(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硫黄元素含有有機化合物が、メルカプト基、ジスルフィド基又はスルフィド基を含有する硫黄元素含有有機化合物である請求項1に記載の複合ニッケルナノ粒子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ニッケルナノ粒子は、銀ナノ粒子等の貴金属ナノ粒子よりも安価で、貴金属ナノ粒子よりも化学的に安定であることから、触媒、磁性材料、積層セラミックコンデンサにおける電極等への利用が期待されている。従来、ニッケルナノ粒子は、固相反応または液相反応によって得られていた。
【0003】
固相反応としては、塩化ニッケルの化学気相蒸着やギ酸ニッケル塩の熱分解等が知られている。液相反応としては、塩化ニッケル等のニッケル塩を水素化ホウ素ナトリウム等の強力な還元剤で直接還元する方法、NaOH存在下ヒドラジン等の還元剤を添加して前駆体[Ni(H
2NNH
2)
2]SO
4・2H
2Oを形成した後に熱分解する方法、塩化ニッケル等のニッケル塩や有機配位子を含有するニッケル錯体を溶媒とともに圧力容器に入れて水熱合成する方法等が知られている。
【0004】
ニッケルナノ粒子を、上記した触媒、磁性材料、電極等の用途に好適に供するには、その粒径が例えば150nmを下回る程度に小さくかつ粒径が均一なものに制御できる必要がある。
【0005】
しかし、固相反応のうち化学気相蒸着による方法の場合、粒子がサブミクロンからミクロンオーダーに肥大化する。また、熱分解による方法の場合、反応温度が高いことから、粒子が凝集する。また、これらの固相反応による製造方法は、液相反応による製造方法に比べてニッケルナノ粒子の製造コストが高価になりがちである。一方、液相反応のうち強力な還元剤を使用する方法の場合、即座にニッケルが還元されることから、所望の粒径の粒子を得るために反応を制御することが困難である。また、前駆体を経由させる方法の場合、前駆体がゲル状をなし、その後の還元反応が不均一となること、水熱合成の場合、反応温度が高いことから、いずれも凝集を避けることができない。
【0006】
液相反応の技術に関して、ニッケル前駆物質、有機アミンおよび還元剤を混合した後、加熱することでニッケルナノ粒子を得る技術が提案されている(特許文献1)。この技術によれば、ニッケルナノ粒子の大きさ及び形状の制御が容易とされている。しかしながら、この製造方法では、テトラブチルアンモニウムホウ化水素等の強い還元剤を使用するため、還元反応の制御が難しく、粒子の大きさ等が十分に制御されたニッケルナノ粒子を得るうえで、必ずしも好適ではないと考えられる。
【0007】
ところで、積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体と内部電極を交互に積層して圧着した後、焼結して一体化したものとして得られる。このとき、例えば1,000℃を超えるセラミック誘電体の焼結温度に比べて内部電極材料であるニッケルナノ粒子の焼結温度は数百℃程度と低いため、両者の焼結時における膨張・収縮による体積変化等の挙動が異なり、層間剥離やクラックを生じるおそれがある。このような焼結時の問題に対して、上記特許文献1等の従来技術では、何ら有効な対策が講じられていない。
【0008】
金属ナノ粒子の粒径とその分布の適正化を図りながら、なおかつ金属ナノ粒子の焼結温度を高める技術として、例えば、銅粉末についてのものではあるが、金属銅微粒子または表面を酸化処理した金属銅微粒子のスラリーに金属塩水溶液を添加し、pH調整をすることで、金属酸化物等を表面に固着させた金属銅微粒子が提案されている(特許文献2)。しかしながら、これらの技術は、製造工程が煩雑であるため、安価なニッケルナノ粒子を得ることは難しいと考えられる。
【0009】
なお、本発明者らは、先に、ギ酸ニッケル水和物、脂肪酸アミン等のルイス塩基及び溶媒を含む溶液を加熱することによって製造される、一般式Ni(HCOO)
2(L
1)(L
2)(但し、L
1、L
2はルイス塩基配位子を示し、L
1とL
2とは互いに同一であっても異なっていてもよい)で表されるニッケル錯体を提案している(特許文献3)。
【0010】
また、金属ナノ粒子の表面修飾に関して、粒子の分散性を高める目的で、粒径1μm程度の大きさの銀粉などの金属粉体を有機チオール化合物により表面処理する技術が提案されている(特許文献4)。しかしながら、特許文献4の技術は、粒径が1μm程度の比較的大きな粒子を対象としており、有機チオール化合物による表面処理前における金属粉体の表面状態の考慮が何らなされていない。例えば対象が平均粒径150nm以下の金属粉体である場合には、有機チオール化合物による表面処理の際に金属粉体の二次凝集が生じやすく、有機チオール化合物による処理が十分になされないという問題が生じる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、詳細に説明する。まず、本実施の形態に係る複合ニッケルナノ粒子の製造方法について説明する。
【0024】
本実施の形態に係る複合ニッケルナノ粒子の製造方法は、次の工程A〜C;
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンの混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
B)該錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して、該錯化反応液中のニッケルイオンを還元して、1級アミンで被覆された金属ニッケルナノ粒子(以下、「ナノ粒子」と略称することがあるが、1級アミンと、硫黄元素又は硫黄元素含有有機化合物と、により被覆された複合ニッケルナノ粒子とは区別する。)のスラリーを得るナノ粒子スラリー生成工程、
C)1級アミンで被覆された金属ニッケルナノ粒子スラリーに、硫黄粉末又は前記被覆1級アミンを置換することが可能な硫黄元素含有有機化合物を添加することによって、前記金属ニッケルナノ粒子の表面が、1級アミンと、硫黄元素又は硫黄元素含有有機化合物と、により被覆された複合ニッケルナノ粒子を得る複合ニッケルナノ粒子生成工程、
を備える。
【0025】
[工程A;錯化反応液生成工程]
(カルボン酸ニッケル)
カルボン酸ニッケル(カルボン酸のニッケル塩)は、カルボン酸の種類を限定するものではなく、例えば、カルボキシル基が1つのモノカルボン酸であってもよく、また、カルボキシル基が2つ以上のカルボン酸であってもよい。また、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。このようなカルボン酸ニッケルとして、非環式モノカルボン酸ニッケルを好適に用いることができ、非環式モノカルボン酸ニッケルのなかでも、酢酸ニッケルあるいは酢酸ニッケルよりも直鎖の長いプロピオン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル等を用いることがより好ましい。これらの非環式モノカルボン酸ニッケルを用いることによって、例えば、得られるナノ粒子は、その形状のばらつきが抑制され、均一な形状として形成されやすくなる。カルボン酸ニッケルは、無水物であってもよく、また水和物であってもよい。
【0026】
なお、カルボン酸ニッケルに代えて、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等の無機塩を用いることも考えられる。しかし、これらの無機塩の場合、解離(分解)が高温であるため、解離後のニッケルイオン(又はニッケル錯体)を還元する過程で更なる高い温度での加熱が必要となるため好ましくない。また、Ni(acac)
2(β-ジケトナト錯体)、ステアリン酸ニッケル等の有機配位子により構成されるニッケル塩を用いることも考えられるが、これらのニッケル塩を用いると、原料コストが高くなり好ましくない。
【0027】
(1級アミン)
