(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の無線局装置及び第2の無線局装置と、前記第1の無線局装置と前記第2の無線局装置との間の無線通信を中継する中継局とを備える無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記第1の無線局装置と前記中継局との間における無線リンクに関する無線リンク情報と、前記第2の無線局装置と前記中継局との間における無線リンクに関する無線リンク情報とを取得する無線リンク情報取得ステップと、
前記無線リンク情報に基づいて、前記第1の無線局装置と前記中継局との間における伝送レートと、前記第2の無線局装置と前記中継局との間における伝送レートとを無線通信に利用可能なサブチャネルごとに算出する伝送レート算出ステップと、
前記伝送レート算出ステップにおいて算出した前記第1の無線局装置及び前記第2の無線局装置の各サブチャネルの伝送レートに基づいて、前記第1の無線局装置と前記中継局とが通信すると共に前記第2の無線局装置と前記中継局とが通信する際において、前記第1の無線局装置の伝送レートと前記第2の無線局装置の伝送レートとのうち小さい伝送レートを最大にする前記サブチャネルの割当を選択するサブチャネル割当ステップと、
前記サブチャネル割当ステップにおいて選択したサブチャネルの割当における前記第1の無線局装置の伝送レート及び前記第2の無線局装置の伝送レートに基づいて、前記第1の無線局装置と前記第2の無線局装置との通信に要する第1の通信時間を割り当てる時間リソース割当ステップと、
前記サブチャネル割当ステップにおいて選択した前記サブチャネルの割当と、前記時間リソース割当ステップにおいて割り当てた第1の通信時間とを、前記第1の無線局装置と前記第2の無線局装置と前記中継局とに通知して無線通信を開始させる割当リソース通知ステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態における無線通信システム、及び無線通信方法を説明する。
図1は、本発明に係る実施形態における無線通信システムの一例を示す概略図である。同図に示される無線通信システムは、複数の無線局装置を有し、各無線局装置が他の無線局装置と無線通信を行うことにより無線ネットワークを形成している。ここでは、1組の無線局装置のペア(無線局装置S1と無線局装置S2)と、当該無線局装置のペアの間に位置する中継局としての無線局装置R1〜RPとが協力中継伝送を行う場合が示されている。中継局としての無線局装置R1〜RPを中継局グループという。同図において、無線局装置S1、S2、R1〜RP以外の無線局装置(丸印)は、無線局装置S1、S2のペアの通信に協力せず、中継局として選ばれていない無線局装置を示している。無線通信システムにおける無線通信が無線LANの規格に従い動作する場合、各無線局装置はAP(Access Point:アクセスポイント)又はSTA(Station:端末)のいずれであってもよい。
【0018】
図2は、本実施形態における無線通信の手順を時間軸上に展開したフレームシーケンスの一例を示す図である。同図において、横軸は時間を示している。
図2(a)に示されるように、無線ネットワークでは、マネジメントフレームを送信する無線局装置と、制御データフレームを送信する無線局装置とによって、一定の頻度で通信媒体が占有されている。無線LANでは、無線局装置が通信媒体を占有する頻度を各無線局装置に対して均等に割り当てる制御方式と、特定の無線局装置に対して優先的に割り当てる制御方式と画ある。
【0019】
各無線局装置に対して優先的に通信媒体を割り当てる制御方式には、例えばEDCA(Enhanced Distributed Channel Access)などがある。無線局装置は、優先度に対応するキュー(Queue:待ち行列)を複数備え、通信媒体にアクセスするときにはフレーム間隔(Inter Frame Space)やバックオフアルゴリズムの乱数発生範囲の制御などをする。これにより、優先度の高い送信フレームにはより高い確率で通信権が割り当てられるように、統計的に優先制御を実現している。また、無線LANでは、Beaconフレームなどさまざまなマネジメントフレームが使用される。
【0020】
図2(b)には、中継局を用いない直接無線リンクによるデータ通信を行う場合と、中継局を用いる中継無線リンクによるデータ通信を行う場合とにおける制御データフレームの構成が示されている。直接無線リンクによるデータ通信を行う場合、すなわち中継局グループを用いないデータ通信を行う場合、制御データフレームには、中継局グループを用いないデータ通信のための前処理制御の制御フレームと、直接無線リンクによるデータ通信のデータフレーム・制御フレームとが含まれる。中継局を用いる中継無線リンクによるデータ通信を行う場合、制御データフレームには、中継局グループを用いるための前処理の制御フレームと、協力中継伝送による双方向データ通信のデータフレーム・制御フレームとが含まれる。データフレーム・制御フレームには、必要であればデータ伝送の成否応答が含まれる。
【0021】
図2(c)には、直接無線リンクを用いた双方向データ通信を行う場合と、中継無線リンクを用いた双方向データ通信を行う場合とにおけるデータフレーム・制御フレームの構成が示されている。直接無線リンクを用いた直接伝送を行う場合、データフレーム・制御フレームには、順方向伝送フェーズのデータフレーム・制御フレームと、逆方向伝送フェーズのデータフレーム・制御フレームとが含まれる。順方向伝送フェーズは、データ通信を行うペアの無線局装置のいずれか一方の無線局装置から他方の無線局装置へ送信データを伝送するフェーズである。逆方向伝送フェーズは、順方向伝送フェーズと逆方向の送信データの伝送するフェーズ、すなわち他方の無線局装置から一方の無線局装置へ送信データを伝送するフェーズである。
【0022】
また、中継無線リンクを用いた協力中継伝送を行う場合、データフレーム・制御フレームには、MAC(Multiple Access Channel)伝送フェーズのデータフレーム・制御フレームと、BC(Broadcast Channel)伝送フェーズのデータフレーム・制御フレームとが含まれる。MAC伝送フェーズは、データ通信を行うペアの無線局装置それぞれから中継局に送信データを送信するフェーズである。BC伝送フェーズは、中継局がペアの無線局装置から受信した送信データをペアの無線局装置に送信(転送)するフェーズである。
【0023】
中継局を用いないペアの無線局装置間における直接伝送では、ペアの無線局装置における送信データを送信する送信局と当該送信データを受信する受信局との間の直接無線リンクだけが存在する。この直接無線リンクに関する無線リンク情報を送信局と受信局とが把握できれば、通信品質を高めるためのさまざまな制御が可能となる。
