【実施例】
【0039】
以下、本発明において、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1] Preyssler/T4
(Preyssler型リンタングステン酸の合成)
Preyssler型リンタングステン酸として、既報(Y.Jeanninら,Journal of American Chemical Society,1985,107,2662−2669)に従い、カリウムとナトリウムの混合塩であるK
12.5Na
1.5[NaP
5W
30O
110]を合成し、単離した。
【0041】
具体的な合成方法としては、タングステン酸ナトリウム・2水和物(Na
2WO
4・2H
2O、和光純薬製)33gを純水30mlに溶解し、85質量%リン酸(85質量%H
3PO
4、和光純薬製)26.5mlを添加した。この溶液を、テフロン(登録商標)内筒型密閉容器(TAF−SR型、内容積100ml、耐圧硝子工業製)に入れて密閉後、120℃の水熱条件下で一晩静置した。容器を室温まで放冷して容器を開放し、純水15mlをゆっくりと添加、引き続いて塩化カリウム(和光純薬製)10gを添加した。生じた沈澱は、吸引ろ過によりろ別し、2mol/lの酢酸カリウム(和光純薬製)水溶液およびメタノール(和光純薬製)で洗浄した。吸引条件下で乾燥後、得られた黄白色固体を熱水30mlに溶解し、静置して室温まで放冷し、再結晶した。吸引ろ過して得られた白色固体について、同様な方法で再結晶を2回繰返し、白色結晶を得た。
【0042】
また、合成した化合物がK
12.5Na
1.5[NaP
5W
30O
110]・37H
2Oであることは、FT−IR(PARAGON 1000、Perkin−Elmer製)、元素分析(ICP発光分析:IRIS−AP、Jarrell Ash Japan製、原子吸光:AAnalyst 800、Perkin−Elmer製)、
31P−NMR(Varian System 500、Varian製)および
183W−NMR(Varian System 500、Varian製)により確認した。FT−IRスペクトルにおいては、789、912、937、1018、1083および1164cm
-1に[NaP
5W
30O
110]
14-アニオンに特徴的な振動が観測された。元素分析においては、質量%での実測値(計算値)として、K:6.03(5.65)、Na:0.48(0.67)、P:1.51(1.79)、W:63.7(63.8)であった。
31P−NMR(共鳴周波数:202.333MHz、溶媒:重水)においては、85質量%H
3PO
4を外部標準とし、H
3PO
4のP由来のシグナルを0ppmとした場合の化学シフト値として、−9.4ppmに[NaP
5W
30O
110]
14-アニオン由来のシグナルが確認された。
183W−NMR(共鳴周波数:20.825MHz、溶媒:重水)においては、飽和Na
2WO
4重水溶液を外部標準とし、Na
2WO
4のW由来のシグナルを0ppmとした場合の化学シフト値として、−207.9、−209.9、−275.0および−287.4ppmに[NaP
5W
30O
110]
14-アニオン由来のシグナルが、積分比2:2:1:1で確認された。なお、
183W−NMRの前処理として、K
12.5Na
1.5[NaP
5W
30O
110]を重水中でLi
+型陽イオン交換樹脂とともに攪拌してカチオン交換を施した。この操作により、サンプルの重水への溶解度が向上し、より良好なスペクトルを得ることができる。このとき、カチオンの相違は、
183W−NMRでのケミカルシフト値に影響を与えないことを確認している。
【0043】
(観察対象)
細菌に感染するウイルスであるT4ファージ(NBRC;NITE Biological Resource Centerより購入、T4(NBRC20004))を二重寒天培養法により37℃で24時間培養し、精製したものを用いた。
【0044】
(染色剤溶液)
Preyssler型リンタングステン酸を蒸留水に溶かし、濃度を0.5質量%とした溶液を用いた。
【0045】
(染色方法)
染色は以下の手順で行った。前記ファージの濃度を約10
11PFU/ml(PFU:Plaque forming unit)に調整したファージ溶液(PBS:phosphate buffered saline)5μlを、カーボン蒸着および親水化処理を施したコロジオン膜張りCuグリッド(日新EM社製、製品番号:6511、200メッシュ)上にマイクロピペット3を用いて
図4(a)に示すように滴下し、グリッドと3分間接触させた後、余分な溶液を5Cのろ紙で吸い取った。その後、試料に前記染色剤溶液5μlを、マイクロピペットを用いて
図4(a)に示すように滴下し、3分間接触させた後、余分な溶液を5Cのろ紙により吸い取った。なお、ろ紙で余分な溶液を吸い取る際には、
図4(b)に示すようにグリッド2とろ紙4との角度を30度に保った。その後、室温にて1時間定置乾燥させて観察用試料を得た。
【0046】
(電子顕微鏡観察)
前記観察用試料について電子顕微鏡観察を行った。電子顕微鏡観察は、広島大学自然科学研究支援開発センター遺伝子実験部門所有の透過型電子顕微鏡(JEM−1200EX、日本電子製、加速電圧80kV)を用いて行った。結果を
図5(a)に示す。
【0047】
[実施例2] Preyssler/T7
ファージとして、T7ファージ(NBRC;NITE Biological Resource Centerより購入、T7(NBRC20007))を用いたこと以外は、実施例1と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図6(a)に示す。
