(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754815
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】無線通信システム、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 74/08 20090101AFI20150709BHJP
H04J 11/00 20060101ALI20150709BHJP
H04J 1/00 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
H04W74/08
H04J11/00 Z
H04J1/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-153052(P2012-153052)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-17628(P2014-17628A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 聞杰
(72)【発明者】
【氏名】宮本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 政一
(72)【発明者】
【氏名】衣斐 信介
【審査官】
石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−525085(JP,A)
【文献】
特表2012−511860(JP,A)
【文献】
特表2014−527751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04J 1/00
H04J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末からアクセスポイントに対して情報伝送を行う上りリンクマルチユーザ通信を行う無線通信システムであって、
前記複数の端末は、
少なくとも1回以上のキャリアセンスを実施するキャリアセンス実行部と、
前記キャリアセンス実行部によるキャリアセンスに応じて、前記アクセスポイントからサブチャネルが割当てられたか否かを判定するサブチャネル割当判定部と、
前記サブチャネル割当判定部によりサブチャネルが割当てられていないと判定された場合に、前記キャリアセンス実行部による2回目以降のキャリアセンスのランダムバックオフ時間を決定するランダムバックオフ時間決定部と
を備え、
前記アクセスポイントは、
前記端末からのキャリアセンスに応じて、空きサブチャネルがあるか否かを判定する空きサブチャネル判定部と、
前記サブチャネル判定部により空きチャネルがあると判定された場合に、空きサブチャネルの中から、送信権を獲得した端末に割当てるサブチャネルを決定するサブチャネル決定部と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記空きサブチャネル判定部は、
時間軸、周波数軸、空間軸、もしくはそれらの組合せに従って、通信チャネルをサブチャネルに分割し、各サブチャネルの伝搬路状況に基づいて、割当てられていない空きサブチャネルを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記ランダムバックオフ時間決定部は、
空きサブチャネルの伝搬路状況が良好であるほど短くなるように、キャリアセンスのランダムバックオフ時間を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
複数の端末からアクセスポイントに対して情報伝送を行う上りリンクマルチユーザ通信を行う無線通信方法であって、
前記複数の端末が、1回目のキャリアセンスを実施するステップと、
前記複数の端末が、キャリアセンスに応じて、前記アクセスポイントからサブチャネルが割当てられたか否かを判定するステップと、
前記複数の端末が、サブチャネルが割当てられていないと判定された場合に、前記キャリアセンスのランダムバックオフ時間を決定するステップと、
前記複数の端末が、前記ランダムバックオフ時間に基づいて、2回目以降のキャリアセンスを実施するステップと、
前記アクセスポイントが、前記端末からのキャリアセンスに応じて、空きサブチャネルがあるか否かを判定するステップと、
前記アクセスポイントが、空きチャネルがあると判定された場合に、空きサブチャネルの中から、送信権を獲得した端末に割当てるサブチャネルを決定するステップと