【0024】
なお、ここでいう無線リンク情報とは、ある無線局ペア間の通信に利用できるさまざまな情報を意味する。例えば、無線リンク情報として、無線伝搬路情報(CSI:Channel State Information)、受信信号対雑音電力比(SNR:Signal to Noise power Ratio)情報、変調方式符号化方式(MCS:Modulation Coding Scheme)情報、トラフィック(TSI:Traffic State Information)情報などのさまざまな無線リンクに関連する情報が考えられる。無線伝搬路情報、受信信号対雑音電力比情報は、無線局装置におけるトレーニング信号などの受信状態から間接的な情報として得ることができる。
【0025】
また、変調方式符号化方式は、送信元の無線局装置が前処理制御フレームなどに設定した情報から直接得ることができる。また、トラフィック情報は、無線局装置が受信した無線信号の送信元を監視することにより得ることができる。また、ここでいう伝送品質情報とは、ある伝送ルートにおける伝送容量、伝送誤り率、伝送遅延などの伝送品質を評価する指標を意味する。なお、本実施形態では、使用する無線リンク情報及び伝送品質情報の種類によって、その技術の適用範囲が制限されるものではない。従って、実システムへの応用の際には、上記で列挙した無線リンク情報及び伝送品質情報に限定する必要はない。
【0026】
また、中継局を用いるペアの無線局装置間における協力中継伝送では、ペアの無線局装置における送信データを送信する送信局と当該送信データを受信する受信局との間の直接無線リンク以外に、送信局と中継局との間の中継無線リンク、及び中継局と受信局との間の中継無線リンクが存在する。直接無線リンクに関する情報と、中継無線リンクに関する情報とに基づいて、通信リソースの制御を行うことにより、協力中継伝送における通信品質を向上させることができる。中継無線リンクに関する無線リンク情報は、直接無線リンクに関する無線リンク情報と同様に、例えば、無線伝搬路情報や、受信信号対雑音電力比情報、変調方式符号化方式情報、トラフィック情報などを含む情報である。
【0027】
本実施形態における無線通信システムでは、一対の無線局装置間における双方向通信及び単方向通信の両方を想定すると共に、データ通信を実現する手段として当該無線局装置間における直接伝送と、中継局とを用いた協力中継伝送との両方を想定した上で、通信に用いる周波数、空間、符号、及び時間などの通信リソースに関する制御(割当方法ともいう。)を行う。
図3は、本実施形態における通信リソースに関する制御の手順を示すフローチャートである。本実施形態における通信リソースに関する制御(以下、通信リソース制御という。)は、2つのリソース割当に分けて実施される。
【0028】
1つ目のリソース割当(ステップS1)は、周波数、空間、符号領域における通信リソース割当である。周波数、空間、符号領域における通信リソース割当では、データ通信において用いる周波数、空間、符号領域における通信リソースを割り当て、当該割り当てに基づいてデータ通信における伝送レートを算出する。2つ目のリソース割当(ステップS5)は、時間領域における通信リソース割当である。時間領域における通信リソース割当では、前述のデータフレーム・制御フレームにおける時間を割り当て、当該割り当てと算出した伝送レートとに基づいてデータ通信に要する所要伝送時間長を算出する。なお、周波数、空間、符号領域における通信リソース割当においては、周波数領域の割当、空間領域の割当、及び、符号領域の割当のうち、いずれか単体領域の割当を行ってもよいし、各領域の割当を組み合わせたものであってもよい。
【0029】
<直接伝送による双方向通信>
本実施形態における通信リソース制御は、データ通信を行う一対の無線局装置S1と無線局装置S2とにおける通信シナリオに応じて分類することができる。ここでは、無線局装置S1、S2が中継局を用いずに直接伝送による双方向通信を行う場合について説明する。
図4は、本実施形態の無線通信システムにおける直接伝送による双方向通信の概要を示す図である。同図に示される無線局装置S1と無線局装置S2とそれぞれは、互いに送信すべき送信データを有している。本実施形態では、直接伝送による双方向通信を、無線局装置S1から無線局装置S2に向けて送信データを送信する順方向伝送フェーズと、無線局装置S2から無線局装置S1に向けて送信データを送信する逆方向伝送フェーズとの2つのフェーズ(Phase I, Phase II)に分けられる。
【0030】
順方向伝送フェーズと逆方向伝送フェーズとは、
図2(c)に示したように、通信媒体のアクセスに必要な無線ネットワークにおける制御フレームの送受信を減らすために、一回の送信機会の中で行われる。一回の送信機会とは、無線ネットワークにおいて無線局装置S1、S2のいずれか一方又は両方が通信権を獲得してから、その通信権を解放するまでの期間のことである。例えば、無線LANでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)などの通信媒体のアクセス制御方式を用いて、送信すべきデータを有する複数の無線局装置が通信権の獲得を行う。
【0031】
図5は、本実施形態の直接伝送による双方向通信における通信リソースに関する制御の手順を示すフローチャートである。直接伝送による双方向通信を行う際においても、
図3に示したように周波数、空間、符号領域における通信リソース割当(ステップS11)と、時間領域における通信リソース割当(ステップS15)との2つのリソース割当に分けて実施される。周波数、空間、符号領域における通信リソース割当(ステップS11)では、順方向伝送フェーズと逆方向伝送フェーズとのそれぞれの伝送レートを算出する。時間領域における通信リソース割当(ステップS15)では、順方向伝送フェーズと逆方向伝送フェーズとのそれぞれの所要伝送時間長を算出する。
【0032】
ステップS11及びステップS15における処理は、無線局装置S1又は無線局装置S2のいずれか一方、あるいは両方によって行われる。また、ステップS11とステップS15との処理を行う無線局装置は、直接無線リンクの無線リンク情報を取得し、取得した無線リンク情報に基づいてステップS11及びステップS15の処理を行う。
【0033】
以下、ステップS11における処理を
