特許第5828923号(P5828923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許5828923-ニッケル粉の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5828923
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】ニッケル粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/26 20060101AFI20151119BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20151119BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   B22F9/26 C
   B22F3/10 F
   B22F9/24 C
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-16143(P2014-16143)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-140480(P2015-140480A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年5月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 和道
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 俊豪
(72)【発明者】
【氏名】平郡 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 修
(72)【発明者】
【氏名】米山 智暁
(72)【発明者】
【氏名】工藤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 佳智
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10-509213(JP,A)
【文献】 特開2006-152344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸ニッケルアンミン錯体溶液からニッケル粉を生成する製造工程において、
下記(1)から(4)に示す処理工程を施すことを特徴とするニッケル粉の製造方法。

(1)硫酸ニッケル溶液とヒドラジンを混合して種晶となる平均粒径0.1〜5μmのニッケル粉を生成する種晶生成工程。
(2)前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、(1)で得られた前記平均粒径0.1〜5μmのニッケル粉を種晶として添加して混合スラリーを形成する種晶添加工程。
(3)前記処理工程(2)の種晶添加工程で得られた前記混合スラリーに水素ガスを吹き込み、前記混合スラリー中のニッケル成分が前記種晶上に析出して形成したニッケル粉を含む還元スラリーを形成する還元工程。
(4)前記処理工程(3)の還元工程で得られた還元スラリーを、固液分離して前記ニッケル粉を固相成分として分離、回収した後、前記回収したニッケル粉に硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を加えた溶液に水素ガスを吹き込み、前記ニッケル粉を成長させ、高純度ニッケル粉を形成する成長工程。
【請求項2】
前記処理工程(1)の種晶生成工程における硫酸ニッケル溶液とヒドラジンを混合する際に、さらにアルカリを混合することを特徴とする請求項1記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項3】
前記処理工程(2)の種晶添加工程における前記種晶を前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に添加して混合スラリーを形成する際、前記混合スラリーに分散剤をさらに添加することを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項4】
前記処理工程(2)の種晶添加工程における前記添加する種晶の添加量が、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル重量に対し、1〜100%となる量であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項5】
前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液が、
コバルトを不純物として含むニッケル含有物を溶解する浸出工程と、
前記浸出工程で得られたニッケルとコバルトを含む浸出液をpH調整した後、溶媒抽出法により硫酸ニッケル溶液とコバルト回収液に分離する溶媒抽出工程と、
