【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)/ナノ機能合成技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも第一電極と、第二電極とに銅鍍金に使用中の銅鍍金液を接触させ、該第一、第二電極間に時間変化する電圧を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の変化が観測される+0.7〜+2.0Vの電圧範囲で鍍金阻害化学種を同定し、該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で鍍金阻害化学種の濃度を分析することを特徴とする鍍金阻害化学種の分析方法。
少なくとも第一電極と、第二電極とに銅鍍金に使用中の銅鍍金液を接触させ、該第一、第二電極間に時間変化する電圧を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の変化が観測される+0.7〜+2.0Vの電圧範囲で該銅鍍金中の該銅鍍金使用の際生成した生成化合物を同定し、該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で該銅鍍金中の該銅鍍金使用の際生成した生成化合物の濃度を分析することを特徴とする該銅鍍金液中の該銅鍍金使用の際生成した生成化合物の分析方法。
更に前記第一電極または第二電極へ、その電位の少なくとも一部を同極性または異極性で供給する第三電極を設け、前記銅鍍金液を接触させたことを特徴とする請求項1に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
更に前記第一電極または第二電極へ、その電位の少なくとも一部を同極性または異極性で供給する第三電極を設け、前記銅鍍金液を接触させたことを特徴とする請求項2に記載の該銅鍍金中の該銅鍍金使用の際生成した生成化合物の分析方法。
前記使用中の銅鍍金液の代わりに、使用される前の新建浴銅鍍金液を用いて得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値を、前記銅鍍金に使用中の銅鍍金液について得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記鍍金阻害化学種の濃度を分析することを特徴とする請求項1または3に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
前記使用中の銅鍍金液の代わりに、使用される前の新建浴銅鍍金液を用いて得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値を、前記銅鍍金に使用中の銅鍍金液について得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記生成化合物の濃度を分析することを特徴とする請求項2または4に記載の生成化合物の分析方法。
前記新建浴銅鍍金液の温度と前記使用中の銅鍍金液の温度とを測定し、別途分析された前記新建浴銅鍍金液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値の温度変化率を用いて該分析された前記新建浴銅鍍金液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値を前記使用中の銅鍍金液の該温度に対応する値に換算し、その値を前記銅鍍金に使用中の銅鍍金液の前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記鍍金阻害化学種の濃度を分析することを特徴とする請求項5に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
前記新建浴銅鍍金液の温度と前記使用中の銅鍍金液の温度とを測定し、別途分析された前記新建浴銅鍍金液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値の温度変化率を用いて該分析された前記新建浴銅鍍金液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値を前記使用中の銅鍍金液の該温度に対応する値に換算し、その値を前記銅鍍金に使用中の銅鍍金液の前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記鍍金生成化合物の濃度を分析することを特徴とする請求項6に記載の生成化合物の分析方法。
前記難溶化は銀イオンもしくは一価水銀イオンもしくはタリウムイオンを該液に添加することを特徴とする請求項11または13または15に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
前記難溶化は銀イオンもしくは一価水銀イオンもしくはタリウムイオンを該液に添加することを特徴とする請求項12または14または16に記載の生成化合物の分析方法。
前記使用中の銅鍍金液および前記新建浴銅鍍金液に含まれる分析妨害物質の難溶化としての沈殿、及び/又はフィルタリングの処理から選択される前処理を行った後、分析することを特徴とする請求項11から18のいずれか1項に記載の鍍金阻害化学種または生成化合物の分析方法。
第一電極と、第二電極とに分析対象である一価銅化学種と分析対象外のその他2種類以上の化学種を含む混合液及び/又はその霧を接触させ、該第一、第二電極間に時間変化する電圧を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の最大値が観測される+0.7〜+2.0Vの電圧範囲で該混合液中の一価銅化学種を同定し、該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で該混合液中の一価銅化学種の濃度を分析することを特徴とする混合液中の一価銅化学種の分析方法。
混合液に含まれる分析妨害物質を難溶化させ、該第一、第二電極間に時間変化する電圧を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の最大値が観測される+0.7〜+2.0Vの電圧範囲で該混合液中の一価銅化学種を同定し、該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で該混合液中の一価銅化学種の濃度を分析することを特徴とする請求項21に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
更に前記第一電極および第二電極に加えて、前記第一電極または第二電極の電位の少なくとも一部を同極性または異極性で供給する第三電極を設け、前記混合液を接触させたことを特徴とする請求項21または22に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
前記混合液の代わりに、レファレンスとなる液を用いて得た前記電流の最大値または積分値を、前記混合液について得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記混合液中の一価銅化学種の濃度を分析することを特徴とする請求項21から23のいずれか1項に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
前記レファレンスとなる液と前記混合液は、それぞれの温度差が摂氏10度以内に保たれていることを特徴とする請求項24に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
前記レファレンスとなる液の温度と前記混合液の温度とを測定し、別途分析されたレファレンスとなる液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値の温度変化率を用いて該分析された前記レファレンスとなる液の前記電流の最大値ないしは電流の積分値を前記混合液の該温度に対応する値に換算し、その値を前記混合液の前記電流の最大値または積分値から引いて得た値から前記一価銅化学種の濃度を分析することを特徴とする請求項24に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
前記レファレンスとなる液または前記混合液に含まれる分析妨害物質を、該分析妨害物質と難溶性化合物を形成する化学種により難溶化した前記混合液を使用することを特徴とする請求項21から24のいずれか1項に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
前記レファレンスとなる液または前記混合液に含まれる分析妨害物質を、該分析妨害物質と難溶性塩を形成する陽イオンにより難溶化した前記混合液を使用することを特徴とする請求項21から24のいずれか1項に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
該難溶化は銀イオンもしくは一価水銀イオンもしくはタリウムイオンを該液に添加することを特徴とする請求項27または28に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
前記レファレンスとなる液または前記混合液に含まれる分析妨害物質の難溶化としての沈殿、及び/又は該沈殿による沈殿物のフィルタリングの処理から選択される前処理を行った後、分析することを特徴とする請求項21から24のいずれか1項に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【背景技術】
【0002】
近年、我々を取り巻く地球環境は、製造、消費社会、ビジネス活動によって多大な影響を受けている。その及ぼす影響は計り知れない。大気汚染、水質汚染、廃棄物による土壌汚染などが食物連鎖による生態系障害や、さらには、地球温暖化の懸念を惹き起こしている。このため、ビジネス活動と不可分になってきたCSR、環境、ビジネス、法規制対応は、今後ますます重要になっている。このような背景を踏まえ少しでも、環境改善、維持に寄与できる技術開発は重要になりつつある。たとえば、製造分野および環境分野において重要な銅、カドミウム、鉛、クロム、水銀イオンなどの金属イオンの分析がますます重要になりつつある。このような背景を踏まえ、最も近い分析技術として、「表面電位測定型センサー装置」が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、自己組織化膜の分析機能を活用している。分析原理は、電極先端に付与した自己組織化膜に吸着したイオン原子により、下地のフェルミ準位に対応した位置から吸着前後に仕事関数が変化し、その電位変化を参照電極を基準に測定し、超微量濃度を分析するものである。この技術によれば、
1) その電位変化は吸着イオンに対応した特定電位に到達する(分子膜構造に対応した選択的な分析の可能性を有する。)。
2) 特定の電位は、電極面積に依存しない(電流測定ではないので、測定系が簡易になり、小型システムへの可能性が大きい。)。
3) 特定電位への到達時間は、電極面積に比例する(ワイドレンジ分析の対応が可能)。
4) EDTA洗浄により繰り返し最大20回は、分析できる。
といった効果があると考えられる。
一方、分析対象によっては、上記自己組織化膜を電極に設けなくてもよい電気化学的分析方法による分析も発明者らは追求してきた。しかし、この手法も上記自己組織化センサーと同様下記のような問題点が発明者らにより見出されている。
【0003】
一方、この技術を、被分析物に含まれる物質が未知であったり、既知であったとしてもそれらの濃度が未知であったりするような複雑系である試料(以下、単に「複雑系」と称する。)に適用するとなると、より選択的に分析するための技術が不可欠となってくる。このため、多元系の分析のため電極数を増やすことが不可欠となり、測定用の電極数を増やしても小型化に対応できる多層化・配線技術が一層配線の基板を形成する技術よりも有利になる。すなわち、測定用基板には、一層配線の基板はもちろんのこと、多層化・配線技術にも対応できる効率的な製造技術が重要となる。これまでの電気化学的測定用の基板は、ガラスや、セラミック、マイカといった無機基板が用いられ、配線形成には、スパッタや蒸着などの真空プロセスが適用されてきた。配線の微細化には有利であるが、低コスト化と多層化を両立するには困難な状況にあった。
【0004】
一方、測定用基板として、プリント板業界で用いられる有機基板を活用した例はこれまで知られていない。
【0005】
プリント板業界で広く認知されている主な多層化・配線技術としては、ドリル穴明けとめっきプロセスを組み合わせたスルーホール接続があり、広く一般にも知られているが、全ての層にわたって穴があくので、配線収容量に限界がある。そこで、接続部の穴体積を減らすため、絶縁樹脂組成物層の形成−穴あけ−回路形成を繰り返すビルドアップ技術が主流となっている。このビルドアップ技術は、大別して、レーザ法とフォトリソ法があり、レーザ法は、絶縁樹脂組成物層に穴をあけるのにレーザ照射を行うものであり、一方、フォトリソ法は、絶縁樹脂組成物層に感光性の硬化剤(光開始剤)を用い、フォトマスクを重ねて、露光・現像して穴を形成する。また、更なる低コスト化・高密度化を目的とするいくつかの層間接続方法が提案されている。その中に、穴明けと導電層めっき工程を省略できる工法が注目されている。この方法は、まず、基板の配線上に導電性ペーストの印刷でバンプを形成した後、Bステージ状態にある層間接続絶縁材と金属層を配置して、プレスによりバンプを成形樹脂内に貫挿させ金属層と導通接続させるものである。このバンプを貫挿する方法は、学会や新聞でも発表されており、プリント板業界で広く認知されている(例えば、非特許文献1、2参照。)。
【0006】
さらに効率良く形成する方法としては、一括積層法がある。歴史的には、焼結前のグリーンシートと呼ばれるセラミック体に穴あけ・接続導体、配線を印刷し、それらを位置合わせ加熱・加圧し一体成型する配線板があるが、2割ほど収縮するため寸法安定性に課題がある。また、無機材料であるため高価である。これに対抗できる有機材料で穴あけを要しない一括積層法として、中村他を発明者とするに示される一括積層基板がある(例えば、特許文献2参照。)。これは、絶縁基材に熱可塑性液晶ポリマーを用いる方法である。
【0007】
以上の多層化方法において、配線方法は、めっき、エッチング、印刷配線、配線転写法などが微細配線のために活用されている。
【0008】
また、複雑系の分析において、センサーを直接、採取分析液に接触させて、選択的に目的とする金属イオンを分析可能とすることは困難を極めていた。もし、成分系が既知であったとしても、目的とする金属イオンの濃度を選択的に分析する際に、分析を阻害する他の金属イオンや分析妨害物質が含まれており、分析の可能性を著しく低下させることとなっている。その一例として、一価銅化学種の分析が挙げられる。この場合の一価銅化学種とは、単純な一価銅イオンもしくは一価銅イオン錯体もしくは一価銅を含む複合した化学種である。
【0009】
一価銅化学種の分析は、たとえば蛋白、糖類の同定などに用いられる。
また、有底孔の構造部分を銅で埋めるとともに平滑な配線層を形成させるフィルドビア銅鍍金液中の電気化学的な測定方法では、カソードでの定電流における電位測定がフィルドビア性の評価として活用されている。しかし、大量の複数の金属イオンや分析妨害物質が存在し、またその測定方法の原理から考察しても、たとえば一価銅化学種を定性およびまたは定量することが困難であると思われる。
【0010】
さらにフィルドビア銅鍍金液については、一価銅イオンは、すくなからずフィルドビア性を阻害しているとして、その定性・定量が望まれている。しかし、フィルドビア性を阻害する鍍金阻害化学種は、必ずしも一価銅イオンそのものなのか、一価銅イオン錯体なのか、一価銅を含む複合した化学種なのか、使用中の鍍金液に含まれる生成化合物かは明確でない。大量の2価の銅や分析妨害物質が存在する中で選択的に、目的の鍍金阻害化学種、生成化合物を定性・定量化することが困難であった。
【0011】
本発明では、この電気化学的分析方法とは、分析対象となる液に複数電極を浸漬してその電極間に電圧または電流を印加して電流または電圧の変化を観察する方法をいう。そのための電極としてはガラス基板上に接着され、一方向へほぼ平行に延在した複数の短冊状の金薄膜が使用されている。
この電極は測定器に接続するため、該分析対象となる液からその一部を外に出す必要があり、浸漬の深さ、浸漬時の基板の傾き等により電極が該分析対象となる液と接触する面積が変化し分析結果の再現性は保証されない。特に定量分析の再現性に問題がある。従って、配線を該分析対象となる液、霧、気体等から絶縁して、電極と配線を区別し、所定電極面積を確定することが重要になる。そこで、配線上に絶縁部分を設けることが重要になるが、ガラス基板上にこのような層を安価に効率よく製造することには難がある。
一方、この電極は分析過程での汚染、変質、鍍金現象のために長期に繰り返し使用できず、消耗品として位置づける必要がある。このためには電極が形成されている基板はガラス基板など無機基板では、工場ラインでの薬液管理、環境管理のためのフィールド水質分析など、頻繁に使用するためにはその価格は無視できなく、より低価格な基板が望まれている。
