【文献】
Georg M. Fischer, Andreas P. Ehlers, Andreas Zumbusch, and Ewald Daltrozzo,Near-Infrared Dyes and Fluoropfores Based on Diketopyrrolopyrroles,Angeeante Chemie International Edition,2007年 4月 5日,Volume 46, Issue 20,pages 3750-3753
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に係る樹脂組成物は、近赤外蛍光色素及び樹脂を含有しており、かつ極大蛍光波長が650nm以上であることを特徴とする。本発明に係る樹脂組成物は、近赤外蛍光を発し、かつ成型が容易な樹脂組成物であるため、生体内等で使用される医療用具の原料等の医療用材料として好適に用いられる。
【0046】
<近赤外蛍光色素>
本発明に係る樹脂組成物が含有する近赤外蛍光色素は、具体的には、下記一般式(I
1)一般式(I
2)、一般式(I
3)、又は一般式(I
4)で表される化合物である。当該化合物を、以下、「本発明に係る近赤外蛍光色素」ということがある。
【0049】
一般式(I
1)又は一般式(I
2)中、R
a及びR
bは、R
aが結合する窒素原子及びR
bが結合する炭素原子と共に1〜3個の環からなる芳香環を形成する。同様に、一般式(I
1)又は一般式(I
2)中、R
c及びR
dは、R
cが結合する窒素原子及びR
dが結合する炭素原子と共に1〜3個の環からなる芳香環を形成する。R
a及びR
bが形成する芳香環、並びにR
c及びR
dが形成する芳香環の各環は、5員環又は6員環である。一般式(I
1)又は一般式(I
2)で表される化合物は、R
a及びR
bが形成する芳香環とR
c及びR
dが形成する芳香環が、2個の窒素原子と結合するホウ素原子を含む環により縮合した環構造を有する。すなわち、一般式(I
1)又は一般式(I
2)で表される化合物は、広い共役平面からなる堅牢な縮合環構造を有する。
【0050】
一般式(I
3)又は一般式(I
4)中、R
h及びR
iは、R
hが結合する窒素原子及びR
iが結合する炭素原子と共に1〜3個の環からなる芳香環を形成する。同様に、一般式(I
3)又は一般式(I
4)中、R
j及びR
kは、R
jが結合する窒素原子及びR
kが結合する炭素原子と共に1〜3個の環からなる芳香環を形成する。R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環の各環は、5員環又は6員環である。一般式(I
3)又は一般式(I
4)で表される化合物は、R
h及びR
iが形成する芳香環と2個の窒素原子と結合するホウ素原子を含む環と1個の窒素原子を含む5員のヘテロ環とが縮合した3環と、R
j及びR
kが形成する芳香環と2個の窒素原子と結合するホウ素原子を含む環と1個の窒素原子を含む5員のヘテロ環とが縮合した3環とが5員のヘテロ環同士において縮合した環構造、すなわち、すくなくとも6環が縮合した環構造を有する。このように、一般式(I
3)又は一般式(I
4)で表される化合物は、非常に広い共役平面からなる堅牢な縮合環構造を有する。
【0051】
R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環としては、芳香性を有するものであれば特に限定されるものではない。当該芳香環としては、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、イソインドール環、インドール環、インダゾール環、プリン環、ペリミジン環、チエノピロール環、フロピロール環、ピロロチアゾール環、ピロロオキサゾール環等が挙げられる。極大蛍光波長が近赤外領域まで長波長化することから、特に、一般式(I
1)又は一般式(I
3)の場合は、当該芳香環としては、縮環数が2又は3であることが好ましく、合成上の煩雑さなどの点から2であることがより好ましい。ただし、当該芳香環の縮環数が1である場合にも、環上の置換基やホウ素上の置換基を工夫することで長波長化も可能である。また、特に、一般式(I
2)又は一般式(I
4)の場合は、置換アリール基やヘテロアリール基を結合させるだけで、近赤外領域まで長波長化させることができる。
【0052】
R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環としては、置換基を有していないものであってもよく、1個又は複数個の置換基を有していてもよい。当該芳香環が有する置換基としては、「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」であればよい。
【0053】
本発明に係る樹脂組成物を医療用材料(医療用具の原材料)として用いる場合には、本発明に係る近赤外蛍光色素としては、必要な生物学的安全性試験において、変異原性、細胞毒性、感作性、皮膚刺激性などが無いものが好ましい。また、安全性の観点から、本発明に係る近赤外蛍光色素が、血液や組織液などの体液によって、本発明に係る樹脂組成物を加工して得られた成形体から溶出しないことが好ましい。このため、本発明に係る近赤外蛍光色素は、血液などの生体成分等への溶解性が低いことが好ましい。ただし、本発明に係る近赤外蛍光色素自体が水溶性であっても、本発明に係る樹脂組成物中の樹脂成分自体が体液等にほとんど溶出しない場合であり、かつ近赤外蛍光色素自体の含有量が微量である場合には、本発明に係る樹脂組成物の成形体は、生体内においても近赤外蛍光色素の溶出を避けて使用することが可能である。これらを考慮し、当該置換基としては、変異原性等を発現し難いものや、水溶性を低下させるものが選択されることが好ましい。
【0054】