前記硫酸ニッケル溶液をアンモニアにより錯化処理する錯化工程を、
経て得られた硫酸ニッケルアンミン錯体溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項6】
前記ニッケル含有物が、ニッケルおよびコバルトの混合硫化物、粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、金属ニッケルの粉末の少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒抽出法が、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ2−エチルヘキシルエステルまたはジ−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸を用いることを特徴とする請求項5又は6に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項8】
前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中の硫酸アンモニウム濃度が、100〜500g/l、且つアンモニウム濃度が、前記錯体溶液中のニッケル濃度に対してモル比で1.9以上であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項9】
前記処理工程(1)の種晶生成工程の硫酸ニッケル溶液が、前記請求項5に記載の溶媒抽出工程により生成された硫酸ニッケル溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項10】
前記処理工程(3)の還元工程、及び処理工程(4)の成長工程が、温度を150〜200℃、及び圧力を1.0〜4.0MPaの範囲に維持して各処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項11】
前記分散剤が、スルホン酸塩を含むことを特徴とする請求項3に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項12】
前記処理工程(4)の成長工程を経て得られた高純度ニッケル粉を、団鉱機を用いて塊状のニッケルブリケットに加工するニッケル粉団鉱工程と、
得られた塊状のニッケルブリケットを、水素雰囲気中で温度500〜1200℃での保持条件により、焼結処理を行い、焼結体のニッケルブリケットを形成するブリケット焼結工程を含むことを特徴とする請求項1記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項13】
前記処理工程(3)の還元工程及び処理工程(4)の成長工程の固液分離処理によりニッケル粉を固相成分として分離した後の反応後液を濃縮し、硫酸アンモニウムを晶析させて硫安結晶を回収する硫安回収工程を含むことを特徴とする請求項1記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項14】
前記処理工程(3)の還元工程及び処理工程(4)の成長工程の固液分離処理によりニッケル粉を固相成分として分離した後の反応後液にアルカリを加えて加熱し、アンモニアガスを揮発させ回収するアンモニア回収工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項15】
前記アンモニア回収工程で回収したアンモニアが、請求項5記載の溶媒抽出工程及び錯化工程で硫酸ニッケルアンミン錯体溶液の生成に用いるアンモニア、並びに請求項2記載の処理工程(1)の種晶生成工程で混合されるアルカリとしてのアンモニアに循環使用されることを特徴とする請求項14記載のニッケル粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液から高純度なニッケル粉やそれを固めたブリケットを得る方法に関するものである。
特に湿式ニッケル製錬プロセスで発生した工程内の中間生成溶液の処理に適用できる。
【背景技術】
【0002】
湿式製錬プロセスを用いてニッケル粉を工業的に製造する方法として、原料を硫酸溶液に溶解後、不純物を除去する工程を経て、得た硫酸ニッケル溶液にアンモニアを添加し、ニッケルのアンミン錯体を形成させ、生成した硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に水素ガスを供給しニッケルを還元することによりニッケル粉を製造する方法がある。
【0003】
例えば非特許文献1には還元反応時に鉄化合物を種晶として添加し、鉄化合物上にニッケルを析出させるニッケル粉の製造プロセスが記載されているが、製品中への種晶由来の鉄混入がある点が課題である。
【0004】
さらに、水素ガス以外の還元剤を用いてニッケル粉を得る方法もこれまでに提案されてきている。
