【文献】
高橋央、外3名,パルス光ブリルアン利得解析によるスプリッタ下部測定技術,電子情報通信学会技術研究報告.OPE, 光エレクトロニクス,2012年 2月24日,111(449),p.19-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光線路特性は、距離に対する光減衰量、曲げ障害の位置、曲げの程度、断線障害の位置、距離に対する温度変化量の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の光分岐線路の特性解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1では、試験光を反射する光フィルタをターミネーションフィルタとしてユーザ装置の手前に設置し、各ユーザ装置からの反射光の強度を高分解能なOTDRにより測定するというものであり、この測定によれば、光スプリッタより下部の分岐光ファイバにおける距離分解能として2mの精度を得られることが報告されている。
【0008】
しかしながら、この技術では故障心線の特定と、故障位置がユーザ装置であるか光線路であるかを切り分ける程度に留まっており、分岐下部光ファイバのどの位置で故障が発生しているかを特定することができない。
また、特許文献1では、光スプリッタとして、光の多光束干渉を利用するアレイ導波路回折格子型波長合分波器を用い、波長可変光源により試験光の波長を切り替えて被試験光線路を選択するという提案がなされている。これは、波長可変光源の波長を掃引し、反射光の波長を光反射処理部で検出し、その波長を基準に試験光の波長を設定することで試験光の波長に対応付けて各光線路の個別監視を実現可能とするものである。
【0009】
しかしながら、アレイ導波路回折格子型波長合分波器に代表される、波長ルーティング機能を持つ光分岐装置は一般的に高価であり、多くの加入者を収容するアクセス系光システムに用いることはコスト面で難しい。更には、このような光部品は温度依存性が大きく、温度調整機能を付加する必要もあるため、システムを構築する際に必要となるコストが高くなり好ましくない。
【0010】
非特許文献2では、ポンプ光パルスとプローブ光パルスの二つの試験光パルスを入射し、両試験光の衝突位置でのブリルアン利得を解析することにより、スプリッタ下部心線個別の損失分布を測定する技術が開示されている。
しかしながら、パルス法を用いたブリルアン利得解析は、個別の分岐下部光ファイバについて、長さが1m以上の差がある場合に分岐下部光ファイバを識別することが可能(つまり、分解能は1m以下)である。これは、パルス法において、パルス幅がブリルアン散乱のフォノン寿命(〜1m)より狭いときに感度が著しく劣化するためである。よって、非特許文献2に記載の手法は、試験光のパルス幅以上の個別の分岐光ファイバに長さの差がない場合には測定できない。即ち、実際の設備監視においては、集合住宅などのユーザ装置が設置される場所が隣接している場合の分岐光線路の場合は、分岐光ファイバの長さの差が1m以下となる場合があるため、パルス法では測定できない。
【0011】
そこで、PON型の光分岐線路において、光スプリッタからユーザ装置側の分岐下部光ファイバ、および装置(光スプリッタ、ファイバ接続部品などの光デバイス)を監視するにあたり、新たに光デバイスや光線路構成を変更することなく(既設設備を変更することによりコストをかけることなく)、既設所外設備(ファイバ長の異なる分岐下部ファイバと光反射フィルタ)の光線路損失特性を個別に測定ことを可能とし、分岐下部光ファイバ長差が1m以下の短い場合でも測定可能(つまり、分解能は1m以上)な技術が求められている。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、光スプリッタからユーザ装置側の分岐下部光ファイバ、および装置を監視するにあたり、新たに光デバイスや光線路構成を変更することなく、既設所外設備の光線路損失特性を個別に測定ことを可能とする光分岐線路の特性解析装置およびその特性解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る光分岐線路の特性解析装置は、以下の態様で構成される。
