(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記渦流量計又は前記超音波流量計の一方及び前記オリフィス流量計の各々における前記流量計測値の比に基づいて前記湿り度を取得することを特徴とする請求項1に記載の湿り度の計測方法。
前記渦流量計又は前記超音波流量計の一方及び前記オリフィス流量計の各々における前記流量計測値を、前記湿り蒸気の密度を用いて補正し、当該補正値に基づいて前記湿り度を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の湿り度の計測方法。
前記流量計測値に加え、前記配管内の圧力を計測した圧力計測値を用いて前記配管内の湿り度を取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の湿り度の計測方法。
前記算出部は、前記渦流量計又は前記超音波流量計の一方及び前記オリフィス流量計の各々における前記流量計測値の比に基づいて前記湿り度を算出することを特徴とする請求項5に記載の湿り度計測装置。
前記算出部は、前記渦流量計又は前記超音波流量計の一方及び前記オリフィス流量計の各々における前記流量計測値を、前記湿り蒸気の密度を用いて補正し、当該補正値に基づいて前記湿り度を算出することを特徴とする請求項5又は6に記載の湿り度計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の手法では、配管内を流れる湿り蒸気の湿り度を測定するのは困難であった。また、上記ソナーは干渉した流れが複数のセンサーを通過する際の速度を決めることで流量を求めるものであることから、装置構成が複雑となるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、配管内を流れる湿り蒸気の湿り度を良好に測定可能な湿り度の計測方法、及び湿り度計測装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の湿り度の計測方法は、配管内を流通する湿り蒸気の流量を渦流量計又は超音波流量計の一方及びオリフィス流量計により計測し、当該流量計測値を用いて前記配管内の湿り度を取得することを特徴とする。
【0007】
本発明の湿り度の計測方法によれば、湿り蒸気中の蒸気分の流量に対して湿り度依存性のあるオリフィス流量計の流量計測値と、湿り度依存性の無い渦流量計又は超音波流量計の一方の流量計測値とを組み合わせることで、配管内の湿り度を良好に取得できる。
【0008】
また、上記湿り度の計測方法においては、前記渦流量計又は前記超音波流量計の一方及び前記オリフィス流量計の各々における前記流量計測値の比に基づいて前記湿り度を取得するのが好ましい。
この構成によれば、流量計測値の比に基づいて配管内の湿り度を簡便に取得できる。
【0009】
また、上記湿り度の計測方法においては、前記渦流量計又は前記超音波流量計の一方及び前記オリフィス流量計の各々における前記流量計測値を、前記湿り蒸気の密度を用いて補正し、当該補正値に基づいて前記湿り度を取得するのが好ましい。
この構成によれば、流量計測値の補正値に基づいてより高精度に配管内の湿り度を取得できる。
【0010】
また、上記湿り度の計測方法においては、前記流量計測値に加え、前記配管内の圧力を計測した圧力計測値を用いて前記配管内の湿り度を取得するのが好ましい。
この構成によれば、圧力計測値を用いることで配管内の圧力が変動する場合であっても該配管内の湿り度を取得できる。
なお、湿り蒸気の密度は、湿り蒸気の密度を変数として作成した所定の式から求められる。
【0011】
本発明の湿り度計測装置は、熱需要部に蒸気を供給する配管に設けられ、前記配管内を流通する湿り蒸気の流量を計測する流量計測部と、前記流量計測部の流量計測値を用いて前記配管内の湿り度を算出する算出部と、を備え、前記流量計測部は、渦流量計又は超音波流量計の一方及びオリフィス流量計を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の湿り度計測装置によれば、流量計測部が湿り度依存性のあるオリフィス流量計と湿り度依存性の無い渦流量計又は超音波流量計の一方とを有するので、これら流量計の流量計測値を組み合わせることで、配管内の湿り度を良好に取得できる。
【0013】
また、上記湿り度計測装置においては、前記算出部は、前記渦流量計又は前記超音波流量計の一方及び前記オリフィス流量計の各々における前記流量計測値の比に基づいて前記湿り度を算出するのが好ましい。
この構成によれば、流量計測値の比に基づいて配管内の湿り度を簡便に取得できる。
