(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の工程と前記第2の工程を繰り返した後、前記周縁部に形成された前記薄膜の厚みが所定値以上となったところで前記第3の工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の薄膜処理方法。
前記反応室の外部に設けた放射温度計で前記サセプタの温度を測定し、前記周縁部と前記段差部の境界からの放射光の輝度温度が変化したところで前記第2の工程を終了することを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施の形態で使用可能な成膜装置の模式的な断面図の一例である。尚、この図では、説明のために必要な構成以外を省略している。また、縮尺についても、各構成部を明確に視認できるよう原寸大のものとは変えている。
【0019】
図1に示すように、成膜装置100は、反応室としてのチャンバ1を有する。チャンバ1は、ベースプレート101の上にベルジャ102が配置された構造を有する。ベースプレート101の上には、ベースプレート101の全面を被覆する形状と大きさを備えたベースプレートカバー103が取り外し可能に設置されている。ベースプレートカバー103は、例えば、石英からなるものとすることができる。ベースプレート101とベルジャ102は、フランジ10によって連結されており、フランジ10はパッキン11でシールされている。ベースプレートは、例えば、SUS(Steel Use Stainless;ステンレス鋼)からなるものとすることができる。
【0020】
気相成長反応の際には、チャンバ1内が極めて高い温度になる。そこで、チャンバ1の冷却を目的として、ベースプレート101とベルジャ102の内部には、冷却水の流路3が設けられている。
【0021】
ベルジャ102には、反応ガス4を導入する供給口5が設けられている。一方、ベースプレート101には排気口6が設けられており、排気口6を通じて反応後や未反応の反応ガス4がチャンバ1の外部へ排出される。
【0022】
排気口6は、フランジ13によって配管12と連結している。また、フランジ13は、パッキン14でシールされている。尚、パッキン11およびパッキン14には、300℃程度の耐熱温度を有するフッ素ゴムなどが用いられる。
【0023】
チャンバ1の内部には、中空筒状のライナ2が配置されている。ライナ2は、チャンバ1の内壁1aと、基板7上への気相成長反応が行われる空間Aとを仕切る目的で設けられる。これにより、チャンバ1の内壁1aが反応ガス4で腐食されるのを防ぐことができる。気相成長反応は高温下で行われるので、ライナ2は、高い耐熱性を備える材料によって構成される。例えば、SiC部材またはカーボンにSiCをコートして構成された部材の使用が可能である。
【0024】
本実施の形態では、便宜上、ライナ2を胴部2aと頭部2bの2つの部分に分けて称する。胴部2aは、内部にサセプタ8が配置される部分であり、頭部2bは、胴部2aより内径の小さい部分である。胴部2aと頭部2bは、一体となってライナ2を構成しており、頭部2bは胴部2aの上方に位置する。
【0025】
頭部2bの上部開口部には、シャワープレート15が設けられている。シャワープレート15は、基板7の表面に反応ガス4を均一に供給するガス整流板として働く。このため、シャワープレート15には、複数個の貫通孔15aが設けられており、供給口5からチャンバ1に導入された反応ガス4は、貫通孔15aを通って基板7の方へ流下する。ここで、反応ガス4は、無駄に拡散することなく、効率よく基板7の表面に到達することが好ましい。それ故、頭部2bの内径は胴部2aより小さく設計されている。具体的には、頭部2bの内径は、貫通孔15aの位置と基板7の大きさを考慮して決められる。
【0026】