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末からアクセスポイントへの上りリンク通信を行う無線通信システム、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信では、限られた周波数資源の中で膨大な数の端末を収容し、高品質な通信サービスを提供するために、周波数資源の利用効率を向上することが望まれている。このため、例えばアンライセンスバンドにて周波数共用を図るための自律分散型媒体アクセス制御方式として、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance、衝突回避機能付きキャリア感知多重アクセス)方式が用いられている(例えば非特許文献1参照)。非特許文献1において、DCF(Distributed Coordination Function)として規定されているCSMA/CA方式では、各端末は、確率的に均等に送信権を獲得し、送信権を獲得した端末が無線リソースを占有して伝送する。この場合、送信権の獲得は各端末の伝搬路状況とは無関係であり、獲得した無線リソースは単一の端末が占有する。このため、時間選択性フェージング環境下、及び周波数選択性フェージング環境下では、十分に高い周波数利用効率が得られずに無線リソースを十分に有効に利用することができず、高いスループットを得ることができない。
【0003】
一方、上述のようなフェージング環境下において、伝搬路状況の良好な端末が送信権を獲得し易くする優先制御型CSMA/CAを導入することによりスループットの向上を図る手法が提案されている(例えば非特許文献2参照)。しかし、この手法の場合、伝搬路状況が良好な端末ほど、より送信権を獲得し易くなり、端末によって送信権獲得頻度が異なる。また、非特許文献1と同様、獲得した無線リソースは、単一の端末が占有することから、周波数選択性フェージング環境下では、部分的に利得の低い周波数帯域が存在し、無線リソースを十分に活用できず、高いスループットを得ることはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEEE 802.11-2007, IEEE Standard for Information technology-Telecommunications and information exchange between systems-Local and metropolitan area networks-Specific requirements-Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications
【非特許文献2】Chan-soo Hwang, John M. Cioffi , “Opportunistic CSMA/CA for achieving multi-user diversity in wireless LAN IEEE Transactions on Wireless Communications, vol. 8, no. 6, pp. 2972 - 2982, June 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、非特許文献1、及び2による無線通信方法では、送信権の獲得は、各端末の伝搬路状況を十分考慮しておらず、単一の端末が獲得した無線リソースを占有することから、時間選択性、周波数選択性、及び空間選択性フェージング環境下では、無線リソースを十分に有効に利用することができず、高いスループットを得ることはできないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、無線リソースを有効利用し、スループットを高めることができる無線通信システム、及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の端末からアクセスポイントに対して情報伝送を行う上りリンクマルチユーザ通信を行う無線通信システムであって、前記複数の端末は、少なくとも1回以上のキャリアセンスを実施するキャリアセンス実行部と、前記キャリアセンス実行部によるキャリアセンスに応じて、前記アクセスポイントからサブチャネルが割当てられたか否かを判定するサブチャネル割当判定部と、前記サブチャネル割当判定部によりサブチャネルが割当てられていないと判定された場合に、前記キャリアセンス実行部による2回目以降のキャリアセンスのランダムバックオフ時間を決定するランダムバックオフ時間決定部とを備え、前記アクセスポイントは、前記端末からのキャリアセンスに応じて、空きサブチャネルがあるか否かを判定する空きサブチャネル判定部と、前記サブチャネル判定部により空きチャネルがあると判定された場合に、空きサブチャネルの中から、送信権を獲得した端末に割当てるサブチャネルを決定するサブチャネル決定部とを備えることを特徴とする無線通信システムである。
【0008】
