【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
小麦種子2gを、マルチビーズショッカー(多検体細胞破砕機/MB301(S):安井器械株式会社製)で粉砕した後、5倍量のエタノールを添加して、150rpm、室温の条件で、2時間振とう抽出した。次いで、3500rpm、室温の条件で、15分間遠心分離して、上清を遠心濃縮機で乾燥して、小麦エタノール抽出物を得た。
次いで、この小麦エタノール抽出物を中圧クロマトグラフィーによって精製した。中圧クロマトグラフィー条件は下記の通りである。溶出開始後12〜14分に出現するピーク成分を回収して、溶媒留去し、本発明の抗肥満剤3mgを得た。このときのクロマトグラムを
図1に示す。なお、クロマトグラムの横軸は溶出開始からの時間(分)を表す。
【0027】
<中圧クロマトグラフィー条件>
カラム: シリカゲル(インジェクトカラムS、ハイフラッシュカラムM、60Å、40μm、山善株式会社)
移動相: ヘキサン/酢酸エチル(体積比)=90/10にて3分、80/20にて5分、60/40にて10分
検出波長:254nm
【0028】
〔比較例1〕
小麦種子200mgを、マルチビーズショッカー(多検体細胞破砕機/MB301(S):安井器械株式会社製)で粉砕した後、5倍量のエタノールを添加して、150rpm、室温の条件で、2時間振とう抽出した。次いで、3500rpm、室温の条件で、15分間遠心分離して、上清を遠心濃縮機で乾燥した。得られた濃縮物の重量を測定して、160mg/mLとなるようにエタノールに溶解して、比較例組成物4.8mgを得た。
【0029】
〔比較例2〕
小麦種子200mgを、マルチビーズショッカー(多検体細胞破砕機/MB301(S):安井器械株式会社製)で粉砕した後、5倍量のヘキサンを添加して、150rpm、室温の条件で、2時間振とうして脱脂後、ヘキサンを除去した。5倍量のエタノールを添加して、150rpm、室温の条件で、2時間振とう抽出した。次いで、3500rpm、室温の条件で、15分間遠心分離して、上清を遠心濃縮機で乾燥した。得られた濃縮物の重量を測定して、87mg/mLとなるようにエタノールに溶解して、比較例組成物2.6mgを得た。
【0030】
〔試験例〕
マウス前駆脂肪細胞3T3−L1を、10% fetal bovine serum(FBS)、10U/mL penicillin、10μg/mL streptomycinを含むダルベッコ変法イーグル培地(グルコース4.5g/L、DMEM、Sigma−Aldrich社製)に、4×10
4cells/mLの密度で浮遊させ、24ウェルプレートに1mLずつ播種した。次いで、5%CO
2存在下、37℃で、3日間の培養後、コンフルエントになったことを顕微鏡下で確認してから、脂肪細胞への分化を誘導するため、培地を10μg/mLインスリン(ヒト由来)、250nMデキサメタゾン、500μM 3−イソブチル−1−メチルキサンチンを含む10%FBS−DMEM(分化誘導培地)に置換し、分化誘導2日後、培地を10μg/mLインスリンを含む10%FBS−DMEM(維持培地)に置換して、さらに、6日間培養した。
【0031】
以上の培養において、実施例1の抗肥満剤または比較例1もしくは2の組成物を適宜エタノールに溶解し、乾燥固形分としての添加量が所定量(
図2−1および2−2の記載参照)となるように、分化誘導培地および維持培地に添加して培養を行なった。なお、コントロールとして、実施例1の抗肥満剤ならびに比較例1および2の組成物をいずれも添加しない系での培養も行なった。
【0032】
脂肪細胞分化抑制作用の評価のため、分化誘導2日後の各培養細胞を光学顕微鏡下で観察した。その際の光学顕微鏡写真を
図3に示す。なお、
図3(a)は、コントロールの光学顕微鏡写真であり、
図3(b)は、実施例1の抗肥満剤を0.04mg添加したときの光学顕微鏡写真であり、
図3(c)は、比較例1の組成物を1.6mg添加したときの光学顕微鏡写真である。
また、細胞内の脂肪蓄積抑制性の評価のため、維持培地での培養終了後の培養細胞内のトリグリセライド(TG)量を下記測定方法に従って測定した。実施例1の抗肥満剤を用いた場合の結果を
図2−1に、比較例1または2の組成物を用いた場合の結果を
図2−2に示す。なお、
図2−1および2−2において、結果は、無添加(コントロール)におけるトリグリセライド産生量を100%とした相対値で表す。
【0033】
(トリグリセライド量の測定方法)
培養後の3T3−L1細胞をPBS(−)500μL/wellで2回洗浄した後、2−プロパノール300μLを加えて、80rpmで20分間振とうして、細胞内のトリグリセライドを抽出した。抽出したトリグリセライド量を、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業製)を用いて定量した。
【0034】
図2−1から、本発明の抗肥満剤は、細胞内に蓄積するトリグリセライド量を減少させることができ、その効果は、添加量の増加に伴って大きくなることが明らかである。一方、
図2−2から明らかな通り、比較例1または2の組成物、すなわち単なる抽出物では、本発明の抗肥満剤のような効果は認められず、むしろ、添加量の増加に伴って細胞内に蓄積するトリグリセライド量が増加してしまった。
また、分化誘導によって脂肪細胞となった
図3(a)の顕微鏡写真、および比較例1の組成物を添加した
図3(c)の顕微鏡写真では、細胞内に多数の脂肪滴の蓄積が認められるが、本発明の抗肥満剤を添加した
図3(b)の顕微鏡写真では、前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化が抑制され、細胞内に蓄積される脂肪滴が少ないことが明らかである。