【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「新エネルギー技術開発/太陽光発電システム次世代高性能技術の開発/三層協調界面構築による高効率・低コスト・量産型色素増感太陽電池の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【文献】
JIAO C. et al.,ORGANIC LETTERS,2011年,vol.13 no.14 ,pp.3652-3655
【文献】
LEE C. W. et al.,DYES AND PIGMENTS,2011年,91,pp.317-323
【文献】
JIAO C. et al.,J. ORG. CHEM.,2011年,vol.76, no.2,pp.661-664
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
色素を用いる光電変換素子において、色素として請求項1乃至3のいずれかに記載のポルフィリン色素及び該ポルフィリン色素とは異なる吸収領域の色素を用いることを特徴とする光電変換素子。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、光センサー、太陽電池等の光発電装置に使用されている。色素によって増感された半導体微粒子を用いる光電変換素子が特許文献1等で知られている。
【0003】
太陽電池としては、単結晶、多結晶あるいはアモルファスのシリコン半導体を用いた太陽電池が電卓などの電気製品や住宅用などに広く用いられている。しかしながら、このようなシリコン半導体を用いた太陽電池の製造には、プラズマCVDや高温結晶成長プロセスなどの高精度プロセスが用いられるため、多大のエネルギーを必要とすると共に、真空を必要とする高価な装置が必要なために製造コストが高くなっている。
【0004】
そこで、低コストで製造可能な太陽電池として、例えば、酸化チタンのような酸化物半導体にルテニウム金属錯体のような光増感色素を吸着させた材料を用いた色素増感太陽電池が提案されている。色素増感太陽電池は具体的には、例えばインジウム添加酸化スズのような透明導電層を設けた透明ガラス板あるいは透明樹脂板のような透明絶縁材料の透明導電層側に、例えばルテニウム錯体からなる色素を表面に吸着した酸化チタンなどを半導体層として形成した負極と、正極となる白金などの金属層あるいは導電層を設けた透明ガラス板あるいは透明樹脂板のような透明絶縁材料との間に電解質の液を封入したものがある。色素増感太陽電池に光が照射されると、負極では光を吸収した色素の電子が励起し、励起した電子が半導体層に移動し、更に透明電極へと導かれ、正極では導電層からくる電子により電解質を還元する。還元された電解質は色素に電子を伝えることで酸化され、このサイクルで色素増感太陽電池が発電すると考えられている。
【0005】
現在、色素増感太陽電池はシリコン太陽電池に比して照射光エネルギーに対する発電エネルギー効率が低く、その効率を上げることが実効的な色素増感太陽電池を製造する上での重要な課題となっている。色素増感太陽電池の効率は、それを構成する各要素の特性や、更にそれら要素の組み合わせによっても影響を受けると考えられており、さまざまな試みがなされている。中でも、光増感作用を持つ色素について、より高効率な増感色素の開発に注力されている。現在知られている高効率色素としてN719等のRuを含有する金属錯体色素があるが、これらの色素は可視光領域の光電変換効率は高いが、近赤外領域の光電変換効率が低く、近赤外領域近傍に吸収帯を有する色素の開発が望まれている。
【0006】
この近赤外領域近傍に吸収帯を有する光電変換素子用の有機色素については、特許文献1乃至4でいくつかの化合物が知られている。また、ポルフィリン色素ついても、これらの文献で知られている。
【0007】
特許文献1、2、3、4、非特許文献1においては可視光領域で光電変換できるポルフィリン色素は開示されているが、可視光領域の800nmを超える長波長側領域で十分な吸収を有する色素は開示されていない。
【0008】
非特許文献2では、ペリレン無水カルボン酸基を有するポルフィリン色素を開示している。この色素は、電子吸引基を有し、吸収波長範囲が長波長領域まで及ぶ。その結果、より広い波長範囲の光を光電変換することで良好な光電変換効率を示す。しかし、電子供与性の大きな置換基をポルフィリン環に設けておらず、その吸収端は近赤外領域の長波長側を吸収してはいない。
【0009】
このように、近赤外領域における吸収波長範囲で良好に光を吸収し、効率よく光電変換するポルフィリン色素は知られておらず、このような色素が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光電変換素子又は色素増感太陽電池は、上記式(1)で表されるポルフィリン色素を増感色素として含む。なお、色素増感太陽電池は光電変換素子を利用するものであるため、両者の説明の多くが共通するので、共通する説明は色素増感太陽電池で代表して説明する。