当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン酸基、アルキルスルフォニル基、ハロゲノスルフォニル基、チオール基、アルキルチオ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミドカルボニル基、アルキルカルボニルアミド基、アシル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、モノアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基、アリール基及びヘテロアリール基等が挙げられる。R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環が有する置換基としては、生体に対する安全性の点からシアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルキルチオ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルスルフォニル基、フッ素、塩素、アリール基、又はヘテロアリール基であることが好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0055】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0056】
アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。これらの基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基(tert−ブチル基)、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、イソプロピニル基、1−ブチニル基、イソブチニル基等が挙げられる。
【0057】
アルキルスルフォニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミドカルボニル基、アルキルカルボニルアミド基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、及びトリアルコキシシリル基におけるアルキル基部分としては、前記アルキル基と同様のものが挙げられる。例えば、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。また、例えば、モノアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等を挙げることができ、ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、ブチルエチルアミノ基等を挙げることができる。
【0058】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。
ヘテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾール基等の5員環ヘテロアリール基;ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の6員環ヘテロアリール基;インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、キノリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基などの縮合ヘテロアリール基を挙げることができる。
【0059】
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、無置換の基であってもよく、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン酸基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0060】
蛍光色素の吸収波長及び蛍光波長は周辺の環境に依存する。それ故、樹脂中における蛍光色素の吸収波長は、溶液中と比較して短波長化する場合もあれば、長波長化する場合もある。本発明に係る近赤外蛍光色素自身の吸収波長が長波長化されている場合には、種々の樹脂中でも極大吸収波長が近赤外領域にあるようになるため好ましい。蛍光色素の極大吸収波長は、分子内の適切な位置に電子供与性基と電子求引性基を導入することにより、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)間のバンドギャップを狭め、より長波長化することができる。
【0061】
例えば、一般式(I
1)で表される化合物のうち、R
a及びR
bが形成する芳香環並びにR
c及びR
dが形成する芳香環に電子供与性基を導入し、R
gに電子求引性基を導入することにより、当該化合物の極大吸収波長及び極大蛍光波長をより長波長化することができる。同様に、一般式(I
3)で表される化合物のうち、R
h及びR
iが形成する芳香環並びにR
j及びR
kが形成する芳香環に電子供与性基を導入すること、R
p及びR
qが芳香環の場合には当該芳香環に電子供与性基を導入すること、又はR
r及びR
sに電子求引性基を導入することにより、当該化合物の極大吸収波長及び極大蛍光波長をより長波長化することができる。これらの設計を組み合わせることにより、目的の波長に調整することが可能である。
【0062】
アザBODIPY骨格を有する一般式(I
2)で表される化合物は、R
a及びR
bが形成する芳香環並びにR
c及びR
dが形成する芳香環が無置換であっても比較的長波長に吸収を有する骨格である。一般式(I
1)で表される化合物とは異なり、当該骨格ではピロールの架橋部分が窒素原子であるために窒素上に置換基を導入することができないが、ピロール部分(R
a及びR
bが形成する芳香環並びにR
c及びR
dが形成する芳香環)に電子供与性基を導入することにより、当該化合物の極大吸収波長及び極大蛍光波長をより長波長化できる。同様に、一般式(I
4)で表される化合物の場合、ピロール部分(R
