(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放射線不透過性物質が硫酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タングステン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ジルコニウム、チタン、白金、次硝酸ビスマス、及びビスマスからなる群より選択される1種以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記樹脂が、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0046】
<発光物質>
本発明に係る樹脂組成物が含有する発光物質は、当該樹脂組成物から得られる成形体等に要求される製品品質や、混合される樹脂成分の種類等を考慮して、適宜選択して用いることができる。発光物質には蛍光材料と燐光材料がある。当該蛍光材料は、蛍光極大波長が可視光領域にあるもの(可視光蛍光材料)であってもよく、蛍光極大波長が近赤外領域にあるもの(近赤外蛍光材料)であってもよく、蛍光極大波長が赤外領域にあるもの(赤外蛍光材料)であってもよい。また、無機物質であってもよく、有機化合物であってもよい。
【0047】
可視光蛍光材料としては、例えば、クマリン系色素、シアニン系色素、キノール系色素、ローダミン類、オキサゾール系色素、フェナジン系色素、アゾ−ヒドラゾン系色素、ビオラントロン系色素、ビラントロン系色素、フラバントロン系色素、フルオレセイン類、キサンテン系色素、ピレン類、ナフタルイミド系色素、アントラキノン系色素、チオインジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、アゾ−ホウ素系色素、国際公開2007/126052号公報などに記載のボロンジピロメテン(BODIPY)系色素、ポルフィリン系色素等の化合物が挙げられる。また、ZnS:Ag、(ZnCd)S:Cu、(ZnCd)S:Ag、Zn
2SiO
4:Mn、Cd
2B
2O
5:Mn、(SrMg)
3(PO
4)
2:Mn、YVO
3:En,CaWO
4等の無機蛍光体もある。
【0048】
近赤外蛍光材料や赤外蛍光材料としては、例えば、ポリメチン系色素、アントラキノン系色素、ジチオ―ル金属塩系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、インドフエノ―ル系色素、シアミン系色素、スチリル系色素、アルミニウム系色素、ジイモニウム系色素、アゾ系色素、アゾ−ホウ素系色素、国際公開2007/126052号公報などに記載のボロンジピロメテン(BODIPY)系色素、スクアリウム系色素、ペリレン系色素等の化合物が挙げられる。
【0049】
また、燐光材料としては、イリジウム錯体、オスミニウム錯体、白金錯体、ユーロピウム錯体、銅錯体などの有機金属錯体、ポルフィセン錯体等が挙げられる。
【0050】
本発明に係る樹脂組成物が、例えば生体内で使用される医療用具やセキュリティ用具の素材として用いられる場合には、近赤外蛍光材料や赤外蛍光材料を含有することが好ましい。上記近赤外蛍光材料や赤外蛍光材料を含有する樹脂組成物及びこれから得られる成形体は、目に見えない近赤外領域の光で励起、検出できるため、励起光及び発光が生体組織などの色調を変えることなく検出できる。
【0051】
本発明に係る樹脂組成物が含有する近赤外蛍光材料としては、上記記載の材料の中でも、シアニン系色素、アゾ−ホウ素系色素、ボロンジピロメテン(BODIPY)系色素、ジケトピロロピロール(DPP)系ホウ素錯体、フタロシアニン系色素、又はスクアリウム系色素が、発光効率の点から好ましく、特に、下記一般式(I)で表されるアゾ−ホウ素錯体化合物、下記一般式(II
1)又は下記一般式(II
2)で表されるBODIPY色素、下記一般式(II
3)又は下記一般式(II
4)で表されるDPP系ホウ素錯体が耐熱性の点から好ましい。発光効率が低い場合には、十分な発光強度が得られないおそれがあり、また、耐熱性が低い場合には、樹脂との混練の際に材料が分解するおそれがあるからである。
【0052】
<一般式(I)で表されるアゾ−ホウ素錯体化合物>
【0054】
[式(I)中、
X’は、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し;
R
1は、C
1-12アルキル基、アリール基、アリールエテニル基、アリールエチニル基、C
1-12アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を示すか、或いは、一方のR
1は、上記X’とも結合している−O−C(=O)−基を示し、6員環を形成するものであり、且つ他方のR
1は、独立してC
1-12アルキル基、アリール基、アリールエテニル基、アリールエチニル基、C
1-12アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を示し;
R
2とR
3は、一体となって−O−基、−S−基もしくは−N(R
8)−基(ここで、R
8は水素原子又はC
1-12アルキル基を示す)を形成し、且つR
4とR
5は水素原子基を示すか、或いは、R
4とR
5は、一体となって−O−基、−S−基、もしくは−N(R
8)−基(R
8は上記と同義を示す)を形成し、且つR
2とR
3は水素原子基を示し;
R
6とR
7は、独立して水素原子基、C
1-12アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し;
上記アリール基又はヘテロアリール基の置換基は、C
1-12アルキル基、モノ(C
1-12アルキル)アミノ基、ジ(C
1-12アルキル)アミノ基、水酸基及びC
1-12アルコキシ基からなる群より選択される1種以上の基を示す。]
【0055】
本発明において、「アリール基」は芳香族炭化水素基を意味する。例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等であり、好ましくはC
6-10アリール基、より好ましくはフェニル基である。
【0056】
「ヘテロアリール基」は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個有する5員環、6員環又は縮合環を有する芳香族ヘテロシクリル基を意味する。「ヘテロアリール基」としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾール基等の5員環ヘテロアリール基;ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の6員環ヘテロアリール基;インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、キノリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基などの縮合ヘテロアリール基を挙げることができる。好ましくは窒素原子を含むヘテロアリールであり、より好ましくはベンゾチアゾリル基である。
【0057】
「C
1-12アルキル基」とは、炭素数が1〜12の直鎖状又は分枝鎖状の1価脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等である。R
6〜R
7としては、C
2-12アルキル基が好ましく、C
2-10アルキル基がより好ましく、特にn−C
2-8アルキル基が好ましい。その他の場合では、C
1-6アルキル基が好ましく、C
1-4アルキル基がより好ましく、C
1-2アルキル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
【0058】
「アリールエテニル基」は、上記アリール基に置換された−CH=CH−基を示し、トランス型であってもシス型であってもよいが、安定性の点からトランス型のものが好ましい。また、「アリールエチニル基」は、上記アリール基に置換された−C≡C−基を示す。
【0059】
「C
1-12アルコキシ基」は、C
1-12アルキルオキシ基を意味し、C
1-6アルコキシ基が好ましく、C
1-4アルコキシ基がより好ましく、C
1-2アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基がより好ましい。また、本発明において用いられるアゾ−ホウ素錯体化合物において、2つのR
1がアルコキシ基である場合には、炭化水素基同士が結合してホウ素原子と共に環状構造を形成していてもよい。
【0060】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を例示することができ、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0061】
「モノ(C
1-12アルキル)アミノ基」は、1つの上記C
1-12アルキルに置換されたアミノ基を意味し、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等を挙げることができ、好ましくはモノC
1-6アルキルアミノ基であり、より好ましくはモノC
1-4アルキルアミノ基であり、さらに好ましくはモノC
1-2アルキルアミノ基である。
【0062】
「ジ(C
1-12アルキル)アミノ基」は、2つの上記C
1-12アルキルに置換されたアミノ基を意味する。当該基において、2つのアルキル基は互いに同一であっても異なっていてもよい。ジC
1-12アルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、ブチルエチルアミノ基等を挙げることができ、好ましくはジ(C
1-6アルキル)アミノ基であり、より好ましくはジ(C
1-4アルキル)アミノ基であり、さらに好ましくはジ(C
1-2アルキル)アミノ基である。
【0063】
本発明において用いられるアゾ−ホウ素錯体化合物(I)としては、一方のR
1が、上記X’とも結合している−O−C(=O)−基を示し、6員環を形成するものであり、且つ他方のR
1が、独立してC
1-12アルキル基、アリール基、アリールエテニル基、アリールエチニル基、C
1-12アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を示す化合物、及び、下記式(I
1)〜(I
3)で表される化合物が好適である。中でも、式(I
1)で表される化合物がより好ましい。式(I
1)中、Yは置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R
1〜R
7は、前記式(I)中のR
1〜R
7と同義を示す。また、式(I
2)及び(I
3)中、X’及びR
1〜R
7は、前記式(I)中のX’及びR
1〜R
7と同義を示す。
【0065】
なお、式(I)で表されるアゾ−ホウ素錯体化合物は、例えば、下記式(II)で表されるヒドラゾン化合物(II)にホウ素化合物を反応させることにより合成できる(例えば、特許文献2参照。)。下記式中、X’及びR
1〜R
7は前記式(I)中のX’及びR
1〜R
7と同義を示す。また、R
9はC
1-12アルキル基、アリール基、アリールエテニル基、アリールエチニル基、C
1-12アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子であり、R
1と同一であるか或いはR
1よりも脱離し易い基を示す。
【0067】
<一般式(II
1)、一般式(II
2)、一般式(II
3)、又は一般式(II
4)で表される化合物>
本発明において用いられる近赤外蛍光材料としては、一般式(II
1)又は一般式(II
2)で表される化合物も好ましい。これらの化合物は、以下、「本発明において用いられるBODIPY色素」ということがある。
【0069】
本発明において用いられる近赤外蛍光材料としては、一般式(II
3)又は一般式(II
4)で表される化合物も好ましい。これらの化合物は、以下、「本発明において用いられるDPP系ホウ素錯体」ということがある。
【0071】
一般式(II
1)又は一般式(II
2)中、R
a及びR
bは、R
aが結合する窒素原子及びR
bが結合する炭素原子と共に1〜3個の環からなる芳香環を形成する。同様に、一般式(II
1)又は一般式(II
2)中、R
c及びR
dは、R
cが結合する窒素原子及びR
dが結合する炭素原子と共に1〜3個の環からなる芳香環を形成する。R
a及びR
bが形成する芳香環、並びにR
c及びR
dが形成する芳香環の各環は、5員環又は6員環である。一般式(II
1)又は一般式(II
2)で表される化合物は、R
a及びR
bが形成する芳香環とR
c及びR
dが形成する芳香環が、2個の窒素原子と結合するホウ素原子を含む環により縮合した環構造を有する。すなわち、一般式(II
1)又は一般式(II
2)で表される化合物は、広い共役平面からなる堅牢な縮合環構造を有する。
【0072】
一般式(II
3)又は一般式(II
4)中、R
h及びR
iは、R
hが結合する窒素原子及びR
iが結合する炭素原子と共に1〜3個の環からなる芳香環を形成する。同様に、一般式(II
3)又は一般式(II
4)中、R
j及びR
kは、R
jが結合する窒素原子及びR
kが結合する炭素原子と共に1〜3個の環からなる芳香環を形成する。R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環の各環は、5員環又は6員環である。一般式(II
3)又は一般式(II
4)で表される化合物は、R
h及びR
iが形成する芳香環と2個の窒素原子と結合するホウ素原子を含む環と1個の窒素原子を含む5員のヘテロ環とが縮合した3環と、R
j及びR
kが形成する芳香環と2個の窒素原子と結合するホウ素原子を含む環と1個の窒素原子を含む5員のヘテロ環とが縮合した3環とが5員のヘテロ環同士において縮合した環構造、すなわち、すくなくとも6環が縮合した環構造を有する。このように、一般式(II
3)又は一般式(II
4)で表される化合物は、非常に広い共役平面からなる堅牢な縮合環構造を有する。
【0073】
R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環としては、芳香性を有するものであれば特に限定されるものではない。当該芳香環としては、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、イソインドール環、インドール環、インダゾール環、プリン環、ペリミジン環、チエノピロール環、フロピロール環、ピロロチアゾール環、ピロロオキサゾール環等が挙げられる。極大蛍光波長が近赤外領域まで長波長化することから、特に、一般式(II
1)又は一般式(II
3)の場合は、当該芳香環としては、縮環数が2又は3であることが好ましく、合成上の煩雑さなどの点から2であることがより好ましい。ただし、当該芳香環の縮環数が1である場合にも、環上の置換基やホウ素上の置換基を工夫することで長波長化も可能である。また、特に、一般式(II
2)又は一般式(II
4)の場合は、置換アリール基やヘテロアリール基を結合させるだけで、近赤外領域まで長波長化させることができる。
【0074】
R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環としては、置換基を有していないものであってもよく、1個又は複数個の置換基を有していてもよい。当該芳香環が有する置換基としては、「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」であればよい。
【0075】
本発明に係る樹脂組成物を医療用材料(医療用具の原材料)として用いる場合には、含有させる近赤外蛍光材料としては、必要な生物学的安全性試験において、変異原性、細胞毒性、感作性、皮膚刺激性などが陰性のものが好ましい。また、安全性の観点から、当該近赤外蛍光材料が、血液や組織液などの体液によって、本発明に係る樹脂組成物を加工して得られた成形体から溶出しないことが好ましい。このため、本発明において用いられる近赤外蛍光材料は、血液などの生体成分等への溶解性が低いことが好ましい。ただし、本発明において用いられる近赤外蛍光材料自体が水溶性であっても、本発明に係る樹脂組成物中の樹脂成分自体が体液等にほとんど溶出しない場合であり、かつ近赤外蛍光材料自体の含有量が微量である場合には、本発明に係る樹脂組成物の成形体は、生体内においても近赤外蛍光材料の溶出を避けて使用することが可能である。これらを考慮し、本発明において用いられるBODIPY色素において、R
a及びR
bが形成する芳香環又はR
c及びR
dが形成する芳香環が有する置換基としては、変異原性等を発現し難いものや、水溶性を低下させるものが選択されることが好ましい。同様に、本発明において用いられるDPP系ホウ素錯体において、R
h及びR
iが形成する芳香環又はR
j及びR
kが形成する芳香環が有する置換基としては、変異原性等を発現し難いものや、水溶性を低下させるものが選択されることが好ましい。
【0076】
当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン酸基、アルキルスルフォニル基、ハロゲノスルフォニル基、チオール基、アルキルチオ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミドカルボニル基、アルキルカルボニルアミド基、アシル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、モノアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基、アリール基及びヘテロアリール基等が挙げられる。R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環が有する置換基、R
h及びR
iが形成する芳香環、又はR
j及びR
kが形成する芳香環としては、生体に対する安全性の点からシアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルキルチオ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルスルフォニル基、フッ素、塩素、アリール基、又はヘテロアリール基であることが好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0077】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0078】
アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。これらの基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基(tert−ブチル基)、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、イソプロピニル基、1−ブチニル基、イソブチニル基等が挙げられる。
【0079】
アルキルスルフォニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミドカルボニル基、アルキルカルボニルアミド基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、及びトリアルコキシシリル基におけるアルキル基部分としては、前記アルキル基と同様のものが挙げられる。例えば、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。また、例えば、モノアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等を挙げることができ、ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、ブチルエチルアミノ基等を挙げることができる。
【0080】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。
ヘテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾール基等の5員環ヘテロアリール基;ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の6員環ヘテロアリール基;インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、キノリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基などの縮合ヘテロアリール基を挙げることができる。
【0081】
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、無置換の基であってもよく、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン酸基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0082】
蛍光材料の吸収波長及び蛍光波長は周辺の環境に依存する。それ故、樹脂中における蛍光材料の吸収波長は、溶液中と比較して短波長化する場合もあれば、長波長化する場合もある。本発明において用いられるBODIPY色素やDPP系ホウ素錯体など自身の吸収波長が長波長化されている場合には、種々の樹脂中でも極大吸収波長が近赤外領域にあるようになるため好ましい。蛍光材料の極大吸収波長は、分子内の適切な位置に電子供与性基と電子求引性基を導入することにより、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)間のバンドギャップを狭め、より長波長化することができる。
【0083】
例えば、一般式(II
1)で表される化合物のうち、R
a及びR
bが形成する芳香環及びR
c及びR
dが形成する芳香環に電子供与性基を導入し、R
gに電子求引性基を導入することにより、当該化合物の極大吸収波長及び極大蛍光波長をより長波長化することができる。同様に、一般式(II
3)で表される化合物のうち、R
h及びR
iが形成する芳香環並びにR
j及びR
kが形成する芳香環に電子供与性基を導入すること、R
p及びR
qが芳香環を有する場合には当該芳香環に電子供与性基を導入すること、又はR
r及びR
sに電子求引性基を導入することにより、当該化合物の極大吸収波長及び極大蛍光波長をより長波長化することができる。これらの設計を組み合わせることにより、目的の波長に調整することが可能である。
