特許第5747352号(P5747352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5747352チエノピリジン誘導体を用いた有機半導体デバイス
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  • 特許5747352-チエノピリジン誘導体を用いた有機半導体デバイス 図000030
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747352
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】チエノピリジン誘導体を用いた有機半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/05 20060101AFI20150625BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20150625BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20150625BHJP
   C07D 495/04 20060101ALN20150625BHJP
   C07D 519/00 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250H
   H01L29/78 618B
   !C07D495/04 105A
   !C07D519/00
【請求項の数】3
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-516175(P2011-516175)
(86)(22)【出願日】2011年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2011055963
(87)【国際公開番号】WO2011115071
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2010-58527(P2010-58527)
(32)【優先日】2010年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100113181
【弁理士】
【氏名又は名称】中務 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180600
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】大下 浄治
(72)【発明者】
【氏名】播磨 裕
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 尚
(72)【発明者】
【氏名】金平 浩一
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−506895(JP,A)
【文献】 特表2009−525960(JP,A)
【文献】 特開2006−316054(JP,A)
【文献】 特表2008−525417(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/139339(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/103706(WO,A1)
【文献】 特開2004−031004(JP,A)
【文献】 特開2001−089474(JP,A)
【文献】 GRAULICH,A. et al,A rapid synthesis of thieno[2,3-c]pyridine and 2-substituted thieno[2,3-c]pyridines,Synthesis,2004年,No.12,pp.1935-1937
【文献】 NERENZ,H. et al,Nonlinear optical chromophores with isoquinolines, thieno[2,3-c]pyridines and 2-(2'-thienyl)pyridine,Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry,1998年,No.2,pp.437-447
【文献】 GLEICH,E. et al,Elemental sulfur reactions with 4-picoline,Phosphorus and Sulfur and the Related Elements,1986年,Vol.28, No.3,pp.315-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/05
H01L 29/786
H01L 51/30
C07D493/00−497/22
C07D498/00−498/22
C07D513/00−521/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[式中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素芳香環基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基又は−SO(Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基)で示される置換基であり、Wは、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよい複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種である。]
で示されるチエノピリジン誘導体を含有する有機半導体デバイス。
【請求項2】
Wが下記一般式(2):
【化2】
[式中、Rは、前記一般式(1)と同義であり、Yは、アリーレン基及び2価の複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種であり、nは0以上の整数である。]
で示される複素芳香環基である請求項1記載のチエノピリジン誘導体を含有する有機半導体デバイス。
【請求項3】
有機半導体デバイスが有機薄膜トランジスタ素子である請求項1又は2記載の有機半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チエノピリジン骨格を有する新規化合物及びその製造方法、並びにそれを用いた有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノメートルサイズのπ共役分子が、導電材料、光電変換材料、電界発光材料、非線形光学材料、電界効果トランジスタ材料などの多彩な機能性材料、特に有機半導体材料として注目されている。一般的に、低分子化合物からなる有機半導体材料の場合、比較的低い温度で蒸着させるプロセスにより、有機半導体層を形成することが可能である。また、低分子化合物や高分子化合物に限らず、例えば、インクジェット方式などの印刷法等の溶液プロセスにより、有機半導体層を形成することが可能である。したがって、無機半導体材料を用いて作製する場合に比べて、有機半導体材料を用いて有機半導体素子を作製することにより、大幅な低コスト化が可能であるとされている。
【0003】
一方、有機半導体材料は、シリコンなどの無機半導体材料に比べて、キャリア移動度が低いという欠点を有している。かかる欠点を解決する手段の一つとして、例えば、オリゴチオフェン、ポリチオフェンなどのチオフェン類、ペンタセン、ルブレンなどのアセン類、ベンゾチオフェン、チエノチオフェンなどの縮環化合物などの有機半導体材料の提案がなされている。これらの中でも、オリゴチオフェンに代表される低分子材料は、分子サイズが単一でありパッキング性に優れる利点があるとともに、比較的合成が容易であること、熱および光に対して安定であること、また精密な構造修飾が可能であることなどの理由から、最も研究されている有機半導体材料の一つである(非特許文献1)。しかしながら、キャリア移動度等に代表される有機半導体素子に要求される特性が必ずしも十分ではなく、更なる向上を目的として新規な有機半導体材料の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Otsubo et al., Synthesis,Optical, and Conductive Properties of Long Oligothiophenes and TheirUtilization as Molecular Wires, Bull. Chem. Soc. Jpn. 2001, Vol.74, No.10,p.1789-1801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、有機半導体デバイス、特に有機薄膜トランジスタ素子として有用な新規なチエノピリジン誘導体、及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、下記一般式(1):
【化1】
[式中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素芳香環基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基又は−SO(Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基)で示される置換基であり、Wは、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよい複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種である。]