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態の直接伝送による双方向通信における周波数、空間、符号領域の通信リソース割当の順方向伝送フェーズに対する手順を示すフローチャートである。ここで、データ通信を行う無線局装置S1と無線局装置S2との間における通信リソースの周波数領域、空間領域、及び符号領域のいずれか一つの領域、又はこれらの領域を組み合わせた複合領域におけるサブチャネルの数をNとする。すなわち、無線局装置S1と無線局装置S2との間において、周波数、空間、及び符号の組み合わせにより定められる通信可能なチャネルがN個存在する。また、以下の説明において、i(1≦i≦N)はサブチャネルのインデックスを表す。
【0034】
無線局装置は、直接伝送による双方向通信における順方向伝送フェーズでの各サブチャネルの伝送レートを次式(1)により算出する(ステップS111)。
R
S1-fwd(i)=f(h
S1-S2-i) …(1)
【0035】
式(1)における、h
S1-S2-iは、無線局装置S1と無線局装置S2との間のサブチャネルiに関する無線リンク情報を表している。無線リンク情報は、前述したように、無線伝搬路情報や、受信信号対雑音電力比情報、変調方式符号化方式情報、トラフィック情報などである。R
S1-fwd(i)は、無線リンク情報h
S1-S2-iと、当該無線リンク情報を引数とする関数f()とに依存する値であって、順方向伝送フェーズの無線局装置S1のサブチャネルiにおける伝送レートを表している。関数f()は、例えば、無線リンク情報に含まれる無線伝搬路情報と受信信号対雑音電力比とに対応する変調方式符号化方式を所定のテーブルから選択し、選択した変調方式符号化方式から伝送レートを算出する。
【0036】
無線局装置は、ステップS111において算出した各サブチャネルの伝送レートに基づいて、順方向伝送フェーズにおける無線局装置S1の合計伝送レートR
S1-fwdを次式(2)により算出する(ステップS112)。
R
S1-fwd=Σ
iR
S1-fwd(i) …(2)
【0037】
図7は、本実施形態の直接伝送による双方向通信における周波数、空間、符号領域の通信リソース割当の逆方向伝送フェーズに対する手順を示すフローチャートである。無線局装置は、逆方向伝送フェーズでの各サブチャネルの伝送レートを式(3)により算出する(ステップS113)。
R
S2-rev(i)=f(h
S1-S2-i) …(3)
【0038】
式(3)における、h
S1-S2-iは前述のように、サブチャネルiに関する無線リンク情報を表している。R
S2-rev(i)は、無線リンク情報h
S1-S2-iと、当該無線リンク情報を引数とする関数f()とに依存する値であって、逆方向伝送フェーズの無線局装置S2のサブチャネルiにおける伝送レートを表している。
【0039】
無線局装置は、ステップS113において算出した各サブチャネルの伝送レートに基づいて、逆方向伝送フェーズにおける無線局装置S2の合計伝送レートR
S2-revを次式(4)により算出する(ステップS114)。
R
S2-rev=Σ
iR
S2-rev(i) …(4)
【0040】
図7におけるステップS111及びステップS112と、
図8におけるステップS113及びステップS114との処理を無線局装置が行うことにより、
図3におけるステップS11が行われることになる。
【0041】
以下、ステップS15における処理を
図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態の直接伝送による双方向通信における時間領域の通信リソースの割当の手順を示すフローチャートである。無線局装置は、ステップS11において算出された順方向伝送フェーズにおける伝送レートと、逆方向伝送フェーズにおける伝送レートとを用いて、次式(5)及び次式(6)により順方向所要伝送時間長T
S1-fwdと逆方向所要伝送時間長T
S2-revとを算出する(ステップS151)。
T
S1-fwd=D
S1-fwd/R
S1-fwd …(5)
T
S2-rev=D
S2-rev/R
S2-rev …(6)
【0042】
式(5)におけるD
S1-fwdは、順方向伝送フェーズにおいて無線局装置S1が送信すべき送信データのデータ量を表している。順方向所要伝送時間長T
S1-fwdは、無線局装置S1が送信データを伝送する場合に必要な時間である。また、式(6)におけるD
S2-revは、逆方向伝送フェーズにおいて無線局装置S2が送信すべき送信データのデータ量を表している。逆方向所要伝送時間長T
S2-revは、無線局装置S2が送信データを伝送する場合に必要な時間である。
【0043】
次に、無線局装置は、無線ネットワークや実システムの物理制限に基づいて、順方向伝送フェーズと逆方向伝送フェーズとのそれぞれについて算出した所要伝送時間長(T
S1-fwd,T
S2-rev)を用いて、次式(7)及び次式(8)のように順方向伝送最終時間長T
fwdと逆方向伝送最終時間長T
revとを算出する(ステップS152)。
T
fwd=min(T
fwd-max,T
S1-fwd) …(7)
T
rev=min(T
rev-max,T
S2-rev) …(8)
【0044】
式(7)におけるT
fwd-maxは、物理制限(例えば、無線パケットの最大時間長や、無線ネットワーク内での伝送可能最大時間長など)に依存する順方向伝送最大時間長を表している。同様に、式(8)におけるT
rev-maxは、物理制限に依存する逆方向伝送最大時間長を表している。
【0045】
続いて、無線局装置は、ステップS152において算出した順方向伝送最終時間長と逆方向伝送最終時間長とを用いて、次式(9)により合計伝送時間長T
directを算出する(ステップS153)。
T
direct=T
fwd+T
rev …(9)
【0046】
前述のステップS151からステップS153を無線局装置が行うことにより、
図3におけるステップS15が行われる。また、合計伝送時間長T
directは、直接伝送による双方向通信における一回の通信機会でのデータ通信に要する時間である。
【0047】
以上のように、直接伝送による双方向通信の順方向伝送フェーズ及び逆方向伝送フェーズの両方について、周波数、空間、符号領域の通信リソース割当(ステップS11)と、時間領域の通信リソース割当(ステップS15)とを無線局装置が行う。そして、ステップS11による通信リソース割当(周波数、空間、符号領域におけるチャネルの割当と変調方式符号化方式)と、ステップS15による通信リソース割当(時間領域における割当、すなわち送信タイミングと期間)とに従って、無線局装置S1と無線局装置S2とは双方向通信を行う。
【0048】
なお、