例えば、特許文献1には安価で、かつ耐侯性に優れ、樹脂と混練した状態で電気抵抗が低く、初期電気抵抗および使用中の電気抵抗を低減し、長期間にわたり安定して使用でき、導電ペーストおよび導電樹脂用の導電性粒子として好適なニッケル粉、およびその製造方法を提供する方法が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されるニッケル粉は、コバルトを1〜20質量%含有し、残部がニッケルおよび不可避不純物からなり、一次粒子が凝集した二次粒子で構成されるニッケル粉であって、酸素含有量が0.8質量%以下である。二次粒子の表層部にのみコバルトを含有し、その表層部におけるコバルト含有量が1〜40質量%とすることが好ましい、とされている。開示される製造方法によって、このニッケル粉を得ようとする場合、コバルトが共存することになり、例えばニッケル酸化鉱石のようにニッケルとコバルトが共存して存在し、これらを分離してそれぞれを高純度かつ経済的に回収しようとする用途には適していない。
【0006】
さらに特許文献2には、粒子凝集物を生じにくいように改善された、液相還元法による金属粉末の製造方法が提供されている。
この製造方法は、金属化合物、還元剤、錯化剤、分散剤を溶解することにより、金属化合物に由来する金属イオンを含有する水溶液を作製する第1工程と、水溶液のpH調整をすることにより金属イオンを還元剤により還元させ、金属粉末を析出させる第2工程とを備える金属粉末の製造方法である。
しかし、この製造方法は高価な薬剤を用いて高コストであり、上記ニッケル製錬として大規模に操業するプロセスに適用するには経済面で有利とはいえない。
【0007】
以上のように様々なニッケル粉を製造するプロセスが提案されているが、工業的に安価な水素ガスを用いて高純度のニッケル粉を製造する方法は提唱されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−240164号公報
【特許文献2】特開2010−242143号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】POWDER METALLURGY、1958、No.1/2、P.40−52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、工業的に安価な水素ガスを使用し、微小なニッケル粉を用いて硫酸ニッケルアンミン錯体溶液からの高純度のニッケル粉の粗大な粒を生成する製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決する本発明の第1の発明は、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液からニッケル粉を生成する製造工程において、(1)硫酸ニッケル溶液とヒドラジンを混合して種晶となる平均粒径0.1〜5μmのニッケル粉を生成する種晶生成工程、(2)前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、(1)で得られた前記平均粒径0.1〜5μmのニッケル粉を種晶として添加して混合スラリーを形成する種晶添加工程、(3)前記処理工程(2)の種晶添加工程で得られた前記混合スラリーに水素ガスを吹き込み、前記混合スラリー中のニッケル成分が前記種晶上に析出して形成したニッケル粉を含む還元スラリーを形成する還元工程、(4)前記処理工程(3)の還元工程で得られた還元スラリーを、固液分離して前記ニッケル粉を固相成分として分離、回収した後、前記回収したニッケル粉に硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を加えた溶液に水素ガスを吹き込み、前記ニッケル粉を成長させ、高純度ニッケル粉を形成する成長工程の(1)から(4)に示す処理工程を施すことを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0012】
本発明の第2の発明は、第1の発明における処理工程(1)の種晶生成工程における硫酸ニッケル溶液とヒドラジンを混合する際に、さらにアルカリを混合することを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0013】
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における処理工程(2)の種晶添加工程における種晶を前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に添加して混合スラリーを形成する際、前記混合スラリーに分散剤をさらに添加することを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0014】
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明の処理工程(2)の種晶添加工程における添加する種晶の添加量が、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル重量に対し、1〜100%となる量であることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0015】