で示されるチエノピリジン誘導体を含有する有機半導体デバイスを提供することによって解決される。
【0007】
このとき、Wが下記一般式(2):
【化2】
[式中、Rは、前記一般式(1)と同義であり、Yは、アリーレン基及び2価の複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種であり、nは0以上の整数である。]
で示される複素芳香環基であることが好適である。
【0013】
また、このとき有機半導体デバイスが有機薄膜トランジスタ素子であることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、新規なチエノピリジン誘導体、及びその製造方法を提供することができる。こうして得られたチエノピリジン誘導体は、有機半導体デバイスとして有用であり、特に有機薄膜トランジスタ素子として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例7において作製した有機薄膜トランジスタの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、一般式(1)で示されるチエノピリジン誘導体及びその製造方法を提供することができる。一般式(1)で示されるチエノピリジン誘導体は新規化合物である。以下詳細について述べる。
【0017】
【化11】
[式中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素芳香環基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいエステル基又は−SO(Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基)で示される置換基であり、Wは、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよい複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種である。]
【0018】
上記一般式(1)において、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素芳香環基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいエステル基又は−SO(Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基)で示される置換基である。
【0019】
本発明の一般式(1)中のRで用いられるアルキル基は、直鎖や分岐鎖のアルキル基であってもよいし、環状のシクロアルキル基であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖や分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基、シクロウンデカニル基、シクロドデカニル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0020】
上記R中のアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等の複素芳香環基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基;tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基等の三置換シリルオキシ基;アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル基等のアリールスルフィニル基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基等のスルフォン酸エステル基;アミノ基;水酸基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;などが挙げられる。
【0021】
上記Rが有していてもよい置換基の内のアミノ基としては、1級アミノ基(−NH)の他、2級アミノ基、3級アミノ基であっても良い。2級アミノ基は、−NHR(Rは任意の一価の置換基である)で示されるモノ置換アミノ基であり、Rとしては、アルキル基、アリール基、アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。2級アミノ基の具体例としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基等のようにRがアルキル基である2級アミノ基や、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等のようにRがアリール基である2級アミノ基等が挙げられる。また、Rにおけるアルキル基やアリール基の水素原子が、更にアセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基等で置換されていてもよい。3級アミノ基は、−NR(R及びRはアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1種である)で示されるジ置換アミノ基であり、Rとしては、Rと同様のものを用いることができ、R及びRは互いに同じでも異なっていてもよい。3級アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基等のようにR及びRがアルキル基またはアリール基から選択される3級アミノ基等が挙げられる。
【0022】
本発明の一般式(1)のRで用いられるアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらアルケニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、アルキル基の説明のところで例示された置換基と同様のものを用いることができる。
【0023】
本発明の一般式(1)のRで用いられるアルキニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、フェニルエチニル基等が挙げられる。これらアルキニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、アルキル基の説明のところで例示された置換基と同様のものを用いることができる。
【0024】
本発明の一般式(1)のRで用いられるアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。これらアルコキシ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、アルキル基の説明のところで例示されたアルコキシ基以外の置換基を同様に用いることができる。
【0025】
本発明の一般式(1)のRで用いられるアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、アルキル基の説明のところで例示されたアリール基以外の置換基や、上述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を用いることができる。
【0026】
本発明の一般式(1)のRで用いられる複素芳香環基は、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等が挙げられる。これら複素芳香環基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、アルキル基の説明のところで例示された複素芳香環基以外の置換基や、上述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を用いることができる。
【0027】
本発明の一般式(1)のRで用いられるアルキルチオ基は、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられる。また、本発明で用いられるアリールチオ基は、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。これらアルキルチオ基やアリールチオ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、アルキル基の説明のところで例示されたアルキルチオ基やアリールチオ基以外の置換基を同様に用いることができる。
【0028】
本発明の一般式(1)のRで用いられるエステル基は、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。これらアルコキシカルボニル基は置換基を有してもよく、かかる置換基としては、アルキル基の説明のところで例示されたアルコキシカルボニル基以外の置換基を同様に用いることができる。
【0029】
本発明の一般式(1)のRで用いられる−SO(Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基)で示される置換基としては特に限定されない。ここで、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基等が挙げられる。置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、及び置換基を有してもよいアリール基としては、上述のRの説明のところで例示された置換基と同様のものを用いることができる。中でも、原料の入手性の観点から、Rは置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基であることが好ましく、置換基を有してもよいアリール基であることがより好ましい。−SOで示される置換基の具体例としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基等のアリールスルホニル基などが挙げられる。これらアルキルスルホニル基やアリールスルホニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、アルキル基の説明のところで例示された置換基を同様に用いることができる。
