【実施例】
【0184】
以下に実施例を具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0185】
数平均分子量及び重量平均分子量は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。SECのうち移動相が有機溶媒であるゲル浸透クロマトグラフィーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)という。GPCによる分子量の測定は、下記の(GPC−条件1)又は(GPC−条件2)で行った。
【0186】
(GPC−条件1)
測定する高分子化合物を、約0.05重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPC(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)に10μL注入した。GPCの移動相としてテトラヒドロフランを用い、2.0mL/分の流量で流した。カラムとして、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV−VIS検出器(島津製作所製、商品名:SPD−10Avp)を用いた。
【0187】
(GPC−条件2)
測定する高分子化合物を、約0.05重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPC(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)に30μL注入した。GPCの移動相としてテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流量で流した。カラムとして、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0188】
NMRの測定は、下記の(NMR測定条件1)又は(NMR測定条件2)の方法で行った。
【0189】
(NMR測定条件1)
5mg〜10mgの測定試料を約0.5mLの重クロロホルムに溶解させて、NMR装置(JEOL(日本電子)製、商品名 JME−EX270 FT−NMR system)を用いて測定した。
【0190】
(NMR測定条件2)
5mg〜30mgの測定試料を約0.5mLの重クロロホルムに溶解させて、NMR装置(バリアン(Varian,Inc.)製、商品名 MERCURY 300)を用いて測定した。
【0191】
赤外吸収スペクトル(IR)の測定は、島津製作所製、商品名FTIR−8300 spectrometerを用いて測定した。
【0192】
ESI−MSの測定は、Waters(ウォーターズ)製、装置名micromass ZQ spectrometerを用いて測定した。
【0193】
LC−MSの測定は、以下の方法で行った。測定試料を約2mg/mLの濃度になるようにクロロホルム又はテトラヒドロフランに溶解させて、LC−MS(アジレント・テクノロジー製、商品名:1100LCMSD)に1μL注入した。LC−MSの移動相には、イオン交換水、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合溶液を用い、必要に応じて酢酸を添加した。カラムは、L−column 2 ODS(3μm)(化学物質評価研究機構製、内径:2.1mm、長さ:100mm、粒径3μm)を用いた。
【0194】
TLC−MSの測定は、以下の方法で行った。測定試料をクロロホルム、トルエン又はテトラヒドロフランに溶解させて、得られた溶液を予め切断したTLCガラスプレート(メルク製、商品名:Silica gel 60 F
254)の表面に少量塗布した。これをTLC−MS(日本電子製、商品名:JMS−T100TD)にて、240℃〜350℃に加熱したヘリウムガスを用いて測定した。
【0195】
<合成例1>(低分子化合物M−1の合成:合成方法1)
下記のスキームにしたがって、低分子化合物M−1を合成した。
【0196】
【化52】
【0197】
事前に加熱乾燥させた3口フラスコに、マグネシウム(2.40g、98.8mmol)を入れ、フラスコ内の雰囲気をアルゴンガスで置換した後に、脱水THF(50mL)と2−ブロモメシチレン(15mL、100mmol)とを加えた。撹拌しながら2時間加熱還流した後、氷浴を用いて反応混合物を0℃まで冷却し、ボロントリフルオリド−エチルエーテルコンプレックス(6.3mL、50mol)を滴下した。反応混合物を撹拌しながら2時間加熱還流し、室温まで降温すると、ジメシチルフルオロボランを含む懸濁液が得られた(以下、“懸濁液A”という場合がある。)。
【0198】
事前に加熱乾燥させ、内部の雰囲気をアルゴンガスで置換したシュレンク管に、1,3−ジブロモベンゼン(0.400mL、3.37mmol)と、脱水THF(30mL)とを入れ、アセトン/ドライアイス浴を用いて、−78℃まで冷却した。濃度1.6Mのn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(2.06mL、3.30mmol)を滴下した。−78℃を保ちながら30分間撹拌した後、懸濁液A(10mL)を加えた。反応液を室温まで昇温させ、更に10時間室温で撹拌した後に、水とジエチルエーテルとを加え、有機層を抽出した。抽出した有機層を1Mの塩酸で洗浄し、更に食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで脱水させ、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をn−ヘキサンで再結晶することにより、無色の結晶として低分子化合物M−1を0.737g(収率59%)得た。低分子化合物M−1の合成を複数回行うことで、必要量の低分子化合物M−1を得た。
【0199】
融点:138.3℃−147.9℃
【0200】
IRν
max/cm
-1 2916(CH
3),1605(Ar),1433(Ar),1238(Ar),843(Ar).
【0201】
1H-NMR(CDCl
3,270MHz:(NMR測定条件1)) δ(ppm) 1.98(s,12H,CH
3,ortho),2.30(s,6H,CH
3,para),6.81(s,4H,mes-Ar-H),7.21(t,1H,J=7.8Hz,4-Ar-H),7.40(d,1H,J=7.3Hz,5-Ar-H),7.58(d,1H,J=9.4Hz,6-Ar-H),7.61(s,1H,2-Ar-H).
