(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0042】
本実施形態に係る含窒素縮合環化合物は、式(1−1)で表される構造単位及び式(1−2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも一種の構造単位を有する。
【0043】
本実施形態に係る含窒素縮合環化合物は、このような構造単位を有することにより、環同士のπ共役平面性が良好であるとともに、十分に低いLUMOを示すことができ、電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能である。また、本実施形態に係る含窒素縮合環化合物は、化学的に安定で、有機溶剤への溶解性が優れているため、これらを用いて薄膜を形成することで、性能の優れた有機薄膜素子が製造可能となる。
【0044】
また、本実施形態に係る含窒素縮合環化合物は、環境安定性(すなわち、空気や水に対する安定性)に優れているため、これらを用いて薄膜を形成することで、通常の大気中においても性能が安定した有機薄膜素子が製造可能となる。
【0045】
Ar
1は、置換基を有していてもよい炭素数4以上の芳香環を示す。芳香環としては、ベンゼノイド芳香環、複素芳香環等が挙げられる。また、芳香環は、単環又は縮合環であってもよい。溶解性が良好であり、かつ、製造が容易であるので、芳香環は、単環又は2〜5個の環が縮合した縮合環であることが好ましく、単環又は2個の環が縮合した縮合環であることがより好ましく、単環であることがさらに好ましい。
【0046】
ベンゼノイド芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ピレン、ペリレン等が挙げられ、ベンゼン又はナフタレンが好ましく、より好ましくはベンゼンである。また、複素芳香環としては、ピリジン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、キノリン、インドール等が挙げられ、チオフェン、チエノチオフェン又はピリジンが好ましく、より好ましくはチオフェンである。
【0047】
Ar
1で表される芳香環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、原子数20以下で構成される置換基が好ましく、原子数17以下で構成される置換基がより好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−プロピル基等のアルキル基(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。);メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、sec−プロピルオキシ基等のアルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。);フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;が挙げられる。
【0048】
なお、本明細書中、アリール基は、芳香族炭化水素化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団を示し、芳香族炭化水素化合物としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、フルオレン、ベンゾフルオレン、ピレン、ペリレン等が挙げられる。
【0049】
Y
1及びY
2のうちいずれか一方は、−C(=X
1)−で表される基を示し、他方は、単結合を示す。また、Y
3及びY
4のうちいずれか一方は、−C(=X
2)−で表される基を示し、他方は、単結合を示す。本実施形態において、Y
1及びY
2のうち、Y
1が−C(=X
1)−で表される基であることが好ましい。また、Y
3及びY
4のうち、Y
3が−C(=X
2)−で表される基であることが好ましい。
【0050】
X
1及びX
2は各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A
1)
2で表される基を示す。X
1及びX
2は、酸素原子又は=C(A
1)
2で表される基であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。製造が容易であるので、X
1及びX
2は同一の基であることが好ましい。
【0051】
A
1は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。=C(A
1)
2で表される基中、二つのA
1は互いに同一でも異なっていてもよい。LUMOをより低くできるので、二つのA
1のうち少なくとも一方が電子求引性の基であることが好ましく、二つのA
1がいずれも電子求引性の基であることがより好ましい。
【0052】
また、二つのA
1のうち少なくとも一方が、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基の炭素数は、好ましくは2〜13、より好ましくは2〜11である。)、カルボキシル基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子であることが好ましく、これらのうちシアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子であることがより好ましく、シアノ基であることがさらに好ましい。
【0053】
また、二つのA
1が、いずれもシアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基の炭素数は、好ましくは2〜13、より好ましくは2〜11である。)、カルボキシル基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子であることが好ましく、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子であることがより好ましく、シアノ基であることがさらに好ましい。
【0054】
なお、本明細書中、アシル基は、−C(=O)−R
17で表される基を示す。ここでR
17は、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。R
17におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。なお、R
17が水素原子であるアシル基は、ホルミル基ともいい、R
17がアルキル基であるアシル基は、アルカノイル基ともいう。
【0055】
Z
1及びZ
2は各々独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、式(a−1)で表される基、式(a−2)で表される基、式(a−3)で表される基、式(a−4)で表される基又は式(a−5)で表される基を示す。Z
1及びZ
2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、式(a−3)で表される基、式(a−4)で表される基又は式(a−5)で表される基であることが好ましく、硫黄原子又は式(a−3)で表される基であることがより好ましい。
【0056】
R
3、R
4、R
5及びR
6は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R
3とR
4とは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0057】
R
3、R
4、R
5及びR
6における1価の基は、直鎖状又は分岐状の鎖状基であっても、環状基であってもよい。ここで鎖状基は、環式構造を有しない基を示す。また、環状基は、環式構造を有する基を示す。なお、環式構造は単環であっても縮合環であってもよく、炭素環であっても複素環であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。炭素環は、炭素原子からなる環式構造であり、複素環は、炭素原子以外の原子(ヘテロ原子)を有する環式構造である。また、R
3、R
4、R
5及びR
6における1価の基は、電子供与性の基であっても、電子求引性の基であってもよい。
【0058】
R
3、R
4、R
5及びR
6における1価の基としては、例えば、炭素数1〜20の鎖状基、環を構成する原子の数(以下、場合により「環構成原子数」と称する。)が3〜60の環状基が挙げられる。
【0059】
鎖状基としては、アルキル基(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、不飽和炭化水素基(不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アルカノイルオキシ基(アルカノイルオキシ基の炭素数は、好ましくは2〜13、より好ましくは2〜11である。)、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基(アルキルアミノ基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、ジアルキルアミノ基(ジアルキルアミノ基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アルカノイルアミノ基(アルカノイルアミノ基の炭素数は、好ましくは2〜13、より好ましくは2〜11である。)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、アルキルスルホニル基(アルキルスルホニル基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(アルキルスルファモイル基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(アルキルカルバモイル基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、ホルミル基、アルカノイル基(アルカノイル基の炭素数は、好ましくは2〜13、より好ましくは2〜11である。)、又は、アルコキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基の炭素数は、好ましくは2〜13、より好ましくは2〜11である。)が好ましく、これらの基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基も好ましい。
【0060】
環状基としては、アリール基、シクロアルキル基(シクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜12、より好ましくは3〜10である。)が挙げられる。また、環状基としては、下記式で表される基が挙げられる。
【0062】
R
3、R
4、R
5及びR
6における1価の基は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)又はアリール基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
【0063】
R
3、R
4、R
5及びR
6における1価の基は、上述の基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されてなる基であってもよい。ここで、置換基としては、原子数20以下で構成される置換基が好ましく、原子数17以下で構成される置換基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−プロピル基等のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基);メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、sec−プロピルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基);フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0064】
なお、本明細書において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0065】
また、本明細書において、アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜10である。なお、本明細書中、アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基等)におけるアルキル基としても、上記と同じ基が例示できる。
【0066】
また、不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基が挙げられ、これらのうち、ビニル基が好ましい。不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜10である。
【0067】
また、アルカノイル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基が挙げられる。アルカノイル基をその構造中に含む基(アルカノイルオキシ基、アルカノイルアミノ基等)におけるアルカノイル基としても、同様の基が例示できる。好ましいアルカノイル基としては、アセチル基が挙げられる。
【0068】
本実施形態に係る含窒素縮合環化合物としては、例えば、式(6−1)又は式(6−2)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
Ar
1、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Z
1及びZ
2は上記と同じであり、R
1及びR
2は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。R
1及びR
2における1価の基としては、R
3、R
4、R
5及びR
6における1価の基と同じ基が例示できる。
【0071】
R
1及びR
2における1価の基としては、下記式で表される基が好ましい。
【0073】
また、R
1及びR
2における1価の基としては、含窒素縮合環化合物の有機溶媒に対する溶解度の観点からは、直鎖状又は分岐状の鎖状基が好ましく、直鎖状又は分岐状のアルキル基、直鎖状又は分岐状のアルコキシ基がより好ましく、直鎖状又は分岐状のアルキル基がさらに好ましい。