また、チャンバ1の内部、具体的には、ライナ2の胴部2aに、基板7を支持するサセプタ8が配置されている。サセプタ8は、高耐熱性の材料で構成される。例えば、基板7の上にSiCをエピタキシャル成長させる場合、基板7は1500℃以上の高温にする必要がある。このため、サセプタ8には、例えば、等方性黒鉛の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってSiCを被覆したものなどが用いられる。
【0027】
サセプタ8は、例えば、その内周側に設けられた座ぐり部8aに基板7を受け入れる構造とすることができる。サセプタ8から基板7を除去した後も、座ぐり部8aによって、空間Aと回転筒17の内部とが隔てられる構造とすることが好ましい。座ぐり部8aは、その周縁部と一体となってサセプタ8を構成していてもよく、座ぐり部8aと周縁部とが別体となっており、これらが組み合わされてサセプタ8を構成していてもよい。
【0028】
基板7の加熱は、回転筒17の内部に配置されたヒータ9によって行われる。ヒータ9は、抵抗加熱型のヒータとすることができ、円盤状のインヒータ9aと、環状のアウトヒータ9bとを有する。インヒータ9aは、基板7に対応する位置に配置される。アウトヒータ9bは、インヒータ9aの上方であって、基板7の外周部に対応する位置に配置される。基板7の外周部は中央部に比べて温度が低下しやすいため、アウトヒータ9bを設けることで外周部の温度低下を防ぐことができる。
【0029】
インヒータ9aとアウトヒータ9bは、アーム形状をした導電性のブースバー20によって支持されている。ブースバー20は、例えば、カーボンをSiCで被覆してなる部材によって構成される。また、ブースバー20は、インヒータ9aとアウトヒータ9bを支持する側とは反対の側で、石英製のヒータベース21によって支持されている。そして、モリブデンなどの金属からなる導電性の連結部22によって、ブースバー20と電極棒23が連結されることにより、電極棒23からインヒータ9aとアウトヒータ9bへ給電が行われる。具体的には、電極棒23からこれらのヒータの発熱体に通電がされて発熱体が昇温する。
【0030】
基板7の表面温度は、放射温度計24a、24bによって測定することができる。
図1において、放射温度計24aは、基板7の中央部付近の温度を測定するのに用いられる。一方、放射温度計24bは、基板7の外周部の温度を測定するのに用いられる。尚、放射温度計24a、24bの少なくとも一方によって、サセプタ8の温度を測定するようにしてもよい。
【0031】
放射温度計24a、24bは、
図1に示すように、チャンバ1の上部に設けることができる。この場合、ベルジャ102の上部とシャワープレート15を透明石英製とすることにより、放射温度計24a、24bによる温度測定がこれらによって妨げられないようにすることができる。
【0032】
測定した温度データは、図示しない制御機構に送られ、インヒータ9aとアウトヒータ9bの各出力制御にフィードバックすることができる。一例として、SiCエピタキシャル成長を行う場合、各ヒータの設定温度は次のようにすることができる。これにより、基板7を1650℃程度に加熱することが可能である。
インヒータ9aの温度:1680℃
アウトヒータ9bの温度:1750℃
【0033】
ライナ2の胴部2aには、回転軸16と、回転軸16の上端に設けられた回転筒17とが配置されている。サセプタ8は、回転筒17に取り付けられており、回転軸16が回転すると、回転筒17を介してサセプタ8が回転するようになっている。気相成長反応時においては、基板7をサセプタ8上に載置することにより、サセプタ8の回転とともに基板7が回転する。
【0034】
シャワープレート15を通過した反応ガス4は、頭部2bを通って基板7の方へ流下する。基板7が回転していることにより、反応ガス4は基板7に引きつけられ、シャワープレート15から基板7に至る領域で縦フローになる。基板7に到達した反応ガス4は、基板7の表面で乱流を形成することなく、水平方向に略層流となって流れる。このようにして、基板7の表面には、新たな反応ガス4が次々と接触する。そして、基板7の表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてエピタキシャル膜を形成する。尚、成膜装置100では、基板7の外周部からライナ2までの距離を狭くして、基板7の表面における反応ガス4の流れがより均一になるようにしている。