【0048】
[実施例3] Preyssler/λ
ファージとして、λファージ(NBRC;NITE Biological Resource Centerより購入、λ(NBRC20016))を用いたこと以外は、実施例1と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図7(a)に示す。
【0049】
[比較例1] 酢酸ウラニル/T4
染色剤溶液として、酢酸ウラニルを蒸留水に溶かし、濃度を3質量%とした溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図5(b)に示す。
【0050】
[比較例2] 酢酸ウラニル/T7
ファージとして、T7ファージ(NBRC;NITE Biological Resource Centerより購入、T7(NBRC20007))を用いたこと以外は、比較例1と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図6(b)に示す。
【0051】
[比較例3] 酢酸ウラニル/λ
ファージとして、λファージ(NBRC;NITE Biological Resource Centerより購入、λ(NBRC20016))を用いたこと以外は、比較例1と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図7(b)に示す。
【0052】
[比較例4] Keggin/T4
染色剤溶液として、Keggin型リンタングステン酸(TAAB社製)を蒸留水に溶かして濃度を0.5質量%とした後、KOH水溶液によりpHを6に調整した溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図5(c)に示す。
【0053】
[比較例5] Keggin/T7
ファージとして、T7ファージ(NBRC;NITE Biological Resource Centerより購入、T7(NBRC20007))を用いたこと以外は、比較例4と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図6(c)に示す。
【0054】
[比較例6] Keggin/λ
ファージとして、λファージ(NBRC;NITE Biological Resource Centerより購入、λ(NBRC20016))を用いたこと以外は、比較例4と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図7(c)に示す。
【0055】
[実施例4] Preyssler濃度0.3質量%/T4
染色剤溶液中のPreyssler型リンタングステン酸の濃度を0.3質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図8(a)に示す。
【0056】
[実施例5] Preyssler濃度2.0質量%/T4
染色剤溶液中のPreyssler型リンタングステン酸の濃度を2.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして観察用試料を作製し、TEM観察を行った。結果を
図8(b)に示す。
【0057】
[実施例6] Ca−Preyssler/T4
(Ca
2+交換Preyssler型リンタングステン酸の合成)
実施例1と同様な方法で調製したK
12.5Na
1.5[NaP
5W
30O
110]・15H
2Oを純水に溶解し、1.2当量の塩化カルシウム(CaCl
2、和光純薬製)を加え、既報(M.T.Popeら,Inorganic Chemistry,1993,32,1573−1578)に従って160℃で2日間反応させることにより、K
13[CaP
5W
30O
110]を合成し、単離した。元素分析(Mikroanalytisches Labor Pascher社により分析、所在地:An der Pulvermuhle 1,D−53424,Remagen−Bndorf,Germany)により、質量%での実測値(計算値)として、K:5.78(5.94)、Ca:0.48(0.46)、P:1.84(1.84)、W:65.4(65.4)、H:0.59(0.60)が得られ、本化合物がK
13[CaP
5W
30O
110]・25H
2Oであることを確認した。また、実施例1と同様な方法で
31P−NMRを測定し、−9.0および−11.1ppmに[CaP
5W
30O
110]
13-アニオン由来のシグナルが確認された。
【0058】
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
染色剤としてK
13[CaP
5W
30O
110]を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法で行った。結果を
図9に示す。
【0059】
[実施例7] Y−Preyssler/T4
(Y
3+交換Preyssler型リンタングステン酸の合成)
塩化カルシウムの代わりに1.2当量の硝酸イットリウム・6水和物(Y(NO
3)
3・6H
2O、アルドリッチ製)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、K
12[YP
5W
30O