【0084】
アザBODIPY骨格を有する一般式(II
2)で表される化合物は、R
a及びR
bが形成する芳香環及びR
c及びR
dが形成する芳香環が無置換であっても比較的長波長に吸収を有する骨格である。一般式(II
1)で表される化合物とは異なり、当該骨格ではピロールの架橋部分が窒素原子であるために窒素上に置換基を導入することができないが、ピロール部分(R
a及びR
bが形成する芳香環及びR
c及びR
dが形成する芳香環)に電子供与性基を導入することにより、当該化合物の極大吸収波長及び極大蛍光波長をより長波長化できる。同様に、一般式(II
4)で表される化合物の場合、ピロール部分(R
h及びR
iが形成する芳香環並びにR
j及びR
kが形成する芳香環)に電子供与性基を導入すること、又はR
p及びR
qが芳香環を有する場合には当該芳香環に電子供与性基を導入することにより、当該化合物の極大吸収波長及び極大蛍光波長をより長波長化できる。
【0085】
このため、R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環が有する置換基としては、「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」のうち、当該芳香環に対して電子供与性基として機能する基が好ましい。当該芳香環に電子供与性基が導入されることにより、一般式(II
1)、一般式(II
2)、一般式(II
3)、又は一般式(II
4)で表される化合物の蛍光がより長波長側になる。電子供与性基として機能する基としては、例えば、アルキル基;メトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、p−アルコキシフェニル基、p−ジアルキルアミノフェニル基、ジアルコキシフェニル基等のアリール基(芳香環基);2−チエニル基、2−フラニル基等のヘテロアリール基(複素芳香環基)等が挙げられる。アルキル基や、フェニル基の置換基中のアルキル基、アルコキシ基中のアルキル基部分としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。なお、アルキル基部分の炭素数や分岐の有無は、蛍光材料の諸物性を鑑み、適宜選択すればよい。溶解性や相溶性などの観点からは、炭素数6以上が好ましい場合や分岐している方が好ましい場合もある。R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環が有する置換基としては、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、フェニル基又はp−メトキシフェニル基がさらに好ましい。BODIPY骨格及びDPP骨格は平面性が高いため、π−πスタッキングにより分子同士が凝集し易い。BODIPY骨格又はDPP骨格に嵩高い置換基をもつアリール基やヘテロアリール基を導入することにより、分子の凝集が抑制でき、本発明に係る樹脂組成物の発光量子収率を高くすることができる。
【0086】
一般式(II
1)又は一般式(II
2)中、R
a及びR
bが形成する芳香環と、R
c及びR
dが形成する芳香環とは、相違していてもよく、同種であってもよい。一般式(II
3)又は一般式(II
4)中、R
h及びR
iが形成する芳香環と、R
j及びR
kが形成する芳香環とは、相違していてもよく、同種であってもよい。本発明において用いられるBODIPY色素又はDPP系ホウ素錯体としては、合成が容易であることに加え、より発光量子収率が高い傾向にあることから、R
a及びR
bが形成する芳香環とR
c及びR
dが形成する芳香環、又はR
h及びR
iが形成する芳香環とR
j及びR
kが形成する芳香環は、同種であることが好ましい。
【0087】
一般式(II
1)又は一般式(II
2)中、R
e及びR
fは、互いに独立して、ハロゲン原子又は酸素原子を表す。R
e及びR
fがハロゲン原子の場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子又は塩素原子がより好ましく、ホウ素原子と強固な結合を有することからフッ素原子が特に好ましい。R
e及びR
fがフッ素原子の化合物は耐熱性が高いため、樹脂と高温で溶融混練する場合には有利である。なお、一般式(II
1)又は一般式(II
2)で表される化合物としては、R
e及びR
fがハロゲン原子又は酸素原子ではなく、ホウ素原子と結合しうる原子を含んだ置換基であっても、本発明において用いられるBODIPY色素と同様に樹脂に含有させることができる。当該置換基としては、蛍光を阻害しないものであれば許容される。
【0088】
一般式(II
1)又は一般式(II
2)中、R
e及びR
fが酸素原子の場合、R
e、R
eと結合するホウ素原子、R
a、及びR
aが結合する窒素原子が共に環を形成してもよく、R
f、R
fと結合するホウ素原子、R
c、及びR
cが結合する窒素原子が共に環を形成してもよい。つまり、環構造を形成する場合は、R
e、R
eと結合するホウ素原子、及びR
aが結合する窒素原子が形成する環は、R
a及びR
bが形成する芳香環と縮合し、R
f、R
fと結合するホウ素原子、及びR
cが結合する窒素原子が形成する環は、R
c及びR
dが形成する芳香環と縮合する。R
e等が形成する環及びR
f等が形成する環は、好ましくは6員環である。
【0089】
一般式(II
1)又は一般式(II
2)中、R
eが酸素原子の場合であって、R
eが環を形成していない場合には、R
eは置換基を有する酸素原子(置換基と結合した酸素原子)である。当該置換基としては、C
1-20アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、又はヘテロアリールカルボニル基等が挙げられる。同様に、一般式(II
1)又は一般式(II
2)中、R
fが酸素原子の場合であって、R
fが環を形成していない場合には、R
fは置換基を有する酸素原子(置換基と結合した酸素原子)である。当該置換基としては、C
1-20アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、又はヘテロアリールカルボニル基等が挙げられる。なお、R
e及びR
fが共に置換基を有する酸素原子の場合、R
eが有する置換基とR
fが有する置換基とは、同種であってもよく異種であってもよい。
【0090】
一般式(II
1)又は一般式(II
2)中、R
e及びR
fが酸素原子の場合、R
e、R
f、並びにR
e及びR
fと結合するホウ素原子が共に環を形成してもよい。当該環構造としては、例えば、R
e及びR
fが同じアリール環又はヘテロアリール環と連結している構造、R
e及びR
fがアルキレン基により連結している構造が挙げられる。
【0091】
一般式(II
3)又は一般式(II
4)中、R
l、R
m、R
n、及びR
oは、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
l、R
m、R
n、又はR
oがハロゲン原子の場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子又は塩素原子がより好ましく、ホウ素原子と強固な結合を有することからフッ素原子が特に好ましい。R
l、R
m、R
n、及びR
oがフッ素原子の化合物は耐熱性が高いため、樹脂と高温で溶融混練する場合には有利である。
【0092】
なお、本願発明及び本願明細書において、「C
1-20アルキル基」は炭素数1〜20のアルキル基を意味し、「C
1-20アルコキシ基」は炭素数1〜20のアルコキシ基を意味する。
【0093】
R
l、R
m、R
n、又はR
oがC
1-20アルキル基の場合、当該アルキル基としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。当該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0094】
R
l、R
m、R
n、又はR
oがC
1-20アルコキシ基の場合、当該アルコキシ基のアルキル基部分としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0095】
R
l、R
m、R
n、又はR
oがアリール基の場合、当該アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
R
l、R
m、R
n、又はR
oがヘテロアリール基の場合、当該ヘテロアリール基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾール基等の5員環ヘテロアリール基;ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の6員環ヘテロアリール基;インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、キノリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基などの縮合ヘテロアリール基を挙げることができる。
【0096】
R
l、R
m、R
n、又はR
oが表すC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基は、無置換の基であってもよく、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン酸基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0097】
一般式(II
3)又は一般式(II
4)で表される化合物としては、R
l、R
m、R
n、及びR
oがハロゲン原子、無置換のアリール基、又は置換基を有するアリール基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基がより好ましく、フッ素原子又は無置換のフェニル基が特に好ましい。
【0098】
一般式(II
3)又は一般式(II
4)中、R
p及びR
qは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
p及びR
qが表すハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、前記一般式(II
3)のR
l、R
m、R
n、又はR
oと同様のものが挙げられる。
【0099】
一般式(II
3)又は一般式(II
4)で表される化合物としては、R
p及びR
qが水素原子又はアリール基であるものが好ましく、水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものが好ましく、水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものがより好ましく、水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものが特に好ましい。
【0100】
一般式(II
1)中、R
gは、水素原子、又は電子求引性基を表す。また、一般式(II
3)中、R
r及びR
sは、互いに独立して、水素原子、又は電子求引性基を表す。当該電子求引性基としては、例えば、トリフルオロメチル基などのようなハロゲン化メチル基;ニトロ基;シアノ基;アリール基;ヘテロアリール基;アルキニル基;アルケニル基;カルボキシル基、アシル基、カルボニルオキシ基、アミド基、アルデヒド基などのカルボニル基を有する置換基;スルホキシド基;スルホニル基;アルコキシメチル基;アミノメチル基などが挙げられ、これらの電子求引性基を置換基として持つアリール基やヘテロアリール基なども使用することができる。これらの電子求引性基の中でも、極大蛍光波長の長波長化の点から、強い電子求引性基として機能し得るトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基等が好ましい。
【0101】
本発明において用いられるBODIPY色素としては、下記一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)で表される化合物が好ましい。ボロンジピロメテン骨格を有する化合物は、極大蛍光波長がより長波長になるため好ましく、特に下記の(p2)、(p3)、(q2)、又は(q3)を充足する、ピロール環が芳香環又は複素芳香環と縮合した化合物は、極大波長がさらに長波長になるため、本発明において用いられる近赤外蛍光材料として好ましい。
【0103】
一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)中、R
101、R
102、及びR
103は、下記(p1)〜(p3)のいずれかを充足する。
(p1)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、
(p2)R
101及びR
102は共に、芳香族5員環又は芳香族6員環を形成し、R
103は水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、又は
(p3)R
102及びR
103は共に、芳香族5員環又は芳香族6員環を形成し、R
101は水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0104】
一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)中、R
104、R
105、及びR
106は、下記(q1)〜(q3)のいずれかを充足する。
(q1)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、
(q2)R
104及びR
105は共に、芳香族5員環又は芳香族6員環を形成し、R
106は水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、又は
(q3)R
105及びR
106は共に、芳香族5員環又は芳香族6員環を形成し、R
104は水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0105】
前記(p1)〜(p3)又は(q1)〜(q3)におけるハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、それぞれ、R
aとR
bにおいて「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」として例示されたものを用いることができる。
【0106】
前記(p2)〜(p3)又は(q2)〜(q3)において、R
101及びR
102が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
104及びR
105が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
102及びR
103が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
105及びR
106が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環としては、下記一般式(C−1)〜(C−9)のいずれかで表されるものが好ましく、下記一般式(C−1)、(C−2)、又は(C−9)のいずれかで表されるものがより好ましい。下記一般式(C−1)〜(C−9)中、アスタリスクが付されている箇所が、一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)中のボロンジピロメテン骨格と結合する部分である。
【0108】
前記一般式(C−1)〜(C−8)中、Y
1〜Y
8は、互いに独立して硫黄原子、酸素原子、窒素原子、又はリン原子を表す。当該Y
1〜Y
8としては、互いに独立して硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子であることが好ましく、互いに独立して硫黄原子又は酸素原子であることがより好ましい。
【0109】
前記一般式(C−1)〜(C−9)中、R
11〜R
22は、互いに独立して水素原子、又は前記化合物の蛍光を阻害しない任意の基を表す。「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」としては、R
aとR
bにおける「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」で例示されたものを用いることができる。R
11〜R
22としては、互いに独立して、水素原子、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のヘテロアリール基、又は置換基を有するヘテロアリール基であることが好ましく、水素原子、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基がより好ましく、水素原子、(無置換の)フェニル基、又はp−メトキシフェニル基がさらに好ましい。電子供与性を高めることと、嵩高い置換基によりBODIPY骨格の凝集を抑制できることから、前記化合物は、少なくとも一つの前記の無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のヘテロアリール基、又は置換基を有するヘテロアリール基により置換されていることが特に好ましい。
【0110】
一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)の化合物としては、R
101とR
104、R
102とR
105、及びR
103とR
106は、それぞれ相違していてもよいが、同種の基であることが好ましい。つまり、R
101、R
102、及びR
103が前記(p1)を充足する場合には、R
104、R
105、及びR
106は前記(q1)を充足することが好ましく、R
101、R
102、及びR
103が前記(p2)を充足する場合には、R
104、R
105、及びR
106は前記(q2)を充足することが好ましく、R
101、R
102、及びR
103が前記(p3)を充足する場合には、R
104、R
105、及びR
106は前記(q3)を充足することが好ましい。
【0111】
一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)の化合物としては、R
101及びR
102が環を形成し、R
104及びR
105が環を形成している、又は、R
102及びR
103が環を形成し、R
105及びR
106が環を形成していることが好ましい。すなわち、R
101、R
102、及びR
103が前記(p2)又は(p3)を充足し、R
104、R
105、及びR
106が前記(q2)又は(q3)を充足するものが好ましい。ボロンジピロメテン骨格にさらに芳香環又は複素芳香環が縮合することにより、極大蛍光波長がより長波長側となるためである。
【0112】
一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)中、R
107及びR
108は、ハロゲン原子又は酸素原子を表す。R
107及びR
108が酸素原子の場合には、R
107、R
107と結合するホウ素原子、ホウ素原子が結合する窒素原子、R
101、及びR
101と結合する炭素原子が共に環を形成してもよく、R
108、R
108と結合するホウ素原子、ホウ素原子が結合する窒素原子、R
104、及びR
104と結合する炭素原子が共に環を形成してもよい。つまり、R
107とホウ素原子とR
101等が形成する環と、R
108とホウ素原子とR
104等が形成する環は、いずれもボロンジピロメテン骨格と縮合する。R
107とホウ素原子とR
101等が形成する環、及びR
108とホウ素原子とR
104等が形成する環は、好ましくは6員環である。
【0113】
一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)中、R
107が酸素原子であり、かつ環を形成していない場合には、R
107は置換基を有する酸素原子(置換基と結合した酸素原子)である。当該置換基としては、C
1-20アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基等が挙げられる。同様に、一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)中、R
108が酸素原子であり、かつ環を形成していない場合には、R
108は置換基を有する酸素原子(置換基と結合した酸素原子)である。当該置換基としては、C
1-20アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基等が挙げられる。なお、R
107及びR
108が共に置換基を有する酸素原子の場合、R
107が有する置換基とR
108が有する置換基とは、同種であってもよく異種であってもよい。
【0114】
一般式(II
1−0)中、R
109は、水素原子、又は電子求引性基を表す。電子求引性基としては、前記R
gで挙げられた基と同様のものが挙げられる。中でも、極大蛍光波長の長波長化の点から、強い電子求引性基として機能し得るフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アリール基、スルホニル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホニル基等がより好ましく、生体に対する安全性の点からトリフルオロメチル基、シアノ基、フェニル基、スルホニル基がさらに好ましい。ただし、これらの置換基に限定されるものではない。
【0115】
本発明において用いられるBODIPY色素としては、一般式(II
1−0)又は一般式(II
2−0)で表される化合物のうち、R
101及びR
102が共に、上記一般式(C−1)で表される環のうち、R
11とR
12のいずれか一方が水素原子であり、残る一方が、1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基である環を形成し、R
104及びR
105が共にR
101及びR
102が形成する環と同種の環を形成し、R
103及びR
106が水素原子であり、R
107及びR
108がハロゲン原子である化合物;R
101及びR
102が共に、上記一般式(C−2)で表される環のうち、R
13とR
14のいずれか一方が水素原子であり、残る一方が、1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基である環を形成し、R
