特許第5791098号(P5791098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791098
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】光学素子
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20150917BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G09F9/30 309
   G02F1/1339 505
   G09F9/30 310
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-50354(P2011-50354)
(22)【出願日】2011年3月8日
(65)【公開番号】特開2012-185457(P2012-185457A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 博幸
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 敦
(72)【発明者】
【氏名】田中 順二
【審査官】 田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−213470(JP,A)
【文献】 特開2008−150550(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/083412(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/020717(WO,A1)
【文献】 特開平05−307161(JP,A)
【文献】 特開2007−178706(JP,A)
【文献】 特開2010−026372(JP,A)
【文献】 特開2009−115933(JP,A)
【文献】 特開2010−230901(JP,A)
【文献】 特開2010−181545(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/072226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/30−9/46
G02F 1/13−1/141
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の可撓性を有する基板間に光学効果を有する物質を狭持した曲げ可能な光学素子であり、
前記一対の基板間に前記光学効果を有する物質をシールする第1のシール材を矩形状に設け、
矩形状の短辺側は前記第1のシール材のみであり、矩形状の長辺側は前記第1のシール材に第2のシール材が挟まれる形で存在するように構成され、
前記矩形状の短辺側のシールの弾性率と、前記矩形状の長辺側のシールの弾性率とが異なる構成としたことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記光学効果を有する物質が液晶であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、液晶層や有機EL層等の光学効果を有する物質を挟む一対の基板を曲げることが可能であり、しかも耐久性を有する光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光学効果を有する物質を狭持した光学素子として、液晶表示素子、EL素子、マイクロカプセル素子、電子粉流体素子、エレクトロウェッティング素子、電気泳動素子などが知られている。このような光学素子は、例えば携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)、パブリックディスプレイなどに用いられ、一対のガラス基板が所定の間隔を空けて対向するように環状のシール材を用いて貼り合わせ、ガラス基板間に光学効果を有する物質を狭持したものが一般に用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−217234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、軽量化あるいはフレキシブル化を目的として、従来のガラス基板に換えてポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムを基板として使用する試みが行われている。また、このようなフレキシブル基板を用いた光学素子を製造する方法として、ロールツウロール(Roll to Roll)法が製造効率向上の観点から注目されている。ロールツウロール法では、背面基板と前面基板とを貼り合せた後にロール状に巻き取られるために、貼り合わせ後はロールの曲率半径で光学素子が保持される。また、本方式で作製された光学素子はフレキシブルな曲げ性を生かした用途が想定される。
【0005】
以上の要求を満足するためには、光学素子自体の可撓性と曲げによって起こる基板の剥れや浮きあがりなど素子の破壊に対する耐久性とを両立する必要がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、かかる実情に鑑みてなされたもので、曲げることが可能であり、しかも曲げによる基板間の剥れが生じにくく、実用上においてもロールツウロール法への適用など生産工程においても光学素子に対する曲げ、捩じりによる素子の破壊が生じにくい光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この請求項1乃至請求項5に記載の発明は、以下のように構成した。
【0008】