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明における硫酸ニッケルアンミン錯体溶液が、コバルトを不純物として含むニッケル含有物を溶解する浸出工程と、浸出工程で得られたニッケルとコバルトを含む浸出液をpH調整した後、溶媒抽出法により硫酸ニッケル溶液とコバルト回収液に分離する溶媒抽出工程と、その硫酸ニッケル溶液をアンモニアにより錯化処理する錯化工程を経て得られた硫酸ニッケルアンミン錯体溶液であることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0016】
本発明の第6の発明は、第5の発明におけるニッケル含有物が、ニッケルおよびコバルトの混合硫化物、粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、金属ニッケルの粉末の少なくとも1種であることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0017】
本発明の第7の発明は、第5及び第6の発明における溶媒抽出法が、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ2−エチルヘキシルエステルまたはジ−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸を用いることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0018】
本発明の第8の発明は、第5〜第7の発明における硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中の硫酸アンモニウム濃度が、100〜500g/l、且つアンモニウム濃度が、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル濃度に対してモル比で1.9以上であることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0019】
本発明の第9の発明は、第1及び第2の発明における処理工程(1)の種晶生成工程の硫酸ニッケル溶液が、第5の発明に記載の溶媒抽出工程により生成された硫酸ニッケル溶液であることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0020】
本発明の第10の発明は、第1の発明における処理工程(3)の還元工程、及び処理工程(4)の成長工程が、温度を150〜200℃、及び圧力を1.0〜4.0MPaの範囲に維持して各処理を行うことを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0021】
本発明の第11の発明は、第3の発明における分散剤が、スルホン酸塩を含むことを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0022】
本発明の第12の発明は、第1の発明における処理工程(4)の成長工程を経て得られた高純度ニッケル粉を、団鉱機を用いて塊状のニッケルブリケットに加工するニッケル粉団鉱工程と、得られた塊状のニッケルブリケットを、水素雰囲気中で温度500〜1200℃での保持条件により、焼結処理を行い、焼結体のニッケルブリケットを形成するブリケット焼結工程を含むことを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0023】
本発明の第13の発明は、第1の発明における処理工程(3)の還元工程及び処理工程(4)の成長工程の固液分離処理によりニッケル粉を固相成分として分離した後の反応後液を濃縮し、硫酸アンモニウムを晶析させて硫安結晶を回収する硫安回収工程を含むことを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0024】
本発明の第14の発明は、第1の発明における処理工程(3)の還元工程及び処理工程(4)の成長工程の固液分離処理によりニッケル粉を固相成分として分離した後の反応後液にアルカリを加えて加熱し、アンモニアガスを揮発させ回収するアンモニア回収工程を含むことを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0025】