104及びR
105が共にR
101及びR
102が形成する環と同種の環を形成し、R
103及びR
106が水素原子であり、R
107及びR
108がハロゲン原子である化合物;R
102及びR
103が共に、上記一般式(C−1)で表される環のうち、R
11とR
12のいずれか一方が水素原子であり、残る一方が1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基である環を形成し、R
105及びR
106が共にR
102及びR
103が形成する環と同種の環を形成し、R
101及びR
104が水素原子であり、R
107及びR
108がハロゲン原子である化合物;R
102及びR
103が共に、下記一般式(C−2)で表される環のうち、R
13とR
14のいずれか一方が水素原子であり、残る一方が1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基である環を形成し、R
105及びR
106が共にR
101及びR
102が形成する環と同種の環を形成し、R
101及びR
104が水素原子であり、R
107及びR
108がハロゲン原子である化合物;R
102及びR
103が共に、下記一般式(C−9)で表される環のうち、R
19〜R
22のうちのいずれか1個が1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であり、残る3個が水素原子である環を形成し、R
105及びR
106が共にR
101及びR
102が形成する環と同種の環を形成し、R
101及びR
104が水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であり、R
107及びR
108がハロゲン原子である化合物;が好ましい。これらの化合物が一般式(II
1−0)で表される化合物の場合、R
109がトリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、又はフェニル基であるものがさらに好ましく、トリフルオロメチル基又はフェニル基であるものが特に好ましい。
【0116】
本発明において用いられるBODIPY色素の好ましい化合物としては、下記一般式(II
1−1)、(II
1−2)、(II
1−3)、(II
2−1)、(II
2−2)、及び(II
2−3)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(II
1−1)等中、R
101、R
103、R
104、及びR
106〜R
108は上記と同義であり、EDは電子供与性基を表し、EWは電子求引性基を表し、Z
1〜Z
4環は、それぞれ独立して、5員環若しくは6員環のアリール基、又は5員環若しくは6員環のヘテロアリール基を表す。
【0118】
下記一般式(II
1−1)としては、下記一般式(II
1−1−1)〜(II
1−1−6)で表される化合物が好ましく、下記一般式(II
1−2)としては、下記一般式(II
1−2−1)〜(II
1−2−12)で表される化合物が好ましく、下記一般式(II
2−1)としては、下記一般式(II
2−1−1)〜(II
2−1−6)で表される化合物が好ましく、下記一般式(II
2−2)としては、下記一般式(II
2−2−1)〜(II
2−2−12)で表される化合物が好ましい。
【0125】
一般式(II
1−1−1)〜(II
1−1−6)、(II
1−2−1)〜(II
1−2−4)、(II
1−2−7)〜(II
1−2−10)、(II
2−1−1)〜(II
2−1−6)、(II
2−2−1)〜(II
2−2−4)、及び(II
2−2−7)〜(II
2−2−10)中、Y
11及びY
12は、互いに独立して、酸素原子又は硫黄原子を表し、Y
21及びY
22は、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。一般式(II
1−1−1)等で表される化合物としては、Y
11及びY
12は同種の原子であることが好ましく、Y
21及びY
22は同種の原子であることが好ましい。
【0126】
一般式(II
1−1−1)〜(II
1−1−6)、(II
1−2−1)〜(II
1−2−12)中、Q
11は、水素原子又は電子求引性基を表す。電子求引性基としては、前記R
gで挙げられた基と同様のものが挙げられる。一般式(II
1−1−1)等で表される化合物としては、Q
11がトリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、又は置換基を有してもよいフェニル基である化合物が好ましく、トリフルオロメチル基又は置換基を有してもよいフェニル基である化合物がより好ましい。
【0127】
一般式(II
1−1−1)〜(II
1−1−2)、(II
1−2−1)〜(II
1−2−2)、(II
2−1−1)〜(II
2−1−2)、及び(II
2−2−1)〜(II
2−2−2)中、Xは、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルコキシ基、アリールオキシ基、又はアシルオキシ基を表す。
【0128】
XがC
1-20アルコキシ基の場合、当該アルコキシ基のアルキル基部分としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0129】
Xがアリールオキシ基の場合、当該アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、インデニルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0130】
Xがアシルオキシ基の場合、当該アシルオキシ基としては、アルキルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基が好ましい。当該アルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基(アセトキシ基)、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、イソアミルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ノニルカルボニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ウンデシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。当該アリールカルボニルオキシ基としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基(ベンゾイルオキシ基)、ナフチルカルボニルオキシ基、インデニルカルボニルオキシ基、ビフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0131】
一般式(II
1−1−1)〜(II
1−1−6)、(II
1−2−1)〜(II
1−2−2)、(II
1−2−6)、(II
2−1−1)〜(II
2−1−6)、(II
2−2−1)〜(II
2−2−2)、及び(II
2−2−6)のいずれかで表される化合物としては、Xがいずれもハロゲン原子であるものが好ましく、Xがいずれもフッ素原子であるものが特に好ましい。
【0132】
一般式(II
1−1−3)〜(II
1−1−4)、(II
1−2−7)、(II
1−2−9)、(II
1−2−11)、(II
2−1−3)〜(II
2−1−4)、(II
2−2−7)、(II
2−2−9)、及び(II
2−2−11)中、m1は、0又は1を表す。
【0133】
一般式(II
1−1−5)〜(II
1−1−6)、(II
1−2−3)〜(II
1−2−6)、(II
1−2−8)、(II
1−2−10)、(II
1−2−12)、(II
2−1−5)〜(II
2−1−6)、(II
2−2−3)〜(II
1−2−6)、(II
2−2−8)、(II
2−2−10)、及び(II
2−2−12)中、P
11〜P
14及びP
17は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を表す。当該P
11〜P
14におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。P
11〜P
14としては、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることが好ましく、生体に対する安全性の点からC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることがより好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0134】
一般式(II
1−1−5)〜(II
1−1−6)、(II
1−2−3)〜(II
1−2−6)、(II
1−2−8)、(II
1−2−10)、(II
1−2−12)、(II
2−1−5)〜(II
2−1−6)、(II
2−2−3)〜(II
1−2−6)、(II
2−2−8)、(II
2−2−10)、及び(II
2−2−12)中、n11〜n14及びn17は、互いに独立して、0〜3の整数を表す。一分子中に、P
11が複数個存在した場合(すなわち、n11が2又は3の場合)、複数のP
11はいずれも同種の官能基であってもよく、異種類の官能基であってもよい。P
12〜P
14及びP
17についても同様である。
【0135】
一般式(II
1−1−1)〜(II
1−1−6)、(II
1−2−1)〜(II
1−2−4)、(II
1−2−6)〜(II
1−2−12)、(II
2−1−1)〜(II
2−1−6)、(II
2−2−1)〜(II
2−2−4)、及び(II
2−2−6)〜(II
2−2−12)中、A
11〜A
14は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、及びジアルキルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、及びジアルキルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。当該ヘテロアリール基としては、前記一般式(II
3)のR
l、R
m、R
n、又はR
oと同様のものが挙げられ、チエニル基又はフラニル基が好ましい。当該フェニル基又は当該ヘテロアリール基が有していてもよい置換基におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。A
11〜A
14としては、無置換のフェニル基、1若しくは2個のC
1-20アルコキシ基を置換基として有するフェニル基、又は無置換のヘテロアリール基が好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-20アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がより好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-10アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がさらに好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-6アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がよりさらに好ましい。また、一般式(II
1−1−1)等で表される化合物としては、A
11〜A
14はいずれも同種の官能基であることが好ましい。
【0136】
本発明において用いられるBODIPY色素としては、特に、下記一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(3−1)〜(3−37)、(4−1)〜(4−7)、(5−1)〜(5−2)のいずれかで表される化合物が好ましく、下記一般式(1−1)〜(1−12)、(1−25)〜(1−31)、(2−1)〜(2−7)、(3−25)〜(3−31)のいずれかで表される化合物がより好ましく、下記一般式(1−1)、(1−3)、(1−4)、(1−6)、(1−25)、(1−27)、(2−1)、(3−1)、(3−3)、(3−4)、(3−6)、(3−25)、(3−27)、(4−1)のいずれかで表される化合物がさらに好ましい。
【0148】
一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(3−1)〜(3−37)、(4−1)〜(4−7)、(5−1)〜(5−2)中、P
1〜P
4及びP
18は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を表す。当該P
1〜P
4におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。P
1〜P
4及びP
18としては、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることが好ましく、生体に対する安全性の点からC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることがより好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0149】
一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(3−1)〜(3−37)、(4−1)〜(4−7)、(5−1)〜(5−2)中、n1〜n4及びn18は、互いに独立して、0〜3の整数を表す。一分子中に、P
1が複数個存在した場合(すなわち、n1が2又は3の場合)、複数のP
1はいずれも同種の官能基であってもよく、異種類の官能基であってもよい。P
2〜P
4及びP
18についても同様である。
【0150】
一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(5−1)中、Qは、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表し、トリフルオロメチル基又は置換基を有してもよいフェニル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基又は無置換のフェニル基であることがより好ましい。フェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0151】
一般式(1−1)〜(1−31)、(2−1)〜(2−7)、(3−1)〜(3−31)、(4−1)〜(4−7)中、Xは、一般式(II
1−1−1)等と同じである。一般式(1−1)等で表される化合物としては、Xがハロゲン原子であるものが好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
【0152】
一般式(1−32)〜(1−34)及び(3−32)〜(3−34)中、m2は、0又は1である。一般式(1−32)等で表される化合物としては、m2は1であることが好ましい。
【0153】
一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(5−1)で表される化合物としては、P
1〜P
4及びP
18が互いに独立して、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であり、n1〜n4及びn18が互いに独立して、0〜2であり、Qがトリフルオロメチル基又はフェニル基であるものが好ましい。同様に、一般式、(3−1)〜(3−37)、(4−1)〜(4−7)、(5−2)で表される化合物としては、P
1〜P
4及びP
18が互いに独立して、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であり、n1〜n4及びn18が互いに独立して、0〜2であるものが好ましい。
【0154】
本発明に係る近赤外蛍光材料としては、極大蛍光波長がより長波長であるため、下記一般式(II
3−1)〜(II
3−6)のいずれかで表される化合物、又は一般式(II
4−1)〜(II
4−6)のいずれかで表される化合物も好ましい。
【0157】
一般式(II
3−1)〜(II
3−6)及び一般式(II
4−1)〜(II
4−6)中、R
23、R
24、R
25、及びR
26は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
23、R
24、R
25、又はR
26が表すハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、前記一般式(II
3)のR
l、R
m、R
n、又はR
oと同様のものが挙げられる。一般式(II
3−1)〜(II
3−6)のいずれかで表される化合物又は一般式(II
4−1)〜(II
4−6)のいずれかで表される化合物としては、化合物の熱安定性が高いことから、R
23、R
24、R
25、及びR
26がハロゲン原子、無置換のアリール基、又は置換基を有するアリール基が好ましく、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基がより好ましく、高い発光効率と熱安定性を兼ね備える化合物が得られることから、フッ素原子又は無置換のフェニル基が特に好ましい。
【0158】
一般式(II
3−1)〜(II
3−6)及び一般式(II
4−1)〜(II
4−6)中、R
27及びR
28は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
27又はR
28が表すハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、前記一般式(II
3)のR
p又はR
qと同様のものが挙げられる。一般式(II
3−1)〜(II
3−6)のいずれかで表される化合物又は一般式(II
4−1)〜(II
4−6)のいずれかで表される化合物としては、R
27及びR
28が水素原子又はアリール基であるものが好ましく、高い発光効率の化合物が得られることから、水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものが好ましく、水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものがより好ましく、高い発光効率で、樹脂への相溶性にも優れる化合物が得られることから、水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものが特に好ましい。
【0159】
一般式(II
3−1)〜(II
3−6)中、R
29及びR
30は、互いに独立して、水素原子、又は電子求引性基を表す。R
29又はR
30が表す電子求引性基としては、前記一般式(II
3)のR
r又はR
sと同様のものが挙げられる。一般式(II
3−1)〜(II
3−6)のいずれかで表される化合物としては、高い発光効率の化合物が得られることから、R
29及びR
30が、強い電子求引性基として機能し得るフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アリール基であるものが好ましく、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又は置換基を有してもよいフェニル基であるものがより好ましく、高い発光効率で、樹脂への相溶性にも優れる化合物が得られることから、トリフルオロメチル基又はシアノ基であるものがさらに好ましい。
【0160】
一般式(II
3−1)及び一般式(II
4−1)中、Y
9及びY
10は、互いに独立して硫黄原子、酸素原子、窒素原子、又はリン原子を表す。一般式(II
3−1)又は一般式(II
4−1)で表される化合物としては、高い発光効率の化合物が得られることから、Y
9及びY
10が、互いに独立して硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子であるものが好ましく、互いに独立して硫黄原子又は酸素原子であるものがより好ましく、高い発光効率と熱安定性を兼ね備える化合物が得られることから、共に硫黄原子である若しくは共に酸素原子であるものがさらに好ましい。
【0161】
一般式(II
3−3)〜(II
3−6)及び一般式(II
4−3)〜(II
4−6)中、X
1及びX
2は、互いに独立して窒素原子又はリン原子を表す。一般式(II
3−3)〜(II
3−6)又は一般式(II
4−3)〜(II
4−6)で表される化合物としては、X
1及びX
2が、高い発光効率の化合物が得られることから、共に窒素原子又はリン原子であるものが好ましく、高い発光効率と熱安定性を兼ね備える化合物が得られることから、共に窒素原子であるものがより好ましい。
【0162】
一般式(II
3−1)及び一般式(II
4−1)中、R
31及びR
32は、下記(p4)又は(p5)を充足する。
(p4)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(p5)R
31及びR
32は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成する。
【0163】
一般式(II
3−1)及び一般式(II
4−1)中、R
33及びR
34は、下記(q4)又は(q5)を充足する。
(q4)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、又は
(q5)R
33及びR
34は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成する。
【0164】
一般式(II
3−2)〜(II
3−6)及び一般式(II
4−2)〜(II
4−6)中、R
35、R
36、R
37、及びR
38は、下記(p6)〜(p9)のいずれかを充足する。
(p6)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(p7)R
35及びR
36は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
37及びR
38は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(p8)R
36及びR