例えば、セルギャップが5μmの曲げ可能な光学素子を曲げた際、曲率半径100mmで一対の可撓性を有する基板で横方向に0.05×10−3(曲率半径100mmにおける一対の可撓性を有する基板のそれぞれの長さの差/光学素子の長辺(曲げ方向)の長さ)のズレが生じる。これにシール材の弾性率を乗ずることで応力を見積もることができ、シール材の弾性率が小さい程、曲げによって生ずる応力が小さくなる。曲げた状態で光学素子を固定する場合、曲げによって生ずる応力が小さい方が素子破壊の懸念が小さいことは明らかである。
【0009】
例えば、特開2000−066220号公報において、125℃におけるシール材硬化物の弾性率が300MPa〜2000MPaであることが望ましいことが開示され、2000MPa以下が望ましい理由としてシール材が非常に硬くて脆いため、液晶素子の落下による耐衝撃性試験ではシール材とガラス基板の間に亀裂が入り剥離が生ずることが挙げられる。しかし、この発明ではガラス基板ではなく可撓性を有する基板を用いるため2000MPa以上の弾性率においても耐衝撃性試験での不具合は生じない。
【0010】
発明者らが鋭意検討した結果、可撓性を有する基板を用いた光学素子を曲げる場合に適したシール材の組み合わせが存在することを見出した。
【0011】
すなわち、この発明は、一対の可撓性を有する基板間に光学効果を有する物質を狭持した曲げ可能な光学素子であり、前記一対の基板間に前記光学効果を有する物質をシールする第1のシール材を矩形状に設け、矩形状の短辺側は前記第1のシール材のみであり、矩形状の長辺側は前記第1のシール材に第2のシール材が挟まれる形で存在するように構成され、前記矩形状の短辺側のシールの弾性率と、前記矩形状の長辺側のシールの弾性率とが異なる構成としたことを特徴とする光学素子である。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
この発明では、一対の基板間に光学効果を有する物質をシールする第1のシール材を矩形状に設け、矩形状の短辺側は第1のシール材のみであり、矩形状の長辺側は第1のシール材に第2のシール材が挟まれる形で存在するように構成され、矩形状の短辺側のシールの弾性率と、矩形状の長辺側のシールの弾性率とが異なる構成としたことで、光学素子の一方向へ曲率を付加することが容易となる。しかも、曲げによる基板間の剥れが生じにくく、実用上においてもロールツウロール法への適用など生産工程においても光学素子に対する曲げ、捩じりによる素子の破壊が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態の光学素子を表示方向に見た図である。
図2図1のII−II線に沿う断面図である。
図3図1のIII−III線に沿う断面図である。
図4】第2の実施の光学素子を表示方向に見た図である。
図5図4のV−V線に沿う断面図である。
図6図4のVI−VI線に沿う断面図である。
図7】第3の実施の光学素子を表示方向に見た図である。
図8図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
図9図7のIX−IX線に沿う断面図である。
図10】実施例1乃至実施例3の液晶表示素子の曲率固定による耐久性試験結果を示す図である。
図11】実施例4及び実施例5の液晶表示素子の曲率固定による耐久性試験結果を示す図である。
図12】実施例6の液晶表示素子の曲率固定による耐久性試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の光学素子の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0017】
[第1の実施の形態]
この実施の形態の光学素子10は、図1乃至図3に示すように、一対の可撓性を有する基板3,4間に光学効果を有する物質を狭持した曲げ可能な素子であり、図1は光学素子を表示方向に見た図、図2図1のII−II線に沿う断面図、図3図1のIII−III線に沿う断面図である。一対の基板3,4間には、光学効果を有する物質をシールする弾性率の異なるシール材1,5を設けた構造である。
【0018】
この実施の形態では、弾性率の異なるシール材1,5が基板3,4の形状に沿って矩形に形成され、この光学素子10は、長辺側を曲げ、短辺側は曲げないように構成される。すなわち、一対の長辺側のシール材5を曲げ、一対の短辺側のシール材1は曲げないように構成され、長辺側のシール材5の弾性率と、短辺側のシール材1の弾性率とが異なる。
このように、光学素子10の曲げ方向に沿って、すなわち、長辺側のシール材5は、弾性率の異なるシール材のうち、弾性率のより低いシール材を配置して曲げ易くなっている。この長辺側のシール材5は、曲げ方向と並行になっている。
【0019】
この弾性率の異なるシール材のうち、少なくとも1つは硬化後の室温における弾性率が1GPa〜2000GPaの範囲であり、長辺側に配置される弾性率のより低いシール材5は硬化後の室温における弾性率が1MPa〜1000MPaの範囲であり、長辺側が曲げやすく、短辺側は曲げ難くなっている。
【0020】
このように、一対の基板3,4間に光学効果を有する物質として液晶材料2をシールする弾性率の異なるシール材1,5を設け、光学素子10の曲げ方向に沿って、弾性率の異なるシール材1,5のうち、弾性率のより低いシール材5を配置したことで、光学素子10の一方向へ曲率を付加することが容易となる。しかも、曲げによる基板3,4間の剥れが生じにくく、実用上においても生産工程においても光学素子10に対する曲げ、捩じりによる素子の破壊が生じにくい。
【0021】
この実施の形態の光学素子10の製造では、一対の基板の少なくとも1枚の基板4に、一対の長辺側のシール材5を同時に行い、また一対の短辺側のシール材1を同時に行い、基板4の形状に合わせて矩形状に形成される。この弾性率の異なるシール材1,5に囲まれた領域に、液晶材料2を注入し、一方の基板4に他方の基板3を貼り合わせ、一対の基板3,4間に液晶材料2を狭持する。
【0022】
この実施の形態では、光学効果を有する物質が液晶材料2であり、液晶表示素子として用いるが、EL素子、マイクロカプセル素子、電子粉流体素子、エレクトロウェッティング素子、電気泳動素子などにも用いることができる。
【0023】