本発明は、上記の発明において、前記空きサブチャネル判定部は、時間軸、周波数軸、空間軸、もしくはそれらの組合せに従って、通信チャネルをサブチャネルに分割し、各サブチャネルの伝搬路状況に基づいて、割当てられていない空きサブチャネルを決定することを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記の発明において、前記ランダムバックオフ時間決定部は、空きサブチャネルの伝搬路状況が良好であるほど短くなるように、キャリアセンスのランダムバックオフ時間を決定することを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、複数の端末からアクセスポイントに対して情報伝送を行う上りリンクマルチユーザ通信を行う無線通信方法であって、前記複数の端末が、1回目のキャリアセンスを実施するステップと、前記複数の端末が、キャリアセンスに応じて、前記アクセスポイントからサブチャネルが割当てられたか否かを判定するステップと、前記複数の端末が、サブチャネルが割当てられていないと判定された場合に、前記キャリアセンスのランダムバックオフ時間を決定するステップと、前記複数の端末が、前記ランダムバックオフ時間に基づいて、2回目以降のキャリアセンスを実施するステップと、前記アクセスポイントが、前記端末からのキャリアセンスに応じて、空きサブチャネルがあるか否かを判定するステップと、前記アクセスポイントが、空きチャネルがあると判定された場合に、空きサブチャネルの中から、送信権を獲得した端末に割当てるサブチャネルを決定するステップとを含むことを特徴とする無線通信方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、無線リソースの有効利用を図り、スループットを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態によるアクセスポイント(基地局)AP、及び端末の構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態によるアクセスポイントAP、及び端末の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本実施形態において、IEEE802.11無線LANシステムへ適用した具体的な通信プロトコルを示す概念図である。
【
図4】本実施形態において、空きサブチャネル有無の判定方法の例を示す概念図である。
【
図5】本実施形態において、空きサブチャネルの伝搬路状況とランダムバックオフ時間との関係を示す概念図である。
【
図6】本実施形態において、サブチャネルの割当方法の例を示す概念図である。
【
図7】従来技術のMAC(Media Access Control)プロトコルを示す概念図である。
【
図8】本発明と従来技術における、端末数と最大スループットの関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
A.実施形態
図1は、本実施形態の無線通信システムにおけるアクセスポイント(基地局)AP、及び端末の主要構成を示すブロック図である。
図1において、アクセスポイントAPは、空きサブチャネル判定部10と、サブチャネル決定部11と、マルチユーザ伝送成否応答部12とを備えている。空きサブチャネル判定部10は、各端末からのキャリアセンスに応じて、各サブチャネルの伝搬路状況から空きサブチャネルがあるか否かを判定する。サブチャネル決定部11は、空きサブチャネルの中から、送信権を獲得した端末に割当てるサブチャネルを決定する。マルチユーザ伝送成否応答部12は、複数の端末から上りリンクマルチユーザ伝送の成否を応答する(ACKの送信)。
【0014】
端末#1、#2(本実施形態では2つの端末を想定)は、キャリアセンス実行部20と、サブチャネル割当判定部21と、ランダムバックオフ時間決定部22とを備えている。キャリアセンス実行部20は、1回目に通常のキャリアセンスを実行し、該キャリアセンスでサブチャネルを獲得できない場合には、後述するランダムバックオフ時間に従って、サブチャネルを獲得できるまで、キャリアセンスを繰り返し実行する。サブチャネル割当判定部21は、キャリアセンス実行部20によるキャリアセンスに応じて、アクセスポイントAPによってサブチャネルが割当てられたか否かを判定する。ランダムバックオフ時間決定部22は、サブチャネルが割当てられない場合に、空きサブチャネルの伝搬路状況(受信SNRなど)が良好であるほど短くなるようにランダムバックオフ時間を決定する。
【0015】
本実施形態では、アクセスポイントAPが、端末によるキャリアセンスに応じて、受信SNR等から伝搬路状況を推定し、該伝搬路状況に基づき割当ての可否を判定し、空きサブチャネルがある限り、再度、キャリアセンスを受け付け、端末は、2回目のRTS(Request To Send)以降、CTS(Clear To Send)の受信SNR等から伝搬路状況を推定し、該伝搬路状況に基づいてバックオフ時間を決定して、アクセスポイントAPに対してアクセスし、割当てられた端末は、アクセスポイントAPに対してOFDMAなどの多元接続方式によりユーザ通信を行う。つまり、マルチユーザ通信の実現のために、アクセスポイントAPが集中制御的に複数の端末を各サブチャネルにマッピングするのではなく、各端末が複数回のCSMA/CAを実施することによって自律分散的にマッピングする。これにより、各端末が自律的に良好な伝搬路状況のサブチャネルを選択してユーザ通信を行うため、無線リソースの有効利用を図ることができる。