本発明の第15の発明は、第14の発明におけるアンモニア回収工程で回収したアンモニアが、第5の発明の溶媒抽出工程及び錯化工程で硫酸ニッケルアンミン錯体溶液の生成に使用するアンモニア、並びに第2の発明の処理工程(1)の種晶生成工程で混合されるアルカリとしてアンモニアに循環使用されることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液から、水素ガスを用いてニッケル粉を生成する製造方法において、その製品を汚染しない種晶を用いることにより、高純度な、ニッケル粉を容易に得ることができ、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のニッケル粉の製造フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明では、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液からニッケル粉を得る製造方法において、湿式製錬プロセスの工程液に下記(1)〜(4)に示す工程を施すことによって、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液から、より不純物の少ない高純度ニッケル粉を製造することを特徴とするものである。
以下、図1に示す本発明の高純度ニッケル粉の製造フロー図を参照して、本発明の高純度ニッケル粉の製造方法を説明する。
【0029】
[浸出工程]
先ず、浸出工程は、出発原料となる、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉などから選ばれる一種、または複数の混合物から成る工業中間物などのニッケル含有物を、硫酸により溶解して、ニッケルを浸出させて浸出液(ニッケルを含む溶液)を生成する工程で、特開2005−350766号公報などに開示された公知の方法を用いて行われる。
【0030】
[溶媒抽出工程]
次に、この浸出液にpH調整を行い、溶媒抽出工程に供する。
この工程は、浸出工程で得られた後、pH調整された浸出液と有機相を接触させ、各相中の成分を交換することで、水相中のある成分の濃度を高め、他の異なる成分の濃度を低くするものである。
本発明では有機相に2−エチルヘキシルホスホン酸モノ2−エチルヘキシルエステルまたはジ−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸を用いて浸出液中の不純物元素、特にコバルトを選択的に抽出し、高純度の硫酸ニッケル溶液を得るものである。
【0031】
また、この工程時にpH調整のため用いられるアンモニア水には、後述するアンモニア回収工程で生成されるアンモニア水を使用することができる。
【0032】
[錯化工程]
この錯化工程は、溶媒抽出工程で得られた高純度の硫酸ニッケル溶液に、アンモニアガスまたはアンモニア水のアンモニアを添加、錯化処理し、ニッケルのアンミン錯体である硫酸ニッケルアンミン錯体を生成し、その硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を形成する工程である。
【0033】
このときのアンモニウム濃度は、溶液中のニッケル濃度に対しモル比で1.9以上になるようにアンモニアを添加する。添加するアンモニアのアンモニウム濃度が1.9未満ではニッケルがアンミン錯体を形成せず、水酸化ニッケルの沈殿が生成してしまう。
【0034】
また、硫酸アンモニウム濃度を調整するために、本工程において硫酸アンモニウムを添加することができる。このときの硫酸アンモニウム濃度は100〜500g/Lが好ましく、500g/L以上では溶解度を超えてしまい、結晶が析出してしまい、プロセスのメタルバランス上、100g/L未満を達成するのは困難である。
【0035】
さらに、この工程で用いるアンモニアガスまたはアンモニア水にも、後述するアンモニア回収工程で生成されるアンモニアガスまたはアンモニア水を使用することができる。
【0036】
[硫酸ニッケルアンミン錯体溶液からのニッケル粉製造工程]
図1の破線で囲まれた(1)〜(4)の処理工程で示される硫酸ニッケルアンミン錯体溶液からニッケル粉を製造する工程を以下に説明する。なお、図中の黒太矢印は、この工程における工程フローを示している。
【0037】
(1)種晶生成工程
上記溶媒抽出工程で得られた高純度の硫酸ニッケル溶液とヒドラジンを混合し、種晶とする微小ニッケル粉を生成する工程である。
このとき、さらにアルカリを混合しても良く、用いるアルカリとしてアンモニアを硫酸ニッケル溶液中のニッケル量に対し、モル比で2倍以上添加し、苛性ソーダを用いてpHを7〜12に調整すると良い。
【0038】
また、ヒドラジンの添加量としては、硫酸ニッケル中のニッケル量に対し、モル比で0.5〜2.5倍が好ましい。0.5倍未満ではニッケルが全量反応せず、2.5倍を超えても反応効率に影響を及ぼさず薬剤ロスが増加する。
【0039】
また、反応温度は25〜80℃が好ましい。25℃未満では反応時間が長時間になり工業的に適用するには現実的ではない。一方、80℃以上では反応槽の材質が限られるため設備費がかさんでくる。さらに、この際に界面活性剤を少量添加することにより生成するニッケル粉の粒径を細かくすることができる。
こうして生成した種晶となる平均粒径0.1〜5μmの微小ニッケル粉は、固液分離され、スラリー状のニッケル粉スラリーとして次工程に供給される。
【0040】
(2)種晶添加工程