【0202】
<合成例2>(配位子BppyHの合成:合成方法1)
下記のスキームにしたがって、配位子BppyHを合成した。
【0203】
【化53】
【0204】
反応器に、合成例1で得られた低分子化合物M−1(1.42g、3.49mmol)と、2−(トリ−n−ブチルスタンニル)ピリジン(2.57g、6.96mmol)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.526g、0.449mmol)と、トルエン(35mL)とを入れ、撹拌しながら25時間加熱還流させた。室温まで冷却した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(Al
2O
3、展開溶媒 CHCl
3:n−ヘキサン=1:3(体積比))を用いて精製し、更にn−ヘキサンで再結晶することにより、無色の針状晶として配位子BppyHを0.488g(収率35%)得た。
【0205】
融点:164.5℃−166.7℃
【0206】
IRν
max/cm
-1 2912(CH
3),1606(Ar),1590(pyridine),1459(Ar),1430(pyridine),1206(pyridine),844(Ar),770(pyridine).
【0207】
1H-NMR(CDCl
3,270MHz:(NMR測定条件1)) δ(ppm) 2.02(s,12H,CH
3,ortho),2.31(s,6H,CH
3,para),6.82(s,4H,mes-Ar-H),7.20(ddd,1H,J=1.3,4.9,7.3Hz,5-Ar-H),7.47(t,1H,J=7.5Hz,4-Ar-H),7.56(td,1H,J=1.3,7.7Hz,4'-Ar-H),7.61(td,1H,J=1.0,8.1Hz,3-Ar-H),7.70(dt,1H,J=1.8,7.6Hz,5'-Ar-H),8.03(m,1H,2'-Ar-H),8.17(td,1H,J=2.0,7.6Hz,6'-Ar-H),8.66(ddd,1H,J=0.89,1.6,4.9Hz,6-Ar-H). Anal. Calcd. for C
29H
30BN: C,86.35;H,7.50;N,3.47. Found: C,86.27;H,7.72;N,3.49.
【0208】
MS (ESI-MS) m/z 403 (M
+).
【0209】
<合成例3>(二核錯体DM−1の合成)
下記のスキームにしたがって、二核錯体DM−1を合成した。
【0210】
【化54】
【0211】
反応器に、塩化イリジウム(III)n水和物(0.131g)と、配位子BppyH(0.533g、1.32mmol)と、2−エトキシエタノール(32mL)と、水(11mL)とを入れ、アルゴンガス雰囲気下、145℃で12時間攪拌した。その後、室温まで温度を下げ、黄色沈殿物を濾別し、多量の水で洗浄することにより、黄色粉末として二核錯体DM−1を0.310g得た。
【0212】
1H-NMR(CDCl
3,270MHz:(NMR測定条件1)) δ(ppm) 1.89(48H,s,CH
3,ortho),2.26(24H,s,CH
3,para),5.88(4H,d,J=7.9Hz,5-Ar-H),6.63(4H,dd,J=0.99,8.0Hz,4-Ar-H),6.73(16H,s,mes-Ar-H),7.00-7.20(4H,m,4'-Ar-H),7.66(4H,s,2'-Ar-H),7.69(4H,t,J=6.8Hz,5'-Ar-H),7.74(4H,d,J=9.5Hz,3-Ar-H),9.20(4H,dd,J=0.97,6.0Hz,6-Ar-H).
【0213】
MS(ESI-MS) m/z 998([M-Ir(Bppy)
2Cl
2]
+).
【0214】
<合成例4>(二核錯体DM−2の合成)
下記のスキームにしたがって、二核錯体DM−2を合成した。
【0215】
【化55】
【0216】
反応器に、塩化イリジウム(III)n水和物(65.5mg)と、2−フェニルピリジン(0.102g、0.657mmol)と、2−エトキシエタノール(16mL)と、水(5.5mL)とを入れ、アルゴン雰囲気下、145℃で12時間攪拌した。その後、室温まで温度を下げ、生成した黄色沈殿物を濾別し、多量の水で洗浄することにより、黄色粉末として二核錯体DM−2を得た。
【0217】
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz:(NMR測定条件1)) δ(ppm) 5.93 (4H, dd, J = 1.0, 7.9 Hz, 2'-Ar-H), 6.56 (4H, dt, J = 1.3, 7.4 Hz, 3'-Ar-H), 6.67-6.85 (8H, m, 4,4'-Ar-H), 7.48 (4H, dd, J = 1.5, 7.8 Hz, 5'-Ar-H), 7.73 (4H, dt, J = 1.5, 7.8 Hz, 5-Ar-H), 7.87 (4H, dd ,J = 0.70, 7.9 Hz, 3-Ar-H), 9.24 (4H, ddd, J = 0.63, 1.6, 7.4 Hz, 6-Ar-H)
【0218】
MS (ESI-MS) m/z 500 ([M-Ir(ppy)
2Cl
2]
+)
【0219】
<実施例1>(錯体Ir−1の合成)
下記のスキームにしたがって錯体Ir−1を合成した。
【0220】
【化56】
【0221】
反応器に、二核錯体DM−1(32.1mg、0.0155mmol)と、2−フェニルピリジン(14.6mg、0.0943mmol)と、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(11.7mg、0.0446mmol)と、2−エトキシエタノール(0.6mL)とを入れ、アルゴン雰囲気下、145℃で15時間攪拌した。反応混合物を室温まで降温した後、水を加え、生成した黄色沈殿物を濾取した。沈殿物をカラムクロマトグラフィー(Sephadex(登録商標) LH−20、展開溶媒 クロロホルム)により精製した後、2相拡散(クロロホルム/n−ヘキサン)することにより、黄色粉末として錯体Ir−1を得た。
【0222】
IRν
max/cm
-1 2921 (CH
3), 1688 (Ar), 1558 (Ar-py), 1476 (Ar), 1346 (py), 1215 (py), 851 (Ar), 760 (py)
【0223】
MS(ESI-MS) m/z 1153(M
+).