図3に示した通信リソース制御は、データ通信を行う無線局装置S1と無線局装置S2とのいずれか一方、又は他の無線局装置が行ってもよい。また、順方向伝送フェーズに関する処理を無線局装置S1が行い、逆方向伝送フェーズに関する処理を無線局装置S2が行い、それぞれの処理結果に基づいて無線局装置S1又は無線局装置S2がステップS15(ステップS151〜ステップS153)を行うようにしてもよい。
【0049】
また、無線局装置S1と無線局装置S2との間で双方向通信を行う場合について説明したが、無線局装置S1から無線局装置S2への単方向通信、又は無線局装置S2から無線局装置S1への単方向通信を行うようにしてもよい。この場合、単方向通信を双方向通信における一方の通信のみと見なして、通信リソース制御を行う。すなわち、本実施形態における通信リソース制御は、双方向通信に限定されるものではなく、単方向通信に適用することも可能である。
【0050】
<協力中継伝送による双方向通信>
以下、協力中継伝送による双方向通信での通信リソース制御について説明する。
図9は、本実施形態の無線通信システムにおける協力中継伝送による双方向通信の概要を示す図である。同図に示されている無線局装置S1と無線局装置S2とそれぞれは、互いに送信すべき送信データを有している。ここでは、無線局装置S1及び無線局装置S2と通信可能な他のP個の無線局装置R1、R2、…、RPを中継局として用い、協力中継伝送による双方向通信を行う。また、P個の中継局を含む中継局グループR
S1S2を次式(10)のように表す。
R
S1S2={R1,R2,…,RP} …(10)
【0051】
無線局装置S1と無線局装置S2と中継局R1、R2、…、RPとにおける協力中継伝送による双方向通信は、2つのフェーズに分けて行われる。1つ目のフェーズは、無線局装置S1及び無線局装置S2から中継局R1、R2、…、RPに向けて送信データを送信するMAC(Multiple Access Channel)伝送フェーズである。2つ目のフェーズは、中継局R1、R2、…、RQから無線局装置S1及び無線局装置S2に向けて送信データを送信するBC(Broadcast Channel)伝送フェーズである。MAC伝送フェーズとBC伝送フェーズとは、
図2(c)に示したように、通信媒体のアクセスに必要な無線ネットワークにおける制御フレームの送受信を減らすために、一回の送信機会の中で行われる。なお、BC伝送フェーズにおいて送信する中継局の数QはP以下である(P≧Q)。
【0052】
図10は、本実施形態の協力中継伝送による双方向通信における通信リソースに関する制御の手順を示すフローチャートである。協力中継伝送による双方向通信を行う場合においても、
図3に示したように周波数、空間、符号領域における通信リソース割当(ステップS21)と、時間領域における通信リソース割当(ステップS25)との2つのリソース割当に分けて実施される。周波数、空間、符号領域における通信リソース割当(ステップS21)では、MAC伝送フェーズとBC伝送フェーズとのそれぞれの伝送レートを算出する。時間領域における通信リソース割当(ステップS25)では、MAC伝送フェーズとBC伝送フェーズとのそれぞれの所要伝送時間長を算出する。
【0053】
ステップS21及びステップS25における処理は、無線局装置S1、無線局装置S2、中継局R1〜RPのいずれか一つ又は複数の無線局装置によって行われる。ステップS21とステップS25との処理を行う無線局装置は、直接無線リンク及び中継無線リンクそれぞれの無線リンク情報を取得し、取得した無線リンク情報に基づいてステップS25及びステップS25の処理を行う。
【0054】
以下、ステップS21における処理を
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は、本実施形態の協力中継伝送による双方向通信における周波数、空間、符号領域の通信リソース割当のMAC伝送フェーズにおける手順を示すフローチャートである。直接伝送による双方向通信における説明と同様に、データ通信を行う無線局装置S1と無線局装置S2との間における通信リソースの周波数領域、空間領域、及び符号領域のいずれか一つの領域、又はこれらの領域を組み合わせた複合領域におけるサブチャネルの数をNとする。
【0055】
無線局装置は、協力中継伝送による双方向通信における無線局装置S1と中継局R1〜RPとの間の各サブチャネルの伝送レートを次式(11)及び次式(12)により算出する(ステップS211)。
R
S1-MAC(k
i=1)=R
S1-MAC(i,1)
=f(h
S1-R1-i,…,h
S1-RP-i) …(11)
R
S1-MAC(k
i=2)=R
S1-MAC(i,2)=0 …(12)
【0056】
式(11)におけるh
S1-R1-i,…,h
S1-RP-iは、無線局装置S1と中継局R1,R2,…,RPとの間のサブチャネルiに関する無線リンク情報を表している。R
S1-MAC(k
i=1)=R
S1-MAC(i,1)は、無線リンク情報h
S1-R1-i,…,h
S1-RP-iと、当該無線リンク情報を引数とする関数f()とに依存する値であって、サブチャネルiを無線局装置S1に割り当てたときのMAC伝送フェーズにおける無線局装置S1のサブチャネルiにおける伝送レートを表す。すなわち、伝送レートR
S1-MAC(k
i=1)=R
S1-MAC(i,1)は、MAC伝送フェーズにおいてサブチャネルiを通じて無線局装置S1が送信するデータの伝送レートを表す。
【0057】
また、式(11)及び式(12)におけるk
iは、サブチャネルiを無線局装置S
kiに割り当てることを意味する。例えば、k
i=1はサブチャネルiを無線局装置S1に割り当てることを意味する。R
S1-MAC(k
i=2)=R
S1-MAC(i,2)は、サブチャネルiを無線局装置S2に割り当てたときのMAC伝送フェーズにおける無線局装置S1のサブチャネルiにおける伝送レートを表す。すなわち、各サブチャネルは排他的に割り当てられるため、無線局装置S2に割り当てられたサブチャネルiにおける無線局装置S1の当該サブチャネルiにおける伝送レートは0となる。また、k
i=2はサブチャネルiを無線局装置S2に割り当てることを意味する。
【0058】
次に、無線局装置は、ステップS211において算出した各サブチャネルの伝送レートに基づいて、MAC伝送フェーズにおける無線局装置S1の合計伝送レートR
S1-MAC(k
1,…,k
i,…k
N)の全パターンを、次式(13)により算出する(ステップS212)。
R
S1-MAC(k
1,…,k
i,…k
N)=Σ
iR
S1-MAC(k
i=1or2) …(13)
【0059】
N個あるサブチャネルそれぞれに対して無線局装置S1と無線局装置S2とのいずれかを選択することにより、全部で2