(1)1心の光ファイバを光スプリッタにより第1から第Nの光ファイバに分岐し、前記光スプリッタにより分岐された前記第1から第Nの分岐下部光ファイバの遠端に、試験光を反射し、前記試験光の波長と異なる波長の光を透過させる第1から第Nの単一波長反射型の光フィルタが接続される被測定ファイバに対して、前記光スプリッタによる分岐点から前記光フィルタまでのN心の分岐下部光ファイバについての長さの最小の差が光ファイバ識別分解能以上を有する光分岐線路についての光線路特性を解析する光分岐線路の特性解析装置であって、波長の異なる二種の試験光を生成する試験光生成手段と、前記波長の異なる二種の試験光を符号化する符号化手段と、前記符号化された二種の試験光を合波する合波手段と、前記合波された試験光を前記被測定ファイバに入射し、前記光スプリッタ下部の分岐光ファイバから戻ってきたプローブ光を抽出するサーキュレータと、前記抽出されたプローブ光から前記二種の試験光の一方の波長分を抽出するフィルタ手段と、前記フィルタ手段で抽出されたプローブ光を受光して電流に変換する光・電気変換手段と、前記電流に変換された試験光をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換手段と、前記デジタル信号を復号化し、どの分岐下部光ファイバに入射されたプローブ光のデジタル信号であるのかを特定し、前記特定されたデジタル信号からブリルアン利得を解析し、前記符号を変化させて上記測定を繰り返し行い、繰り返し測定した測定結果から前記光スプリッタの下部分岐ファイバそれぞれのブリルアン利得特性分布を取得する演算処理手段とを具備する態様とする。
【0014】
(2)(1)において、前記ブリルアン利得解析は、光媒質内の歪みの測定を含む態様とする。
(3)(1)において、前記光線路特性は、距離に対する光減衰量、曲げ障害の位置、曲げの程度、断線障害の位置、距離に対する温度変化量の少なくともいずれかである態様とする。
【0015】
また、本発明に係る光分岐線路の特性解析方法は、以下の態様で構成される。
(4)1心の光ファイバを光スプリッタにより第1から第Nの光ファイバに分岐し、前記光スプリッタにより分岐された前記第1から第Nの分岐下部光ファイバの遠端に、試験光を反射し、前記試験光の波長と異なる波長の光を透過させる第1から第Nの単一波長反射型の光フィルタが接続される被測定ファイバに対して、前記光スプリッタによる分岐点から前記光フィルタまでのN心の分岐下部光ファイバについての長さの最小の差が光ファイバ識別分解能以上を有する光分岐線路についての特性を解析する光分岐線路の特性解析装置に適用され、
波長の異なる二種の試験光を生成し、各試験光を符号化して合波し、合波された試験光を前記被測定ファイバに入射し、前記光スプリッタ下部の分岐光ファイバから戻ってきたプローブ光を抽出し、このプローブ光から前記二種の試験光の一方の波長分を抽出し、抽出された一方の波長分のプローブ光を電流に変換し、変換された電流信号をデジタル信号に変換し、このデジタル信号を復号して前記光分岐線路の特性を解析する方法であって、
前記デジタル信号の復号結果からどの分岐下部光ファイバに入射されたプローブ光のデジタル信号であるのかを特定し、前記特定したデジタル信号からブリルアン利得を解析し、前記符号を変化させて上記測定を繰り返し行い、繰り返し測定した測定結果から前記光スプリッタの下部分岐ファイバそれぞれのブリルアン利得特性分布を取得する態様とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光スプリッタ下部側における個別の分岐光ファイバの特性分布を取得するために、分岐下部光ファイバ長が異なることと分岐下部光ファイバ終端に試験光波長を反射する光反射フィルタを備えていればよいため、現在のPON型光線路を一切取り替えることなく低コストで精密に測定可能であり、必要となる分岐下部光ファイバ長差が1m以下の場合でも測定可能(分解能が1m以上)な光分岐線路の特性解析装置及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光分岐線路特性解析装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す装置(点線で囲まれた被測定ファイバを除く、他の全構成部分)は、第一試験光が被測定ファイバ中で受けたブリルアン利得の特性分布を求めることができるものである。
【0019】
図1に示す第1の実施形態において、光源11から出力された連続光は、分岐素子12によって2系統に分岐され、さらに分岐素子13によって2系統に分岐される。
分岐素子13で分岐された光の一方を第一試験光(プローブ光)、他方を第二試験光(ポンプ光)とする。第一試験光は、光周波数変更手段17により光周波数
がシフトされる。具体的には、光周波数変更手段17は、駆動する正弦波発生器19からの信号周波数に応じて変調側波帯の周波数が変化する機能を持つ外部変調器であればよく、LiNbO