【0020】
式(1)において、Mは2個の水素原子、またはポルフィリンと共有結合もしくは配位結合し得る原子または原子団を表す。具体的には、水素原子、Zn、Mg、VO(バナジウムの酸化物)、P、Ni、Ru等であり、このほかに上記共有結合もしくは配位結合をするものであればよいが、好ましくはZn、Ni、Mn、Ruであり、特に好ましくはZnまたはNiである。
【0021】
また、式(1)において、A
1及びA
2は各々独立して、5または6員環を含有する環構造を有する原子団を表す。この原子団には、環構成原子として炭素を含む。具体的には、置換基を有する芳香族基が好ましく、例えば、アルキル基またはアルコキシ基が置換したフェニル基が挙げられる。上記アルキル基及びアルコキシ基は、炭素原子を4個以上含むことが好ましく、4〜12個含むことがより好ましい。
【0022】
また、式(1)において、R
1及びR
2は各々独立して、1価の置換基を表す。具体的には、アルキル基、アリール基、複素環残基、ハロゲン基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、RCONH-基、RSO
2NH-基、ウレイド基、ウレタン基、RCOO-基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシル基、アミノ基、RSO
2-基、(RO)
2PO-基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。これらの置換基において、Rはアルキル基、アリール基等であるが、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。置換基の炭素原子上にはさらに上記の置換基があっても良い。好ましくはアルキル基、アルコキシ基及びアリール基である。R
1及びR
2は、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基であることが好ましく、炭素原子の数は4個以上であることが好ましく、4〜12個であることがより好ましい。
【0023】
正確な理由は定かではないが、A
1、A
2、R
1及びR
2で表される置換基は立体的に嵩高い構造のものが好ましく、ポルフィリン環同士の会合や凝集を防いで、色素間のエネルギー移動に起因する電荷分離損失を低減すると考えられる。また、上記置換基の鎖長を長くすると、色素の吸収波長を長波長化させ、カルボン酸上の電子密度が大きくなり、電子注入効率が向上すると考えられる。
【0024】
式(1)で表されるポルフィリン色素の合成例を、式(2)で表されるポルフィリン色素(D−1)を具体例として、以下に示す。
【0025】
アルキルアルデヒド(A−1)とジピロリルメタン(A−2)を酸触媒の存在下で処理することで環化させ、さらに続く2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(DDQ)を用いた芳香化によってポルフィリン化合物(A−3)を合成する。次に、長波長化に必要なペリレン骨格を導入するため、その反応点としてポルフィリン環にホウ酸エステル基の導入を行なう。ここではまず、まずポルフィリン環のメソ位をN−ブロモスクシンイミド(NBS)によりブロモ化する。さらに酢酸亜鉛を用いてポルフィリンの中心に亜鉛原子を導入することにより、より安定なポルフィリン構造へ変換する。最後に、先に導入したブロモ基の部位に、Pd触媒を用いたホウ酸エステル化を行うことでポルフィリン環にホウ酸エステル基を導入してポルフィリン化合物(A−4)とする。
【0027】
ポルフィリン環へのペリレン骨格の付加を容易にするために、ペリレン骨格の構造変換を行なう。市販のペリレン酸無水物(A−5)を原料とし、片方の酸無水物をジイソプロピルアニリンでイミド化し、溶解性を向上させる。一方で、230℃で加熱することにより、イミド化されていないもう片方の酸無水物は脱炭酸が進行し、化合物(A−6)を生成する。次に、臭素でペリレン骨格をブロモ化することにより、ホウ酸エステル基を有するポルフィリン化合物(A−4)へ付加可能な構造へと変換し、化合物(A−7)を生成する。
【0029】
次にポルフィリン環のドナー部位の合成を行なう。ヘキシルアニリン(A−8)とヘキシルブロモベンゼン(A−9)に対して、Pd触媒を用いたBuchwald−Hartwigクロスカップリング反応を適用することでジフェニルアミン(A−10)を合成する。
【0031】
Pd触媒を用いたクロスカップリング反応により、ホウ酸エステル基とブロモ基を有するそれぞれの炭素原子を結合させ、ペリレン−ポルフィリン(A−11)を合成する。次に、ポルフィリン環にドナーを導入するため、NBSにより無置換のポルフィリンのメソ位をブロモ化する。次に、ポルフィリン環とペリレン骨格とを縮環させるための構造変換を行なう。すなわち、縮環反応を促進させるため、中心の金属を亜鉛原子からニッケル原子へ置換する。トリフルオロ酢酸(TFA)を用いて亜鉛原子を除去し、一旦、中心に金属が導入されていないポルフィリン環へと変換した後、酢酸ニッケル四水和物を用いてニッケル原子を導入してポルフィリン化合物(A−12)を生成させる。
