特許第5905827号(P5905827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧 ▶ 日本放送協会の特許一覧

<>
  • 特許5905827-帯電装置及び帯電体製造方法 図000002
  • 特許5905827-帯電装置及び帯電体製造方法 図000003
  • 特許5905827-帯電装置及び帯電体製造方法 図000004
  • 特許5905827-帯電装置及び帯電体製造方法 図000005
  • 特許5905827-帯電装置及び帯電体製造方法 図000006
  • 特許5905827-帯電装置及び帯電体製造方法 図000007
  • 特許5905827-帯電装置及び帯電体製造方法 図000008
  • 特許5905827-帯電装置及び帯電体製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905827
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】帯電装置及び帯電体製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/12 20060101AFI20160407BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20160407BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   B01J19/12 Z
   B01J19/08 Z
   C08J7/00 CCER
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-539769(P2012-539769)
(86)(22)【出願日】2011年10月20日
(86)【国際出願番号】JP2011074214
(87)【国際公開番号】WO2012053617
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-236132(P2010-236132)
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】本泉 真人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 啓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正英
(72)【発明者】
【氏名】井口 義則
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−014761(JP,A)
【文献】 特開2002−248335(JP,A)
【文献】 特開2003−045334(JP,A)
【文献】 特開2006−267082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/08−19/12
C08J 7/00−7/18
D06M 10/00−10/10
H01G 7/02
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のガスが収容され、圧力0.1〜200Paに調製された反応室と、
前記反応室内に収容されたガスに対して、波長が300nm以下の紫外線を照射し、負電荷を発生させる紫外線照射手段と、
反応室内に配置された、長方形形状の板またはフィルムである誘電体材料の方向に前記負電荷を引きつける電界を発生し、前記負電荷の少なくとも一部を前記誘電体材料の内部に注入して蓄積し、前記誘電体材料の表面電位を低下させる電界発生手段と、
を備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の帯電装置において、前記電界発生手段は、前記誘電体材料の近傍または接した位置に配置され、正電圧が印加された電極を含むことを特徴とする帯電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の帯電装置において、前記電界発生手段は、網状の電極であることを特徴とする帯電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の帯電装置において、前記誘電体材料が移動しつつ連続的に帯電されることを特徴とする帯電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の帯電装置において、前記所定のガスは窒素ガス、希ガスまたはこれらの混合ガスであり、酸素含有量が0.01mol%以下であることを特徴とする帯電装置。
【請求項6】
圧力0.1〜200Paの下、所定のガスを収容した雰囲気下に誘電体材料を配置し、
該ガスに波長が300nm以下の紫外線を照射して負電荷を発生させ、
該負電荷を、長方形形状の板またはフィルムである該誘電体材料に注入して帯電させ、前記誘電体材料の表面電位を低下させる、
ことを特徴とする帯電体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体材料の帯電装置及び帯電体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットを使用した装置は、電気エネルギと運動エネルギとの変換効率が高いことが知られており、発電装置、マイクロフォン等に応用されている。
【0003】