1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)に対する還元能を効果的に発揮する。一方、2級アミンは立体障害が大きいため、ニッケル錯体の良好な形成を阻害するおそれがあり、3級アミンはニッケルイオンの還元能を有しないため、いずれも使用できない。1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成できるものであれば、特に限定するものではなく、常温で固体又は液体のものが使用できる。ここで、常温とは、20℃±15℃をいう。常温で液体の1級アミンは、ニッケル錯体を形成する際の有機溶媒としても機能する。なお、常温で固体の1級アミンであっても、100℃以上の加熱によって液体であるか、又は有機溶媒を用いて溶解するものであれば、特に問題はない。
【0028】
1級アミンは、芳香族1級アミンであってもよいが、反応液におけるニッケル錯体形成の容易性の観点からは脂肪族1級アミンが好適である。脂肪族1級アミンは、例えばその炭素鎖の長さを調整することによって生成するナノ粒子の粒径を制御することができ、特に平均粒径が50nm〜100nmの範囲内にあるナノ粒子を製造する場合において有利である。ナノ粒子の粒径を制御する観点から、脂肪族1級アミンは、その炭素数が6〜20程度のものから選択して用いることが好適である。炭素数が多いほど得られるナノ粒子の粒径が小さくなる。このようなアミンとして、例えばオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等を挙げることができる。例えばオレイルアミンは、ナノ粒子生成過程に於ける温度条件下において液体状態として存在するため均一溶液で反応を効率的に進行できる。
【0029】
1級アミンは、ナノ粒子の生成時に表面修飾剤として機能するため、1級アミンの除去後においても二次凝集を抑制できる。また、1級アミンは、還元反応後に生成したナノ粒子の固体成分と溶剤または未反応の1級アミン等を分離する洗浄工程における処理操作の容易性の観点から、室温で液体のものが好ましい。更に、1級アミンは、ニッケル錯体を還元して金属ニッケルナノ粒子を得るときの反応制御の容易性の観点からは還元温度より沸点が高いものが好ましい。
すなわち、脂肪族1級アミンは、沸点が180℃以上のものが好ましく、200℃以上のものがより好ましく、また、炭素数は9以上のものが好ましい。ここで、例えば炭素数が9である脂肪族アミンのC
9H
21N(ノニルアミン)の沸点は201℃である。1級アミンの量は、ニッケル1molに対して2mol以上用いることが好ましく、2.2mol以上用いることがより好ましく、4mol以上用いることが望ましい。1級アミンの量が2mol未満では、得られるニッケルナノ粒子の粒子径の制御が困難となり、粒子径がばらつきやすくなる。また、1級アミンの量の上限は特にはないが、例えば生産性の観点からは20mol以下とすることが好ましい。
【0030】
(有機溶媒)
錯化反応液生成工程では、均一溶液での反応をより効率的に進行させるために、1級アミンとは別の有機溶媒を新たに添加してもよい。有機溶媒を用いる場合、有機溶媒をカルボン酸ニッケル及び1級アミンと同時に混合してもよいが、カルボン酸ニッケル及び1級アミンを先ず混合し、錯形成した後に有機溶媒を加えると、1級アミンが効率的にニッケル原子に配位するので、より好ましい。使用できる有機溶媒としては、1級アミンとニッケルイオンとの錯形成を阻害しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば炭素数4〜30のエーテル系有機溶媒、炭素数7〜30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数8〜18のアルコール系有機溶媒等を使用することができる。また、マイクロ波照射による加熱条件下でも使用を可能とする観点から、使用する有機溶媒は、沸点が170℃以上のものを選択することが好ましく、より好ましくは200〜300℃の範囲内にあるものを選択することがよい。このような有機溶媒の具体例としては、例えばテトラエチレングリコール、n−オクチルエーテル等が挙げられる。
【0031】
2価のニッケルイオンは配位子置換活性種として知られており、形成する錯体の配位子は温度、濃度によって容易に配位子交換により錯形成が変化する可能性がある。例えば錯化反応液生成工程において、用いるアミンの炭素鎖長等の立体障害を考慮すると、例えば、
図1に示すようなカルボン酸イオン(R
1COO、R
2COO)が二座配位(a)または単座配位(b)いずれかで配位する可能性があり、さらにアミンの濃度が大過剰の場合は外圏にカルボン酸イオンが存在する(c)の少なくとも3種の可能性がある。目的とする反応温度(還元温度)に於いて均一溶液とするには少なくともA、B、C、D、E、Fの配位子のうち少なくとも一箇所は1級アミンが配位している必要がある。その状態をとるには、1級アミンが過剰に反応溶液内に存在している必要があり少なくともニッケルイオン1molに対し2mol以上存在していることが好ましく、2.2mol以上存在していることがより好ましく、4mol以上存在していることが望ましい。
【0032】
この錯形成反応は室温に於いても進行することができるが、十分且つ、より効率の良い錯形成反応を行うために、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して反応を行う。この加熱は、カルボン酸ニッケルとして、例えば酢酸ニッケル4水和物のようなカルボン酸ニッケルの水和物を用いた場合に特に有利である。加熱温度は、好ましくは100℃を超える温度とし、より好ましくは105℃以上の温度とすることができる。加熱温度を100℃超とした場合は、カルボン酸ニッケルに配位した配位水と1級アミンとの配位子置換反応が効率よく行われ、この錯体配位子としての水分子を解離させることができ、さらにその水を系外に出すことができるので効率よく錯体を形成させることができる。また、カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応における熱処理は、後に続くニッケル錯体(又はニッケルイオン)のマイクロ波照射による加熱還元の過程と確実に分離し、前記の錯形成反応を完結させるという観点から、上記上限の165℃以下とし、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下とすることがよい。
【0033】
加熱時間は、加熱温度や、各原料の含有量に応じて適宜決定することができるが、錯形成反応を完結させるという観点から、10分以上とすることが好ましい。加熱時間の上限は特にないが、長時間熱処理することはエネルギー消費及び工程時間を節約する観点から無駄である。なお、この加熱の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよい。
【0034】
カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応は、カルボン酸ニッケルと1級アミンとを有機溶媒中で混合して得られる溶液を加熱したときに、溶液の色の変化によって確認することができる。また、この錯形成反応は、例えば紫外・可視吸収スペクトル測定装置を用いて、300nm〜750nmの波長領域において観測される吸収スペクトルの吸収極大の波長を測定し、原料の極大吸収波長(例えば酢酸ニッケル四水和物ではその極大吸収波長は710nmである。)に対する反応液のシフトを観測することによって確認することができる。カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成が行われた後、得られる反応液を、次に説明するように、マイクロ波照射によって加熱することにより、ニッケル錯体のニッケルイオンが還元され、ニッケルイオンに配位しているカルボン酸イオンが同時に分解し、最終的に酸化数が0価のニッケルを含有する金属ニッケルナノ粒子が生成する。一般にカルボン酸ニッケルは水を溶媒とする以外の条件では難溶性であり、マイクロ波照射による加熱還元反応の前段階として、カルボン酸ニッケルを含む溶液は均一反応溶液とする必要がある。これに対して、本実施の形態で使用される1級アミンは、使用温度条件で液体であり、かつそれがニッケルイオンに配位することで液化し、均一反応溶液を形成すると考えられる。