【0074】
また、R
1及びR
2における1価の基としては、少なくとも一つのフッ素原子を有している基、少なくとも一つのカルボニル基を有している基が好ましく、少なくとも一つのフッ素原子及び少なくとも一つのカルボニル基を有している基がより好ましい。このような基によれば、LUMOが一層低下し、有機溶媒に対する溶解度が一層向上する。
【0075】
また、電子輸送性の観点からは、R
1及びR
2における1価の基は、フルオロアルキル基(フルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、フルオロアルコキシ基(フルオロアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、フルオロアリール基、α−フルオロカルボニル構造(−C(=O)−CF<で表される構造)を有する基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルキル基で置換されているアリール基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルコキシ基で置換されているアリール基、少なくとも一つの水素原子がα−フルオロカルボニル構造を有する基で置換されているアリール基、α−フルオロカルボニル構造を有する環式構造と縮合しているアリール基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルキル基で置換されている複素環基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルコキシ基で置換されている複素環基、少なくとも一つの水素原子がα−フルオロカルボニル構造を有する基で置換されている複素環基又はα−フルオロカルボニル構造を有する環式構造と縮合している複素環基であることが好ましい。
【0076】
また、R
1及びR
2における1価の基は、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基、α−フルオロカルボニル構造を有する基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルキル基で置換されているアリール基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルコキシ基で置換されているアリール基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルキル基で置換されている複素環基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルコキシ基で置換されている複素環基、少なくとも一つの水素原子がα−フルオロカルボニル構造を有する基で置換されている複素環基又はα−フルオロカルボニル構造を有する環式構造と縮合している複素環基であることがより好ましい。
【0077】
また、R
1及びR
2における1価の基は、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルキル基で置換されている複素環基、少なくとも一つの水素原子がフルオロアルコキシ基で置換されている複素環基、少なくとも一つの水素原子がα−フルオロカルボニル構造を有する基で置換されている複素環基又はα−フルオロカルボニル構造を有する環式構造と縮合している複素環基であることが、さらに好ましい。R
1及びR
2がいずれもこれらの基であると、含窒素縮合環化合物の電子輸送性が一層向上する。
【0078】
なお、本明細書中、1価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団を示す。ここで、複素環式化合物とは、環式構造を有する有機化合物のうち、環を構成する原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ケイ素原子等のヘテロ原子を有するものをいう。複素環式化合物としては、チオフェン;チエノチオフェン、ジチエノチオフェン等のチオフェン環が2〜6個縮環してなる化合物;ベンゾチオフェン;ベンゾジチオフェン;ジベンゾチオフェン;チアゾール;ピロール;ピリジン;ピリミジン等が挙げられる。1価の複素環基としては、環を構成する炭素の数が3〜60である基が好ましく、環を構成する炭素の数が3〜20である基がより好ましい。
【0079】
また、1価の複素環基としては、チオフェン、チエノチオフェン等のチオフェン環が2〜6個縮環してなる化合物、ベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、ジベンゾチオフェン又はチアゾールから、水素原子1個を除いた残りの原子団が好ましい。
【0080】
また、1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、不飽和炭化水素基(不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アリール基、アルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0081】
R
1及びR
2における1価の基は、重合性基であってもよい。このような含窒素縮合環化合物は、後述する含窒素縮合環重合体を合成するための原料化合物(含窒素縮合環重合体の前駆体ということもできる。)として好適に用いることができる。含窒素縮合環重合体を合成するための原料化合物として用いる場合、R
1及びR
2は水素原子、ハロゲン原子又は重合性基であることが好ましい。
【0082】
本明細書中、重合性基とは、重合反応(例えば、付加重合反応、縮合重合反応)を生じ得る基であり、例えば、アルキルスルホネート基(アルキルスルホネート基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基(アリールアルキルスルホネート基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アルキルスタニル基(アルキルスタニル基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基(アリールアルキルスタニル基中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)
2で表される基)、ホルミル基、ビニル基が挙げられる。
【0083】
含窒素縮合環重合体を合成するための原料化合物として用いる場合、合成が容易となるので、R
1及びR
2はハロゲン原子、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基であることが好ましい。ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
【0085】
R
1及びR
2における1価の基は、保護基で保護された基であってもよい。当該基は、脱保護することで、ここまで1価の基として例示した基に誘導される基であることが好ましい。
【0086】
なお、保護基とは、少なくとも一つの反応に不活性な基を示す。保護基で保護された基としては、活性水素を有する基の該活性水素が、トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)、tert−ブチルジメチルシリル基(TBS又はTBDMS)、トリイソプロピルシリル基(TIPS)、tert−ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)等の保護基で置換されてなる基が挙げられる。なお、活性水素を有する基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、スルホ基等が挙げられる。
【0087】
有機薄膜に含窒素縮合環化合物を含有させる場合、R
1及び/又はR
2が重合性基であると、該有機薄膜を素子の作製に用いた場合に、素子特性及び該素子の耐久性が低下する可能性があるため、重合性基を不活性な基で置換してもよい。
【0088】
本実施形態に係る含窒素縮合環化合物としては、式(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(2−5)、(2−6)、(2−7)又は(2−8)で表される構造単位を有する含窒素芳香環化合物が挙げられる。
【0093】
Ar
2は、置換基を有していてもよい炭素数4以上の芳香環を示す。X
3及びX
4は各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A
2)
2で表される基(A
2は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、二つのA
2は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、二つのA
2のうち少なくとも一方は、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子を示す。)を示す。Z
3及びZ
4は各々独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、式(b−1)で表される基、式(b−2)で表される基、式(b−3)で表される基、式(b−4)で表される基又は式(b−5)で表される基を示す。
【0095】
R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R
7とR
8とは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0096】
上記Ar
2における芳香環としては、上記Ar
1における芳香環と同じものが例示できる。また、上記X
3及びX
4としては、上記X
1及びX
2として例示した基と同じ基が例示できる。また、上記Z
3及びZ
4としては、上記Z
1及びZ
2として例示した基と同じ基が例示できる。
【0097】
また、式(b−3)におけるR
7及びR
8としては、上記R
3及びR
4として例示した基と同じ基が例示できる。また、式(b−4)におけるR
9としては、上記R
5と同じ基が例示できる。また、式(b−5)におけるR
10としては、上記R
6として例示した基と同じ基が例示できる。
【0098】
上記の構造単位のうち、式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)、式(2−4)、式(2−5)又は式(2−6)で表される構造単位が好ましく、式(2−1)又は式(2−2)で表される構造単位がより好ましい。
【0099】
このような構造単位を有する含窒素縮合環化合物は、環同士のπ共役平面性が一層良好であり、一層低いLUMOを示すことができ、電子輸送性に一層優れた有機n型半導体として利用可能である。また、このような含窒素縮合環化合物は、化学的により安定であり、有機溶剤への溶解性にも一層優れるため、これらを用いて薄膜を形成することで、より性能の優れた有機薄膜素子が製造可能となる。
【0100】
また、このような含窒素縮合環化合物は、環境安定性により優れるため、これらを用いて薄膜を形成することで、通常の大気中においても性能が一層安定した有機薄膜素子が製造可能となる。
【0101】
式(2−1)で表される構造単位又は式(2−2)で表される構造単位を有する含窒素縮合環化合物としては、例えば、式(7−1)又は式(7−2)で表される化合物が挙げられる。
【0103】
Ar
2、X
3、X
4、Z
3及びZ
4は上記と同義であり、R
18及びR
19は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。R
18及びR
19としては、上記R
1及びR
2として例示した基と同じ基が例示できる。
【0104】
また、本実施形態に係る含窒素縮合環化合物としては、式(3−1)で表される構造単位及び式(3−2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも一種の構造単位を有する、含窒素縮合環化合物がより好ましい。このような含窒素縮合環化合物によれば、上述した本発明の効果がより良好に奏される。
【0106】
本実施形態に係る含窒素縮合環化合物としては、例えば、式(8−1)、(8−2)、(8−3)、(8−4)、(8−5)、(8−6)、(8−7)、(8−8)、(8−9)、(8−10)、(8−11)、(8−12)、(8−13)、(8−14)、(8−15)、(8−16)、(8−17)、(8−18)、(8−19)、(8−20)、(8−21)、(8−22)で表される化合物が挙げられる。
【0129】
式中、mは0〜2の整数を示し、R
0は置換基を示す。該置換基としては、原子数20以下で構成される置換基が好ましく、原子数17以下で構成される置換基がより好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−プロピル基等のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基);メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、sec−プロピルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基);フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;が挙げられる。これらのうち、R
0は、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。mが2である場合、複数存在するR
0は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0130】
次に、本実施形態に係る含窒素縮合環重合体について説明する。
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体は、式(1−1)で表される構造単位(以下、場合により「第一構造単位」と称する。)及び式(1−2)で表される構造単位(以下、場合により「第二構造単位」と称する。)からなる群より選ばれる構造単位を複数有する。含窒素縮合環重合体が第一構造単位を複数有するとき、複数の第一構造単位は互いに同一でも異なっていてもよい。また、含窒素縮合環重合体が第二構造単位を複数有するとき、複数の第二構造単位は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、含窒素縮合環重合体における式(1−1)、(1−2)で表される構造単位としては、上述した含窒素縮合環化合物における式(1−1)、(1−2)で表される構造単位と同じ構造単位が例示できる。