【0224】
<実施例2>(錯体Ir−2の合成)
下記のスキームにしたがって、錯体Ir−2を合成した。
【0225】
【化57】
【0226】
反応器に、二核錯体DM−2(21.1mg、0.0191mmol)と、配位子BppyH(36.6mg、0.0912mmol)と、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(24.4mg、0.0949mmol)と、2−エトキシエタノール(0.8mL)とを入れ、アルゴン雰囲気下、145℃で6時間攪拌した。反応混合物を室温まで戻した後、水3mLを加え、生成した黄色沈殿物を濾取した。沈殿物をカラムクロマトグラフィー(Sephadex(登録商標) LH−20、展開溶媒 クロロホルム)により精製した後、2相拡散(クロロホルム/n−ヘキサン)することにより、黄色粉末として錯体Ir−2を得た。
【0227】
IRν
max/cm
-1 2917 (CH
3), 1680 (Ar), 1587 (Ar-py), 1457 (Ar), 1414 (py), 1220 (py), 832 (Ar), 753 (py)
【0228】
MS(ESI-MS) m/z 904(M
+).
【0229】
<合成例5>(錯体Ir−0の合成)
下記のスキームにしたがって、錯体Ir−0(前記式(1−3)で表される金属錯体として説明した錯体に相当する。)を合成した。
【0230】
【化58】
【0231】
反応器に、二核錯体DM−1(26.5mg、0.0128mmol)と、配位子BppyH(22.0mg、0.0546mmol)と、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(7.0mg、0.0272mmol)と、2−エトキシエタノール(0.5mL)とを入れ、アルゴン雰囲気下、145℃で6時間攪拌した。反応混合物を室温まで戻した後、水を加え、生成した黄色沈殿物を濾取した。沈殿物をカラムクロマトグラフィー(Sephadex(登録商標) LH−20、展開溶媒 クロロホルム)により精製した後、2相拡散(クロロホルム/ジエチルエーテル)することにより、黄色粉末として錯体Ir−0を0.01g得た。
【0232】
1H-NMR(CDCl
3,270MHz:(NMR測定条件1)) δ(ppm) 2.00(36H,s,CH
3,ortho),2.30(18H,s,CH
3,para),6.77(12H,s,mes-Ar-H),6.84-6.94(9H,m,4,5,4'-Ar-H),7.47(3H,d,J=5.1Hz,3-Ar-H),7.56(3H,t,J=7.7Hz,5'-Ar-H),7.70-7.80(6H,m,6,2'-Ar-H).
【0233】
Anal. Calcd. for C
87H
87B
3N
3Ir(0.1CH
2Cl
2): C,74.31;H,6.24;N,2.98. Found: C,74.03;H,6.32;N,2.93.
【0234】
MS(ESI-MS) m/z 1401(M
+).