h及びR
iが形成する芳香環並びにR
j及びR
kが形成する芳香環)に電子供与性基を導入すること、又はR
p及びR
qが芳香環の場合には当該芳香環に電子供与性基を導入することにより、当該化合物の極大吸収波長及び極大蛍光波長をより長波長化できる。
【0063】
このため、R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環が有する置換基としては、「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」のうち、当該芳香環に対して電子供与性基として機能する基が好ましい。当該芳香環に電子供与性基が導入されることにより、一般式(I
1)、一般式(I
2)、一般式(I
3)、又は一般式(I
4)で表される化合物の蛍光がより長波長側になる。電子供与性基として機能する基としては、例えば、アルキル基;メトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、p−アルコキシフェニル基、p−ジアルキルアミノフェニル基、ジアルコキシフェニル基等のアリール基(芳香環基);2−チエニル基、2−フラニル基等のヘテロアリール基(複素芳香環基)等が挙げられる。アルキル基や、フェニル基の置換基中のアルキル基、アルコキシ基中のアルキル基部分としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。なお、アルキル基部分の炭素数や分岐の有無は、色素の諸物性を鑑み、適宜選択すればよい。溶解性や相溶性などの観点からは、炭素数6以上が好ましい場合や分岐している方が好ましい場合もある。R
a及びR
bが形成する芳香環、R
c及びR
dが形成する芳香環、R
h及びR
iが形成する芳香環、並びにR
j及びR
kが形成する芳香環が有する置換基としては、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、フェニル基又はp−メトキシフェニル基がさらに好ましい。BODIPY骨格は平面性が高いため、π−πスタッキングにより分子同士が凝集し易い。BODIPY骨格に嵩高い置換基をもつアリール基やヘテロアリール基を導入することにより、分子の凝集が抑制でき、本発明に係る樹脂組成物の発光量子収率を高くすることができる。
【0064】
一般式(I
1)又は一般式(I
2)中、R
a及びR
bが形成する芳香環と、R
c及びR
dが形成する芳香環とは、相違していてもよく、同種であってもよい。一般式(I
3)又は一般式(I
4)中、R
h及びR
iが形成する芳香環と、R
j及びR
kが形成する芳香環とは、相違していてもよく、同種であってもよい。本発明に係る近赤外蛍光色素としては、合成が容易であることに加え、より発光量子収率が高い傾向にあることから、R
a及びR
bが形成する芳香環とR
c及びR
dが形成する芳香環、又はR
h及びR
iが形成する芳香環とR
j及びR
kが形成する芳香環は、同種であることが好ましい。
【0065】
一般式(I
1)又は一般式(I
2)中、R
e及びR
fは、互いに独立して、ハロゲン原子又は酸素原子を表す。R
e及びR
fがハロゲン原子の場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子又は塩素原子がより好ましく、ホウ素原子と強固な結合を有することからフッ素原子が特に好ましい。R
e及びR
fがフッ素原子の化合物は耐熱性が高いため、樹脂と高温で溶融混練する場合には有利である。なお、一般式(I
1)又は一般式(I
2)で表される化合物としては、R
e及びR
fがハロゲン原子又は酸素原子ではなく、ホウ素原子と結合しうる原子を含んだ置換基であっても、本発明に係る近赤外蛍光色素と同様に樹脂に含有させることができる。当該置換基としては、蛍光を阻害しないものであれば許容される。
【0066】
一般式(I
1)又は一般式(I
2)中、R
e及びR
fが酸素原子の場合、R
e、R
eと結合するホウ素原子、R
a、及びR
aが結合する窒素原子が共に環を形成してもよく、R
f、R
fと結合するホウ素原子、R
c、及びR
cが結合する窒素原子が共に環を形成してもよい。つまり、環構造を形成する場合は、R
e、R
eと結合するホウ素原子、R
a、及びR
aが結合する窒素原子が形成する環は、R
a及びR
bが形成する芳香環と縮合し、R
f、R
fと結合するホウ素原子、R
c、及びR
cが結合する窒素原子が形成する環は、R
c及びR
dが形成する芳香環と縮合する。R
e等が形成する環及びR
f等が形成する環は、好ましくは6員環である。
【0067】
一般式(I
1)又は一般式(I
2)中、R
eが酸素原子であり、かつ環を形成していない場合には、R
eは置換基を有する酸素原子(置換基と結合した酸素原子)である。当該置換基としては、C
1-20アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、又はヘテロアリールカルボニル基等が挙げられる。同様に、一般式(I
1)又は一般式(I
2)中、R
fが酸素原子であり、かつ環を形成していない場合には、R
fは置換基を有する酸素原子(置換基と結合した酸素原子)である。当該置換基としては、C
1-20アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、又はヘテロアリールカルボニル基等が挙げられる。なお、R
e及びR
fが共に置換基を有する酸素原子の場合、R
eが有する置換基とR
fが有する置換基とは、同種であってもよく異種であってもよい。
【0068】
一般式(I
1)又は一般式(I
2)中、R
e及びR
fが酸素原子の場合、R
e、R
f、並びにR
e及びR
fと結合するホウ素原子が共に環を形成してもよい。当該環構造としては、例えば、R
e及びR
fが同じアリール環又はヘテロアリール環と連結している構造、R
e及びR
fがアルキレン基により連結している構造が挙げられる。
【0069】
一般式(I