【0014】
また、上記湿り度計測装置においては、前記算出部は、前記渦流量計又は前記超音波流量計の一方及び前記オリフィス流量計の各々における前記流量計測値を、前記湿り蒸気の密度を用いて補正し、当該補正値に基づいて前記湿り度を算出するのが好ましい。
この構成によれば、流量計測値の補正値に基づいてより高精度に配管内の湿り度を取得できる。
【0015】
また、上記湿り度計測装置においては、前記配管内の圧力を計測する圧力計測部を備え、
前記算出部は、前記流量計測部の前記流量計測値とともに前記圧力計測部の圧力計測値を用いて前記湿り度を算出するのが好ましい。
この構成によれば、圧力計測値を用いることで配管内の圧力が変動する場合であっても該配管内の湿り度を取得できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配管内を流れる湿り蒸気の湿り度を良好に測定可能な湿り度の計測方法、及び湿り度計測装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る湿り度計測装置を示す概略図である。なお、
図1においては、説明の都合上、湿り度計測装置が測定対象となる湿り蒸気が供給される配管に取り付けられた状態としている。
【0019】
図1に示すように、湿り度計測装置100は、湿り蒸気の流量を測定する流量計測部101と、配管30内の圧力を計測する圧力計測部102と、これら流量計測部101及び圧力計測部102による計測結果に基づいて湿り蒸気の湿り度を算出する算出部103とを備えている。
【0020】
湿り度計測装置100は、測定対象となる湿り蒸気が供給される配管30に設けられることで該配管30内の湿り蒸気の湿り度を算出することができる。配管30は、蒸気源10において生成した蒸気を熱需要部90(外部装置)に供給するためのものである。
【0021】
蒸気源10は例えばボイラであり、熱需要部90は例えば各種生産装置や空調装置などである。配管30は不図示の保熱手段により保熱されていてもよい。保熱手段としては、配管の外面を覆う保温材や、配管を加熱する加熱装置などを用いることができる。
【0022】
流量計測部101は、オリフィス流量計110と渦流量計111とを有し、これら流量計110、111が配管30内を流れる湿り蒸気に対して直列に配置されるようになっている。具体的にオリフィス流量計110は、渦流量計111に対して上流側(蒸気源10側)に配置される。
【0023】
上記圧力計測部102は、例えば圧力センサーから構成されており、配管30内におけるオリフィス流量計110直前の湿り蒸気流の圧力を測定するようにしている。これにより、圧力計測部102は圧損が生じる前の湿り蒸気流の圧力を計測することが可能となっている。
【0024】
オリフィス流量計110及び渦流量計111は、それぞれ円管状の管体110a,111aを有し、各々の管体110a,111aの軸方向と蒸気の流通方向とがほぼ平行になるように配管30内に設置される。
【0025】
オリフィス流量計110は中央に穴の開いたオリフィスプレートを用い、プレートの前後の圧力差を利用することで管体110a(配管30)内を流通する湿り蒸気流の流量を計測することができる。そして、蒸気の流速に管体110aの断面積を掛けることで管体110a内を流通する湿り蒸気流の流量を算出できる。
【0026】
一方、渦流量計111は、渦発生体の作用により下流側に発生させた周期的な渦(カルマン渦)をセンサーで検出し、渦周波数に基づいて管体111a(配管30)内を流通する湿り蒸気流の流量を計測することができる。そして、湿り蒸気流の流速に管体111aの断面積を掛けることで管体111a内を流通する湿り蒸気流の流量を算出できる。
【0027】
ところで、湿り度依存性の無い渦流量計111を用いて湿り蒸気流の流量を計測する場合には、湿り度に依存する他の状態量を用いて補正することで計測値の精度を向上させることが可能である。
【0028】
湿り蒸気流におけるオリフィス流量計110の補正後の流量は、下記式(1)で示される。式(1)においてQ
corとは正確な湿り蒸気流量を示し、Q
oriとはオリフィス流量計110で測定した実際の流量であり、F
oriとは補正係数である。
【0030】
オリフィス流量計110の補正係数は、下記式(2)で示すことができる。ここで、式(2)において、cは気液が乱流の場合は20となる。また、式(2)中のX
LMは下記式(3)で示される。式(3)を見ると、mは質量流量であり、ρは密度であり、μは粘性係数であり、添字lは水の状態量であり、添字gは蒸気の状態量である。
【0034】
一方、湿り蒸気流における渦流量計111の補正後の流量は式(4)で示される。ここで、F