【0033】
塩化鉄を酸化剤とする縮環反応を適用することにより、化合物(A−12)のポルフィリン環とペリレン部位を縮環させ、環拡張ポルフィリン(A−13)を単離困難な副生成物と共に得る。次に、酢酸パラジウムを触媒として用いたBuchwald−Hartwigクロスカップリング反応により、ドナーであるジヘキシルフェニルアミノ基を導入する。最後に、t−ブタノール中、水酸化カリウムで処理し、イミド部位を一旦、開環させ、続く酢酸での処理により酸無水物へと変換することでポルフィリン色素(D−1)を合成する。
【0035】
次に、式(1)で表されるポルフィリン色素の合成例を、式(3)で表されるポルフィリン色素(D−2)を具体例として、以下に示す。
【0036】
ポルフィリン環合成に必要なアルコキシアルデヒドを合成する。レゾルシノール(B−1)を炭酸カリウムの存在下、ヨードオクタンを加えることでSN2反応が進行しジエーテル(B−2)を合成する。次に、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の共存下、n―ブチルリチウムで処理することにより、最も酸性度の高い芳香環上の水素原子が引き抜かれフェニルアニオンが発生する。そのまま、反応系中でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いて処理することによりアルコキシアルデヒド(B−3)を得る。
【0038】
アルコキシアルデヒド(B−3)とジピロリルメタン(A−2)を酸触媒の存在下で処理することで環化させ、さらに続くDDQを用いた芳香化によってポルフィリン環を構築してポルフィリン化合物(B−4)を得る。次に、長波長化に必要なペリレン骨格を導入するため、その反応点としてポルフィリン環にホウ酸エステル基の導入を行なう。ここではまず、まずポルフィリンのメソ位をNBSによりブロモ化する。さらに酢酸亜鉛を用いてポルフィリンの中心に亜鉛原子を導入することにより、より安定なポルフィリン構造へと変換する。最後に、先程導入したブロモ基を足掛かりとし、Pd触媒を用いたホウ酸エステル化を行うことでポルフィリン環にホウ酸エステル基を導入してポルフィリンホウ酸エステル誘導(B−5)を得る。次に、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応により、ポルフィリンホウ酸エステル誘導体(B−5)と別途合成したペリレン誘導体(A−7)を結合させ、ペリレン−ポルフィリン(B−6)を合成する。
【0040】
ポルフィリン環にドナーを導入するため、NBSにより無置換のポルフィリンのメソ位をブロモ化する。次に、ポルフィリン環とペリレン骨格とを縮環させるための構造変換を行なう。すなわち、縮環反応を促進させるため、中心の金属を亜鉛原子からニッケル原子へと置換する。TFAを用いて亜鉛原子を除去し、一旦、中心に金属が導入されていないポルフィリン環へと変換した後、酢酸ニッケル四水和物を用いてニッケル原子を導入して化合物(B−7)を生成させる。次に、塩化鉄を酸化剤とする縮環反応を適用することにより、化合物(B−7)のポルフィリン環とペリレン部位を縮環させ、環拡張ポルフィリン(B−8)を単離困難な副生成物と共に得る。次に、酢酸パラジウムを触媒として用いたBuchwald−Hartwigクロスカップリング反応により、ドナーであるジヘキシルフェニルアミノ基を導入する。最後に、t−ブタノール中、水酸化カリウムで処理し、イミド部位を一旦、開環させ、続く酢酸での処理により酸無水物へと変換することでポルフィリン色素(D−2)を合成する。
【0042】
次に、本発明の色素を用いた光電変換素子又は色素増感太陽電池の基本構成の一例を
図1により説明する。
図1は光電変換素子の一例を示す断面図であり、基板1上に、導電層2と半導体層に増感用の色素が吸着された色素吸着半導体層3が、積層された電極10と、基板4上に導電層5が設けられた対向電極11を有し、両電極間に電解質層6を配した構成となっている。色素吸着半導体層3は、電極の一部を構成するため半導体電極ともいう。色素吸着半導体層3はチタニアあるいは金属酸化物微粒子を用い1つの層として塗工・焼結されたもの、又は複数回の塗工・焼結により形成された層であり、色素が吸着された半導体層であり、酸化チタン粒子等の金属酸化物粒子とこの粒子の表面を覆うように存在する増感色素からなっている。なお、光は電極10側から入る。そして、本発明の色素増感太陽電池は、上記と同様な基本構成を有するが外部回路で仕事をさせるようにしたものである。そして、色素光電変換素子を色素増感太陽電池とする方法は上記特許文献1〜4等で公知であり、これら公知の方法でよい。
【0043】