[第2の実施の形態]
この実施の形態の光学素子10は、図4乃至図6に示すように、一対の基板3,4間には、光学効果を有する物質をシールする弾性率の異なるシール材1,5を設けた構造であり、第1の実施の形態と同じ構成は同じ符号を付して説明を省略する。図4は光学素子を表示方向に見た図、図5図4のV−V線に沿う断面図、図6図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【0024】
この実施の形態では、シール材1が基板3,4の形状に沿って矩形に形成され、このシール材1の長辺側に沿って外側に弾性率の異なるシール材5を設け、長辺側を曲げ、短辺側は曲げないように構成される。この実施の形態では、弾性率の異なるシール材のうち、少なくとも1つは硬化後の室温における弾性率が1GPa〜2000GPaの範囲であり、弾性率の異なるシール材5は、硬化後の室温における弾性率が1MPa〜1000MPaの範囲である。
【0025】
この実施の形態では、シール材1の長辺側に沿って外側に弾性率の異なるシール材5を設けることで、長辺側のシール材5は、弾性率のより低いシール材であり曲げ易くなっている。
【0026】
この実施の形態の光学素子の製造では、一対の基板の少なくとも1枚の基板4に、光学効果を有する物質をシールするシール材1を基板4の形状に合わせて矩形状に描画する。シール材1の描画後に、一対の長辺側にシール材5の描画を並列に行った。
【0027】
[第3の実施の形態]
この実施の形態の光学素子10は、図7乃至図9に示すように、一対の基板3,4間には、光学効果を有する物質をシールする弾性率の異なるシール材1,5を設けた構造であり、第1の実施の形態と同じ構成は同じ符号を付して説明を省略する。図7は光学素子を表示方向に見た図、図8図7のVIII−VIII線に沿う断面図、図9図7のIX−IX線に沿う断面図である。
【0028】
この実施の形態では、短辺側がシール材1のみ、長辺側がシール材1に挟まれる形でシール材5が存在するように構成される。シール材1の長辺側に沿って重ねて弾性率の異なるシール材5を設けることで、長辺側のシール材1,5は、弾性率のより低いシール材となっている。
【0029】
この実施の形態の光学素子の製造では、シール材1,5の描画は、まず、シール材1を基板4の形状に合わせて矩形状に描画し、シール材1の描画後に、一対の長辺側にシール材5の描画を並列に行った。そして、再度シール材1を先に描画したシール材1及びシール材5に重ねて描画した。
【0030】
(実施例1乃至実施例3)
<液晶表示素子の製造>
実施例1乃至実施例3を、図1乃至図3に基づいて説明する。基板3、基板4にITO等からなる透明電極や接続端子パターンを、スパッタ法により成膜した後に、フォトリソグラフィー法によりパターニングすることによって形成する。基板4はポリスルホンなどの耐熱性に優れたポリマーフィルムまたは無機材料により補強されたポリマーフィルムである。透明電極の表面には、ポリイミド配向膜等も印刷法により予め皮膜形成し配向処理する。更に、基板4に、スペーサを形成する。スペーサはフォトリソグラフィー法によりパターン形成する。
【0031】
その後、基板4の上に、紫外線硬化樹脂、又は紫外線及び熱の併用によって硬化する樹脂、又は熱硬化性樹脂、例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂等からなるシール部材1、5を、ディスペンサー等の塗布ツールを用いて矩形枠状に形成する。
【0032】
次に、液晶材料2を滴下注入法によって基板4に供給する。すなわち、基板4の表面に形成した矩形枠状のシール部材1、5の内側に、液晶材料2を滴下する。
【0033】
その後、基板3を液晶が滴下された基板4の上に真空下で重ね合わせた。
【0034】
<液晶表示素子の曲率固定による耐久性試験結果>
短辺方向のシール材を1とし、長辺方向のシール材を5として、長辺方向で曲げることとした。曲率半径100mmの半円形のアクリル筒に沿って液晶表示素子を押さえ、短辺側をメンディングテープで固定した。シール材1とシール材5の種類と弾性率を図10の表に示し24時間、72時間経過後に、液晶表示素子を2枚の偏光板で挟み、シール剥れによる液晶漏れの有無を目視で確認した結果を図10の表に示した。シール剥れが無いものについては、同一条件の新しい液晶表示素子を用いて24時間の間、60℃、80%恒温恒湿試験を行った。その後、液晶表示素子を二枚の偏光板で挟んで観察して、液晶の配向状態が乱れている領域が存在するものを表示不良ありと判定した。結果を図10の表に併せて示した。
【0035】
(実施例4)
実施例4を、図4乃至図6に基づいて説明する。長辺側にシール材1とシール材5を共存させている以外は、実施例1と同様に作製した。実施例1に対して恒温恒湿試験での改善がみられ、実施例2と比較してシール剥れに対して効果が確認できた。結果を図11の表に示した。
【0036】
(実施例5)
実施例5は、シール材1にCを用いた場合であり、シール剥れに対して悪化した。結果を図11の表に併せて示した。
【0037】
(実施例6)
実施例6を、図7乃至図9に基づいて説明する。長辺側にシール材1とシール材5を重ねて塗布した以外は、実施例1と同様に作製した。実施例4に対してシール剥れについて改善がみられ、曲げに対する可撓性の付与と表示信頼性の両立が可能となった。結果を図12の表に示した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明は、曲げることが可能であり、しかも曲げによる基板間の剥れが生じにくく、実用上においてもロールツウロール法への適用など生産工程においても光学素子に対する曲げ、捩じりによる素子の破壊が生じにくい光学素子に適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,5 シール材
2 液晶材料
3,4 基板
10 光学素子

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12