【0131】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体は、第一構造単位及び第二構造単位のうちの少なくとも一方を複数有するか、第一構造単位及び第二構造単位を組み合わせて有するものである。ここで、含窒素縮合環重合体の「構造単位」とは、含窒素縮合環重合体の主鎖の少なくとも一部を構成している構造単位を意味する。また、「重合体」とは、かかる「構造単位」を少なくとも2つ有する化合物をいい、通常オリゴマーやポリマーに分類されるもののいずれをも含む。
【0132】
含窒素縮合環重合体における第一構造単位及び第二構造単位の合計含有量は、含窒素縮合環重合体の総量基準で、20質量%以上であることが好ましく、50〜95質量%であることがより好ましい。
【0133】
第一構造単位としては、式(2−1)で表される構造単位が好ましい。また、第二構造単位としては、式(2−2)で表される構造単位が好ましい。
【0134】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体は、第一構造単位及び第二構造単位以外に、式(4)で表される構造単位(以下、場合により「第三構造単位」と称する。)をさらに有することが好ましい。第三構造単位を有することにより、溶解性、又は、機械的、熱的若しくは電子的特性を、変化させ得る範囲が広くなる。なお、含窒素縮合環重合体が第三構造単位を複数有する場合、複数の第三構造単位は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0135】
Ar
3は、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。
【0136】
なお、本明細書中、アリーレン基は、ベンゼン又は2つ以上の環が縮合してなる縮合環化合物から、水素原子2個を除いた残りの原子団を示す。縮合環化合物としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、フルオレンが挙げられる。
【0137】
アリーレン基としては、環を構成する炭素の数が6〜60である基が好ましく、環を構成する炭素の数が6〜20である基がより好ましい。また、アリーレン基としては、ベンゼン、ペンタセン、ピレン又はフルオレンから、水素原子2個を除いた残りの原子団が好ましい。
【0138】
アリーレン基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、不飽和炭化水素基(不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アリール基、アルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0139】
本明細書中、2価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団を示す。ここで、複素環式化合物とは、環式構造を有する有機化合物のうち、環を構成する原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ケイ素原子等のヘテロ原子を有するものをいう。複素環式化合物としては、チオフェン;チエノチオフェン、ジチエノチオフェン等のチオフェン環が2〜6個縮環してなる化合物;ベンゾチオフェン;ベンゾジチオフェン;ジベンゾチオフェン;チアゾール;ピロール;ピリジン;ピリミジン等が挙げられる。
【0140】
2価の複素環基としては、環を構成する炭素の数が3〜60である基が好ましく、環を構成する炭素の数が3〜20である基がより好ましい。また、2価の複素環基としては、チオフェン、チエノチオフェン等のチオフェン環が2〜6個縮環してなる化合物、ベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、ジベンゾチオフェン又はチアゾールから、水素原子2個を除いた残りの原子団が好ましい。
【0141】
2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、不飽和炭化水素基(不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アリール基、アルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0142】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体は、第一構造単位及び第二構造単位のいずれか一方の構造単位と、第三構造単位とが、隣り合う構造を有することが好ましい。このような構造を有すると、隣接する芳香環又は複素環同士の二面角を小さくすることができ、分子内の平面性が向上し、分子内でのπ共役が広くなり、またLUMOレベルも低くなることから、電子輸送性が向上する。ここで、二面角とは、第一構造単位又は第二構造単位中の複素環を含む平面と、第三構造単位中のAr
2で表される基を含む平面とのなす角度のうち、0度以上90度以下の角度で定義される。第一構造単位及び第二構造単位のいずれか一方の構造単位と、第三構造単位とが隣り合う場合、二面角は、通常0〜45度、典型的には0〜40度、より典型的には0〜30度である。
【0143】
第三構造単位としては(すなわち、式(4)におけるAr
3としては)、式(5)で表される構造単位が好ましい。
【0144】
式中、R
11及びR
12は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R
11とR
12とは互いに結合して環を形成していてもよい。1価の基としては、上述のR
3等における1価の基として例示した基と同じ基が例示できる。
【0145】
R
11及びR
12における1価の基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−プロピル基等のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基);メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、sec−プロピルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基);フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;が好ましい。これらのうち、R
11及びR
12における1価の基としてはアルキル基、アルコキシ基又はアリール基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0146】
Z
5は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、式(c−1)で表される基、式(c−2)で表される基、式(c−3)で表される基、式(c−4)で表される基又は式(c−5)で表される基を示す。
【0147】
R
13、R
14、R
15及びR
16は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R
13とR
14とは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0148】
式(c−3)におけるR
13及びR
14としては、上記R
3及びR
4として例示した基と同じ基が例示できる。また、式(c−4)におけるR
15としては、上記R
5と同じ基が例示できる。また、式(c−5)におけるR
16としては、上記R
6として例示した基と同じ基が例示できる。
【0149】
Z
5は、特徴的な電気的性質(例えば、電子輸送により適した最高占有軌道(HOMO)、LUMOレベル)を示し、種々の電気的特性(例えば、一層高い電子輸送性)が発揮されるので、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、式(c−3)で表される基、式(c−4)で表される基又は式(c−5)で表される基であることが好ましく、硫黄原子、セレン原子、式(c−3)で表される基又は式(c−5)で表される基であることがより好ましく、硫黄原子であることがさらに好ましい。
【0150】
含窒素縮合環重合体における第一構造単位及び第二構造単位の合計含有量C
1+2(モル)と、第三構造単位の含有量C
3(モル)との比C
3/C
1+2は、好ましくは0.05〜3であり、より好ましくは0.2〜2であり、さらに好ましくは0.5〜1である。
【0151】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体としては、電子輸送性が一層高まるので、式(9−1)、(9−2)、(9−3)又は(9−4)で表される重合体が好ましい。
【0156】
Z
6及びZ
7は各々独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、式(a−1)で表される基、式(a−2)で表される基、式(a−3)で表される基、式(a−4)で表される基又は式(a−5)で表される基を示し、Z
8及びZ
9は各々独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、式(a−1)で表される基、式(a−2)で表される基、式(a−3)で表される基、式(a−4)で表される基又は式(a−5)で表される基を示し、mは0〜2の整数を示し、p及びqは各々独立に0〜6の整数を示し、nは2〜500の整数を示し、R
20は置換基を示す。
【0157】
Z
6及びZ
7としては、上記Z
1及びZ
2として例示した基と同じ基が例示できる。また、Z
8及びZ
9としては、上記Z
1及びZ
2として例示した基と同じ基が例示できる。また、R
20としては、上記R
0として例示した基を同じ基が例示できる。
【0158】
p+qは、0〜6であることが好ましく、0〜3であることがより好ましい。また、nは2〜100の整数であることが好ましく、2〜20の整数であることがより好ましい。
【0159】
式(9−1)、(9−2)、(9−3)又は(9−4)で表される含窒素縮合環重合体において、Z
6、Z
7、Z
8及びZ
9はいずれも硫黄原子であることが好ましい。また、Ar
3は式(5)で表される構造単位であることが好ましい。
【0160】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体は、末端部に、例えば、上記式(6−1)及び(6−2)におけるR
1、R
2として例示した基と同じ基を有していてもよい。
【0161】
含窒素縮合環重合体の末端部の基(以下、「末端基」と称する。)としては、水素原子、フッ素原子、アルキル基(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。)、アシル基、カルバモイル基、アリール基、1価の複素環基、α−フルオロカルボニル構造を有する基、電子供与性の基、電子求引性の基が挙げられ、これらの基における水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0162】
これらのうち、全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、例えばパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、パーフルオロフェニル基が好ましい。また、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有している基も好ましい。このような基としては、炭素−炭素結合を介して主鎖の共役構造と連結する、アリール基、1価の複素環基が挙げられる。
【0163】
また、末端基は、重合性基であってもよい。このような含窒素縮合環重合体は、さらに分子量の大きい含窒素縮合環重合体を合成するための原料化合物として用いることができる。このような原料化合物として用いる場合には、含窒素縮合環重合体の両末端の末端基が、いずれも重合性基であることが好ましい。ここで重合性基としては、上記と同じ基が挙げられる。
【0164】
有機薄膜に含窒素縮合環重合体を含有させる場合、末端基が重合性基であると、該有機薄膜を素子の作製に用いた場合に、素子特性及び該素子の耐久性が低下する可能性があるため、重合性基を不活性な基で置換してもよい。
【0165】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体としては、式(10−1)、(10−2)、(10−3)、(10−4)、(10−5)、(10−6)、(10−7)、(10−8)、(10−9)、(10−10)で表される重合体が特に好ましい。
【0176】
m及びR
20は上記と同義であり、rは2以上の整数を示し、R
21及びR
22は各々独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R
23、R
24、R
25及びR
26は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R
23とR
24とは互いに結合して環を形成していてもよく、R
25とR
26とは互いに結合して環を形成していてもよい。R
27及びR
28は各々独立に、水素原子ハロゲン原子又は1価の基を示す。
【0177】
R
21及びR
22における1価の基としては、上記R
1及びR
2における1価の基として例示した基と同じ基が例示できる。R
23、R
24、R
25及びR
26における1価の基としては、上記R
3、R
4、R
5及びR
6における1価の基として例示した基と同じ基が例示できる。R
27及びR
28における1価の基としては、上記R
3、R
4、R
5及びR
6における1価の基として例示した基と同じ基が例示できる。
【0178】
R
27及びR
28における1価の基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−プロピル基等のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基);メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、sec−プロピルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基);フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;が好ましく、これらのうちアルキル基、アルコキシ基又はアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0179】