上記錯化工程で得られた硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、処理工程(1)の種晶生成工程で得た平均粒径が0.1〜5μmのニッケル粉を種晶としてニッケル粉スラリーの形態で添加して種晶を含む混合スラリーを形成する。
このときに添加する種晶の重量は、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル重量に対し1〜100%が好ましい。1%未満では次工程の還元時の反応効率が著しく低下する。また100%以上では使用量が多く、種晶製造にコストが掛かり、経済的ではない。
【0041】
また、同時に分散剤を添加しても良い。この分散剤を添加することにより種晶が分散するため、次工程の還元工程の効率を上昇させることができる。
ここで使用する分散剤としては、スルホン酸塩を有するものであれば特に限定されないが、工業的に安価に入手できるものとしてリグニンスルホン酸塩が好ましい。
【0042】
(3)還元工程
処理工程(2)の種晶添加工程で得られた混合スラリーに水素ガスを吹き込み、溶液中のニッケルを種晶上に析出させる。このとき、反応温度は150〜200℃が好ましい。150℃未満では還元効率が低下し、200℃以上にしても反応への影響はなく熱エネルギー等のロスが増加する。
【0043】
また、反応時の圧力は1.0〜4.0MPaが好ましい。1.0MPa未満では反応効率が低下し、4.0MPaを超えても反応への影響はなく水素ガスのロスが増加する。
【0044】
処理工程(2)の種晶添加工程で得られた混合スラリーの液中には、不純物として主にマグネシウムイオン、ナトリウムイオン、硫酸イオン、アンモニウムイオンが存在するが、いずれも溶液中に残留するため、高純度のニッケル粉を生成することができる。
【0045】
(4)成長工程
処理工程(3)の還元工程で生成した還元スラリーを固液分離後、回収した高純度のニッケル粉に、前述の錯化工程で得られた硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を加え、(3)の方法により水素ガスを供給する。これにより高純度のニッケル粉上にニッケルが還元析出するため、粒子を成長させることができる。
【0046】
また、本成長工程を複数回繰り返して行なうことにより、より嵩密度が高く、より粒径が大きな高純度のニッケル粉を生成することができる。
また、得たニッケル粉に対して、以下のニッケル粉団鉱工程やブリケット焼成工程を経てより粗大で酸化し難く取り扱いしやすいブリケットの形状に仕上げても良い。
さらにアンモニア回収工程を設けても良い。
【0047】
[ニッケル粉団鉱工程]
本発明により製造される高純度のニッケル粉は、製品形態として、乾燥後に団鉱機等により成形加工を行ない塊状のニッケルブリケットを得る。
また、このブリケットへの成形性を向上させるために、場合によってはニッケル粉に水等の製品品質を汚染しない物質をバインダーとして添加する。
【0048】
[ブリケット焼結工程]
団鉱工程で作製したニッケルブリケットは、水素雰囲気中で焙焼、焼結を行ないブリケット焼結体を作製する。この処理では強度を高めると共に、微量残留するアンモニア、硫黄成分の除去を行なうもので、その焙焼・焼結温度は、500〜1200℃が好ましい。500℃未満では焼結が不十分となり、1200℃を超えても効率がほとんど変わらずエネルギーのロスが大きくなる。
【0049】
[硫安回収工程]
処理工程(3)の還元工程および処理工程(4)の成長工程において、ニッケル粉を固相として分離する固液分離処理により発生した反応後液中には硫酸アンモニウムおよびアンモニアが含まれる。
そこで、硫酸アンモニウムは、硫安回収工程を施すことで、反応後液を加熱濃縮して硫酸アンモニウムを晶析させ、硫安結晶として回収することができる。
【0050】
[アンモニア回収工程]
また、アンモニアは、反応後液にアルカリを添加しpHを10〜13に調整後、加熱することによりアンモニアガスを揮発させ回収することができる。
【0051】
ここで用いるアルカリは特に限定されるものではないが、苛性ソーダ、消石灰などが工業的に安価であり好適である。
また、回収したアンモニアガスは水と接触させることによりアンモニア水を生成することができ、得たアンモニア水は工程内に繰り返し使用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明を、より詳細に説明する。
【実施例1】
【0053】
(1)種晶生成工程
25%アンモニア水73mlに、水酸化ナトリウムを36gと60%ヒドラジン溶液53mlを添加し、合計の液量を269mlに調整した。
ウォーターバスを用いて、その液温が75℃になるように保持、撹拌しながら、硫酸ニッケル溶液(100g/L)273gをビーカー内の液に滴下して反応させ、30分間保持した。その後、固液分離を行ない、生成したニッケル粉を回収した。得られたニッケル粉の平均粒径は2μmであった。
【0054】
(2)種晶添加工程
