【文献】
IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS,2011年 6月,Vol.17,No.3,516-525
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、石英系光導波路デバイスとフォトダイオードのワンチップ集積には、以下のような課題があった。まず、InGaAsなどの化合物半導体で作られるフォトダイオードは、シリコン基板上に作られる石英系光導波路と作製プロセスが整合しない。このため、フォトダイオードは基板上にモノリシック集積できず、ワンチップ化するためには、フォトダイオードを別に作製し、AWGとVOAなどを構成する石英系導波路デバイスチップに実装する必要があった。
【0006】
通信容量増大にともない波長多重分割(WDM)システムで必要とされる波長チャンネル数が増加していくと、波長チャンネル数と同数のフォトダイオードが必要となる。このため、上述したような実装集積では、小型集積は難しくフォトダイオード数の増加とともにチップサイズが大きくなるという問題があった。またフォトダイオード数が増加すると、実装集積が難しくなるため製造コストが増加するという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、石英系光導波路デバイスとフォトダイオードとが、同一基板上にモノリシックに集積できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光モジュールの製造方法は、ゲルマニウムフォトダイオード、シリコンコアからなるシリコン光導波路、石英コアからなる石英光導波路がこれらの順に接続した光モジュールの製造方法であって、シリコン基板の上にSiO
2からなる下部クラッド層を形成する工程と、下部クラッド層の上にシリコン層を形成する工程と、シリコン層をパターニングして第1領域に下部シリコンパターンを形成するとともに、第1領域に連続する第2領域にシリコンコアを形成する工程と、下部シリコンパターンおよびシリコンコアを覆って下部クラッド層の上に、SiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコン層を形成する工程と、酸化シリコン層の下部シリコンパターンの上部に開口部を形成する工程と、酸化シリコン層を選択成長マスクとして開口部の底部の下部シリコンパターンの上にゲルマニウムを選択的に成長してゲルマニウムパターンを形成し、下部シリコンパターンおよびゲルマニウムパターンよりなるゲルマニウムフォトダイオードを形成する工程と、酸化シリコン層をパターニングすることで第2領域の一部から第2領域に連続する第3領域にかけて石英コアを形成する工程と、ゲルマニウムフォトダイオード,シリコンコア,および石英コアの上にSiO
2からなる上部クラッド層を形成する工程とを少なくとも備える。
【0009】
また、本発明の他の光モジュールの製造方法は、ゲルマニウムフォトダイオード、シリコンコアからなるシリコン光導波路、石英コアからなる石英光導波路がこれらの順に接続した光モジュールの製造方法であって、シリコン基板の上にSiO
2からなる下部クラッド層を形成する工程と、下部クラッド層の上にシリコン層を形成する工程と、シリコン層をパターニングして第1領域に下部シリコンパターンを形成するとともに、第1領域に連続する第2領域にシリコンコアを形成する工程と、下部シリコンパターンおよびシリコンコアを覆って下部クラッド層の上に、SiO
2からなる選択成長マスクを形成する工程と、選択成長マスクの下部シリコンパターンの上部に開口部を形成する工程と、選択成長マスクの開口部の底部の下部シリコンパターンの上にゲルマニウムを選択的に成長してゲルマニウムパターンを形成し、下部シリコンパターンおよびゲルマニウムパターンよりなるゲルマニウムフォトダイオードを形成する工程と、選択成長マスクをエッチングして薄くしてシリコンコア
および前記ゲルマニウムパターンの側面を覆う保護膜を形成する工程と、保護膜の上にSiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコン層を形成する工程と、酸化シリコン層をパターニングすることで第2領域の一部から第2領域に連続する第3領域にかけて石英コアを形成する工程と、ゲルマニウムフォトダイオード,シリコンコア,および石英コアの上にSiO
2からなる上部クラッド層を形成する工程とを少なくとも備える。
【0010】
本発明の光モジュールは、
上記光モジュールの製造方法によって製造された光モジュールであって、シリコン基板と、シリコン基板の上に形成されたSiO
2からなる下部クラッド層と、下部クラッド層の上の第1領域に形成されたゲルマニウムフォトダイオードと、下部クラッド層の上の第1領域に連続する第2領域に形成されたシリコンコアと、第2領域の一部から第2領域に連続する第3領域にかけて形成された石英コアと、ゲルマニウムフォトダイオード,シリコンコア,および石英コアの上に形成されたSiO