【0012】
本発明者らが有機基板を電気化学的測定および表面電位に適用しようと鋭意検討しようとした結果得た有機基板の課題としては大別して2つある。ひとつは、耐薬品性である。採取分析液が強酸、強アルカリなどである場合、分析中に有機基板から分析機能を妨害あるいは増長するイオンや分子を発生させることがあるからである。その有機基板を構成する有機材料自身の分解だけでなく、残溶剤の他、各種添加剤、配線加工中に吸着したイオン物質、その他空気中からの吸着物もその要因となる。
もうひとつは、耐熱性である。電気化学的分析においては、電極上に、金、白金などや不活性層としてのカーボン層を形成する必要があるからである。(なお、カーボン層は、カーボンが100%成分で形成できることが望ましい。しかし、バインダーや分散剤等の添加物を成分中に用いる場合もあれば、不純物を除き、100%に近いものまである。そこで、カーボンが成分として含まれ、不活性層としての役割を果たすものを含めて、以下カーボン含有層と記載し、材料をカーボン含有材料もしくは炭素含有材料と記載する。また、このカーボン含有層で被覆することをカーボン被覆と記載する。なお、カーボンの形状は粒状であっても炭素繊維線であってもよい。)たとえば、特にカーボン含有が100%に近いカーボン含有層の形成においては、その特性から一般にはDLCといった方法が知られているが、基材は摂氏200度以上といった高温にさらされる。高精度分析においては、この蒸着及び/又はスパッタ形成工程などで、分解し発生した不純物析出が阻害要因となるためである。このため、センサー用基板は、既述の配線基板の多層化・配線方法において、耐薬品性および耐熱性に優れた、ポリイミド、液晶ポリマーといった有機樹脂が絶縁基材として考えられる。必ずしもその選択を退けるわけではないが、低コスト化や、業界における認知度や普及において難がある。特に有機物の分解で問題となる最悪のケースは、絶縁被覆された絶縁材と埋設された電極の接着界面または接合界面に生じると考えられる。この場合、該界面に、採取分析液が侵入し、実質の電極面積が、測定中もしくは繰り返し使用中に変化してしまうという結果を惹起してしまう。
【0013】
一方、複雑系の分析において、すなわち高精度の分析においては、前処理を必要とし、多くの場合、煩雑な前処理作業を必要とすることとなっていた。その一例として、有機配位子および濾過法、吸光測定を用いた比色法による一価銅の分析が挙げられる(例えば、非特許文献3参照。)。この方法は、比較的簡便で、選択性にも優れた分析方法であるものの、実用化普及するには、前処理作業や分析に要する時間のさらなる短縮が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、
本発明の目的は、センサーの電極が被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体へ接触する面積を予め規定した構造のセンサーを提供することにある。
電極面積を規定するために本発明ではセンサーの電極に導電接続される配線を設けるが、該配線から被分析物質を含む液体ないし霧への配線材料の溶出、該配線から被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体への電流漏洩ないし放電、複数の該配線間の電気的な干渉を回避した構成のセンサーを提供することにある。
本発明の目的は、センサー用の絶縁基板を構成する素材としてガラスやセラミックスなどの無機系の絶縁材料ほど高度な耐薬品性と耐熱性を特に必要としない電極構造を有するセンサーを提供することにある。さらには、本発明で提供する電極構造を構成するカーボン含有層が電極間で離間した状態で形成されるために、さらには必要に応じて電極間で絶縁性を確保するために位置合わせをしてマスキングをする工程を必要としない電極部構造を有するセンサーを提供することにある。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、特に一価銅化学種、ないしは使用中の銅鍍金液に含まれる鍍金阻害化学種ないしは生成化合物の分析において、電気化学的手法、表面電位測定法、比色法ないしはそれらを組み合わせて、定性・定量するための分析方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、本発明のセンサーあるいは他の形態のセンサーを使用して、複数の金属イオンや分析妨害物質が存在する複雑系の液体の中から一価銅化学種の定性・定量、ないしは大量の2価の銅や分析妨害物質が存在する鍍金液に含まれる鍍金阻害化学種ないしは生成化合物の化学種の定性・定量を選択的に電気化学的手法、表面電位測定法で行う分析方法を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、前記センサーを具備し、効率よく前処理工程を一体的・連動的に操作できるセンサーシステムを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、前記センサーを具備し、所望の場所に持ち運びでき、該場所にて、少量の分析液であっても短時間で簡易に分析操作を行うことができる携帯型センサーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明では、センサーの電極に導電接続される接続配線から被分析物質を含む液体ないし霧への配線材料の溶出、該接続配線から被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体への電流漏洩ないし放電、複数の該接続配線間の電気的な干渉を回避する手段として、複数の電極に各々導電接続された接続配線を互いにおよび被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体から絶縁する有機材料の絶縁部分で覆う。
【0021】
本発明では、センサーの電極が該被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体へ接触する面積を予め規定する手段として、有機絶縁基板上に設けた前記複数の電極のそれぞれを外部に露出させる開口を有し、前記接続配線をカバーするするカバーレイを設ける。
カバーレイとは、保護層のことであり、保護する対象は、露出部以外のところで引き出し配線や、露出しない電極も含みうる。この保護層により機械的な傷損傷を保護する他、電極部間、接続配線間の絶縁性を確保する目的もある。湿気による配線間のリーク電流抑制の他、電子部品の実装時にはんだクリーム印刷の残渣による短絡を防ぐことも可能である。このカバーレイは、接着剤層付き絶縁材フィルムやレジストインク、レジストフィルムが用いられる。
【0022】
本発明のセンサーに使用される絶縁基板としては、真空プロセスに対応可能な耐熱性を有する有機材料に限定されることなく、また、これまで真空プロセスへの対応が不可能とされていた多くの有機材料を含む多層化プロセスからその製造プロセスを選定することができるようにするために、本発明者らは、絶縁基板の有機材料に対し、耐熱性、耐薬品性を特に必要としないカーボン含有層の形成方法を用いて、有機材料の絶縁基板上にカーボン含有層を設ける手段をとる。
【0023】
このためには低温蒸着法が必要である。低温度のカーボン蒸着方法として、イオンクラスタービームを用いたタフカーボンとよばれるカーボン蒸着法が知られている(例えば、特許第3660866号公報参照。)。これは、摂氏100度の低温度での蒸着であるため、基材からの不純物混入や汚染(以下、単に「コンタミ」と称する。)を大幅に低減することができる。このため、ガラスエポキシ樹脂を有機基材の候補として挙げることができる。
また、印刷ペーストを使用する方法も有効である。印刷ペーストとしては、特開2006−147202号公報、特開2007−165708号公報、又は特開2007−165709号公報に記載された技術およびペーストが適用できる。具体的には、日立化成工業(株)製のカーボンペーストを好適に使用することができる。その印刷方法としては、シリンジを用いた塗布方法や、インクジェット法による塗布が有効である。硬化温度は、160℃から210℃までで、基材の耐熱性に合わせて適宜設定可能である。
【0024】
すなわち、機械的・熱的特性を改善するなどのために有機材料に無機材料を添加した材料も本発明の適用範囲に含む。
【0025】
さらに、耐薬品性、耐熱性に加えて、絶縁性の確保は、電気化学的測定および電位測定において、いうまでもなく重要である。特に、測定データの高分解や測定データの再現性には、この絶縁性の安定性は極めて重要となる。
【0026】
しかし、いずれの方法においても、基材の選定をして、各種蒸着方法、印刷方法で全面にカーボン含有層を形成した際、電極間の絶縁を確保するには、別途マスクを準備する必要があり、位置合わせ工程などがはいり、微細電極に対応可能な効率よい製造方法の実現の障壁となる。本発明ではこれを解決する手段を提供する。
【0027】
本発明では、複数の金属イオンや分析妨害物質が存在する複雑系の液体の中から一価銅化学種の、ないしは大量の2価の銅や分析妨害物質が存在する使用中の鍍金液に含まれる鍍金阻害化学種ないしは生成化合物の化学種の同定、定量を選択的に行う分析手段として、少なくとも第一電極と、第二電極とに複雑系の液体ないしは銅鍍金に使用中の銅鍍金液を接触させ、該第一、第二電極間に時間変化する電圧を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の最大値が観測される電圧範囲で、一価銅化学種、ないしは鍍金阻害化学種ないしは生成化合物の化学種を同定し、その電圧範囲の該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で一価銅化学種、ないしは鍍金阻害化学種ないしは生成化合物の化学種の濃度を分析する方法を提供する。
【0028】
即ち、本発明は、以下のことを特徴とする。
【0029】
(1)導電性の第一電極と導電性の第二電極と、それぞれの電極に接続された導電性の第一、第二配線と、該第一、第二配線を互いにおよび被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体から絶縁する絶縁部分とから少なくとも構成され、該絶縁部分は有機材料から構成され、該第一、第二電極の少なくとも該被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体に接する表面は該被分析物質を含む液体ないしは霧に不溶なもしくは該被分析物質を含む気体で浸食されない物質で構成されていることを特徴とするセンサー。
【0030】
(2)更に前記第一電極または第二電極へ、その電位の少なくとも一部を同符号または異符号で供給する第三電極と該第三電極に接続された第三配線を設け、該第三電極の少なくとも前記被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体に接する表面は前記被分析物質を含む液体ないしは霧ないし気体に不溶なもしくは該被分析物質を含む気体で浸食されない物質で構成されていることを特徴とする(1)に記載のセンサー。
【0031】
該被分析物質を含む液体ないしは霧に不溶な該被分析物質を含む気体に浸食されない物質の例としては金、白金、炭素が挙げられる。
【0032】
(3)前記第三配線を前記第一、第二配線からおよび被分析物質を含む液体ないし霧ないしは気体から絶縁する有機物質からなる絶縁部分とから更に構成されることを特徴とする(2)に記載のセンサー。
【0033】
(4)前記第一、第二配線は接続端子と接続されていることを特徴とする(1)に記載のセンサー。
【0034】
(5)前記第三配線は接続端子と接続されていることを特徴とする(2)に記載のセンサー。
【0035】
(6)前記第一電極および第一配線、第二電極および第二配線を多数組み設けたことを特徴とする(1)に記載のセンサー。
【0036】
(7)前記第一電極および第一配線、第二電極および第二配線、第三電極および第三配線を多数組み設けたことを特徴とする(2)に記載のセンサー。
【0037】
(8)有機材料から構成された絶縁基板と、該絶縁基板上に配置された前記第一、第二電極からなる一組以上の電極群と、該電極群と導通接続された前記第一、第二配線からなる1層以上の構造で配置された一組以上の接続配線群と、該接続配線群と導通接続された一組以上の接続端子群と、を有することを特徴とする(4)に記載のセンサー。
【0038】
(9)有機材料から構成された絶縁基板と、該絶縁基板上に配置された前記第一、第二電極および第三電極からなる一組以上の電極群と、該電極群とそれぞれ導通接続され、前記第一、第二、第三配線からなる1層以上の構造で配置された一組以上の接続配線群と、該接続配線群と導通接続された一組以上の接続端子群と、を有することを特徴とする(5)に記載のセンサー。
【0039】
(10)さらに、前記絶縁基板上に、前記電極群のそれぞれを外部に露出させる開口を有し、前記接続配線群をカバーするカバーレイを少なくとも有し、少なくとも該カバーレイと前記絶縁基板とが前記接続配線群同士および前記接続配線と前記被分析物質を含む液体ないしは霧ないし気体とを絶縁する前記絶縁部分を構成することを特徴とする(8)または(9)に記載のセンサー。
【0040】
(11) 前記カバーレイの各開口が、前記電極群の各電極より内側になるように設定されていることを特徴とする(10)に記載のセンサー。
【0041】
(12) 前記カバーレイの各開口が、開口内で露出する前記電極群の各電極より外側になるように設定されていることを特徴とする(10)に記載のセンサー。
【0042】
(13)前記絶縁基板上にカーボン含有層を少なくとも有し、該カーボン含有層が、前記カバーレイ表面と、前記開口内に位置する少なくとも電極表面の一部に形成されていることを特徴とする(11)または(12)に記載のセンサー。
【0043】
(14)前記カバーレイの開口が、上面側から下面側に向けて広がるように形成されていることを特徴とする(10)から(13)のいずれかに記載のセンサー。
【0044】
(15)前記カバーレイが上面側における開口面積が下面側における開口面積よりも小さく形成されていることを特徴とする(10)から(13)のいずれかに記載のセンサー。
【0045】
(16)前記カバーレイが少なくともカバーレイフィルムおよび接着剤層の2層からなり、前記接着剤層の開口縁部が、前記カバーレイフィルムの開口縁部と同位置、又は該開口縁部よりも外側に位置していることを特徴とする(10)から(13)のいずれかに記載のセンサー。
【0046】
(17)前記第一電極ないし第二電極ないし第三電極の少なくとも1つが、その最表面の少なくとも一部に金が被覆されていることを特徴とする(1)から(16)のいずれかに記載のセンサー。
【0047】
(18)前記最表面に位置する層の下地層としてカーボン含有層、ニッケル層、及びパラジウム層のうちのいずれか1つを有することを特徴とする(17)に記載のセンサー。
【0048】
(19)前記第一電極ないし第二電極ないし第三電極のうち1つの最表面の少なくとも一部に単分子膜が形成されていることを特徴とする(1)から(18)のいずれか1項に記載のセンサー。
【0049】
(20)前記単分子膜が、その表面に、塩素、臭素、硫黄、窒素、および酸素からなる群より選択される少なくとも1種を含有する置換基を有する単分子膜であることを特徴とする(19)に記載のセンサー。
【0050】
(21)(4)若しくは(5)、または(8)から(20)のいずれかに記載のセンサーと、該センサーの電極のうち少なくとも2つの電極間の電圧・電流特性を測定する測定器とを備えることを特徴とするセンサーシステム。
【0051】
(22)さらに、前記センサーと前記測定器とを電気的に接続するコネクタおよび配線用部材とを備えることを特徴とする(21)に記載のセンサーシステム。
【0052】
(23)さらに被分析液体容器を備えたことを特徴とする(21)または(22)記載のセンサーシステム。
【0053】
(24)前記被分析物質を含む液体ないし霧に接触する電極ないし電極群と前記コネクタとの間に前記被分析物質を含む液体の液面上部からの蒸気を遮断する遮断板を有する(21)から(23)のいずれかに記載のセンサーシステム。
【0054】
(25)前記コネクタから、前記電極ないし電極群までの距離が3mm以上の距離が設けられたことを特徴とする(21)から(23)のいずれかに記載のセンサーシステム。
【0055】
(26)(4)若しくは(5)、または(8)から(20)のいずれかに記載のセンサーと、該センサーの電極のうち少なくとも2つの電極間の電圧・電流特性を測定する測定器と、少なくとも前記センサー及び前記測定器を収納する携帯容器とを少なくとも備えることを特徴とする携帯型センサーシステム。
【0056】
(27)さらに、前記携帯容器に収納される、前記センサーと前記測定器とを電気的に接続するコネクタおよび配線とを備えることを特徴とする(26)に記載の携帯型センサーシステム。
【0057】