3)又は一般式(I
4)中、R
l、R
m、R
n、及びR
oは、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
l、R
m、R
n、又はR
oがハロゲン原子の場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子又は塩素原子がより好ましく、ホウ素原子と強固な結合を有することからフッ素原子が特に好ましい。R
l、R
m、R
n、及びR
oがフッ素原子の化合物は耐熱性が高いため、樹脂と高温で溶融混練する場合には有利である。
【0070】
なお、本願発明及び本願明細書において、「C
1-20アルキル基」は炭素数1〜20のアルキル基を意味し、「C
1-20アルコキシ基」は炭素数1〜20のアルコキシ基を意味する。
【0071】
R
l、R
m、R
n、又はR
oがC
1-20アルキル基の場合、当該アルキル基としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。当該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0072】
R
l、R
m、R
n、又はR
oがC
1-20アルコキシ基の場合、当該アルコキシ基のアルキル基部分としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0073】
R
l、R
m、R
n、又はR
oがアリール基の場合、当該アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
R
l、R
m、R
n、又はR
oがヘテロアリール基の場合、当該ヘテロアリール基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾール基等の5員環ヘテロアリール基;ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の6員環ヘテロアリール基;インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、キノリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基などの縮合ヘテロアリール基を挙げることができる。
【0074】
R
l、R
m、R
n、又はR
oが表すC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基は、無置換の基であってもよく、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン酸基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0075】
一般式(I
3)又は一般式(I
4)で表される化合物としては、R
l、R
m、R
n、及びR
oがハロゲン原子、無置換のアリール基、又は置換基を有するアリール基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基がより好ましく、フッ素原子又は無置換のフェニル基が特に好ましい。
【0076】
一般式(I
3)又は一般式(I
4)中、R
p及びR
qは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
p及びR
qが表すハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、前記一般式(I
3)のR
l、R
m、R
n、又はR
oと同様のものが挙げられる。
【0077】
一般式(I
3)又は一般式(I
4)で表される化合物としては、R
p及びR
qが水素原子又はアリール基であるものが好ましく、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものが好ましく、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものがより好ましく、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものが特に好ましい。
【0078】
一般式(I
1)中、R
gは、水素原子、又は電子求引性基を表す。また、一般式(I
3)中、R
r及びR
sは、互いに独立して、水素原子、又は電子求引性基を表す。当該電子求引性基としては、例えば、トリフルオロメチル基などのようなハロゲン化メチル基;ニトロ基;シアノ基;アリール基;ヘテロアリール基;アルキニル基;アルケニル基;カルボキシル基、アシル基、カルボニルオキシ基、アミド基、アルデヒド基などのカルボニル基を有する置換基;スルホキシド基;スルホニル基;アルコキシメチル基;アミノメチル基などが挙げられ、これらの電子求引性基を置換基として持つアリール基やヘテロアリール基なども使用することができる。これらの電子求引性基の中でも、極大蛍光波長の長波長化の点から、強い電子求引性基として機能し得るトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホニル基等が好ましい。
【0079】
本発明に係る近赤外蛍光色素としては、下記一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)で表される化合物が好ましい。ボロンジピロメテン骨格を有する化合物は、極大蛍光波長がより長波長になるため好ましく、特に下記の(p2)、(p3)、(q2)、又は(q3)を充足する、ピロール環が芳香環又は複素芳香環と縮合した化合物は、極大波長が更に長波長になるため、近赤外蛍光色素として好ましい。
【0081】
一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)中、R
1、R
2、及びR
3は、下記(p1)〜(p3)のいずれかを充足する。