vorは、渦流量計111の補正係数であり、下式(5)で示される。式(5)のρ
wetとは湿り蒸気の密度であり、ρとは飽和蒸気密度である。また、ρ
wetは下式(6)により規定される。式(6)中のβは湿り度であり、ρ
gは蒸気密度であり、ρ
lは水の密度である。すなわち、ρ
wetの項は、湿り度βの関数として規定されたものとなる。
【0037】
上述の式に示されるように、オリフィス流量計110の補正係数F
ori及び渦流量計111の補正係数F
vorは湿り度に依存したものとなっている。
【0038】
図2はオリフィス流量計110の補正係数F
oriと湿り度との関係を示すグラフであり、
図3は渦流量計111の補正係数F
vorと湿り度との関係を示すグラフである。なお、
図2、3における横軸は湿り度(単位;%)に対応し、縦軸は補正係数に対応するものであり、各々のグラフは蒸気の圧力に応じた湿り度と補正係数との関係を示している。
【0039】
図2に示されるようにオリフィス流量計110の補正係数F
oriは、蒸気圧力を0.1MPa〜7.0MPaの範囲で異ならせた場合に湿り度と補正係数との関係が大きく変動することが確認できる。すなわち、オリフィス流量計110の補正係数F
oriは、蒸気圧力によって大きく変動するといえる。なお、
図2においては、蒸気圧力を0.5MPaに固定し、補正係数F
oriの値をパラメータとして振った場合に算出された湿り度の実験データも示している(Experiments参照)。
【0040】
一方、
図3に示されるように渦流量計111の補正係数F
vorは蒸気圧力を0.1MPa〜7.0MPaの範囲で異ならせた場合であっても湿り度と補正係数との関係が変動しないことが確認できる。すなわち、渦流量計111の補正係数F
vorは、湿り度が同じとき、蒸気圧力によらず略一定であるといえる。なお、
図3においては、蒸気圧力を0.5MPaに固定し、補正係数F
vorの値をパラメータとして振った場合に算出された湿り度の実験データも示している。(Experiments参照)。
【0041】
算出部103は、例えばCPU等から構成されるものであり、流量計測部101及び圧力計測部102による計測結果に対して演算処理を行うことで配管30に供給される湿り蒸気の湿り度を算出することが可能となっている。算出部103は、圧力計測部102の計測結果を参照することで配管30内の蒸気の圧力が変動する場合であっても湿り蒸気の湿り度を良好に取得できる。
【0042】
ここで、オリフィス流量計110及び渦流量計111は、同一の配管30内の湿り蒸気の流量を計測していることから補正係数による補正後の湿り蒸気流量は下記式(7)の関係が成立する。式(7)においてQ
vorとは渦流量計111で測定した実際の流量である。なお、式(7)においてQ
ulsとは後述する超音波流量計211で測定した実際の流量である(第2実施形態参照)。
【0044】
下記式(8)は、オリフィス流量計110による補正後の蒸気流量(F
ori×Q
ori)及び渦流量計111による補正後の蒸気流量(F
vor×Q
vor)との差を規定したものである。
【0046】
また、下記式(9)は、式(8)の値をQ
oriで割ったもので規定される。式(9)に示されるρは飽和蒸気密度(式(5)参照)であり、圧力計測部102が計測した配管30内の蒸気の圧力によって規定されるものである。
【0048】
また、式(9)に示される(Q
vor/Q
ori)はオリフィス流量計110及び渦流量計111における蒸気流量の実測値の比で規定されるものである。すなわち、式(9)においては、φ
g及びρ
wetの項が変数となる。ここで、φ
gで規定されるオリフィス流量計110の補正係数による項は、上記式(2)に基づいて算出することができる。またρ
wetの項は上記式(6)に基づいて規定することができる。ρ
wetは、上述したように湿り度βの関数であることから式(9)は湿り度βの関数となる。なお、湿り蒸気の密度ρ
wetは、ρ
wetを変数として作成した所定の式から求められる。
【0049】
ここで、オリフィス流量計110及び渦流量計111における補正後の蒸気流量は、上記式(7)の関係を満たすことから式(9)で示したf(x)の真値は0になるものと考えられる。そこで、算出部103は式(9)においてf(x)=0とし、湿り度βを算出することができる。
【0050】
このように算出部103は、蒸気圧力によって補正係数が変動する特性を有するオリフィス流量計110と、蒸気圧力によって補正係数が変動しない特性を有する渦流量計111とを用いることで、各々の流量計110,111によって計測した湿り蒸気の計測結果(流量)に基づいて配管30内に供給される蒸気の湿り蒸気の湿り度を算出するようにしている。