【0030】
ここで、上記一般式(1)で示されるチエノピリジン誘導体において、合成方法の観点からRは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素芳香環基、置換基を有してもよいエステル基又は−SO(Rは前記定義の通りである。)で示される置換基であることが好ましい。Rの炭素数は、有していてもよい置換基の炭素原子も含めて1〜20であることが好ましい。
【0031】
また、上記一般式(1)において、Wは、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよい複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種である。該アリール基及び複素芳香環基の有してもよい置換基もまたさらにアリール基または複素芳香環基であることができる。すなわち、Wは、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよい複素芳香環基からなる群から選択される1種からなる単独の置換基であってもよいし、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよい複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種が相互に複数結合された置換基であってもよい。
【0032】
ここで、Wに用いられる置換基を有してもよいアリール基としては、上述のRの説明のところで例示された置換基と同様のものを用いることができる。また、Wに用いられる置換基を有してもよい複素芳香環基としては、上述のRの説明のところで例示された置換基と同様のものや、下記一般式(2)で示される複素芳香環基を用いることができる。中でも、原料の入手性および合成容易性の観点からWとしては、チエニル基、チエニル基が相互に複数結合されたビチエニル基やターチエニル基等の置換基、又は下記一般式(2)で示される複素芳香環基が好適に用いられ、チエニル基が相互に複数結合された置換基、又は下記一般式(2)で示される複素芳香環基がより好適に用いられ、下記一般式(2)で示される複素芳香環基が更に好適に用いられる。
【0033】
【化12】
[式中、Rは、前記一般式(1)と同義であり、Yは、アリーレン基及び2価の複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種であり、nは0以上の整数である。]
【0034】
上記一般式(2)において、Yは、アリーレン基及び2価の複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種であり、nは0以上の整数である。nが0の場合は、後述する実施例1からも分かるように、Yを介さずに上記一般式(2)で示される置換基がチオフェン環の2位に直接結合された一般式(1)で示されるチエノピリジン誘導体が得られる。一方、nが1以上の整数の場合は、後述する実施例2〜5からも分かるように、アリーレン基及び2価の複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種からなるYを介して、上記一般式(2)で示される置換基がチオフェン環の2位に結合された一般式(1)で示されるチエノピリジン誘導体が得られる。
【0035】
上記一般式(2)において、Yに用いられるアリーレン基としては、例えば、フェニレン、2,3−ジアルキルフェニレン、2,5−ジアルキルフェニレン、2,3,5,6−テトラアルキルフェニレン、2,3−アルコキシフェニレン、2,5−アルコキシフェニレン、2,3,5,6−テトラアルコキシフェニレン、2−(N,N,−ジアルキルアミノ)フェニレン、2,5−ジ(N,N,−ジアルキルアミノ)フェニレン、2,3−ジ(N,N,−ジアルキルアミノ)フェニレン、p−フェニレンオキシド、p−フェニレンスルフィド、p−フェニレンアミノ、p−フェニレンビニレン、フルオレニレン、ナフチレン、アントリレン、テトラセニレン、ペンタセニレン、ヘキサセニレン、ヘプタセニレン、ナフチレンビニレン、ペリナフチレン、アミノピレニレン、フェナントレニレン等が挙げられ、これらから選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0036】
また、Yに用いられる2価の複素芳香環基としては、例えば、N−アルキルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラジン、キノリン、プリン等のピリジン誘導体;フラン、3−アルキルフラン等のフラン誘導体;ピロール、N−アルキルピロール、エチレン−3,4−ジオキシピロール、プロピレン−3,4−ジオキシピロール等のピロール誘導体;チオフェン、チオフェンビニレン、アルキルチオフェン、エチレン−3,4−ジオキシチオフェン、プロピレン−3,4−ジオキシチオフェン、チエノチオフェン、チエノフラン、チエノピラジン、イソチアナフテン等のチオフェン誘導体;オキサジアゾール、チアジル、セレノフェン、テルロフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ベンゾトリアゾール、ピラン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール等の複素環誘導体等が挙げられ、これらから選択される少なくとも1種が好適に用いられる。中でもチオフェン誘導体がより好適に用いられる。
【0037】
本発明において、一般式(1)で示されるチエノピリジン誘導体は、下記化学反応式(I)で示される反応1及び2のように、一般式(6)で示される化合物におけるチオフェン環の2位にハロゲン原子を導入して一般式(3)で示される化合物を得て、次いで一般式(3)で示される化合物と一般式(4)で示される化合物とをクロスカップリング反応させることにより得ることができる。
【0038】
【化13】
[式中、R及びWは、前記一般式(1)と同義であり、Xはハロゲン原子であり、Zは、−MgCl、−MgBr、−MgI、−ZnCl、−ZnBr、−ZnI、−Sn(R(Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基)、−Si(OH)、ボロン酸及びボロン酸エステル基からなる群から選択される1種である。]
【0039】
上記一般式(3)で示される化合物中のXはハロゲン原子であり、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、カップリング反応の反応性を考慮すると臭素原子又はヨウ素原子が好適に用いられる。また、上記一般式(4)で示される化合物中のZは、−MgCl、−MgBr、−MgI、−ZnCl、−ZnBr、−ZnI、−Sn(R(Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基)、−Si(OH)、ボロン酸及びボロン酸エステル基からなる群から選択される少なくとも1種であり、合成効率が良好である観点から、Zとしては、−Sn(R、ボロン酸及びボロン酸エステル基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。ここで、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であり、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基としては、上述のRの説明のところで例示されたアルキル基やアリール基のうち、炭素数1〜10のアルキル基や、アリール基を同様に用いることができる。
【0040】
上記反応1において、ハロゲン原子を導入する好適な実施態様としては、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、溶媒の存在下にハロゲン化剤を反応させる方法が挙げられる。上記反応1で用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド等が挙げられる。溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる溶媒の使用量は、一般式(6)で示される化合物1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。
【0041】
また、上記反応1で用いられるハロゲン化剤としては、例えば、N−クロロスクシンイミド、N−クロロフタル酸イミド、塩素、五塩化リン、塩化チオニル、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンなどの塩素化剤;N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモフタル酸イミド、N−ブロモジトリフルオロメチルアミン、臭素、三臭化ホウ素、臭化銅、臭化銀、臭化−t−ブチル、酸化臭素、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンなどの臭素化剤;ヨウ素、ヨウドトリクロライド、N−ヨードフタル酸イミド、N−ヨードスクシンイミドなどのヨウ素化剤等が挙げられる。これらの中でも、臭素化剤またはヨウ素化剤を用いることが好ましく、臭素化剤を用いることがより好ましい。上記反応1で用いられるハロゲン化剤の使用量については特に限定されず、一般式(6)で示される化合物1モルに対して0.5〜5モルであることが好ましい。ハロゲン化剤の使用量が5モルを超える場合、未反応のハロゲン化剤の除去作業が煩雑になるおそれがあり、4モル以下であることがより好ましい。一方、ハロゲン化剤の使用量が0.5モル未満である場合、原料である未反応の一般式(6)で示される化合物との分離精製作業が煩雑になるおそれがあり、1モル以上であることがより好ましい。