【0235】
<金属錯体の溶解性>
トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムと比較して、錯体Ir−1及び錯体Ir−2は、溶媒であるクロロホルム、トルエン、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びエタノールに対する溶解性が高かった。極性の低いn−ヘキサン及びジエチルエーテルに対する溶解性は特に高かった。
【0236】
<素子の発光効率>
前記金属錯体Ir−1及び金属錯体Ir−2を発光層の材料として、溶媒に溶解させた溶液を塗布成膜することにより形成した発光層を備える素子は、発光効率が高い。
【0237】
<合成例6>(低分子化合物M−2の合成)
下記のスキームにしたがって、低分子化合物M−2を合成した。
【0238】
【化59】
【0239】
容量300mLの四つ口フラスコに、1,4-ジヘキシル−2,5-ジブロモベンゼン(8.08g)と、ビス(ピナコレート)ジボロン(12.19g)と、酢酸カリウム(11.78g)をとり、フラスコ内の雰囲気をアルゴンガスで置換した。そこに、脱水1,4−ジオキサン(100mL)を仕込み、アルゴンガスで脱気した。〔1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン〕ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)
2Cl
2)(0.98g)を仕込み、次いで、フラスコ内をアルゴンガスで脱気し、6時間加熱し還流させた。そこに、トルエンを加え、イオン交換水で洗浄した。洗浄後の有機層に、無水硫酸ナトリウム及び活性炭を加え、セライトをプレコートした漏斗で濾過した。
【0240】
得られた濾液を濃縮し、こげ茶色の結晶を11.94g得た。この結晶をn−ヘキサンで再結晶し、メタノールで結晶を洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥して、低分子化合物M−2の白色針状結晶を4.23g得た(収率42%)。
【0241】
1H−NMR (300MHz、CDCl
3:(NMR測定条件2)): δ(ppm) 0.88(t、6H)、1.23−1.40(m、36H)、1.47−1.56(m、4H)、2.81(t、4H)、7.52(s、2H)
LC−MS(ESI、positive):m/z
+=573 [M+K]
+
【0242】
<合成例7>(低分子化合物M−3の合成)
下記のスキームにしたがって、低分子化合物M−3を合成した。
【0243】
【化60】
【0244】
反応器に、窒素雰囲気下、1,4−ジブロモベンゼン(27.1g)を溶解させた脱水ジエチルエーテル(217mL)の溶液を入れ、該反応器をドライアイス/メタノール混合浴を用いて冷却した。得られた懸濁液に2.77Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(37.2mL)をゆっくりと滴下した後、1時間攪拌し、リチウム試薬を調製した。
【0245】
反応器において、窒素雰囲気下、塩化シアヌル(10.0g)を溶解させた脱水ジエチルエーテル(68mL)の懸濁液をドライアイス/メタノール混合浴を用いて冷却し、前記リチウム試薬をゆっくり加えた後に室温まで昇温し、室温で反応させた。得られた生成物を濾過し、減圧乾燥した。得られた固体(16.5g)を精製して、針状結晶を13.2g得た。
【0246】
【化61】
【0247】
反応器において、窒素雰囲気下、マグネシウム(1.37g)に脱水テトラヒドロフラン(65mL)を加えた懸濁液に、4−ヘキシルブロモベンゼン(14.2g)を溶解させた脱水テトラヒドロフラン(15mL)の溶液を少量ずつ加え、加熱して、還流下で攪拌した。放冷後、反応液にマグネシウム(0.39g)を追加し、再び加熱して、還流下で反応させ、グリニャール試薬を調製した。
【0248】
反応器において、窒素雰囲気下、前記針状結晶(12.0g)を溶解させた脱水テトラヒドロフラン(100mL)の懸濁液に前記グリニャール試薬を撹拌しながら加え、加熱還流させた。放冷後、反応液を、希塩酸水溶液で洗浄した。有機層と水層とを分け、水層をジエチルエーテルで抽出した。得られた有機層を合わせて、再び水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濾過して、濃縮した。得られた白色固体をシリカゲルカラムで精製し、更に再結晶することによって、白色固体として化合物M−3を6.5g得た。
【0249】
1H−NMR (300MHz、CDCl
3:(NMR測定条件2)):δ(ppm) 0.90(t、J=6.2Hz、3H)、1.25−1.42(m、6H)、1.63−1.73(m、2H)、2.71(t、J=7.6Hz、2H)、7.34(d、J=7.9Hz、2H)、7.65(d、J=7.9Hz、4H)、8.53−8.58(m、6H)
【0250】
LC−MS(APCI、positive): m/z
+=566 [M+H]
+
【0251】
<合成例8>(高分子化合物P−1の合成)
反応器において、窒素雰囲気下、低分子化合物M−2(3.13g)と、低分子化合物M−3(0.70g)と、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(2.86g)と、酢酸パラジウム(II)(2.1mg)と、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(13.4mg)と、トルエン(80mL)とを混合し、撹拌しながら、100℃に加熱した。反応液に20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(21.5mL)を滴下して、5時間還流させた。反応液に、フェニルホウ酸(78mg)と、酢酸パラジウム(II)(2.1mg)と、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(13.3mg)と、トルエン(6mL)と、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(21.5mL)を加え、更に17.5時間還流させた。次いで、そこに、0.2Mジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液(70mL)を加え、85℃で2時間撹拌した。
反応液を、室温まで冷却し、水で3回、3重量%酢酸水溶液で3回、更に水で3回洗浄した。有機層をメタノールに滴下したところ沈殿が生じ、この沈殿を濾過した後、乾燥させて、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られた溶出液をメタノールに滴下し、得られた沈殿を濾取し、乾燥させたところ、高分子化合物P−1を3.43g得た。高分子化合物P−1のポリスチレン換算の数平均分子量は1.9×10
5であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は5.7×10
5であった(GPC−条件1)。
【0252】
高分子化合物P−1は、仕込み原料から求めた理論値では、下記式:
【0253】
【化62】
【0254】
で表される構造単位と、下記式:
【0255】
【化63】
【0256】
で表される構造単位と、下記式:
【0257】
【化64】
【0258】
で表される構造単位とが、50:40:10のモル比で含まれる共重合体である。
【0259】
<合成例9>(高分子化合物P−2の合成)