基板1としては、透明な絶縁材料であれば特に限定されるものではなく、例えば通常のガラス板やプラスチック板などが挙げられ、更には屈曲性のあるものでも良く、例えばPET樹脂などが挙げられるが、好ましくは約500℃を上限にした酸化チタンを焼付ける工程に耐え得る耐熱材料であることであり、透明なガラス板が挙げられる。
【0044】
次に、この基板1の表面に基材の透明性を損なわないような導電層2を設けるが、導電層としてはいわゆる透明電極として知られているITO、FTO、ATOあるいはこれらを組み合わせたものでよく、更には透明性を損なわない厚みの金属層であってもよい。これらの導電層を設ける方法は特に限定されるものではなく、スパッタリング、蒸着(CVD及びPVDを含む)、スプレー、レーザアブレーションあるいはペースト化した各材料を用いるスピンコート、バーコート、スクリーン印刷の手法など既知の手法を用いることができる。中でも、スプレー法又は気相で行われるスパッタリング又は蒸着法が適する。
【0045】
この上に、色素吸着半導体層3を設ける。通常は半導体として金属酸化物の層を形成したのち、これに増感色素を吸着させる。金属酸化物としては、光電変換材料と知られているものが使用でき、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化スズ等を挙げることができる、中でも酸化チタン及び酸化スズが好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等の酸化チタンの他、水酸化チタン、含水酸化チタン類であってもよい。また、Nb、V又はTaの各元素の少なくとも1つを酸化チタンに対して30ppm〜5%の重量濃度(金属元素として)になるようドーピングしてもよい。このような金属酸化物であれば、本発明に用いることが可能であるが、平均粒子径が5〜500nm、好ましくは10〜200nmの範囲の微粒子であることがよい。
【0046】
金属酸化物の層を前記導電層2上に形成するが、その方法については、特に限定されるものではなく、例えばペースト化した金属酸化物をスピンコート、印刷、スプレーコートなどの各手法を用いても良い。また、製膜後に酸化チタン等の金属酸化物の焼結などを目的に焼成することも可能である。次に、金属酸化物に増感用の色素を吸着させて色素吸着金属酸化物として、色素吸着半導体層3とする。
【0047】
本発明では増感色素に特徴があり、その他の層又は材料は公知の構造又は材料とすることができ、
図1に示す構造のものに限らない。
【0048】
色素吸着半導体層3を構成する材料は、半導体と色素であるが、通常、半導体は金属酸化物、好ましくは酸化チタン又は酸化スズであるので、半導体を金属酸化物又は酸化チタンで代表することがある。また、色素増感用の色素としては、上記式(1)で表わされるポルフィリン色素を使用する。なお、必要により吸収波長領域を広げるためにこのポルフィリン色素とは異なる範囲に最大吸収波長を有する他の色素を併用することも有利である。
【0049】
色素はこれを溶解する溶媒に溶解してチタニア半導体層に吸着させる。吸着溶媒は色素が可能である溶媒であれば、使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ノルマルブタノール等の脂肪族アルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、ラクトン類、カプロラクタム類を使用することができる。好ましくはメタノール、エタノール又はアセトニトリルである。
【0050】
色素溶液にデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸(DCA)等の共吸着剤を溶解した色素溶液を用い、吸着してもよい。
【0051】
色素は超臨界流体、加圧流体に溶解して吸着させてもよい。具体的には、炭酸ガスや炭酸ガスにエントレーナーを加えた溶液により吸着させることが好ましい。
【0052】
色素の吸着した金属酸化物には、更にCO
2超臨界流体中でカルボン酸を吸着させてもよい。カルボン酸を吸着させる効果は、文献J. Photochem.and Photobio.A,Chem.164(2004)117により公知である。しかしながら、色素吸着やリンス処理と同様に、酸化チタン、酸化スズなどの金属酸化物の微細孔内部まで有効に吸着させることが重要である。色素の吸着した金属酸化物(色素の吸着した金属酸化物層を有する基板であってもよい)とカルボン酸を、圧力範囲5〜30Mpaであり、温度範囲が40〜60℃で形成されるCO
2超臨界流体中又は加圧CO
2中に置くことで、有効にカルボン酸を吸着できる。カルボン酸としては、好ましくは安息香酸、酢酸、アニス酸、ニコチン酸を挙げることができる。これらカルボン酸は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールのうちの少なくともいずれか1種類を含むアルコールに溶解した状態で使用することが好ましく、そのカルボン酸濃度が0.01〜10mol/Lの範囲であることが好ましい。さらに、色素の吸着は亜臨界状態の加圧下で吸着することが好ましく色素を溶媒に溶解させた溶液と炭酸ガスとの混合溶液中で吸着させたものであり、その炭酸ガスの圧力が1〜5MPa、温度が40℃〜60℃の範囲であることが好ましい。