2からなる上部クラッド層とを備え、ゲルマニウムフォトダイオードは、シリコンコアに連続して形成された下部シリコンパターンと、下部シリコンパターンの上に形成されたゲルマニウムパターンとから構成され、ゲルマニウムフォトダイオード、シリコンコアからなるシリコン光導波路、石英コアからなる石英光導波路がこれらの順に接続した状態に形成され、石英コアは、ゲルマニウムパターンの形成に用いたSiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコンよりなる選択成長マスクをパターニングすることで形成されている。
【0011】
また、本発明の他の光モジュールは、
上記光モジュールの製造方法によって製造された光モジュールであって、シリコン基板と、シリコン基板の上に形成されたSiO
2からなる下部クラッド層と、下部クラッド層の上の第1領域に形成されたゲルマニウムフォトダイオードと、下部クラッド層の上の第1領域に連続する第2領域に形成されたシリコンコアと、シリコンコアを覆うSiO
2からなる保護膜と、第2領域の一部から第2領域に連続する第3領域にかけて形成された石英コアと、ゲルマニウムフォトダイオード,シリコンコア,および石英コアの上に形成されたSiO
2からなる上部クラッド層とを備え、ゲルマニウムフォトダイオードは、シリコンコアに連続して形成された下部シリコンパターンと、下部シリコンパターンの上に形成されたゲルマニウムパターンとから構成され、ゲルマニウムフォトダイオード、シリコンコアからなるシリコン光導波路、石英コアからなる石英光導波路がこれらの順に接続した状態に形成され、保護膜は、ゲルマニウムパターンの形成に用いた選択成長マスクを薄層化することで形成されて
ゲルマニウムパターンの側面を覆っている。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したことにより、本発明によれば、石英系光導波路デバイスとフォトダイオードとが、同一基板上にモノリシックに集積できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1における光モジュールの構成を示す断面図(a)および平面図(b)である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図2D】
図2Dは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図2E】
図2Eは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図2F】
図2Fは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図2G】
図2Gは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図2H】
図2Hは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態2における光モジュールの構成を示す断面図(a)および平面図(b)である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4D】
図4Dは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4E】
図4Eは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4F】
図4Fは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4G】
図4Gは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4H】
図4Hは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4I】
図4Iは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図4J】
図4Jは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
【
図5】
図5は、16チャンネルのAWGを集積した実施の形態2の光モジュールの光学顕微鏡写真である。
【
図6】
図6は、
図5を用いて説明した光モジュールにおいて、AWGから透過してきた光強度を、各シリコン光導波路を介して接続されたゲルマニウムフォトダイオードで受光した結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0015】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1における光モジュールについて
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における光モジュールの構成を示す断面図(a)および平面図(b)である。
【0016】
この光モジュールは、シリコン基板100と、シリコン基板100の上に形成されたSiO
2からなる下部クラッド層101と、下部クラッド層101の上の第1領域110に形成されたゲルマニウムフォトダイオード110aと、下部クラッド層101の上の第1領域110に連続する第2領域120に形成されたシリコンコア121と、第2領域120の一部から第2領域120に連続する第3領域130にかけて形成された石英コア131とを備える。また、ゲルマニウムフォトダイオード110a,シリコンコア121,および石英コア131の上に形成されたSiO