110]を合成し、単離した。実施例6と同様な方法で元素分析と
31P−NMRを測定した。元素分析により、質量%での実測値(計算値)として、K:5.78(5.74)、Y:1.05(1.04)、P:1.84(1.84)、W:65.4(65.4)、H:0.59(0.55)が得られ、本化合物がK
12[YP
5W
30O
110]・25H
2Oであることを確認した。
31P−NMRにおいて、−10.1ppmに[YP
5W
30O
110]
12-アニオン由来のシグナルが確認された。
【0060】
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
染色剤としてK
12[YP
5W
30O
110]を用いたこと以外は、実施例6と同様な方法で行った。結果を
図10に示す。
【0061】
[実施例8] Ce−Preyssler/T4
(Ce
3+交換Preyssler型リンタングステン酸の合成)
溶媒として0.1mol/lの硝酸(HNO
3)水溶液を用いたこと、塩化カルシウムの代わりに3当量の硝酸アンモニウムセリウム(IV)((NH
4)
2[Ce(NO
3)
6]、和光純薬製)を用いたことおよび反応温度を180℃としたこと以外は、実施例6と同様にして、K
12[CeP
5W
30O
110]を合成し、単離した。実施例6と同様な方法で元素分析と
31P−NMRを測定した。元素分析により、質量%での実測値(計算値)として、K:5.74(5.78)、Ce:1.65(1.63)、P:1.83(1.81)、W:65.0(64.7)、H:0.59(0.60)が得られ、得られた化合物がK
12[CeP
5W
30O
110]・25H
2Oであることを確認した。
31P−NMRにおいて、−15.9ppmに[CeP
5W
30O
110]
12-アニオン由来のシグナルが確認された。
【0062】
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
染色剤としてK
12[CeP
5W
30O
110]を用いたこと以外は、実施例6と同様な方法で行った。結果を
図11に示す。
【0063】
[実施例9] Eu−Preyssler/T4
(Eu
3+交換Preyssler型リンタングステン酸の合成)
塩化カルシウムの代わりに1.2当量の硝酸ユウロピウム(III)・6水和物(Eu(NO
3)
3・6H
2O、和光純薬製)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、K
12[EuP
5W
30O
110]を合成し、単離した。実施例6と同様な方法で元素分析と
31P−NMRを測定した。元素分析により、質量%での実測値(計算値)として、K:5.74(5.80)、Eu:1.79(1.81)、P:1.82(1.82)、W:64.9(64.8)、H:0.59(0.53)が得られ、本化合物がK
12[EuP
5W
30O
110]・25H
2Oであることを確認した。
31P−NMRにおいて、0.6ppmに[EuP
5W
30O
110]
12-アニオン由来のシグナルが確認された。
【0064】
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
染色剤としてK
12[EuP
5W
30O
110]を用いたこと以外は、実施例6と同様な方法で行った。結果を
図12に示す。
【0065】
[実施例10] Bi−Preyssler/T4
(Bi
3+交換Preyssler型リンタングステン酸の合成)
溶媒として0.1mol/lのHCl水溶液を用いたこと、塩化カルシウムの代わりに2当量の塩化ビスマス(III)(BiCl
3、和光純薬製)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、K
12[BiP
5W
30O
110]を合成し、単離した。実施例6と同様な方法で元素分析と
31P−NMRを測定した。元素分析により、質量%での実測値(計算値)として、K:5.70(5.73)、Bi:2.44(2.41)、P:1.81(1.80)、W:64.5(64.6)、H:0.58(0.54)が得られ、本化合物がK
12[BiP
5W
30O
110]・25H
2Oであることを確認した。
31P−NMRにおいて、−8.2ppmに[BiP
5W
30O
110]
12-アニオン由来のシグナルが確認された。
【0066】
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
染色剤としてK
12[BiP
5W
30O
110]を用いたこと以外は、実施例6と同様な方法で行った。結果を
図13に示す。
【0067】
[実施例11] Eu−Preyssler/T7
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
実施例9の染色剤を用いたこと以外は、実施例2と同様な方法で行った。結果を
図14に示す。
【0068】
[実施例12] Eu−Preyssler/λ
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
実施例3の観察対象を用いたこと以外は、実施例11と同様な方法で行った。結果を
図15に示す。
【0069】
[実施例13] Preyssler−NH
4塩/T4
(Preyssler型リンタングステン酸NH
4塩の合成)
実施例1記載の既報に従って合成したK
12.5Na
1.5[NaP
5W
30O
110]を原料とし、H