37は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
35及びR
38は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(p9)R
37及びR
38は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
35及びR
36は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0165】
一般式(II
3−2)〜(II
3−6)及び一般式(II
4−2)〜(II
4−6)中、R
39、R
40、R
41、及びR
42は、下記(q6)〜(q9)のいずれかを充足する。
(q6)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(q7)R
39及びR
40は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
41及びR
42は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(q8)R
40及びR
41は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
39及びR
42は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(q9)R
41及びR
42は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
39及びR
40は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0166】
前記(p4)、(p6)〜(p9)及び(q4)、(q6)〜(q9)におけるハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、それぞれ、R
aとR
bにおいて「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」として例示されたものを用いることができる。
【0167】
前記(p5)、(p7)〜(p9)、(q5)、(q7)〜(q9)において、R
31及びR
32が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
33及びR
34が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
35及びR
36が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
36及びR
37が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
37及びR
38が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
39及びR
40が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
40及びR
41が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
41及びR
42が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環としては、前記一般式(C−1)〜(C−9)のいずれかで表されるものが好ましく、高い熱安定性の化合物が得られることから、前記一般式(C−9)で表されるものがより好ましい。
【0168】
前記(II
3−1)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;Y
9及びY
10が共に硫黄原子又は酸素原子であり;R
31及びR
32が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
31及びR
32が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し;R
33及びR
34が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
33及びR
34が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成する化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;Y
9及びY
10が共に硫黄原子又は酸素原子であり;R
31及びR
32が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
31及びR
32が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し;R
33及びR
34が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
33及びR
34が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成する化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0169】
前記(II
3−2)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;R
35、R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
37及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35及びR
36が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
41及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39及びR
40が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;R
35、R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
37及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35及びR
36が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
41及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39及びR
40が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0170】
前記(II
3−3)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
36が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
40が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
36が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
40が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0171】
前記(II
3−4)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
37が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
37が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
41が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
41が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
37が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
37が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
41が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
41が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0172】
前記(II
3−5)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、好ましい。
【0173】
前記(II
3−6)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0174】
前記(II
4−1)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;Y
9及びY
10が共に硫黄原子又は酸素原子であり;R
31及びR
32が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
31及びR
32が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し;R
33及びR
34が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
33及びR
34が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成する化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;Y
9及びY
10が共に硫黄原子又は酸素原子であり;R
31及びR
32が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
31及びR
32が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し;R
33及びR
34が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
33及びR
34が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成する化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0175】
前記(II
4−2)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
35、R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
37及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35及びR
36が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
41及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
35、R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
37及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35及びR
36が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
41及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0176】
前記(II
4−3)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
36が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
40が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
36が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
40が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0177】
前記(II
4−4)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
37が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
37が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
41が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
41が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
37が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
37が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
41が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
41が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0178】
前記(II
4−5)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0179】
前記(II
4−6)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0180】
前記(II
3−1)〜(II
3−6)のいずれかで表される化合物としては、下記一般式(II
3−7)〜(II
3−9)のいずれかで表される化合物が好ましく、前記(II
4−1)〜(II
4−6)のいずれかで表される化合物としては、下記一般式(II
4−7)〜(II
4−9)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0182】
一般式(II
3−7)及び(II
4−7)中、Y
23及びY
24は、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。一般式(II
3−7)等中、Y
23及びY
24は同種の原子であることが好ましい。
【0183】
一般式(II
3−8)及び(II
4−8)中、Y
13及びY
14は、互いに独立して、酸素原子又は硫黄原子を表す。一般式(II
3−8)等中、Y
23及びY
24は同種の原子であることが好ましい。
【0184】
一般式(II
3−9)及び(II
4−9)中、Y
25及びY
26は、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。一般式(II
3−9)等中、Y
25及びY
26は同種の原子であることが好ましい。
【0185】
一般式(II
3−7)〜(II
3−9)中、R
47及びR
48は、互いに独立して、水素原子又は電子求引性基を表し、蛍光強度が高くなることからトリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、又はフェニル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基又はシアノ基であることが特に好ましい。一般式(II
3−7)等中、R
47及びR
48は同種の官能基であることが好ましい。
【0186】
一般式(II
3−7)〜(II
3−9)及び(II
4−7)〜(II
4−9)中、R
43、R
44、R
45、及びR
46は、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。当該アリール基としては、R
aとR
bにおいて「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」として例示されたものを用いることができる。また、当該アリール基が有していてもよい置換基としては、「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」であればよく、例えば、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基等があげられる。一般式(II
3−7)〜(II
3−9)及び(II
4−7)〜(II
4−9)中、R
43〜R
46は、それぞれ異なる基であってもよいが、全て同種の基であることが好ましい。一般式(II
3−7)〜(II
3−9)及び(II
4−7)〜(II
4−9)のいずれかで表される化合物としては、R
43〜R
46が、全て同種のハロゲン原子である、又は全て同種の置換基を有してもよいフェニル基であるものが好ましく、全てフッ素原子又は無置換のフェニル基であるものがより好ましく、全てフッ素原子であるものが特に好ましい。
【0187】
一般式(II
3−7)〜(II
3−9)及び(II
4−7)〜(II
4−9)中、P
15〜P
16は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を表す。当該P
15〜P
16におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。P
15〜P
16としては、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることが好ましく、生体に対する安全性の点からC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることがより好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0188】
一般式(II
3−7)〜(II
3−9)及び(II
4−7)〜(II
4−9)中、n15〜n16は、互いに独立して、0〜3の整数を表す。一分子中に、P
15が複数個存在した場合(すなわち、n15が2又は3の場合)、複数のP
15はいずれも同種の官能基であってもよく、異種類の官能基であってもよい。P
16についても同様である。
【0189】
一般式(II
3−7)〜(II
3−9)及び(II
4−7)〜(II
4−9)中、A
15〜A
16は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、及びジアルキルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいフェニル基を表す。当該フェニル基が有していてもよい置換基におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。A
15〜A
16としては、無置換のフェニル基、1又は2個のC
1-20アルコキシ基を置換基として有するフェニル基が好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-20アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がより好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-10アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がさらに好ましい。また、一般式(II
3−7)等で表される化合物としては、A
15〜A
16はいずれも同種の官能基であることが好ましい。
【0190】
前記(II
3−1)〜(II
3−6)のいずれかで表される化合物としては、下記一般式(6−1)〜(6−12)、(7−1)〜(7−12)のいずれかで表される化合物が挙げられる。一般式(6−7)〜(6−12)、(7−7)〜(7−12)中、Phは無置換のフェニル基を意味する。本発明において用いられるDPP系ホウ素錯体としては、特に、一般式(6−4)、(6−5)、(6−7)、(6−8)、(7−4)、(7−5)、(7−7)、(7−8)で表される化合物が好ましく、一般式(6−4)、(6−5)、(6−7)、(6−8)で表される化合物がより好ましい。
【0191】
一般式(6−1)〜(6−12)、(7−1)〜(7−12)中、P
5〜P
8は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を表す。当該P
5〜P
8におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。P
5〜P
8としては、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることが好ましく、生体に対する安全性の点からC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることがより好ましく、C
1-20アルキル基又はC
1-20アルコキシ基であることがさらに好ましく、C
1-10アルキル基又はC
1-10アルコキシ基であることがよりさらに好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0192】
一般式(6−1)〜(6−12)、(7−1)〜(7−12)中、n5〜n8は、互いに独立して、0〜3の整数を表す。一分子中に、P
5が複数個存在した場合(すなわち、n5が2又は3の場合)、複数のP
5はいずれも同種の官能基であってもよく、異種類の官能基であってもよい。P
6〜P
8についても同様である。
【0197】
一般式(6−1)〜(6−12)、(7−1)〜(7−12)で表される化合物としては、P
5〜P
8が互いに独立してC
1-20アルキル基又はC
1-20アルコキシ基であり、n5〜n8が互いに独立して0〜2であるものが好ましく、P
5及びP
6が互いに独立してC
1-20アルキル基であり、n5及びn6が互いに独立して0〜2であり、P
7及びP
8が互いに独立してC
1-20アルコキシ基であり、n7及びn8が互いに独立して0〜1であるものがより好ましく、P
5及びP
6が互いに独立してC
1-20アルキル基であり、n5及びn6が互いに独立して1〜2であり、P