(28)前記第一電極と第一配線、前記第二電極と第二配線、前記第三電極と第三配線の少なくとも一組は一体の導電性の線とその一部を覆う前記絶縁部分としての有機材料から構成され、該有機材料から露出した導電性の線の部分を電極として用いることを特徴とする(1)または(2)に記載のセンサー。
【0058】
(29)前記露出部分は前記有機材料で覆われた導電性の線の切断面であることを特徴とする(28)に記載のセンサー。
【0059】
(30)前記導電性の線は前記有機材料から露出した部分と離間して前記有機材料から露出した他の部分を有し、前記導電性の線の該他の部分を接続端子として用いることを特徴とする(28)に記載のセンサー。
【0060】
(31)絶縁基板と、該絶縁基板の同一面上に配置された参照電極、対極電極、および作用電極からなる電極群と、該電極群と導通接続された一層以上の接続配線群と、該接続配線群よって導通接続された測定用端子群と、を有することを特徴とするセンサー。
【0061】
(32)前記参照電極は、前記対極電極と前記作用電極との間に配置されていることを特徴とする(31)に記載のセンサー。
【0062】
(33)前記参照電極は、該参照電極の最表面がカーボン含有層により被覆されていることを特徴とする(31)または(32)に記載のセンサー。
【0063】
(34)さらに、前記絶縁基板上に、前記電極群のそれぞれを外部に露出させる開口を有するカバーレイと、カーボン含有層とを有し、該カーボン含有層が、該カバーレイ表面と、前記開口内に位置する少なくとも電極表面とに形成されていることを特徴とする(31)から(33)のいずれかに記載のセンサー。
【0064】
(35)前記カバーレイの各開口が、開口内で露出する各電極の面積よりも大きく設定されていることを特徴とする(34)に記載のセンサー。
【0065】
(36)前記カバーレイの開口が、上面側から下面側に向けて広がるように形成されていることを特徴とする(34)または(35)に記載のセンサー。
【0066】
(37)前記カバーレイが単一材料からなり、上面側における開口面積が下面側における開口面積よりも小さく形成されていることを特徴とする(34)から(36)のいずれかに記載のセンサー。
【0067】
(38)前記カバーレイが少なくともカバーレイフィルムおよび接着剤層の2層からなり、前記接着剤層の開口縁部が、前記カバーレイフィルムの開口縁部と同位置、又は該開口縁部よりも外側に位置していることを特徴とする(34)または(35)に記載のセンサー。
【0068】
(39)前記作用電極及び/又は対極電極が、その最表面の少なくとも一部に金が被覆されていることを特徴とする(31)から(35)のいずれかに記載のセンサー。
【0069】
(40)前記最表面に位置する層の下地層としてカーボン含有層、ニッケル層、及びパラジウム層のうちのいずれか1つを有することを特徴とする(39)に記載のセンサー。
【0070】
(41)前記作用電極及び/又は対極電極が、その最表面の少なくとも一部に単分子膜が形成されていることを特徴とする(34)から(40)のいずれかに記載のセンサー。
【0071】
(42)前記単分子膜が、その表面に、塩素、臭素、硫黄、窒素、および酸素からなる群より選択される少なくとも1種を含有する置換基を有する単分子膜であることを特徴とする(41)に記載のセンサー。
【0072】
(43)前記絶縁基板が有機材料からなることを特徴とする(34)から(42)のいずれかに記載のセンサー。
【0073】
(44)(34)から(43)のいずれかに記載のセンサーと、前記センサーの電極のうち少なくとも2つの電極間の電圧・電流特性を測定する測定器とを備えることを特徴とするセンサーシステム。
【0074】
(45)さらに、前記センサーと前記測定器とを電気的に接続するコネクタおよび配線用部材を備えることを特徴とする(44)に記載のセンサーシステム。
【0075】
(46)さらに、被分析液体容器を備え、前記被分析液体を中和、難溶化、又はフィルタリングの処理を施す前処理手段を有することを特徴とする(45)に記載のセンサーシステム。
【0076】
(47)(35)から(44)のいずれかに記載のセンサーと、該センサーの電極のうちの2つの電極間の電圧・電流特性を測定する測定器と、少なくとも前記センサー及び前記測定器を収納する携帯容器とを少なくとも備えることを特徴とする携帯型センサーシステム。
【0077】
(48)さらに、前記携帯容器に収納される、前記センサーと前記測定器とを電気的に接続するコネクタおよび配線とを備えることを特徴とする(47)に記載の携帯型センサーシステム。
【0078】
(49)(44)から(46)のいずれかに記載のセンサーシステムを用い、前処理を行わずに被分析液体を直接分析することを特徴とする金属イオンの分析方法。
【0079】
(50)(46)のセンサーシステムを用い、前処理を行って被分析液体の分析をすることを特徴とする金属イオンの分析方法。
【0080】
(51)被分析液体を、中和、フィルタリング後に比色法で分析することを特徴とする(50)に記載の金属イオンの分析方法。
【0081】
(52)被分析液体を、中和、フィルタリング後に電気化学的手法で分析することを特徴とする(46)に記載のセンサーシステムを用いた金属イオンの分析方法。
【0082】
(53)被分析液体を、中和、難溶化、フィルタリング後に電気化学的手法で分析することを特徴とする(46)に記載のセンサーシステムを用いた金属イオンの分析方法。
【0083】
(54)絶縁基板と該絶縁基板に設けられた電極群と、前記電極群のそれぞれを外部に露出させる開口を有するカバーレイと、カーボン含有層とを有し、該カーボン含有層は該カバーレイ表面と該開口内に位置し、該カバーレイ表面のカーボン含有層と該電極群の少なくとも1つの電極とは該開口端部で離間した状態であることを特徴とする実装用基板。
【0084】
(55)前記カバーレイの開口が、上面側から下面側に向けて広がるように形成されていることを特徴とする(54)に記載の実装用基板。
【0085】
(56)前記カバーレイが単一材料からなり、上面側における開口面積が下面側における開口面積よりも小さく形成されていることを特徴とする(54)に記載の実装用基板。
【0086】
(57)前記カバーレイが少なくともカバーレイフィルムおよび接着剤層の2層からなり、前記接着剤層の開口縁部が前記カバーレイフィルムの開口縁部と同位置、又は該開口縁部よりも外側に位置していることを特徴とする(54)に記載の実装用基板。
【0087】
(58)少なくとも第一電極と、第二電極とに銅鍍金に使用中の銅鍍金液を接触させ、該第一、第二電極間に時間変化する電圧を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の変化が観測される電圧範囲で鍍金阻害化学種を同定し、該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で鍍金阻害化学種の濃度を分析することを特徴とする鍍金阻害化学種の分析方法。
【0088】
(59)少なくとも第一電極と、第二電極とに銅鍍金に使用中の銅鍍金液を接触させ、該第一、第二電極間に時間変化する電圧を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の変化が観測される電圧範囲で該銅鍍金中の該銅鍍金使用の際生成した生成化合物を同定し、該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で該銅鍍金中の該銅鍍金使用の際生成した生成化合物の濃度を分析することを特徴とする該銅鍍金液中の該銅鍍金使用の際生成した生成化合物の分析方法。
【0089】
(60)更に前記第一電極または第二電極へ、その電位の少なくとも一部を同極性または異極性で供給する第三電極を設け、前記銅鍍金液を接触させたことを特徴とする(58)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0090】
(61)更に前記第一電極または第二電極へ、その電位の少なくとも一部を同極性または異極性で供給する第三電極を設け、前記銅鍍金液を接触させたことを特徴とする(59)に記載の該銅鍍金中の該銅鍍金使用の際生成した生成化合物の分析方法。
【0091】
(62)前記電圧範囲は+0.2Vから+2.0Vであることを特徴とする(58)または(60)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0092】
(63)前記電圧範囲は+0.2Vから+2.0Vであることを特徴とする(59)または(61)に記載の生成化合物分析方法。
【0093】
(64)前記使用中の銅鍍金液の代わりに、使用される前の新建浴銅鍍金液を用いて得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値を、前記銅鍍金に使用中の銅鍍金液について得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記鍍金阻害化学種の濃度を分析することを特徴とする(58)または(60)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0094】
(65)前記使用中の銅鍍金液の代わりに、使用される前の新建浴銅鍍金液を用いて得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値を、前記銅鍍金に使用中の銅鍍金液について得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記生成化合物の濃度を分析することを特徴とする(59)または(61)に記載の生成化合物の分析方法。
【0095】
(66)前記使用中の銅鍍金液と前記新建浴銅鍍金液は、それぞれの温度差が摂氏10度以内に保たれていることを特徴とする(64)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0096】
(67)前記使用中の銅鍍金液と前記新建浴銅鍍金液は、それぞれの温度差が摂氏10度以内に保たれていることを特徴とする(65)に記載の生成化合物の分析方法。
【0097】
(68)前記新建浴銅鍍金液の温度と前記使用中の銅鍍金液の温度とを測定し、別途分析された前記新建浴銅鍍金液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値の温度変化率を用いて該分析された前記新建浴銅鍍金液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値を前記使用中の銅鍍金液の該温度に対応する値に換算し、その値を前記銅鍍金に使用中の銅鍍金液の前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記鍍金阻害化学種の濃度を分析することを特徴とする(64)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0098】
(69)前記新建浴銅鍍金液の温度と前記使用中の銅鍍金液の温度とを測定し、別途分析された前記新建浴銅鍍金液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値の温度変化率を用いて該分析された前記新建浴銅鍍金液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値を前記使用中の銅鍍金液の該温度に対応する値に換算し、その値を前記銅鍍金に使用中の銅鍍金液の前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記鍍金生成化合物の濃度を分析することを特徴とする(65)に記載の生成化合物の分析方法。
【0099】
(70)前記使用中の銅鍍金液または前記新建浴銅鍍金液に含まれる分析妨害物質を難溶化させた銅鍍金液を使用することを特徴とする(58)または(60)または(64)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0100】
(71)前記使用中の銅鍍金液または前記新建浴銅鍍金液に含まれる分析妨害物質を難溶化させた銅鍍金液を使用することを特徴とする(59)または(61)または(65)に記載の生成化合物の分析方法。
【0101】
(72)前記使用中の銅鍍金液または前記新建浴銅鍍金液に含まれる分析妨害物質を、該分析妨害物質と難溶性化合物を形成する化学種により難溶化させた銅鍍金液を使用することを特徴とする(58)または(60)または(64)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0102】
(73)前記使用中の銅鍍金液または前記新建浴銅鍍金液に含まれる分析妨害物質を、該分析妨害物質と難溶性化合物を形成する化学種により難溶化させた銅鍍金液を使用することを特徴とする(59)または(61)または(65)に記載の生成化合物の分析方法。
【0103】
(74)前記使用中の銅鍍金液または前記新建浴銅鍍金液に含まれる分析妨害物質を、該分析妨害物質と難溶性塩を形成する陽イオンにより難溶化させた銅鍍金液を使用することを特徴とする(58)または(60)または(64)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0104】
(75)前記使用中の銅鍍金液または前記新建浴銅鍍金液に含まれる分析妨害物質を、該分析妨害物質と難溶性塩を形成する陽イオンにより難溶化させた銅鍍金液を使用することを特徴とする(59)または(61)または(65)に記載の生成化合物の分析方法。
【0105】
(76)前記難溶化は銀イオンもしくは一価水銀イオンもしくはタリウムイオンを該液に添加することを特徴とする(70)または(72)または(74)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0106】
(77)前記難溶化は銀イオンもしくは一価水銀イオンもしくはタリウムイオンを該液に添加することを特徴とする(71)または(73)または(75)に記載の生成化合物の分析方法。
【0107】
(78)前記使用中の銅鍍金液または前記新建浴銅鍍金液に含まれる複数の分析妨害物質を段階的に難溶化させ、各段階で得られた鍍金液を使用することを特徴とする(58)または(60)または(64)に記載の鍍金阻害化学種の分析方法。
【0108】
(79)前記使用中の銅鍍金液および前記新建浴銅鍍金液に含まれる分析妨害物質の難溶化としての沈殿、及び/又はフィルタリングの処理から選択される前処理を行った後、分析することを特徴とする(70)から(77)のいずれかに記載の鍍金阻害化学種または生成化合物の分析方法。
【0109】
(80)第一電極と、第二電極とに分析対象である一価銅化学種と分析対象外のその他2種類以上の化学種を含む混合液及び/又はその霧を接触させ、該第一、第二電極間に時間変化する0.2Vから2.0Vの電圧範囲を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の最大値が観測される電圧範囲で該混合液中の一価銅化学種を同定し、該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で該混合液中の一価銅化学種の濃度を分析することを特徴とする混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0110】
(81)混合液に含まれる分析妨害物質を難溶化させ、該第一、第二電極間に時間変化する0.2Vから2.0Vの電圧範囲を印加し、該第一、第二電極間に流れる電流の最大値が観測される電圧範囲で該混合液中の一価銅化学種を同定し、該電流の最大値もしくは該電圧に関する該電流の積分値で該混合液中の一価銅化学種の濃度を分析することを特徴とする(80)に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0111】
(82)更に前記第一電極および第二電極に加えて、前記第一電極または第二電極の電位の少なくとも一部を同極性または異極性で供給する第三電極を設け、前記混合液を接触させたことを特徴とする(80)または(81)に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0112】
(83)前記混合液の代わりに、レファレンスとなる液を用いて得た前記電流の最大値または積分値を、前記混合液について得た前記電流の最大値または該電圧に関する該電流の積分値から引いて得た値から前記混合液中の一価銅化学種の濃度を分析することを特徴とする(80)から(82)のいずれかに記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0113】
(84)前記レファレンスとなる液と前記混合液は、それぞれの温度差が摂氏10度以内に保たれていることを特徴とする(83)に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0114】