3を用いた位相変調器、振幅変調器やSSB変調器であればよい。
【0020】
光周波数変更手段17で周波数変更された第一試験光は光変調器18に入射され、光符号化手段21による符号化変調を受ける。一方、分岐素子13によって分岐された第二試験光は、光増幅器14によって光増幅された後、光変調器15に入射され、光符号化手段20による符号化変調を受ける。光符号化手段20,21は具体的には、任意波形駆動したLiNbO
3を用いた導波路変調器が利用可能である。
【0021】
ここで、光周波数変更手段17及び正弦波発生器19による光周波数シフトと光変調器15,18及び光符号化手段20,21による光符号化変調の順序は任意である。
符号化された第一試験光と符号化された第二試験光は合波素子16によって合波され、サーキュレータ22を通過して被測定光ファイバ23に入射される。被測定光ファイバ23は、光スプリッタ231と分岐下部光ファイバ232と分岐下部光ファイバ終端に設置された光反射フィルタ233により構成される。光スプリッタ231でN分岐された第一試験光と第二試験光は、分岐下部光ファイバ232中でインタラクションし、第一試験光はブリルアン増幅を受ける。このブリルアン増幅を受けた第一試験光と第二試験光は光サーキュレータ22に到達し、この光サーキュレータ22によって光フィルタ24に導かれる。この光フィルタ24は第一試験光のみを抽出するもので、ここで抽出された第一試験光は初段の分岐素子12によって分岐された無変調光と合波素子25によって合波され、光受信器26で受信される。
【0022】
光受信器26からの出力電流は、アナログ/デジタル(A/D)変換器27でデジタル信号に変換されてから、演算処理装置28に入力される。演算処理装置28では入力された電流値に対して、下記で説明する分岐光ファイバ毎のブリルアン利得情報の分離方法、ブリルアン利得解析方法、分布測定方法の演算処理を行い、距離に対する損失分布を求める。
【0023】
次に上述した本実施形態の光線路特性解析装置の動作について説明する。光周波数変更手段17、光符号化手段20,21、光受信器26、被測定光ファイバ23は、次の条件を満足する必要がある。
(条件1) 第一試験光を符号化する光符号化手段21の符号φ
n(t)と、第二試験光を符号化する光符号化手段20の符号ψ
n(t)は、任意の時刻tにおいて常に周波数差f
1が一定であり、それ以外の時刻において周波数差が一定でないこと。
(条件2) 光周波数変更手段17による周波数シフトは、ブリルアン周波数シフトf
Bと条件1記載の符号間周波数差f
1の差周波数と等しいこと。
(条件3) 第一試験光を符号化する光符号化手段21の符号φ(t)は、任意の時刻tにおいて相関が1であり、それ以外の時刻において相関が0であること。
(条件4) 被測定光ファイバ23となる分岐下部光ファイバ232の最小のファイバ長差が、光ファイバ識別分解能ΔL以上であること。
(条件5) 光受信器26の帯域は、符号化の変調帯域を受光可能な帯域であること。
【0024】
ここで、条件1〜5は次のような意味を持っている。
条件1は、任意の位置zのみのブリルアン利得情報を取得するための条件である。
光符号化手段20,21の符号特性が上記の場合、被測定ファイバ23中の任意の位置zにおいて、条件2と合わせることで、第一試験光と第二試験光の周波数差が常にブリルアン周波数シフトと等しくなるため、符号長に渡ってブリルアン増幅を受ける。それ以外の位置では第一試験光と第二試験光の周波数差が揺らぐため、符号長に渡って常にブリルアン増幅を受けるわけではない。そのため、第一試験光の符号長に渡って積分することで、任意の位置zでのブリルアン利得を取得可能である。
【0025】
条件2は、第二試験光により第一試験光がブリルアン増幅を受けるために必要となる条件である。
条件3および条件4は、分岐下部光ファイバ232の個別のブリルアン利得情報を取得するために必要な条件である。
光符号化手段20,21の符号特性が上記の場合、分岐下部光ファイバ232の終端で反射されて戻ってきた第一試験光を、光もしくは電気の段で発生させた符号φ
n(t)と符号長に渡って相関をとることで、任意の分岐下部光ファイバ232から戻ってきた第一試験光の強度を得ることが可能となる。
【0026】
条件5は、光符号を精確に測定するためには、光受信器26の帯域、A/D変換器27の帯域は光符号変調周波数より広い必要がある。
この条件を満足する場合の本実施形態を用いた光線路の特性解析方法を示す。
波長の異なる二つの
符号化した試験光(第一試験光、第二試験光)を用い、第一試験光はプローブ光であり、
上記任意の時刻tにおいて光周波数f