ニッケル75gが含まれる硫酸ニッケル溶液と硫酸アンモニウム330gを含む溶液に、25%アンモニア水を191ml添加し、合計の液量が1000mlになるように調整した。この溶液に上記(1)で得られたニッケル粉を種晶として7.5gを添加して混合スラリーを作製した。
【0055】
(3)還元工程
(2)で作製した混合スラリーを、オートクレーブにて撹拌しながら185℃に昇温し、オートクレーブ内の圧力が3.5MPaになるように水素ガスを吹き込み、供給して還元処理であるニッケル粉生成処理を行った。
水素ガスの供給後、1時間が経過した後に水素ガスの供給を停止し、オートクレーブを冷却した。冷却後に得られた還元スラリーを濾過による固液分離処理し、高純度の小径ニッケル粉を回収した。このときの回収したニッケル粉は70gであった。
【0056】
(4)成長工程
次に、硫酸ニッケル336g、硫酸アンモニウム濃度330gを含む溶液に、25%アンモニア水を191ml添加し、合計の液量が1000mlになるように調整した。
この溶液に上記(3)で得られた高純度の小径ニッケル粉を全量添加してスラリーを作製した。
このスラリーをオートクレーブにて撹拌しながら185℃に昇温し、オートクレーブ内の圧力が3.5MPaになるように水素ガスを吹き込み、供給した。
水素ガスの供給後、1時間が経過した後に水素ガスの供給を停止し、オートクレーブを冷却した。冷却後に得られたスラリーを濾過による固液分離処理し、高純度の粒成長したニッケル粉を回収した。
【実施例2】
【0057】
表1に示す硫酸ニッケルアンミン錯体溶液1000mlに、種晶として平均粒径1μmのニッケル粉を75g添加した後、オートクレーブにて撹拌しながら185℃に昇温し、オートクレーブ内の圧力が3.5MPaになるように水素ガスを吹き込み、供給した。
【0058】
水素ガスの供給後、1時間が経過した後に水素ガスの供給を停止し、オートクレーブを冷却した。冷却後に得られたスラリーを濾過による固液分離処理を施し、回収したニッケル粉を純水で洗浄した後、ニッケル粉の不純物品位を分析した。結果を表1に示す。MgやNaはニッケル粉への混入はなく、高純度のNi粉を生成することができた。
【0059】
【表1】
【実施例3】
【0060】
実施例1の「処理工程(1)の種晶生成工程」にて作製した種晶22.5gとリグニンスルホン酸ナトリウム1.5g、硫酸ニッケル336g、硫酸アンモニウム濃度330gを含む溶液に、25%アンモニア水を191ml添加し、合計の液量が1000mlになるように調整した混合スラリーを作製した。
【0061】
次に、その混合スラリーをオートクレーブにて撹拌しながら185℃に昇温し、オートクレーブ内の圧力が3.5MPaになるように水素ガスを吹き込み、供給した。水素ガスの供給後、1時間が経過した後に水素ガスの供給を停止した。オートクレーブの冷却後、得られたスラリーを濾過による固液分離処理し、ニッケル粉を回収した。このとき、反応後液中のニッケル濃度は0.4g/lであり、99%以上の還元率が得られた。
【実施例4】
【0062】
硫酸ニッケル336g、硫酸アンモニウム濃度330gを含む溶液に25%アンモニア水を191ml添加し、合計の液量が1000mlになるように調整し、1μmに粒径を調整したニッケル粉を75g添加した混合スラリーを作製した。
オートクレーブにて撹拌しながら185℃に昇温し、オートクレーブ内の圧力が3.5MPaになるように水素ガスを吹き込み、供給して、還元工程であるニッケル粉成長処理を行った。
水素ガスの供給後、1時間が経過した後に水素ガスの供給を停止した。オートクレーブを冷却後、得られた還元スラリーを濾過による固液分離処理し、小径ニッケル粉を回収した。
【0063】
回収した小径ニッケル粉と硫酸ニッケル336g、硫酸アンモニウム濃度330gを含む溶液に、25%アンモニア水を191ml添加し、合計の液量が1000mlになるように調整した。再びオートクレーブにて撹拌しながら185℃に昇温し、オートクレーブ内の圧力が3.5MPaになるように水素ガスを吹き込み、供給して粒成長処理を施した後、濾過による固液分離処理を経て、粒成長したニッケル粉を回収した。
この操作を10回繰り返し、ニッケル粉をより成長させた。
【0064】
これにより得られたニッケル粉中の硫黄品位は0.04%であった。
このニッケル粉を、2%水素雰囲気中にて1000℃に加熱し60分間保持した。保持後に得られたニッケル粉中の硫黄品位は0.008%であり、焙焼により硫黄品位を低減させることができた。
【0065】
(比較例1)
種晶を添加せずに、純水45ml、硫酸ニッケル六水和物20g、硫酸アンモニウム15g、28%アンモニア水10mlを混合した溶液をオートクレーブに入れ、撹拌しながら水素ガスを3.5MPaまで供給し、185℃に昇温後、6時間保持した。冷却後、オートクレーブ内を確認すると、析出物は容器と撹拌羽根上にスケールとして付着しており、粉状のニッケルを生成することはできなかった。
【0066】
(比較例2)
リグニンスルホン酸ナトリウムを添加せずに、その他は実施例3の条件と同様にして還元工程を実施した。その結果、回収できたニッケル粉は33gであり、14%の回収率に留まった。
図1