(85)前記レファレンスとなる液の温度と前記混合液の温度とを測定し、別途分析されたレファレンスとなる液の前記電流の最大値ないしは電流の該電圧に関する該電流の積分値の温度変化率を用いて該分析された前記レファレンスとなる液の前記電流の最大値ないしは電流の積分値を前記混合液の該温度に対応する値に換算し、その値を前記混合液の前記電流の最大値または積分値から引いて得た値から前記一価銅化学種の濃度を分析することを特徴とする(83)に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0115】
(86)前記レファレンスとなる液または前記混合液に含まれる分析妨害物質を、該分析妨害物質と難溶性化合物を形成する化学種により難溶化した前記混合液を使用することを特徴とする(80)から(83)のいずれかに記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0116】
(87)前記レファレンスとなる液または前記混合液に含まれる分析妨害物質を、該分析妨害物質と難溶性塩を形成する陽イオンにより難溶化した前記混合液を使用することを特徴とする(80)から(83)のいずれかに記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0117】
(88)該難溶化は銀イオンもしくは一価水銀イオンもしくはタリウムイオンを該液に添加することを特徴とする(86)または(87)に記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0118】
(89)前記レファレンスとなる液または前記混合液に含まれる分析妨害物質の難溶化としての沈殿、及び/又は該沈殿による沈殿物のフィルタリングの処理から選択される前処理を行った後、分析することを特徴とする(80)から(83)のいずれかに記載の混合液中の一価銅化学種の分析方法。
【0119】
なお、本発明の説明に使用する「分析」とは、知りたい化学種の有無を定性的に判定すること、およびもしくは知りたい化学種の濃度の増減を定量的に判定することを意味する。
【発明の効果】
【0120】
本発明のセンサーによれば、配線を絶縁したことにより電極と配線を役割分担し、結果として電極面積がセンサーの分析対象となる液、霧、気体への浸漬深さ、角度などによらず一定となる。このため定量分析の再現性が向上する。
また有機絶縁部分を設けることにより安価なセンサーを提供できる。
有機基板を用いた場合は、有機カバーレイによる配線部分の絶縁と開口面積の規定による有効電極面積の設計性により、有機カバーレイという一層の有機部材で電極面積の設計性再現性と、配線間の絶縁と両方を達成できる。
【0121】
本発明のセンサーシステムによれば、上記センサーを具備し、効率よく前処理工程を一体的・連動的に操作することができる。
【0122】
本発明の別の態様によるセンサーによれば、有機材料で絶縁被覆された線構造とすることで、柔軟性、屈曲性に富むセンサーを得ることができる。配線間の絶縁が配線に沿って均一に保持できており、電流の耐リーク対策も確保できる。電極の形成は、導電性の線の断面でも、平面に載置して、レーザで有機材料の被覆を除去して、電極の露出をすることもできるなど、少量生産から大量生産にも柔軟に対応可能となる。 既存のワイヤー部品、ケーブルなども活用でき、柔軟なシステム設計対応ができる。
【0123】
本発明のさらに別の態様によるセンサーによれば、センサー用の絶縁基板に耐薬品性と耐熱性を特に必要とせず、特にカーボン含有層の形成時に電極間の絶縁性を確保するために位置合わせをしてマスキングをする工程を必要としない電極部構造を有するセンサーを提供することができる。より具体的には、センサー用基板として、真空プロセスに対応可能な耐熱性を有する、及び/又は耐薬品性を有する有機材料をはじめ、それらの特性に対応が不可能なものすべての有機材料を含む多層化プロセスを選定することができる。また、カーボン含有層の形成時に電極間の絶縁性を確保するために位置合わせをしてマスキングをする工程を必要としない。このため、大幅な効率化と高精度の基板製造が可能となる。このカーボン含有層により、基板からのコンタミを防御するとともに、複雑系の分析において必要な真空製膜による微細電極形成にも耐えられる有機基板を得ることができる。
また、参照電極表面を被覆したカーボン含有層は、ベース電流の安定化と参照電極電位の安定化を果たす。さらに作用電極を被覆したカーボン含有層は、蒸着もしくはスパッタあるいは、印刷やインクジェット法などによる方法で、単独成分もしくは複合成分の金属層を一定のばらつきの少ない面積で形成することが可能になる。また、このような一定のばらつきの少ない面積は、電極と絶縁材の界面に分析液が侵入して電極面積が変化することをも防御することによって、達成されるものである。これにより、同一基板での繰り返し測定を可能とする耐久性を有する電極が製造可能である。
【0124】
また、複雑系の分析においては、単分子膜が形成された作用電極を複数、面積を変えて形成し、多点分析すれば、得られる電位や特定の電位に到達する時間変化を解析することにより、より広範囲な濃度にわたっての分析が可能になる。特に、微細電極を形成し、より微量な物質の分析を可能とすることが必要な場合には、金の蒸着やスパッタといった真空製膜に対応可能な基板とする必要がある。この有機基板は、耐熱性のあるカーボン含有層が形成されていることから、金の蒸着やスパッタを可能とし、有機基板では実現できなかった真空製膜を導入するための解決手段を与えるものである。この真空製膜の際に、下地にカーボン含有層が被覆されることにより、有機基板の配線および電極の表面粗さが平坦化し、単分子膜の表面電位誘起を活性化させることも可能である。
【0125】
本発明のセンサーシステムによれば、前記センサーを具備し、前処理工程を一体的・連動的に効率よく操作できるセンサーシステムを提供することができる。
本発明の携帯型センサーシステムによれば、前記センサーを具備し、所望の場所に持ち運びでき、該場所にて少量の分析液であっても短時間で簡易に分析操作を行うことができる携帯型センサーシステムを提供することができる。
【0126】
本発明の金属イオンの分析方法によれば、複数の金属イオンや分析妨害物質の存在する複雑系の中から一価銅化学種を比較的簡単にないしは再現性良く分析できる分析方法を提供することができる。また、本発明は、複雑系の分析において、すなわち高精度の分析においては、煩雑な前処理作業を簡素化する効果がある。つまり、複雑系の分析において、すなわち高精度の分析において不可欠であった煩雑な前処理作業を省略することができる。さらに、特に一価銅の分析において、電気化学的手法、比色法を組み合わせて、定性・定量するための金属イオンの分析方法を提供することができる。
【0127】
本発明の実装用基板は、カバーレイの後退構造により、同一工程における電極上のカーボン含有層形成時に絶縁性を確保すべき電極とカバーレイ表面のカーボン含有層との間の連続を絶ち離間した構造とするとともに、カバーレイ表面の被覆がされた構造を有する。このなかで、電極がコネクタへの接続といった摺動部、金ワイヤボンディングといった従来の半導体チップ実装の特性を改善するための電極とすることができる。すなわち、めっき液で汚染された金電極の洗浄管理に対する負担を大幅に軽減できる。カバーレイの表面に被覆された黒色のカーボン含有層は光反応により、引き回し配線に誘起される微小電流の発生を抑制することができ、高速のスイッチング信号が印加される実装基板において、スイッチング雑音をカーボン含有層で減衰できるので、ノイズマージンの確保ができる。
【0128】
本発明の鍍金阻害物質の分析方法又は生成化合物の分析方法によれば、大量の2価の銅や分析妨害物質が存在する鍍金液に含まれる鍍金阻害化学種、鍍金液使用中に発生する生成化合物を比較的簡単にないしは再現性良く分析することができる。
【0129】
本発明の一価銅化学種の分析方法によれば、広く他の金属イオン分析にも活用可能であり、めっき液のような工業的薬品群だけでなく、環境中にある土壌分析や医療健康分野のイオンに関わるものも分析対象と成り得る。
【発明を実施するための形態】
【0131】
本発明のセンサーは、導電性の第一電極と導電性の第二電極と、それぞれの電極に接続された導電性の第一、第二配線と、該第一、第二配線を互いにおよび被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体から絶縁する絶縁部分とから少なくとも構成され、該絶縁部分は有機材料から構成され、該第一、第二電極の少なくとも該被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体に接する表面は該被分析物質を含む液体ないしは霧に不溶なもしくは該被分析物質を含む気体で浸食されない物質で構成されていることを特徴とする。
【0132】
本発明のセンサーを適用した金属イオンセンサー(単にイオンセンサーとも略記することもある)の最も簡単な構造は、少なくとも第一、第二の電極とそれぞれと導電接続され、有機材料からなる絶縁部分で覆われた第一、第二接続配線からなる。本実施の形態では更に、同符号または異符号で供給する第三の電極とそれと導電接続され、有機絶縁部で覆われた第三接続配線とが加えられた構成のイオンセンサーについて詳しく述べる。第三電極の少なくとも該被分析物質を含む液体ないし霧ないし気体に接する表面は該被分析物質を含む液体ないしは霧に不溶なもしくは該被分析物質を含む気体で浸食されない物質で構成されている。いくつかのセンサーの例は、本発明の分析方法の実施例とともに開示されるが、分析方法とそこで開示されるセンサーは必ずしも固定された組み合わせでは無く、実施例の分析方法は他のセンサーを用いても実施可能な場合が多い。
【0133】
以下に更に詳しく述べるイオンセンサーは、絶縁基板と、該絶縁基板の同一面上に配置された第一、第二、第三電極からなる電極群と、該電極群と導通接続された一層以上の接続配線群と、該接続配線群によって導通接続された接続端子ないしは測定用端子群と、を有する。なお、実際は、第一、第二電極を作用電極、対向電極と呼び、第三電極を参照電極とよぶことが多い。
より詳細には、さらに、前記絶縁基板上に、前記電極群のそれぞれを外部に露出させる開口を有するカバーレイを有し、該カバーレイ表面と前記開口内に位置する少なくとも電極表面とにカーボン含有層が形成されている。カーボン含有層が形成される前の構造も、すでに本発明の実施の形態であり、有機カバーレイと有機絶縁基板とで該接続配線を囲んだ部分が、接続配線の有機材料からなる絶縁部分となっている。
以下に当該態様について説明する。
【0134】
本発明のセンサーに用いる有機絶縁材料としては、既述のように特に制限はないが、特に、ポリイミド、エポキシ、液晶ポリマーなどの有機材料を用いることができる。特に、好適に使用される有機絶縁材料としては、中でも、液晶ポリマーやテフロン(登録商標)が好ましい。
【0135】
本発明のセンサーに用いる配線材料として、電解銅箔、圧延銅箔、銅薄膜、前記箔ないし膜に金などを鍍金ないしスパッタあるいは蒸着した材料、銅線、金銭、銀線、白金線、白金とイリジウムの合金線を用いることができる。配線基板では、サブトラクティブ、アディティブ、配線転写法等のプロセスが適用できる。また、絶縁材料として、半硬化および/又は硬化した熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0136】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、などのうちから選択された1種以上と、必要な場合に、その硬化剤、硬化促進剤などを混合したものを加熱し半硬化状にしたもの、あるいは、硬化したものが使用できる。
【0137】
光硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、シリコーンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、などのうちから選択された1種以上と、必要な場合に、その光開始剤、硬化剤、硬化促進剤などを混合したものを露光あるいは加熱し半硬化状にしたもの、あるいは硬化したものが使用できる。
【0138】
熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、六フッ化ポリプロピレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシベンゾエート樹脂、液晶ポリマーなどのうちから選択された1種以上と、必要な場合に、その硬化剤、硬化促進剤などを混合したものを加熱し半硬化状にしたもの、あるいは硬化したものが使用できる。
【0139】
以上の絶縁樹脂は、異種の樹脂の混合体からなる絶縁樹脂組成物であってもよく、さらに、絶縁樹脂組成物は充填剤としてシリカや金属酸化物などの無機フィラーを含むものでもよい。無機フィラーはニッケル、金、銀などの導電粒子、あるいはこれらの金属をめっきした樹脂粒子であってもよい。また、ガラス繊維の織布、不織布などに含浸させたものであってもよい。
【0140】
次に、本発明のセンサーの電極構造について、図面に従って説明する。本発明はこれらの形態により、何ら限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内での変更および他の態様は、全て本発明に含まれる。
【0141】
図1は、本発明を適用した金属イオンセンサー10を示し、基本的には使い捨てで使用する基板の配線パターン図である。図中に示す記号C、R、Wは、それぞれ、対極電極、参照電極、作用電極(第二電極、第三電極、第一電極の実施例に相当)を示している。この記号の添え字1〜5はCRWの組番号であり、電流電圧特性、あるいは電圧測定で使用する電極の構成例であり、これらが1組の電極群をなす。
図1では、電極群は5組が配置されており、各電極は、円形状であっても、矩形であっても任意である。引き回し配線(配線用部材)14は、各電極から、基板の端部のコネクタと嵌合して接続される測定用端子(接続端子)16まで引き回されるが、電極との接続には、テーパー形状をつけ応力緩和して断線を防止することが通常行われる。また、この引き回し配線14は、電極間を通り抜けるので、一定の基板の大きさでは、電極数が多くなったり、電極ピッチが狭くなったりすると、電極間を通り抜ける配線数を増やす必要から配線幅および配線の間隙を狭くする必要が生じる。従って、引き回し配線間の絶縁性確保が極めて重要になってくる。配線形成は、例えば、銅エッチングの後、ダイレクト金めっき層を形成して行うことができる。
【0142】
参照電極、作用電極、対極電極の配置について、作用電極と対極電極を離しその間に参照電極を置くことが好ましい。このように配置すると、電流値を大きくすることができ、感度向上に寄与する。例えば、
図36において、参照電極、対極電極、作用電極としてそれぞれ、R3,C3,C2を使用した場合が当該配置に相当する。
【0143】
図2は、センサー部で使用する基板を嵌合するコネクタを表面実装するためのパターンである。20はコネクタ実装端子部(接続端子)であり、22は測定器に接続される配線−部材を実装する端子部であり、24はコネクタ実装端子部20から端子部22への引き回し配線である。
図2においては、使用しないコネクタ実装端子部20は白抜き表示しており、また引き出し配線24は代表して1つのみを指し示しているが、コネクタ実装部20から端子部22へ結ぶ線は引き出し配線24である。このように、電極を増やせば、このようなコネクタを受ける基板も多層化しなければ実際には多点分析は極めて困難であることが容易に理解できる。
【0144】
図1に示すA−A線の方向に切断したときに、観測できる断面を
図4に示す。後述するが、配線は銅エッチング後、表面にダイレクト金めっき層を形成することが好ましい。ダイレクト金めっき層形成後、
図3に示すカバーレイ30で、電極部とその周辺部、およびコネクタに嵌合接続する端子部のみが露出するよう配線の表面を被覆する。カバーレイ30は、電極群のそれぞれを外部に露出させる、各電極に対応する開口32を有する。
図3において、カバーレイ30は各開口32が、開口32内で露出する電極の面積よりも大きく外側に設定されており、電極よりわずかに大きい(沿面200μm、直径では400μm大きい)。このような沿面を沿面距離あるいはクリアランスと呼ぶことがある。この相互関係は後述のカーボン含有層により電極全体を覆うためには好適である。
しかし、この場合、配線の電極へ接続される部分の一部が上記カバーレイに被覆されなくなるのでその部分も電極として作用する虞があるため、電極面積を厳密に規定するためには上記開口32の端部は上記電極の内側に位置するように形成される。
【0145】
本発明ではカバーレイは絶縁性の有機材料で構成するが、単一材料から構成する態様と、カバーレイフィルムと接着剤層とから構成する態様とが挙げられ、単一材料から構成する態様における材料としては、液晶ポリマーが好適に使用される。
【0146】
カバーレイフィルムと接着剤層とから構成する態様において、カバーレイフィルムとしては、ポリイミドフィルム、液晶ポリマー単体等を使用することができ、より具体的には、ニッカン工業製CISV1215、ジャパンゴアテックス社製STABIAX、又はBAIC−C等を使用することができる。