窒素雰囲気下、化合物M−2(2.81g)と、化合物M−3(0.62g)と、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(2.90g)と、酢酸パラジウム(II)(1.9mg)と、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(11.9mg)と、トルエン(85mL)とを混合し、撹拌しながら、100℃に加熱した。反応液に20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(19.1mL)を滴下し、5時間還流させた。反応液に、フェニルホウ酸(69mg)と、酢酸パラジウム(II)(1.9mg)と、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(11.9mg)と、トルエン(6mL)とを加え、更に15.5時間還流させた。水層を除いた後、0.2Mジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液(63mL)を加え、85℃で2時間撹拌した。反応液を、室温まで冷却し、水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、水で2回洗浄した。有機層をメタノールに滴下したところ沈殿が生じ、この沈殿を濾過した後、乾燥させ、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られた溶出液をメタノールに滴下し、得られた沈殿を濾取し、乾燥させたところ、高分子化合物P−2を3.52g得た。高分子化合物P−2のポリスチレン換算の数平均分子量は1.5×10
5であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は4.7×10
5であった(GPC−条件2)。
【0260】
高分子化合物P−2は、仕込み原料から求めた理論値では、下記式:
【0261】
【化65】
【0262】
で表される構造単位と、下記式:
【0263】
【化66】
【0264】
で表される構造単位と、下記式:
【0265】
【化67】
【0266】
で表される構造単位とが、50:40:10のモル比で含まれる共重合体である。
【0267】
<溶液調製例1:高分子溶液PVKの調製>
ポリ(9−ビニルカルバゾール)(Sigma−Aldrich社製、重量平均分子量 〜1,100,000、粉末状)(11mg)をクロロベンゼン(和光純薬社製、和光特級)(1.79g)に溶解させて、溶液を調製した(この溶液を以下、「高分子溶液PVK」と言う。)。
【0268】
<溶液調製例2:錯体溶液Ir−0の調製>
錯体Ir−0(4.8mg)をトルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))(7.25g)に分散させ、80℃で加熱撹拌し、錯体Ir−0を完全に溶解させて、溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体溶液Ir−0」と言う。)。
【0269】
<実施例3:錯体組成物溶液M0P1の調製>
トルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))(1.15g)に、高分子化合物P−1(0.048g)と錯体溶液Ir−0(3.80g)とを加え、80℃で加熱撹拌し完全に溶解させて、溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体組成物溶液M0P1」と言う。)。なお、錯体組成物溶液M0P1には、高分子化合物P−1と錯体Ir−0が、重量比95:5で含まれている。
【0270】
<実施例4:錯体組成物溶液M0P2の調製>
トルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))(1.05g)に、高分子化合物P−2(0.043g)と錯体溶液Ir−0(3.45g)とを加え、80℃で加熱撹拌し完全に溶解させて、溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体組成物溶液M0P2」と言う。)。なお、錯体組成物溶液M0P2には、高分子化合物P−2と錯体Ir−0が、重量比95:5で含まれている。
【0271】
<溶液調製例3:錯体溶液Ref−1の調製>
下記式で表されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム (Luminescence Technology Corp社製、昇華精製グレード)(1.8mg)をトルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード)、3.47g)に分散させ、80℃で加熱撹拌した。しかしながら、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムを完全に溶解させることはできなかった。
【0272】
【化68】
【0273】
<溶液調製例4:錯体溶液Ref−2の調製>
トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Luminescence Technology Corp社製、Sublimed Grade)(5.1mg)をクロロホルム(和光純薬工業社製、蛍光分析用純溶媒 試験研究用)(7.71g)に分散させ、60℃で加熱撹拌し、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムを完全に溶解させて、溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体溶液Ref−2」と言う。)。
【0274】
<比較例3:錯体組成物溶液R2P1の調製>
クロロホルム(和光純薬工業社製、蛍光分析用純溶媒 試験研究用)(14.35g)に、高分子化合物P−1(53.2mg)と錯体溶液Ref−2(4.25g)とを加え、60℃で加熱撹拌し完全に溶解させて、溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体組成物溶液R2P1」と言う。)。なお、錯体組成物溶液R2P1には、高分子化合物P−1とトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムが、重量比95:5で含まれている。
【0275】
<比較例4:錯体組成物溶液R2P2の調製>
クロロホルム(和光純薬工業社製、蛍光分析用純溶媒 試験研究用)(13.35g)に、高分子化合物P−2(43.2mg)と錯体溶液Ref−2(3.46g)とを加え、60℃で加熱撹拌し完全に溶解させて、溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体組成物溶液R2P2」と言う。)。なお、錯体組成物溶液R2P2には、高分子化合物P−2とトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムが、重量比95:5で含まれている。
【0276】
<実施例5:発光素子C01>
スパッタ法により45nmの厚さでITO膜を成膜したガラス基板上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plextronics社製)をのせ、スピンコート法により約65nmの厚さとなるように成膜し、ホットプレート上において170℃で、15分間乾燥させた。得られたAQ−1200膜の上に、高分子溶液PVKをのせ、スピンコート法により約20nmの厚さとなるように成膜し、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下、180℃で、60分間乾燥させた。次いで、高分子溶液PVKから得られた膜の上に、錯体組成物溶液M0P1をのせ、スピンコート法により約80nmの厚さとなるように発光層を成膜した。そして、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下、130℃で、10分間乾燥させた。1.0×10
−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層L01の膜の上にNaF層を約4nmの厚さとなるように蒸着し、次いで、NaF層の上にアルミニウム層を約72nmの厚さになるように蒸着した。NaF層及びアルミニウム層の蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子C01を作製した。
【0277】
得られた発光素子C01について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いて、電圧を印加して素子を発光させたところ、緑色発光のエレクトロルミネッセンスが観測された。輝度1000cd/m
2での発光効率は、42.9cd/Aであった。最大発光効率は、50.2cd/Aであった。
【0278】
<実施例6:発光素子C02>
実施例5において、錯体組成物溶液M0P1の代わりに錯体組成物溶液M0P2を用いた以外は、実施例5と同様にして、発光素子C02を作製した。
【0279】
得られた発光素子C02について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いて、電圧を印加して素子を発光させたところ、緑色発光のエレクトロルミネッセンスが観測された。輝度1000cd/m
2での発光効率は、40.2cd/Aであった。最大発光効率は、48.9cd/Aであった。
【0280】
<比較例5:発光素子CR21>
実施例5において、錯体組成物溶液M0P1の代わりに錯体組成物溶液R2P1を用いた以外は、実施例5と同様にして、発光素子CR21を作製した。
【0281】
得られた発光素子CR21について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いて、電圧を印加して素子を発光させたところ、緑色発光のエレクトロルミネッセンスが観測された。輝度1000cd/m
2での発光効率は、13.6cd/Aであった。最大発光効率は、18.8cd/Aであった。
【0282】
<比較例6:発光素子CR22>
実施例5において、錯体組成物溶液M0P1の代わりに錯体組成物溶液R2P2を用いた以外は、実施例5と同様にして、発光素子CR22を作製した。
【0283】
得られた発光素子CR22について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いて、電圧を印加して素子を発光させたところ、緑色発光のエレクトロルミネッセンスが観測された。輝度1000cd/m
2での発光効率は、20.3cd/Aであった。最大発光効率は、23.9cd/Aであった。
【0284】
<合成例10>(配位子BppyHの合成:合成方法2)
配位子BppyHを、合成例2のスキームとは異なる下記のスキームにしたがって合成した。
【0285】
【化69】
【0286】
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した反応器に、低分子化合物M−1(116g、286mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20g、17.3mmol)と、dryTHF(860mL)とを入れ、室温で撹拌した。そこへ、0.5Mに調製された2−ピリジル亜鉛ブロミドのTHF溶液(660mL)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、加熱し還流条件下で3時間撹拌した後、tert−ブチルメチルエーテル(1000mL)で反応液を希釈し、1Mの塩酸(1000mL)、次いで、1Mの炭酸水素ナトリウム水溶液(1000mL)で有機層を洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧溜去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒;CHCl
3:n−ヘキサン=1:3(体積比))にて精製し、さらにn−ヘキサンに分散させ撹拌ろ過することにより、無色の結晶として配位子BppyHを98.3g(収率81%)得た。
【0287】
1H-NMR(CDCl
3,300MHz:(NMR測定条件2)) δ(ppm) 2.02(s, 12H, CH
3, ortho), 2.31(s, 6H, CH
3, para), 6.82(s, 4H, mes-Ar-H), 7.18(ddd, 1H, J=1.2, 4.8, 7.3Hz, 5-Ar-H), 7.47(t,1H, J=7.5Hz, 4-Ar-H), 7.56(td, 1H, J=1.4, 7.5Hz, 4'-Ar-H), 7.60(td, 1H, J=1.0, 8.0Hz, 3-Ar-H), 7.68(dt, 1H, J=1.7, 7.6Hz, 5'-Ar-H), 8.04(brs, 1H, 2'-Ar-H), 8.17(td, 1H, J=1.7, 7.7Hz, 6'-Ar-H), 8.65(ddd, 1H, J=0.8, 1.7, 4.9Hz, 6-Ar-H).
【0288】
TLC−MS(DART、positive):m/z
+=403 [M+H]
+
【0289】
<実施例7>(錯体Ir−3の合成)
下記のスキームにしたがって錯体Ir−3を合成した。
【0290】
【化70】
【0291】
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した反応器に、二核錯体DM−3(3.65g、1.50mmol)と、配位子BppyH(3.63g、9.00mmol)と、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(770mg、3.00mmol)と、1,2−ジメトキシエタン(60mL)とを入れ、窒素雰囲気下、105℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温まで降温した後、水を加え、生成した黄色沈殿物を濾取した。濾取した沈殿物をメタノール、ヘキサンの順で洗浄した。得られた黄色沈殿物をクロロホルム100mLに分散させ、濾過し不溶成分を除去し、濾液より溶媒を減圧溜去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒;CHCl
3:n−ヘキサン=2:3(体積比))により精製した。最後にn−ヘキサンに分散させ撹拌ろ過することで、黄色粉末として錯体Ir−3を1.3g得た。
【0292】
1H-NMR(CDCl
3,300MHz:(NMR測定条件2)) δ(ppm) 1.37(brs, 36H, tBu), 2.05(s, 12H, CH
3, ortho), 2.31(s, 6H, CH
3, para), 6.77(s, 4H, mes-Ar-H), 6.87-7.05(m, 7H), 7.20-7.23(m, 2H), 7.45-7.83(m, 30H), 7.93-8.01(m, 4H).