N通りの割当パターンそれぞれにおける無線局装置S1の合計伝送レートとが算出される。
【0060】
また、無線局装置は、協力中継伝送による双方向通信における無線局装置S2と中継局R1,R2,…,RPとの間の各サブチャネルの伝送レートを次式(14)及び次式(15)により算出する(ステップS213)。
R
S2-MAC(k
i=1)=R
S2-MAC(i,1)=0 …(14)
R
S2-MAC(k
i=2)=R
S2-MAC(i,2)
=f(h
S2-R1-i,…,h
S2-RP-i) …(15)
【0061】
式(14)におけるh
S2-R1-i,…,h
S2-RP-iは、無線局装置S2と中継局R1,R2,…,RPとの間のサブチャネルiに関する無線リンク情報を表している。R
S2-MAC(k
i=1)=R
S2-MAC(i,1)は、サブチャネルiを無線局装置S1に割り当てたときのMAC伝送フェーズにおける無線局装置S2のサブチャネルiにおける伝送レートを表している。また、R
S2-MAC(k
i=2)=R
S2-MAC(i,2)は、サブチャネルiを無線局装置S2に割り当てたときのMAC伝送フェーズにおける無線局装置S2のサブチャネルiにおける伝送レートを表す。前述のように、各サブチャネルは排他的に割り当てられるため、無線局装置S1に割り当てられたサブチャネルiにおける無線局装置S2の当該サブチャネルiにおける伝送レートは0となる。
【0062】
次に、無線局装置は、ステップS213において算出した各サブチャネルの伝送レートに基づいて、MAC伝送フェーズにおける無線局装置S2の合計伝送レートR
S2-MAC(k
1,…,k
i,…k
N)の全パターンを、次式(16)により算出する(ステップS214)。
R
S2-MAC(k
1,…,k
i,…k
N)=Σ
iR
S2-MAC(k
i=1or2) …(16)
【0063】
ステップS212と同様に、N個あるサブチャネルそれぞれに対して無線局装置S1と無線局装置S2とのいずれかを選択することにより、全部で2
N通りの割当パターンそれぞれにおける無線局装置S1の合計伝送レートが算出される。
【0064】
ステップS211からステップS214の処理により、各サブチャネルを無線局装置S1と無線局装置S2とのいずれかに割り当てる全ての組み合わせパターンそれぞれの合計伝送レートが得られる。無線局装置は、得られた全パターンの合計伝送レートに基づいて、次式(17)を満たすサブチャネルの割当パターンk
1*,…,k
i*,…,k
N*を選択する(ステップS215)。
k
1*,…,k
i*,…,k
N*=argmax{
min[R
S1-MAC(k
1,…,k
i,…k
N),
R
S2-MAC(k
1,…,k
i,…k
N)]} …(17)
【0065】
式(17)により、MAC伝送フェーズにおける無線局装置S1の合計伝送レートと無線局装置S2の合計伝送レートとのうち小さい合計伝送レートが最大となるサブチャネルの割当パターンk
1*,…,k
i*,…,k
N*が選び出される。この割当パターンk
1*,…,k
i*,…,k
N*を最良割当パターンという。最良割当パターンにおける無線局装置S1の合計伝送レートR
S1-MACと無線局装置S2の合計伝送レートR
S2-MACとは、次式(18)及び次式(19)となる。
R
S1-MAC=R
S1-MAC(k
1*,…,k
i*,…,k
N*) …(18)
R
S2-MAC=R
S2-MAC(k
1*,…,k
i*,…,k
N*) …(19)
【0066】
図12は、本実施形態の協力中継伝送による双方向通信における周波数、空間、符号領域の通信リソース割当のBC伝送フェーズにおける手順を示すフローチャートである。MAC伝送フェーズにおける説明と同様に、データ通信を行う無線局装置S1と無線局装置S2との間における通信リソースの周波数領域、空間領域、及び符号領域のいずれか一つの領域、又はこれらの領域を組み合わせた複合領域におけるサブチャネルの数をNとする。
【0067】
無線局装置は、協力中継伝送による双方向通信における中継局R1〜RQと無線局装置S1との間の各サブチャネルの伝送レートを次式(20)及び次式(21)により算出する(ステップS216)。
R
S1-BC(k
i=1)=R
S1-BC(i,1)
=f(h
S1-R1-i,…,h
S1-RQ-i) …(20)
R
S1-BC(k
i=2)=R
S1-BC(i,2)=0 …(21)
【0068】
なお、中継局の数Pに代えてQ(P≧Q)としているのは、P個の中継局のうち、MAC伝送フェーズにおいて無線局装置S1と無線局装置S2とそれぞれから送信データを正確に受信できたQ個の中継局のみがBC伝送フェーズにおいて無線局装置S1と無線局装置S2とに送信データを送信するためである。また、送信データを正確に受信できなかった(P−Q)個の中継局はBC伝送フェーズにおける送信データの送信を行わない。送信データを正確に受信できたか否かの判定は、例えば、無線LANなどで利用されているCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)を用いる。
【0069】
式(20)におけるh
S1-R1-i,…,h
S1-RQ-iは、無線局装置S1と中継局R1,R2,…,RQとの間のサブチャネルiに関する無線リンク情報を表している。R
S1-BC(k
i=1)=R
S1-BC(i,1)は、無線リンク情報h
S1-R1-i,…,h
S1-RQ-iと、当該無線リンク情報を引数とする関数f()とに依存する値であって、サブチャネルiを無線局装置S1に割り当てたときのBC伝送フェーズにおける無線局装置S1のサブチャネルiにおける伝送レートを表す。すなわち、伝送レートR
S1-BC(k
i=1)=R
S1-BC(i,1)は、BC伝送フェーズにおいてサブチャネルiを通じて無線局装置S1が受信するデータの伝送レートを表す。
【0070】
また、R
S1-BC(k
i=2)=R
S1-BC(i,2)は、サブチャネルiを無線局装置S2に割り当てたときのBC伝送フェーズにおける無線局装置S1のサブチャネルiにおける伝送レートを表す。前述のように、各サブチャネルは排他的に割り当てられるため、無線局装置S1に割り当てられたサブチャネルiにおける無線局装置S2の当該サブチャネルiにおける伝送レートは0となる。
【0071】
次に、無線局装置は、ステップS216において算出した各サブチャネルの伝送レートに基づいて、BC伝送フェーズにおける無線局装置S1の合計伝送レートR
S1-BC(k
1,…,k
i,…k
N)の全パターンを、次式(22)により算出する(ステップS217)。
R
S1-BC(k
1,…,k
i,…k
N)=Σ
iR
S1-BC(k
i=1or2) …(22)