このようなエレクトレットは、高分子材料等の誘電体材料を帯電させて形成する。例えば、下記特許文献1には、コロナ放電により高分子材料を帯電させてエレクトレットを製造する方法の例が開示されている。また、下記非特許文献1には、コロナ放電により帯電した電荷による表面電位の経時変化の観測結果が開示されている。この観測結果によれば、コロナ放電により2分以上帯電処理を行わないと、表面電位が短時間で低下することがわかる。
【0004】
一方、下記特許文献2は、紫外線を使用した帯電物体の中和装置に関する発明であり、紫外線を窒素に照射させて発生させた電荷により、ウエハに帯電した電荷を中和する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−246327号公報
【特許文献2】特開平7−14761号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ドイツ フライブルグ大学博士論文 2010.7月74頁 ウルリッヒ バーシュ著(Electret-Based Resonant Micro EnergyHarvesting in Two Dimensions Dissertation zur Erlangung des Doktorgrades derTechnischen Fakultat der Albert-Ludwigs-Universitat Freiburg im Breisgau 2010.7pp.74 Ulrich Bartsch)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載されているように、コロナ放電を使用して誘電体材料を帯電させる場合には、非特許文献1に記載されているように、帯電時間に2分以上を要し、短時間(1分以内)での帯電処理が困難であるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載されているように、紫外線により発生した電荷を誘電体材料の帯電に使用することも考えられるが、特許文献2には具体的な構成の開示がない。
【0009】
本発明の目的は、短時間の帯電処理で、誘電体材料を高く、経時的に安定した表面電位に帯電できる帯電装置及び帯電体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の帯電装置の発明は、所定のガスが収容され、圧力0.1〜200Paに調製された反応室と、前記反応室内に収容されたガスに対して、波長が300nm以下の紫外線を照射し、負電荷を発生させる紫外線照射手段と、反応室内に配置された、長方形形状の板またはフィルムである誘電体材料の方向に前記負電荷を引きつける電界を発生し、前記負電荷の少なくとも一部を前記誘電体材料の内部に注入して蓄積し、前記誘電体材料の表面電位を低下させる電界発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の帯電装置において、前記電界発生手段は、前記誘電体材料の近傍または接した位置に配置され、正電圧が印加された電極を含むことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の帯電装置において、前記電界発生手段が、網状の電極であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の帯電装置において、前記誘電体材料が移動しつつ連続的に帯電されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の帯電装置において、前記所定のガスは窒素ガス、希ガスまたはこれらの混合ガスであり、酸素含有量が0.01mol%以下であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の帯電体製造方法の発明は、圧力0.1〜200Paの下、所定のガスを収容した雰囲気下に誘電体材料を配置し、該ガスに波長が300nm以下の紫外線を照射して負電荷を発生させ、該負電荷を、長方形形状の板またはフィルムである該誘電体材料に注入して帯電させ、前記誘電体材料の表面電位を低下させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、短時間の帯電処理で、誘電体材料を高く、経時的に安定した表面電位に帯電できる帯電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態にかかる帯電装置の構成例を示す図である。
図2】本実施形態にかかる帯電装置の他の構成例を示す図である。
図3】本実施形態にかかる帯電装置のさらに他の構成例を示す図である。
図4】表面電位の測定結果を示す図である。
図5】表面電位の測定結果を示す図である。
図6】表面電位の測定結果を示す図である。
図7】表面電位の測定結果を示す図である。
図8】本実施形態にかかる帯電装置の動作例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0019】
図1には、本実施形態にかかる帯電装置の構成例が示される。図1において、帯電装置10は、反応室12、紫外線照射手段14、電極16及び減圧ポンプ18を含んで構成されている。
【0020】