7及びP
8が互いに独立してC
1-20アルコキシ基であり、n7及びn8が1であるものがさらに好ましい。
【0198】
一般式(6−1)〜(6−12)で表される化合物としては、具体的には、下記の式(6−1−1)〜(6−12−1)で表される化合物が挙げられる。「λ」は各化合物の溶液中での吸収スペクトルのピーク波長であり、「Em」は蛍光スペクトルのピーク波長である。
【0201】
<放射線不透過性物質>
本発明に係る樹脂組成物が含有する放射線不透過性物質としては、放射線の透過性が、皮膚や筋肉、脂肪等よりも低いものが好ましく、骨やカルシウム等よりも低いものがより好ましい。このような放射線不透過性物質としては、例えば、非金属原子からなるものとして、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、臭素、臭化物、ヨウ素、ヨウ化物等が挙げられ、金属原子を含むものとして、チタン、亜鉛、ジルコニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、ビスマス等の金属の金属粉末や酸化物等が挙げられる。また、雲母、タルク等も放射線不透過性物質として用いることができる。
【0202】
本発明に係る樹脂組成物が、例えば生体内で使用される医療用具の素材として用いられる場合には、生体適合性の高い放射線不透過性物質を含有することが好ましい。生体適合性の高い放射線不透過性物質としては、例えば、硫酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タングステン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ジルコニウム、チタン、白金、次硝酸ビスマス、ビスマス等が挙げられる。本発明において用いられる放射線不透過性物質としては、安全性等の点から、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、又は酸化ビスマスが特に好ましい。本発明に係る樹脂組成物は、1種類の放射線不透過性物質を含有していてもよく、2種類以上を含有していてもよい。本発明に係る樹脂組成物においては、前記で挙げられた放射線不透過性物質の1種又は2種以上を含有するものが好ましい。
【0203】
本発明において用いられる放射線不透過性物質の形状は、配合された樹脂組成物に放射線不透過性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、粒子状、フィラメント状、不定形状のいずれであってもよい。本発明において用いられる放射線不透過性物質としては、樹脂への分散性、放射線透過性、前記発光物質の発光強度に対する影響の点から、粒子状であることが好ましい。
【0204】
<樹脂成分>
本発明に係る樹脂組成物が含有する樹脂成分は、特に限定されるものではなく、配合させる発光物質や放射線不透過性物質の種類、成形体を形成した際に要求される製品品質等を考慮して、公知の樹脂組成物やその改良物から適宜選択して用いることができる。例えば、当該樹脂成分は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。成形体に使用する場合には、熱硬化樹脂は溶融混練時に硬化する可能性があることから、本発明に係る樹脂組成物が含有する樹脂成分としては、熱可塑性樹脂であることが好ましい。本発明において用いられる樹脂成分としては、1種のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上を混合する場合には、相溶性の高い樹脂同士を組み合わせて用いることが好ましい。
【0205】
本発明において用いられる樹脂成分としては、例えば、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のウレタン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリトリメチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリブチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂;ナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン(PS)、イミド変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合(SAN)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、シクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂;ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、イソシアヌレート系エポキシ樹脂、ヒダントイン系エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂;メラミン系樹脂やユリア樹脂等のアミノ系樹脂;フェノール系樹脂;不飽和ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0206】
本発明に係る樹脂組成物が発光物質として前記式(I)で表されるアゾ−ホウ素錯体化合物を含有する場合には、当該アゾ−ホウ素錯体化合物の分散性が高いことから、樹脂成分としては、PU、TPU、PET、PVC、PC、PMMA、PSが好ましく、これらのうちの2種以上を混合して使用しても構わない。
【0207】
本発明に係る樹脂組成物が発光物質として前記一般式(II
1)、一般式(II
2)、一般式(II
3)、又は一般式(II
4)で表される化合物を含有する場合には、当該化合物の分散性が高いことから、樹脂成分としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂又はアクリル系樹脂が好ましく、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び塩化ビニル系樹脂がより好ましい。特に、本発明に係る樹脂組成物を医療用材料として用いる場合には、血液などの体液への溶解性が低く、使用環境下において溶出し難い点や生体適合性を考慮すると、PTFE(テフロン(登録商標))、シリコーン、PU、TPU、PP、PE、PC、PET、PS、ポリアミド、PVCがさらに好ましく、TPU、PU、PP、PE、PET、PSがよりさらに好ましい。
【0208】
なお、本発明に係る樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物の場合、樹脂成分としては、樹脂成分全体として熱可塑性樹脂であればよく、少量の非熱可塑性樹脂を含有していてもよい。同様に、本発明に係る樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物の場合、樹脂成分としては、樹脂成分全体として熱硬化性樹脂であればよく、少量の非熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
【0209】
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂成分に発光物質と放射線不透過性物質を混合・分散させることにより製造できる。本発明に係る樹脂組成物が含有する本発明に係る発光物質は、1種類のみであってもよく、2種類以上を含有していてもよい。
【0210】
樹脂組成物中の発光物質の含有量は、発光物質が樹脂に混合し得る濃度であれば特に限定されるものでは無いが、発光強度とその検出感度の観点からは0.0001質量%以上が好ましく、濃度消光や発光の再吸収による検出感度の観点からは1質量%以下が好ましく、0.001〜0.5質量%の範囲がより好ましく、0.001〜0.05質量%の範囲がさらに好ましい。
【0211】
前記発光物質が近赤外蛍光材料の場合、本発明に係る樹脂組成物中の近赤外蛍光材料の含有量は、当該近赤外蛍光材料が樹脂に混合し得る濃度であれば特に限定されるものでは無いが、蛍光強度とその検出感度の観点からは0.0001質量%以上が好ましく、濃度消光や蛍光の再吸収による検出感度の観点からは1質量%以下が好ましく、0.001〜0.5質量%の範囲がより好ましい。また、本発明において用いられる近赤外蛍光材料は、樹脂中においても高いモル吸光係数と高い量子収率を有しているため、樹脂中での近赤外蛍光材料濃度が比較的低くても、その発光をカメラ等で十分視認できる。近赤外蛍光材料濃度が低いことは、溶出する可能性が低くなること、樹脂組成物から加工された成形体からブリードアウトする可能性が低くなること、透明性が要求される成形体を加工できる等の点から望ましい。
【0212】
樹脂組成物中の放射性不透過性物質の添加量は、放射線を遮蔽し得る濃度であれば特に限定されるものでは無いが、放射線遮蔽能の観点からは1質量%以上が好ましく、樹脂組成物の機械的強度の観点からは80質量%以下が好ましく、5〜50質量%の範囲がより好ましく、15〜45質量%の範囲がさらに好ましい。
【0213】
発光物質及び放射線不透過性物質を樹脂成分に混合・分散する方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法で行ってもよく、さらに添加剤を併用しても構わない。例えば、適当な溶媒に溶解させた樹脂組成物溶液に、発光物質と放射線不透過性物質を添加して分散させてもよい。また、溶媒を使用しない場合も、樹脂組成物に発光物質と放射線不透過性物質を添加して溶融混練させ、本発明に係る樹脂組成物を得ることができる。こうして樹脂中に発光物質と放射線不透過性物質が均一に分散された状態の樹脂組成物が得られる。
【0214】
なお、樹脂と蛍光材料を溶融混練することによって蛍光材料を熱可塑性樹脂等に分散させる場合に、蛍光材料の分解点未満の温度で溶融混練を行った場合でも、樹脂や蛍光材料の種類及び混練条件によっては、分散不良を起こしてしまったり、蛍光材料が分解してしまうなどの原因によって蛍光を発しないことがある。そして、蛍光材料が熱可塑性樹脂等に分散できるか否かは、蛍光材料の熱物性等から予測するのは困難である。
【0215】
これに対して、前記一般式(II
1)、一般式(II
2)、一般式(II
3)、又は一般式(II
4)で表される化合物は、様々な樹脂成分に均一に混合・分散させることが可能であり、樹脂中においても高い量子収率で蛍光を発することが出来る。その理由は明らかではないが、以下のように推察できる。溶融混練等の方法で蛍光材料を分散させる場合、凝集等を起こしてしまうと濃度消光により蛍光の量子収率は低くなることが考えられる。そこで、該蛍光材料が蛍光を効率よく発するためには、樹脂と相溶性が高く、均一に分散できることが望ましい。相溶性が高いかどうかの1つの指標としてSP値が挙げられる。蛍光材料のSP値と樹脂のSP値の差が小さければ、相溶性が高く均一に分散させることができる。一方、SP値等が異なる場合にも、他の物性パラメーターで説明することもできる。例えば、蛍光材料の溶解度、分配係数、比誘電率、分極率等の計算値、又は実測値から、樹脂との相溶性を説明できる。また、樹脂と蛍光材料の相溶性は、樹脂の結晶性によっても異なる場合がある。
【0216】
その他にも、樹脂と蛍光材料との相溶性は、蛍光材料の分子自体が有する官能基によって制御できる。例えば、ポリプロピレンやポリエチレンのような脂溶(疎水)性のポリオレフィン系樹脂に分散させる場合は、蛍光材料分子が疎水性基を有していることが好ましい。例えば、脂環式アルキル基、長鎖アルキル基、ハロゲン化アルキル基、又は芳香環等の疎水性基を蛍光材料分子に導入することにより、樹脂との相溶性を向上させることができる。ただし、これらの官能基に限定されるわけではない。また、ポリウレタンやポリアミド等の極性の高い樹脂に分散させる場合は、蛍光材料分子がカルボキシル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、エステル、アミド等の親水性基を有していることが好ましい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0217】
樹脂との相溶性を高めるためには、色素分子の凝集を抑える必要がある。蛍光材料の場合、共役系の伸張や平面性の確保から分子に芳香環や複素環の導入が行われる。しかし、これらの環の導入により、分子間の相互作用が強くなり、スタッキングを起こしやすく、凝集しやすい傾向にある。前記一般式(II
1)、一般式(II
2)、一般式(II
3)、又は一般式(II
4)で表される化合物は、ホウ素原子を中心とした広い共役平面からなる骨格を有しているため、凝集しやすいが、電子供与性基や電子求引性置換基を導入して分極させることや嵩高い官能基を導入することにより色素の凝集が抑えられており、様々な樹脂への相溶性が実現できていると推測される。
【0218】
相溶性の指標となる分配係数やSP値は、市販ソフトから計算で得られる「ハンセンの溶解性パラメーター」から、水/オクタノール分配係数やヒルデブランドのSP値として見積もることができる。例えば、前記一般式(II
1)、一般式(II
2)、一般式(II
3)、又は一般式(II
4)で表される化合物のうち、下記化合物(8−1)〜(8−8)で表される化合物の分配係数とSP値は以下の通りである。
【0220】
本発明において用いられる近赤外蛍光材料は、PP等の樹脂成分と溶融混練して均一に分散・混合させることが可能であり、混練された樹脂組成物や当該樹脂組成物から加工された成形体は、高い発光量子収率で安定して近赤外蛍光を発することができる。本発明において用いられる近赤外蛍光材料が、他の多くの有機近赤外蛍光材料と異なり、樹脂組成物と溶融混練した場合でも高い発光特性を示す理由は明らかではないが、本発明において用いられる近赤外蛍光材料は、広い共役平面からなる堅牢な骨格を有しているため、耐熱性が高く、かつ樹脂への相溶性が優れるためと推察される。なお、BODIPY色素及びDPP系ホウ素錯体が、溶融混練のように負荷の高い処理によっても蛍光特性が損なわれないことは、本発明者らが初めて見出した知見である。
【0221】
本発明に係る樹脂組成物は、発光物質と放射線不透過性物質の両方を含んでいるため、発光検出と放射線検出の両方に適している。さらに、本発明に係る樹脂組成物は、同種等量の発光物質を含有させた樹脂組成物よりも、励起光源方向への発光強度が明らかに強く、発光検出の感度が高い。例えば、蛍光材料と放射線不透過性物質の両方を含有している本発明に係る樹脂組成物は、同種等量の蛍光材料のみを含有させた樹脂組成物よりも、極大蛍光波長及びその付近の蛍光強度を、30%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上増強させることができる。放射線不透過性物質による発光強度増強効果(増感効果)が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。例えば、(1)放射線不透過性物質を含有しているため、励起光が不透過物質に当たり、樹脂中を透過せず、面付近で散乱し、結果的に励起光が局所的に増強されたため、(2)透明平滑フィルムでは、蛍光が全反射の法則により端面で発光しやすいが、放射線不透過物質により平滑性が失われ全反射が減り、また蛍光が内部で散乱し、励起光源方向にも強く出るため、又は(3)放射線不透過性物質と共存することにより、発光物質の分散性が向上したため(発光物質同士の相互作用が低下し、消光が減り、発光効率が高くなったため)、ではないかと推察される。
【0222】
発光物質と放射線不透過性物質の混合比には、特に制限は無いが、発光強度を高める観点からは、混合比(発光物質の質量/放射線不透過性物質の質量)は、0.00001〜0.1の範囲が好ましく、0.00002〜0.01の範囲がより好ましい。
【0223】
本発明に係る樹脂組成物が、20%以上の高い量子収率(放出された光子数/吸収された光子数)の発光物質を含有する場合には、特に問題にならないが、量子収率が低い発光物質を含有する場合には、本発明に係る樹脂組成物のストークスシフト(極大吸収波長と極大発光波長の差)に対する理解も重要である。
【0224】
励起光によるノイズカットのためのフィルターが備えられている一般的な発光検出器を用いる場合、本発明に係る樹脂組成物のストークスシフトが小さいと、発光がフィルターによりカットされるため、高感度で検出することが難しい。そのため、本発明に係る樹脂組成物は、ストークスシフト(極大吸収波長と極大発光波長の差)が10nm以上のものが好ましく、ストークスシフトが20nm以上のものがより好ましい。ストークスシフトが大きいほど、励起光によるノイズカットのためのフィルターが備えられている一般的な検出器を用いた場合でも、当該成形体から発される発光をより高感度で検出することが可能である。
【0225】
ただし、ストークスシフトが小さい場合でも、以下のような条件では、本発明に係る樹脂組成物からの近赤外蛍光を高感度に検出可能である。例えば、極大吸収波長よりも短波長光で励起することができれば、ノイズカットをしても蛍光を検出することが可能である。また、蛍光スペクトルがブロードの場合には、ノイズカットしても十分に蛍光を検出することが可能である。一方で、蛍光材料の中には蛍光ピークを複数有しているものもある。その場合は、ストークスシフトが小さくても、より長波長側に蛍光ピーク(第2のピーク)があれば、ノイズカットによるフィルターが備えられている検出器を用いた場合でも高感度で検出することが可能である。本発明に係る樹脂組成物が複数の蛍光を有している場合における長波長側の蛍光ピーク波長は、極大吸収波長との差が30nm以上であればよく、50nm以上であれば好ましい。なお、励起光源やカットフィルターなどを適切に選択すれば、上述した条件に限定されるものではない。
【0226】
近赤外蛍光材料や赤外蛍光材料を含有する場合には、本発明に係る樹脂組成物は、近赤外領域の励起光で励起しても目視状態で色彩が変わらず、かつ、不可視の近赤外領域の蛍光を発し、検出器で検出できる。したがって、近赤外領域の励起光に対しては極大吸収波長が600nm以上であればよいが、吸収効率の観点からは、極大吸収波長が励起光の波長に近い方が好ましく、650nm以上がより好ましく、665nm以上がさらに好ましく、680nm以上であることが特に好ましい。さらに、インプラントなどの医療用具として使用する場合には、700nm以上が好ましい。
【0227】
近赤外蛍光材料や赤外蛍光材料を含有する場合には、本発明に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体は、被照射物の色彩が変わらず、かつ、検出感度を考慮すると、極大蛍光波長が650nm以上であれば実用的には問題がないが、700nm以上であることが好ましく、720nm以上であることがより好ましい。蛍光ピークを複数有する場合には、極大蛍光ピークの波長が720nm以下であっても、740nm以上に充分な検出感度を有する蛍光ピークがあればよい。その場合、長波長側の蛍光ピーク(第2のピーク)の強度が極大蛍光波長の強度に対して、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
【0228】
本発明に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体としては、650nm〜1500nmの範囲に強い吸収があり、この範囲で強い蛍光を発することが好ましい。650nm以上の光は、ヘモグロビンによる影響を受けにくく、1500nm以下の光は、水の影響を受けにくい。つまり、650nm〜1500nmの範囲内の光は、皮膚透過性が高く、生体内の夾雑物質の影響を受けにくいため、皮下などに埋め込まれている医療用インプラントを可視化するために用いられる光の波長領域として好適である。極大吸収波長と極大蛍光波長が650nm〜1500nmの範囲にある場合、本発明に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体は、650nm〜1500nmの範囲内の光による検出に適しており、生体内で使用される医療用具等として好適である。
【0229】
本発明に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、前記樹脂成分と発光物質と放射線不透過性物質以外の他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、結晶化促進剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0230】
<成形体>
本発明に係る樹脂組成物を加工することにより、発光検出と放射線検出の両方が可能な成形体が得られる。成形方法は、特に限定されないが、キャスティング(注型法)、金型を用いた射出成形、圧縮成形及びTダイ等による押し出し成形、ブロー成形などが挙げられる。
【0231】
成形体の製造において、本発明に係る樹脂組成物のみから形成してもよく、本発明に係る樹脂組成物とその他の樹脂組成物を原料として用いてもよい。例えば、成形体の全部を本発明に係る樹脂組成物により成形してもよく、成形体の一部分のみを本発明に係る樹脂組成物により成形してもよい。本発明に係る樹脂組成物は、成形体の表面部分を構成する原料として用いられることが好ましい。例えば、カテーテルを成形する場合、カテーテルの先端部のみを本発明に係る樹脂組成物により成形し、残りの部分を近赤外蛍光材料を含有していない樹脂組成物により成形することにより、先端部のみが近赤外蛍光を発するカテーテルが製造できる。また、本発明に係る樹脂組成物と近赤外蛍光材料を含有していない樹脂組成物とを交互に積層して成形することにより、ストライプ状に近赤外蛍光を発する成形体が製造できる。その他、成形体の視認性を高めるための表面コーティングを行ってもよい。
【0232】
放射線検出は、市販されているX線装置等を使用し、常法により実施することができる。また、発光検出も、市販されている蛍光又は燐光検出装置等を使用し、常法により実施することができる。蛍光又は燐光検出に用いる励起光としては、任意の光源を使用でき、波長幅が長い近赤外線ランプの他、波長幅が狭いレーザー、LEDなどを使用することができる。
【0233】
近赤外蛍光材料や赤外蛍光材料を含有する樹脂組成物から得られた成形体は、近赤外領域の光を照射しても色彩が変わらず、従来よりも高感度に検出可能な近赤外蛍光を発するため、当該成形体は、特に、患者の体内に挿入したり留置したりする医療用具に好適である。
【0234】