【0072】
N個あるサブチャネルそれぞれに対して無線局装置S1と無線局装置S2とのいずれかを選択することにより、全部で2
N通りの割当パターンそれぞれにおける無線局装置S1の合計伝送レートとが算出される。
【0073】
また、無線局装置は、協力中継伝送による双方向通信における中継局R1,R2,…,RPと無線局装置S2との間の各サブチャネルの伝送レートを次式(23)及び次式(24)により算出する(ステップS218)。
R
S2-BC(k
i=1)=R
S2-BC(i,1)=0 …(23)
R
S2-BC(k
i=2)=R
S2-BC(i,2)
=f(h
S2-R1-i,…,h
S2-RQ-i) …(24)
【0074】
式(23)におけるh
S2-R1-i,…,h
S2-RQ-iは、無線局装置S2と中継局R1,R2,…,RQとの間のサブチャネルiに関する無線リンク情報を表している。R
S2-BC(k
i=1)=R
S2-BC(i,1)は、サブチャネルiを無線局装置S1に割り当てたときのBC伝送フェーズにおける無線局装置S2のサブチャネルiにおける伝送レートを表している。まら、R
S2-BC(k
i=2)=R
S2-BC(i,2)は、サブチャネルiを無線局装置S2に割り当てたときのBC伝送フェーズにおける無線局装置S2のサブチャネルiにおける伝送レートを表す。前述のように、各サブチャネルは排他的に割り当てられるため、無線局装置S1に割り当てられたサブチャネルiにおける無線局装置S2の当該サブチャネルiにおける伝送レートは0となる。
【0075】
次に、無線局装置は、ステップS218において算出した各サブチャネルの伝送レートに基づいて、BC伝送フェーズにおける無線局装置S2の合計伝送レートR
S2-BC(k
1,…,k
i,…k
N)の全パターンを、次式(25)により算出する(ステップS219)。
R
S2-BC(k
1,…,k
i,…k
N)=Σ
iR
S2-BC(k
i=1or2) …(25)
【0076】
ステップS217と同様に、N個あるサブチャネルそれぞれに対して無線局装置S2と無線局装置S2とのいずれかを選択することにより、全部で2
N通りの割当パターンそれぞれにおける無線局装置S1の合計伝送レートが算出される。
【0077】
ステップS216からステップS219の処理により、各サブチャネルを無線局装置S1と無線局装置S2とのいずれかに割り当てる全ての組み合わせパターンそれぞれの合計伝送レートが得られる。無線局装置は、得られた全パターンの合計伝送レートに基づいて、次式(26)を満たすサブチャネルの割当パターンk
1*,…,k
i*,…,k
N*を選択する(ステップS220)。
k
1*,…,k
i*,…,k
N*=argmax{
min[R
S1-BC(k
1,…,k
i,…k
N),
R
S2-BC(k
1,…,k
i,…k
N)]} …(26)
【0078】
式(26)により、BC伝送フェーズにおける無線局装置S1の合計伝送レートと無線局装置S2の合計伝送レートとのうち小さい合計伝送レートが最大となるサブチャネルの最良割当パターンk
1*,…,k
i*,…,k
N*が選び出される。最良割当パターンにおける無線局装置S1の合計伝送レートR
S1-BCと無線局装置S2の合計伝送レートR
S2-BCとは、次式(27)及び次式(28)となる。
R
S1-BC=R
S1-BC(k
1*,…,k
i*,…,k
N*) …(27)
R
S2-BC=R
S2-BC(k
1*,…,k
i*,…,k
N*) …(28)
【0079】
以下、ステップS25における処理を
図13を参照して説明する。
図13は、本実施形態の協力中継伝送による双方向通信における時間領域の通信リソースの割当の手順を示すフローチャートである。無線局装置は、ステップS21において算出されたMAC伝送フェーズにおける伝送レートと、BC伝送フェーズにおける伝送レートとを用いて、次式(29)から次式(32)でMAC所要伝送時間長とBC所要伝送時間長とを算出する(ステップS251)。
T
S1-MAC=D
S1-MAC/R
S1-MAC …(29)
T
S2-MAC=D
S2-MAC/R
S2-MAC …(30)
T
S1-BC=D
S1-BC/R
S1-BC …(31)
T
S2-BC=D
S2-BC/R
S2-BC …(32)
【0080】
式(29)におけるD
S1-MACは、MAC伝送フェーズにおける無線局装置S1が送信するデータ量を表す。式(30)におけるD
S2-MACは、MAC伝送フェーズにおける無線局装置S2が送信するデータ量を表す。MAC所要伝送時間長T
S1-MACは、データ量D
S1-MACのデータを伝送レートR
S1-MACで伝送する際に要する時間長を表す。MAC所要伝送時間長T
S2-MACは、データ量D
S2-MACのデータを伝送レートR
S2-MACで伝送する際に要する時間長を表す。
【0081】
また、式(31)におけるD
S1-BCはBC伝送フェーズにおける中継局が無線局装置S1に送信するデータ量を表す。式(32)におけるD
S2-BCはBC伝送フェーズにおける中継局が無線局装置S2に送信するデータ量を表す。BC所要伝送時間長T
S1-BCは、データ量D
S1-BCのデータを伝送レートR
S1-BCで伝送する際に要する時間長を表す。BC所要伝送時間長T
S2-BCは、データ量D
S2-BCのデータを伝送レートR
S2-BCで伝送する際に要する時間長を表す。
【0082】
次に、無線局装置は、無線ネットワークや実システムの物理制限に基づいて、MAC伝送フェーズとBC伝送フェーズとのそれぞれについて算出した所要伝送時間長(T
S1-MAC,T
S2-MAC,T
S1-BC,T
S2-BC)を用いて、次式(33)及び次式(34)のようにMAC伝送最終時間長T
MACとBC伝送最終時間長T
BCとを算出する(ステップS252)。
T
MAC=min(T
MAC-max,max(T
S1-MAC,T
S2-MAC)) …(33)
T
BC=min(T
BC-max,max(T
S1-BC,T
S2-BC)) …(34)
【0083】
式(33)におけるT
MAC-maxは、物理制限(例えば、無線パケットの最大時間長、あるいは無線ネットワーク内での伝送可能最大時間長など)に依存するMAC伝送フェーズに対する最大時間長を表す。T
MACは、MAC伝送最終時間長を表す。また、式(34)におけるT
BC-maxは、同様に、物理制限に依存するBC伝送フェーズに対する最大時間長を表す。T
BCはBC伝送最終時間長を表す。
【0084】
無線局装置は、ステップS252においてMAC伝送時間長T
MACとBC伝送時間長T
BCとが算出されると、それぞれの伝送時間長を足し合わせて、次式(35)のように協力中継伝送による双方向通信の合計伝送時間長T