【0042】
上記反応1において、一般式(6)で示される化合物とハロゲン化剤とを反応させる際の反応温度については特に限定されず、−100〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−50℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が200℃を超える場合、生成物またはハロゲン化剤の分解を促進するおそれがあり、100℃以下であることがより好ましい。反応時間は、1分〜20時間であることが好ましく、0.5〜10時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0043】
続いて、上記反応2で示されるように、一般式(3)で示される化合物と一般式(4)で示される化合物とをクロスカップリング反応させることにより、一般式(1)で示されるチエノピリジン誘導体を得ることができる。上記反応2の好適な実施態様としては、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、溶媒および金属錯体の存在下に上記反応1で得られた一般式(3)で示される化合物と一般式(4)で示される化合物とをクロスカップリング反応させる方法が挙げられる。上記反応2で用いられる金属錯体としては、例えば、ニッケルやパラジウム等の金属錯体が挙げられ、特にPd(PPhやNiCl(dppp)等のようにホスフィン類が配位している金属錯体を用いることが好ましい。
【0044】
上記反応2におけるクロスカップリング反応としては、例えば、Stilleカップリング反応、熊田−玉尾カップリング反応、檜山カップリング反応、Suzukiカップリング反応、Yamamoto反応、Kumada−Corriu反応、Riecke反応、McCullogh反応等が挙げられる。中でも反応効率観点から、Stilleカップリング反応、Suzukiカップリング反応、熊田−玉尾カップリング反応、又は檜山カップリング反応が好適に採用され、Stilleカップリング反応、Suzukiカップリング反応がより好適に採用される。なお、Stilleカップリング反応は、一般式(4)で示される化合物中のZが−Sn(Rで示される基である有機スズ化合物を用いた反応であり、Suzukiカップリング反応は、一般式(4)で示される化合物中のZがボロン酸及びボロン酸エステル基である有機ホウ素化合物を用いた反応であり、熊田−玉尾カップリング反応は、一般式(4)で示される化合物中のZが−MgBr等で示される基である有機マグネシウム化合物を用いた反応であり、檜山カップリング反応は、一般式(4)で示される化合物中のZが−Si(OH)等で示される基である有機ケイ素化合物を用いた反応である。
【0045】
上記反応2では、通常、有機溶媒又は水などの溶媒が用いられ、好適には有機溶媒が用いられる。用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素などが挙げられ、中でも非プロトン性溶媒又はエーテルが好ましく用いられる。かかる溶媒はそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、かかる有機溶媒の使用量は、一般式(3)で示される化合物1質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましい。
【0046】
上記反応2のクロスカップリング反応における反応温度については特に限定されず、−50〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−50℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−20℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が200℃を超える場合、生成物または触媒である金属錯体の分解を促進するおそれがあり、100℃以下であることがより好ましい。反応時間は、1分〜80時間であることが好ましく、0.5〜60時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0047】
また、本発明において、一般式(1)で示される化合物の好適な実施態様である下記一般式(1a)で示される化合物は、下記化学反応式(II)で示される反応3のように、一般式(3)で示される化合物と一般式(5)で示される化合物とをクロスカップリング反応させることにより得ることができる。
【0048】
【化14】
[式中、Rは、前記一般式(1)と同義であり、Xはハロゲン原子であり、Yは、アリーレン基及び2価の複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種であり、nは1以上の整数であり、Zは、−MgCl、−MgBr、−MgI、−ZnCl、−ZnBr、−ZnI、−Sn(R(Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基)、−Si(OH)、ボロン酸及びボロン酸エステル基からなる群から選択される1種である。]
【0049】
上記反応3は、一般式(3)で示される化合物と一般式(5)で示される化合物とをクロスカップリング反応させることにより、一般式(1a)で示される化合物を得る反応である。こうして得られる一般式(1a)で示される化合物は、一般式(1)で示される化合物におけるWが一般式(2)で示される複素芳香環基である場合の化合物である。ここで、クロスカップリング反応としては、上述の反応2の説明のところで例示された反応を採用することができる。また、こうして得られた一般式(1a)で示されるチエノピリジン誘導体におけるYは、アリーレン基及び2価の複素芳香環基からなる群から選択される少なくとも1種であり、上述の一般式(2)の説明のところで例示されたものと同様のものが好適に採用される。
【0050】
また、本発明において、一般式(1)で示される化合物の好適な実施態様である下記一般式(1b)で示される化合物は、下記化学反応式(III)で示される反応4のように、一般式(3)で示される化合物に対して有機リチウム化合物を用いてリチオ化し、次いでハロゲン化銅(II)を反応させることにより得ることができる。
【0051】
【化15】
[式中、Rは、前記一般式(1)と同義であり、Xはハロゲン原子である。]
【0052】
上記反応4において用いられる有機リチウム化合物としては特に限定されず、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物;フェニルリチウムなどのアリールリチウム化合物;ビニルリチウムなどのアルケニルリチウム化合物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビストリメチルシリルアミドなどのリチウムアミド化合物などが使用される。これらの中でもアルキルリチウム化合物を用いることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量については特に限定されず、一般式(3)で示される化合物1molに対して0.5〜5molであることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量が5molを超える場合、副反応や生成物の分解を促進するおそれがあり、4mol以下であることがより好ましい。また、有機リチウム化合物の使用量は、1mol以上であることがより好ましい。
【0053】
また、上記反応4において用いられるハロゲン化銅(II)としては特に限定されず、例えば、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)等が挙げられる。ハロゲン化銅(II)の使用量については特に限定されず、一般式(3)で示される化合物1molに対して0.5〜5molであることが好ましい。ハロゲン化銅(II)の使用量が5molを超える場合、余剰のハロゲン化銅(II)の除去操作が煩雑になるおそれがあり、4mol以下であることがより好ましい。また、ハロゲン化銅(II)の使用量は、1mol以上であることがより好ましい。
【0054】
上記反応4は、溶媒の存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエンなどの芳香族炭化水素;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの中でも、エーテルを用いることが好ましく、具体的には、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテルを使用することが好ましい。溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる溶媒の使用量は、一般式(3)で示される化合物1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。
【0055】
上記反応4における反応温度については特に限定されず、−100〜25℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−90℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が25℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、20℃以下であることがより好ましい。反応時間は、1分〜10時間であることが好ましく、5分〜5時間であることがより好ましい。