0-f
Bとし、第二試験光はポンプ光であり、
当該任意の時刻tにおいて光周波数f
0とする。ここで、f
0はポンプ光の
符号化後の光周波数、f
Bはブリルアン後方散乱による光周波数シフト量とする。
【0027】
符号化した第一試験光と符号化した第二試験光を被測定光ファイバ23に入射する。ここで、第一試験光と第二試験光は、光スプリッタ231によりN分岐される。
(i) ブリルアン利得解析方法
第一試験光(プローブ光)と第二試験光(ポンプ光)の周波数がf
Bだけ差がある場合、第一試験光と第二試験光が対向伝搬すると、ブリルアン散乱が発生し、第一試験光は式(1)で表される増幅を受ける。
【0028】
【数1】
ここで、α
Bはブリルアン増幅率、g
Bはブリルアン散乱係数、zは分岐下部光ファイバ入射端から第一試験光と第二試験光がインタラクションした位置までの距離、I
pump(z)は分岐下部光ファイバ入射端から距離zだけ離れた位置における第二試験光(ポンプ光)の強度である。
【0029】
分岐下部光ファイバ心線#iの損失をα
i、分岐下部光ファイバ心線#iを往復する場合の全損失を1/D
iとすると、終端の光反射フィルタで反射された後、分岐下部光ファイバ入射端での第一試験光の強度I
probe(2L
i)は、式(2)で表される。
【0030】
【数2】
式(2)より、分岐下部光ファイバ入射端での第一試験光の強度I
probe(2L
i)は、I
pump(z)のみの関数となる。
ここで、I
pump(z)は、式(3)で表される。
【0031】
【数3】
よって、式(2)は、式(3)を用いると式(4)として表される。
【0032】
【数4】
上記(4)式より、ブリルアン利得を解析することにより、インタラクションした場所までの損失を取得できる。
上記、各分岐下部光ファイバからの戻り光I
probe(2L
i)は、光スプリッタから光受信器までの光ファイバにより同じ損失を受ける。
よって、ブリルアン利得を解析すれば、線路損失を測定することができる。
(ii) 分布測定方法
第一試験光の符号化をφ
n(t)、第二試験光の符号化をψ
n(t)とすると、φ
n(t)とψ
n(t)は、ある時刻tのときのみ周波数差がf
1で一定であり、それ以外の時刻において周波数差が一定でない符号である。
【0033】
また、第一試験光の符号φ
n(t)は、ある時刻tのときのみ相関が1であり、それ以外の時刻において相関が0となる符号である。
【0034】
【数5】
被測定光ファイバの入射端から分岐下部光ファイバ#a(1≦a≦Nの整数)の終端までの長さをL
aとする。符号化された第一試験光は、分岐下部光ファイバの終端に設置された光反射フィルタにより反射される。反射して戻ってきた第一試験光と第二試験光は対向伝搬し、被測定ファイバ中でインタラクションする。ここで、第一試験光の符号をφ
1〜φ
nまで変化させ、第二試験光の符号をψ
1〜ψ
nまで変化させる。
例えば、以下のように周波数変調した場合を考える。
【0035】
【数6】
Δfは符号化の変調振幅、f
mnはn番目の変調周波数、θは初期位相である。このとき、φ
nとψ
nで符号化した第一試験光と第二試験光を被測定ファイバ中に入射した場合、周波数差が一定の位置が周期的に表れる。この間隔をd
mnとすると、
【0036】
【数7】
この位置(相関ピーク位置)において、第一試験光と第二試験光は周波数差がブリルアン周波数シフトと等しくなるため、符号長に渡ってブリルアン増幅を受ける。ここで、式(7)より、変調周波数f
mnを変化させることで間隔d
mnが変わり、相関ピーク位置を変化できる。そのため、変調周波数f
mnを変化させ、測定を繰り返すことでブリルアン利得の分布情報を取得可能である。
【0037】
(iii) 分岐光ファイバのブリルアン利得情報分離方法
第一試験光が分岐光ファイバ#aの終端の試験光反射フィルタ233で反射され、光受信器26に到達する時間をt
daとすると、式(8)で表される。
【0038】
【数8】
ここで、vは光ファイバ中の光速、L
aは入射端から分岐下部光ファイバ#aの終端の試験光反射フィルタ233までの距離である。
他の分岐光ファイバ#b(1≦b≦Nの整数)から戻ってきた第一試験光が光受信器26に到達する時間t
dbは、式(9)で表される。
【0039】
【数9】
よって、#a、#bから光受信器26に戻る第一試験光の時間差は、式(10)で表される。
【0040】
【数10】
L
a ≠ L