反応室12は、所定のガスが収容された密封容器であり、ガス供給管22から当該ガスが供給されるとともに、減圧ポンプ18により減圧されて大気圧以下の圧力に調整されている。ガス供給管22からは、流量制御装置30を介して、一定流量のガスを供給できるように構成されている。また、反応室12の内部圧力は、圧力計32により測定できる。さらに、反応室12と減圧ポンプ18との間には、圧力調整弁34が設けられ、反応室12の内部圧力を調整できる構成となっている。反応室12は、アース端子24により接地されている。上記所定のガスとしては、例えばイナートガス、希ガス等が挙げられる。イナートガスとしては、例えば窒素が使用でき、希ガスとしては、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンが使用できるが、紫外線により励起して電子を放出し、かつ帯電させる対象である誘電体材料20と反応性のないガスであれば、何れも使用することができる。また、上記ガスは単独で使用してもよいし、混合して(混合ガスとして)使用してもよい。なお、上記所定のガスの酸素含有量は、0.01mol%以下であることが好ましい。酸素がこの割合以上含まれると、後述する紫外線照射手段14から照射される紫外線によって励起されたガスから発生する電荷量が大きく減衰するからである。
【0021】
紫外線照射手段14は、波長300nm以下のいわゆる深紫外線あるいは真空紫外線とよばれる紫外線を発生し、反応室12内に収容されたガスに照射する装置である。ガスに紫外線を照射することにより、ガスが励起され、電荷(正負の電荷)が発生する。紫外線照射手段14の方式は、波長300nm以下の深紫外線あるいは真空紫外線を発生できれば限定されないが、例えば紫外線LEDや重水素ランプ等を利用することができる。
【0022】
電極16は、紫外線照射手段14からの紫外線照射により上記ガスから発生した負電荷(電子)を反応室12内に配置された誘電体材料20の方向に移動させる電界を発生する。上述したように、反応室12は接地されている。従って、上記電界を発生するために、電極16には、反応室12と電気的に絶縁された状態で電源26から正電圧が印加されている。電圧値は、誘電体材料20の目標帯電電圧値に応じて決定するが、例えば1kV程度の電圧とする。なお、図1に示された例では、電極16の上に誘電体材料20が載せられて(接して)いるが、これには限定されず、誘電体材料20の近傍に電極16を配置すればよい。ここで、近傍とは、負電荷が電極16により引きつけられて誘電体材料20の方向に移動する経路上の位置に誘電体材料20が配置されている、電極16と誘電体材料20との配置関係をいう。また、電極16と誘電体材料20は、電極16から誘電体材料20を見たときに、誘電体材料20の帯電させたい表面が不可視の側となるような位置関係に配置してもよい。
【0023】
減圧ポンプ18は、上述したように、反応室12の内部圧力を、大気圧以下の圧力に調整する。形式は特に限定されないが、反応室12の内部圧力を1×10−4Pa程度まで減圧できればよい。
【0024】
次に、以上に述べた帯電装置の動作例を図8に基づいて説明する。電極16の近傍、例えば電極16の上に誘電体材料20を配置した後(S1)、減圧ポンプ18により反応室12内を1×10−4Paまで減圧し、残留気体を除去する。次に、ガス供給管22から流量制御装置30を介して一定流量のガスを導入しつつ、反応室12と減圧ポンプ18との間に設置した圧力調整弁34の開度を調整して、反応室12の内部圧力を所定の圧力に調整する(S2)。この圧力は、ガスの種類、紫外線照射手段14から照射される紫外線の波長等により適宜決定するが、例えば0.1〜200Paの範囲とすることができる。なお、ガス供給管22から常にガスを供給しなくとも、反応室12内を排気したのちに圧力調整弁34を完全に閉め、ある一定の圧力までガスを供給して減圧状態にしておくことでも、反応室12の内部圧力を所定の圧力に調整することができる。
【0025】
上記状態(所定の圧力の下、所定のガスを反応室12に収容した雰囲気下)で、紫外線照射手段14から紫外線を照射してガスを励起し、正電荷(例えば窒素イオン)と負電荷(電子)を発生させる(S3)。また、電極16に電圧を印加し、発生した電子を電極16により発生した電界により電極16の方向に移動させ、当該方向にある誘電体材料20の表面に到達させて誘電体材料20を帯電させ、その表面電位を低下(電位の絶対値は上昇)させる(S4)。このときに到達できる誘電体材料20の表面電位は、電極16に印加した電圧により決まる。なお、誘電体材料20の表面に到達した電子は、少なくともその一部が誘電体材料20の内部に注入されて蓄積され、誘電体材料20をエレクトレットとして機能させる。本実施形態の帯電方法により誘電体材料20に電子を蓄積させ、帯電させるのに要する時間は、2秒以下であり、短時間でエレクトレットを製造することができる。なお、電極16に負電圧を印加することにより、正に帯電したエレクトレットを作製することも可能である。
【0026】
図2には、本実施形態にかかる帯電装置の他の構成例が示され、図1と同一要素には同一符号を付している。図2の例では、反応室12を接地する代わりに、負電極28を設け、この負電極28を接地している。また、誘電体材料20は、電極16と負電極28との間に配置されている。
【0027】
紫外線照射手段14から紫外線を照射してガスを励起し、正電荷(例えば窒素イオン)と負電荷(電子)を発生させると、電子が電極16に引かれて誘電体材料20の方向に移動する。これにより、誘電体材料20が帯電してエレクトレットとなる。なお、本実施形態では、誘電体材料20を、例えば長方形形状(細片状)の板またはフィルムとし、その長手方向に電極16と負電極28との間を移動させて、連続的に帯電するように構成してもよい。
【0028】