【0035】
[工程B;ナノ粒子スラリー生成工程]
本工程では、カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応によって得られた錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱し、錯化反応液中のニッケルイオンを還元して1級アミンで被覆された金属ニッケルナノ粒子スラリーを得る。マイクロ波照射によって加熱する温度は、得られるナノ粒子の形状のばらつきを抑制するという観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上とすることがよい。加熱温度の上限は特にないが、処理を能率的に行う観点からは例えば270℃以下とすることが好適である。なお、マイクロ波の使用波長は、特に限定するものではなく、例えば2.45GHzである。
【0036】
本工程では、マイクロ波が反応液内に浸透するため、均一加熱が行われ、かつ、エネルギーを媒体に直接与えることができるため、急速加熱を行うことができる。これにより、反応液全体を所望の温度に均一にすることができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)の還元、核生成、核成長各々の過程を溶液全体において同時に生じさせ、結果として粒径分布の狭い単分散な粒子を短時間で容易に製造することができる。
【0037】
均一な粒径を有するナノ粒子を生成させるには、錯化反応液生成工程(ニッケル錯体の生成が行われる工程)でニッケル錯体を均一にかつ十分に生成させることと、ナノ粒子スラリー生成工程(マイクロ波照射によって加熱する工程)で、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)の還元により生成するニッケル(0価)の核の同時発生・成長を行う必要がある。すなわち、錯化反応液生成工程の加熱温度を上記の特定の範囲内で調整し、ナノ粒子スラリー生成工程におけるマイクロ波による加熱温度よりも確実に低くしておくことで、粒径・形状の整った粒子が生成し易い。例えば、錯化反応液生成工程で加熱温度が高すぎるとニッケル錯体の生成とニッケル(0価)への還元反応が同時に進行し異種の金属種が発生することで、ナノ粒子スラリー生成工程での粒子形状の整った粒子の生成が困難となるおそれがある。また、ナノ粒子スラリー生成工程の加熱温度が低すぎるとニッケル(0価)への還元反応速度が遅くなり核の発生が少なくなるため粒子が大きくなるだけでなく、ナノ粒子の収率の点からも好ましくはない。
【0038】
マイクロ波照射によって加熱して得られる金属ニッケルナノ粒子スラリーを、例えば、静置分離し、上澄み液を取り除いた後、適当な溶媒を用いて洗浄し、乾燥することで、金属ニッケルナノ粒子が得られる。このようにして得られる金属ニッケルナノ粒子の粒径は、例えば150nm以下が好ましく、10〜120nmの範囲内がより好ましい。
【0039】
ナノ粒子スラリー生成工程においては、必要に応じ、前述した有機溶媒を加えてもよい。なお、前記したように、錯形成反応に使用する1級アミンを有機溶媒としてそのまま用いることは、本発明の好適な実施の形態である。
【0040】
[工程C;複合ニッケルナノ粒子生成工程]
錯化反応液にマイクロ波を照射してニッケルイオンを加熱還元させることによって得られた金属ニッケルナノ粒子スラリーは、錯形成反応に使用された1級アミンによって被覆されている。本工程では、この金属ニッケルナノ粒子スラリーに、硫黄粉末、又は金属ニッケルナノ粒子を被覆している1級アミンを置換することが可能な硫黄元素含有有機化合物(以下、「硫黄含有化合物」ともいう。)を添加することによって、金属ニッケルナノ粒子の表面が、1級アミンと、硫黄元素又は硫黄含有化合物と、により被覆された複合ニッケルナノ粒子を得る。硫黄粉末又は硫黄含有化合物は、錯化反応液のマイクロ波照射による還元反応に続く、金属ニッケルナノ粒子のスラリーの状態で添加してもよい。あるいは、硫黄粉末又は硫黄含有化合物は、還元反応によって得られる金属ニッケルナノ粒子のスラリーから、一旦、金属ニッケルナノ粒子を単離した後に、金属ニッケルナノ粒子を液中に分散させてスラリーの状態としてから、添加してもよい。工程の簡略化の観点から、硫黄粉末又は硫黄含有化合物は、錯化反応液のマイクロ波照射による還元反応に続く、金属ニッケルナノ粒子のスラリーの状態で添加することが好ましい。金属ニッケルナノ粒子の表面に硫黄元素(硫黄含有化合物の状態も含む)を存在させることによって、金属ニッケルナノ粒子の表面活性を低下させ、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極の材料として用いる場合の耐焼結性を向上させることができる。
【0041】
金属ニッケルナノ粒子の表面に硫黄元素を存在させるため、金属ニッケルナノ粒子のスラリーの状態で硫黄粉末又は硫黄含有化合物を添加する。この場合、アミン化合物との配位子置換が可能な硫黄含有化合物を用いることが好ましい。
【0042】
硫黄粉末は、単斜晶系や斜方晶系などの結晶質の粉末や不定形の粉末など、特に制限なく使用でき、またその粒径も特に制限なく使用できるが、金属ニッケルナノ粒子との相互的な分散性を考慮し、200メッシュ以下のものを用いることが好ましい。別の観点から、硫黄粉末は、例えば1〜3μmの範囲内の粒径のものを用いることが好ましい。また、硫黄粉末は1級アミン等の有機溶媒に完全に溶解してから、金属ニッケルナノ粒子スラリーに添加することが望ましい。硫黄粉末を溶解する際に使用する有機溶媒は、錯化反応液を得る際に使用した1級アミンや、前述した有機溶媒を適用することができる。
【0043】
硫黄含有化合物は、金属ニッケルナノ粒子を被覆した1級アミンとの置換反応を可能とする。すなわち、硫黄含有化合物は、金属ニッケルナノ粒子の表面に化学結合により固定化された1級アミンとの置換反応(配位子交換反応)を可能とする官能基を有する化合物である。このような官能基としては、例えば−SH、−NH
2、−NH
3X(但し、Xはハロゲン原子)、−COOH、−Si(OCH
3)
3、−Si(OC
2H
5)
3、−SiCl
3、−SCOCH
3等の1価の基、−S−、−S
2−、−S
4−等の2価の基が挙げられる。これらのなかでもメルカプト基、ジスルフィド基又はスルフィド基を含有するものが好ましく、より好ましくはメルカプト基又はジスルフィド基がよい。これらの官能基は金属ニッケルナノ粒子の表面を部分的にNi−Sの化学結合で被覆することができるので、焼結時の急激な金属ニッケルナノ粒子の表面酸化を抑え、低温収縮性を抑制することができるので有利である。
【0044】
メルカプト基を含有する硫黄含有化合物は、1級アミンとの置換反応を制御しやすいという観点から、炭化水素基を有する脂肪族チオール化合物が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18の範囲内にある脂肪族チオール化合物がよい。また、金属ニッケルナノ粒子の表面に固定化された1級アミンとの置換反応により、金属ニッケルナノ粒子の表面に存在する有機物(特に炭素元素)の量を制御することも可能となる。例えば、金属ニッケルナノ粒子の表面修飾に係る1級アミンの炭素数よりも少ない硫黄含有化合物を使用することによって、金属ニッケルナノ粒子の表面に存在する炭素元素を低減させることができる。このようなことから、最も好ましい実施の形態は、硫黄含有化合物が、炭素数1〜18の範囲内にある炭化水素基を有する脂肪族チオール化合物であり、1級アミンが、炭化水素基を有する脂肪族1級アミンであること、及び脂肪族チオール化合物の炭化水素基の炭素数が、脂肪族1級アミンの炭化水素基の炭素数以下、好ましくは脂肪族1級アミンの炭化水素基の炭素数未満であることがよい。