R
21及びR
22における1価の基としては、フルオロアルキル基又はα−フルオロカルボニル構造を有する基が好ましく、パーフルオロアルキル基又はα−フルオロカルボニル構造を有する基がより好ましい。
【0180】
含窒素縮合環重合体中にR
20、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27又はR
28が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。含窒素縮合環重合体の合成の容易さを考慮すると、R
20、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27又はR
28が複数存在する場合、それらは互いに同一であることが好ましい。
【0181】
rは、含窒素縮合環重合体を有機薄膜の製造に用いる場合、当該有機薄膜の製造方法に応じて選ぶことができる。例えば、含窒素縮合環重合体が昇華性を有していれば、真空蒸着法等の気相成長法を用いて、含窒素縮合環重合体を含有する有機薄膜を製造することができる。この場合、rは2〜10の整数であることが好ましく、2〜5の整数であることがより好ましい。
【0182】
一方、含窒素縮合環重合体を有機溶剤に溶解させた溶液を塗布して有機薄膜を製造する方法を採用する場合、rは3〜500の整数であることが好ましく、6〜300の整数であることがより好ましく、20〜200の整数であることがさらに好ましい。塗布で成膜したときの膜の均一性が良好になるので、含窒素縮合環重合体のポリスチレン換算の数平均分子量は、1×10
3〜1×10
7が好ましく、1×10
4〜1×10
6がより好ましい。
【0183】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体としては、式(11−1)、(11−2)、(11−3)、(11−4)、(11−5)、(11−6)で表される重合体も特に好ましい。
【0190】
式中、nは2〜500の整数を示し、2〜100の整数であることが好ましく、2〜20の整数であることがより好ましい。
【0191】
次に、本実施形態に係る含窒素縮合環化合物及び含窒素縮合環重合体の製造方法について説明する。本実施形態に係る含窒素縮合環化合物及び含窒素縮合環重合体は、どのような方法により製造されたものであってもよいが、以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。
【0192】
まず、本実施形態に係る含窒素縮合環化合物の製造方法について、式(2−1)で表される構造単位を有する含窒素縮合環化合物の製造方法を例に挙げて説明する。
【0193】
本実施形態に係る含窒素縮合環化合物は、例えば、下記のスキーム1に従って製造することができる。
【0195】
スキーム1中、Ar
11は置換基を有していてもよい炭素数4以上の芳香環を示し、X
11及びX
12は各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A
1)
2で表される基を示し、R
*は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、Z
*は酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、式(a−1)で表される基、式(a−2)で表される基、式(a−3)で表される基、式(a−4)で表される基又は式(a−5)で表される基を示す。
【0196】
Ar
11としては、上記Ar
1として例示した基と同じ基が例示できる。X
11及びX
12としては、上記X
1及びX
2として例示した基と同じ基が例示できる。R
*としては、上記R
1及びR
2として例示した基と同じ基が例示できる。Z
*としては、上記Z
1及びZ
2として例示した基と同じ基が例示できる。
【0197】
すなわち、第一工程として、触媒量のジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と言う。)の存在下、式(12−1)で表される化合物(以下、場合により「化合物(12−1)」と称する。以下、式(12−2)で表される化合物等についても同様である。)と塩化チオニル(SOCl
2)とを反応させた後、トリエチルアミンとピペリジンとを塩化メチレン中でさらに反応させ、化合物(12−2)を得る。化合物(12−1)と塩化チオニルとの反応は、例えば、触媒量のDMFと、化合物(12−1)と、該化合物(12−1)の総量基準で200〜4000モル%の塩化チオニルとを混合し、加熱還流することによって行うことができる。
【0198】
次いで、第二工程として、パラジウム触媒存在下、化合物(12−2)と化合物(12−3)とを反応させることで、化合物(12−4)を得る。この反応は、例えば、化合物(12−2)と、化合物(12−3)と、化合物(12−2)の総量基準で0.5〜20モル%のパラジウム触媒とを、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と言う。)中で加熱し還流させることによって行うことができる。パラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3))等を用いることができる。
【0199】
そして、第三工程として、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)存在下、化合物(12−4)を環化反応させることで、化合物(12−5)を得ることができる。この反応は、例えば、化合物(12−4)の総量基準で200〜3000モル%のリチウムジイソプロピルアミドを用いて、THF中、−78〜0℃の温度で行うことができる。
【0200】
なお、第一工程では、塩化チオニルに代えて、オキサリルクロライド等の酸クロライドを用いてもよい。また、第二工程では、THFに代えて、トルエン、クロロベンゼンを用いてもよい。また、第三工程では、リチウムジイソプロピルアミドに代えて、リチウムヘキサメチルジシラジドを用いてもよい。
【0201】
また、下記スキーム2に示す製造方法によれば、式(12−5)のR
*が水素原子である含窒素縮合環化合物(すなわち、式(12−6)で表される化合物)を用いて、種々の基R
**が導入された含窒素縮合環化合物(すなわち、式(12−10)で表される化合物)を製造することができる。
【0202】
なお、スキーム2では、式(12−5)のX
11及びX
12が酸素原子である含窒素縮合環化合物を用いた場合の製造例を示す。X
11及びX
12が酸素原子以外である場合であっても、式(12−7)で表される化合物を得る工程にかえて=X
11及び=X
12で表される基を保護する工程を行うことにより、それ以外はスキーム2と同様にして、種々の基R
**が導入された含窒素縮合環化合物を製造することができる。
【0204】
スキーム2中、Ar
11及びZ
*は上記と同様であり、R
**は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、Xはハロゲン原子を示す。R
**としては、上記R
1及びR
2として例示した基と同じ基が例示できる。
【0205】
すなわち、まず、第一工程として、化合物(12−6)中のカルボキシル基を保護する。具体的には、例えば、化合物(12−6)と2−塩化エタノールとを、tert−ブトキシカリウム(tert−BuOK)の存在下で反応させ、化合物(12−7)を得ることができる。なお、カルボキシル基の保護は、2−塩化エタノールにかえて、2,2−ジブチル−1,3−プロペンジオール等を反応させて、化合物をアセタール化することによって行ってもよい。
【0206】
次いで、第二工程として、THF中で化合物(12−7)をn−ブチルリチウム(n−BuLi)と反応させた後、トリブチルスズクロライド(n−Bu
3SnCl)を反応させることで、化合物(12−8)を得る。
【0207】
さらに、第三工程として、パラジウム触媒存在下、化合物(12−8)とR
**−Xで表される化合物とを反応させることで、化合物(12−9)を得る。この反応は、化合物(12−8)と、R
**−Xで表される化合物と、化合物(12−8)の総量基準で0.5〜20モル%のパラジウム触媒とを、トルエン中で加熱し還流させることによって行うことができる。パラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3))等を用いることができる。
【0208】
そして、第四工程として、化合物(12−9)を酢酸中で、塩酸と反応させることで、化合物(12−10)を得ることができる。
【0209】
なお、第一工程では、カルボキシル基の保護を行う反応として、2−塩化エタノールを用いた反応に代えて、一般的な酸性条件下でのケタール反応、パラトルエンスルホン酸存在下でのエチレングリコールとの反応を用いてもよい。また、第二工程では、トリブチルスズクロライドに代えて、トリメチルスズクロライドを用いてもよい。また、第三工程では、トルエンに代えて、THF、クロロベンゼンを用いてもよい。また、第四工程では、酢酸に代えて、硫酸、クロロホルム・酢酸混合溶媒を用いてもよい。
【0210】
上記では、式(2−1)で表される構造単位を有する含窒素縮合環化合物を例に挙げて説明したが、式(2−2)、(2−3)、(2−4)、(2−5)、(2−6)、(2−7)、(2−8)で表される構造単位を有する含窒素縮合環化合物も、上記の化合物(12−1)、化合物(12−3)、化合物(12−4)を適宜変更することにより、同様に製造することができる。
【0211】
本実施形態に係る含窒素縮合環化合物を、有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与える場合があるため、例えば、上記製造方法で得られた含窒素縮合環化合物を、蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で純化処理することが好ましい。
【0212】
上記製造方法における反応条件、反応試薬等は、上記の例示以外にも選択可能である。
【0213】
次に、本実施形態に係る含窒素縮合環重合体の製造方法について、第一構造単位としては式(2−1)で表される構造単位、第二構造単位として式(2−2)で表される構造単位、第三構造単位として式(4)で表される構造単位及び式(5)で表される構造単位をそれぞれ有する含窒素縮合環重合体の製造方法を例に挙げて説明する。
【0214】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体は、例えば、下記式(13−1)、(13−2)、(13−3)及び(13−4)で表される化合物(以下、場合により、それぞれ「モノマー(13−1)」、「モノマー(13−2)」、「モノマー(13−3)」、「モノマー(13−4)」と称する。)を原料として、これらを反応させることにより製造することができる。
【0219】
式中、Ar
21は置換基を有していてもよい炭素数4以上の芳香環を示し、X
21及びX
22は各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A
1)
2で表される基を示し、Z
21及びZ
22は各々独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、式(a−1)で表される基、式(a−2)で表される基、式(a−3)で表される基、式(a−4)で表される基又は式(a−5)で表される基を示し、Ar
13は置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよい複素環基を示し、R
31及びR
32は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、Z
15は酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、式(c−1)で表される基、式(c−2)で表される基、式(c−3)で表される基、式(c−4)で表される基又は式(c−5)で表される基を示し、W
1及びW
2は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は重合性基を示す。
【0220】
Ar
21としては、上記Ar
1として例示した基と同じ基が例示できる。また、X
21及びX
22としては、上記X
1及びX
2として例示した基と同じ基が例示できる。また、Z
21及びZ
22としては、上記Z
1及びZ
2として例示した基と同じ基が例示できる。また、Ar
13としては、上記Ar
3として例示した基と同じ基が例示できる。また、R
31及びR
32としては、上記R
11及びR
12として例示した基と同じ基が例示できる。また、Z
15としては、上記Z
5として例示した基と同じ基が例示できる。また、W
1及びW
2における重合性基としては、上記で重合性基として例示した基と同じ基が例示できる。
【0221】
W
1及びW
2は、合成上の反応のし易いので、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基又はホウ酸残基であることが好ましい。
【0222】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体の製造に用いる反応方法としては、例えば、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法、FeCl
3等の酸化剤を用いる方法、電気化学的な酸化反応を用いる方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による方法が例示される。
【0223】
これらのうち、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、及びNi(0)触媒を用いる方法は、化合物の構造制御がし易いので好ましい。また、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法は、原料が入手し易く、かつ、反応操作が簡便であるので好ましい。
【0224】