14[NaP
5W
30O
110]を経由して(NH
4)
14[NaP
5W
30O
110]を合成した。具体的には、20gのK
12.5Na
1.5[NaP
5W
30O
110]・15H
2Oを300mlの純水に溶解し、50gのDowex50W×8(プロトン型陽イオン交換樹脂、和光純薬製)をつめたカラム(カラム内径:約15mm)にこの溶液を流通させることでH
14[NaP
5W
30O
110]へ変換した。得られた溶液をロータリーエバポレーター(32mbar、45℃)を用いて濃縮、乾燥し、固体を得た。実施例6と同様な方法で元素分析と
31P−NMRを測定し、実施例1と同様な方法で
183W−NMRを測定した。元素分析により、質量%での実測値(計算値)として、K:<0.0002(0.00)、Na:0.26(0.28)、P:1.72(1.88)、W:67.02(66.77)、H:1.10(1.24)が得られ、本化合物がH
14[NaP
5W
30O
110]・44H
2Oであることを確認した。
31P−NMRにより、−9.4ppmに[NaP
5W
30O
110]
14-アニオン由来のシグナルが確認された。
183W−NMRにより、−207.8、−209.7、−275.9および−288.3ppmに[NaP
5W
30O
110]
14-アニオン由来のシグナルが確認された。
【0070】
0.772gのH
14[NaP
5W
30O
110]・44H
2Oと10mlの純水を、冷却管を取り付けた200ml二口フラスコに入れ、95℃に加熱したオイルバス中に30分間保持した。その溶液に0.12gの炭酸水素アンモニウム(NH
4HCO
3、和光純薬製)を55mlの純水に溶解した溶液を、滴下ロートを用いて30分かけて滴下した。滴下終了後、室温まで冷却し、ロータリーエバポレーター(32mbar、45℃)を用いて、3時間濃縮乾燥した。実施例1と同様な方法でFT−IRと
31P−NMRを測定した。FT−IRスペクトルにおいては、784、912、935、984、1018、1079および1164cm
-1に[NaP
5W
30O
110]
14-アニオンに特徴的な振動が、1401cm
-1にNH
4+カチオンに特徴的な振動が観測された。
31P−NMRにより、−9.4ppmに[NaP
5W
30O
110]
14-アニオン由来のシグナルが確認された。
【0071】
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
(NH
4)
14[NaP
5W
30O
110]を染色剤として用いたこと以外は、実施例1と同様な方法で行った。結果を
図16に示す。
【0072】
[実施例14] Preyssler−K塩/T4
(Preyssler型リンタングステン酸K塩の合成)
実施例1記載の既報に従い、K
14[NaP
5W
30O
110]を合成した。具体的には、タングステン酸ナトリウム・2水和物(Na
2WO
4・2H
2O、和光純薬製)99gを純水90mlに溶解し、85質量%リン酸(85質量%H
3PO
4、和光純薬製)79.5mlを添加した。この溶液を、テフロン(登録商標)内筒型密閉容器(TAF−SR型、内容積300ml、耐圧硝子工業製)に入れて密閉後、120℃の水熱条件下で一晩静置した。容器を室温まで放冷して容器を開放し、純水45mlをゆっくりと添加、引き続いて塩化カリウム(和光純薬製)30gを添加した。生じた沈澱は、吸引ろ過によりろ別し、2mol/lの酢酸カリウム(和光純薬製)水溶液(150ml)およびメタノール(和光純薬製)(150ml)で洗浄した。吸引条件下で乾燥すると薄い黄白色固体が得られた(約60g)。得られた黄白色固体(約60g)を100度の熱水70mlに溶解し、静置してゆっくり室温まで放冷し、再結晶した。吸引ろ過して白色固体を得た(約25g)。この得られた白色固体(約25g)を100度の熱水20mlに溶解し、静置して室温までゆっくり放冷し、再結晶した。析出した固体を吸引ろ過して、白色固体を得た(約20g)。実施例6と同様な方法で元素分析と
31P−NMRを測定した。元素分析により、質量%での実測値(計算値)として、K:6.31(6.50)、Na:0.28(0.27)、P:1.83(1.84)、W:65.5(65.5)、H:0.54(0.55)が得られ、本化合物がK
14[NaP
5W
30O
110]・23H
2Oであることを確認した。
31P−NMRにより、−9.4ppmに[NaP
5W
30O
110]
14-アニオン由来のシグナルが確認された。
【0073】
なお、前述したように、リンタングステン酸の水和水量(nH
2O)は、乾燥状態や保管状態などにより変化するが、本発明においては、その変化は染色剤としての性能に影響を及ぼさない。また、本願発明者の検討により、K
14-xNa
x[NaP
5W
30O
110]・nH
2OにおけるNaの含有率xは、同様な調製条件で合成された場合にも、元素分析結果におけるxが0〜1.5の間で変化する場合があることが分かった(例えば、実施例1と実施例6ではx=1.5、実施例14ではx=0)。この変化も、原料としての性質および染色剤としての性能に影響は与えないため、xおよびnの異なるK
14-xNa
x[NaP
5W
30O
110]・nH
2Oは本発明において問題なく使用できる。
【0074】
(観察対象、染色剤溶液、染色方法および電子顕微鏡観察)
K
14[NaP
5W
30O
110]を染色剤として用いたこと以外は、実施例1と同様な方法で行った。結果を
図17に示す。