【0053】
上記のように基板1、導電層2及び色素吸着半導体層3からなる電極10は負極として作用する。もう一方の正極として作用する電極(対向電極)11は
図1に示すように、電極10と対向して配置する。正極となる電極は、導電性の金属などでよく、また、例えば通常のガラス板やプラスチック板などの基板4に金属膜や炭素膜等の導電層5を施したものでもよい。
【0054】
負極となる電極10と、正極となる対向電極11の間には、電解質層6を設ける。この電解質層6を構成する電解質の種類は、光励起され半導体への電子注入を果たした後の色素を還元するための酸化還元種を含んでいれば特に限定されず、液状の電解質であってもよく、これに公知のゲル化剤(高分子又は低分子のゲル化剤)やイオン液体と金属酸化物を混練した擬固体を添加して得られるゲル状の電解質であってもよい。
【0055】
例えば、溶液電解質に用いる電解質の例としては、ヨウ素とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI
2等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩等)の組み合わせ、臭素と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr
2 等の金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物臭素塩等)の組み合わせ、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール、アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン、キノン等が挙げられる。電解質は混合して用いてもよい。
【0056】
また、電解質としては、高沸点を有する溶融塩電解質が好ましい。半導体電極が色素吸着酸化チタン層からなる場合は、溶融塩電解質と組み合わせることにより、特に優れた電池特性を発揮する。溶融塩電解質組成物は溶融塩を含む。溶融塩電解質組成物は常温で液体であるのが好ましい。主成分である溶融塩は室温において液状であるか又は低融点の電解質であり、その一般的な例としては「電気化学」、1997年、第65巻、第11号、p.923 等に記載のピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等が挙げられる。溶融塩は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、LiI、NaI、KI、LiBF
4、CF
3COOLi、CF
3COONa、LiSCN、NaSCN等のアルカリ金属塩を併用することもできる。通常、溶融塩電解質組成物はヨウ素を含有する。溶融塩電解質組成物の揮発性は低いことが好ましく、溶媒を含まないことが好ましい。溶融塩電解質組成物はゲル化して使用してもよい。
【0057】
電解液に溶媒を使用する場合は、粘度が低く高イオン移動度を示し、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジメチルスルホキシド、スルフォラン等の非プロトン極性物質、水等が挙げられる。これらの溶媒は混合して用いることもできる。
【0058】
電解質層6を設ける方法は特に限定されるものではなく、例えば両電極の間にフィルム状のスペーサ7を配置して隙間を形成し、その隙間に電解質を注入する方法でも良く、また、負極内面に電解質を塗布などした後に正極を適当な間隔をおいて積載する方法でも良い。電解質が流出しないよう、両極とその周囲を封止することが望ましいが、封止の方法や封止材の材質については特に限定するものではない
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明について更に詳細に説明する。なお、合成例1〜2は実施例であると理解される。
【0060】
合成例1
ポルフィリン(A−3)は、市販のアルデヒド(A−1)とジピロリルメタン(A−2)を用いて合成した。窒素雰囲気下、遮光した反応容器中で、(A−1)を2.99g、(A−2)を2.00g、脱水ジクロロメタン2Lを攪拌した。そこへ、TFA300μLを加え室温で3時間反応させた。さらにDDQを4.66g加え、30分間、攪拌した。ジエチルアミン3mLを用いて反応停止させた。シリカゲルを用いてろ過した後、ろ液を回収した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行った。さらに再結晶(クロロホルム)により、ポルフィリン化合物(A−3)を2.34g、50%の収率で得た。
【0061】