【0056】
以上説明した上記一般式(1)で示される本発明のチエノピリジン誘導体は、新たな有機半導体材料として好適に用いることができる。中でも、有機薄膜トランジスタ素子、光電変換素子、有機電界発光素子、液晶表示素子等の有機半導体デバイスとして好適に用いられ、有機薄膜トランジスタ素子としてより好適に用いられる。以下、本発明のチエノピリジン誘導体を用いた有機薄膜トランジスタ素子の実施態様について説明する。
【0057】
本発明の有機薄膜トランジスタ素子は、上記一般式(1)で示されるチエノピリジン誘導体を含有する有機半導体層、基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース−ドレイン電極等を用いて、例えば、基板/ゲート電極/ゲート絶縁層/有機半導体層/ソース−ドレイン電極の構成、基板/ゲート電極/ゲート絶縁層/ソース−ドレイン電極/有機半導体層の構成などが好適に採用されるが、本発明はこれらに限定されない。
【0058】
本発明の有機薄膜トランジスタ素子を構成する有機半導体層としては、本発明のチエノピリジン誘導体を薄膜化することにより好適に形成され、薄膜化する方法としては、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、スクリーン印刷法、プリンティング法、浸漬(dipping)法、インク噴射法などが挙げられる。
【0059】
本発明の有機薄膜トランジスタ素子を構成する基板としては特に限定されず、例えば、ガラス、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリノルボルネン、ポリエーテルスルホン(PES)などが挙げられる。
【0060】
本発明の有機薄膜トランジスタ素子を構成するゲート電極やソース−ドレイン電極としては、通常使用される金属であれば特に限定されず、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル、インジウム錫酸化物(ITO)などが好適に使用される。
【0061】
また、本発明の有機薄膜トランジスタ素子を構成するゲート絶縁層としては特に限定されず、通常使用される誘電率の大きい絶縁体を使用することができる。具体的には、Ba0.33Sr0.66TiO(BST)、Al、Ta、La、YおよびTiOなどの強誘電性絶縁体;PbZr0.33Ti0.66(PZT)、BiTi12、BaMgF、SrBi(TaNb)、Ba(ZrTi)O(BZT)、BaTiO、SrTiO、BiTi12、SiO、SiNおよびAlONなどの無機絶縁体;ポリイミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、パリレン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコールおよびポリビニルフェノールなどの有機絶縁体等を使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0063】
実施例1
(合成例1)[式(6a)で示される5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジンの合成]
温度計、マグネチックスターラおよび滴下漏斗を装備した内容積300mlの3口フラスコに、フェニルスルホニルシアニド(3.77g、22.6mmol)とクロロギ酸イソブチル(3.08g、22.6mmol)をキシレン(100ml)中混合し、加熱還流下に攪拌した。この混合物に3−メチルチオフェン−2−カルバルデヒド−N−フェニルイミン(3.03g、15mmol)のキシレン(50ml)溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物を1時間還流下に加熱し、室温まで放冷した後、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2.79gの5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン(10.1mmol、収率67%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0064】
【化16】
【0065】
式(6a)で示される5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:9.16(d,1H,J=1.08Hz),8.66(d,1H,J=1.08Hz),8.13−8.08(m,2H),7.90(d,1H,J=4.86Hz),7.62−7.48(m,4H).
【0066】
(合成例2)[式(3a)で示される2−ブロモ−5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジンの合成]
温度計およびマグネチックスターラを装備した内容積50mlの3口フラスコに、5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン(2.37g、8.6mmol)、N−ブロモコハク酸イミド(4.60g、25.8mmol)およびアセトニトリル30mlを加え、70℃にて6時間加熱攪拌した。反応液を室温まで放冷した後、溶媒を留去して得られた残渣に、酢酸エチル100mlおよび水100mlを添加した。分液漏斗をもちいて有機層と水層を分離し、水層を酢酸エチル50mlで2回抽出した。先に分離した有機層と混合し、水100mlで2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥した。溶媒を留去して得られた粗生成物を、トルエンと酢酸エチルを用いて再結晶により精製し、2.49gの2−ブロモ−5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン(7.0mmol、収率81%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0067】
【化17】
【0068】
式(3a)で示される2−ブロモ−5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:9.13(d,1H,J=0.81Hz),8.65(d,1H,J=0.81Hz),8.14−8.10(m,2H),7.86(s,1H),7.63−7.50(m,3H).
【0069】
(合成例3−1)[式(3b)で示される2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジンの合成]
温度計およびマグネチックスターラを装備した内容積50mlの3口フラスコに、2−ブロモ−5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン(1.00g、2.8mmol)、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液(1.62g、8.4mmol)およびテトラヒドロフラン20mlを加え、60℃にて6時間加熱攪拌した。反応液を室温まで放冷して酢酸1mlを添加した後、溶媒を留去して得られた残渣に、酢酸エチル50mlおよび水50mlを添加した。分液漏斗をもちいて有機相と水相を分離し、無水硫酸マグネシウムを用いて有機相を乾燥した。溶媒を留去して得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.635gの2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(2.6mmol、収率93%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0070】
【化18】
【0071】
式(3b)で示される2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:8.68(s,1H),7.63(s,1H),7.10(s,1H),4.02(s,3H).
【0072】
(合成例3−2)[式(3c)で示される2−ブロモ−5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジンの合成]
温度計およびマグネチックスターラを装備した内容積50mlの3口フラスコに、2−ブロモ−5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン(1.00g、2.8mmol)、ナトリウムn−ブトキシド(806mg、8.4mmol)およびテトラヒドロフラン20mlを加え、60℃にて6時間加熱攪拌した。反応液を室温まで放冷して酢酸1mlを添加した後、溶媒を留去して得られた残渣に、酢酸エチル50mlおよび水50mlを添加した。分液漏斗をもちいて有機相と水相を分離し、無水硫酸マグネシウムを用いて有機相を乾燥した。溶媒を留去して得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.729gの2−ブロモ−5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(2.55mmol、収率91%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0073】
【化19】
【0074】
式(3c)で示される2−ブロモ−5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:0.99(t,3H,J=7.2Hz),1.51−1.56(m,2H),1.78−1.84(m,2H),4.34(t,2H,J=6.5Hz),7.09(s,1H),7.62(s,1H),8.67(s,1H).