近赤外蛍光材料や赤外蛍光材料を含有する樹脂組成物から得られた成形体を蛍光検出する場合には、近赤外領域の励起光を照射することが好ましいが、被照射物の色彩が多少赤みを帯びても構わない場合には、必ずしも近赤外線領域の励起光を使用する必要はない。例えば、励起光を照射して体内の医療用具を蛍光検出しようとした場合、皮膚などの生体に対する透過性の高い波長領域で励起光を使用することが必要となるが、この場合には、生体透過性の高い650nm以上の励起光を使用すればよい。
【0235】
当該医療用具としては、例えば、ステント、コイル塞栓子、カテーテルチューブ、注射針、留置針、ポート、シャントチューブ、ドレーンチューブ、インプラント等が挙げられる。
【実施例】
【0236】
以下、実施例及び比較例等を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0237】
[製造例1]アゾ−ホウ素錯体化合物の合成
(1) ヒドラゾン化合物の製造
合成装置用ナスフラスコに、オルトキノン誘導体(200mg,5.33×10
−4mol)と2−ヒドラジノ安息香酸塩酸塩(402mg,2.13×10
−3mol)を加えた後、さらにメタノール:水:ジメチルスルホキシド=3:4:4の混合溶媒(55mL)を加え、50℃で加熱撹拌した。反応を開始すると、反応溶液に結晶が析出した。反応開始から13時間後、反応溶液の加熱をやめ、撹拌しながら室温で放冷した。析出した結晶を濾別し、メタノール:水=4:1の混合溶媒で洗浄し、赤茶色粉末状結晶を得た(収量:96mg,収率:35.3%)。この化合物は溶解性が低いため、これ以上精製せず、ホウ素錯体化を行った。
【0238】
(2) アゾ−ホウ素錯体化合物の製造
上記(1)で得られた赤茶色粉末状結晶(200mg,3.92×10
−4mol)を300mL容ナスフラスコに入れ、ジクロロメタン(70mL)を加えた。さらにトリエチルアミン(137mg,1.37×10
−3mol)を加えてヒドラゾン化合物を完全に溶解させてから、三フッ化ホウ素エーテル錯塩(334mg,2.35×10
−3mol)を滴下し、室温で撹拌して反応を行った。反応開始から3日間後、TLCで反応の進行が確認できなくなったため、水を加えて反応を停止した。ジクロロメタン層を分離し水洗した後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=10/1)で精製し、緑色粉末結晶である目的化合物を得た(収量:62.2mg,収率:29.4%)。
【0239】
1H-NMR(CDCl
3)δ=1.03(6H,t,J=7.46),1.40-1.49(4H,m),1.66-1.74(4H,m),3.47(4H,t),6.78(1H,d,J=2.20),6.90(1H,dd,J=2.20,J=9.16),7.48(1H,t,J=7.44),7.66-7.78(3H,m),8.13(1H,d,J=9.16),8.30-8.33(2H,m),8.39(1H,d,J=7.70),8.75(1H,d,J=7.70)
【0240】
【化50】
【0241】
[製造例2]近赤外蛍光色素Aの合成
アルゴン気流下、500mL容三口フラスコに、4−メトキシフェニルボロン酸(2.99g、19.7mmol)を入れ、トルエン(120mL)に溶解し、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン複合体(1:1)(100mg)、エタノール(30mL)、5−ブロモ−2−フラルデヒド(3.46g、19.8mmol)及び2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(20mL)を加え、80℃で14時間撹拌した。反応終了後、有機相を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、乾燥剤を濾別して溶媒を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=19/1→4/1)で分離精製することにより、5−(4−メトキシフェニル)−フラン−2−カルボアルデヒド(a−1)を薄黄色液体として得た(収量:3.39g、収率:84.8%)。
【0242】
次に、1L容三口フラスコに、アルゴン気流下、化合物(a−1)(3.39g、16.8mmol)とアジド酢酸エチル(8.65g、67.0mmol)をエタノール(300mL)に溶解させた後、得られた溶液に、20質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液(22.8g、67.0mmol)を0℃氷浴中でゆっくり滴下し、2時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてpHを弱酸性に調整した後、水を加えて吸引濾過を行い、得られた濾物を乾燥することにより、2−アジド−3−[5−(4−メトキシフェニル)−フラン−2−イル]−アクリル酸エチルエステル(a−2)の黄色固体を得た(収量:3.31g、収率:63.1%)。
【0243】
さらに、200mL容ナスフラスコに、化合物(a−2)(3.31g、10.6mmol)を入れ、トルエン(60mL)に溶解させた後、1.5時間還流撹拌した。還流撹拌後の溶液を減圧濃縮した後、得られた粗生成物を再結晶(溶液:ヘキサン、酢酸エチル)させた後に吸引濾過し、得られた濾物を乾燥することにより、2−(4−メトキシフェニル)−4H−フロ[3.2−b]ピロール−5−カルボン酸エチルエステル(a−3)の茶色結晶を得た(収量:2.32g、収率:76.8%)。
【0244】
次いで、300mL容フラスコに、化合物(a−3)(1.90g、6.66mmol)を入れ、エタノール(60mL)、水酸化ナトリウム(3.90g、97.5mmol)を水(30mL)に溶解した水溶液を加え、1時間還流撹拌した。還流撹拌後の溶液は、放冷した後に6mol/L塩酸水溶液を加えて酸性に調整した後に、水を加えて吸引濾過を行い、得られた濾物を真空乾燥することにより、2−(4−メトキシフェニル)−4H−フロ[3.2−b]ピロール−5−カルボン酸(a−4)の灰色固体を得た(収量:1.56g、収率:91%)。
【0245】
続いて、200mL容三口フラスコに、化合物(a−4)(327mg、5.52mmol)、トリフルオロ酢酸(16.5mL)を入れ、45℃で攪拌した。化合物(a−4)が溶解した後、発砲がおさまるまで、15分間撹拌した。撹拌後の溶液に、無水トリフルオロ酢酸(3.3mL)を加えて80℃で1時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び氷を加えて溶液を中和した後、吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥することにより、化合物(a−5)の黒色固体を得た(収量:320mg)。化合物(a−5)は、精製せずにそのまま次の反応に用いた。
【0246】
アルゴン気流下、化合物(a−5)(320mg)を200mL容三口フラスコに入れ、トルエン(70mL)、トリエチルアミン(1.0mL)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.5mL)を滴下し、30分間加熱還流した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、有機相を回収した。当該有機相は、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別して溶媒を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=20/1(体積比))で分離精製し、近赤外蛍光色素Aの緑色結晶を得た(収量:20mg、収率:6%)。
【0247】
【化51】
【0248】
[製造例3]近赤外蛍光色素Bの合成
近赤外蛍光色素Bは、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ、及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照し、以下のように行った。
2L容四口フラスコに、4−ヒドロキシベンゾニトリル(25.3g、212mmol)、アセトン(800mL)、炭酸カリウム(100g、724mmol)、1−ブロモオクタン(48g、249mmol)を入れ、終夜加熱還流した。無機塩を濾過後、アセトンを減圧除去した。得られた残渣に酢酸エチルを加え、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで処理した。硫酸マグネシウムを濾別し、溶媒を減圧除去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、4−オクトキシベンゾニトリル(b−1)の無色透明液体を得た(収量:45.2g、収率:92%)。
【0249】
次に、アルゴン気流下、500mL容四口フラスコに、tert−ブチルオキシカリウム(25.18g、224.4mmol)、tert−アミルアルコール(160mL)を入れた後、さらに先に合成した化合物(b−1)(14.8g、64mmol)をtert−アミルアルコール(7mL)と混合した溶液を加え、加熱還流した。加熱還流下、コハク酸ジイソプロピルエステル(6.5g、32mmol)をtert−アミルアルコール(10mL)に混合した溶液を約3時間かけて滴下し、滴下終了後、6時間加熱還流した。室温に戻した後、得られた粘性の高い反応液を酢酸:メタノール:水=1:1:1の溶液に入れ、加熱還流を数分行ったところ、赤い固体が析出した。当該固体を濾別し、加熱したメタノール及び水で洗浄することによって、3,6−(4−オクチルオキシフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン(b−2)の赤色固体を得た(収量:5.6g、収率:32%)。
【0250】
また、200mL容三口フラスコに、4−tert−ブチルアニリン(10g、67mmol)、酢酸(70mL)、チオシアン酸ナトリウム(13g、160mmol)を入れた。系内を15℃以下に保ちながら、臭素(4.5mL、87mmol)を約20分間かけて滴下し、その後15℃以下で3.5時間攪拌した。反応液を28%アンモニア水(150mL)に入れ、しばらく攪拌し、析出した固体を濾別後、当該固体をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水で洗浄した。ジエチルエーテルを減圧除去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル)で精製し、2−アミノ−6−tert−ブチルベンゾチアゾール(b−3)を淡黄色固体として得た(収量:10.32g、収率:69%)。
【0251】
次に、水冷下、1L容四口フラスコに、水酸化カリウム(75.4g、1340mmol)、エチレングリコール(175mL)を入れた。系内をアルゴン雰囲気下にし、化合物(b−3)(7.8g、37.8mmol)を入れ、系内の酸素を除去するために、アルゴンでバブリングを行った後、110℃で18時間反応させた。反応液を40℃以下に水冷し、予めアルゴンバブリングをした2mol/L塩酸を系内に滴下して、中和を行った(pH7付近)。析出した白色固体を濾別し、水洗後、減圧乾燥した。その後、当該白色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、4−tert−ブチル−2−メルカプトアニリン(b−4)の白色固体を得た(収量:2.39g、収率:35%)。
【0252】
さらに、100mL容三口フラスコに、酢酸(872mg、14.5mmol)、アセトニトリル(30mL)を入れ、系内をアルゴン雰囲気下にした。アルゴン雰囲気下、マロノニトリル(2.4g、36.3mmol)、化合物(b−4)(2.39g、13.2mmol)を加え、2時間加熱還流した。アセトニトリルを減圧除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで処理した。硫酸マグネシウムを濾別し、溶媒を減圧除去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、2−(6−tert−ブチルベンゾチアゾール−2−イル)アセトニトリル(b−5)の単黄色固体を得た(収量:1.98g、収率:65%)。
【0253】
続いて、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、化合物(b−2)(1.91g、3.5mmol)、化合物(b−5)(1.77g、7.68mmol)、脱水トルエン(68mL)を加え、加熱還流した。加熱還流下、塩化ホスホリル(2.56mL、27.4mmol)をシリンジで滴下し、さらに2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン(40mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムを濾別し、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にかけて不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、前駆体(b−6)の緑色固体を得た(収量:1.56g、収率:46%)。
【0254】
最後に、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、前駆体(b−6)(1.52g、1.57mmol)、トルエン(45mL)、トリエチルアミン(4.35mL、31.4mmol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.88mL、62.7mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応液を氷冷し、析出した固体を濾別し、当該固体を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、50%メタノール水溶液及びメタノールで洗浄し、減圧乾燥させた。得られた残渣をトルエンに溶解し、メタノールを加えて沈殿させることにより、近赤外蛍光色素Bの濃緑色固体を得た(収量:1.25g、収率:75%)。
【0255】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.90(d、2H)、7.72−7.69(m、6H)、7.51(dd、2H)、7.08(d、2H)、4.07(t、4H)、1.84(m、4H)、1.52(s、18H)、1.35−1.32(m、24H)、0.92(t、6H)ppm。
【0256】
【化52】
【0257】
[製造例4]近赤外蛍光色素Cの合成
近赤外蛍光色素Cは、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照にして、以下のように行った。
300mL容三口フラスコに、4−tert−ブチルアニリン(29.8g、0.2mol)、6mol/L塩酸(100mL)を加え、還流しながらクロトンアルデヒド(15.4g、0.22mol)を滴下し、さらに2時間還流した。還流を停止し、熱いうちに塩化亜鉛(27.2g、0.2mol)を加えて、室温で一晩撹拌した。上澄み液を除き、黄色いシロップ状の残渣にイソプロパノールを加えて2時間還流した。混合物を70℃に冷却し、石油エーテル(200mL)を加え、析出した結晶を濾集し、ジエチルエーテルで洗浄後、乾燥させることにより、亜鉛錯体を得た。この亜鉛錯体を水/アンモニア(120mL/60mL)の混合液に加え、ジエチルエーテルジエチルエーテル(80mL)で3回抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して6−tert−ブチル−2−メチル−キノリン(c−1)の黄色液体を得た(収量16.2g、収率41%)。
【0258】
次に、200mL容二口フラスコに、化合物(c−1)(16.0g、80mmol)、クロロホルム(50mL)を入れて撹拌し、トリクロロイソシアヌル酸(6.52g、28mmol)を分割しながら加えた。混合物を1時間還流後、析出した固体を濾過、クロロホルムで洗浄し、得られた有機層を1mol/Lの硫酸で3回抽出した。水層を合わせて、炭酸ナトリウム水溶液でpH3になるよう調整し、ジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して2−クロロメチル−6−tert−ブチル−キノリン(c−2)の単黄色結晶を得た(収量4.8g、収率25.7%)。
【0259】
さらに、100mL容三口フラスコに、化合物(c−2)(4.7g、20mmol)、シアン化ナトリウム(1.47g、30mmol)、少量のヨウ化ナトリウム、DMF(50mL)を入れ、60℃で2時間反応した。反応液を冷却後、水(200mL)/酢酸エチル(300mL)で抽出し、得られた酢酸エチル層をさらに水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮し、石油エーテルで再結晶し、2−(6−tert−ブチルキノリン−2−イル)アセトニトリル(c−3)の白色結晶を得た(収量1.9g、収率42.4%)。
【0260】
続いて、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、製造例3で得られた化合物(b−2)(2.18g、4.0mmol)、化合物(c−3)(1.9g、8.5mmol)、脱水トルエン(68mL)を加え、加熱還流した。加熱還流下、オキシ塩化リン(2.62mL、28mmol)をシリンジで滴下し、さらに2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン(40mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にかけて不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、前駆体(c−4)の緑色固体を得た(収量:1.84g、収率:48%)。
【0261】
最後に、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、前駆体(c−4)(1.72g、1.8mmol)、トルエン(45mL)、トリエチルアミン(4.35mL、31.4mmol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.88mL、62.7mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応液を氷冷し、析出した固体を濾別後、当該固体を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、50%メタノール水溶液及びメタノールで洗浄し、減圧乾燥させた。得られた残渣をトルエンに溶解し、メタノールを加えて、沈殿させることにより、近赤外蛍光色素Cの濃緑色固体を得た(収量:1.10g、収率:58%)。
【0262】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=8.42(m、2H)、8.14(d、2H)、7.74(dd、2H)、7.72(d、4H)、7.66(m、4H)、7.06(m、4H)、4.08(t、4H)、1.85(m、4H)、1.53(m、4H)、1.45−1.2(m、16H)、1.36(s、18H)、0.91(t、6H)ppm。
【0263】
【化53】
【0264】
[製造例5]近赤外蛍光色素Dの合成
近赤外蛍光色素Dは、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照し、以下のように行った。
アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、水素化ナトリウム(60%分散体、流動パラフィン)(4.0g、100mmol)、脱水DMF(40mL)を加え、0℃に冷却した。同温で撹拌しながらシアノ酢酸tert−ブチルエステル(11.9g、85mmol)をゆっくりと加え、室温で1時間撹拌した。次いで、2−クロロ−4,6−ジメチルピリミジン(10g、70mmol)を加えて、90℃で36時間反応した。反応液を5%塩化ナトリウム水溶液(200ml)が入った三角フラスコに注ぎ、酢酸で中和した。析出した黄色沈殿物を濾集し、水で洗浄後、乾燥させることにより、シアノ−(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)酢酸tert−ブチルエステル(d−1)を得た(収量9.8g、収率56.9%)。
【0265】
次に、300mL容三口フラスコに、化合物(d−1)(9.8g、40mmol)、ジクロロメタン(60mL)、トリフルオロ酢酸(30mL)を加え、室温で終夜反応した。反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液で中和し、ジクロロメタン層を分離後、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/5)で精製し、(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)アセトニトリル(d−2)の白色結晶を得た(収量0.85g、収率14.5%)。
【0266】
続いて、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、製造例3で得られた化合物(b−2)(1.36g、2.5mmol)、化合物(d−2)(0.81g、5.5mmol)、脱水トルエン(50mL)を加え、加熱還流した。加熱還流下、塩化ホスホリル(2.34mL、25mmol)をシリンジで滴下し、さらに2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン(40mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にかけて不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=50/1)で精製し、前駆体(d−3)の緑色固体を得た(収量:0.54g、収率:27%)。
【0267】