モノマー(13−1)、モノマー(13−2)、モノマー(13−3)及びモノマー(13−4)は、必要に応じ、有機溶媒に溶解させ、アルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で、反応させることができる。
【0225】
有機溶媒としては、用いるモノマーや反応によっても異なるが、副反応を抑制するために、十分に脱酸素処理が施されていることが好ましい。また、不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。さらに、同様に、脱水処理を行うことが好ましい(但し、Suzukiカップリング反応等の水との2相系での反応の場合にはその限りではない)。
【0226】
反応させるために、必要に応じてアルカリや適当な触媒を添加する。これらは用いる反応に応じて選択すればよい。アルカリや触媒としては、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。
【0227】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体を有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるため、反応前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に反応させる(重合させる)ことが好ましい。また含窒素縮合環重合体を合成後、再沈澱、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0228】
反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、THF、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;が挙げられる。また、有機溶媒に代えて、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸を用いてもよい。なお、有機溶媒に代えて無機酸を用いるとき、反応温度は無機酸の融点以上沸点以下とすることができる。
【0229】
反応後は、例えば水で反応を止めた後に有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する等の通常の後処理を行うことにより、含窒素縮合環重合体を得ることができる。得られた含窒素縮合環重合体の単離後及び精製は、クロマトグラフィーによる分取や再結晶等の方法により行うことができる。
【0230】
なお、上記では、第一構造単位としては式(2−1)で表される構造単位、第二構造単位として式(2−2)で表される構造単位、第三構造単位として式(4)で表される構造単位及び式(5)で表される構造単位をそれぞれ有する含窒素縮合環重合体の製造方法を例に挙げて説明したが、その他の構造単位を有する含窒素縮合環重合体も、モノマーを適宜選択することにより、上記反応と同様にして製造することができる。
【0231】
本実施形態に係る含窒素縮合環重合体を、有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与える場合があるため、例えば、上記製造方法で得られた含窒素縮合環重合体を、蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で純化処理することが好ましい。
【0232】
次に、本実施形態に係る有機薄膜について説明する。本実施形態に係る有機薄膜は、本実施形態に係る含窒素縮合環化合物及び/又は含窒素縮合環重合体(以下、これらをあわせて「本実施形態に係る含窒素化合物」と称する。)を含有する。
【0233】
本実施形態に係る有機薄膜は、厚さが通常1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0234】
有機薄膜は、本実施形態に係る含窒素化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、本実施形態に係る含窒素化合物の2種類以上を含むものであってもよい。また、有機薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるため、本実施形態に係る含窒素化合物以外に、電子輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物(以下、「電子輸送性材料」と称する。)、ホール輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物(以下、「ホール輸送性材料」と称する。)を混合して用いることもできる。
【0235】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0236】
電子輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C
60等のフラーレン類及びその誘導体が挙げられる。
【0237】
本実施形態に係る有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては公知のものが使用でき、例えば、アゾ化合物及びその誘導体、ジアゾ化合物及びその誘導体、無金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、ペリレン化合物及びその誘導体、多環キノン系化合物及びその誘導体、スクアリリウム化合物及びその誘導体、アズレニウム化合物及びその誘導体、チアピリリウム化合物及びその誘導体、C
60等のフラーレン類及びその誘導体が挙げられる。
【0238】
本実施形態に係る有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要な材料を含んでいてもよい。例えば、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、安定性を増すための安定化剤、紫外(UV)光を吸収するためのUV吸収剤等が挙げられる。
【0239】
本実施形態に係る有機薄膜は、機械的特性を高めるため、本実施形態に係る含窒素化合物以外の高分子材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0240】
このような高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが例示される。
【0241】
本実施形態に係る有機薄膜の製造方法としては、例えば、本実施形態に係る含窒素化合物、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを含む溶液からの成膜による方法が挙げられる。また、本実施形態に係る含窒素化合物が昇華性を有する場合は真空蒸着法により薄膜に形成することもできる。
【0242】
また、本実施形態に係る含窒素化合物の前駆体(例えば、上記化合物(12−9))を含む薄膜を作製し、該前駆体を加熱等により本実施形態に係る含窒素化合物に変換することによって、本実施形態に係る有機薄膜を製造することもできる。このようにして製造された有機薄膜は、特性に大きく影響しない限り、本実施形態に係る含窒素化合物の他に、上記前駆体及びその副生成物を含有していてもよい。
【0243】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、本実施形態に係る含窒素化合物及び混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを溶解させるものであればよい。
【0244】
本実施形態に係る有機薄膜を溶液から成膜する場合に用いる溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素;THF、テトラヒドロピラン等のエーテル類が例示される。本実施形態に係る含窒素化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1質量%以上の本実施形態に係る含窒素化合物を溶解させることができる。
【0245】
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、これらのうち、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法が好ましい。
【0246】
本実施形態に係る有機薄膜を製造する工程には、本実施形態に係る含窒素化合物を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程により本実施形態に係る含窒素化合物を配向させた有機薄膜は、主鎖分子又は側鎖分子が一方向に並ぶので、電子移動度又はホール移動度が向上する。
【0247】
本実施形態に係る含窒素化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。中でもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が配向手法として簡便かつ有用で利用しやすく、ラビング法、シェアリング法が好ましい。
【0248】
また、本実施形態に係る有機薄膜を製造する工程には、成膜後にアニール処理をする工程が含まれていてもよい。この工程により、本実施形態に係る含窒素化合物間の相互作用が促進される等、有機薄膜の膜質が改善され、電子移動度又はホール移動度が向上する。アニール処理の処理温度としては、50℃から本実施形態に係る含窒素化合物のガラス転移温度(Tg)付近の間の温度が好ましく、(Tg−30℃)からTgの間の温度がより好ましい。アニール処理する時間としては、1分から10時間が好ましく、10分から1時間がより好ましい。アニール処理する雰囲気としては、真空中又は不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0249】
本実施形態に係る有機薄膜は、電子輸送性又はホール輸送性を有することから、電極から注入された電子又はホール、あるいは光吸収により発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等、種々の有機薄膜素子に用いることができる。本実施形態に係る有機薄膜をこれらの有機薄膜素子に用いる場合は、配向処理により配向させて用いることが電子輸送性又はホール輸送性がより向上するため好ましい。
【0250】
[有機薄膜素子]
上述した本実施形態に係る有機薄膜は、本実施形態に係る含窒素化合物を含むことから、優れた電荷(電子又はホール)輸送性を有するものとなる。したがって、この有機薄膜は、電極等から注入された電子又はホール、或いは、光吸収により発生した電荷等を効率よく輸送できるものであり、有機薄膜を用いた各種の電気素子(有機薄膜素子)に応用することができる。また、本実施形態に係る含窒素化合物は、環境安定性に優れているため、これらを用いて薄膜を形成することで、通常の大気中においても性能が安定している有機薄膜素子が製造可能となる。以下、有機薄膜素子の例についてそれぞれ説明する。
【0251】
(有機薄膜トランジスタ)
まず、好適な実施形態に係る有機薄膜トランジスタについて説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る含窒素化合物を含む活性層(即ち、有機薄膜層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造であればよく、電界効果型、静電誘導型が例示される。
【0252】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る含窒素化合物を含む活性層、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、本実施形態に係る含窒素化合物を含む活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0253】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本実施形態に係る含窒素化合物を含有する活性層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、該ゲート電極が活性層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び活性層中に設けられたゲート電極が、本実施形態に係る含窒素化合物を含有する活性層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0254】
図1は第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0255】
図2は第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0256】
図3は、第3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0257】
図4は第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された活性層2と、を備えるものである。
【0258】
図5は第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0259】
図6は第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0260】
図7は第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一でも異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0261】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本実施形態に係る含窒素化合物を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2及び/又は活性層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0262】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開2004−006476号公報記載の方法により製造することができる。
【0263】
基板1としては有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板を用いることができる。