【0075】
(合成例3−3)[式(3d)で示される2−ブロモ−5−n−ヘキシルオキシチエノ[2,3−c]ピリジンの合成]
合成例3−2において、ナトリウムn−ブトキシド(806mg、8.4mmol)をナトリウムn−ヘキシルオキシド(1.042g、8.4mmol)に変更した以外は同様に反応および後処理を行い、0.695gの2−ブロモ−5−n−ヘキシルオキシチエノ[2,3−c]ピリジン(2.21mmol、収率79%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0076】
【化20】
【0077】
式(3d)で示される2−ブロモ−5−n−ヘキシルオキシチエノ[2,3−c]ピリジンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:0.91(t,3H,J=6.8Hz),1.33−1.37(m,4H),1.45−1.53(m,2H),1.78−1.86(m,2H),4.32(t,2H,J=6.5Hz),7.09(s,1H),7.62(s,1H),8.67(s,1H).
【0078】
(合成例4)[式(1b−1)で示される2,2’−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン)の合成]
温度計およびマグネチックスターラを装備した内容積50mlの3口フラスコに、2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(400mg、1.64mmol)およびテトラヒドロフラン10mlを加え、−78℃に冷却した。この混合液を攪拌しながら、n−ブチルリチウムの1.66Mヘキサン溶液1.28ml(2.13mmol)を内温が−70℃以下に保たれるようにして滴下し、滴下終了後30分間−78℃にて攪拌した。この反応液に塩化銅(II)(264mg、1.97mmol)を加えて−78℃にて1時間攪拌した。反応終了後、室温まで昇温した後、0.1N塩酸水溶液10mlを添加し、分液漏斗を用いて有機相を分離した。水相をクロロホルムを用いて抽出し、先の有機相と混合したものを、希塩酸、水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、減圧下濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=95/5)を用いて精製し、目的物である2,2’−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン)を橙色固体として得た(110mg、0.34mmol、収率41%)。化学反応式を以下に示す。
【0079】
【化21】
【0080】
式(1b−1)で示される2,2’−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン)のNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:8.78(s,2H),7.76(s,2H),7.02(s,2H),3.98(s,6H).
13C−NMR(68.5MHz、CDCl)δ:54.1,102.2,120.9,129.5,141.1,143.1,148.7,162.0.
質量分析:m/z 328(M
融点:258℃
【0081】
実施例2−1
(合成例5−1)[式(1a−1)で示される2,5−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンの合成]
温度計およびマグネチックスターラを装備した内容積50mlの3口フラスコに、2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(200mg、0.82mmol)、2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン(271mg、0.41mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(48mg、0.042mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド15mlを加え、系内をアルゴン置換した後、50℃にて2日間加熱攪拌した。反応終了後、100mlの水に反応液を加え、分液漏斗を用いて有機相を分離した。水相を塩化メチレンにより抽出し、先の有機相と混合したものを水により洗浄した後、有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。有機相を減圧下濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/エーテル=80/20)を用いて精製し、目的物である2,5−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンを橙色固体として得た(58.9mg、0.14mmol、2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン基準の収率35%)。化学反応式を以下に示す。
【0082】
【化22】
【0083】
式(1a−1)で示される2,5−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:8.76(s,2H),7.78(s,2H),7.47(s,2H),7.38(s,2H)、4.04(s,6H).
13C−NMR(68MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:54.24,101.91,125.75,128.92,130.49,130.70,135.79,141.88,146.20.
質量分析:m/z 410(M
融点: 196℃
【0084】
実施例2−2
(合成例5−2)[式(1a−2)で示される2,5−ビス(5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンの合成]
合成例5−1において、2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(200mg、0.82mmol)を、2−ブロモ−5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(235mg、0.82mmol)に変更した以外は同様に反応および後処理を行い、2,5−ビス(5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンを橙色固体として得た(111.6mg、0.23mmol、2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン基準の収率55%)。化学反応式を以下に示す。
【0085】
【化23】
【0086】
式(1a−2)で示される2,5−ビス(5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:0.99(t,6H,J=7.2Hz),1.47−1.55(m,4H),1.77−1.85(m,4H),4.35(t,4H,J=6.5Hz),7.38(s,2H),7.44(s,2H),7.76(s,2H),8.73(s,2H).
【0087】
実施例2−3
(合成例5−3)[式(1a−3)で示される2,5−ビス(5−n−ヘキシロキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンの合成]
合成例5−1において、2−ブロモ−5−n−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(200mg、0.82mmol)を、2−ブロモ−5−n−ヘキシロキシチエノ[2,3−c]ピリジン(258mg、0.82mmol)に変更した以外は同様に反応および後処理を行い、2,5−ビス(5−n−ヘキシロキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンを橙色固体として得た(92.6mg、0.17mmol、2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン基準の収率41%)。化学反応式を以下に示す。
【0088】
【化24】
【0089】
式(1a−3)で示される2,5−ビス(5−n−ヘキシロキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:0.88−0.91(t,6H,J=7.2Hz),1.33−1.37(m,4H,4H),1.45−1.52(m,4H),1.78−1.85(m,4H),4.33−4.36(t,4H,J=6.5Hz),7.37(s,2H),7.45(s,2H),7.74(s,2H),8.73(s,2H).