【0016】
図2は、本実施形態によるアクセスポイントAP、及び端末の動作を説明するためのフローチャートである。まず、各端末は、通常のキャリアセンスを実行する(ステップS1)。例えば、IEEE802.11無線LANシステムで用いているCSMA/CA方式によって端末の送信権獲得を行う。
【0017】
次に、アクセスポイントAPは、上記キャリアセンスを受けて、空きサブチャネルがあるか否かを判定する(ステップS2)。より具体的には、アクセスポイントAPは、送信権獲得時において送信権を獲得した端末との間の各サブチャネルの伝搬路状況を推定する。ここで、各サブチャネルとは、無線リソースを、時間軸、周波数軸、もしくは空間軸で分割して得られる無線リソースである。アクセスポイントAPは、ステップS1において送信権を獲得した端末との間の各サブチャネルの伝搬路状況から空きサブチャネルの有無を判別する。
【0018】
そして、空きサブチャネルがある場合には(ステップS2のYES)、端末は、k(k≧2)回目のCSMA/CAの実施に移行する(ステップS3)。すなわち、ステップS1で送信権を獲得した端末以外の端末は、CSMA/CAに従って送信権の獲得を試みる。ここでは、空きサブチャネルを有効に利用できる端末が優先的に送信権を獲得できるよう、CSMA/CAでのランダムバックオフ値を決定する。
【0019】
次に、アクセスポイントAPは、サブチャネルを決定する(ステップS4)。アクセスポイントAPは、空きサブチャネルの中から、ステップS3で送信権を獲得した端末に割当てるサブチャネルを決定する。その後、ステップS2に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0020】
一方、空きサブチャネルがなくなった場合には(ステップS2のNO)、既に無線リソースが十分に活用されているものと判定し、マルチユーザ伝送の実施に移行する(ステップS5)。上記ステップS1〜S4による複数回のキャリアセンスを通して決定した複数の端末からアクセスポイントAP宛の上りリンクマルチユーザ伝送を実施する。アクセスポイントAPは、マルチユーザ伝送の成否を応答する(ステップS6)。具体的には、アクセスポイントAPは、各端末から伝送されたデータの受信成否を検査し、ACKを返信する。
【0021】
図3は、本実施形態において、IEEE802.11無線LANシステムへ適用した具体的な通信プロトコルを示す概念図である。
図3において、(1)では、各端末がCSMA/CA方式に従って、DIFS(DCF Inter Frame Space)時間とランダムバックオフ時間のキャリアセンスを実施する。ここで、ランダムバックオフ時間は、通常のCSMA/CA方式と同様に決定される。
【0022】
(2)では、ランダムバックオフ時間が最短であった端末が、RTSフレームをアクセスポイントAP宛に伝送し、送信権を獲得する。
図3では、端末#1が送信権を獲得し、RTSフレームを伝送するものとしている。アクセスポイントAPは、受信したRTSフレームから、当該端末#1の各サブチャネルの伝搬路状況を推定する。推定結果に基づいて、端末#1に割当てるサブチャネル、及び端末#1に割当てないサブチャネル(空きサブチャネル)を決定する。例えば、
図4に示すように、4つのサブチャネルがある場合、各サブチャネルの受信信号電力対雑音電力比(受信SNR)が、所定の閾値γよりも小さい場合に、空きサブチャネルとする方法が考えられる。
【0023】
(3)では、アクセスポイントAPは、グループ内全端末宛にCTSフレームを伝送する。CTSフレームには、空きサブチャネル番号が記載されている。また、各端末は、受信したCTSフレームから空きサブチャネルの伝搬路状況を推定する。
【0024】
(4)では、各端末は、再度、CSMA/CA方式に従って、ランダムバックオフを開始する。ここで、ランダムバックオフ時間は、空きサブチャネルの伝搬路状況(受信SNRなど)が良好であるほど短くなるように決定する。
図5は、本実施形態において、空きサブチャネルの伝搬路状況とランダムバックオフ時間(CW(Contention Window))との関係を示す概念図である。受信SNRが良いほど、段階的に、CWの値を小さくしていることが分かる。
【0025】
(5)では、2回目のランダムバックオフ時間が最短であった端末が、2nd−RTSフレームをアクセスポイントAP宛に伝送し、空きサブチャネルを利用する候補端末として送信する。