bのとき、異なる分岐光ファイバ#a、#bから反射されて戻ってきた第一試験光が光受信器26に到達する時間が異なる。ここで、異なる分岐光ファイバ#a、#bから戻ってきた、符号化された第一試験光は、光スプリッタ231で合波される。異なる分岐光ファイバ#a、#bから戻ってきた第一試験光が光スプリッタ231で合波されるとき、符号の位相はずれている。受光側へ戻ってきた第一試験光は、以下の式で与えられる。
【0041】
【数11】
そこで、分岐#Nから戻ってきた第一試験光に合わせて、受光側で符号φ
Nnを生成する。
【0042】
【数12】
このとき、φ
an(t)と受光した信号の相関を取ることで、分岐#aの位置zでのブリルアン利得が得られる。また、φ
bn(t)と受光した信号の相関を取ることで、分岐#bの位置zでのブリルアン利得が得られる。つまり、受光側へ戻ってきた第一試験光I
dと符号φ
Nnの相関を取ることで、分岐下部ファイバ#a、#bのブリルアン利得情報を分離して取得可能である。
【0043】
ここで、分岐下部光ファイバ#a、#bを分離識別する分解能は、符号化した第一試験光の符号特性により決まる。符号化した第一試験光は、符号同士の相関により復号する。式(5)で符号化した場合の分岐下部光ファイバ#a、#bを識別する分解能(分岐光ファイバ識別分解能)ΔLは、式(13)で表される。
【0044】
【数13】
このため、分岐下部光ファイバ#a、#bの識別分解能は、パルス幅ではなく、符号特性により決まるので、分岐下部光ファイバ#a、#bの識別分解能をフォノン寿命より短くすることが可能となる。式(13)より、Δfを50 MHz以上で変調することで、分岐下部光ファイバ#a、#bの識別分解能は1m以上を実現できる。
【0045】
つまり、受光側で得られた第一試験光を、初期位相を変化させて復号化することで、分岐下部光ファイバ毎の情報に分離することが可能となる。また、正弦波変調を用いた場合、Δfを50 MHz以上で変調することで、分岐下部光ファイバ#a、#bの識別分解能は1m以上を実現でき、Δfを5 GHzにすることで約1cmの分岐下部光ファイバ識別分解能を実現できる。
【0046】
上記演算処理装置28において、上記処理を実現するフローチャートを
図2に示す。
図2において、まずデジタル化されたプローブ信号が入力された場合には(ステップS1)、このプローブ信号を復号化してどの分岐下部光ファイバに入射されたプローブ光のデジタル信号であるのかを特定し(ステップS2)、特定されたデジタル信号からブリルアン利得を解析し(ステップS3)、符号を変化させて(ステップS4)上記測定を繰り返し行い、繰り返し測定した測定結果から光スプリッタ231の下部分岐ファイバそれぞれのブリルアン利得特性分布を取得する(ステップS5,S6)。
【0047】
上記の実施形態において、第一試験光・第二試験光を正弦波で符号化した場合を記載したが、符号化は疑似ランダム信号(PRBS)においても測定可能である。
(i)〜(iii)の各測定結果と、条件1〜条件5を満たした場合、本実施形態によりPON型光分岐線路の分岐下部光ファイバ#a、#bの個別の損失分布測定が、既設所外設備(光スプリッタ231と分岐下部光ファイバ232と分岐下部光ファイバ終端に設置された光反射フィルタ233)の構成のみで測定可能であり、分岐下部光ファイバ#a、#bの識別分解能は1m以上を実現する、つまり分岐下部光ファイバ長差が1m以下の場合であっても測定可能とすることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図3は第2の実施形態に係る光分岐線路特性解析装置の構成を示すブロック図である。なお、
図3において、
図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分について説明する。
図3に示す装置では、光源11とは別に光源31を備え、光符号化手段29は、光源11のレーザ注入電流を任意符号によって波形変調し、遅延制御手段30により一定期間遅延させて光源31のレーザ注入電流を同じ符号で波形変調する。光源31で符号化変調された伝送光は合波素子25に送られ、光フィルタ24からの第1試験光と合波され、これによって相関波形として光受信器26で受信される。
【0049】
すなわち、第1の実施形態では、光受信後に演算処理装置27で相関処理を行う方法としたのに対して、第2の実施形態では、光源31により遅延符号変調された信号光を合波素子25で試験光と合波することで、光の干渉により相関処理を行う方法である。なお、
図3に示す光源31は、光源11と同様、注入電流によって任意波形変調可能な光源であればよい。
【0050】
その他、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。