【0264】
活性層2を形成する際に、有機溶媒可溶性の化合物を用いることが製造上有利であり好ましいことから、上記で説明した本実施形態に係る有機薄膜の製造方法を用いて、活性層2となる有機薄膜を形成することができる。
【0265】
活性層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。例えば、SiOx,SiNx、Ta
2O
5、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス及びフォトレジストが挙げられる。低電圧化できるので、誘電率の高い材料の方が好ましい。
【0266】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、例えば、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV、O
2プラズマで処理をしておくことも可能である。
【0267】
また、有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが、大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する工程における外部からの影響を低減することができる。
【0268】
保護膜を形成する方法としては、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂又は無機のSiONx膜でカバーする方法が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中)行うことが好ましい。
【0269】
有機薄膜トランジスタを複数集積することにより有機薄膜トランジスタアレイを構成することができ、フラットパネルディスプレイのバックプレーンとして用いることもできる。
【0270】
次に、本実施形態に係る有機薄膜の太陽電池への応用を説明する。
図8は、実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
図8に示す太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る含窒素化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0271】
本実施形態に係る太陽電池においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極として、仕事関数の差が大きくなるように選ばれることが好ましい。活性層2中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0272】
次に、本実施形態に係る有機薄膜の光センサへの応用を説明する。
図9は、第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
図9に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る含窒素化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0273】
図10は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
図10に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された本実施形態に係る含窒素化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0274】
図11は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
図11に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本実施形態に係る含窒素化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0275】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。活性層2中には光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。また基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0276】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0277】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、実施例及び比較例において、式(A)、(B)、(C)、(C’)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)、(J)、(K)、(L)、(M)、(N)、(O)、(P)、(Q)、(R)、(S)、(T)、(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)、(Z)、(AA)、(AB)、(AC)、(AD)、(AE)、(AF)、(AG)、(AH)、(AI)、(AJ)、(AK)で表される化合物を、順番に、化合物A、B、C、C’、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q、R、S、T、U、V、W、X、Y、Z、AA、AB、AC、AD、AE、AF、AG、AH、AI、AJ、AKという。
【0278】
(測定条件等)
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名JMN−270(
1H測定時270MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。また、質量分析(MS)は、株式会社島津製作所製のGCMS−QP5050A(商品名)を用い、電子イオン化(EI)法、直接試料導入(DI)法により測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silicagel 60N(40〜50μm)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社、又はダイキン化成品株式会社より購入した。マイクロウェーブ照射下での反応は、Biotage AB社製のInitiator
TM Ver.2.5を用い、出力400W、2.45GHzで行った。
【0279】
サイクリックボルタンメトリー(CV)は、測定装置としてビー・エー・エス株式会社(BAS社)製の商品名「CV−50W」を使用し、作用電極としてBAS社製Pt電極、対電極としてPt線、参照電極としてAg線を用いて測定した。この測定時の掃引速度は100mV/s、走査電位領域は−2.8V〜1.6Vであった。還元電位及び酸化電位の測定は、化合物及び重合体を1×10
−3mol/L、支持電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF6)0.1mol/Lをモノフルオロベンゼン溶媒に完全に溶解させてから測定した。
【0280】
(実施例1)
<化合物Aの合成>
ナスフラスコに2,5−ジブロモチオフェン−3,4−ジカルボン酸(100mg,0.303mmol)、触媒量のDMF、過剰量の塩化チオニルを入れ、1時間還流させた。反応後、塩化チオニルを真空留去した。次にこれを0℃に冷却した後、トリエチルアミン(0.25mL,1.818mmol)を加え、更にピペリジン(0.18mL,1.818mmol)を滴下した。滴下後、室温で撹拌した。3時間後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1(容積比))で精製を行い、赤みを帯びたパウダーの化合物A(61mg,収率43%)を得た。得られた化合物Aの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R
f=0.33(ヘキサン/酢酸エチル=1/1(容積比))
GC−MS(DI):m/z=464(M
+).
【0281】
【化68】
【0282】
<化合物Bの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物A(61mg,0.131mmol)、2−トリイソプロピルシリル−5−トリブチルスズ−チアゾール(153mg,0.288mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(15mg,0.013mmol)、トルエン(2mL)を入れ、試験管内の気体を窒素で置換した後、8時間還流させた。反応溶液をセライト濾過後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(容積比))で精製を行い、黄色液体の化合物B(93mg,収率79%)を得た。得られた化合物Bの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R
f=0.32(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(容積比))
1H NMR(400 MHz,CDCl
3):δ8.20(s,2H)
GC−MS(DI):m/z=785(M
+).
【0283】
【化69】
【0284】
なお、式中、TIPSは、トリイソプロピルシリル基を示す。
【0285】
<化合物Cの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物B(93mg,0.118mmol)、THF(2mL)を入れた。ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(1M,2.6mL,1.43mmol)を加え反応させた。1時間後、−78℃で水を加え室温まで昇温させ、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1(容積比))で精製を行い、紫色固体の化合物C(1mg,収率1.3%)を得た。得られた化合物Cは、クロロホルム、酢酸エチル、THFに可溶であった。得られた化合物Cの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R
f=0.27(ヘキサン/酢酸エチル=8/1(容積比))
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.46(m,6H),1.15(d,36H)
GC−MS(DI):m/z=614(M
+)
【0286】
また、得られた化合物Cについて、CV測定を行ったところ、−1.29Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなっていることが確認できた。
【0287】
【化70】
【0288】
<化合物C’の合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物C、THFを入れる。ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、リチウムジイソプロピルアミドを加え反応させる。1時間後、−78℃で水を加え室温まで昇温させ、クロロホルムで抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物C’を得る。
【0289】
【化71】
【0290】
(実施例2)
<化合物Dの合成>
ナスフラスコに1,4−ジブロモ−2,5−ベンゼンジカルボン酸(10g,30.87mmol)、触媒量のDMF、過剰量の塩化チオニルを入れ、該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、1時間還流させた。反応後、塩化チオニルを真空留去した。次にこれを0℃に冷却した後、トリエチルアミン(25.89mL,185.2mmol)を加え、更にピペリジン(18.36mL,185.2mmol)を滴下した。滴下後、室温で撹拌した。2時間後、水を加えジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮した。生じた固体をメタノールで洗浄し、白色固体の化合物D(11.76g,収率83%)を得た。得られた化合物Dの分析結果及び化学式は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.44(s,2H)
GC−MS(DI):m/z=457(M
+).
【0291】
【化72】
【0292】
<化合物Eの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物D(2g,4.37mmol)、2−トリイソプロピルシリル−5−トリブチルスズ−チアゾール(5.10g,9.60mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(505mg,0.44mmol)、トルエン(20mL)を入れた後、試験管内の気体を窒素で置換し、10時間還流させた。反応溶液をセライト濾過後、減圧濃縮し、生じた固体をメタノールで洗浄することにより、白色固体の化合物E(2.65mg,収率78%)を得た。得られた化合物Eの分析結果及び化学式は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ8.28(s,2H),7.52(s,2H)
【0293】
【化73】
【0294】
<化合物Fの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物E(500mg,0.642mmol)、THF(45mL)を入れた。ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(1M,14mL,7.77mmol)を加え反応させた。1時間後、−78℃で水を加え室温まで昇温させ、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=2.5/1(容積比))で精製を行い、紫色固体の化合物F(343mg,収率88%)を得た。得られた化合物Fは、クロロホルム、酢酸エチル、THFに可溶であった。得られた化合物Fの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R
f=0.29(ヘキサン/クロロホルム=2.5/1(容積比))
GC−MS(DI):m/z= 609(M
+).