【0147】
接着剤層に用いられる樹脂としては、アクリル樹脂系接着剤あるいはエポキシ樹脂系接着剤、液晶ポリマー単体等が挙げられ、液晶ポリマー単体が好適に使用される。
【0148】
カバーレイの厚さとしては、コネクタの厚さと整合させることが好ましく、例えば、コネクタに嵌合させる基材厚さが200μm±30μmの場合、カバーレイの厚さ100〜200μmであることが好ましい。さらに、当該基材厚さが300μm±30μmの場合、カバーレイの厚さは150μm〜300μmであることが望ましい。
【0149】
このように、カバーレイによって被覆する理由は、引き回し配線の保護だけでなく、分析時には液に浸漬されるので、配線間の電流リークを防ぐ意味も当然としてある。
図5に、絶縁基板40の電極等が形成された面をカバーレイ30で被覆した断面を示す。このときには、アイロンのようなもので比較的荷重をかけないで接着してもよい。しかし、引き出し配線14は、表面から凸形状に露出しているため、カバーレイ30で配線間隙を埋める必要から、所定の温度、圧力を所定時間、印加することが望ましい。ところが、上記のような製造工程では、カバーレイの接着剤層が滲みだしてくる。その様子を
図5の開口の左側を拡大し、
図6に示す。このような滲みだしは、電極表面を汚染する可能性があり、歩留まり低下につながることがある。
【0150】
また、
図4に示すように、接着剤44と補強基材42とが貼り付けられており、このときに、それらの界面に微小にエアが残っているとき、カバーレイ30の貼り付け時にそのエアが膨らみ、補強基材42が剥離することがあり、それも歩留まり低下の原因となる。接着剤の滲み出しによる電極表面汚染を防ぐには、クリアランスを大きくすることが好ましい。望ましくは、
図7に示すように、配線が絶縁基板40内に転写された場合であると、配線間隙への埋設に必要な圧力や温度を、平坦表面への接着条件よりも増加させることが不要であり、滲み出し量を大幅に低減できる。あるいは、接着剤30Bのついたカバーレイフィルム30Aを事前に乾燥した後に接着することで流れ量のより少ない被覆条件も適用可能となる。
【0151】
また、補強基材42の剥離を防ぐには、配線を絶縁基板40内に転写することが好ましい。このようにすると、カバーレイ30による配線間隙の埋設に必要な圧力や温度が不要であるため、剥離の原因となるエアの膨らみを防止することができる。
【0152】
また、その他、接着剤の滲み出しを防ぐには、カバーレイ30の接着剤層30Bを選択的に開口縁部から所定量を除去後退(エッチバック)させることが好ましい。別言すると、接着剤層30Bの開口縁部がカバーレイフィルム30Aの開口縁部よりも外側に位置していることが好ましい。このときの様子を
図8に示す。あるいは、カバーレイの開口が、上面側から下面側に向けて広がるように形成されていてもよい。また、カバーレイを単一材料から構成する場合、上面側における開口面積が下面側における開口面積よりも小さく形成することが好ましい。
エッチバックの処理としては、以下の手順で実施することができる。
【0153】
例えば、接着剤層の層厚が15μmの場合において、絶縁性を充分に確保するためには、接着剤層の開口縁部から少なくとも15μmの幅をエッチバックする必要がある。この構造に対応した最適処理方法の一例を以下に示す。
【0154】
(1)基板の水洗、(2)後続の処理の前に滲みだし量にあわせて、DMFに浸漬(処理5分)、(3)過マンガン酸カリウム30〜60g/L、水酸化ナトリウム20〜40g/Lの溶液に室温〜90℃望ましくは60℃で、5分から60分、望ましくは20分、(4)水洗、(5)(3)の処理がアルカリ性なので、0.3N(8ml/L)硫酸に5分間浸漬し、中和する。(6)ドラックアウト(水洗)、(7)流水洗、(8)100℃で5分間乾燥。
【0155】
以上のように、接着剤層は薬品で除去後退させてもよいし、ルータ加工で事前に接着部面を座刳ることをしてもよい。さらに、薬品による除去後退をしない機械的な方法として好ましい方法としては、2枚のカバーレイを用意し、外側に配置するカバーレイの開口径に対して下側のカバーレイの開口を広くすることが極めて有効である。
また、カバーレイをカバーフィルムと接着剤層とから構成する場合、カバーフィルムとしてはジャパンゴアテックス社製液晶ポリマーフィルムBIAC−Cが、接着剤層としては流れ性が少ない日立化成工業製KS−7003、KS−6600−7Fが極めて有効である。
【0156】
一方、本発明者らは鋭意の検討の結果、以上の構造において、カバーレイを形成した基板表面に、カーボン含有層を形成すると、複数ある開口電極部間の絶縁性が確保できることを見出した。すなわち、エッチバックされた部分で、カバーレイ表面に形成されたカーボン含有層と、電極表面に形成された電極表面層とを絶縁するためである。
【0157】
カーボン含有層を形成する方法については、蒸着が好ましい。蒸着については、100℃以下での製膜が可能な該イオンクラスタービームを用いたタフカーボンとよばれるカーボン蒸着法(特許第3660866号参照)が特に好ましい。カーボン含有層の層厚は、厚ければ厚いほどよいが、コストなどとの兼ね合いから、0.1〜1μmが好ましく、0.3μm以上がより好ましい。カーボン含有層の層厚が0.1μm以上であると、電気化学的にも、配線を形成する下地(銅、金など)の影響が極めて少なく、しかも、参照電極として安定であり、参照電極の小型化に最適である。
さらに、効率生産のためには、インクジェット法による印刷ペーストの塗布が好ましい。印刷ペーストとしては、特開2006−147202号公報、特開2007−165708号公報、特開2007−165709号公報に記載された技術およびペーストが適用できる。具体的には、日立化成工業製のカーボンペーストを好適に使用することができる。また、その印刷方法として、シリンジを用いた塗布方法も適用することができる。硬化温度は、160℃から210℃までで、基材の耐熱性に合わせて適宜設定可能である。
【0158】
一方、交互積層法により浸漬する方法や、カーボンペーストで印刷する方法では、カーボン含有層がエッチバック構造部に形成されてしまう。このため、積水化学工業(株)製などの大気プラズマ装置にて、あるいは、プラズマ処理装置にて、酸素およびまたはアルゴン、および酸素・アルゴン混合のプラズマ処理にて、表面をアブレーションすることにより親水化してからカーボン含有層を形成すると、エッチバック部でカーボン含有層の形成がなく、カバーレイ表面に形成されたカーボン含有層と、電極表面に形成された電極表面層との絶縁性が確保される。このとき、表面のアブレーションの前に、疎水処理をすることが好ましい。疎水処理として、例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)や含フッ素コート剤を用いることができる。
【0159】
以上のようにして、カーボン含有層50が被覆された状態を
図9に示す。
図9においては、カーボン含有層50はカバーレイ30の表面には全面形成されており、開口内においては、電極C5の表面と絶縁基板40の表面とに形成されている。なお、
図9に示すように、カーボン含有層50は、カバーレイ30の開口と、電極C5の縁部との間のクリアランスがある場合には、絶縁基板40の表面に形成されるが、クリアランスがない場合には絶縁基板40の表面には形成されない。つまり、カーボン含有層50は、カバーレイ30の開口内においては、少なくとも電極表面には形成される。
【0160】
一方、前記第一電極ないし第二電極ないし第三電極の少なくとも1つが、具体的には、前記作用電極及び/又は対極電極が、その最表面の少なくとも一部に金が被覆されていることが好ましい。これは以下の理由による。すなわち、エッチバックしたときに電極部につながる引き回し配線のテーパー部あるいは引き回し配線が露出する部分が形成される。すると、カバーレイを被覆した後、金めっきをして基板を作製するような場合には、銅配線が露出することになる。これは、分析中に銅イオンの変動を惹起する阻害要因となる可能性があるだけでなく、分析中に断線の可能性もあるため、カバーレイを被覆する前に金めっきをすることが好ましい。金めっきとしては、ダイレクト金めっきが好ましい。さらに好ましくは、ニッケル・金めっき、さらにはニッケル・パラジウム・金めっきである。その理由として、金および銅の相互拡散による合金化、表面電極上での酸化膜形成を抑制でき、金電極の表面をより安定な純金に維持できるからである。本発明に基づけば、銅配線形成後、カバーレイ被覆前の銅パターンに、もしくはカバーレイ被覆後の露出した電極部の銅パターンに、直接カーボン被覆してもよい。本発明では、引き出し配線が電極面と同一面にある場合も考慮して、銅配線上にめっきした金表面にカーボン含有層を設け、その上に金蒸着で純金電極を設けることが可能である。しかし、この場合でもカーボン含有層で被覆されない金めっき部分の露出は、分析の阻害要因になる可能性がある。そこで、
図10に示すように、電極18のみが表面に露出し、少なくとも引き回し配線14が、絶縁基板40の内部に形成されることが好ましい。また、一旦、表面から内部層に引き回し配線14を形成し、途中で、その引き回し配線14を表面層に引き回しする場合には、その表面配線は、電極とともに絶縁基板40内に転写された構造がクリアランス部での接着剤層30Bの滲みだし抑制には効果的であり、さらに、引き回し配線間の電流リーク抑制にも効果的であり、
図11に示すような断面構造が好ましい。さらに好ましくは、
図12に示すように、埋め込み接続用導体15の表面が直接電極となっていることが、電極の微小化や、省工程にも有利でありさらに好ましい。なお、埋め込み接続用導体の表面が直接測定用電極(作用電極、参照電極、又は対極電極)の他、コネクタ接続部であってもよい。測定用電極群とコネクタ接続部は必ずしも同一平面である必要はなく、表裏に位置していた方が、蒸着の際、マスク設計の負担を軽減でき好ましい。このような構造のうちで、特に、配線や電極が埋設された構造で、配線層を多層にするには、再表2003/056889号公報に記載の発明をはじめとする関連の発明に従って製造可能である。また、広く一般的に知られるレーザー穴あけやフィルド銅めっきを用いるビルドアップ工法を適用することも可能である。
以上、最表面に金が被覆され、その下地層としてカーボン含有層を有する構成を示したが、最表面に位置する層の下地層がニッケル層、パラジウム層であっても上記内容と同様のことが言える。
【0161】
多層配線の例を、
図13および
図14に示す。少なくとも最表面にある測定用電極の他、コネクタ接続部に、埋め込み接続用導体15の表面が配置される構成としては、
図13のように接続用基板の研磨により露出した埋め込み接続用導体15の表面を配置してなるものが可能である。なお、
図13において、埋め込み接続用導体15と電極18との界面(埋め込み接続用導体15が上側で、電極18が下側の場合)は銅/ニッケル/銅であり、埋め込み接続用導体15の最表面はダイレクト金であり、電極18と埋め込み接続用導体15との界面(電極18が上側で、埋め込み接続用導体15が下側の場合)はダイレクト金/ダイレクト金接合である。
【0162】
一方、転写配線が測定用電極の他、コネクタ接続部に配置されるようにするには、
図14のように接続用基板の接続用導体15の表面を向かい合わせにする構成が可能である。なお、
図13および
図14においては、
図4〜
図12において示した構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0163】
図13および
図14におけるカバーレイ30の被覆は、図に示す接着剤層30B付のカバーレイフィルム30A(ポリイミド)を用いてもよいが、絶縁基板をすべて液晶ポリマーとし、カバーレイも同じく液晶ポリマーとし、これをルータ装置を用いて座刳って除去後退部分を事前に作製しておいてから、一括積層の後に、例えば、250℃から300℃の間の条件で5分、真空プレスで貼り付けることが好ましい。すなわち絶縁基板として、すべて液晶ポリマーを用いた基板が作製できる。あるいは、2枚のカバーレイを用意し、外側に配置するカバーレイの開口径に対して下側のカバーレイの開口を広くすることが有効である。このようにして作製した後退構造や、カーボン含有層形成を適用した構造は、
図8、
図9に示した構造と本質的に同等である。カバーレイの準備後、外側のカバーレイ、下側のカバーレイをそれぞれ複数枚一括でドリル穴明けで開口することが可能であるため、薬品処理に比較して生産性は飛躍的に向上する。このように、カバーレイに後退構造を有し、カーボン含有層が、少なくとも電極上に形成された基板は、これまでの実装基板でも用いることが可能である。
【0164】
(単分子膜)
前記作用電極は、センサーの感度や選択性の向上、および電極が剥き出しの場合に比べて表面の塗れ性や耐久性の改善の向上という観点から、その最表面の少なくとも一部に単分子膜が形成されていることが好ましい。
【0165】
前記単分子膜としては、その表面に、塩素、臭素、硫黄、窒素、および酸素からなる群より選択される少なくとも1種を含有する置換基を有する有機分子膜であることが好ましい。具体的には、金上に形成されたオレフィン、カルボン酸、アミン、アミド、ピロール類置換基を有する単分子膜や、炭素上に共有結合で前述の置換基を有する有機分子が接合された単分子膜が挙げられ、中でも、オレフィン、ピロール類、置換基を有する単分子膜が好ましい。
【0166】
単分子膜を形成するには、金とチオール若しくはジスルフィドによる金−硫黄共有結合形成反応を用いる方法と、炭素上に臭素、塩素のハロゲンを導入した表面に硫黄、酸素などのカルコゲン、又は窒素や炭素を共有結合させる方法とがある。これらは、浸漬による溶液反応で特に金とは自己組織化反応で形成される。
【0167】
<センサーシステム>
次いで、本発明のセンサーシステムについて説明する。本発明のセンサーシステムは、既述の本発明のセンサーと、前記センサーの電極のうち少なくとも2つの電極間の電圧・電流特性を測定する測定器、別言すると、前記センサーからの分析情報を定量(分析)する測定器と、必要に応じて、前記センサーと前記測定器とを電気的に接続するコネクタおよび配線用部材と、被分析液体を中和、難溶化、又はフィルタリングの処理を施す前処理手段と、該前処理を行うための被分析液体容器とを備えることを特徴とする。
【0168】
本発明のセンサーシステムにおける測定器としては、サイクリックボルタンメトリー用の測定器を使用することができる。また、コネクタ、配線用部材、および被分析液体容器は、特に制限はなく、当該分野において一般的に使用されているものを用いることができる。前処理手段については後述する。
【0169】
<携帯型センサーシステム>
一方、本発明の携帯型センサーシステムは、既述の本発明のセンサーと、該センサーの電極のうち少なくとも2つの電極間の電圧・電流特性を測定する測定器と、少なくとも前記センサー及び前記測定器を収納する携帯容器とを少なくとも備えることを特徴とする。
なお、本発明の携帯型センサーシステムは、前記センサーと前記測定器とを電気的に接続するコネクタおよび配線を前記携帯容器に収納して携帯に供することで更に利便性を向上させることができる。
【0170】
図41は、本発明の携帯型センサーシステムの一例を示す斜視図である。
図41に示す携帯型センサーシステム100は、携帯容器として、持ち運び可能なトランクケース102を用いた例であり、トランクケース102は、本体、及び該本体とヒンジを介して結合し開閉可能な蓋部からなり、
図41はトランクケース102を開いた状態を示している。トランクケース102の本体には、測定器の指令シグナル、データ処理を行うノート型パソコン104と、マウス106と、ACアダプター108と、その他ケーブル類などが収納されている。また、このノート型パソコンの下には、測定器が収納されている。また、蓋部の内側には小物収納用ポケット110が設けられており、小物収納用ポケット110にはセンサー基板と、前記測定器の電気化学測定用コントローラ(ソフトウエアバックアップであって、ノートパソコンにはインストール済みとすることができる)、コネクタおよび配線、その他測定に必要な機材(小物:例えば、手袋、保護めがね)、分析に使用する添加剤(例えば、硝酸銀溶液)などが収納される。なお、トランクケース102は、蓋部を閉じる際に、小物類を収納した小物収納用ポケット110がノート型パソコン104に当接しないように設計されている。また、ノートパソコンの下部には、測定器が収納される空間が設けられ、断熱材およびないし衝撃吸収材を介し、運搬中の振動が吸収されるようになっている。また、測定時の放熱も考慮されている。
携帯型センサーシステム100を測定現場まで持ち運び、測定時においては、トランクケース102を開き、内側の小物収納用ポケット110に収納されたセンサー基板と、測定器、該測定器の電気化学測定用コントローラ、コネクタおよび配線などを取り出し、ノート型パソコン104と、測定器と、センサー基板とをコネクタおよび配線を介して接続する。ノート型パソコン104は本体から取り出して使用することも、本体に収納したままの状態で使用することもできる。また、家庭用電源を確保できない場所においてはACアダプタ108は使用できないため、ノート型パソコン104は内蔵バッテリにより稼働し、また、測定器などへの電源供給は前記内蔵バッテリを用いることができる。このとき、測定器とノート型パソコン104との間において、ソフトウエアからの指示やデータの授受はUSBインターフェースを介して行うが、このUSBインターフェースから電源供給される。