最後に、アルゴン気流下、100mL容二口フラスコに、前駆体(d−3)(522mg、0.65mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(258mg、2.0mmol)、ジクロロメタン(20mL)を入れ、還流しながらクロロジフェニルボラン(600mg、3.0mmol)を加え、終夜反応した。反応液を水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をメタノールで洗浄後、カラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=100/1)で精製し、近赤外蛍光色素Dの緑色固体を得た(収量:0.24g、収率:32.6%)。
【0268】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.11(m、20H)、6.43(m、4H)、6.25(s、2H)、6.02(m、4H)、3.92(t、4H)、2.27(s、6H)、1.78(m、10H)、1.5−1.2(m、20H)、0.85(t、6H)ppm。
【0269】
【化54】
【0270】
[製造例6]近赤外蛍光色素Eの合成
近赤外蛍光色素Eは、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照し、以下のように行った。
1−ブロモオクタン(48g、249mmol)に代えて、1−ブロモ−2−エチルヘキサン(48g、249mmol)を使用した以外は製造例3と同様の操作を行い、3,6−(4−(2−エチルヘキシル)オキシフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン(e−2)の赤色固体を得た(収量:4.6g)。
【0271】
次に、100mL容二口フラスコに、2−アミノ−4−tert−ブチルフェノール(5.24g、31.7mmol)、2−シアノ−アセチミディック酸エチルエステル塩酸塩(4.45g、33.3mmol)、ジクロロメタン(30mL)を加え、終夜還流した。反応液をジクロロメタン(100mL)で希釈し、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を留去して(5−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)−アセトニトリル(e−3)の黄色液体を得た(収量6.3g、収率88%)。
【0272】
続いて、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、化合物(e−2)(1.64g、3.0mmol)、化合物(e−3)(1.41g、6.6mmol)、脱水トルエン(50mL)を加え、加熱還流した。加熱還流下、塩化ホスホリル(2.34mL、25mmol)をシリンジで滴下し、さらに2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン(40mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にかけて不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で精製し、前駆体(e−4)の青緑色固体を得た(収量:0.98g、収率:35%)。
【0273】
最後に、アルゴン気流下、100mL容二口フラスコに、前駆体(e−4)(973mg、1.0mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(387mg、3.0mmol)、ジクロロメタン(30mL)を入れ、還流しながらクロロジフェニルボラン(900mg、4.5mmol)を加え、終夜反応した。反応液を水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をメタノールで洗浄後、カラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で精製し、近赤外蛍光色素Eの緑色固体を得た(収量:0.42g、収率:35%)。
【0274】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.11(m、24H)、6.62(m、4H)、6.32(m、6H)、3.8−3.9(m、4H)、2.27(s、6H)、1.8(m、2H)、1.6−1.3(m、16H)、1.38(s、18H)、0.9−1.0(m、12H)ppm。
【0275】
【化55】
【0276】
[製造例7]近赤外蛍光色素Fの合成
近赤外蛍光色素FはJournal of Organic Chemistry、2011年、第76巻、4489〜4505ページ記載の方法に従って合成した。
アルゴン気流下、500mL容四口フラスコに、2−エチルチオフェン(11.2g、100mmol)、脱水THF(80mL)を加え、−78℃で撹拌した。この溶液にn−ブチルリチウム(68.8mL、1.6mol/Lヘキサン溶液)を滴下して同温で1時間撹拌後、エチルクロロホルメート(10.9mL、120mmol)の脱水THF溶液(50mL)を滴下してさらに1時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(110mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン=6/4(体積比))で分離精製し、5−エチルチオフェン−2−カルボキシレート(f−1)の無色液体を得た(収量:15.4g、収率:83.7%)。
【0277】
次に、200mL容四口フラスコに、化合物(f−1)(15.0g、81.5mmol)、エタノール(40mL)を加え、この溶液にヒドラジン1水和物(12.2g、244mmol)を滴下し、12時間還流撹拌した。反応液を冷却後、溶媒を減圧留去し、残渣をジクロロメタンに溶解し、水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシクロヘキサンで再結晶し、濾集、乾燥することにより、5−エチルチオフェン−2−カルボヒドラジン(f−2)の白色固体を得た(収量:8.6g、収率:62.1%)。
【0278】
さらに、50mL容三口フラスコに、化合物(f−2)(8.5g、50mmol)、4−メトキシアセトフェノン(7.5g、50mmol)を加え、75℃で1時間撹拌した。残渣をジクロロメタン/メタノールで再結晶し、濾集、乾燥することにより、(E)−5−エチル−N‘−(1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)エチリデン)−チオフェン−2−カルボヒドラジン(f−3)の白色固体を得た(収量:12.4g、収率:78%)。
【0279】
続いて、500mL容四口フラスコに、化合物(f−3)(9.5g、29.8mmol)、THF(300mL)を加え溶解させた後、この溶液に酢酸鉛(15.9g、35.9mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。反応液を濾過後、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣を水/ジクロロメタンで抽出した。有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をアルミナクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン=4/6(体積比))で分離精製し、(5−エチル−2−チエニル)(2−アセチル−5−メトキシ−1−フェニル)ケトン(f−4)の白色固体を得た(収量:7.6g、収率88.6%)。
【0280】
さらに、500mL容四口フラスコに、アルゴン気流下、化合物(f−4)(6.6g、22.8mmol)、酢酸(48mL)、エタノール(240mL)を加えて65℃で撹拌し、この溶液に塩化アンモニウム(1.22g、22.8mmol)と酢酸アンモニウム(10.7g、139mmol)を添加した後、30分間還流撹拌した。反応液を濾過後、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣を水/ジクロロメタンで抽出した。有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で分離精製し、化合物(f−5)の濃青色固体を得た(収量:2.1g、収率:35.2%)。
【0281】
最後に、アルゴン気流下、2L容フラスコに、化合物(f−5)(2.0g、3.8m2mol)とジクロロメタン(250mL)を加え、室温で5分間撹拌した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.48g、11.5mmol)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(3.27g、23mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で分離精製し、近赤外蛍光色素Fの濃緑色固体を得た(収量:1.66g、収率:76%)。
【0282】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3/CCl
4=1/1):δ=7.85(s,2H),7.64(d,2H),7.39(s,1H),7.29(s,2H),6.98(m,4H),3.86(s,6H),2.98(q,4H),1.43(t,6H)ppm。
【0283】
【化56】
【0284】
[製造例8]近赤外蛍光色素Gの合成
近赤外蛍光色素GはChemistry An Asian Journal、2013年、第8巻、3123〜3132ページ記載の方法に従って合成した。
2L容四口フラスコにて、アルゴン気流下、5−ブロモ−2−チオフェンカルボキシアルデヒド(19.1g、0.1mol)とアジド酢酸エチル(51.6g、0.4mol)をエタノール(800mL)に溶解させた後、得られた溶液に、20質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液(136g、0.4mol)を0℃氷浴中でゆっくり滴下し、2時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてpHを弱酸性に調整した。さらに、水を加え、沈殿物を濾集、乾燥することにより、2−アジド−3−(5−ブロモ−チオフェン−2−イル)−アクリル酸エチルエステルの黄色固体を得た(収量:18.4g、収率:61.3%)。
【0285】
次に、500mL容ナスフラスコに、2−アジド−3−(5−ブロモ−チオフェン−2−イル)−アクリル酸エチルエステル(18.1g、60mmol)を入れ、o−キシレン(200mL)に溶解させた後、1.5時間還流撹拌した。還流撹拌後の溶液を減圧濃縮した後、得られた粗生成物を再結晶(溶液:ヘキサン、酢酸エチル)させた後に吸引濾過し、得られた濾物を乾燥することにより、2−ブロモ−4H−チエノ[3.2−b]ピロール−5−カルボン酸エチルエステル(g−1)を得た(収量:12.1g、収率:73.8%)。
【0286】
さらに、500mL容フラスコに、化合物(g−1)(6.0g、22mmol)を入れ、エタノール(200mL)、水酸化ナトリウム(12.4g、310mmol)を水(100mL)に溶解した水溶液を加え、1時間還流撹拌した。還流撹拌後の溶液は、放冷した後に6mol/L塩酸を加えて酸性に調整した後に、水を加えて吸引濾過を行い、得られた濾物を真空乾燥することにより、2−ブロモ−4H−チエノ[3.2−b]ピロール−5−カルボン酸(g−2)の灰色固体を得た(収量:4.1g、収率:75.8%)。
【0287】
続いて、300mL容三口フラスコに、化合物(g−2)(4.0g、16.3mmol)、トリフルオロ酢酸(100mL)を入れ、40℃で攪拌した。化合物(d−2)が溶解した後、発泡がおさまるまで、15分間撹拌した。撹拌後の溶液に、無水トリフルオロ酢酸(36mL)を加えて80℃で4時間反応させた。反応終了後、氷を入れた飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に、反応液を加え、溶液を中和した後、吸引濾過を行い、真空乾燥し、化合物(g−3)の粗生成物を得た。
【0288】
さらに、アルゴン気流下、2L容フラスコに、化合物(g−3)とジクロロメタン(1L)を加え、室温で5分間撹拌した。トリエチルアミン(12mL)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(16mL)を滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で分離精製し、2,8−ジブロモ−11−トリフルオロメチル−ジチエノ[2,3−b][3,2−g]−5,5−ジフルオロ−5−ボラ−3a,4a−ジチオ−s−インダセン(g−4)の濃青緑色固体を得た(収量:580mg、収率:13.4%)。
【0289】
最後に、アルゴン気流下、化合物(g−4)(200mg、0.378mmol)、4−メトキシフェニルホウ酸(240mg、1.6mmol)、炭酸ナトリウム(120mg、1.2mmol)、トルエン/THF/水=1:1:1(60mL)を200mL容三口フラスコに加え、アルゴンガスで30分間バブリングした後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(22mg)を加えて、80℃で4時間カップリング反応した。冷却後、反応液に水(10mL)を加え、ジエチルエーテルで3回抽出した。得られた有機相を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=20/1(体積比))で分離精製し、近赤外蛍光色素Gの濃緑色結晶を得た(収量:110mg、収率:49.8%)。
【0290】
1H−NMR(300MHz,CD
2Cl
2):δ=7.76(d,4H),7.34(s,2H),7.32(s,2H),7.03(d,4H),3.91(s,6H)ppm。
【0291】
【化57】
【0292】
[製造例9]近赤外蛍光色素Hの合成
4−メトキシフェニルホウ酸の代わりにチオフェン−2−ホウ酸(205mg、1.6mmol)を使用した以外は、製造例7と同様の操作を行い、近赤外蛍光色素Hの濃緑色結晶を得た(収量:94mg、収率:46.4%)。
【0293】
1H−NMR(300MHz,CD
2Cl
2):δ=7.57(m,4H),7.54(d,2H),7.53(s,2H),7.34(s,2H),7.24(m,2H)ppm
【0294】
【化58】
【0295】
[実施例1]
40質量%の硫酸バリウムを含有するTPUペレット(製品名:EG−60D−B40、Lubrizol社製)55gと、クマリン6(東京化成工業(株)から市販されている試薬、可視蛍光材料)16.5mgを混ぜて、ペレット表面に蛍光材料を付着させた。次いで、当該ペレットをラボプラストミル(東洋精機製作所(株)製)に投入し、設定温度190℃で10分間溶融混練した。その後、混練された蛍光材料含有樹脂を取り出し、フィルム化した。
【0296】
フィルム化は、以下のようにして行った。まず、溶融混練された蛍光材料含有樹脂を200℃に熱した鉄板で挟みながら5分間加熱し、当該鉄板を冷却しながら、5〜10mPaでプレスした。そのときのフィルムの厚みは約300μm、色素濃度は0.03質量%であった。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比(蛍光材料の質量/放射性不透過性物質の質量)は、0.00075であった。
【0297】
得られたフィルムの吸収スペクトルをSHIMADZU社製の紫外可視近赤外分光光度計「UV3600」で測定し、発光スペクトルを浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率測定装置「Quantaurus−QY C11347」で測定したところ、極大吸収波長が444nm、極大蛍光波長が516nm付近であり、黄緑色の蛍光を発することが確認された。
【0298】
また、当該フィルムは、X線撮影により検出でき、放射線の不透過性は、蛍光材料を含有させる前のTPUから得られたフィルムと同程度であった。これらの結果から、蛍光材料及び放射線不透過性物質を含有する本発明に係る樹脂組成物は、X線検出装置及び蛍光検出装置によって視覚化できることが明らかである。結果を表1に纏めた。
【0299】
[比較例1]
硫酸バリウムを含有するペレットを、硫酸バリウムを含まないTPUペレット(製品名:EG−65D、Lubrizol社製)に代えた以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。この結果、得られたフィルムは、黄緑色の蛍光を発することは確認できたが、X線の不透過性がないため、X線検出装置では検出はできなかった。結果を表1に纏めた。
【0300】
[実施例2]
使用した蛍光材料をクマリン6からルモゲン(登録商標)レッドF305(BASF社製の可視光蛍光材料)に代えた以外は実施例1と同様にして色素濃度0.03質量%のフィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。得られたフィルムは、極大吸収波長が534nm、極大蛍光波長が627nm付近であった。なお、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00075であった。
【0301】
また、当該フィルムをX線撮影したところ、放射線の不透過性は、蛍光材料を含有させる前のTPUから得られたフィルムと同程度であった。これらの結果から、蛍光材料及び放射線不透過性物質を含有する本発明に係る樹脂組成物は、X線検出装置及び蛍光検出装置によって視覚化できることが明らかである。結果を表1に纏めた。
【0302】
[比較例2]
硫酸バリウムを含有するペレットを、硫酸バリウムを含まないTPUペレット(製品名:EG−65D、Lubrizol社製)に代えた以外は実施例2と同様にしてフィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。この結果、得られたフィルムは、赤色の蛍光を発することは確認できたが、X線の不透過性がないため、X線検出装置では検出はできなかった。結果を表1に纏めた。
【0303】
[実施例3]
使用した蛍光材料をクマリン6から製造例1で合成したアゾ−ホウ素錯体(近赤外光蛍光材料)に代えた以外は実施例1と同様にして色素濃度0.03質量%のフィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。得られたフィルムは、極大吸収波長が683nm、極大蛍光波長が820nm付近であった。なお、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00075であった。
【0304】
また、当該フィルムをX線撮影したところ、放射線の不透過性は、蛍光材料を含有させる前のTPUから得られたフィルムと同程度であった。これらの結果から、蛍光材料及び放射線不透過性物質を含有する本発明に係る樹脂組成物は、X線検出装置及び蛍光検出装置によって視覚化できることが明らかである。結果を表1に纏めた。
【0305】
[比較例3]
硫酸バリウムを含有するペレットを、硫酸バリウムを含まないTPUペレット(製品名:EG−65D、Lubrizol社製)に代えた以外は実施例3と同様にしてフィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。この結果、得られたフィルムは、近赤外蛍光を発することは確認できたが、X線の不透過性がないため、X線検出装置では検出はできなかった。
【0306】
以上のように、本発明に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体は、放射線不透過性であり、かつ発光物質も含有しているため、X線撮影による検出と発光による検出の両方が可能である。また、本発明に係る樹脂組成物は、放射線不透過性物質を含有していない樹脂組成物よりも、添加した発光物質の量に対する発光強度が強いため、より弱い励起光でも感度よく発光検出することができ、産業上有用な樹脂組成物と考えられる。結果を表1に纏めた。
【0307】
[実施例4]
使用した蛍光材料をクマリン6から製造例2で合成した近赤外蛍光色素A(近赤外光蛍光材料)に代えた以外は実施例1と同様にして色素濃度0.03質量%のフィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。得られたフィルムは、極大吸収波長が730nm、極大蛍光波長が765nmであり、その他に824nmに蛍光ピークが観測された。なお、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00075であった。
また、当該フィルムをX線撮影したところ、放射線の不透過性は、蛍光材料を含有させる前のTPUから得られたフィルムと同程度であった。これらの結果から、蛍光材料及び放射線不透過性物質を含有する本発明に係る樹脂組成物は、X線検出装置及び蛍光検出装置によって視覚化できることが明らかである。結果を表1に纏めた。
【0308】
[比較例4]
硫酸バリウムを含有するペレットを硫酸バリウムを含まないTPUペレット(製品名:EG−65D、Lubrizol社製)に代えた以外は実施例4と同様にしてフィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。この結果、得られたフィルムは、近赤外蛍光を発することは確認できたが、X線の不透過性がないため、X線検出装置では検出はできなかった。結果を表1に纏めた。
【0309】
[実施例5]
40質量%の硫酸バリウムを含有するTPUペレット(製品名:EG−60D−B40、Lubrizol社製)110gと、製造例2で合成した近赤外蛍光色素A5.5mgを混ぜて、ペレット表面に蛍光材料を付着させた。次いで、当該ペレットをラボプラストミルに投入し、設定温度190℃で10分間溶融混練した。その後、混練された蛍光材料含有樹脂を取り出し、実施例1と同様にして色素濃度0.005質量%のフィルムを作製した。なお、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.000125であった。
【0310】
得られたフィルムの吸収スペクトルをSHIMADZU社製の紫外可視近赤外分光光度計「UV3600」で測定し、発光スペクトルを日本分光(株)製の分光蛍光光度計「FP−8600」で測定したところ(励起波長740nm)、得られたフィルムは、極大吸収波長が738nmであり、750nm以上に強い蛍光の裾を持ち、さらに827nmにピークのある蛍光が観測された。
【0311】