【0295】
また、得られた化合物Fについて、CV測定を行ったところ、−1.17Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなっていることが確認できた。
【0296】
【化74】
【0297】
<化合物Gの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物F(207mg,0.340mmol)、THF(5mL)を入れた。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換した後、0℃に冷却し、フッ化テトラブチルアンモニウムのTHF溶液(1.0M,0.850mL,0.850mmol)を加え反応させながら室温まで昇温させた。12時間後、水を加えクロロホルムで抽出し、有機層に懸濁している緑色固体を濾取した。これを真空乾燥し昇華精製することにより、緑色固体の化合物G(74mg,収率74%)を得た。得られた化合物Gの分析結果及び化学式は以下の通りである。
GC−MS(DI):m/z=296(M
+).
【0298】
【化75】
【0299】
(実施例3)
<化合物Hの合成>
加熱乾燥したナスフラスコにチアゾール(1g,11.75mmol)、THF(60mL)を入れた。−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(8.8mL,14.1mmol)を加え反応させた。30分後、1−ヨードヘキサン(2.74g,12.93mmol)を加え、30分後、室温まで昇温させた。1時間後、水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1(容積比))で精製を行い、褐色透明の化合物H(700mg,収率35%)を得た。得られた化合物Hの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R
f=0.23(ヘキサン/酢酸エチル=10/1(容積比))
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.66(d,1H),7.18(d,1H),3.02(t,2H),1.80(m,2H),1.24−1.46(m,6H),0.89(t,3H)
【0300】
【化76】
【0301】
<化合物Iの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物H(500mg,2.95mmol)、THF(3mL)を入れた。−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.9mL,3.10mmol)を加え反応させた。30分後、塩化トリブチルスズ(0.84mL,3.10mmol)を加え、30分後、室温まで昇温させた。1時間後、水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。アルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製を行い、黄色透明な化合物I(1.15g,収率85%)を得た。得られた化合物Iの分析結果及び化学式は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.58(s,1H),3.06(t,2H),1.81(m,2H),0.90(m,12H)
【0302】
【化77】
【0303】
<化合物Jの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物D(100mg,0.22mmol)、化合物I(220mg,0.48mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(25mg,0.022mmol)、トルエン(2mL)を入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、10時間還流させた。セライト濾過後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/3(容積比))で精製を行い、化合物J(113mg,収率82%)を得た。得られた化合物Jの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R
f=0.43(ヘキサン/酢酸エチル=1:3)
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.80(s,1H),7.45(s,1H)
GC−MS(DI):m/z=635(M
+).
【0304】
【化78】
【0305】
<化合物Kの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物J、THFを入れる。ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、リチウムジイソプロピルアミドを加え反応させる。1時間後、−78℃で水を加え室温まで昇温させ、クロロホルムで抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物Kを得る。
【0306】
【化79】
【0307】
(実施例4)
<化合物Lの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物F(47mg,0.077mmol)、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール(58mg,0.031mmol)、p−トルエンスルホン酸(133mg,0.77mmol)、ベンゼン(30mL)を入れ、該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、8時間還流させた。セライト濾過後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20/1(容積比))で精製を行い、化合物L(42mg,0.066mmol)を得た。得られた化合物Lの分析結果及び化学式は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ8.68(s,2H),7.46(s,2H),4.60(s,2H),4.57(s,2H),3.82(s,2H),3.79(s,2H).
【0308】
【化80】
【0309】
<化合物Mの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物L(237mg,0.37mmol)、THF(5mL)を入れた。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(0.71mL,1.12mmol)を加え反応させた。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズ(0.33mL,1.23mmol)を加え室温まで昇温させた。1時間後、水を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮した。アルミナカラム(ヘキサン/重クロロホルム=10/1(容積比))で精製を行い、化合物M(396mg,収率88%)を得た。得られた化合物Mの分析結果及び化学式は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.41(s,2H),4.76(s,2H),4.73(s,2H),3.77(s,2H),3.74(s,2H).
【0310】
【化81】
【0311】
<化合物Oの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物M(322mg,0.27mmol)、4’−ブロモ−2,2,2−トリフルオロアセトフェノン(201mg,0.80mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(31mg,0.027mmol)、トルエン(3mL)を入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、13時間還流させた。セライト濾過後、減圧濃縮し、得られた固体をメタノール、ジエチルエーテルで洗浄した。ナスフラスコに得られた朱色固体、酢酸、濃塩酸を入れた後、100℃に加熱した。2時間後、室温まで降温し、水を加え生じた固体を水、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄した。減圧下で昇華精製を行い、濃緑色固体の化合物O(77mg,収率45%)を得た。
【0312】
また、得られた化合物Oについて、CV測定を行ったところ、−0.88Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなっていることが確認できた。
【0313】
【化82】
【0314】
(実施例5)
<化合物Pの合成>
加熱乾燥したナスフラスコにチアゾール、THFを入れる。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78に冷却し、n−ブチルリチウムを加え反応させる。30分後、塩化ヘプタノイルを加え、30分後、室温まで昇温させる。1時間後、水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物Pを得る。
【0315】
【化83】
【0316】
<化合物Vの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物P、2−クロロエタノール、DMF、THFを入れる。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換した後、−78℃に冷却し、tert−ブトキシカリウムを加え反応させる。7時間後、10質量%の塩化アンモニウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出する。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物Vを得る。
【0317】
【化84】
【0318】
<化合物Qの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物V、THFを入れる。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムを加え反応させる。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズを加え室温まで昇温させる。1時間後、水を加え酢酸エチルで抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮する。アルミナカラムで精製を行い、化合物Qを得る。
【0319】
【化85】
【0320】
<化合物Rの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物D、化合物Q、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トルエンを入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、8時間還流させる。セライト濾過後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物Rを得る。
【0321】
【化86】
【0322】
<化合物Sの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物R、THFを入れる。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、リチウムジイソプロピルアミドを加え反応させる。1時間後、−78℃で水を加え室温まで昇温させ、クロロホルムで抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、固体を得る。ナスフラスコに得られた固体、酢酸、濃塩酸を入れた後、100℃に加熱する。2時間後、室温まで降温し、水を加え生じた固体を水、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄する。減圧下で昇華精製を行い、固体の化合物Sを得る。
【0323】
【化87】
【0324】
(実施例6)
<化合物Tの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物A、化合物Q、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トルエンを入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、8時間還流させる。セライト濾過後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物Tを得る。
【0325】
【化88】
【0326】
<化合物Uの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物T、THFを入れる。ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、リチウムジイソプロピルアミドを加え反応させる。1時間後、−78℃で水を加え室温まで昇温させ、クロロホルムで抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行う。ナスフラスコに得られた化合物、酢酸、濃塩酸を入れた後、100℃に加熱する。2時間後、室温まで降温し、水を加え生じた固体を水、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄する。減圧下で昇華精製を行い、固体の化合物Uを得る。
【0327】
【化89】
【0328】
(実施例7)
<有機トランジスタ素子1の作製及びトランジスタ特性の評価>
ゲート電極となる高濃度にドープされたp型シリコン基板の表面に、絶縁層となるシリコン酸化膜を熱酸化により、300nm形成した基板の上に、ソース電極及びドレイン電極を形成し、電極付き基板を準備した。この基板の上に、リフトオフ法によりチャネル幅38mm、チャネル長5μmの櫛形ソース電極及びドレイン電極を形成した。電極付き基板をアセトンで10分間、次いでイソプロピルアルコールで10分間超音波洗浄した後、オゾンUVを30分間照射し基板表面を洗浄した。洗浄した基板上に、実施例4で合成した化合物Oを用い、真空蒸着法により化合物Oの有機薄膜を堆積させ、有機トランジスタ素子1を作製した。有機トランジスタ素子1に、真空中でゲート電圧Vg及びソース−ドレイン間電圧Vsdを0〜80Vの範囲で変化させ、有機トランジスタ特性を測定したところ、良好なn型半導体のドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)特性が得られた。このときの移動度は0.27cm