coopを算出する(ステップS253)。
T
coop=T
MAC+T
BC …(35)
【0085】
前述のステップS251からステップS253を無線局装置が行うことにより、
図10におけるステップS25が行われる。また、合計伝送時間長T
coopは、協力中継伝送による双方向通信における一回の通信機会でのデータ通信に要する時間である。
【0086】
以上のように、協力中継伝送による双方向通信のMAC伝送フェーズ及びBC伝送フェーズの両方について、周波数、空間、符号領域の通信リソースの割当(ステップS21)と、時間領域の通信リソース割当(ステップS25)とを無線局装置が行う。そして、通信リソース割当の結果に基づいて、無線局装置S1と無線局装置S2と中継局(無線局装置)R1,R2,…,RPとが協力中継伝送による双方向通信を行う。なお、通信リソース割当の結果とは、MAC伝送フェーズにおける最良割当パターン及びBC伝送フェーズにおける最良割当パターン、並びにMAC伝送最終時間長及びBC伝送最終時間長である。
【0087】
本実施形態の無線通信システムでは、協力中継伝送による双方向通信が行われる場合、無線局装置S1と中継局R
S1S2との間の中継無線リンクと、無線局装置S2と中継局R
S1S2との間の中継無線リンクとにおける伝送レートの最適化を行う。具体的には、MAC伝送フェーズにおける式(17)による最良割当パターンの算出と、BC伝送フェーズにおける式(26)による最良割当パターンの算出とを行う。これにより、無線局装置S1と中継局R
S1S2との間、及び、無線局装置S2と中継局R
S1S2との間における伝送レートを最適化することができ、通信品質を向上させることができる。
【0088】
なお、
図10に示した通信リソース制御は、送信データの送信元又は宛先となる無線局装置S1及び無線局装置S2、あるいは中継局R1,R2,…,RPとしての無線局装置のいずれか一つの無線局装置が行うようにしてもよい。この場合、通信リソース制御を行う無線局装置は、直接無線リンク及び中継無線リンクにおける無線リンク情報を取得し、当該無線リンク情報に基づいて通信リソースの割当を行う。通信リソース制御を行う無線局装置は、通信リソースの割当により得られた割当結果を、協力中継伝送による双方向通信を行う他の無線局装置に通知することになる。
【0089】
また、
図10に示した通信リソース制御は、送信データの送信元又は宛先となる無線局装置S1及び無線局装置S2、あるいは中継局R1,R2,…,RPとしての無線局装置のうちの複数の無線局装置が行うようにしてもよい。例えば、無線局装置S1がステップS211、ステップS212、ステップS216及びステップS217の処理を行い、無線局装置S2がステップS213、ステップS214、ステップS218及びステップS219を行い、いずれかの無線局装置がステップS220、ステップS251〜ステップS253を行うようにしてもよい。
【0090】
また、無線局装置S1から無線局装置S2へのデータ通信と、無線局装置S2から無線局装置S1へのデータ通信とを併せて行う協力中継伝送による双方向通信を行う場合の通信リソースの割当について説明したが、無線局装置S1から無線局装置S2へのデータ通信のみ、又は無線局装置S2から無線局装置S1へのデータ通信のみの単方向通信を行う場合であっても、前述の通信リソースの割当を行うようにしてもよい。すなわち、本実施形態における通信リソース制御は、双方向通信に限定されるものではなく、単方向通信に適用することも可能である。
【0091】
<直接伝送と協力中継伝送との動的選択>
上記の説明では、直接伝送を行うことを前提にした通信リソースの割当と、協力中継伝送を行うことを前提にした通信リソースの割当とについて説明した。ここでは、データ通信を行う無線局装置S1と無線局装置S2とにおいて直接伝送が可能であり、かつ中継局R1,R2,…,RPを用いた協力中継伝送が可能である状況において、選択的に通信リソースの割当を行う場合について説明する。
【0092】
図14は、本実施形態において直接伝送と協力中継伝送とを選択的に用いる場合の通信リソースに関する制御の手順を示すフローチャートである。無線通信システムにおける2つの無線局装置S1と無線局装置S2との間においてデータ通信を行う際に、無線局装置S1と無線局装置S2とが直接伝送を行うことができ、かつ、無線局装置S1と無線局装置S2との周囲に位置する他の無線局装置(中継局)を経由した協力中継伝送を行うことができるとき、
図14に示す通信リソース割当の処理が、無線局装置S1、無線局装置S2、又は無線局装置S1、S2の周囲に位置する他の無線局装置(中継局)において行われる。
【0093】
無線局装置は、通信リソース割当の処理を開始すると、協力中継伝送における通信リソースの割当、すなわち
図10に示した処理を行うことにより、協力中継伝送に要する合計伝送時間長T
coopを算出する(ステップS31)。
また、無線局装置は、直接伝送における通信リソースの割当、すなわち
図3に示した処理を行うことにより、直接伝送に要する合計伝送時間長T
directを算出する(ステップS32)。
【0094】
なお、無線局装置は、
図10から
図13において説明した手順にて合計伝送時間長T
coopを算出する。また、無線局装置は、
図5から
図8において説明した手順にて合計伝送時間長T
directを算出する。
【0095】
無線局装置は、合計伝送時間長T
coopと合計伝送時間長T
directとを算出すると、合計伝送時間長T
coopが合計伝送時間長T
direct未満であるか否かを判定する(ステップS33)。
【0096】
合計伝送時間長T
coopが合計伝送時間長T
direct未満である場合(ステップS33:YES)、無線局装置は、MAC伝送フェーズにおける最良割当パターン及びBC伝送フェーズにおける最良割当パターン、並びにMAC伝送最終時間長及びBC伝送最終時間長を各無線局装置に通知し、協力中継伝送による双方向通信の実施を各無線局装置に要求する(ステップS34)。
【0097】
一方、合計伝送時間長T
coopが合計伝送時間長T
direct未満でない場合(ステップS33:NO)、無線局装置は、他の無線局装置に対して無線局装置S1と無線局装置S2とが直接無線リンクによる直接伝送による双方向通信を行うことを各無線局装置に通知し、直接伝送による双方向通信の実施を無線局装置S1と無線局装置S2とに要求する(ステップS35)。
【0098】
以上のように、無線通信システムにおける二つの無線局装置がデータ通信を行う際に、直接伝送及び協力中継伝送による双方向通信が可能であるとき、直接伝送における合計伝送時間長T