【0035】
以上の構成とすることで、基板7を加熱し且つ回転させながら気相成長反応を行うことができる。基板7を回転させることにより、基板7の表面全体に効率よく反応ガス4が供給され、膜厚均一性の高いエピタキシャル膜を形成することが可能となる。また、新たな反応ガス4が次々と供給されるので、成膜速度の向上が図れる。反応ガス4の内で気相成長反応に使用されなかったガスや、気相成長反応により生成したガスは、ベースプレート101に設けられた排気口6から排出される。
【0036】
基板7の上に、所定の膜厚のエピタキシャル膜を形成した後は、反応ガス4の供給を終了する。続いて、ヒータ9による加熱を停止し、基板7が所定の温度まで下がるのを待つ。また、チャンバ1内のガスを水素ガスや不活性ガスなどで置換する。尚、基板7が所定の温度以下となるまで、供給口5からキャリアガスの供給を続けてもよい。
【0037】
放射温度計24a、24bにより、基板7が所定の温度まで冷却されたことを確認した後は、チャンバ1の外部に基板7を搬出する。この場合、例えば、ベルヌーイ効果を利用して基板7を搬送することができる。例えば、基板7の裏面の中央部近傍から周縁部方向に向けて、放射状に保持ガスが噴き出されるようにする。すると、ベルヌーイ効果が生じて、基板7をサセプタ8から浮上させて保持することができる。この状態の基板7を搬送ロボット(図示せず)に受け渡すことにより、チャンバ1の外部へ基板7を搬出することができる。
【0038】
ところで、基板7を高温の状態にするためにヒータ9で加熱すると、ヒータ9からの輻射熱は、基板7だけでなく、他の部材にも伝わってそれらを昇温させる。こうしたことは、特に、基板7やヒータ9のような高温となる部分の近傍に位置する部材、具体的にはサセプタ8で顕著であり、サセプタ8に反応ガスが接触すると、高温加熱された基板7の表面と同様に反応ガスの熱分解反応が起こる。
【0039】
例えば、基板7の表面にSiCエピタキシャル膜を形成しようとする場合、反応ガスとして、Si源としてのシラン(SiH
4)、C源としてのプロパン(C
3H
8)、キャリアガスとしての水素ガスなどを含んで調製された混合ガスが用いられる。しかしながら、この組成の反応ガスは、反応性に富んでいるために、一定の温度条件を満たす部材に接触すると、基板7上でなくとも分解反応を起こしてしまう。その結果、サセプタ8の表面に、反応ガスに由来するSiCの薄膜が形成される。この薄膜が剥離するとダストとなり、基板7上に形成されるエピタキシャル膜に欠陥を生じさせる。また、この薄膜によって基板7とサセプタ8が接着されたような状態となってしまい、エピタキシャル膜形成後に基板7をチャンバ1から搬出する際の妨げともなる。そこで、エッチングによって薄膜を除去する作業が必要になる。本実施の形態では、この作業を薄膜処理方法と称する。
【0040】
図2(a)〜(h)を用いて、本実施の形態の薄膜処理方法を説明する。尚、これらは、基板7の端部付近でサセプタ8と基板7を部分的に拡大した断面図である。
【0041】
図2(a)は、SiC膜を形成する前のサセプタ8と基板7を示す図である。サセプタ8は、カーボンとこれを被覆するSiC膜とを用いて構成されている。基板7は、サセプタ8に設けられた座ぐり部8aに載置されている。
【0042】
図2(b)は、SiC膜301を形成した後のサセプタ8と基板7を示す図である。これらに示すように、SiCエピタキシャル成長工程によって、基板7の上だけでなく、サセプタ8の上にもSiC膜301が形成される。
【0043】
図2(c)は、基板7をサセプタ8の上から除去した後の図である。この図に示すように、サセプタ8の座ぐり部8aには、基板7が載置されていたため、SiC膜301は形成されていない。しかしながら、サセプタ8の周縁部8bや、座ぐり部8aと周縁部8bとの境界(段差部8c)には、SiC膜301が形成される。