2からなる上部クラッド層103を備える。
【0017】
例えば、下部クラッド層101は、層厚3μm程度に形成され、上部クラッド層103は、層厚5μm程度に形成されている。また、シリコンコア121は、断面が幅300〜600nm,高さ200〜300nm程度に形成されている。石英コア131は、断面が幅3μm、高さ3μm程度に形成されている。また、シリコンコア121による第2領域120のシリコン光導波路は、導波路長が200〜500nm程度とされている。
【0018】
ゲルマニウムフォトダイオード110aは、シリコンコア121に連続して形成された第1導電型の下部シリコンパターン111と、下部シリコンパターン111の上に形成されたi型の第1ゲルマニウムパターン112および第2導電型の第2ゲルマニウムパターン113と、第2ゲルマニウムパターン113の上に形成された第2導電型の上部シリコンパターン114とから構成されている。例えば、第1導電型はp型とし、第2導電型はn型とすればよい。
【0019】
第1ゲルマニウムパターン112および第2ゲルマニウムパターン113は、全体の厚さが1μm程度とされている。また、ゲルマニウムフォトダイオード110aは、平面視で10×50μm程度の矩形に形成されている。なお、第1ゲルマニウムパターン112および第2ゲルマニウムパターン113は、ノンドープの状態(i型)で一体に形成してもよい。
【0020】
上述した光モジュールは、ゲルマニウムフォトダイオード110a、シリコンコア121からなるシリコン導波路、石英コア131からなる石英光導波路がこれらの順に接続した状態に、シリコン基板100の上にモノリシックに形成されている。また、石英コア131は、SiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコンよりなるゲルマニウムパターンの形成に用いた選択成長マスク102をパターニングすることで形成されている。
【0021】
なお、第2領域120の途中から第1領域110の、シリコンコア121の上部の選択成長マスク102は、シリコンコア121に対して上側のクラッドとして機能する。また、図示していないが、上部クラッド層103および選択成長マスク102を貫通して下部シリコンパターン111に接続するコンタクト配線と、上部クラッド層103を貫通して上部シリコンパターン114に接続するコンタクト配線とを備える。
【0022】
この光モジュールでは、まず、石英コア131による第3領域130の石英光導波路を導波してきた光を、シリコンコア121が石英コア131で覆われている領域において、より高い屈折率のシリコンコア121よりなるシリコン光導波路へ移行させることができる。次いで、このシリコン光導波路を導波する光は、シリコンコア121に連続する下部シリコンパターン111の上の、さらに屈折率の高い第1ゲルマニウムパターン112へ吸収させることができる。このように、石英光導波路を導波してきた光を、ゲルマニウムフォトダイオード110aで光電変換させることができる。ゲルマニウムは通信波長帯である1.3〜1.6μmに高い受光感度を持つため、石英光導波路デバイスとゲルマニウムフォトダイオードの同一基板上へのモノリシック集積は、小型で高機能を持たせた通信用光モジュールの実現に非常に有効である。
【0023】
次に、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法について、
図2A〜
図2Hを用いて説明する。
図2A〜
図2Hは、本発明の実施の形態1における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。
図2A〜
図2Gおよび
図2Hの(a)は、断面を示し、
図2Hの(b)は平面を示している。
【0024】
まず、
図2Aに示すように、シリコン基板100の上にSiO
2からなる下部クラッド層101を形成し、下部クラッド層101の上にシリコン層201を形成する。これは、よく知られたSOI(Silicon on Insulator)基板を用いることで得られる。SOI基板は、シリコン基部の上に埋め込み絶縁層を介して表面シリコン層が形成されている基板である。シリコン基部がシリコン基板100となり、埋め込み絶縁層が下部クラッド層101となり、表面シリコン層がシリコン層201となる。
【0025】
次に、シリコン層201をパターニングし、
図2Bに示すように、下部シリコンパターン111およびシリコンコア121を形成する。下部シリコンパターン111およびシリコンコア121は、連続して一体に形成する。例えば、よく知られたフォトリソグラフィーにより形成したマスクパターンを用い、エッチング技術により選択的にエッチングすることで、上記各パターンが形成できる。なお、パターン形成後に、マスクパターンは除去する。また、選択的なイオン注入などにより、下部シリコンパターン111に不純物を導入して第1導電型とする。例えば、p型とすればよい。
【0026】