【0051】
従って、本実施形態に係る湿り度計測装置100は、算出部103が流量計測部101及び圧力計測部102の計測結果に基づいて湿り蒸気における湿り度を良好に算出することが可能となっている。
【0052】
具体的に流量計測部101は、オリフィス流量計110及び渦流量計111の各々について配管30内の湿り蒸気の流量を計測し、それぞれの計測値を算出部103へと送信する。また、圧力計測部102は、配管30内の圧力の計測結果を算出部103へと送信する。
【0053】
算出部103は、配管30内を流れる湿り蒸気の圧力及び流量計測部101の各流量計110,111の計測値の比(流量比)を取得することで上述の式に基づく計算を行うことで湿り度を算出することができる。
【0054】
以上述べたように、本実施形態に係る湿り度計測装置100によれば、流量計測部101のオリフィス流量計110及び渦流量計111における蒸気圧力における依存性の違いという特性を利用することで従来計測が困難とされていた湿り蒸気の湿り度を計測できる。
【0055】
また、本実施形態では、オリフィス流量計110直前に圧力計測部102を配置しているので、オリフィス流量計110によって圧損が生じる前の蒸気の圧力を精度良く計測できる。よって、算出部103は高精度で計測された圧力計測値を用いることで湿り度を精度良く算出することができる。
【0056】
なお、上記第1実施形態では、オリフィス流量計110が渦流量計111に対して上流側に設置される場合を例に説明したが、渦流量計111をオリフィス流量計110の上流側に設置するようにしても良い。この場合においては、圧力計測部102は少なくともオリフィス流量計110の直前に設置されていればよく、
図4に示すように渦流量計111の直前にも個別設置する構成であっても構わない。ここで、渦流量計111の直前に設置された圧力計測部102を第1圧力計測部102a、オリフィス流量計110の直前に設置された圧力計測部102を第2圧力計測部102bと称することにする。
【0057】
図4に示す構成においては、算出部103は第1圧力計測部102aによる蒸気の圧力計測値に基づいて渦流量計111の補正係数F
vorを算出し、第2圧力計測部102bによる蒸気の圧力計測値に基づいてオリフィス流量計110の補正係数F
oriを算出する。
【0058】
この構成によれば、算出部103が各流量計110、111の直前における蒸気の圧力計測値に基づいてそれぞれの補正係数F
ori、F
vorを算出するので、より高精度に湿り度を算出することができる。
【0059】
(第2実施形態)
続いて、本発明の湿り度計測装置の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態と第1実施形態との違いは、湿り度計測装置が渦流量計の代わりに超音波流量計を備える点である。すなわち、本実施形態に係る湿り度計測装置は、流量計測部がオリフィス流量計と超音波流量計とから構成されている。なお、第1実施形態と同一の構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化するものとする。
図5は第2実施形態に係る湿り度計測装置の構成を示す図である。
【0060】
図5に示すように本実施形態に係る湿り度計測装置200は、湿り蒸気の流量を測定する流量計測部201と、配管30内の圧力を計測する圧力計測部102と、これら流量計測部201及び圧力計測部102による計測結果に基づいて湿り蒸気の湿り度を算出する算出部103とを備えている。
【0061】
流量計測部201は、オリフィス流量計110と超音波流量計211とを有し、これら流量計110、211が配管30内を流れる蒸気に対して直列に配置されるようになっている。具体的に超音波流量計211は、オリフィス流量計110に対して上流側(蒸気源10側)に配置される。
【0062】
本実施形態においては、圧力計測部102が配管30内におけるオリフィス流量計110と超音波流量計211との間の蒸気の圧力を測定するように設置されている。超音波流量計211は蒸気の圧損が少ないことから、圧力計測部102は超音波流量計211の下流側においても蒸気の圧力を良好に計測することが可能とされている。
【0063】
超音波流量計211は、上述のオリフィス流量計110及び渦流量計111と同様に、円管状の管体211aを有し、該管体211aの軸方向と蒸気の流通方向とがほぼ平行になるように配管30内に設置される。
【0064】