【0090】
実施例2−4
(合成例5−4)[式(1a−4)で示される1,4−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)ベンゼンの合成]
合成例5−1において、2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン(271mg、0.41mmol)を、1,4−ビス(トリブチルスタニル)ベンゼン(269mg、0.41mmol)に変更した以外は同様に反応および後処理を行い、1,4−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)ベンゼンを橙色固体として得た(124.4mg、0.308mmol、1,4−ビス(トリブチルスタニル)ベンゼン基準の収率75%)。化学反応式を以下に示す。
【0091】
【化25】
【0092】
式(1a−4)で示される1,4−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)ベンゼンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:4.02(s,6H),7.29(s,2H),7.68(s,6H),8.77(s,2H).
【0093】
実施例3−1
(合成例6−1)[式(1a−5)で示される5,5’−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンの合成]
合成例5−1において、2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン(271mg、0.41mmol)を、5,5’−ビス(トリブチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン(305mg、0.41mmol)に変更した以外は同様に反応および精製を行い、目的物である5,5’−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンを橙色固体として得た(131mg、0.27mmol、5,5’−ビス(トリブチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン基準の収率65%)。化学反応式を以下に示す。
【0094】
【化26】
【0095】
式(1a−5)で示される5,5’−ビス(5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(400MHz,CDCl)δ:4.04(s,6H),7.26(d,J=3.9Hz,2H),7.28(d,J=3.9Hz,2H),7.47(s,2H),7.74(s,2H),8.74(s,2H).
13C−NMR(67.5MHz,CDCl)δ:54.2,101.9,124.3,125.9,128.9,130.2,130.7,135.2,136.5,141.8,146.1,162.2.
質量分析:m/z 429(M
融点:246℃
【0096】
実施例3−2
(合成例6−2)[式(1a−6)で示される5,5’−ビス(5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンの合成]
合成例6−1において、2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(200mg、0.82mmol)を、2−ブロモ−5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(235mg、0.82mmol)に変更した以外は同様に反応および後処理を行い、5,5’−ビス(5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンを橙色固体として得た(137mg、0.238mmol、5,5’−ビス(トリブチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン基準の収率58%)。化学反応式を以下に示す。
【0097】
【化27】
【0098】
式(1a−6)で示される5,5’−ビス(5−n−ブトキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(400 MHz,CDCl):δ0.99(t,J=7.2Hz,6H),1.50−1.56(m,4H),1.78−1.84(m,4H),4.6(t,J=6.5 Hz,4H),7.26(d,J=3.9Hz,2H),7.28(d,J=3.9Hz,2H),7.28−7.29(d,J=3.9Hz,2H),7.45(s,2H),7.73(s,2H),8.72(s,2H).
【0099】
実施例3−3
(合成例6−3)[式(1a−7)で示される5,5’−ビス(5−n−ヘキシルオキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンの合成]
合成例6−1において、2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(200mg、0.82mmol)を、2−ブロモ−5−n−ヘキシロキシチエノ[2,3−c]ピリジン(258mg、0.82mmol)に変更した以外は同様に反応および後処理を行い、5,5’−ビス(5−n−ヘキシルオキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンを橙色固体として得た(138mg、0.217mmol、5,5’−ビス(トリブチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン基準の収率53%)。化学反応式を以下に示す。
【0100】
【化28】
【0101】
式(1a−7)で示される5,5’−ビス(5−n−ヘキシルオキシチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(400MHz,CDCl):δ0.99(t,J=7.2Hz,6H),1.33−1.37(m,8H),1.45−1.51(m,4H),1.79−1.86(m,4H),4.35(t,J=6.5Hz,4H),7.26(d,J=3.9Hz,2H),7.28(d,J=3.9Hz,2H),7.45(s,2H),7.73(s,2H),8.73(s,2H).
【0102】
実施例4
(合成例7)[式(1a−8)で示される2,5−ビス(5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンの合成]
合成例5−1において、2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(200mg、0.82mmol)を、合成例2により得られた2−ブロモ−5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン(290mg、0.82mmol)に変更し、2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン(271mg、0.41mmol)を、2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェン(168mg、0.41mmol)に変更した以外は同様に反応および精製を行い、目的物である2,5−ビス(5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンを橙色固体として得た(150mg、0.24mmol、2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェン基準の収率58%)。化学反応式を以下に示す。
【0103】
【化29】
【0104】
式(1a−8)で示される2,5−ビス(5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)チオフェンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:9.13(d,2H,J=1.0Hz),8.88(d,2H,1.0Hz),8.10(dd,4H,J=1.1Hz),7.81(s,2H),7.61−7.46(m,6H),7.39(d,2H,J=3.51Hz).
【0105】
実施例5
(合成例8)[式(1a−9)で示される5,5’−ビス(5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンの合成]
合成例5−1において、2−ブロモ−5−メトキシチエノ[2,3−c]ピリジン(200mg、0.82mmol)を、合成例2により得られた2−ブロモ−5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン(290mg、0.82mmol)に、また2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン(271mg、0.41mmol)を、5,5’−ビス(トリメチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン(202mg、0.41mmol)に変更した以外は同様に反応および精製を行い、目的物である5,5’−ビス(5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンを橙色固体として得た(140mg、0.20mmol、2,5−ビス(トリブチルスタニル)チオフェン基準の収率48%)。化学反応式を以下に示す。
【0106】
【化30】
【0107】
式(1a−9)で示される5,5’−ビス(5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:9.17(d,2H,J=1.08Hz),8.91(d,2H,1.08Hz),8.11(dd,4H,J=1.08Hz),7.89(s,2H),7.61−7.48(m,6H),7.30(d,2H,J=3.51Hz),7.07(dd,2H,J=3.51Hz,5.13Hz).