次に、下部シリコンパターン111およびシリコンコア121を覆って下部クラッド層101の上に、SiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコン層を形成する。例えば、プラズマCVD法により、酸化シリコン層を形成すればよい。次に、酸化シリコン層の下部シリコンパターン111の上部に開口部102aを形成することで、
図2Cに示すように、選択成長マスク102を形成する。
【0027】
例えば、よく知られたフォトリソグラフィーにより形成したマスクパターンを用い、エッチング技術により選択的にエッチングすることで、開口部102aが形成できる。開口部102aは、酸化シリコン層(選択成長マスク102)を貫通して形成する。なお、開口部102aを形成した後に、マスクパターンは除去する。
【0028】
次に、
図2Dに示すように、選択成長マスク102を用い、開口部102aの底部の下部シリコンパターン111の上にゲルマニウムを選択的に成長してゲルマニウムパターン202を形成する。例えば、GeH
4をソースガスとした熱CVD法により、基板温度条件600℃でゲルマニウムを堆積することで、開口部102a内に露出している下部シリコンパターン111の上面に、選択的にゲルマニウムを堆積することができる。この選択成長では、選択成長マスク102の上には、ゲルマニウムが堆積しない。
【0029】
次に、
図2Eに示すように、ゲルマニウムパターン202の部分を含めて選択成長マスク102の上に、シリコン層203を形成する。次に、イオン注入によりシリコン層203に不純物を導入し、第2導電型とする。例えば、n型とする。このとき、ゲルマニウムパターン202の一部にまで上記不純物を導入し、
図2Fに示すように、第1ゲルマニウムパターン112およびn型の第2ゲルマニウムパターン113を形成する。例えば、イオン注入におけるイオンエネルギーを制御することで、第2導電型となる第2ゲルマニウムパターン113の厚さを変化させることができる。このように、第1ゲルマニウムパターン112と第2ゲルマニウムパターン113との厚さを変化させることで、ゲルマニウムフォトダイオード110aの特性を変えることができる。
【0030】
次に、シリコン層203をパターニングすることで、
図2Gに示すように、第2ゲルマニウムパターン113の上に第2導電型の上部シリコンパターン114を形成する。これにより、下部シリコンパターン111,第1ゲルマニウムパターン112,第2ゲルマニウムパターン113,および上部シリコンパターン114よりなるゲルマニウムフォトダイオード110aが形成される。なお、上部シリコンパターン114は必要なものではない。下部シリコンパターン111,第1ゲルマニウムパターン112,および第2ゲルマニウムパターン113の構成でも、pin構造となり、フォトダイオードとして機能する。この場合、第2ゲルマニウムパターン113に電極を接続することになる。
【0031】
次に、
図2Hに示すように、選択成長マスク102をパターニングすることで第2領域120の一部から第2領域120に連続する第3領域130にかけて石英コア131を形成する。例えば、よく知られたフォトリソグラフィーにより形成したマスクパターンを用い、エッチング技術により選択成長マスク102を選択的にエッチングすることで、石英コア131を形成すればよい。
【0032】
また、ゲルマニウムフォトダイオード110a,シリコンコア121,および石英コア131の上にSiO
2からなる上部クラッド層103を形成する。上部クラッド層103の形成では、既に形成されているゲルマニウムフォトダイオード110aに熱的な損傷を与えないために、膜形成温度の条件を300℃以下とすることが重要となる。例えば、ECRプラズマを用いたCVD法によれば、上述した条件を満たしてSiO
2を堆積し、上部クラッド層103が形成できる。
【0033】
以上のことにより、ゲルマニウムフォトダイオード110a,シリコンコア121からなるシリコン導波路、石英コア131からなる石英光導波路がこれらの順に接続した状態となる。この後、図示していないが、上部クラッド層103および選択成長マスク102を貫通して下部シリコンパターン111に接続するコンタクト配線と、上部クラッド層103を貫通して上部シリコンパターン114に接続するコンタクト配線とを形成する。
【0034】
本実施の形態によれば、ゲルマニウムからフォトダイオードを構成しているので、後からフォトダイオードを実装することなく、石英系光導波路デバイスとフォトダイオードとが、同一基板上にモノリシックに集積できる。また、実施の形態1では、ゲルマニウムの選択成長に用いた選択成長マスク102を用い、この一部を加工して石英コア131とし、また、他の部分は残してシリコンコア121のクラッドとして用いている。
【0035】
このため、選択成長マスクを除去して新たに石英コアとなる材料の層を形成し、この層をパターニングするなどの工程を省略することができ、工程をより簡略にすることができる。また、選択成長マスクを形成した後に、これを除去してシリコンコア121や、シリコン光導波路の領域の下部クラッド層101を露出させることがないので、これらに対する損傷の発生が抑制できるようになる。
【0036】
