC膜を除去するエッチングガス供給手段とを備える。エッチングガスは、ClF
3ガスを含むものとすることができる。また、クリーニング室は、サセプタを300rpm〜900rpmで回転させる回転手段を有する。
【0106】
本実施の形態の半導体製造装置は、上述したように、実施の形態1で説明した
図1と同様の構造を有する。そこで、以下では、
図1を用いて本実施の形態の半導体製造装置の説明をする。但し、本実施の形態では、クリーニング室が塩素ガス検出器を有することを特徴としており、この点については
図5を用いて説明する。
【0107】
本実施の形態では、クリーニング処理の終了を、時間でなく、クリーニング処理で排出されるガスの量によって判断する。
【0108】
例えば、エッチングガスとしてClF
3ガスを用いた場合、クリーニング室にClF
3ガスが供給されると、下記式(2)にしたがってSiCと反応する。この反応により、サセプタSに付着したSiC膜がエッチング除去される。
【0109】
そこで、式(2)の反応で生成するCl
2ガスの量を検出し、このガスの発生が認められなくなったところでクリーニング処理を終了する。クリーニング処理を終えた後は、サセプタに対してSiC膜の再生処理を行う。クリーニング処理によって、SiC膜の形成工程でサセプタに付着したSiC膜だけでなく、サセプタを構成するSiC膜もエッチングされるからである。
【0110】
SiC膜の再生工程は、実施の形態1で説明したものと同様である。すなわち、クリーニング室5内でサセプタS上にSiC膜をエピタキシャル成長させる。このとき、クリーニング処理の場合と同様に、サセプタS上にダミーウェハを載置しておくことが好ましい。そして、ダミーウェハ下のSiC膜と同程度の膜厚となるまでSiC膜をエピタキシャル成長させることで、サセプタ表面のSiC膜を再生させることができる。尚、この再生処理は、本実施の形態ではクリーニング処理を終える毎に行う。
【0111】
サセプタSに対するSiC膜の再生処理を終えた後は、クリーニング室5から成膜室2内にサセプタSを戻し、引き続きSiCエピタキシャルウェハの作製に用いる。
【0112】
場合に応じて、再生処理後のサセプタSを、搬送室4から第5の開閉部22を通じて第2のロードロック室24に搬送し、第6の開閉部23から外部に搬出してもよい。
【0113】
また、クリーニング処理までを終えた段階のサセプタSについても同様であり、クリーニング室5から搬送用ロボット17によって搬送室4に搬送した後、成膜室2に戻してSiCエピタキシャルウェハの製造に使用してもよい。
【0114】
さらに、クリーニング室5から搬送室4を経た後、第5の開閉部22を通じて第2のロードロック室24に搬送し、第6の開閉部23から外部に搬出してもよい。
【0115】
図5は、本実施の形態のクリーニング室の一例であり、その構成を示す模式的な断面図である。このクリーニング室は、SiC膜の再生処理を行う再生室を兼ねている。尚、本実施の形態においては、クリーニング室とは別に再生室を設けてもよく、また、成膜室が再生室を兼ねていてもよい。但し、クリーニング室が再生室を兼ねる構成の方が汎用性があり、また、成膜室へのダストの持ち込みを低減できるという利点もある。
【0116】
図5において、601はチャンバ、602はチャンバ内壁を被覆して保護する中空筒状のライナ、603a、603bはチャンバを冷却する冷却水の流路、60はClF
3ガスを導入する導入口、61は反応後のClF
3ガスの排気口、Sはサセプタ、608は支持部(図示せず)に支持されてサセプタSを加熱するヒータ、609はチャンバ601の上下部を連結するフランジ部、610はフランジ部609をシールするパッキン、611は排気口61と配管を連結するフランジ部、612はフランジ部611をシールするパッキンである。
【0117】
ライナ602の頭部には、シャワープレート620が取り付けられている。シャワープレート620は、サセプタSの表面にエッチングガス625を均一に供給する機能を備えたガス整流板である。
【0118】
図1のクリーニング室5では、サセプタSを回転手段で回転させながら、加熱手段としてのヒータ608で加熱して、クリーニング処理を行う。すなわち、
図1の搬送室4から搬送されたサセプタSは、略円筒状の回転部632の上部に載置される。回転部632は、上部に比べ下部が細く形成されており、チャンバ601の外で回転機構(図示せず)に接続している。そして、回転部632の水平断面の中心を直交する線を回転軸として所定の回転数で回転する構造となっている。クリーニングを行う際には、サセプタSが回転した状態で、エッチングガス供給手段により、サセプタSの上方からSiC膜のエッチングガスを供給する。具体的には、導入口60からシャワープレート620の貫通孔621を介して、チャンバ601内にエッチングガス625を供給する。ライナ602の頭部631は、サセプタSが載置されるライナ602の胴部630より内径が小さくなっており、エッチングガス625は、頭部631を通過してサセプタSの表面に向かって流下する。
【0119】
図1のクリーニング室5において、サセプタSは、下方に設けられたヒータ608によって加熱される。尚、ヒータの形状は
図5の構造に限定されるものではなく、また、インヒータとアウトヒータの2種類のヒータによって加熱するようにしてもよい。
【0120】