また、当該フィルムをX線撮影したところ、放射線の不透過性は、蛍光材料を含有させる前のTPUから得られたフィルムと同程度であった。これらの結果から、蛍光材料及び放射線不透過性物質を含有する本発明に係る樹脂組成物は、X線検出装置及び蛍光検出装置によって視覚化できることが明らかである。結果を表1に纏めた。
【0312】
[比較例5]
使用したペレットを硫酸バリウムを含有するペレットから硫酸バリウムを含まないTPUペレット(製品名:EG−65D、Lubrizol社製)に代えた以外は実施例5と同様にしてフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行った。この結果、得られたフィルムは、近赤外蛍光を発することは確認できたが、X線の不透過性がないため、X線検出装置では検出はできなかった。結果を表1に纏めた。
【0313】
[実施例6]
使用した蛍光材料を製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aから製造例3で合成した近赤外蛍光色素Bに代えた以外は実施例5と同様にして色素濃度0.005質量%のフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が738nm、極大蛍光波長が757nmであり、その他に832nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.000125であった。
【0314】
[比較例6]
使用したペレットを、硫酸バリウムを含有するペレットから硫酸バリウムを含まないTPUペレット(製品名:EG−65D、Lubrizol社製)に代えた以外は実施例6と同様にしてフィルムを作製し、実施例6と同様の評価を行った。この結果、得られたフィルムは、近赤外蛍光を発することは確認できたが、X線の不透過性がないため、X線検出装置では検出はできなかった。結果を表1に纏めた。
【0315】
[実施例7]
使用したペレット量を110gから440gに代え、使用した蛍光材料を製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aから製造例4で合成した近赤外蛍光色素Cに代えた以外は実施例5と同様にして色素濃度0.00125質量%のフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が762nm、極大蛍光波長が772nmであり、その他に864nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.0000313であった。
【0316】
[実施例8]
使用した蛍光材料を製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aから製造例4で合成した近赤外蛍光色素Cに代えた以外は実施例5と同様にして色素濃度0.005質量%のフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が762nm、極大蛍光波長が784nmであり、その他に864nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.000125であった。
【0317】
[比較例7]
使用したペレットを、硫酸バリウムを含有するペレットから硫酸バリウムを含まないTPUペレット(製品名:EG−65D、Lubrizol社製)に代えた以外は実施例8と同様にしてフィルムを作製し、実施例8と同様の評価を行った。この結果、得られたフィルムは、近赤外蛍光を発することは確認できたが、X線の不透過性がないため、X線検出装置では検出はできなかった。結果を表1に纏めた。
【0318】
[実施例9]
使用した蛍光材料を製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aを5.5mgから製造例4で合成した近赤外蛍光色素Cを44mgに代えた以外は実施例5と同様にして色素濃度0.04質量%のフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が759nm、極大蛍光波長が809nmであり、その他に864nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.001であった。
【0319】
[実施例10]
使用した蛍光材料を製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aから製造例5で合成した近赤外蛍光色素Dに代えた以外は実施例5と同様にして色素濃度0.005質量%のフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が743nm、極大蛍光波長が760nmであり、その他に852nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.000125であった。
【0320】
[実施例11]
使用した蛍光材料を製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aから製造例6で合成した近赤外蛍光色素Eに代えた以外は実施例5と同様にして色素濃度0.005質量%のフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が754nm、極大蛍光波長が776nmであり、その他に872nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.000125であった。
【0321】
[実施例12]
使用した蛍光材料を製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aから製造例7で合成した近赤外蛍光色素Fに代えた以外は実施例5と同様にして色素濃度0.005質量%のフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が744nm、極大蛍光波長が787nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.000125であった。
【0322】
[実施例13]
使用した蛍光材料を製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aを5.5mgから製造例8で合成した近赤外蛍光色素Gを33mgに代えた以外は実施例5と同様にして色素濃度0.03質量%のフィルムを作製し、実施例5と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が741nm、極大蛍光波長が771nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00075であった。
【0323】
[実施例14]
使用した蛍光材料を製造例8で合成した近赤外蛍光色素Gから製造例9で合成した近赤外蛍光色素Hに代えた以外は実施例13と同様にして色素濃度0.03質量%のフィルムを作製し、実施例13と同様の評価を行い、結果を表1に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が744nm、極大蛍光波長が776nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00075であった。
【0324】
[実施例15]
TPUペレット(製品名:EG−60D、Lubrizol社製)88gと、酸化ビスマス(Aldrich社製)22gと、製造例3で合成した近赤外蛍光色素B5.5mgを混ぜて、ペレット表面に蛍光材料を付着させた。次いで、当該ペレットをラボプラストミルに投入し、設定温度190℃で10分間溶融混練した。その後、混練された蛍光材料含有樹脂を取り出し、実施例5と同様にして色素濃度0.005質量%、酸化ビスマス含量20質量%のフィルムを作製した。この時の蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00025であった。このフィルムについて、実施例5と同様の方法で評価を行い、その結果を表2に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が738nm、極大蛍光波長が756nmであり、その他に830nmに蛍光ピークが観測された。
【0325】
[実施例16]
TPUペレット(製品名:EG−60D、Lubrizol社製)104.5gと、炭酸カルシウム(Aldrich社製)5.5gと、製造例3で合成した近赤外蛍光色素B5.5mgを混ぜて、ペレット表面に蛍光材料を付着させた。次いで、当該ペレットをラボプラストミルに投入し、設定温度190℃で10分間溶融混練した。その後、混練された蛍光材料含有樹脂を取り出し、実施例5と同様にして色素濃度0.005質量%、炭酸カルシウム含量5質量%のフィルムを作製した。この時の蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.001であった。このフィルムについて、実施例5と同様の方法で評価を行い、その結果を表2に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が738nm、極大蛍光波長が756nmであり、その他に830nmに蛍光ピークが観測された。
【0326】
[実施例17]
製造例3で合成した近赤外蛍光色素Bに代えて製造例4で合成した近赤外蛍光色素Cを使用した以外は実施例15と同様にして色素濃度0.005質量%のフィルムを作製し、実施例15と同様の評価を行い、結果を表2に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が762nm、極大蛍光波長が783nmであり、その他に859nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00025であった。
【0327】
[実施例18]
製造例3で合成した近赤外蛍光色素Bに代えて製造例4で合成した近赤外蛍光色素Cを使用した以外は実施例16と同様にして色素濃度0.005質量%のフィルムを作製し、実施例16と同様の評価を行い、結果を表2に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が762nm、極大蛍光波長が779nmであり、その他に858nmに蛍光ピークが観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00025であった。
【0328】
[実施例19]
PPペレット(製品名:B221WA、サンアロマー社製)88gと、硫酸バリウム(和光純薬社製)22gと、製造例3で合成した近赤外蛍光色素B5.5mgを混ぜて、ペレット表面に蛍光材料を付着させた。次いで、当該ペレットをラボプラストミルに投入し、設定温度180℃で10分間溶融混練した。その後、混練された蛍光材料含有樹脂を取り出し、実施例5と同様にして色素濃度0.005質量%、硫酸バリウム含量20質量%のPPフィルムを作製した。この時の蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00025であった。このフィルムについて、実施例5と同様の方法で評価を行い、その結果を表3に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が737nmで、極大蛍光波長が750nm付近であり、その他に827nmに蛍光ピークが観測された。
【0329】
[比較例8]
硫酸バリウムを用いずに、使用するペレットを硫酸バリウムを含まないPPペレット(製品名:B221WA、サンアロマー社製)に代えた以外は実施例19と同様にしてフィルムを作製し、実施例19と同様の評価を行った。この結果、得られたフィルムは、近赤外蛍光を発することは確認できたが、X線の不透過性がないため、X線検出装置では検出はできなかった。結果を表3に纏めた。
【0330】
[実施例20]
製造例3で合成した近赤外蛍光色素Bに代えて製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aを使用し、PPペレットに代えてポリスチレン(ディックスチレン(商標)LP−6000、DIC社製)を使用し、さらに混練温度を230℃にした以外は実施例19と同様にして色素濃度0.005質量%のポリスチレンフィルムを作製し、実施例19と同様の評価を行い、結果を表2に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が736nmであり、750nm以上に強い蛍光の裾を持ち、さらに830nmにピークのある蛍光が観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00025であった。
【0331】
[実施例21]
製造例3で合成した近赤外蛍光色素Bに代えて製造例2で合成した近赤外蛍光色素Aを使用し、PPペレットに代えてPET(バイロン(商標)SI−173C、東洋紡社製)を使用し、さらに混練温度を210℃にした以外は実施例19と同様にして色素濃度0.005質量%のPETフィルムを作製し、実施例19と同様の評価を行い、結果を表2に纏めた。なお、得られたフィルムは、極大吸収波長が738nmであり、750nm以上に強い蛍光の裾を持ち、さらに827nmにピークのある蛍光が観測された。また、蛍光材料と放射線不透過性物質との混合比は、0.00025であった。
【0332】
【表1】
【0333】
表1から明らかなように、本発明に係る樹脂組成物から得られたフィルムは、蛍光材料及び放射線不透過物質(硫酸バリウム)を含有するため、近赤外蛍光とX線の両方で確認できたのに対し、比較例のフィルムはX線では確認できなかった。
【0334】
【表2】
【0335】
また、表2から、本発明に係る樹脂組成物に使用できる放射線不透過物質は硫酸バリウムに限定されず、放射線不透過性を有する種々の材料が有効であることが明らかである。
【0336】
【表3】
【0337】
更に、表3から、本発明に係る樹脂組成物に使用できる樹脂はTPUに限定されず、種々の樹脂が有効であることが明らかである。
【0338】
[試験例1]
実施例1で作製したフィルム(1)を1cm角の大きさに切り、片側だけ5mm角の開口部(2a)ができるように内側を黒くしたアルミ箔(2)で包んで、開口部(2a)から露出した面(1a)以外を遮光した(
図1)。これにより、露出した面(1a)からのみ光を吸収し、露出した面(1a)のみから蛍光が発せられるようになり、実際にカメラ等の検出器で検出する場合を想定することができた。このように作製したフィルムについて、463nmの励起光を照射した場合の発光スペクトルを浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率測定装置「Quantaurus−QY C11347」で測定し、蛍光スペクトルを測定した。比較例1で作製したフィルムについても同様にして、アルミ箔により部分的に遮光した後、蛍光スペクトルを測定した。その結果、極大蛍光波長付近である516nmのintensity(蛍光強度)は170で、比較例1のフィルムの極大蛍光波長のintensityに対して115%強度が強くなっていた(
図2)。発光効率は、実施例1のフィルムは0.17、比較例1のフィルムは0.07で実施例1の方が発光効率が高かった。したがって、硫酸バリウムを含有したフィルムの方が蛍光強度は強く、検出器での検出が容易になることが明らかとなった。
【0339】
[試験例2]
実施例2及び比較例2で作製したフィルムに関しても、試験例1と同様にして部分露出させたフィルムにおいて、582nmの励起光を照射した場合の蛍光スペクトルを測定した。その結果、極大蛍光波長付近である627nmのintensityは95で、比較例2のフィルムの極大蛍光波長のintensityに対して約118%強度が強かった。したがって、硫酸バリウムを含有したフィルムの方が蛍光強度は強く、検出器での検出が容易になることが明らかとなった。
【0340】
[試験例3]
実施例3及び比較例3で作製したフィルムに関しても、試験例1と同様にして部分露出させたフィルムにおいて、683nmの励起光を照射した場合の蛍光スペクトルを測定した。その結果、極大蛍光波長付近である800nmのintensityは20で、比較例3のフィルムの極大蛍光波長付近のintensityに対して約430%強度が強かった。したがって、硫酸バリウムを含有したフィルムの方が蛍光強度は強く、検出器での検出が容易になることが明らかとなった。
【0341】
[試験例4]
実施例3及び比較例3で作製したフィルムを、中心波長が740nmの励起光を有するLEDリング照明器で照射し、800nm以上に検出感度をもつ近赤外イメージングカメラで観察した。その結果、実施例3のフィルムは、比較例3で作製した硫酸バリウムを含有しないフィルムと比較して強く発光していることが確認された。以上のように硫酸バリウムに代表されるような放射線不透過性物質を含有した樹脂中では、放射線不透過性物質を含有しない樹脂中よりも強く発光していることがわかり、放射線不透過性物質と発光物質を含有したものは産業上有用な樹脂組成物と考えられる。
【0342】
[試験例5]
実施例4及び比較例4で作製したフィルムに関しても、試験例1と同様にして部分露出させたフィルムにおいて、730nmの励起光を照射した場合の蛍光スペクトルを測定した。その結果、極大蛍光波長付近である755nmのintensityは70で、比較例4のフィルムの極大蛍光波長付近のintensityに対して約40%強度が強かった。また、長波長側の蛍光ピークの波長付近である822nmのintensityは43で、比較例4のフィルムの極大蛍光波長付近のintensityに対して約150%強度が強かった。したがって、硫酸バリウムを含有したフィルムの方が蛍光強度は強く、検出器での検出が容易になることが明らかとなった。
【0343】
[試験例6]
実施例5及び比較例5で作製したフィルムについて、励起波長740nmのスペクトルを、日本分光(株)製の分光蛍光光度計「FP−8600」で測定した。測定結果を
図3に示す。その結果、実施例5のフィルムでは、長波長側に蛍光ピークを有しており、当該蛍光ピークの波長付近である827nmのintensityは47000であり、比較例5のフィルムの極大蛍光波長付近のintensityに対して約3200%強度が強かった。
【0344】
[試験例7]
実施例6及び比較例6で作製したフィルムについて、試験例4と同様の方法により近赤外イメージングカメラで撮影したところ、実施例6のフィルムは比較例6のフィルムに比べて明らかに強く発光していた。両者の写真を
図4に示す。これらの結果から、硫酸バリウムを含有したフィルムの方が蛍光強度は強く、検出器での検出が容易になることが明らかとなった。
【0345】
[試験例8]
実施例8及び比較例7で作製したフィルムについて、励起波長740nmのスペクトルを、日本分光(株)製の分光蛍光光度計「FP−8600」で測定した。測定結果を
図5に示す。その結果、実施例8のフィルの極大蛍光波長付近である784nmのintensityは75,000であり、比較例7のフィルムの極大蛍光波長付近のintensityに対して275%強度が強かった。また、実施例8のフィルムの長波長側の蛍光ピークの波長付近である864nmのintensityは31,000であり、比較例7のフィルムの極大蛍光波長付近のintensityに対して約500%強度が強かった。
【0346】
また、実施例8及び比較例7で作製したフィルムについて、試験例4と同様の方法により近赤外イメージングカメラで撮影したところ、実施例8のフィルムは比較例7のフィルムに比べて明らかに強く発光していた。両者の写真を
図6に示す。これらの結果から、硫酸バリウムを含有したフィルムの方が蛍光強度は強く、検出器での検出が容易になることが明らかとなった。
【0347】
[試験例9]
実施例17、実施例18、及び比較例7で作製したフィルムについて、励起波長740nmのスペクトルを、日本分光(株)製の分光蛍光光度計「FP−8600」で測定した。測定結果を
図7に示す。その結果、極大蛍光波長である780nm付近のintensityは、実施例17が61,000、実施例18が33,000であり、比較例7のフィルムの極大蛍光波長付近のintensityに対し、各々200%、65%強度が強かった。また、長波長側の蛍光ピークである860nm付近のintensityは、実施例17が22,000、実施例18が13,000であり、比較例7のフィルムの極大蛍光波長付近のintensityに対し、各々320%、150%強度が強かった。以上の結果から、本発明に係る樹脂組成物から得られたフィルムは、放射性不透過性物質を添加していないのものに較べ蛍光強度が強く、様々な放射線不透過物質で増感効果が確認された。
【0348】
[試験例10]
実施例19及び比較例8で作製したフィルムについて、励起波長740nmのスペクトルを、日本分光(株)製の分光蛍光光度計「FP−8600」で測定した。測定結果を
図8に示す。その結果、実施例19のフィルムの蛍光ピークである827nm付近のintensityは44,000であり、比較例8のフィルムの蛍光ピークのintensityに対して190%強度が強かった。以上の結果から、PP中でも放射線不透過物質による蛍光強度の増大という増感効果が確認された。
【0349】
[試験例11]
実施例8で作製したフィルムを使用し、当該フィルム上に厚さ2mm又は15mmの豚肉を置き、中心波長が740nmの励起光を有するLEDリング照明器で照射しながら、800nm以上に検出感度をもつ近赤外イメージングカメラで撮影した。励起光を照射せずに撮影した場合には、豚肉の下のフィルムは確認できなかったが(
図9A)、励起光を照射して撮影した場合には、厚さ2mmの豚肉ごしでも当該フィルムからの蛍光が明瞭に観察でき(
図9B)、厚さ15mmの豚肉ごしでも当該フィルムからの蛍光が観察できた(
図9C)。これらの結果から、当該フィルムからの発光は豚肉を透過したことから、当該フィルムは、体内に挿入したり留置した場合に可視化できることが明らかである。
【0350】
これらの実施例及び試験例に示すように、本発明に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体は、放射線不透過性であり、かつ発光物質も含有しているため、X線放射による検出と発光による検出の両方が可能である。また、本発明に係る樹脂組成物は、放射線不透過性物質を含有していない樹脂組成物よりも、添加した発光物質の量に対する発光強度が強いという増感効果があるため、より弱い励起光でも感度よく発光検出することができ、産業上有用な樹脂組成物である。