超音波流量計211は、管体211a内において蒸気導入口から蒸気排出口側へ流れる蒸気(被計測流体)に対し、超音波送信部222及び受信部223間で超音波を送受信する。具体的に超音波流量計211は、管体211a内に超音波を斜めに送信し、蒸気の流れに沿った向きと蒸気の流れに逆らった向きとで超音波信号の伝搬時間に生じる差を検出し、該検出結果に基づいて蒸気の流速を算出し、蒸気の流速に管体211aの断面積を掛けることで管体211a内を流通する蒸気の流量を算出できる。
【0065】
ところで、超音波流量計211は、上述した渦流量計111と同様、流量の測定値が湿り度に依存して変化しないことから、湿り蒸気の流量を計測する場合には湿り度に依存する他の状態量を用いて補正することが可能である。
【0066】
湿り蒸気流における超音波流量計211の補正後の流量は式(10)で示される。ここで、F
ulsは、超音波流量計211の補正係数であり、下式(11)で示される。式(11)のρ
wetとは湿り蒸気の密度であり、ρとは飽和蒸気密度である。また、ρ
wetは上記式(6)により規定されるものであり、ρ
wetの項は、湿り度βの関数として規定されたものとなる。すなわち、超音波流量計211の補正後の流量は、渦流量計111と同一の式で規定することができる。
【0069】
以上のように、超音波流量計211の補正係数F
ulsは湿り度に依存したものとなっている。
【0070】
図6は超音波流量計211の補正係数F
ulsと湿り度との関係を示すグラフである。なお、
図6における横軸は湿り度(単位;%)に対応し、縦軸は補正係数に対応するものであり、このグラフは蒸気の圧力に応じた湿り度と補正係数との関係を示している。なお、
図6においては、蒸気圧力を0.5MPaに固定し、補正係数F
ulsの値をパラメータとして振った場合に算出された湿り度の実験データも示している(Experiments参照)。
【0071】
図6に示されるように超音波流量計211の補正係数F
ulsは蒸気圧力を0.1MPa〜7.0MPaの範囲で異ならせた場合であっても湿り度と補正係数との関係が変動しないことが確認できる。すなわち、超音波流量計211の補正係数F
ulsは、湿り度が同じとき、蒸気圧力によらず略一定であるといえる。
【0072】
本実施形態では、オリフィス流量計110及び超音波流量計211が同一の配管30内の湿り蒸気の流量を計測しており、補正係数による補正後の湿り蒸気流量は上記式(7)の関係が成立する。上記式(7)においてQ
ulsとは超音波流量計211で測定した実際の流量である。
【0073】
下記式(12)は、オリフィス流量計110による補正後の蒸気流量(F
ori×Q
ori)及び超音波流量計211による補正後の蒸気流量(F
uls×Q
uls)との差を規定したものである。
【0075】
また、下記式(13)は、式(12)の値をQ
oriで割ったもので規定される。式(13)に示されるρは蒸気の密度(式(11)参照)であり、圧力計測部102が計測した配管30内の蒸気の圧力によって規定されるものである。また、式(13)に示される(Q
uls/Q
ori)はオリフィス流量計110及び超音波流量計211における蒸気流量の実測値の比で規定されるものである。すなわち、式(13)においては、φ
g及びρ
wetの項が変数となる。ここで、φ
gで規定されるオリフィス流量計110の補正係数による項は、第1実施形態と同様、上記式(2)に基づいて算出することができる。またρ
wetの項は、第1実施形態と同様、上記式(6)に基づいて規定することができ、ρ
wetは上述したように湿り度βの関数であることから式(13)は湿り度βの関数となる。
【0077】
ここで、オリフィス流量計110及び超音波流量計211における補正後の蒸気流量は、上記式(7)の関係を満たすことから式(13)で示したf(x)の真値は0になるものと考えられる。そこで、算出部103は式(13)においてf(x)=0とし、湿り度βを算出することができる。
【0078】
このように算出部103は、蒸気圧力によって補正係数が変動する特性を有するオリフィス流量計110と、蒸気圧力によって補正係数が変動しない特性を有する超音波流量計211とを用いることで、各々の流量計110,211によって計測した湿り蒸気の計測結果(流量)に基づいて配管30内に供給される湿り蒸気の湿り度を算出するようにしている。
【0079】
従って、本実施形態に係る湿り度計測装置200は、算出部103が流量計測部201及び圧力計測部102の計測結果に基づいて湿り蒸気における湿り度を良好に算出することが可能となっている。
【0080】