ポルフィリン化合物(A−3)を用いてポルフィリン化合物(A−4)の合成を行なった。遮光条件下、ポルフィリン化合物(A−3)1.34gを400mLのジクロロメタンに溶解させた。氷浴を用いて0℃に冷却した。ジクロロメタン50mLに溶解させたNBS 0.35gを反応溶液中に滴下した。0℃で30分間攪拌させた後、室温まで昇温させ、さらに2時間反応させた。アセトンで処理した後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=3:1)で精製し、粗精製物を得た。
【0062】
上記粗精製物をクロロホルム60mLに溶解させた。メタノール40mLに懸濁させた酢酸亜鉛2.06gを反応液中に滴下した。50℃で3時間反応させた。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=1:3)で精製した。得られた粗精製物1.08g、ピナコールボラン0.66g、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(PdCl
2(PPh
3)
2)0.092g、トリエチルアミン1.1mL、1,2−ジクロロエタン100mLを窒素雰囲気下、90℃で3時間反応させた。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=2:1)で精製することにより、ポルフィリン化合物(A−4)を0.23g、21%の収率で得た。
【0063】
ペリレン酸無水物(A−5)4.0g、ジイソプロピルアニリン5.4g、ジブチルエタノールアミン2.1g、酢酸亜鉛3.4g、キノリン15mLを230℃で8時間加熱した。反応物を500mLのエタノール中に投入した。析出してきた沈殿物をろ過した。得られた固体をエタノール20mL、20%硫酸4mL中で分散させ、精製を行なった。ろ過した後、乾燥することにより、ペリレンイミド化合物(A−6)を3.1g、63%の収率で得た。
【0064】
ペリレンイミド化合物(A−6)1.0g、臭素1.5g、クロロベンゼン100mLを50℃で3時間反応させた。チオ硫酸ナトリウムで処理した後、有機層を減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することにより、化合物(A−7)を0.74g、64%の収率で得た。
【0065】
窒素雰囲気下、ヘキシルアニリン(A−8)8.8g、ヘキシルブロモベンゼン(A−9)12.0g、テトラフルオロホウ酸トリ―t−ブチルホスフィン(P
tBu
3BF
4)0.29g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd
2(dba)
3)0.46g、トルエン100mLを室温で攪拌した。さらにナトリウム−t−ブトキシド(
tBuONa)6.21gを加え、100℃で18時間反応させた。放冷後、セライトを用いてろ過した。ろ液を希塩酸で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製することにより、ジフェニルアミン(A−10)を14.4g、85%の収率で得た。
【0066】
ポルフィリンボレート化合物(A−4)とペリレン化合物(A−7)とを用いてPd触媒クロスカップリング反応によるポルフィリン(A−11)の合成を行なった。窒素雰囲気下、ポルフィリンボレート(A−4)235mg、ペリレン化合物(A−7)150mg、炭酸セシウム175mg、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh
3)
4)16mg、トルエン30mL、DMF15mLを96℃で39時間反応させた。放冷後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することにより、ポルフィリン(A−11)を279mg、85%の収率で得た。
【0067】
ポルフィリン(A−11)を用いてポルフィリン(A−12)の合成を行なった。窒素雰囲気・遮光条件下、ポルフィリン(A−11)279mgを20mLのクロロホルムに溶解させた。氷浴を用いて0℃に冷却した。NBS42mgを反応溶液中に加え、0℃で20分間反応させた。水で処理した後、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。乾燥後、残渣をジクロロメタン20mLに溶解させた。TFA4mLを反応液中に滴下した後、室温で6時間反応させた。飽和炭酸ナトリウム水溶液で処理した後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。乾燥後、得られた残渣にトルエン30mL、酢酸ニッケル四水和物339mgを加え、30時間、加熱還流を行なった。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することにより、ポルフィリン(A−12)を260mg、88%の収率で得た。
【0068】