なお、選択成長マスク102は石英コア131として機能する屈折率にすることが重要となる。このため、選択成長マスク102は、SiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコンより構成している。例えば、SiO
2に対してある程度シリコンリッチとしたSiO
xとすることで、屈折率を1.515とすることができる。このSiO
xであれば、SiO
2と同様に、ゲルマニウムの選択成長マスクとして機能する。
【0037】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2における光モジュールについて
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施の形態2における光モジュールの構成を示す断面図(a)および平面図(b)である。
【0038】
この光モジュールは、シリコン基板300と、シリコン基板300の上に形成されたSiO
2からなる下部クラッド層301と、下部クラッド層301の上の第1領域310に形成されたゲルマニウムフォトダイオード310aと、下部クラッド層301の上の第1領域310に連続する第2領域320に形成されたシリコンコア321とを備える。また、シリコンコア321を覆うSiO
2からなる保護膜302と、第2領域320の一部から第2領域320に連続する第3領域にかけて形成された石英コア331とを備える。また、ゲルマニウムフォトダイオード310a,シリコンコア321,および石英コア331の上に形成されたSiO
2からなる上部クラッド層303を備える。
【0039】
例えば、下部クラッド層301は、層厚3μm程度に形成され、上部クラッド層303は、6μm程度に形成されている。また、シリコンコア321は、断面が幅300〜600nm,高さ200〜300nm程度に形成されている。石英コア331は、SiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコンから構成され、断面が幅3μm、高さ3μm程度に形成されている。また、シリコンコア321による第2領域320のシリコン光導波路は、導波路長が200〜500nm程度とされている。
【0040】
ゲルマニウムフォトダイオード310aは、シリコンコア321に連続して形成された第1導電型の下部シリコンパターン311と、下部シリコンパターン311の上に形成されたゲルマニウムパターン312と、ゲルマニウムパターン312の上に形成された第2導電型の上部シリコンパターン313とから構成されている。例えば、下部シリコンパターン311は、p型とされ、上部シリコンパターン313は、n型とされていればよい。ゲルマニウムパターン312は、i型とされ、厚さ1μm程度とされている。また、ゲルマニウムフォトダイオード310aは、平面視で10×50μm程度の矩形に形成されている。なお、ゲルマニウムパターン312は、下部シリコンパターン311側のi型の部分と、上部シリコンパターン313側のn型の部分との2層構造としてもよい。
【0041】
上述した光モジュールは、ゲルマニウムフォトダイオード310a、第2領域320におけるシリコンコア321からなるシリコン光導波路、第2領域320の途中から第3領域330にかけての石英コア331からなる石英光導波路がこれらの順に接続した状態に、シリコン基板300の上にモノリシックに形成されている。また、保護膜302は、ゲルマニウムパターン312の形成に用いた選択成長マスクを薄層化することで形成されている。
【0042】
なお、図示していないが、上部クラッド層303および保護膜302を貫通して下部シリコンパターン311に接続するコンタクト配線と、上部クラッド層303を貫通して上部シリコンパターン313に接続するコンタクト配線とを備える。
【0043】
この光モジュールでは、まず、石英コア331による第3領域330の石英光導波路を導波してきた光を、シリコンコア321が石英コア331で覆われている領域において、より高い屈折率のシリコンコア321よりなるシリコン光導波路へ移行させることができる。次いで、このシリコン光導波路を導波する光は、シリコンコア321に連続する下部シリコンパターン311の上の、さらに屈折率の高いゲルマニウムパターン312へ吸収させることができる。
【0044】
このように、石英光導波路を導波してきた光を、ゲルマニウムフォトダイオード310aで光電変換させることができる。ここで、石英コア331で覆われている領域のシリコンコア321を、第3領域330の側に行くほど、平面視で先細りとすることで、より高い効率で光結合させることができる。例えば、シリコンコア321の第3領域330側の先端の幅が、80nm程度となる先細り形状とすればよい。
【0045】
次に、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法について、
図4A〜
図4Jを用いて説明する。
図4A〜
図4Jは、本発明の実施の形態2における光モジュールの製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図であり、断面を模式的に示している。
【0046】
まず、
図4Aに示すように、シリコン基板300の上にSiO