【0044】
図2(c)の状態のままで新たな基板7をサセプタ8の上に載置し、エピタキシャル膜を形成すると、既に形成されたSiC膜301上にさらにSiC301膜が形成される。この工程を繰り返すと、特に段差部8cに形成されたSiC膜301によって基板7とサセプタ8が接着されたような状態となってしまい、エピタキシャル膜形成後に基板7をチャンバ1から搬出する際の妨げとなる。例えば、上述した基板7の搬出方法の例において、基板7の裏面の中央部近傍から周縁部方向に向けて、放射状に保持ガスが噴き出されるようにしても、基板7とサセプタ8がSiC膜301によって接着することにより、基板7をサセプタ8から浮上させることができなくなる。
【0045】
このため、サセプタ8上に形成されたSiC膜301を除去することが必要になる。しかしながら、1回の気相成長反応を終える都度や、所定回数の気相成長反応を終える都度、サセプタ8上に形成されたSiC膜301を完全に除去しようとすると、その作業に長時間を要することになる。一方、SiC膜301を完全に除去しない場合、本発明者の検討によれば、その残存箇所によって次のような問題が生じることが分かっている。
【0046】
図3(a)は、サセプタ8上に形成されたSiC膜301がエッチング工程で完全に除去されず、後工程でこのSiC膜301が剥がれた状態を示したものである。剥がれた膜は、SiCエピタキシャル基板の製造歩留まりを低下させる原因となる。
【0047】
図3(b)は、サセプタ8の周縁部8bの外周部にSiC膜301が残存する例である。この場合には、サセプタ8に反りが発生しやすくなり、サセプタ8上で基板7を所定位置に載置することが難しくなる。
【0048】
さらに、サセプタ8の構成部材とエピタキシャル膜とが異なる場合には、次のような問題がある。
図3(c)は、基板上にSiエピタキシャル膜を形成した場合であり、サセプタ8の周縁部8bに形成されたSi膜302を部分的に除去した例である。この場合、放射温度計によってサセプタ8の温度を測定する際に問題が生じる。すなわち、サセプタ8の温度は、周縁部8bからの放射光の輝度温度を放射温度計で測定することで把握できるが、Si膜302のある箇所とない箇所とでは放射光の輝度温度が異なる。前者ではSi膜302からの放射光の輝度温度を測定するのに対し、後者ではサセプタ8を構成するSiC膜の輝度温度を測定することになるからである。このため、測定箇所が同一であっても、SiC膜301が除去される部分が定まっていないと、測定箇所にSiC膜301がある場合やない場合が混在することになり、測定結果が変動して正確な温度測定ができない。
【0049】
ところで、サセプタ8上に形成されたSiC膜301のうちで最も問題となるのは、段差部8cに形成されたSiC膜301である。段差部8cにおけるSiC膜301によって、基板7がサセプタ8に接着されたような状態となってしまうからである。そのため、基板7がサセプタ8から剥がれにくくなり、エピタキシャル膜形成後に基板7をチャンバ1から搬出する際の妨げとなる。
【0050】
そこで、本実施の形態では、サセプタ8の上に形成されたSiC膜301の全てをその除去工程の度に除去することはせず、段差部8cのみを除去することとする。これにより、SiC膜301のエッチングに要する時間を短縮することができる。また、段差部8cにSiC膜301が常にない状態で基板7がサセプタ8の上に載置されるので、基板7のサセプタ8への貼り付きを防ぐことができる。
【0051】
この場合、サセプタ8の周縁部8bにはSiC膜301が残存することになるが、段差部8cのみのエッチングを所定回数(例えば、4〜5回)繰り返した後、あるいは、残存するSiC膜301が所定の膜厚に達した後、サセプタ8上の全てのSiC膜301を完全に除去するようにすれば、残存するSiC膜301の剥がれによる歩留まり低下を抑制することができる。
【0052】