すなわち、携帯型センサーシステム100は、測定に必要なものをすべてトランクケース102に収納し、またこのトランクケース102は蓋部を閉状態とすれば自由に持ち運び可能であり、所望の場所に持ち運びすることで、当該場所で自由に測定することができる。なお、
図41では、収納容器としてトランクケースを用いた例を示したが、本発明はそれに限定されず、上記各機材を収納でき、持ち運び可能なものであればよい。既述の本発明のセンサーシステムは、標準的なシステム構成では総重量8Kg程度となるが、本発明の携帯型センサーシステムにおいては、トランクケース、ノートパソコン、測定器を更に大幅に小型化できるので、相当な軽量化(例えば2Kg以下)を容易に実現できる。
【0171】
本発明の携帯型センサーシステムは、既述の本発明のセンサーシステムを携帯可能とした点において異なり、本発明のセンサーシステムにおいて説明した測定器などの説明、あるいは本発明のセンサーシステムを用いて可能な分析方法の説明は、そのまま本発明の携帯型センサーシステムの説明として妥当する。従って、本発明の携帯型センサーシステムは、本発明のセンサーシステムで可能な測定、分析において、その場で観察することが望ましいデータを取得することができる。
【0172】
(前処理手段)
以下、一例として、一価銅化学種の定量のための前処理手段について説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内での変更および他の態様は、全て本発明に含まれる。
【0173】
一価銅化学種の定量を行うにあたり、その混合液をさまざまな手法で前処理を行うことは、重要な技術である。
【0174】
化学的な前処理として、
図15および
図16に示す2種類の硫酸銅(CuSO
4)の難溶化を案出した。すなわち、1つは、
図15に示す通り、水酸化ナトリウムによる中和処理の後、硫化ナトリウムによる硫化銅の難溶化により一価銅イオンを抽出する方法、他方は
図16に示す通り、過剰な水酸化ナトリウムによる水酸化銅の難溶化である。得られた固体は綿もしくは適切なポーラス径フィルターでフィルタリングし、そのフィルタリング液を後述する各ステップで分析することにより一価銅イオンの存在量を過剰もしくは微量に混合液中に存在する分析妨害物質の影響を軽減しながら検量することができる。
【0175】
フィルタリングの形態として、
図17に示すツインピーク型キットを使用することができる。材質は、耐熱性のあるポリプロピレン樹脂を加工した。
【0176】
図17に示すツインピーク型キットは次の構成となる。被分析液体容器であるシリンダ62は、被分析液体を入れた後、中和剤、難溶化剤を入れるための容器、又は事前に中和剤、難溶化剤をカプセル化したものを載置するための容器である。ピストン68は、この被分析液体容器であるシリンダ62に入った液での反応が終了した後に押し下げて液体をフィルタ66に送るためのものであり、場合によってはカプセル化したものを破る機能を付加したものであってもよい。フィルタ66を通してフィルタリングされた液は被分析液体容器であるシリンダ64に入るがセンサー10をつけたピストン70を押し下げる。空気穴65は、このときの液の逆流を防止するための空気の排出穴である。
【0177】
また、
図17に示すツインピーク型キットにおいて、フィルタ部を割愛し独立した2本のシリンダとして単純化したものも使用可能である。
図18(A)はその形態を示す斜視図である。
図18(A)に示すキットは、温度制御槽としてのトレイ94の内底面に2本のシリンダを載置するためのポケット(凹部)が設けられており、
図18(A)ではシリンダ90、92が当該ポケットにはめ込まれた状態で載置されている。シリンダ90は、
図18(B)に示すように、内壁面には底面まで延びる切り欠き90Aが2箇所に設けられており、センサー基板10はその両縁部が2箇所の切り欠き90Aに嵌り込みガイド固定される。また、図示しないが、シリンダ92にも同様に切り欠きが設けられている。
トレイ18は、槽形状であるため液体などを満たすことができ、例えば、冷水を満たすことで、載置したシリンダを冷却することができる。従って、例えば比較的高い温度のめっき液をシリンダに汲みとった場合でも、トレイ18に満たした冷水により早期に温度経時変化が少ない温度領域まで冷却することができる。
図42は、
図18に示すキットを用い、シリンダに入れた分析液を冷水により冷却した場合と冷却しない場合における経時での分析液の温度変化をグラフで示す図である。
図42より、分析液を冷却した場合と冷却しなかった場合を比較すると、前者では、温度経時変化が少ない25℃に到達する時間が後者の半分の5分でよいことが分かる。このため、分析までの待ち時間を短縮することができる。なお、
図18においては、シリンダは2本としているがその本数は問わず、任意の本数とすることができる。また、冷却のために用いる媒体としては冷水に限られず、他の冷却媒体を用いてもよい。
なお、後記の実施例では、このキットを適宜用いている。
【0178】
<金属イオンの分析方法>
次いで、本発明の金属イオンの分析方法について説明する。本発明の金属イオンの分析方法は、既述のセンサーシステムを用い、前処理を行わずに被分析液体を直接分析する態様と、前処理を行って被分析液体の分析をする態様とがある。
後者の、前処理を行って被分析液体を分析する態様では、(1)被分析液体を、中和、フィルタリング後に比色法で分析する、(2)被分析液体を、中和、フィルタリング後に電気化学的手法もしくは表面電位測定法で分析する、(3)被分析液体を、中和、難溶化、フィルタリング後に電気化学的手法もしくは表面電位測定法で分析する、(4)被分析液体を、難溶化、フィルタリング後に電気化学的手法もしくは表面電位測定法で分析する、および(5)被分析液体を、難溶化後に電気化学的手法もしくは表面電位測定法で分析する、のうちのいずれかで分析することが好ましい。
中和、難溶化については、既述の
図15および
図16を参照して説明した通りである。
【0179】
(比色法)
以下、一例として、一価銅化学種の分析のための比色法について説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内での変更及び他の態様は、全て本発明に含まれる。
【0180】
一価銅化学種の定量を行うにあたり、分析対象混合液中の一価銅化学種の存在の有無を液の色変化により定性的に見極めることは、重要な技術である。
【0181】
図16に示す難溶化する手法に従って、
図19に示すように、一価銅イオンを0.1〜2.0mMを含んだ硫酸銅(CuSO
4)の酸性溶液を処理し、発色の違いを見る。すなわち、酸性溶液に過剰の4当量の水酸化ナトリウムを加えると、硫酸銅(CuSO
4)は水酸化第二銅(Cu(OH)
2)として溶液中から難溶化される。これを綿もしくはポーラス径約1μmのフィルタでフィルタリングし、得られた溶液に硫化ナトリウムを加える。本発明者らの検討によると、本比色法により、約1mM以上の一価銅イオンの存在を確認できる。
【0182】
<サイクリックボルタンメトリーおよび表面電位法(電気化学的手法)>
以下、一例として、一価銅化学種の定量のための電気化学的手法について説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内での変更及び他の態様は、全て本発明に含まれる。
【実施例】
【0183】
[実施例1]
図15および
図20に従って、一価銅イオン約0.1〜10mMを含んだ硫酸銅(CuSO
4)の酸性溶液を処理し、サイクリックボルタンメトリーの違いをみた。すなわち、はじめに当量の水酸化ナトリウムにより、溶液を中和し、そこに硫化ナトリウムを加えると、黒褐色の難溶化としての沈殿が生じた。それをフィルタリングして、得られる濾液にノナンジチオールからなる金(111)面上の自己組織化膜を約2分間浸した。これを引き上げ、0.1Mの過酸化カリウム溶液で1回リンスし、次に20mMの過酸化カリウム溶液中でサイクリックボルタンメトリーを測定した。この時の参照電極として銀/塩化銀電極、対極電極として厚み1mm、横約5mm×縦約10mmのプラチナ基板、作用電極として既述の処理を施した自己組織化膜面(面積約0.25m
2)からなる3電極を用いて、電圧を+300mVから−200mVに変化させた時の電流の電圧依存性に注目し分析した。その結果、
図21のように硫酸銅(CuSO
4)のみの溶液を分析した場合は有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が得られず、これに対して一価銅イオンが存在する場合、濃度に応じた約−120mVと約+200mV付近のCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が得られることが分かった。
図21は、縦軸は電気化学的電流値を横軸の作用電極電位で微分したグラフとなっている。本手法により、硫酸銅(CuSO
4)溶液中の一価銅イオン濃度を間接的に定量することができる。
【0184】
[実施例2]
次に、参照電極として電気化学に用いる銀/塩化銀電極を被分析液体に浸した。対極電極として横約10mm×縦約10mmのPtを被分析液体に浸した。作用電極としてマイカ上に厚み500nmの金を蒸着した一辺約5mm四方の正方形面を被分析液体に浸した。これらの電極をサイクリックボルタンメトリー測定用のAutoLab製ポテンシオスタットPGSTAT12に接続した。被分析液体として、窒素バブリングした酸性の溶液状態にした一価銅イオンの液を加え、過剰の硫酸が存在する0.2〜3.3mMの一価銅イオンの混合酸性溶液を準備した。各一価銅イオン濃度の溶液に対し、先の3電極を浸し、始状態+0.2Vから+2.0Vまで作用電極をスイープし、その酸化波を観察した。その結果この場合、+1.15V付近に一価銅イオンに対応するCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が観測された。一例として電流の最大値の強度を各濃度にプロットしたものが
図22である。尚、電流の最大値が観測される位置は、参照電極や作用電極の表面状態で変化するため、それらの組み合わせや使用状態により先述の+1.15Vに限定されるものではない。また、最大値の代わりに該電圧に関する該電流の積分値を用いることもできる。以下の実施例でも同様であり、本発明の技術思想の範囲内で分析方法のための電流の最大値もしくは積分値が観測される位置もしくは範囲の変更および他の分析態様の変更は、全て本発明に含まれる。
この結果から、この手法により一価銅イオンの濃度を定量できる。
【0185】
[実施例3]
次に、参照電極としてガラエポ(ガラスエポキシ)樹脂基板に厚み100nmのタフカーボンを蒸着させた一辺約5mm四方の正方形面を被分析液体に浸した。対極電極としてガラエポ樹脂基板に厚み100nmのタフカーボンを蒸着させた横約10mm×縦約5mmの長方形面を被分析液体に浸した。作用電極としてマイカ上に厚み500nmの金を蒸着した一辺約5mm四方の正方形面を被分析液体に浸した。これらの電極をサイクリックボルタンメトリー測定用のAutoLab製ポテンシオスタットPGSTAT12に接続した。被分析液体として、窒素バブリングした硫酸約0.5M存在下の硫酸銅(CuSO
4)約200mMの水溶液中に溶液状態にした酸性の一価銅イオンの液を加え、過剰の硫酸銅(CuSO
4)が存在する0.2〜1.7mMの一価銅の混合酸性溶液を準備した。各一価銅イオンの濃度の溶液に対し、先の3電極を浸し、始状態+0.2Vから+2.0Vまで作用電極をスイープし、電流の電極間電圧依存性を観察した。その結果この場合、+0.7〜0.8V付近に一価銅イオンに対応するCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が観測された。この場合、硫酸銅(CuSO
4)のみのレファレンスの液体について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値を、一価銅イオンを含む被分析液体について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値から引いて得た値を用いた。一例として
図23の実線に示すように、CVシグナルとしての電流は、ここでは作用電極の電圧を変化させてゆくと、該電流値が変化してゆき、ある電圧でその絶対値が最大値をとった。その最大値が、この
図23に示す一例の場合、分析対象である一価銅化学種のひとつである該一価銅イオンの濃度にほぼ比例した。該電極間に流れる電流の電圧に対する変化が大きく無い場合は該電圧に関する該電流の積分値で分析対象化学種の濃度の大小を知ることができた。本実施例3では、一例として
図23に示すように、過剰の硫酸銅(CuSO
4)が存在する一価銅イオンの混合酸性溶液の代わりに、
図23の点線で示すように硫酸銅(CuSO
4)のみのレファレンスの液体を用いて得た0.78V付近に観測されるCVシグナルとしての電流の最大値を、一例として
図23の実線に示すように該0.91mMの一価銅イオンの混合酸性溶液の0.77V付近に観測されるCVシグナルとしての電流の最大値から引いて得た値をCVシグナル強度として分析した。尚、最大値の変わりに該電圧に関する該電流の積分値を用いることもできた。分析対象である使用中の銅鍍金液中の鍍金阻害化学種もしくは銅鍍金使用の際生成した生成化合物もしくは一価銅化学種等から選ばれる複数の化学種の相互作用により該電極間に流れる電流の電圧に対する変化が複雑化する場合は、該電圧に関する特定の電圧範囲で該電流の積分値により分析対象化学種の濃度の大小を知ることができた。また、電流の最大値が観測される位置は、電極の表面状態で変化するため、それらの組み合わせや使用状態により限定されるものではない。また、本実施例3では、点線の0.705Vの電流値を基準値(ベースラインともいう)として用いたが、これに分析方法は限定されるものではなく、他の部分の基準値を用いてもよく、さらに
図23の点線で示される使用される前の硫酸銅(CuSO
4)のみのレファレンスの液体のCVシグナル曲線全体を平行移動し、最大値もしくは積分値の分析のための基準として用いることもできる。本実施例3以外の他の実施例でも同様であり、本発明の技術思想の範囲内で分析方法のための電流の最大値もしくは積分値が観測される位置もしくは範囲の変更および他の分析態様の変更は、全て本発明に含まれる。得られた電流の最大値を該一価銅イオンの各濃度でプロットしたものが
図24である。
【0186】
この結果は、従来のAg/AgCl参照電極、Pt対極電極を用いることなく、カーボン材料の表面を用いることで、しかも大過剰共存する硫酸および硫酸銅(CuSO
4)の影響無しに、一価銅イオン濃度を分析できることを示すものである。本実施例3以外の他の実施例における化学種に関しても同様にして分析できる。
【0187】
[実施例4]
次に、表面電位(以下OCP(Open Circuit Potential)と略す)の変化を分析する別の手法について説明する。参照電極としてAg/AgCl電極を用い、センサーとして、マイカ上に厚み200nmで蒸着した1cm×2cmの金(111)面に分子膜を形成させた。支持塩として、硫酸カリウムを用いた。
【0188】
センサーとして、金上にここではカルボン酸誘導体を吸着させたものを採用した。参照電極として比較的不活性な金属である金電極を用いた。ここで用いた電極の形状は、球体でありその直径は約1〜3mmである。硫酸カリウム0.1M水溶液中で、前記センサーをカルボン酸と親和性のよい銅イオンと作用させたところ、作用させた後のOCPが変化した(
図25)。その変化は約200mV前後と比較的大きなものであった。この実施例は、ホスト分子の型は特定のものに限定されるものではなく、基本的にセンサーに用いる分子膜は、特定のゲスト分子と相互作用を有するものであれば、表面電位型分子センサーとして使用できることを示すものである。
【0189】
[実施例5]
以下実施例により、本発明のセンサー基板を用い、鍍金液中の化学種に関する分析を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内での変更および他の態様又は実施例は、全て本発明に含まれる。
【0190】
実際の現場の銅鍍金液(含有硫酸銅0.28mol/L、硫酸2mol/L、pH<<1、その他添加剤)において、その新建浴銅鍍金液と使用中の銅鍍金液の成分の違いを本発明のセンサー基板および手法を用いて分析できる。すなわち、はじめに分析対象の鍍金液10mLへ濃度14mmol/Lの硝酸銀水溶液1mLを加えた。2分後、濁った液を孔径0.45μmのシリンジ濾過フィルタでフィルタリングし、そのろ液を直径約2.5cm、高さ約3cmの被分析液体容器へ移した。シリンジ濾過フィルタの孔径は、適宜0.45μm以外のものも使用できる。次に