2からなる下部クラッド層301を形成し、下部クラッド層301の上にシリコン層401を形成する。これは、よく知られたSOI基板を用いることで得られる。SOI基板は、シリコン基部の上に埋め込み絶縁層を介して表面シリコン層が形成されている基板である。シリコン基部がシリコン基板300となり、埋め込み絶縁層が下部クラッド層301となり、表面シリコン層がシリコン層401となる。
【0047】
次に、シリコン層401をパターニングし、
図4Bに示すように、下部シリコンパターン311およびシリコンコア321を形成する。下部シリコンパターン311およびシリコンコア321は、連続して一体に形成する。例えば、よく知られたフォトリソグラフィーにより形成したマスクパターンを用い、エッチング技術により選択的にエッチングすることで、上記各パターンが形成できる。なお、パターン形成後に、マスクパターンは除去する。また、選択的なイオン注入などにより、下部シリコンパターン311に不純物を導入して第1導電型とする。例えば、p型とすればよい。
【0048】
次に、下部シリコンパターン311およびシリコンコア321を覆って下部クラッド層301の上に、SiO
2からなる酸化シリコン層を形成する。例えば、プラズマCVD法により、酸化シリコン層を形成すればよい。次に、酸化シリコン層の下部シリコンパターン311の上部に開口部402aを形成することで、
図4Cに示すように、選択成長マスク402を形成する。
【0049】
例えば、よく知られたフォトリソグラフィーにより形成したマスクパターンを用い、エッチング技術により選択的にエッチングすることで、開口部402aが形成できる。開口部402aは、酸化シリコン層(選択成長マスク402)を貫通して形成する。なお、開口部402aを形成した後に、マスクパターンは除去する。
【0050】
次に、
図4Dに示すように、選択成長マスク402を用い、開口部402aの底部の下部シリコンパターン311の上にゲルマニウムを選択的に成長し、ゲルマニウムパターン312を形成する。例えば、GeH
4をソースガスとした熱CVD法により、基板温度条件600℃でゲルマニウムを堆積することで、開口部402a内に露出している下部シリコンパターン311の上面に、選択的にゲルマニウムを堆積することができる。この選択成長では、選択成長マスク402の上には、ゲルマニウムが堆積しない。
【0051】
次に、
図4Eに示すように、ゲルマニウムパターン312の部分を含めて選択成長マスク402の上に、シリコン層403を形成する。次に、イオン注入によりシリコン層403に不純物を導入し、第2導電型とする。例えば、n型とする。
【0052】
次に、シリコン層403をパターニングすることで、
図4Fに示すように、ゲルマニウムパターン312の上に第2導電型の上部シリコンパターン313を形成する。これにより、下部シリコンパターン311,ゲルマニウムパターン312,および上部シリコンパターン313よりなるゲルマニウムフォトダイオード310aが形成される。
【0053】
次に、
図4Gに示すように、選択成長マスク402を薄層化することで、シリコンコア321を覆う保護膜302を形成する。例えば、酸化シリコンを選択的にエッチングする公知のドライエッチング法により選択的に酸化シリコンをエッチングすることで、上部シリコンパターン313およびゲルマニウムパターン312をエッチングすることなく、選択成長マスク402を薄層化すればよい。ここで、上部シリコンパターン313の平面視の面積を、ゲルマニウムパターン312より大きくしておくことで、上記エッチングによりゲルマニウムパターン312の側面を覆って保護する側壁302aが形成できる。また、所定のマスクパターンを用いることで、上部シリコンパターン313およびゲルマニウムパターン312をエッチングすることなく、選択成長マスク402をエッチングしてもよい。
【0054】
次に、
図4Hに示すように、保護膜302を形成した下部クラッド層301の上に、SiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコン層404を形成する。例えば、プラズマCVD法により、酸素の組成比が少ない酸化シリコン層404を形成すればよい。ここで、酸化シリコン層404の形成では、既に形成されているゲルマニウムフォトダイオード310aに熱的な損傷を与えないために、膜形成温度の条件を300℃以下とすることが重要となる。例えば、ECRプラズマを用いたCVD法によれば、上述した条件を満たして酸化シリコンを堆積し、酸化シリコン層404が形成できる。
【0055】
次に、
図4Iに示すように、酸化シリコン層404をパターニングすることで石英コア331を形成する。例えば、よく知られたフォトリソグラフィーにより形成したマスクパターンを用い、エッチング技術により選択的にエッチングすることで、石英コア331が形成できる。なお、このエッチングにおいても、上部シリコンパターン313はマスクパターンとして機能し、ゲルマニウムパターン312の側面に側壁302aが形成された状態は維持される。マスクパターンは、石英コア331を形成した後に除去する。
【0056】
次に、
図4Jに示すように、ゲルマニウムフォトダイオード310a,シリコンコア321,および石英コア331の上にSiO