directと協力中継伝送における合計伝送時間長T
coopとを算出し、直接伝送と協力中継伝送とのいずれの伝送を用いるかを判定する。これにより、二つの無線局装置間における直接無線リンクと中継無線リンクとに対する通信リソースの割当を最適化することができ、通信品質を向上させることができる。
【0099】
また、無線局装置S1と無線局装置S2との間で双方向通信を行う場合について説明したが、無線局装置S1から無線局装置S2への単方向通信、又は無線局装置S2から無線局装置S1への単方向通信を行うようにしてもよい。この場合、単方向通信を双方向通信における一方の通信のみと見なして、通信リソース制御を行う。すなわち、本実施形態における通信リソース制御は、双方向通信に限定されるものではなく、単方向通信に適用することも可能である。
【0100】
また、本実施形態の無線通信システムにおける通信リソースの制御(通信リソースの割当)では、直接伝送又は協力中継伝送による双方向通信と、直接伝送及び協力中継伝送による単方向通信とのいずれにおいても同様の処理にて通信リソースの制御を行うことができる。また、双方向通信を一回の通信機会で行うようにしているので、直接伝送と協力中継伝送とを同様に扱うことができ、前述のような動的な直接伝送と協力中継伝送との切り替えを容易に行うことができる。
【0101】
図15は、本実施形態の無線通信システムに用いられる無線局装置10の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、無線局装置10は、複数のアンテナ11、無線通信部12、及び、通信制御部13を備えている。通信制御部13は、無線リンク情報取得部131、伝送レート算出部132、サブチャネル割当部133、時間リソース割当部134、及び、割当リソース通知部135を有している。なお、同図には、無線局装置10が複数のアンテナ11を備える構成を示しているが、無線局装置10が備えるアンテナ11の数は一つであってもよい。
【0102】
無線通信部12は、アンテナ11を介して、他の無線局装置10から送信された送信データを受信して受信信号処理を行い、得られたデータを通信制御部13に出力する。受信信号処理は、例えば、ベースバンドへのダウンコンバートや、復調、誤り訂正復号などである。また、無線通信部12は、通信制御部13から入力されるデータに対して送信信号処理を行い、得られた送信データをアンテナ11を介して送信する。送信信号処理は、例えば、データに対する誤り訂正符号化、変調、無線周波数帯へのアップコンバートなどである。
【0103】
また、無線通信部12は、自装置の通信制御部13又は他の無線局装置10における通信制御部13において決定された各サブチャネルの割当や時間領域おける通信リソースの割当を取得すると、当該割当に応じた送信及び受信を行う。無線通信部12は、時分割複信により双方向通信を行う。また、無線通信部12から通信制御部13に出力されるデータは、無線リンク情報などである。通信制御部13から無線通信部12に出力されるデータは、通信リソースの割当を示す情報である。
【0104】
無線リンク情報取得部131は、自装置と他の無線局装置10との間の無線リンクにおける無線伝搬路情報や、受信信号対雑音電力比情報、変調方式符号化方式情報、トラフィック情報などを含む無線リンク情報を取得する。また、無線リンク情報取得部131は、自装置において通信リソースの割当が行われる場合、無線通信部12を介して他の無線局装置10に対して無線リンク情報を要求し、他の無線局装置10に関する無線リンク情報を取得する。
【0105】
伝送レート算出部132は、無線リンク情報取得部131が取得する無線リンク情報に基づいて各サブチャネルの変調方式符号化方式を選択し、各サブチャネルの伝送レートを算出する。具体的には、伝送レート算出部132は、
図6及び
図7におけるステップS111からステップS114の処理や、
図11及び
図12におけるステップS211からステップS214とステップS216からステップS219との処理を行う。
【0106】
サブチャネル割当部133は、伝送レート算出部132が算出する伝送レートに基づいて、各サブチャネルの割当を行う。具体的には、サブチャネル割当部133は、
図11及び
図12におけるステップS215とステップS220との処理を行う。
【0107】
時間リソース割当部134は、伝送レート算出部132が算出する伝送レートと、サブチャネル割当部133が算出する各サブチャネルの割当とに基づいて、時間領域の通信リソースの割当を行う。具体的には、時間リソース割当部134は、
図8におけるステップS151からステップS153の処理や、
図13におけるステップS251からステップS253の処理を行う。
【0108】
また、時間リソース割当部134は、データ通信を行う無線局装置S1と無線局装置S2との間において直接伝送と協力中継伝送との両方が可能である場合には、合計伝送時間長T
direct及び合計伝送時間長T
coopを算出し、直接伝送と協力中継伝送とのいずれの伝送を用いるかを決定する。すなわち、時間リソース割当部134は、
図14におけるステップS33の処理を行う。
【0109】
割当リソース通知部135は、周波数、空間、符号領域における通信リソースの割当結果(各サブチャネルの割当)と、時間領域おける通信リソースの割当結果とを、無線通信部12を介して他の無線局装置10に通知する。また、割当リソース通知部135は、通知した割当結果に基づいて、各無線局装置10に対して通信の開始を要求する。なお、時間領域における通信リソースの割当結果は、順方向伝送最終時間長T
fwd及び逆方向伝送最終時間長T
revや、MAC伝送最終時間長T
MAC及びBC伝送最終時間長T
BCなどである。なお、他の無線局装置に通信リソースの割当結果を通知する際には、例えば、
図2(b)において示した制御フレームなどが用いられる。
【0110】
なお、
図15に示す無線局装置10の構成は一例であり、本実施形態の無線通信システムにおける全ての無線局装置が、
図15に示した構成を備えずともよい。データ通信をする二つの無線局装置S1及び無線局装置S2と中継局としての無線局装置とのうち、少なくとも一つの無線局装置が
図15に示した構成を備えていればよい。この場合、他の無線局装置は、算出された通信リソースの割当結果に基づいて、無線通信を行うことになる。
【0111】
上述した実施形態における通信制御部13をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0112】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。