上記したように、クリーニング室5では、サセプタSを回転させながらヒータ608で加熱してクリーニング処理を行う。すなわち、サセプタSが回転した状態で、導入口60からシャワープレート620の貫通孔621を介して、チャンバ601内にエッチングガス625を供給する。ライナ602の頭部631は、サセプタSが載置されるライナ602の胴部630より内径が小さくなっており、エッチングガス625は、頭部631を通過してサセプタSの表面に向かって流下する。
【0121】
エッチングガス625がサセプタSの表面に到達すると、上記した式(2)の反応が起こり、サセプタSの表面に付着したSiC膜がエッチングされる。そして、反応の結果生成したガスや未反応のClF
3ガスは、チャンバ601の下部に設けられた排気口61から随時排気される。
【0122】
チャンバ601のフランジ部609と、排気口61のフランジ部611には、シールのためにパッキン610、612が用いられる。チャンバ601の外周部には、冷却水を循環させる流路603a、603bが設けられており、熱によるパッキン610、612の劣化が防止される。
【0123】
クリーニング処理の際の温度は、400℃以上であることが好ましく、600℃以下とすることがより好ましい。サセプタSの表面温度は、チャンバ601の上部に設けられた放射温度計626によって測定することができる。例えば、シャワープレート620を透明石英製とすることにより、サセプタSからの放射光をシャワープレート620を介して放射温度計626で受光できる。測定した温度データは、制御機構(図示せず)に送られた後、ヒータ608の出力制御にフィードバックされる。これにより、サセプタSを所望の温度となるように加熱できる。但し、クリーニング処理の際の温度管理には、成膜処理における温度管理ほどの厳密性は要求されない。
【0124】
本実施の形態のクリーニング室は、塩素ガス検出器641を有する。塩素ガス検出器641は、式(2)の反応で生成するCl
2ガスを検出する目的で設けられる。一例として、理研計器株式会社製のガスモニタ(商品名:FP−300)などが挙げられる。塩素ガス検出器641は、
図5に示すように、排気口61の付近に設けられることが好ましい。
【0125】
例えば、塩素ガス検出器641で検出されるCl
2ガスの濃度が0.2ppm以下となってから1分間経過したときに、式(2)で生成するCl
2ガスが認められなくなったと判定することができる。尚、このときのCl
2ガス濃度や経過時間については適宜決めることができる。例えば、塩素ガス検出器641で測定された塩素濃度のデータが制御部624に送られ、制御部624でCl
2ガスの生成が認められなくなったと判定されると、警報音が発せられるとともに、エッチングガス供給部643からのエッチングガス225の供給が停止されるようにすることができる。
【0126】
塩素ガス検出器641によるCl
2ガスの濃度測定により、Cl
2ガスが認められなくなったと判定されると、クリーニング処理は終了する。次いで、サセプタSへのSiC膜の再生処理が行われる。この再生処理は、実施の形態1で説明したものと同様の方法によって行うことができる。
【0127】
サセプタSの表面に、所定の膜厚のSiC膜を形成した後は、再生処理のための反応ガスの供給を終了する。そして、サセプタSが所定の温度まで冷却されたのを確認してから、クリーニング室の外部にサセプタSを搬出する。
【0128】
以上述べたように、本実施の形態の半導体製造装置によれば、クリーニング処理の終了時を正確に把握することができる。そして、クリーニング処理を終えた後にサセプタに対してSiC膜の再生処理を行うことにより、クリーニング処理で除去されたサセプタの構成材料であるSiC膜を再生することができる。したがって、本実施の形態によれば、サセプタの表面に付着したSiC膜に起因する不良を抑制して、製造歩留まりを向上することのできる半導体製造装置が提供される。
【0129】
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0130】
例えば上記各実施の形態の半導体製造装置は、サセプタに載置されるウェハ上にSiCエピタキシャル膜を形成する成膜室と、サセプタに付着したSiC膜を除去するクリーニング室と、サセプタの表面にSiC膜を形成する再生室とを有することを特徴とすることができる。つまり、クリーニング処理はClF
3ガスによるエッチングに限られるものではなく、他の方法によってもよい。再生室を有することで、クリーニング処理によりダメージを受けたサセプタ表面のSiC膜を再生できるので、サセプタの表面に付着したSiC膜に起因する不良を抑制して、製造歩留まりを向上することのできる半導体製造装置とすることができる。
【0131】
また、上記各実施の形態では、クリーニング処理におけるエッチングガスとしてClF
3ガスを用いたが、これに限られるものではない。したがって、実施の形態2で述べた検出部は、SiC膜とエッチングガスとの反応によって生成したガスを検出するものであればよい。また、制御部は、検出部での検出結果を受け取り、SiC膜とエッチングガスとの反応が終了したと判定すると、エッチングガス供給手段へ信号を送り、クリーニング室へのエッチングガスの供給を停止するように制御すればよい。ここで、制御部は、SiC膜とエッチングガスとの反応が終了したと判定すると警報を発するよう構成されていることが好ましい。また、制御部では、エッチングガスが所定濃度以下となってから所定時間経過した後に、SiC膜とエッチングガスとの反応が終了したと判定することができる。