また、周縁部8bは、その全体がSiC膜301で被覆されている状態、あるいは、SiC膜301が全くない状態のいずれかであるので、サセプタ8にSiC膜301に起因する反りが発生するのを低減することもできる。
【0053】
さらに、サセプタ8の構成部材とエピタキシャル膜とが異なる場合においては、次のような効果も得られる。例えば、基板上にSiエピタキシャル膜を形成した場合、周縁部8bは、その全体がSi膜で被覆されているか、Si膜が全くないかのいずれかであり、どちらの場合であるかは予め知ることができる。つまり、段差部8cのみをエッチングしている場合、周縁部8bはSi膜で被覆されているので、放射光の輝度温度はSi膜のものである。一方、段差部8cのみのエッチングを所定回数繰り返した後、あるいは、残存するSi膜が所定の膜厚に達した後、サセプタ8上の全てのSi膜を完全に除去すると、周縁部8bの上にはSi膜が全くなくなり、サセプタ8の表面が露出した状態になる。この場合、放射光の輝度温度はSiC膜のものである。どちらの状態であるかは予め把握できるので、状態に応じた設定とすることにより、サセプタ8の温度を正確に測定することができる。
【0054】
本実施の形態において、サセプタ8の段差部8cのみのエッチングは、次のようにして行うことができる。
【0055】
エッチングガスとしては、ClF
3ガスが好ましく用いられる。チャンバ1にClF
3ガスが供給されると、下記式(1)にしたがってSiCと反応する(Y.Miura, H.Habuka, Y.Katsumi, S.Oda, Y.Fukai, K.Fukae, T.Kato, H.Okumura, K.Arai, Japanese Journal of Applied Physics. Vol.46, No.12, 2007, pp.7875−7879)。この反応により、サセプタ8に付着したSiC膜301がエッチング除去される。
3SiC+8ClF
3 → 3SiF
4+3CF
4+4Cl
2 (1)
【0056】
また、ClF
3ガスによるSiCのエッチングは高温下で進行するので、エッチングの際には、サセプタ8をヒータ9で加熱する。加熱温度は、例えば、400℃以上とすることができる。
【0057】
尚、Siエピタキシャル膜を形成する場合、サセプタ8上に形成されるSi膜の除去には、H
2ガスで希釈した50%濃度のHClガスを用いることができる。Si膜とHClガスとが反応するとSi
xCl
y化合物が形成される。このSi
xCl
y化合物は、サセプタ8が回転していることにより、エッチングガスの流れに乗り、排気口6を通じて排出される。
【0058】
エッチングガスは、
図1の供給口5からチャンバ1内に供給される。このとき、サセプタ8は回転させた状態とする。エッチングガスは、サセプタ8の方へ流下するが、サセプタ8が回転していることにより、まず、サセプタ8の中央部へ到達し、次いで、サセプタ8の周辺部へと向かう。エッチングは、このガスの動きにしたがって進むので、周辺部に向かったガスによって、最初に段差部8cに形成されたSiC膜301がエッチングされる。周縁部8bに形成されたSiC膜301のエッチングは、その後に進行するので、周縁部8bのエッチングが進行する前にエッチングを終了すれば、段差部8cのみをエッチングすることが可能である。
【0059】
エッチングの終了は、例えば、時間で管理することができる。また、SiC膜でなくSi膜のエピタキシャル成長を行う場合には、放射温度計でサセプタ8の周縁部8bと段差部8cの境界付近の温度測定を行うことで、エッチングの終端を把握することができる。周縁部8bに形成されたSi膜がエッチングされて下地のサセプタ8が露出すると、放射光の輝度温度がSi膜のものからSiC膜のものへと変化する。したがって、この変化を調べることで、段差部8cのエッチングの終端が分かる。
【0060】
段差部8cのエッチングを終えると、サセプタ8は、
図2(e)に示すような状態になる。すなわち、段差部8cにはSiC膜301がなく、周縁部8bの全体にSiC膜301が形成された状態である。この状態で、