具体的に流量計測部201は、オリフィス流量計110及び超音波流量計211の各々について配管30内の湿り蒸気の流量を計測し、それぞれの計測値を算出部103へと送信する。また、圧力計測部102は、配管30内の圧力の計測結果を算出部103へと送信する。
【0081】
算出部103は、配管30内を流れる湿り蒸気の圧力及び流量計測部201の各流量計110,211の計測値の比(流量比)を取得することで上述の式に基づく計算を行うことで湿り度を算出することができる。
【0082】
以上述べたように、本実施形態に係る湿り度計測装置200においても、流量計測部201のオリフィス流量計110及び超音波流量計211における蒸気圧力における依存性の違いといった特性を利用することで従来計測が困難とされていた湿り蒸気の湿り度を計測することができる。
【0083】
なお、上記第2実施形態では、超音波流量計211がオリフィス流量計110に対して上流側に設置される場合を例に説明したが、オリフィス流量計110を超音波流量計211の上流側に設置するようにしても良い。この場合においては、圧力計測部102はオリフィス流量計110及び超音波流量計211の直前に設置するのが望ましい。これによれば、オリフィス流量計110を通過した蒸気に圧損が生じた場合であっても、超音波流量計211の直前に設けられた圧力計測部102によって蒸気の圧力を良好に計測することができる。よって、オリフィス流量計110及び超音波流量計211の流量比が精度良く計測されることで湿り度を良好に算出できる。
【0084】
また、例えば、上述の第1実施形態においては、算出部103が圧力計測部102による配管30内の圧力計測値と、流量計測部101の各流量計110、111の流量計測値とを上述の数式に当てはめて計算することで配管30内を流れる湿り蒸気の湿り度を算出する場合を例としたが、本発明はこれに限定されない。
【0085】
算出部103は、流量計測部101の各流量計110、111の流量計測値と、予め実験などにより取得したグラフとを用いることで配管30内を流れる湿り蒸気の湿り度を算出することもできる。
【0086】
図7は、湿り蒸気の圧力毎に、オリフィス流量計110及び渦流量計111における流量比(Q
vor/Q
ori)と湿り度との関係を規定したものである。
図7に示されるグラフは、圧力及び湿り度をパラメータとした湿り蒸気を配管30内に供給し、この湿り蒸気の流量を流量計測部101の各流量計110,111で計測し、各々の計測値の比を算出してプロットしたものである。
このグラフにおける横軸は上記流量比(Q
vor/Q
ori)に対応するものであり、縦軸は湿り度に対応するものである。
【0087】
図7に示すグラフを見ると、湿り蒸気の圧力が0.5MPa程度以下であれば、流量比(Q
vor/Q
ori)を取得することで湿り度の値を一義的に算出することができることがわかる。
【0088】
また、湿り蒸気の圧力が0.5MPa〜1.0MPa程度(具体的には0.7MPa及び1.0MPa)の場合、流量比(Q
vor/Q
ori)の値が僅かに変化するだけで湿り度が大きく変化することがわかる。また、流量比の値によっては湿り度の値が2つ得られることがわかる。したがって、湿り蒸気の圧力が0.5MPa〜1.0MPa程度の場合、上記流量比として高い精度のものを取得すべく、流量計110,111として計測精度の高いものを用いるのが望ましい。また、このように湿り度の値が複数得られた場合であっても、例えば算出部103が測定する湿り蒸気の湿り度として想定される閾値を記憶しておき、測定値と閾値とを比較することで最適な湿り度を選択することができる。
【0089】
また、湿り蒸気の圧力が1.0MPa程度以上であれば、流量比(Q
vor/Q
ori)を取得することで湿り度の値を一義的に算出することができることがわかる。
【0090】
以上のように算出部103は、流量計測部101における流量計測値(流量比)と、予め実験などにより取得したグラフとを用いて湿り度を算出する手法は、湿り蒸気の蒸気が0.5MPa程度以下或いは1.0MPa程度以上の場合に適用すると良好な測定結果を得ることが可能である。
【0091】
なお、本説明では第1実施形態において算出部103が流量計測部101の各流量計110、111の流量計測値と、予め実験などにより取得したグラフとを用いることで配管30内を流れる湿り蒸気の湿り度を算出する場合を例に挙げて説明した。
しかしながら、渦流量計111と超音波流量計211とは、流量の補正係数が蒸気圧力に依存しないといった共通の特性を有することから第2実施形態においても算出部103が流量計測部201の各流量計110、211の流量計測値と、予め実験などにより取得したグラフとを用いることで配管30内を流れる湿り蒸気の湿り度を算出することができる。