2/Vs、しきい値電圧25V、オン/オフ比10
6と良好であった。有機トランジスタ素子1を大気中で駆動させても、良好なトランジスタ特性が得られた。このことから、化合物Oを用いた有機トランジスタ素子1は、n型有機トランジスタとして有効に機能することが確認され、また化合物Oは電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能であることが確認された。
【0329】
(実施例8)
<化合物Wの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物A、化合物I、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トルエンを入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、8時間還流させた。セライト濾過後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物Wを得た。
【0330】
【化90】
【0331】
<化合物Xの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物W、THFを入れる。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、リチウムジイソプロピルアミドを加え反応させる。1時間後、−78℃で水を加え室温まで昇温させ、クロロホルムで抽出する。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物Xを得る。
【0332】
【化91】
【0333】
(実施例9)
<化合物Yの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物M(325mg,0.27mmol)、2−ブロモ−5−(2’,2’,2’−トリフルオロエタノニル)−チオフェン(207mg,0.80mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(31mg,0.027mmol)、トルエン(3mL)を入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、13時間還流させた。反応溶液を減圧濃縮し、得られた固体をメタノール、ジエチルエーテルで洗浄した。ナスフラスコに得られた赤紫色固体、酢酸、濃塩酸を入れた後、100℃に加熱した。12時間後、室温まで降温し、水を加え生じた固体を水、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄した。減圧下で昇華精製を行い、緑色固体の化合物Y(25mg,収率14%)を得た。得られた化合物Yの分析結果及び化学式は以下の通りである。
MS(TOF):m/z=653.04(M
+)
【0334】
【化92】
【0335】
(実施例10)
<化合物Zの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに1,4−ジブロモチオフェン−2,5−ビスメトキシメチルベンゼン、THF/テトラメチルエチレンジアミン(10/1(容積比))を入れ、−78℃に冷却し、tert−ブチルリチウムを加えて1時間撹拌した。1−ヨードドデカンを加え、1時間撹拌した後に水を加え、酢酸エチルで抽出した有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物Zを得た。
【0336】
【化93】
【0337】
<化合物AAの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物Z、酢酸、臭化水素を入れ、室温で1時間撹拌した。その後、水を加え、酢酸エチルで抽出した有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、化合物AAを得た。
【0338】
【化94】
【0339】
<化合物ABの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物AA、鉄、臭素、触媒量のヨウ素、ジクロロメタンを入れ、40℃で48時間撹拌した。その後、反応溶液を濃縮し、ジエチルエーテルで洗浄して精製を行い、化合物ABを得た。
【0340】
【化95】
【0341】
<化合物ACの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物AB(740mg,0.97mmol)、ジメチルスルホキシド(DMSO)/クロロホルム(24mL/12mL)、炭酸水素ナトリウム(2.46g,29.3mmol)を入れ、100℃で12時間撹拌した。その後、水を加え、クロロホルムで抽出した有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。得られた固体をメタノールで洗浄し、化合物AC(324mg、収率53%)を得た。
【0342】
【化96】
【0343】
<化合物ADの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物AC(644mg,1.02mmol)、リン酸二水素ナトリウム(247mg,2.06mmol)、亜塩素酸ナトリウム(188mg,1.95mmol)、DMSO/クロロホルム/水、を入れ、室温で12時間撹拌した。その後、減圧濃縮し、塩酸を加えてクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮し、白色固体の化合物AD(470mg,収率70%)を得た。
【0344】
【化97】
【0345】
<化合物AEの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物AD(470mg,0.71mmol)、触媒量のDMF、過剰量の塩化チオニルを入れ、1時間還流させた。反応後、塩化チオニルを真空留去した。次にジクロロメタンを加えて0℃に冷却した後、トリエチルアミン(0.4mL)を加え、更にピペリジン(0.3mL)を滴下した。滴下後、室温で撹拌した。2時間後、水を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)で精製を行い、化合物AE(240mg、収率42%)を得た。得られた化合物AEの分析結果及び化学式は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 3.81(m),3.70(m),3.15(m),2.72(m),2.58(m),1.80−1.20(m),0.89(t).
【0346】
【化98】
【0347】
<化合物AFの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物AE(240mg,0.30mmol)、2−トリイソプロピル−5−トリメチルスズ−チアゾール(366mg,0.91mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(4mg)、トルエン(2mL)を入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、10時間還流させた。セライト濾過後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=6/1(容積比))で精製を行い、化合物AF(90mg、収率27%)を得た。
【0348】
【化99】
【0349】
<化合物AGの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物AF(333mg,0.29mmol)、THF(10mL)を入れた。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(1M)を加え反応させた。1時間後、−78℃で水を加え室温まで昇温させ、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=60/1(容積比))で精製を行い、化合物AG(52mg、収率18%)を得た。得られた化合物AGの分析結果及び化学式は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 3.05(t,4H),1.62−1.06(m),0.88(t,6H).
【0350】
【化100】
【0351】
<化合物AHの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物AG(30mg,0.032mmol)、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール(36mg,0.192mmol)、p−トルエンスルホン酸(55mg,0.32mmol)、ベンゼン(2mL)を入れ、該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、24時間還流させた。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1(容積比))で精製を行い、化合物AH(11mg,収率35%)を得た。得られた化合物AHの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R
f=0.65(ヘキサン/酢酸エチル=5:1(容積比))
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 8.68(s,2H),4.71(d,J=11.5Hz,4H),3.78(d,J=11.5Hz,4H),3.10(m,4H),1.98(m,4H),1.7−1.2(m),1.01(t,J=7.1Hz,6H),0.94(t,J=7.1Hz,6H),0.88(t,J=6.8Hz,6H)
MS(MALDI):m/z=970.18(M
+).
【0352】
【化101】
【0353】
<化合物AI合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物AH、THFを入れる。該ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムを加え反応させる。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズを加え室温まで昇温させる。1時間後、水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮する。アルミナカラムで精製を行い、化合物AIを得る。
【0354】
【化102】
【0355】
<化合物AJの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物AI、4’−ブロモ−2,2,2−トリフルオロアセトフェノン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トルエンを入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、13時間還流させる。セライト濾過後、減圧濃縮し、得られた固体をメタノール、ジエチルエーテルで洗浄する。ナスフラスコに得られた固体、酢酸、濃塩酸を入れた後、100℃に加熱する。2時間後、室温まで降温し、水を加え生じた固体を水、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄する。減圧下で昇華精製を行い、化合物AJを得る。
【0356】
【化103】
【0357】
(実施例11)
<化合物AKの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物AI、2−ブロモ−5−(2’,2’,2’−トリフルオロエタノニル)−チオフェン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トルエンを入れた後、該試験管内の気体を窒素で置換し、13時間還流させる。セライト濾過後、減圧濃縮し、得られた固体をメタノール、ジエチルエーテルで洗浄する。ナスフラスコに得られた固体、酢酸、濃塩酸を入れた後、100℃に加熱する。2時間後、室温まで降温し、水を加え生じた固体を水、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄する。減圧下で昇華精製を行い、化合物AKを得る。
【0358】
【化104】
【0359】
(実施例12)
<有機トランジスタ素子2の作製及びトランジスタ特性の評価>
化合物Oに代えて実施例9の化合物Yを用いたこと以外は、実施例7と同様にして、有機トランジスタ素子2を作製した。
【0360】
得られた有機トランジスタ素子2に、真空中でゲート電圧Vg及びソース−ドレイン間電圧Vsdを0〜80Vの範囲で変化させ、有機トランジスタ特性を測定したところ、良好なn型半導体のId−Vg特性が得られた。このときの移動度は0.17cm
2/Vs、しきい値電圧15V、オン/オフ比10
4と良好であった。有機トランジスタ素子2を大気中で駆動させても、良好なトランジスタ特性が得られた。
【0361】
図12は、有機トランジスタ素子2を大気下で保存した際の有機トランジスタ特性を示すグラフである。有機トランジスタ素子2を大気下で保存後に特性を測定したところ、
図12に示すとおり3000時間後でも電子移動度の減少は少なかった。このことから、化合物Yを用いた有機トランジスタ素子2は、n型有機トランジスタとして有効に機能し、大気中での安定性にも優れていることが確認された。また化合物Yは電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能であることが確認された。
【0362】
(比較例1)
<化合物ALの合成>
化合物ALを特開2009−21527号公報に記載の方法で合成した。合成により得られた目的物は、有機溶剤への溶解性が低かった。得られた合成物を減圧下で昇華精製を行い、化合物ALの緑色固体(33mg,収率21%)を得た。得られた化合物ALの分析結果及び化学式は以下の通りである。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 8.08(d,4H,J=8.8Hz),8.05(d,4H,J=8.8Hz)
GC−MS(DI):m/z=538(M
+)
【0363】
【化105】
【0364】
<有機トランジスタ素子3の作製及びトランジスタ特性の評価>
実施例7と同様にして、洗浄したソース電極及びドレイン電極を形成した基板を準備し、上記で合成した化合物AL用い、真空蒸着法により基板温度110℃、堆積速度0.2nm/分で、化合物ALの有機薄膜を成膜し、有機トランジスタ素子3を作成した。有機トランジスタ素子3に、真空中でゲート電圧Vgを0〜120V、ソース−ドレイン間電圧Vsdを0〜100Vの範囲で変化させ、有機トランジスタ特性を測定することによりn型半導体のId−Vg特性が得られた。このときの移動度は5.6×10
−2cm
2/Vs、しきい値電圧20V、オン/オフ比10
6であった。