図2(f)に示すように、次にエピタキシャル膜を形成する基板7をサセプタ8の上に載置する。段差部8cにSiC膜301がないことによって、基板7とサセプタ8とが接着するのを防ぐことができる。
【0061】
以降は、
図2(b)〜(f)で説明した工程を繰り返す。これらの工程を繰り返すうちに、サセプタ8の周縁部8bに形成されるSiC膜301の膜厚は大きくなっていく。そこで、予め定めた回数(例えば、4〜5回)のエッチングを終える度、あるいは、周縁部8b上のSiC膜301の膜厚が予め定めた値を超える度に、サセプタ8上のSiC膜301を完全に除去する。エッチングは、段差部8cへのエッチングと同様にして行うことができるが、サセプタ8を回転させない状態でエッチングすることも可能である。
【0062】
サセプタ8上のSiC膜301を段差部8bに限定することなくエッチングすると、サセプタ8は、
図2(g)に示す状態となる。その後、
図2(a)に示すように、新たにエピタキシャル膜を形成する基板7をサセプタ8の上に載置し、
図2(b)〜(f)の工程を繰り返す。
【0063】
このように、本実施の形態の薄膜処理方法では、まず、エピタキシャル反応終了後にサセプタ上に形成された薄膜を部分的に除去する。次に、またエピタキシャル反応を行う。この工程を所定回数繰り返した後、サセプタ上の薄膜を全て除去する。その後、再び、エピタキシャル反応終了後に薄膜を部分的に除去する工程を繰り返す。次いで、サセプタ上の薄膜を全て除去する。以上の工程を繰り返すことで、薄膜の除去に要する時間を短くすることができる。また、所定回数の部分的な除去工程を繰り返した後に、薄膜を全て除去する工程を行うので、残存する薄膜が剥がれてエピタキシャル膜の歩留まりが低下するのを抑制することもできる。さらに、この薄膜処理は、エピタキシャル反応を行う反応室で行われるので、薄膜処理のためのエッチング室を反応室とは別に設ける必要がない。
【0064】
また、本実施の形態の薄膜処理方法は、次のようにすることもできる。まず、エピタキシャル反応終了後にサセプタ上に形成された薄膜を部分的に除去する。次に、またエピタキシャル反応を行う。除去されなかった薄膜の膜厚が所定値に達した後、サセプタ上の薄膜を全て除去する。その後、再び、エピタキシャル反応終了後に薄膜を部分的に除去する工程を繰り返す。残存している薄膜の膜厚が所定値に達した後、サセプタ上の薄膜を全て除去する。以上の工程を繰り返すことでも、薄膜の除去に要する時間を短くすることができる。また、残存している薄膜が剥がれやすくなる膜厚を予め知ることができれば、この膜厚に達した時点で薄膜を全て除去する工程を行うことで、剥がれた薄膜によってエピタキシャル膜の歩留まりが低下するのを抑制することができる。さらに、この薄膜処理は、エピタキシャル反応を行う反応室で行われるので、薄膜処理のためのエッチング室を反応室とは別に設ける必要がない。
【0065】
上記の部分的な薄膜の除去は、薄膜によって基板がサセプタに貼り付きやすい部分、具体的には、サセプタの座ぐり部とその周縁部との境界(段差部)に対して行うことが好ましい。これにより、基板がサセプタに貼り付くのを防いで、エピタキシャル反応を終えた後に基板を反応室の外へ搬出するのが容易となる。
【0066】
段差部へのエッチングは、サセプタを回転させながらエッチングガスを導入して行う。サセプタが回転していることにより、エッチングガスは、まず、サセプタの中央部へ到達し、次いで、サセプタの周辺部へと向かう。エッチングは、このガスの動きにしたがって進むので、周辺部に向かったガスによって、最初に段差部に形成された薄膜がエッチングされる。したがって、座ぐり部の周縁部に形成された薄膜のエッチングが進行する前にエッチングを終了させれば、段差部のみをエッチングすることが可能である。
【0067】
次に、
図1および
図2を参照しながら、本実施の形態における薄膜処理方法を用いた成膜方法の一例について述べる。
【0068】
本実施の形態の成膜装置100は、例えば、SiCエピタキシャル成長膜の形成に好適である。そこで、以下では、SiCエピタキシャル膜の形成を例にとる。
【0069】