【0108】
実施例6
(合成例9)[式(6b)で示される5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジンの合成]
合成例1において、フェニルスルホニルシアニド(3.77g、22.6mmol)の代わりにシアノ蟻酸n−ブチル(2.87g、22.6mmol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、3.00gの5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジン(12.8mmol、収率85%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0109】
【化31】
【0110】
式(6b)で示される5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:9.26(d,1H,J=1.08Hz),8.58(d,1H,J=1.08Hz),7.82(d,1H,J=5.4Hz),7.50(d,1H,J=5.4Hz),4.46(t,2H,J=7.02Hz),1.90−1.79(m,2H),1.55−1.43(m,2H),0.99(t,3H,J=7.56Hz).
【0111】
(合成例10)[式(3e)で示される2−ブロモ−5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジンの合成]
合成例2において、5−フェニルスルホニルチエノ[2,3−c]ピリジン(2.37g、8.6mmol)の代わりに5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジン(2.02g、8.6mmol)を用いた以外は、合成例2と同様にして、2.43gの2−ブロモ−5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジン(7.7mmol、収率90%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0112】
【化32】
【0113】
式(3e)で示される2−ブロモ−5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:9.24(d,1H,J=1.08Hz),8.57(d,1H,J=1.08Hz),7.81(d,1H,J=4.05Hz),4.49(t,2H,J=6.48Hz),1.91−1.78(m,2H),1.57−1.44(m,2H),0.97(t,3H,J=7.29Hz).
【0114】
(合成例11)[式(1c)で示される2−(2,2’:5’,2”−チオフェン−2−イル)−5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジンの合成]
温度計およびマグネチックスターラを装備した内容積50mlの3口フラスコに、2−ブロモ−5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジン(1.57g、5.0mmol)、2−(トリブチルスタニル)−2,2’:5’,2”−チオフェン(3.22g、6.0mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(57.8mg、0.05mmol)およびテトラヒドロフラン15mlを加え、系内をアルゴン置換した後、60℃にて7時間加熱攪拌した。反応終了後、100mlの水に反応液を加え、分液漏斗を用いて有機相を分離した。水相を塩化メチレンにより抽出し、先の有機相と混合したものを水により洗浄した後、有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。有機相を減圧下濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=80/20)を用いて精製し、目的物である2−(2,2’:5’,2”−チオフェン−2−イル)−5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジンを橙色固体として得た(1.93g、4.0mmol、2−ブロモ−5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジン基準の収率80%)。化学反応式を以下に示す。
【0115】
【化33】
【0116】
式(1c)で示される(2−(2,2’:5’,2”−チオフェン−2−イル)−5−ブトキシカルボニルチエノ[2,3−c]ピリジン)のNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:9.29(d,1H,J=1.08Hz),8.88(d,2H,1.08Hz),7.85(s,1H),7.33(d,1H,J=3.51Hz),7.28−7.20(m,2H),7.16(d,1H,J=3.51Hz),7.12(d,1H,J=3.51Hz),7.05(dd,1H,J=3.51Hz,4.86Hz),4.49(t,3H,J=6.48Hz),1.91−1.81(m,2H),1.57−1.47(m,2H),1.00(t,3H,J=7.29Hz).
【0117】
実施例7
[有機薄膜トランジスタ素子の作製及びキャリア移動度の測定]
図1に示すボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタ(有機薄膜トランジスタ)を以下の方法により作製した。図1に示すように、本実施例で作製した電界効果トランジスタは、基板とゲート電極とを兼ねるドープシリコン基板8を用いるものであり、図1中、7は接点(ゲートコンタクト)である。
【0118】
ドープしたシリコンウェハ(基板(ゲート電極)8)の上に、熱酸化により230nmのSiO膜(絶縁体層2)をコートした。この裏(基板8の絶縁体層2側と反対側の面)をフッ化水素酸水溶液によりエッチングし、裏にもコートされたSiO膜を除去し、電子ビーム法により、むき出しになった基板8に金を蒸着し、ゲートコンタクト7を作製した。また、この基板8に形成された絶縁体層2上に、電子ビーム法により金を蒸着し、ソース電極3及びドレイン電極4を形成した。チャネル長は10μm、チャネル幅は2cmであった。さらにこの上に、実施例1〜6で得られた化合物からそれぞれ真空蒸着法を用いて半導体層1を形成し、本発明の電界効果トランジスタを作製した。
【0119】
このようにして得られた電界効果トランジスタの特性を、室温真空下で、電圧/電流発生器(アドバンテスト社製R6246型)を用いて測定した。素子のFET特性は、室温真空下で測定した。測定は、作製した電界効果トランジスタのソース・ドレイン間に0から−100Vの電圧を印加し、ソース・ゲート間に印加された電圧を0Vから-100Vの範囲で変化させて、ソース・ドレイン間に印加された電圧(V)に対して流れる電流を測定することにより行った。得られた測定データから、以下の式
={Wμ(V−V}/2L
を用いてキャリア移動度(μ)を求めた。ここで、iはソース・ドレイン間に印加された電圧Vに対して流れる電流を、Vはソース・ゲート間に印加される電圧を、Vは閾値電圧を、Cは絶縁体層の単位面積当たりの静電容量を、Wはチャネル幅を、Lはチャネル長を表す。また、オンオフ比は、ソース・ドレイン間に−100Vの電圧を印加し、ソース・ゲート間に印加される電圧を0Vから−100Vの範囲で変化させたときの、最大と最小のソース・ドレイン間に流れる電流の比として求めた。以下の表1に、電界効果トランジスタのキャリア移動度(μ)およびオンオフ比を示す。
【0120】
【表1】
【符号の説明】
【0121】
1 半導体層
2 絶縁体層
3 ソース電極
4 ドレイン電極
7 ゲートコンタクト
8 基板(ゲート電極)
図1