図1に示した形態の絶縁有機基板(Polyimide)上に配した電極群最表面が、すべて金もしくは一部カーボン被覆された本発明の幅17mm、長さ34mmのセンサー基板をコネクタを介してポテンシオスタットに接続し、そのセンサー基板の電極群を得られた液体に浸した。この時に液面が接続端子群に接触しないようにする必要がある。メニスカス効果を考慮し、電極ないし電極群までの距離を1mm以上にすれば液面と接続端子群の接触を回避できる。さらに、液からの蒸気や振動による効果で、液面と接続端子群の接触の可能性があり、測定ノイズが発生する場合があるので、この距離を3mm以上設けることが望ましい。さらには、液面と接続端子群の間に、前記被分析物質を含む液体の液面上部からの蒸気を遮断する遮断板を設けることが望ましい。そして電気化学的に有効な始状態+0.2Vから+2.0Vまで作用電極に印加される電圧を20mV/秒の速度でスイープし、電流の電極間電圧依存性を室温で観察した。
ここで、電気化学的に有効な始状態とは、少なくとも酸化波または還元波または、その組み合わせあるいは、酸アルカリや溶剤などの薬液に浸漬する操作を測定開始前に印加することで、表面に付着した余分な有機物や酸化物等を除去し、繰り返し測定しても安定な状態で測定できる状態を意味する。
観察の結果、新建浴銅鍍金液を分析した場合のサイクリックボルタンメトリー(CV)に比べ、使用中の銅鍍金液では明らかに有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が約+0.7〜+1.0Vに存在することがわかった。この有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値は、現場の使用中の銅鍍金液のみに含まれる生成化合物に対応するものである。CV測定およびX線光電子分光測定により、本実施例で用いた現場の使用中の銅鍍金液中には約36mMの生成化合物に対応するものが含まれることがわかった。そこで先の処理を施した液中の生成化合物の濃度を変化させ対応するCVシグナル強度を分析した。実際のデータは、実施例3で述べたように、新建浴銅鍍金液について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値を、使用中の銅鍍金液について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値から引いて得た値で、この場合CVシグナル強度として電流の最大値を強度として出力した。その結果、
図26のように、2つのパラメーターが比例関係にあることが明らかとなった。以上の結果から本発明により、現場の生成化合物の濃度を分析することができる。
【0191】
尚、新建浴銅鍍金液のCVシグナルをレファレンスとして差し引かないで生成化合物が含まれる使用中の銅鍍金液のCVシグナルのみからでもおおよその生成化合物の濃度を分析することはできる。また、作用電極に印加される電圧のスイープ速度は20mV/秒に限定される必要は無く、電極面積に応じて5桁程度大きくても、また逆に2桁程度小さくても生成化合物の分析は可能である。
【0192】
[実施例6]
次に先の実施例5に加えて、本発明は、フィルタリングの操作なしでも分析対象を分析できることを本実施例において示す。まず、直径約2.5cm、高さ約3cmの被分析液体容器中で、分析対象の鍍金液10mLへ濃度14mmol/Lの硝酸銀水溶液1mLを加えた。2分たった時点で、
図1に示した形態の絶縁有機基板(Polyimide)上に配した電極群最表面が、すべて金もしくは一部カーボン被覆された本発明の幅17mm、長さ34mmのセンサー基板を、コネクタを介してポテンシオスタットに接続した状態で、そのセンサー基板の電極群を得られた液体にそのまま浸した。そして電気化学的に有効な始状態+0.2Vから+2.0Vまで作用電極に印加される電圧を20mV/秒の速度でスイープし、電流の電極間電圧依存性を室温で観察した。電気化学的に有効な始状態とする手法として、本実施例においては以下の手法を採用した。すなわち、まず、作用電極に印加される電圧のスイープ速度を200mV/秒とし、設定された電圧範囲の最小値から最大値、最大値から最小値のスイープサイクルを10往復行い、次いで5秒おいてから同様にスイープサイクルを5往復行い、その後5秒おいて、例えば電圧範囲の最小値+0.2Vを始状態とする。
観察の結果、新建浴銅鍍金液を分析した場合のCVに比べ使用中の銅鍍金液では明らかに有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が約+0.7〜+1.0Vに存在することがわかった。この有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値は、現場の使用中の銅鍍金液のみに含まれる生成化合物である。CV測定およびX線光電子分光測定により、本実施例で用いた現場の使用中の銅鍍金液中には約36mMの生成化合物が含まれることがわかった。そこで先の処理を施した液中の生成化合物の濃度を変化させ対応するCVシグナル強度を分析した。実際のデータは、実施例3で述べたように、新建浴銅鍍金液について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値を、使用中の銅鍍金液について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値から引いて得た値で、この場合CVシグナル強度として電流の最大値を強度として出力した。その結果、
図27のように、2つのパラメーターが比例関係にあることがわかった。ただし、
図26と比較して直線の傾きにある程度ばらつきがあることがわかった。その原因として銀塩の影響、温度変化の影響、センサー基板のばらつき、分析までの時間経過、空気酸化の影響などが考えられる。
尚、本発明の範囲内で、分析対象の鍍金液および硝酸銀水溶液の体積の変更、センサー基板の大きさの変更、分析方法のための電気化学的に有効な始状態の変更、電流の最大値もしくは積分値が観測される位置もしくは範囲の変更および他の分析態様の変更を行ってもよく、それらは全て本発明に含まれる。また、作用電極に印加される電圧のスイープ速度は20mV/秒に限定される必要は無く、電極面積に応じて5桁程度大きくても、また逆に2桁程度小さくても生成化合物の分析は可能である。
以上の結果から本発明により、ばらつきなど誤差の平均化や分析条件の画一化などを考慮することで、現場の銅鍍金液中に含まれる生成化合物を分析することができる。
【0193】
尚、上記の実施例5,6では分析妨害物質を難溶化するための難溶化剤(分析妨害物質と難溶性化合物を形成する化学種)として硝酸銀を用いたがこれに限定されることなく、一価水銀イオンでもタリウムイオンでもよく、適切な難溶性塩を形成するカチオン種、もしくは同機能を有する化学種、もしくはポリマー類縁体材料、もしくは活性炭類縁体材料、もしくはゼオライト類縁体材料であれば難溶化は行われる。
【0194】
[実施例7]
次に先の実施例5に加えて、本発明は、フィルタリングの操作を行わなくても、さらには形態の異なるセンサーを用いても、分析対象を分析できることを本実施例において示す。まず、直径約2.5cm、高さ約3cmの被分析液体容器中で、分析対象の鍍金液10mLへ濃度14mmol/Lの硝酸銀水溶液1mLを加えた。2分たった時点で、絶縁有機ポリマーで被覆された直径1mmの金ワイヤー(導電性の線)の先の絶縁有機ポリマーを5mmとりのぞいて得た3本を前述の液体に浸し、該とりのぞいて露出された金ワイヤーの部分をそれぞれ作用電極、対極電極、参照電極に対応させ、さらに該とりのぞいて露出された金ワイヤーの部分から離間して各金ワイヤーの絶縁有機ポリマーの他の部分を取り除いて各金ワイヤーに露出した他の部分を作成して接続端子としそれぞれ作用、対極、参照部に対応させてポテンシオスタットに接続した。尚、金ワイヤー(導電性の線)を切断し、その切断面を作用電極、対極電極、参照電極に対応させることもできた。そして電気化学的に有効な始状態 +0.2Vから+2.0Vまで作用電極に印加される電圧を20mV/秒の速度でスイープし、電流の電極間電圧依存性を室温で観察した。その結果、新建浴銅鍍金液を分析した場合のCVに比べ使用中の銅鍍金液では明らかに有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が約+0.7〜+1.0Vに存在することがわかった。この有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値は、現場の使用中の銅鍍金液のみに含まれる生成化合物である。CV測定およびX線光電子分光測定により、本実施例で用いた現場の使用中の銅鍍金液中には約36mMの生成化合物に対応するものが含まれることがわかった。そこで先の処理を施した液中の生成化合物の濃度を変化させ対応するCVシグナル強度を分析した。実際のデータは、実施例3で述べたように、新建浴銅鍍金液について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値を、使用中の銅鍍金液について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値から引いて得た値で、この場合CVシグナル強度として電流の最大値を出力した。その結果、2つのパラメーターが比例関係にあることがわかった(
図28)。この結果から本発明により、現場の銅鍍金液中に含まれる生成化合物を分析することができる。
【0195】
なお、本実施例では、絶縁有機ポリマーで被覆された金ワイヤーの先の絶縁有機ポリマーをとりのぞいた場合を示したが、金ワイヤーを切断しワイヤーの金断面(切断面)を露出させても、あるいはそれらを組み合わせて金部分を剥き出しにしてもよい。
【0196】
また、本発明で用いられる導電性の線としては、上記金線だけでなく、白金線、下記に述べる白金イリジウム線、金または白金鍍金をした銅線、炭素含有材料など表面が被分析物質を含む液体ないしは霧に不溶なもしくは該被分析物質を含む気体で浸食されない物質で覆われている線ならば使用することが出来る。
【0197】
[実施例8]
次に先の実施例5に加えて、本発明は、フィルタリングの操作を行わなくても、さらには形態の異なるセンサーを用いても分析対象を分析できることを本実施例において示す。まず、絶縁体で被覆された直径0.25mmの金ワイヤーの露出端を絶縁体でカバーし絶縁した。その先から約7mmの部分を中心に約2mm分の絶縁体を適切な方法でとりのぞき、ワイヤーの途中を金でむき出しにしたものを1本用意した。次に、絶縁体で被覆された直径0.25mmの白金/イリジウム(合金比率9/1)のワイヤーの露出端を絶縁体でカバーし絶縁した。その先から約7mmの部分を中心に約2mm分の絶縁体を適切な方法でとりのぞき、ワイヤーの途中を白金/イリジウムでむき出しにしたものを2本用意した。このように用意した各ワイヤーの途中露出した部分をそれぞれ金ワイヤーは作用電極、白金/イリジウムのワイヤーは対極電極、参照電極に対応させ、さらに各金ワイヤーの該途中露出した部分から離間して絶縁有機ポリマーの他の部分(本実施例では前記露出端と反対側)を取り除いて各金ワイヤーに露出した他の部分を作成して接続端子としそれぞれ金のワイヤーは作用部へ、白金/イリジウムのワイヤーは対極部、参照部に対応させてポテンシオスタットに接続した。次に、直径約2.5cm、高さ約3cmの被分析液体容器中で、分析対象の鍍金液10mLへ濃度14mmol/Lの硝酸銀水溶液1mLを加えた。2分たった時点で、準備した3ワイヤーの金属露出部分を液体に浸し、電気化学的に有効な始状態+0.2Vから+2.0Vまで作用電極に印加される電圧を20mV/秒の速度でスイープし、電流の電極間電圧依存性を室温で観察した。電気化学的に有効な始状態とする手法として、本実施例においては以下の手法を採用した。すなわち、まず、作用電極に印加される電圧のスイープ速度を200mV/秒とし、設定された電圧範囲の最小値から最大値、最大値から最小値のスイープサイクルを10往復行い、次いで5秒おいてから同様にスイープサイクルを5往復行い、その後5秒おいて、例えば電圧範囲の最小値+0.2Vを始状態とする。
観察の結果、新建浴銅鍍金液を分析した場合のCVに比べ、使用中の銅鍍金液では明らかに有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が約+0.7〜+1.0Vに存在することがわかった。この有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値は、現場の使用中の銅鍍金液のみに含まれる生成化合物に対応するものである。CV測定およびX線光電子分光測定により、本実施例で用いた現場の使用中の銅鍍金液中には約36mMの生成化合物が含まれることがわかった。そこで先述の処理を施した液中の生成化合物の濃度を変化させ対応するCVシグナル強度を分析した。実際のデータは、実施例3で述べたように、新建浴銅鍍金液について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値を、使用中の銅鍍金液について得た電流の最大値または電圧に関する電流の積分値から引いて得た値で、この場合、CVシグナル強度として電流の最大値を出力した。その結果、2つのパラメーターが比例関係にあることがわかった(
図29)。この結果から本発明により、現場の銅鍍金液中に含まれる生成化合物を分析することができる。
尚、本発明の範囲内で、分析対象の鍍金液および硝酸銀水溶液の体積の変更、分析方法のための電気化学的に有効な始状態の変更、電流の最大値もしくは積分値が観測される位置もしくは範囲の変更および他のセンサー態様の変更を行ってもよく、それらは全て本発明に含まれる。また、作用電極に印加される電圧のスイープ速度は20mV/秒に限定される必要は無く、電極面積に応じて5桁程度大きくても、また逆に2桁程度小さくても生成化合物の分析は可能である。
【0198】
[実施例9]
先の実施例6に加えて、本発明は、段階的に分析妨害物質を難溶化させながら分析対象を分析できる。すなわち、直径約2.5cm、高さ約3cmの被分析液体容器中で、分析対象の鍍金液10mLへ濃度14mmol/Lの硝酸銀水溶液1mLを加えた。2分たった時点で、
図1に示した形態の絶縁有機基板(Polyimide)上に配した電極群最表面が、すべて金もしくは一部カーボン被覆された本発明の幅17mm、長さ34mmのセンサー基板を、コネクタを介してポテンシオスタットに接続した状態で、そのセンサー基板の電極群を得られた液体にそのまま浸す。そして電気化学的に有効な始状態+0.2Vから+2.0Vまで作用電極に印加される電圧を20mV/秒の速度でスイープし、電流の電極間電圧依存性を室温で観察する。その結果、新建浴銅鍍金液を分析した場合のCVに比べ使用中の銅鍍金液では明らかに有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が約+0.7〜+1.0Vに存在することがわかった。この有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値は、現場の使用中の銅鍍金液のみに含まれる生成化合物に対応するものである。次に、第一段階で分析した該鍍金液に濃度2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を20mL加える。尚、水酸化ナトリウムのよるこの中和の工程は省くこともできる。次に濃度0.6mol/Lの硫化ナトリウム水溶液もしくは多硫化ナトリウム水溶液を約5.5mL加える。2分たった時点で、黒色の固体をフィルタリングし、フィルタリングした液の一部を直径約2.5cm、高さ約4cmの被分析液体容器へ移す。そこへ、絶縁有機基板(Polyimide)上に配した電極群最表面が、すべて金もしくは一部カーボン被覆された本発明の幅17mm、長さ34mmのセンサー基板を、コネクタを介してポテンシオスタットに接続した状態で、そのセンサー基板の電極群をそのろ液に浸す。そして電気化学的に有効な始状態+0.2Vから+2.0Vまで作用電極に印加される電圧を20mV/秒の速度でスイープし、電流の電極間電圧依存を室温で観察する。その結果、新建浴銅鍍金液を分析した場合のCVに比べ使用中の銅鍍金液では明らかに有意なCVシグナルとしての電流の最大値もしくは電流の積分値が第二段階の分析として、約+0.9〜+1.6Vに存在することがわかった。以上のように本発明を用いて使用中の銅鍍金液の複数の生成化合物を段階的に分析できる。尚、第二段階の分析として黒色の固体をフィルタリングしたが、フィルタリングせずに本分析を行うことも可能である。また、本分析に用いた作用電極に印加される電圧のスイープ速度は20mV/秒に限定される必要は無く、電極面積に応じて5桁程度大きくても、また逆に2桁程度小さくても生成化合物の分析は可能である。
【0199】
[実施例10]