2からなる上部クラッド層303を形成する。なお、上部クラッド層303の形成においても、既に形成されているゲルマニウムフォトダイオード310aに熱的な損傷を与えないために、膜形成温度の条件を300℃以下とすることが重要となる。例えば、ECRプラズマを用いたCVD法によれば、上述した条件を満たしてSiO
2を堆積し、上部クラッド層303が形成できる。
【0057】
以上の上部クラッド層303の形成により、ゲルマニウムフォトダイオード310a,シリコンコア321からなるシリコン導波路、石英コア331からなる石英光導波路がこれらの順に接続した状態となる。この後、図示していないが、上部クラッド層303および保護膜302を貫通して下部シリコンパターン311に接続するコンタクト配線と、上部クラッド層303を貫通して上部シリコンパターン313に接続するコンタクト配線とを形成する。
【0058】
実施の形態2によれば、ゲルマニウムからフォトダイオードを構成しているので、後からフォトダイオードを実装することなく、石英系光導波路デバイスとフォトダイオードとが、同一基板上にモノリシックに集積できる。また、実施の形態2では、ゲルマニウムの選択成長に用いた選択成長マスク402を薄層化して保護膜302を形成している。保護膜302は、SiO
2から構成しており、シリコンコア321に対してクラッドとして機能させることができる。
【0059】
このため、選択成長マスク402を形成した後に、これを除去してシリコンコア321およびシリコン光導波路の領域の下部クラッド層301を露出させることがないので、これらに対する損傷の発生が抑制できるようになる。ただし、シリコンコア321および下部クラッド層301に対して損傷を与えることなく、選択成長マスクが除去でき、また石英コア331が形成できる場合、選択成長マスクを全て除去してもよい。
【0060】
なお、石英コア331は、SiO
2より酸素の組成比が少ない酸化シリコンより構成している。例えば、SiO
2に対してある程度シリコンリッチとしたSiO
xとすることで、屈折率を1.515とすることができる。
【0061】
次に、実際に作製した実施の形態2における光モジュールの観察結果について説明する。
図5は、16チャンネルのAWGを集積した実施の形態2の光モジュールの光学顕微鏡写真である。
図5の(b)は、
図5の(a)の部分拡大である。AWGは、SiO
x膜をコアとした石英光導波路で作製され、16チャンネル全てにおいて、
図5の(b)に示すように、石英光導波路501の出力端にシリコン光導波路502を介してゲルマニウムフォトダイオード503が接続されている。また、ゲルマニウムフォトダイオード503には、電極504が接続されている。ここで、AWGを構成する石英光導波路は、比屈折率差(Δ)が約3%で、断面が3m×3mの矩形のコアを有する光導波路であり、シリコン光導波路503は、幅600nm、高さ200nm、スラブ厚100nmのリブ型コアを有する光導波路である。
【0062】
石英光導波路とシリコン光導波路の接続部において、石英光導波路側のシリコンコアを先端幅が80nmとなる長さが300mのテーパ形状とすることで、石英光導波路からの光を低損失でシリコン光導波路に移行するようにしている。ゲルマニウムフォトダイオードは、平面視10×30μm程度の矩形とし、光吸収層となるゲルマニウムパターンの厚さは1μm程度とした。
【0063】
図5に示すように、本発明の光モジュールによれば、石英光導波路とゲルマニウムフォトダイオードを同一基板上にモノリシック集積でき、フォトダイオードを出力光導波路のすぐそばに配置できるため、フォトダイオードを付加したことでデバイスサイズが特に大きくなることはないことがわかる。また、この方法によればモノリシック集積で作れるので、
図5に示すように、複数のフォトダイオードの集積が必要な場合でも作製は容易で、作製工程も増えることはなく、チャンネル数が増加しても製造コストが増加することはない。
【0064】
図6は、
図5を用いて説明した光モジュールにおいて、AWGから透過してきた光強度を、各シリコン光導波路を介して接続されたゲルマニウムフォトダイオードで受光した結果を示す特性図である。石英光導波路で作られたAWGの分波特性が、同一基板上にモノリシック集積したゲルマニウムフォトダイオードで測定できることが確認できた。
【0065】
以上に説明したように、本発明によれば、石英系光導波路とゲルマニウムフォトダイオードとの同一基板上へのモノリシック集積化が可能となり、場所や数に制限なくフォトダイオードを配置できるので、小型で高性能なフォトダイオード付き光モジュールが実現できるという優れた効果が得られる。
【0066】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、上述では、CVD法で堆積する酸化シリコン膜により上部クラッド層を構成したが、これに限るものではない。例えば、スパッタ法で堆積することで、クラッド層を形成してもよい。スパッタ法によっても、酸化シリコン膜を形成することができる。
【0067】
また、下部クラッド層は、SOI基板を利用するものではなく、堆積することにより形成してもよい。また、コアは、単結晶シリコンに限るものではなく、多結晶シリコン、アモルファスシリコンであってもよいことはいうまでもない。