ポルフィリン(A−12)を用いての合成を行なった。窒素雰囲気下、ポルフィリン(A−12)261mgをジクロロメタン30mLに溶解させた。ニトロメタン2mLに325mgの塩化鉄を溶解させた溶液を反応液中に滴下した。室温で3時間攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。反応液をクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することにより、化合物(A−13)を含む混合物を得た。
【0069】
窒素雰囲気下、55%水素化ナトリウム70mg、テトラヒドロフラン(THF)20mL、ジフェニルアミン(A−10)270mgを室温で10分間攪拌した。さらに、化合物(A−13)を含む混合物、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(DPEphos)32mg、酢酸パラジウム9mgを加え、5時間加熱還流を行なった。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=4:1)で精製した。得られた粗精製物にt-ブタノール30mL、水酸化カリウム562mgを加え、2時間、加熱還流を行なった。40℃まで冷却した後、酢酸20mLを加え、さらに、2時間反応させた。放冷後、沈殿物をろ過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=4:1)で精製することにより、ポルフィリン色素(D−1)を49mg、17%の収率で得た。
【0070】
合成例2
レゾルシノール(B−1)11.5g、炭酸カリウム28.8g、ヨードオクタン50g、DMF200mLを100℃で、24.5時間反応させた。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することにより、化合物(B−2)を9.9g、28%の収率で得た。
【0071】
窒素雰囲気下、化合物(B−2)9.9g、TMEDA5.3mL、ジエチルエーテル100mLを攪拌した。氷浴で0℃に冷却した。1.6Mのn―BuLi(THF溶液)20mLを反応系中に滴下した。0℃にて、3時間反応させた後、室温まで昇温した。DMF5mLを反応系中に加え、室温でさらに11時間反応させた。水を加えた後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、アルデヒド(B−3)を7.5g、70%の収率で得た。
【0072】
ポルフィリン(B−4)は、アルデヒド(B−3)とジピロリルメタン(A−2)を用いて合成した。窒素雰囲気下、遮光した反応容器中で、(B−3)を7.5g、(A−2)を3.02g、脱水ジクロロメタン3Lを攪拌させた。そこへTFA450μLを加え室温で6時間反応させた。さらにDDQを7.03g加え、30分間、攪拌した。ジエチルアミン4.5mLを用いて反応停止させた。シリカゲルを用いてろ過した後、ろ液を回収した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行った。さらに再結晶(クロロホルム)により、ポルフィリン(B−4)を3.93g、39%の収率で得た。
【0073】
ポルフィリン(B−4)を用いてポルフィリン(B−5)の合成を行なった。遮光条件下、ポルフィリン(B−4)1.93gを400mLのジクロロメタンに溶解させた。氷浴を用いて0℃に冷却した。ジクロロメタン50mLに溶解させたNBS0.35gを反応溶液中に滴下した。0℃で30分間攪拌させた後、室温まで昇温させ、さらに2時間反応させた。アセトンで処理した後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=3:1)で精製し、粗精製物を得た。
【0074】
得られた粗精製物をクロロホルム60mLに溶解させた。メタノール40mLに懸濁させた酢酸亜鉛2.28gを反応液中に滴下した。50℃で3時間反応させた。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=1:3)で精製した。得られた精製物1.85g、ピナコールボラン0.85g、PdCl
2(PPh
3)
20.116g、トリエチルアミン1.4mL、1,2−ジクロロエタン100mLを窒素雰囲気下、90℃で3時間反応させた。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=1:2)で精製することにより、ポルフィリン(B−5)を1.21g、63%の収率で得た。
【0075】
ポルフィリンボレート(B−5)とペリレン誘導体(A−7)とを用いてPd触媒クロスカップリング反応によるポルフィリン(B−6)の合成を行なった。窒素雰囲気下、ポルフィリンボレート(B−5)1.20g、ペリレン誘導体(A−7)0.58g、炭酸セシウム0.67g、Pd(PPh
3)
4 0.06g、トルエン90mL、DMF45mLを96℃で39時間反応させた。放冷後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することにより、ポルフィリン(B−6)を1.15g、73%の収率で得た。