本発明により、被分析液体である使用中の銅鍍金液の中に存在する鍍金阻害化学種もしくは銅鍍金使用の際生成した生成化合物もしくは一価銅化学種等から選ばれる複数の化学種の相互作用により該電極間に流れる電流の電圧に対する変化が複雑化する場合は、該電圧に関する特定の電圧範囲で該電流の積分値により分析対象化学種の濃度の大小を知ることができる。新建浴銅鍍金液について得た該電圧範囲における電流の積分値を、使用中の銅鍍金液について得た該電圧範囲における電流の積分値から引いて得た値を用いて現場の銅鍍金液中に含まれる鍍金阻害化学種または生成化合物を分析することができる。まず直径約2.5cm、高さ約3cmの2つの被分析液体容器中に入れた分析対象の新建浴銅鍍金液および使用中の銅鍍金液10mLそれぞれへ順番に、濃度14mmol/Lの硝酸銀水溶液を同量の1mLずつ加えた。2分たった時点で、絶縁有機ポリマーで被覆された直径1mmの金ワイヤー(導電性の線)の先の絶縁有機ポリマーを5mmとりのぞいて得た3本をまず新建浴銅鍍金液に浸し、該とりのぞいて露出された金ワイヤーの部分をそれぞれ作用電極、対極電極、参照電極に対応させ、さらに該とりのぞいて露出された金やイヤーの部分から離間して各金ワイヤーの絶縁有機ポリマーの他の部分を取り除いて各金ワイヤーに露出した他の部分を作成し接続端子としそれぞれ作用、対極、参照部に対応させてポテンシオスタットに接続した。尚、金ワイヤー(導電性の線)を切断し、その切断面を作用電極、対極電極、参照電極に対応させることもできた。そして電気化学的に有効な始状態 +0.2Vから+2.0Vまで作用電極に印加される電圧を20mV/秒の速度でスイープし、電流の電極間電圧依存性を室温で観察した。同様な測定を使用中の銅鍍金液に対しても行った。その結果、新建浴銅鍍金液を分析した場合のCVに比べ使用中の銅鍍金液では明らかに有意なCVシグナルとしての電流の積分値が、約+0.7〜+0.76Vに約1.5×10
-6 VAの値で存在することがわかった。この有意なCVシグナルとしての電流の積分値は、使用中の銅鍍金液のみに含まれる鍍金阻害化学種または生成化合物である。この結果から本発明により、現場の銅鍍金液中に含まれる鍍金阻害化学種または生成化合物に対応するものを分析することができる。尚、印加される電圧のスイープ速度は20mV/秒に限定される必要は無く、電極面積に応じて5桁程度大きくても、また逆に2桁程度小さくても分析は可能である。また、本発明の技術思想の範囲内で分析方法のための積分値が観測される位置もしくは範囲の変更および他の分析態様の変更は、全て本発明に含まれる。
【0200】
[実施例11]
本発明手法は、温度の影響をうけるが、まず、その事実を以下の分析により確認した。すなわち、ある使用中の銅鍍金液を用いて本発明の同一のセンサー基板により、一価銅化学種のCVを、液の温度を変化させながら分析した。まず、本実施例で約+0.82Vに観察された一価銅化学種のCVシグナル強度は電流の最大値として、室温摂氏25度では約10μAであったのに対し、摂氏40度では約17.5μA、摂氏80度では約55μAと温度上昇に伴い増加することがわかった。また、作用電極の電圧+0.5Vにおける電気化学的な電流のベースラインが、室温摂氏25度では約12μAであったのに対し、摂氏40度では約19μA、摂氏80度では約110μAと電気化学的電流のベースラインレベルが温度上昇に伴い上昇することがわかった。以上より、本発明手法は、分析対象の鍍金液の温度の影響をうけることは明白であり、温度制御槽により被分析液体を充分室温へもどす、被分析液体とレファレンス液とを一つの水浴槽に位置した温度制御槽で同じ温度とする、前処理用のキットもしくは一体型キットにより一定の温度にする、温度の補正を考慮するなどの手法が重要である。一例として
図18に示すように、分析のための2つの被分析液体容器90、92を、温度一定にするための常温の水をはった温度制御槽94に浸漬した状態にし、2つの被分析液体容器90、92内の例えば新建浴銅鍍金液と使用中の銅鍍金液の温度差を摂氏10度以内にする。被分析液体容器の深さは状況に応じて自由に変えることができる。また、温度の補正を考慮するため温度変化率を用いることもできる。本発明の温度変化率は、理論的には公知のアレニウスの式により、ある温度T
1から別の温度T
2への反応速度の指数関数の変化率で定義でき(exp(-E/RT
2)/exp(-E/RT
1)、Rは定数、Eは反応の活性化エネルギーで反応状況により変化する)、分析の温度の差をこれを用いて補正することができる。しかしながら、実際の表面反応では、単なる一次反応速度論では記述できない部分もあり、反応次元の相違もしくは反応形態の相違による別形態の式もしくは補正項を付与、もしくは実験による温度変化率の実計測により、本発明の温度変化率を得ることができ、これにより本発明の分析を行うことができる。実計測による具体的な温度変化率を用いた温度の補正は次の手順で行われる。先ずあらかじめレファレンスとなる液の電極間電圧変化に対する電極間電流最大値もしくは電流の積分値の温度変化を測定して単位温度に対する該電流最大値もしくは電流の積分値の変化分(温度変化率)を求めておく。この測定は一度やっておけば、分析対象の混合液が変わるたびに繰り返す必要は無い。次に分析対象の混合液(この場合は分析対象の鍍金液)の温度とレファレンスとなる液(この場合は新建浴銅鍍金液)の温度の差にその温度変化率を掛けた値をレファレンスとなる液の温度で測定したレファレンスとなる液の電極間電圧変化に対する電極間電流最大値もしくは電流の積分値に加える。この値を被分析液体の電極間電圧変化に対する電極間電流最大値もしくは電流の積分値から引いた値を分析対象の電極間電圧変化に対する電極間最大電流値もしくは電流の積分値として用いる。
【0201】
[実施例12]
本発明は、基板の浸漬の状態(深さ)によらず安定した分析を行えるという効果を奏するが、その効果を以下の分析により確認した。分析対象として一価銅化学種を含む同一の使用中の銅鍍金液を用いた。センサーとしては、
図30に模式的に示すように、ポリイミド(PI)基板上の配線にカバーレイを設けた本発明のセンサー(
図30(A))と、ガラス上に幅3mmの金薄膜を蒸着により形成した従来のセンサー(
図30(B))とを用い、各センサーを銅鍍金液に浸漬させ、浸漬の深さ(D)を変えて分析を行った。
図31に示すグラフは、本発明のセンサーを用いた場合の分析結果(グラフ○)と、従来のセンサーを用いた場合の分析結果(グラフ□)とを示す。
図31のグラフより、本発明のセンサーはその浸漬の深さによらず安定した分析を行えるが、一方、従来のセンサーはその浸漬の深さによって、大きく分析結果が変わることが分かる。尚、本実施例では、配線を絶縁する有機材料から構成される絶縁部分としてカバーレイを用いたが、本発明は、配線に絶縁部分を設ける構成一般における絶縁部分であれば適用することができ、絶縁部分はカバーレイに限定されることない。また、
図30中のPIはポリイミド、glassはガラス、Wは作用電極、Rは参照電極、Cは対極電極を表す。
【0202】
[実施例13]
本発明は、基板の浸漬の状態(傾き)によらず安定した分析を行えるという効果を奏するが、その効果を以下の分析により確認した。分析対象として一価銅化学種を含む同一の使用中の銅鍍金液を用いた。センサーとしては、
図32に模式的に示すように、ポリイミド(PI)基板上の配線にカバーレイを設けた本発明のセンサー(
図32(A))と、ガラス上に幅3mmの金線を蒸着により配線した従来のセンサー(
図32(B))とを用い、各センサーを銅鍍金液に浸漬させ、
図32に示すように浸漬の角度(θ)を変えて分析を行った。
図33に示すグラフは、本発明のセンサーを用いた場合の分析結果(グラフ○)と、従来のセンサーを用いた場合の分析結果(グラフ□)とを示す。
図33のグラフより、本発明のセンサーは浸漬した角度によらず安定した分析を行えるが、一方、ガラス上に幅3mmの金線を蒸着により配線したセンサーは浸漬した角度によって、大きく分析結果が変わることが分かる。尚、
図32中のPIはポリイミド、glassはガラス、Wは作用電極、Rは参照電極、Cは対極電極を表す。
【0203】
[実施例14]
既述の通り、カーボン含有層で被覆されない金めっき部分の露出は、分析の阻害要因になる可能性がある。その例として、実施例13に記載されたように、浸漬した角度により電極面積が変化する場合と同様に、センサー基板間では、被覆されない金めっき部分が電極面積のばらつき原因となる。カバーレイの後退構造で、電極からの引き出し線を、基板の平面方向ではなく、基板厚さ方向すなわち垂直方向に引き出す構造をとることが望ましいが、本発明では、平面方向に引き出した方法でも、カーボン含有層の被覆により、基板間での再現性確保が可能であり、同一基板での繰り返し測定を可能とする耐久性を実現できるが、本実施例ではその効果について以下のようにして確認した。
【0204】
図34は、9電極で設計したセンサー基板の平面図である。このセンサー基板は、対極電極(C)、参照電極(R)、作用電極(W)を一組とし、3組を配置してなる。具体的には、センサー基板90は、縁部に9本の測定用端子92が配設され、この測定用端子92には、それぞれ配線を介して測定用電極94A、94B、94C、96A、96B、96C、98A、98B、98Cが接続されており、いずれか3組を組み合わせて対極電極(C)、参照電極(R)、作用電極(W)として用いる。コネクターは、1mmピッチコネクター、ヒロセのFH12-9S-1SH(製品番号)を用い、これに合わせた基板外形幅と、端子配置を設計した。基板は、銅箔つきポリイミト゛フィルムを用いた。この時、コネクターと嵌合させる端子部の基板厚さは、端子厚も含め、0.3±0.05mmである。以上のコネクタの寸法に基づき、
図35に示す断面構造のセンサー基板を設計し作製した。すなわち、作製したセンサー基板は、
図35に示す通り、補強板ポリイミド120が熱硬化接着層122を介して接着されたベースポリイミド124上に、銅箔126が位置し、その上に接着層128によりカバーレイフィルム(ポリイミドフィルム)130が貼付された構造である。なお、補強板ポリイミド120の厚さは180μm、熱硬化接着層122の厚さは50μm、ベースポリイミド124の厚さは25μm、銅箔126の厚さは35μm、接着層128の厚さは25μm、カバーレイフィルム(ポリイミドフィルム)130の厚さは25μmである。
カバーレイは、ポリイミドフィルムと接着剤が一体化したものを用い、接着剤は事前に加熱し事前硬化を進め、極力流れ性を制御したり、クリアランスを広げたりして、電極への接着剤汚染を防ぐとともに、接着剤の流れによる面積の変化がないように配慮した。なお、カバーレイは、
図36のハッチングで示す領域に貼付されている。
【0205】
また、電極に対する開口の位置ずれが面内で大きくばらつき、したがって、開口部での引き出し配線部のばらつきが大きくなることが懸念される。そこで、本実施例では、カバーレイを貼付けた後、カーボンペースト塗布の前処理として、酸素プラズマ(300W、60秒)照射やその他に、UVおよびオゾン照射(酸素導入量0.1mL/分)50分、もしくは、メタノール浸漬3分(US印加)および超純水3分浸漬(US 印加)により前処理をした。これらの前処理を適宜選択実施することにより、インクジェット法でカーボンペーストを塗布・形成をする場合の密着安定性を確保した。
【0206】
次いで、作用電極および参照電極に対し、日立化成工業製カーボンペーストをインクジェット法により塗布・形成しそれぞれ2.9mm角のサイズで各電極(電極の開口部は、Φ2.5)を被覆した。また、同様に、3.9mm角のサイズで対極(電極の開口部Φ3.5)にもカーボンペーストを被覆した。カーボンペーストの乾燥は、温度調整機能を有するヒーター上で、160℃、1時間の条件で乾燥した。この後、コネクターと嵌合させる端子部と参照電極をマスクし、作用電極部と対極のみを露出させ、2000Åの金蒸着を行った。なお、蒸着速度は、1.8Å/秒が好ましく、制御ができない場合は、0.1〜10Å/秒の範囲とすることが好ましい。以上のようにして作製した基板により、同一基板での耐久性と基板間での再現性が確保することができる。
【0207】
次に、基板間の再現性の確保について検証するため以下の操作を行った。上述の手法により6枚の基板を作製し、各基板によりフィルド銅めっきの使用液を測定したところ、一価銅に対する電極反応は、
図37に示すように、ベース電流が安定し、また、一価銅ピークの電位位置のばらつきが解消できることが分かった。ここで、
図37における6本のグラフはそれぞれ作製した6枚の基板についての測定結果を示している。
しかしながら、基板間での電流値のばらつきは平均値から±20%程度のばらつきがある。この傾向は、新建浴にもみられた。すなわち一価銅化学種のピークが金の酸化反応と重複しているためと考えられる。なお、このときの、参照電極、対極電極、作用電極は、それぞれ
図36のR3,C3,W3を使用した。
【0208】
次に、上記6枚の基板それぞれの作用電極と対極にもカーボンペーストを塗布し、金を蒸着した。このときの、参照電極、対極電極、作用電極は、それぞれ、
図36のR3,C3,C2を使用した。つまり、参照電極を、対極電極と作用電極との間に配置されるようにした。そして、新建浴液について測定した結果、電流値ばらつきが
図38のグラフに示すように解消することが確認できた。ここで、
図38における6本のグラフは、
図37と同様に、それぞれ作製した6枚の基板についての測定結果を示している。作用電極を大きくするとともに、参照電極を作用電極と対極間に配置することで、検出電流を上げる効果があることが分かった。また、ばらつきは、±7%以下に抑制できることが分かった。
【0209】
以上の本発明に係る構造をとらないで、すべての電極を銅上へのダイレクト金めっきとした場合には、フィルド銅めっきの使用液を測定したところ、一価銅に対する電極反応は、
図39に示すようになった。ベース電流や、一価銅ピークの電位位置や電流値がばらつくことが分かる。
【0210】
上述のようなベース電流の不安定性や、一価銅ピークの電位位置、電流値のばらつきは、FIBによる電極部の断面観察、電子顕微鏡やEDX分析によると、表層での金銅合金化および表面の酸化物形成が原因であると考えられる。さらに詳細の検討の結果、カーボン含有層上には、金だけでなく、クロムやニッケルを下地層として形成することも可能であり、金銅を合金化して形成することも可能であった。また、チタン、あるいは酸化チタンを密着よく、蒸着することも可能であった。このときの金銅合金の重量比率は金9.25対銅1であった。
【0211】
さらには、カーボン含有層をエッチングで形成した電極を被覆することで、本来、エッチング時に形成される電極の表面粗さも改善できることが分かった。塗布乾燥を3回以上繰り返すことにより、1500〜2000Åあった平均中心粗さを50Å以下まで低減可能であり、マイカの壁界面に匹敵するアトミックフラットレベルまで制御できることが分かった。これにより、金蒸着後に、単分子による自己組織化膜形成性を向上させることも可能である。
【0212】
以上は、ポリイミドフィルムを用いた例であるが、他の例として、
図34に示すパターンにおいて基材に液晶ポリマーを用いた例を以下に示す。
液晶ポリマー(ジャパンゴアテックス社製)BIAC-Cを基材として用意し、300μm厚さのものに直接銅箔12μmを貼り付け、その後パターンエッチングした。カバーレイは、125μm厚さのものに、接着剤層として日立化成工業製KS−7003(25μm)を予め、110℃でプレス接着し、穴あけを電極径に対して、+1.0mm及び+0.5mm(片側それぞれ500μm、250μm)のクリアランスを設けたものを用意して、前者を下側に、後者を上側に、ピンラミネーションで位置合わせして仮接着をして、160℃で2MPaで真空プレスをした。
【0213】
以上の工程により、カバーレイに後退構造を形成し、同様に検討を実施したが、インクジェット法では、後退構造に存在する引き出し配線が被覆されないため、金銅合金の不安定な酸化反応が生じることが確かめられた。すなわち、引き出し配線を電極直下に引き出すことの重要性を明らかにすることができた。ただし、この場合でも、酸素プラズマを出力300Wで1分処理または、前記UVおよびオゾン処理を50分することで、濡れ性を改善し、さらには、マイクロピペットで所定量(φ1.5電極には、0.004μL)を塗布することで、生産効率は落ちるものの、後退構造下での引き出し配線を被覆することが可能となった。また、このような酸素プラズマ処理や、UVおよびオゾン処理による基材の濡れ性改善は、被検査液との濡れ性をも改善することが明らかになった。当初、液晶ポリマーを用いた場合、電圧を掃引しても、電流信号の出力がみられない不思議な現象が生じた。被検査液に浸漬前に純水をかけて表面をぬらすと信号がでたことから、表面エネルギーが低く撥水性が高いからであると考えた。前記処理後は、直接被検査液に浸漬しても、電流信号の出力が測定できるようになった。以上のように、後退構造下の引き出し配線を被覆後、インクジェットにより、カバーレイ表面とは絶縁をとって電極上と、カバーレイ上に、カーボン含有層を形成することが可能となった。
【0214】
本発明により、
図40に示す、分析シーケンスを構築することができた。本発明は、一価銅だけではなく、部分的に活用して、カドミウムをはじめとする金属イオンや関連する化学種にも適用可能であり、分析対象は、めっき液だけでなく、エッチング液、水道水や、土壌分析、土壌から稲や野菜などの食物・植物に対する汚染対策の分析等にも活用が可能である。