【0293】
LC−MS(APCI、positive):m/z
+=1582[M+H]
+
【0294】
なお、二核錯体DM−3は、WO02/066552に記載の合成法に準じて合成した。すなわち、反応器における、窒素雰囲気下、2−ブロモピリジンと、1.2当量の3−ブロモフェニルホウ酸との鈴木カップリング(触媒:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、塩基:2M炭酸ナトリウム水溶液、溶媒:エタノール、トルエン)により、2−(3'−ブロモフェニル)ピリジンを得た。
【化71】
【0295】
次に、反応器における、窒素雰囲気下、トリブロモベンゼンと、2.2当量の4−tert−ブチルフェニルホウ酸との鈴木カップリング(触媒:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、塩基:2M炭酸ナトリウム水溶液、溶媒:エタノール、トルエン)により下記式:
【0296】
【化72】
【0297】
で表される臭素化化合物を得た。
【0298】
反応器において、窒素雰囲気下、この臭素化化合物を、脱水THFに溶解させた後、得られた溶液を−78℃に冷却し、小過剰のtert−ブチルリチウムを滴下した。冷却下、更に、B(OC
4H
9)
3を滴下し、室温にて反応させた。反応溶液を3M塩酸で後処理し、下記式:
【0299】
【化73】
【0300】
で表されるボロン酸化合物を得た。
【0301】
2−(3'−ブロモフェニル)ピリジンと、1.2当量の前記ホウ酸化合物との鈴木カップリング(触媒:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、塩基:2M炭酸ナトリウム水溶液、溶媒:エタノール、トルエン)により、配位子TPppyHを得た。
【0302】
【化74】
【0303】
反応器に、アルゴン雰囲気下、IrCl
3・3H
2Oと、2.2当量の配位子TPppyH、2−エトキシエタノール及びイオン交換水を仕込み、還流させた。析出した固体を吸引濾過した。得られた固体をエタノール、イオン交換水の順番で洗浄後、乾燥させ、黄色粉末として二核錯体DM−3を得た。
【0304】
【化75】
【0305】
<実施例8>(錯体Ir−4の合成)
下記のスキームにしたがって錯体Ir−3を合成した。
【0306】
【化76】
【0307】
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した反応器に、二核錯体DM−1(4.87g、2.4mmol)と、二核錯体DM−3の合成中間体として得られた配位子TPppyH(5.95g、12mmol)と、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(1.03g、4mmol)と、2−エトキシエタノール(80mL)とを入れ、窒素雰囲気下、137℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温まで降温した後、イオン交換水80mLを加え、生成した黄色沈殿物を濾取した。濾取した沈殿物をメタノール、ヘキサンの順で洗浄し、さらにヘキサンに分散させ撹拌ろ過して得られた沈殿物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒;CHCl
3:n−ヘキサン=1:4〜1:1(体積比))により繰り返し精製し、最後にn−ヘキサンに分散させ撹拌ろ過することで、黄色粉末として錯体Ir−4を510mg得た。
【0308】
LC−MS(APCI、positive):m/z
+=1489[M+H]
+
【0309】
<実施例9:錯体溶液Ir−3の調製>
トルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))(2.08g)に、錯体Ir−3(50mg)を加え、室温条件下にて撹拌し完全に溶解させて、溶液を調製した。この溶液をトルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード)で希釈し、1.1重量%の錯体Ir−3のトルエン溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体溶液Ir−3」と言う。)。
【0310】
<実施例10:錯体溶液Ir−4の調製>
トルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))(2.08g)に、錯体Ir−4(50mg)を加え、室温条件下にて撹拌し完全に溶解させて、溶液を調製した。この溶液をトルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード)で希釈し、1.1重量%の錯体Ir−4のトルエン溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体溶液Ir−4」と言う。)。
【0311】
<実施例11:錯体組成物溶液M3P1の調製>
トルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))に、1.1重量%の濃度となるように高分子化合物P−1を溶解させた溶液と、錯体溶液Ir−3とを重量比で95:5となるように混合して溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体組成物溶液M3P1」と言う。)。
【0312】
<実施例12:錯体組成物溶液M3P2の調製>
トルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))に、1.1重量%の濃度となるように高分子化合物P−2を溶解させた溶液と、錯体溶液Ir−3とを重量比で95:5となるように混合して溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体組成物溶液M3P2」と言う。)。
【0313】
<実施例13:錯体組成物溶液M4P1の調製>
トルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))に、1.1重量%の濃度となるように高分子化合物P−1を溶解させた溶液と、錯体溶液Ir−4とを重量比で95:5となるように混合して溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体組成物溶液M4P1」と言う。)。
【0314】
<実施例14:錯体組成物溶液M4P2の調製>
トルエン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))に、1.1重量%の濃度となるように高分子化合物P−2を溶解させた溶液と、錯体溶液Ir−4とを重量比で95:5となるように混合して溶液を調製した(この溶液を以下、「錯体組成物溶液M4P2」と言う。)。
【0315】
<実施例15:発光素子C31>
スパッタ法により45nmの厚さでITO膜を付けたガラス基板上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plextronics社製)をのせ、スピンコート法により約65nmの厚さとなるように成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させた。得られたAQ−1200膜の上に、高分子溶液PVKをのせ、スピンコート法により約20nmの厚さとなるように成膜し、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、180℃、60分間乾燥させた。次いで、高分子溶液PVKから得られた膜の上に、錯体組成物溶液M3P1をのせ、スピンコート法により約80nmの厚さとなるように発光層を成膜した。そして、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃、10分間乾燥させた。1.0×10