【0076】
ポルフィリン(B−6)を用いてポルフィリン(B−7)の合成を行なった。窒素雰囲気・遮光条件下、ポルフィリン(B−6)1.15gを60mLのクロロホルムに溶解させた。氷浴を用いて0℃に冷却した。NBS 0.139gを反応溶液中に加え、0℃で20分間反応させた。水で処理した後、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。乾燥後、残渣をジクロロメタン60mLに溶解させた。TFA15mLを反応液中に滴下した後、室温で6時間反応させた。飽和炭酸ナトリウム水溶液で処理した後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。乾燥後、得られた残渣にトルエン90mL、酢酸ニッケル四水和物1.13gを加え、30時間、加熱還流を行なった。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することにより、ポルフィリン(B−7)を1.13g、94%の収率で得た。
【0077】
ポルフィリン(B−7)を用いてポルフィリン色素(D-2)の合成を行なった。窒素雰囲気下、ポルフィリン(B−7)593mgをジクロロメタン60mLに溶解させた。ニトロメタン4mLに605mgの塩化鉄を溶解させた溶液を反応液中に滴下した。室温で3時間攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。反応液をクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することにより、化合物(B−8)を含む混合物を得た。
【0078】
窒素雰囲気下、55%水素化ナトリウム130mg、THF40mL、ジフェニルアミン(A−10)504mgを室温で10分間攪拌した。さらに、化合物(B−8)を含む混合物、DPEphos60mg、酢酸パラジウム17mgを加え、5時間加熱還流を行なった。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=4:1)で精製した。得られた粗精製物にt-ブタノール60mL、水酸化カリウム1.1gを加え、2時間、加熱還流を行なった。40℃まで冷却した後、酢酸40mLを加え、さらに、2時間反応させた。放冷後、沈殿物をろ過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=4:1)で精製することにより、ポルフィリン色素(D−2)を176mg、28%の収率で得た。
【0079】
合成例1〜2で得たポルフィリン色素(D−1)、及び(D−2)の最大吸収波長及び吸収端を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例1
30mm×25mm×3mmの透明導電膜付ガラス基板として日本板ガラス製のFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜付ガラス基板(商品名:Low‐Eガラス)を使用した。
次に、導電性膜付き基板の導電性膜上に、酸化チタン膜を形成した。酸化チタンは、市販の酸化チタンペースト(ソラロニクス社製Dペースト)を使用した。これを、導電性膜付き基板の導電性膜上に、スキージ印刷の手法で5mm×5mmの範囲に塗工し、乾燥後450℃で焼成して厚み15μmの酸化チタン層を形成した積層板を得た。
【0082】
色素としてポルフィリン色素(D−1)を使用した。これを3×10
-4mol/L、DCAを3×10
-3mol/Lとなるようにエタノールに溶解させた。色素の吸着は、容器に上記色素溶液を入れ、更に上記酸化チタン層を形成した積層板を配置し、2時間静置後、容器から色素の吸着した積層板を取り出した。
【0083】
この積層板の酸化チタンの膜を形成した5mm×5mmの外周4辺に厚み50μmのアイオノマー樹脂からなるシート状の熱可塑性接着剤(三井デュポンポリケミカル社商品名;ハイミランシート)を、電解液が注入できるよう、外周部の2箇所に約1mm程度の隙間を設けるようにして貼り付けた。この熱可塑性接着剤は、封止材であると同時に、両極間のスペーサの役割を果たす。次に、正極となる厚み10nmの白金膜をスパッタリングの手法で形成したガラス基板を、白金側が酸化チタン側と対向するように前記熱可塑性接着剤フィルムを介して貼り合わせた。この熱可塑性接着剤フィルムの隙間から、0.5MのLiI、0.5Mのt−ブチルピリジンと、0.05Mのヨウ素を主成分として含むアセトニトリル溶液を毛細管現象を利用して基材と正極の間に満たした。電解質を満たした後、直ちに前記隙間をエポキシ樹脂接着剤で封止して、光電変換素子F−1を得た。
【0084】
実施例で作製した光電変換素子F−1を色素増感太陽電池として、その電池特性は、ソーラーシミュレータを用いAM1.5、100mW/cm
2の擬似太陽光を用い、I−Vカーブトレーサーを用いて特性評価した。変換効率(%)を測定した結果を表2に示す。
【0085】
【表2】