(p1)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、
(p2)R
1及びR
2は共に、芳香族5員環又は芳香族6員環を形成し、R
3は水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、又は
(p3)R
2及びR
3は共に、芳香族5員環又は芳香族6員環を形成し、R
1は水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0082】
一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)中、R
4、R
5、及びR
6は、下記(q1)〜(q3)のいずれかを充足する。
(q1)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、
(q2)R
4及びR
5は共に、芳香族5員環又は芳香族6員環を形成し、R
6は水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、又は
(q3)R
5及びR
6は共に、芳香族5員環又は芳香族6員環を形成し、R
4は水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0083】
前記(p1)〜(p3)又は(q1)〜(q3)におけるハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、それぞれ、R
aとR
bにおいて「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」として例示されたものを用いることができる。
【0084】
前記(p2)〜(p3)又は(q2)〜(q3)において、R
1及びR
2が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
4及びR
5が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
2及びR
3が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
5及びR
6が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環としては、下記一般式(C−1)〜(C−9)のいずれかで表されるものが好ましく、下記一般式(C−1)、(C−2)、又は(C−9)のいずれかで表されるものがより好ましい。下記一般式(C−1)〜(C−9)中、アスタリスクが付されている箇所が、一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)中のボロンジピロメテン骨格と結合する部分である。
【0086】
前記一般式(C−1)〜(C−8)中、Y
1〜Y
8は、互いに独立して硫黄原子、酸素原子、窒素原子、又はリン原子を表す。当該Y
1〜Y
8としては、互いに独立して硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子であることが好ましく、互いに独立して硫黄原子又は酸素原子であることがより好ましい。
【0087】
前記一般式(C−1)〜(C−9)中、R
11〜R
22は、互いに独立して水素原子、又は前記化合物の蛍光を阻害しない任意の基を表す。「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」としては、R
aとR
bにおける「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」で例示されたものを用いることができる。R
11〜R
22としては、互いに独立して、水素原子、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のヘテロアリール基、又は置換基を有するヘテロアリール基であることが好ましく、水素原子、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基がより好ましく、水素原子、(無置換の)フェニル基、又はp−メトキシフェニル基がさらに好ましい。電子供与性を高めることと、嵩高い置換基によりBODIPY骨格の凝集を抑制できることから、前記化合物は、少なくとも一つの前記の無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、無置換のヘテロアリール基、又は置換基を有するヘテロアリール基により置換されていることが特に好ましい。
【0088】
一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)の化合物としては、R
1とR
4、R
2とR
5、及びR
3とR
6は、それぞれ相違していてもよいが、同種の基であることが好ましい。つまり、R
1、R
2、及びR
3が前記(p1)を充足する場合には、R
4、R
5、及びR
6は前記(q1)を充足することが好ましく、R
1、R
2、及びR
3が前記(p2)を充足する場合には、R
4、R
5、及びR
6は前記(q2)を充足することが好ましく、R
1、R
2、及びR
3が前記(p3)を充足する場合には、R
4、R
5、及びR
6は前記(q3)を充足することが好ましい。
【0089】
一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)の化合物としては、R
1及びR
2が環を形成し、R
4及びR
5が環を形成している、又は、R
2及びR
3が環を形成し、R
5及びR
6が環を形成していることが好ましい。すなわち、R
1、R
2、及びR
3が前記(p2)又は(p3)を充足し、R
4、R
5、及びR
6が前記(q2)又は(q3)を充足するものが好ましい。ボロンジピロメテン骨格にさらに芳香環又は複素芳香環が縮合することにより、極大蛍光波長がより長波長側となるためである。
【0090】