【0045】
ジスルフィド基を含有する硫黄含有化合物は、1級アミンとの置換反応を制御しやすいという観点から、炭化水素基を有する脂肪族ジスルフィド化合物が好ましく、より好ましくは炭素数2〜40の範囲内にある脂肪族ジスルフィド化合物がよい。このような脂肪族ジスルフィド化合物は、一般式(1)で表される。ここで、一般式(1)中のR
1、R
2は独立に炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基から選ばれる1価の置換基である。
【0047】
ジスルフィド化合物は、例えば加熱等によるS−S結合の開裂によって1級アミンとの置換反応を容易にするものと考えられる。また、金属ニッケルナノ粒子の表面に固定化された1級アミンとの置換反応による炭素元素量の制御の観点から、最も好ましい実施の形態は、一般式(1)中のR
1、R
2が独立に炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基から選ばれる1価の置換基であり、1級アミンが、炭化水素基を有する脂肪族1級アミンであること、並びにR
1及びR
2の合計の炭素数が、脂肪族1級アミンの炭化水素基の炭素数以下、好ましくは脂肪族1級アミンの炭化水素基の炭素数未満であることがよい。
【0048】
スルフィド基を含有する硫黄含有化合物は、1級アミンとの置換反応を制御しやすいという観点から、炭化水素基を有する脂肪族メチルスルフィド化合物が好ましく、より好ましくは炭素数2〜18の範囲内にある脂肪族メチルスルフィド化合物がよい。このような脂肪族メチルスルフィド化合物は、一般式(2)で表される。ここで、一般式(2)中のR
3は炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基から選ばれる1価の置換基である。
【0050】
また、金属ニッケルナノ粒子の表面に固定化された1級アミンとの置換反応による炭素元素量の制御の観点から、最も好ましい脂肪族メチルスルフィド化合物として、一般式(2)中のR
3が炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基から選ばれる1価の置換基であり、1級アミンが、炭化水素基を有する脂肪族1級アミンであること、並びにR
3の炭素数が、脂肪族1級アミンの炭化水素基の炭素数以下、好ましくは脂肪族1級アミンの炭化水素基の炭素数未満であることがよい。
【0051】
硫黄含有化合物の具体例としては、1価のチオール化合物として、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ブチルチオール、ヘプチルチオール、ヘキシルチオール、オクチルチオール、ノニルチオール、デシルチオール(デカンチオール)、ウンデシルチオール、ドデシルチオール(ドデカンチオール)、テトラデシルチオール(テトラデカンチオール)、ヘキサデカンチオール、オクタデシルチオール、tert−ドデシルメルカプタン、シクロヘキシルチオール、ベンジルチオール、エチルフェニルチオール、2−メルカプトメチル−1,3−ジチオラン、2−メルカプトメチル−1,4−ジチアン、1−メルカプト−2,3−エピチオプロパン、1−メルカプトメチルチオ−2,3−エピチオプロパン、1−メルカプトエチルチオ−2,3−エピチオプロパン、3−メルカプトチエタン、2−メルカプトチエタン、3−メルカプトメチルチオチエタン、2−メルカプトメチルチオチエタン、3−メルカプトエチルチオチエタン、2−メルカプトエチルチオチエタン等の脂肪族チオール化合物、チオフェノール、メルカプトトルエン等の芳香族チオール化合物、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等のメルカプト基以外にヒドロキシ基を含有する化合物が挙げられる。
【0052】
また、多価チオール(ポリチオール)化合物としては、1,1−メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1,1,1−テトラキス(メルカプトメチル)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール化合物、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、およびこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール化合物、ドデシルメチルスルフィド、n−デシルスルフィドなどの脂肪族スルフィド、デカンジスルフィドなどの脂肪族ジスルフィド、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(1,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール化合物、ならびにこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子とエステル結合を含有する脂肪族ポリチオール化合物、3,4−チオフェンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、3,4−ジメルカプト−2−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン等のメルカプト基以外にヒドロキシ基を含有する化合物、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロヘキサン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3−チアペンタン、1,1,6,6−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3,4−ジチアヘキサン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、2−(4,5−ジメルカプト−2−チアペンチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,5−ビス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−プロパンジチオール、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、3,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メルカプトメチルチオ−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、1,1,9,9−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−5−(3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−1−チアプロピル)3,7−ジチアノナン、トリス(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、トリス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)メタン、テトラキス(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、テトラキス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)メタン、3,5,9,11−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,13−ジメルカプト−2,6,8,12−テトラチアトリデカン、3,5,9,11,15,17−ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