図3には、本実施形態にかかる帯電装置のさらに他の構成例が示され、図1と同一要素には同一符号を付している。図3において、電極16は網状に形成されており、誘電体材料20の前に配置されている。この電極16には、図1の場合と同様に、電源26から正電圧が印加される。紫外線照射手段14から紫外線を照射してガスを励起し、正電荷(例えば窒素イオン)と負電荷(電子)を発生させると、電子が電極16に引かれて(加速されて)誘電体材料20の方向に移動する。上述したように、電極16は網状に形成されているので、電極16に到達した電子の多くは網目を通過し、誘電体材料20の表面に到達する。これにより、誘電体材料20が帯電してエレクトレットとなる。電極16と誘電体材料20は、電極16から誘電体材料20を見たときに、誘電体材料20の帯電させたい表面が可視の側となるような位置関係に配置する。
【0029】
以上に述べた誘電体材料20としては、用途に応じて適宜選択できるが、例えばフッ素樹脂、二酸化ケイ素、窒化膜を形成した二酸化ケイ素等を使用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の具体例を実施例として説明する。ただし、本発明は、以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0031】
図1に示された帯電装置を使用し、電極16上に15μmの厚さのCYTOP(登録商標 旭硝子株式会社製)フィルムを配置し、反応室12の内部圧力を減圧ポンプ18にて5×10−3Paまで減圧した。上記CYTOPフィルムは、低抵抗Si基板上にスピンコートし、185℃で1.5時間熱処理することにより形成した。
【0032】
次に、ガス供給管22から流量制御装置30を介して純度99.9995%の窒素ガスを反応室12に一定流速で供給し、減圧ポンプ18で排気しつつ圧力調整弁34により反応室12の内部圧力を制御した。なお、反応室12の内部圧力は、圧力計32により測定した。本実施例では、反応室12の内部圧力を変更しながら後述する真空紫外線の照射を行い、CYTOPフィルムの表面電位を測定した。
【0033】
紫外線照射手段14として、浜松ホトニクス株式会社製重水素ランプL1835を使用して、120〜160nmの真空紫外線を反応室12内の窒素ガスに照射した。また、電極16には、電源26から1kVまたは600Vの電圧を印加した。紫外線照射手段14による真空紫外線の照射時間が、CYTOPフィルムの帯電処理時間であり、本実施例では、この照射時間を変更しながらCYTOPフィルムの表面電位を測定した。
【0034】
上記方法により帯電させたCYTOPフィルムの表面電位は、表面電位計(model279;モンローエレクトロニクス製)にて測定した。
【0035】
図4図5図6図7には、表面電位の測定結果が示される。図4は、電極16の印加電圧を1kV、真空紫外線の照射時間を3秒とした場合の、反応室12の内部圧力と表面電位との関係である。また、図5は、電極16の印加電圧を1kV、反応室12の内部圧力を1.0Paとした場合の、真空紫外線の照射時間と表面電位との関係である。また、図6は、反応室12の内部圧力を1.0Pa、電極16の印加電圧を1kV、真空紫外線の照射時間を3秒とした場合、及び反応室12の内部圧力を1.0Pa、電極16の印加電圧を600V、真空紫外線の照射時間を20秒とした場合の表面電位の経時変化である。また、図7は、反応室12の内部圧力を1.0Pa、電極16の印加電圧を600V、真空紫外線の照射時間を20秒とした場合の、窒素ガスの不純物濃度と表面電位の関係である。
【0036】
図4において、真空紫外線の照射時間を3秒とすると、反応室12の内部圧力が0.1Paで表面電位が飽和することがわかる。従って、反応室12の内部圧力は、0.1Pa以上に維持すればよい。
【0037】
また、図5において、電極16の印加電圧を1kV、反応室12の内部圧力を1.0Paとすると、真空紫外線の照射時間が0.3秒で−700Vの表面電位に到達することがわかる。従って、本実施例では、コロナ放電等による帯電方法と較べて、短時間の帯電処理時間で高い表面電位を得ることができる。
【0038】
また、図6において、CYTOPフィルムの表面電位の経時変化は、帯電処理後のCYTOPフィルムを20℃、相対湿度60%の状態で保持して測定した。図6に示されるように、電極16の印加電圧を1kV、真空紫外線の照射時間を3秒とした場合には初期の表面電位が−780V程度、反応室12の内部圧力を1.0Pa、電極16の印加電圧を600V、真空紫外線の照射時間を20秒とした場合には初期の表面電位が−500V程度になっているが、いずれの場合も、それらの値が2000時間後まで維持されている。従って、コロナ放電等による帯電方法と較べて、短時間の帯電処理時間で、表面電位を長時間、安定して維持できる帯電処理を実現できる。
【0039】
また、図7において、窒素ガスの不純物濃度が小さくなるにつれて、表面電位の増加量が大きいことがわかる。特に不純物濃度が0.01mol%以下の場合、大きな増加量が得られるため、短時間の帯電処理時間で高い表面電位を得ることができる。なお、ここで窒素ガスの不純物濃度とは、(100%−ガスの純度)である。不純物は通常酸素あるいは酸素原子を含むガス(一酸化炭素、二酸化炭素、亜酸化窒素、二硫化酸素、水)がほとんどを占める。
【符号の説明】
【0040】
10 帯電装置、12 反応室、14 紫外線照射手段、16 電極、18 減圧ポンプ、20 誘電体材料、22 ガス供給管、24 アース端子、26 電源、28 負電極、30 流量制御装置、32 圧力計、34 圧力調整弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8