図3では、端末#2が2nd−RTSフレームを伝送するものとしている。アクセスポイントAPは、2nd−RTSフレームから端末#2の伝搬路状況を推定する。
【0026】
(6)では、アクセスポイントAPは、1回目のCSMA/CAで送信権を獲得した端末#1、及び2回目のCSMA/CAで送信権を獲得した端末#2の伝搬路状況に基づいて、上りリンクマルチユーザ通信で各端末が利用するサブチャネルを決定する。例えば、
図6に示すように、1回目の送信権を獲得した端末#1と2回目の送信権を獲得した端末#2の、各サブチャネルの受信SNRを比較し、受信SNRの高い端末にサブチャネルを割当てる方法が考えられる。サブチャネルを割当てた結果は、ARBIフレームにて通知される。
【0027】
(7)では、サブチャネルを割当てられた端末は、OFDMAやSDMAなどの多元接続方式を用いて、アクセスポイントAP宛にデータを伝送する(マルチユーザ通信)。
(8)では、アクセスポイントAPは、各端末からのデータの受信成否を検査し、ACKを返信する。ACKには、マルチユーザ通信で各端末から伝送されたデータの受信成否が記載されている。
【0028】
本実施形態では、下り(あるいは上り)リンク通信に、端末が1つしかない場合、つまり、事実上、単一端末とアクセスポイントAP、あるいは基地局BSとの間のシングルユーザ通信となった場合には、マルチキャリア多重伝送方式OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、あるいはマルチアンテナ多重伝送方式SDM(Space Division Multiplexing)、あるいはマルチアンテナ時空間符号方式STC(Space Time Code)、あるいはインタ−リーバ多重伝送方式IDM(Interleaved Division Multiplexing)、もしくはそれらの多重伝送方式の組合せを適用する。
【0029】
また、下り(あるいは上り)リンク通信に、端末が複数ある場合、つまり、本格的な複数端末とアクセスポイントAP、あるいは基地局BSとの間のマルチユーザ通信となった場合には、マルチキャリア多元接続方式OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)、あるいはマルチアンテナ多元接続方式SDMA(Space Division Multiple Access)、あるいはインタ−リーバ多元接続方式IDMA(Interleaved Division Multiple Access)、あるいはそれらの多元接続方式の組合せ、あるいはそれらの多元接続方式と上記多重伝送方式との組合せ、例えば、OFDMA−SDMA、OFDMA−SDM、OFDM−SDMAなどを適用する。但し、いかなる伝送方式を適用しても、本発明の範疇を超えるものでない。また、複数回の多元接続の実施について、それぞれ異なる多元接続方式を適用してもよい。例えば、一回目はOFDMA‐SDM、二回目はSDMA−OFDMなどである。
【0030】
B.発明の数値実験結果
本発明の実施形態による定量的効果について説明する。比較対象とする従来技術として、IEEE 802.11標準規格にてDCFとして規定されているCSMA/CA方式にて送信権を獲得するシステムを対象とする。
【0031】
図7は、従来技術のMAC(Medium Access Control)プロトコルを示す概念図である。この場合、
図7に示す従来技術では、CSMA/CA方式での送信権の獲得は、1回のみ実施され、送信権を獲得した端末とアクセスポイントAPとの間でシングルユーザ通信が実施される。
【0032】
図8は、本発明と従来技術における、端末数と最大スループットの関係を示す概念図である。なお、従来技術と発明技術ともに無線LANの標準規格であるIEEE802.11gに準拠するパラメータを適用する。発明技術に用いる上りリンクマルチユーザ通信を実現する多元接続方式としては、直交周波数多元接続OFDMA方式を用いている。簡単化のため、ここでは、発明技術が最大2回のCSMA/CAを実施するように設定した。
【0033】
図8に示すように、最大2回のCSMA/CAを実施する本発明の方が、1回のみ実施する従来技術に比べ、最大スループットが向上していることが分かる。勿論、本発明の有効性は、OFDMAに限定するものではないため、空間分割多元接続SDMAやインタリーブ分割多元接続IDMAを適用しても、同様な効果が得られる。
【0034】
上述した実施形態によれば、獲得した無線リソースを複数のユーザで利用するマルチユーザ通信を導入すると共に、マルチユーザ通信での同時通信端末を自律分散的に決定するようにしたので、無線リソースの有効利用を図ることができ、スループットを高めることができる。
【符号の説明】
【0035】
AP アクセスポイント
10 空きサブチャネル判定部
11 サブチャネル決定部
12 マルチユーザ伝送成否応答部
#1、#2 端末
20 キャリアセンス実行部
21 サブチャネル割当判定部
22 ランダムバックオフ時間決定部