基板7としては、例えば、SiCウェハを用いることができる。但し、これに限られるものではなく、場合に応じて、他の材料からなるウェハなどを用いてもよい。例えば、Siウェハ、SiO
2(石英)などの他の絶縁性基板、高抵抗のGaAsなどの半絶縁性基板などを用いることもできる。
【0070】
反応ガス4としては、例えば、プロパン(C
3H
8)、シラン(SiH
4)およびキャリアガスとしての水素ガスを用いることができる。この場合、シランに代えて、ジシラン(SiH
6)、モノクロロシラン(SiH
3Cl)、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)、トリクロロシラン(SiHCl
3)、テトラクロロシラン(SiCl
4)などを使用することも可能である。
【0071】
まず、サセプタ8の上に基板7を載置する。このときの状態は、
図2(a)に示すようになる。
【0072】
次に、チャンバ1の内部を常圧または適当な減圧にした状態で、基板7を回転させる。基板7が載置されたサセプタ8は、回転筒17の上端に配置されている。したがって、回転軸16を通じて回転筒17を回転させると、サセプタ8が回転し、同時に基板7も回転する。回転数は、例えば50rpm程度とすることができる。
【0073】
次に、ヒータ9によって基板7を加熱する。SiCエピタキシャル成長では、基板7は、例えば、1500℃〜1700℃までの間の所定の温度に加熱される。また、基板7の加熱によってチャンバ1内は高温になるので、ベースプレート101とベルジャ102の内部に設けた流路3に冷却水を流す。これにより、チャンバ1が過度に昇温するのを防止できる。
【0074】
放射温度計24a、24bにより、基板7の温度が例えば1650℃に達したことを確認した後は、基板7の回転数を徐々に上げていく。例えば、900rpm程度の回転数まで上げることができる。また、供給口5より反応ガス4を導入する。
【0075】
反応ガス4は、シャワープレート15の貫通孔15aを通り、基板7への気相成長反応が行われる空間Aへ流入する。シャワープレート15を通過することで、反応ガス4は整流され、下方で回転する基板7へ向かって略鉛直に流下して、いわゆる縦フローを形成する。
【0076】
基板7の表面に到達した反応ガス4は、この表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてSiCエピタキシャル膜を形成する。気相成長反応に使用されなかった余剰の反応ガス4や、気相成長反応により生成したガスは、チャンバ1の下方に設けられた排気口6を通じて外部に排気される。
【0077】
基板7の上に、所定の膜厚のSiC膜を形成した後は、反応ガス4の供給を終了する。このときの状態は、
図2(b)に示すように、基板7の上だけでなくサセプタ8の上にもSiC膜301が形成されている。
【0078】
続いて、ヒータ9による加熱を停止し、基板7が所定の温度まで下がるのを待つ。また、チャンバ201内のガスを水素ガスや不活性ガスなどで置換する。尚、基板7が所定の温度以下となるまで、
図1の供給口5からキャリアガスの供給を続けてもよい。
【0079】
放射温度計24a、24bにより、基板7が所定の温度まで冷却されたことを確認した後は、チャンバ1の外部に基板7を搬出する。この場合、例えば、ベルヌーイ効果を利用して基板7を搬送することができる。例えば、基板7の裏面の中央部近傍から周縁部方向に向けて、放射状に保持ガスが噴き出されるようにする。すると、ベルヌーイ効果が生じて、基板7をサセプタ8から浮上させて保持することができる。この状態の基板7を搬送ロボット(図示せず)に受け渡すことにより、チャンバ1の外部へ基板7を搬出することができる。
【0080】
基板7を搬送ロボットへ受け渡した後のサセプタ8は、
図2(c)に示す状態となる。そこで、サセプタ8を加熱および回転させるとともに、供給口5からエッチングガスを供給して、サセプタ8の段差部8cに形成されたSiC膜301の除去を行う(