)−1,19−ジメルカプト−2,6,8,12,14,18−ヘキサチアノナデカン、9−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−3,5,13,15−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,17−ジメルカプト−2,6,8,10,12,16−ヘキサチアヘプタデカン、3,4,8,9−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,11−ジメルカプト−2,5,7,10−テトラチアウンデカン、3,4,8,9,13,14−ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)−1,16−ジメルカプト−2,5,7,10,12,15−ヘキサチアヘキサデカン、8−{ビス(メルカプトメチルチオ)メチル}−3,4,12,13−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,15−ジメルカプト−2,5,7,9,11,14−ヘキサチアペンタデカン、4,6−ビス{3,5−ビス(メルカプトメチルチオ)−7−メルカプト−2,6−ジチアヘプチルチオ}−1,3−ジチアン、4−{3,5−ビス(メルカプトメチルチオ)−7−メルカプト−2,6−ジチアヘプチルチオ}−6−メルカプトメチルチオ−1,3−
ジチアン、1,1−ビス{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1−{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−3−{2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル}−7,9−ビス(メルカプトメチルチオ)−2,4,6,10−テトラチアウンデカン、1−{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−7,9−ビス(メルカプトメチルチオ)−2,4,6,10−テトラチアウンデカン、1,5−ビス{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−2,4−ジチアペンタン、4,6−ビス[3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−5−メルカプト−2,4−ジチアペンチルチオ]−1,3−ジチアン、4,6−ビス{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−1,3−ジチアン、4−{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−6−{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−1,3−ジチアン、3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−7,9−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,11−ジメルカプト−2,4,6,10−テトラチアウンデカン、9−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−3,5,13,15−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,17−ジメルカプト−2,6,8,10,12,16−ヘキサチアヘプタデカン、3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−7,9,13,15−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,17−ジメルカプト−2,4,6,10,12,16−ヘキサチアヘプタデカン、3,7−ビス{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−1,9−ジメルカプト−2,4,6,8−テトラチアノナン、4−{3,4,8,9−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−11−メルカプト−2,5,7,10−テトラチアウンデシル}−5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラン、4,5−ビス{3,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−6−メルカプト−2,5−ジチアヘキシルチオ}−1,3−ジチオラン、4−{3,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−6−メルカプト−2,5−ジチアヘキシルチオ}−5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラン、4−{3−ビス(メルカプトメチルチオ)メチル−5,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−8−メルカプト−2,4,7−トリチアオクチル}−5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラン、2−[ビス{3,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−6−メルカプト−2,5−ジチアヘキシルチオ}メチル]−1,3−ジチエタン、2−{3,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−6−メルカプト−2,5−ジチアヘキシルチオ}メルカプトメチルチオメチル−1,3−ジチエタン、2−{3,4,8,9−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−11−メルカプト−2,5,7,10−テトラチアウンデシルチオ}メルカプトメチルチオメチル−1,3−ジチエタン、2−{3−ビス(メルカプトメチルチオ)メチル−5,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−8−メルカプト−2,4,7−トリチアオクチル}メルカプトメチルチオメチル−1,3−ジチエタン、4,5−ビス[1−{2−(1,3−ジチエタニル)}−3−メルカプト−2−チアプロピルチオ]−1,3−ジチオラン、4−[1−{2−(1,3−ジチエタニル)}−3−メルカプト−2−チアプロピルチオ]−5−{1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−4−メルカプト−3−チアブチルチオ}−1,3−ジチオラン、2−[ビス{4−(5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラニル)チオ}]メチル−1、3−ジチエタン、4−{4−(5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラニル)チオ}−5−[1−{2−(1,3−ジチエタニル)}−3−メルカプト−2−チアプロピルチオ]−1,3−ジチオラン、さらにこれらのオリゴマー等のジチオアセタールもしくはジチオケタール骨格を有する化合物、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−2,4−ジチアペンタン、ビス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアブチル](メルカプトメチルチオ)メタン、トリス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアブチル]メタン、2,4,6−トリス(メルカプトメチルチオ)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、2,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロパン、ビス(メルカプトメチル)メチルチオ−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、トリス[(4−メルカプトメチル−2,5−ジチアシクロヘキシル−1−イル)メチルチオ]メタン、2,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、2−メルカプトエチルチオ−4−メルカプトメチル−1,3−ジチアシクロペンタン、2−(2,3−ジメルカプトプロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、4−メルカプトメチル−2−(2,3−ジメルカプトプロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、4−メルカプトメチル−2−(1,3−ジメルカプト−2−プロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、トリス[2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1−チアエチル]メタン、トリス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]メタン、トリス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−3−チアブチル]メタン、2,4,6−トリス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、テトラキス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]メタン等、さらにこれらのオリゴマー等のオルトトリチオ蟻酸エステル骨格を有する化合物、3,3'−ジ(メルカプトメチルチオ)−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、2,2'−ジ(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,7−ジ(メルカプトメチル)−1,4,5,9−テトラチアスピロ[4,4]ノナン、3,9−ジメルカプト−1,5,7,11−テトラチアスピロ[5,5]ウンデカン、さらにこれらのオリゴマー等のオルトテトラチオ炭酸エステル骨格を有する化合物等が挙げられる。
【0053】
硫黄含有化合物の他の例として、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−2−(メルカプトエチル)−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−2−(メルカプトエチル)−3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルメルカプト、N−フェニル−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のケイ素元素を含有する化合物、2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−チオール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、4−アミノ−6−メルカプトピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、4−アミノ−5−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−6−プリンチオール、4−アミノ−5−(4−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、2−アミノ−5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−4−メトキシベンゾチアゾール、2−アミノ−4−フェニル−5−テトラデシルチアゾール、2−アミノ−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−4−フェニルチアゾール、2−アミノ−6−(メチルスルフォニル)ベンゾチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール、2−アミノ−5−(メチルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メチルチオ−1H−1,2,4チアゾール、3−アミノ−5−ニトロベンズイソチアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−4−チアゾールアセチックアシッド、2−アミノ−2−チアゾリン、2−アミノ−6−チオシアネートベンゾチアゾール、DL−α−アミノ−2−チオフェンアセチックアシッド、2−アミノチアゾール、N
4−(2−アミノ−4−ピリミジニル)スルファニルアミド、3−アミノロダニン、5−アミノ−3−メチルイソチアゾール、2−アミノ−α−(メトキシイミノ)−4−チアゾールアセチックアシッド、チオグアニン、5−アミノテトラゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール、2−アミノプリン、アミノピラジン、3−アミノ−2−ピラジンカルボン酸、3−アミノピラゾール、3−アミノピラゾール−4−カルボニトリル、3−アミノ−4−ピラゾールカルボン酸、4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、5−アミノ−2−ピリジンカルボニトリル、2−アミノ−3−ピリジンカルボキサルデヒド、2−アミノ−5−(4−ピリジニル)−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノピリミジン、4−アミノピリミジン、4−アミノ−5−ピリミジンカルボニトリル等の複素環を含有する化合物等が挙げられる。なお、これらは特に限定されるものではなく、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
硫黄粉末又は硫黄含有化合物の添加量は、金属ニッケルナノ粒子の表面積を考慮して決定することが可能であり、仕込み時のカルボン酸ニッケルのニッケル元素100質量部に対して硫黄元素として、例えば0.01〜3質量部の範囲内、好ましくは0.05〜1質量部の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0055】
硫黄粉末又は硫黄含有化合物の添加によって、室温においても、1級アミンに加えて硫黄元素が付着し、又は、1級アミンと硫黄含有化合物とで被覆された複合ニッケルナノ粒子を得ることができるが、確実かつより効率的に行うため、好ましくは100℃〜300℃の範囲内で、1分〜1時間の範囲内で加熱処理する。このような加熱処理により、硫黄粉末は固溶化して金属ニッケルナノ粒子の表面に付着し、硫黄含有化合物は一部の1級アミンとの置換反応により金属ニッケルナノ粒子の表面を被覆し、又は硫黄含有化合物は一部の1級アミンとの置換反応後に熱分解して(硫黄元素として)金属ニッケルナノ粒子の表面を被覆するものと考えられる。なお、この加熱処理の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよいが、より均一な硫黄元素の被覆の観点から、マイクロ波照射による加熱が好ましい。
【0056】
以上のように、本実施の形態の複合ニッケルナノ粒子は、湿式還元法によって製造されるものが好ましく、例えば元素分析により得られる値が、好ましくはN(窒素元素)が0.001質量%〜0.05質量%の範囲内、S(硫黄元素)が0.05質量%〜1.0質量%の範囲内がよい。