−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層L31の膜の上にNaFを約4nmの厚さで蒸着し、次いで、NaFの層の上にアルミニウムを約70nmの厚さになるように蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子C31を作製した。
【0316】
得られた発光素子C31について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いて、電圧を印加して素子を発光させたところ、緑色発光のエレクトロルミネッセンスが観測された。輝度1000cd/m
2での発光効率は、61.9cd/Aであった。最大発光効率は、70.1cd/Aであった。
【0317】
<実施例16:発光素子C32>
スパッタ法により45nmの厚さでITO膜を付けたガラス基板上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plextronics社製)をのせ、スピンコート法により約65nmの厚さとなるように成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させた。得られたAQ−1200膜の上に、高分子溶液PVKをのせ、スピンコート法により約20nmの厚さとなるように成膜し、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、180℃、60分間乾燥させた。次いで、高分子溶液PVKから得られた膜の上に、錯体組成物溶液M3P2をのせ、スピンコート法により約80nmの厚さとなるように発光層を成膜した。そして、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃、10分間乾燥させた。1.0×10
−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層L32の膜の上にNaFを約4nmの厚さで蒸着し、次いで、NaFの層の上にアルミニウムを約70nmの厚さになるように蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子C32を作製した。
【0318】
得られた発光素子C32について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いて、電圧を印加して素子を発光させたところ、緑色発光のエレクトロルミネッセンスが観測された。輝度1000cd/m
2での発光効率は、63.5cd/Aであった。最大発光効率は、71.1cd/Aであった。
【0319】
<実施例17:発光素子C41>
スパッタ法により45nmの厚さでITO膜を付けたガラス基板上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plextronics社製)をのせ、スピンコート法により約65nmの厚さとなるように成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させた。得られたAQ−1200膜の上に、高分子溶液PVKをのせ、スピンコート法により約20nmの厚さとなるように成膜し、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、180℃、60分間乾燥させた。次いで、高分子溶液PVKから得られた膜の上に、錯体組成物溶液M4P1をのせ、スピンコート法により約80nmの厚さとなるように発光層を成膜した。そして、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃、10分間乾燥させた。1.0×10
−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層L41の膜の上にNaFを約4nmの厚さで蒸着し、次いで、NaFの層の上にアルミニウムを約70nmの厚さになるように蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子C41を作製した。
【0320】
得られた発光素子C41について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いて、電圧を印加して素子を発光させたところ、緑色発光のエレクトロルミネッセンスが観測された。輝度が1000cd/m
2での発光効率は、61.7cd/Aであった。最大発光効率は、69.7cd/Aであった。
【0321】
<実施例18:発光素子C42>
スパッタ法により45nmの厚さでITO膜を付けたガラス基板上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plextronics社製)をのせ、スピンコート法により約65nmの厚さとなるように成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させた。得られたAQ−1200膜の上に、高分子溶液PVKをのせ、スピンコート法により約20nmの厚さとなるように成膜し、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、180℃、60分間乾燥させた。次いで、高分子溶液PVKから得られた膜の上に、錯体組成物溶液M4P2をのせ、スピンコート法により約80nmの厚さとなるように発光層を成膜した。そして、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃、10分間乾燥させた。1.0×10
−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層L42の膜の上にNaFを約4nmの厚さで蒸着し、次いで、NaFの層の上にアルミニウムを約70nmの厚さになるように蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子C42を作製した。
【0322】
得られた発光素子C42について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いて、電圧を印加して素子を発光させたところ、緑色発光のエレクトロルミネッセンスが観測された。輝度1000cd/m
2での発光効率は、58.5cd/Aであった。最大発光効率は、65.8cd/Aであった。
【0323】
作製された発光素子について、発光層の成分と輝度1000cd/m
2での発光効率及び最大発光効率とを一覧として下記表1に示す。表1中、「Ir(ppy)
3」は、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体を表す。
【0324】
【表1】
【0325】
表1から明らかな通り、本発明の金属錯体を用いて作成された発光素子は、従来の金属錯体(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体)を発光層の材料として用いた発光素子と比較して、何れも高い発光効率を示した。