図2(d))。尚、回転筒17の上部開口部はサセプタ8によって塞がれた状態にあるので、エッチングガスが回転筒17の内部に侵入して、ヒータ9や電極棒23などの部材がエッチングガスで侵されることはない。尚、エッチングガスとしては、ClF
3ガスが好ましく用いられる。
【0081】
段差部8cのエッチングを終えると、サセプタ8は、
図2(e)に示すような状態になる。すなわち、段差部8cにはSiC膜301がなく、周縁部8bの全体にSiC膜301が形成された状態である。
【0082】
チャンバ1の内部からエッチングガスを排出し、不活性ガスなどで置換した後は、次のエピタキシャル反応を行うことができる。チャンバ1の内部に新たな基板7を搬入してサセプタ8の上に載置する。このときの状態は、
図2(f)に示すようになる。段差部8c上のSiC膜301は、エッチング処理で除去されているので、基板7とサセプタ8とが接着するのを防ぐことができる。
【0083】
サセプタ8の上に基板7を載置した後は、上述の方法にしたがってSiC膜を形成する。SiC膜形成後の様子は、
図2(b)で周縁部8b上のSiC膜301が厚くなった状態に対応する。周縁部8b上のSiC膜301は先のエッチング工程で除去されておらず、この上に新たなSiC膜が形成されるからである。
【0084】
その後、基板7をサセプタ8の上から除去すると、
図2(c)と同様の状態となる。段差部8cに形成されたSiC膜301は、新たなエピタキシャル反応で形成された膜である。この膜を上記と同様のエッチング処理により除去する。このときのエッチングも、段差部8cに対して行い、周縁部8b上のSiC膜301は除去しない。これにより、サセプタ8は、
図2(e)と同様の状態になる。そして、
図2(f)と同様に、新たな基板7をサセプタ8の上に載置して新たなエピタキシャル膜を形成する。
【0085】
段差部8cへのエッチング処理とエピタキシャル膜の形成とを繰り返した後、サセプタ8上に形成されたSiC膜301を段差部8cに限定することなく除去する。これにより、サセプタ8は、
図2(g)に示す状態となる。
【0086】
その後、サセプタ8の上に新たな基板7を載置する。このときの状態は、
図2(a)に示す通りである。以降は、上記の工程を繰り返す。すなわち、
図2(b)〜(f)で説明したのと同様の工程を繰り返した後、サセプタ8上の全てのSiC膜を除去して、
図2(g)の状態にする。その後、また
図2(a)の状態に戻って同様の処理を行う。
【0087】
本実施の形態の薄膜処理方法を用いることにより、成膜処理の過程で形成される薄膜を除去して、薄膜の剥がれによる歩留まり低下を抑制することができる。本実施の形態の薄膜処理に要する時間は、従来法に比べて短くて済むので、成膜処理全体にかかる時間が薄膜処理によって長くなることが抑制される。さらに、本実施の形態の薄膜処理は、エピタキシャル反応を行う反応室で行われるので、薄膜処理のためのエッチング室を反応室とは別に設ける必要がない。
【0088】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施の形態では、基板を回転させながら基板上に膜を形成する例について述べたが、本発明では、基板を回転させない状態で膜を形成してもよい。
【0089】
また、上記実施の形態では、成膜装置の一例としてエピタキシャル成長装置を挙げ、SiC結晶膜の形成について説明したが、これに限られるものではない。反応室内に反応ガスを供給し、反応室内に載置される基板を加熱して基板の表面に膜を形成するものであれば、他の成膜装置であってもよく、また、他のエピタキシャル膜の形成に用いることもできる。
【0090】
さらに、装置の構成や制御の手法など、本発明に直接必要としない部分などについては記載を省略したが、必要とされる装置の構成や、制御の手法などを適宜選択して用いることができる。
【0091】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての成膜装置および各部材の形状は、本発明の範囲に包含される。