【0057】
(表面修飾剤)
本実施の形態に係る複合ニッケルナノ粒子の製造方法において、金属ニッケルナノ粒子の粒径を制御するための表面修飾剤として、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド等の高分子樹脂、ミリスチン酸、オレイン酸等の長鎖カルボン酸またはカルボン酸塩等を添加することができる。ただし、得られる複合ニッケルナノ粒子の表面修飾量が多いと、ニッケル電極用の導電性ペーストに用いる場合、複合ニッケルナノ粒子をペーストして高温で焼成すると充填密度の減少を招き、層間剥離やクラックを生じる可能性があるため、得られる複合ニッケルナノ粒子を洗浄した後の表面修飾量は可能な限り少ない方が好ましい。表面修飾剤は、工程Aのカルボン酸ニッケル及び1級アミンの混合物の段階で添加してもよく、工程Aで得られる錯化反応液に添加してもよい。
【0058】
以上説明した本実施の形態に係る複合ニッケルナノ粒子の製造方法により、粒径が好ましくは150nm以下、より好ましくは10〜120nmの範囲内であり、かつ均一な(例えばCv値(変動係数)が0.2以下である)複合ニッケルナノ粒子を得ることができる。また、本実施の形態に係る複合ニッケルナノ粒子の製造方法では、特に焼結温度が従来のニッケル粒子に比べて、(好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上)高い複合ニッケルナノ粒子を得ることができる。このように焼結温度が高い複合ニッケルナノ粒子は、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極の材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0059】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。ナノ粒子の粒径は、SEM(走査電子顕微鏡)により粉末の写真を撮影して、そのなかから無作為に200個を抽出し、その平均粒径(面積平均径)と標準偏差を求めた。Cv値(変動係数)は(標準偏差)÷(平均粒径)によって算出した。
【0060】
[実施例1]
窒素フロー下で、20.0gの酢酸ニッケル四水和物、及び226.0gのオレイルアミンを混合した後、撹拌しながら、120℃で20分間加熱することによって、青色の反応液1を得た。
【0061】
次いで反応液1にマイクロ波を照射して250℃で5分間加熱することによって、金属ニッケルナノ粒子スラリー1を得た後、0.058gのドデカンチオ−ルを添加し、再度、マイクロ波を照射して250℃で5分間加熱することによって、複合ニッケルナノ粒子スラリー1を得た。
【0062】
得られた複合ニッケルナノ粒子スラリー1を静置分離し、上澄み液を取り除いた後、メタノールとトルエンの体積比率が1:4の混合溶媒を用いて3回洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、平均粒径100nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子1を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子1の走査電子顕微鏡(SEM)写真を
図2に示す。
【0063】
得られた複合ニッケルナノ粒子1の熱膨張収縮の挙動は、熱機械分析装置(TMA)(リガク社製、商品名;Thermo plus EVO−TMA8310)を用いて確認し、複合ニッケルナノ粒子1の5%の熱収縮における開始温度が約380℃であることを確認した。結果を表1に示す。なお、表1中の「仕込み量[質量比%] S/Ni」は、仕込み時のカルボン酸ニッケル中のニッケル元素100質量部に対する、硫黄元素又は硫黄含有化合物中の硫黄元素の仕込み量を質量部で表示したものである。また、得られた複合ニッケルナノ粒子1の熱膨張収縮の挙動を
図3に示す。この元素分析の結果、C;0.5、N;0.0017、O;2.0、S;0.12(単位は質量%)であった。この分析結果より、後述する比較例1と比較してオレイルアミンに由来するNが大幅に減少し、ドデカンチオールに由来するSが増加していることから、効果的にアミノ基とメルカプト基の置換反応が進行していることがわかる。
【0064】
[実施例2]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.05gのデカンチオ−ルを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径70nm(Cv値;0.16)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子2を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子2の5%の熱収縮における開始温度が約370℃であることを確認した。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.066gのテトラデカンチオ−ルを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径70nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子3を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子3の5%の熱収縮における開始温度が約385℃であることを確認した。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例4]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.074gヘキサデカンチオ−ルを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径65nm(Cv値;0.17)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子4を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子4の5%の熱収縮における開始温度が約390℃であることを確認した。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例5]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.050のジ−n−デカンジスルフィドを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径70nm(Cv値;0.19)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子5を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子5の5%の熱収縮における開始温度が約390℃であることを確認した。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例6]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.030gの1,10−デカンジチオールを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径70nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子6を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子6の5%の熱収縮における開始温度が約340℃であることを確認した。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例7]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.058gのtert−ドデシルメルカプタンを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径65nm(Cv値;0.16)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子7を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子7の5%の熱収縮における開始温度が約350℃であることを確認した。複合ニッケルナノ粒子7を得た。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例8]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.062gのドデシルメチルスルフィドを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径70nm(Cv値;0.19)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子8を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子8の5%の熱収縮における開始温度が約395℃であることを確認した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例9]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.029gのドデカンチオ−ルを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径60nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子9を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子9の5%の熱収縮における開始温度が約350℃であることを確認した。複合ニッケルナノ粒子9を得た。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例10]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.174gのドデカンチオ−ルを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径65nm(Cv値;0.17)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子10を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子10の5%の熱収縮における開始温度が約395℃であることを確認した。この元素分析の結果、C;0.6、N;0.0018、O;2.3、S;0.43(単位は質量%)であった。結果を表1に示す。この分析結果より、後述する比較例1と比較してオレイルアミンに由来するNが大幅に減少し、ドデカンチオールに由来するSが増加していることから、効果的にアミノ基とメルカプト基の置換反応が進行していることがわかる。
【0073】
[実施例11]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.290gのドデカンチオ−ルを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径70nm(Cv値;0.19)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子11を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子11の5%の熱収縮における開始温度が約395℃であることを確認した。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例12]
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、1.0gのオレイルアミンに0.0092gの硫黄粉末を溶解した溶液を添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径60nm(Cv値;0.18)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子12を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子12の5%の熱収縮における開始温度が約330℃であることを確認した。結果を表1に示す。
【0075】
比較例1
実施例1において、ドデカンチオ−ルを使用しなかったこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径100nm(Cv値;0.17)の球状の均一な金属ニッケルナノ粒子を得た。得られた金属ニッケルナノ粒子の5%の熱収縮における開始温度は約295℃であった。この元素分析の結果、C;0.5、N;0.0260、O;2.2、S;0(単位は質量%)であった。結果を表1に示す。
【0076】
参考例1
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.091gのn−デシルスルフィドを添加したこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径70nm(Cv値;0.17)の球状の均一な複合ニッケルナノ粒子を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子の5%の熱収縮における開始温度は約310℃であった。結果を表1に示す。
【0077】
参考例2
実施例1における0.058gのドデカンチオ−ルを添加したことの代わりに、0.0087gのドデカンチオ−ルを添加したこと以外、実施例1と同様にして、複合ニッケルナノ粒子を得た。結果を表1に示す。
【0078】
比較例2
窒素フロー下で、20.0gの酢酸ニッケル四水和物、及び226.0gのオレイルアミンを混合した後、撹拌しながら、120℃で20分間加熱することによって、青色の反応液を得、得られた反応液をマントルヒーターによって250℃で5分間加熱することによって、金属ニッケルナノ粒子スラリーを得た後、0.058gのドデカンチオ−ルを添加し、再度、マントルヒーターによって250℃で5分間加熱することによって、平均粒径70nm(Cv値;0.37)の球状の複合ニッケルナノ粒子を得た。得られた複合ニッケルナノ粒子の5%の熱収縮における開始温度は約385℃であった。結果を表1に示す。この結果から、通常加熱を用いるとマイクロ波加熱よりも粒度分布が広くなるため好ましくないことがわかる。
【0079】
表1より、実施例1に対して硫黄含有化合物の種類を変えた実施例2〜8では、いずれも5%熱収縮開始温度が向上していることがわかる。しかし、硫黄含有化合物として、R−S−R´においてR、R´のアルキル鎖の長いn−デシルスルフィドを使用した参考例1では、他の硫黄含有化合物を使用した場合に比べて5%熱収縮開始温度を向上させる効果が低かった。これは、Ni表面にS成分が効率的に吸着していないためだと思われる。
【0080】
また、実施例1に対してS/Niの仕込み量[質量%]を変えた実施例9〜11及び参考例2の結果から、硫黄含有化合物の仕込み量が0.1〜1.0%の範囲内、好ましくは0.1〜0.6%の範囲内が効果的に5%熱収縮開始温度を向上させることができることがわかった。
【0081】
【表1】
【0082】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。