一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)中、R
7及びR
8は、ハロゲン原子又は酸素原子を表す。R
7及びR
8が酸素原子の場合には、R
7、R
7と結合するホウ素原子、ホウ素原子が結合する窒素原子、R
1、及びR
1と結合する炭素原子が共に環を形成してもよく、R
8、R
8と結合するホウ素原子、ホウ素原子が結合する窒素原子、R
4、及びR
4と結合する炭素原子が共に環を形成してもよい。つまり、R
7とホウ素原子とR
1等が形成する環と、R
8とホウ素原子とR
4等が形成する環は、いずれもボロンジピロメテン骨格と縮合する。R
7とホウ素原子とR
1等が形成する環、及びR
8とホウ素原子とR
4等が形成する環は、好ましくは6員環である。
【0091】
一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)中、R
7が酸素原子であり、かつ環を形成していない場合には、R
7は置換基を有する酸素原子(置換基と結合した酸素原子)である。当該置換基としては、C
1-20アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基等が挙げられる。同様に、一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)中、R
8が酸素原子であり、かつ環を形成していない場合には、R
8は置換基を有する酸素原子(置換基と結合した酸素原子)である。当該置換基としては、C
1-20アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基等が挙げられる。なお、R
7及びR
8が共に置換基を有する酸素原子の場合、R
7が有する置換基とR
8が有する置換基とは、同種であってもよく異種であってもよい。
【0092】
一般式(I
1−0)中、R
9は、水素原子、又は電子求引性基を表す。電子求引性基としては、前記R
gで挙げられた基と同様のものが挙げられる。中でも、極大蛍光波長の長波長化の点から、強い電子求引性基として機能し得るフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アリール基、スルホニル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホニル基等がより好ましく、生体に対する安全性の点からトリフルオロメチル基、シアノ基、フェニル基、スルホニル基がさらに好ましい。ただし、これらの置換基に限定されるものではない。
【0093】
本発明に係る近赤外蛍光色素としては、一般式(I
1−0)又は一般式(I
2−0)で表される化合物のうち、R
1及びR
2が共に、上記一般式(C−1)で表される環のうち、R
11とR
12のいずれか一方が水素原子であり、残る一方が、1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基である環を形成し、R
4及びR
5が共にR
1及びR
2が形成する環と同種の環を形成し、R
3及びR
6が水素原子であり、R
7及びR
8がハロゲン原子である化合物;R
1及びR
2が共に、上記一般式(C−2)で表される環のうち、R
13とR
14のいずれか一方が水素原子であり、残る一方が、1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基である環を形成し、R
4及びR
5が共にR
1及びR
2が形成する環と同種の環を形成し、R
3及びR
6が水素原子であり、R
7及びR
8がハロゲン原子である化合物;R
2及びR
3が共に、上記一般式(C−1)で表される環のうち、R
11とR
12のいずれか一方が水素原子であり、残る一方が1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基である環を形成し、R
5及びR
6が共にR
2及びR
3が形成する環と同種の環を形成し、R
1及びR
4が水素原子であり、R
7及びR
8がハロゲン原子である化合物;R
2及びR
3が共に、下記一般式(C−2)で表される環のうち、R
13とR
14のいずれか一方が水素原子であり、残る一方が1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基である環を形成し、R
5及びR
6が共にR
2及びR
3が形成する環と同種の環を形成し、R
1及びR
4が水素原子であり、R
7及びR
8がハロゲン原子である化合物;R
2及びR
3が共に、下記一般式(C−9)で表される環のうち、R
19〜R
22のうちのいずれか1個が1〜3個の水素原子がハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であり、残る3個が水素原子である環を形成し、R
5及びR
6が共にR
2及びR
3が形成する環と同種の環を形成し、R
1及びR
4が水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、又はC
1-20アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であり、R
7及びR
8がハロゲン原子である化合物;が好ましい。これらの化合物が一般式(I
1−0)で表される化合物の場合、R
9がトリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、又はフェニル基であるものがさらに好ましく、トリフルオロメチル基又はフェニル基であるものが特に好ましい。
【0094】
本発明に係る近赤外蛍光色素の好ましい化合物としては、下記一般的(I
1−1)、(I
1−2)、(I
1−3)、(I
2−1)、(I
2−2)、(I
2−3)が挙げられる。下記一般的(I
1−1)等中、R
1、R
3、R
4、及びR
6〜R
8は上記と同義であり、EDは電子供与性基を表し、EWは電子求引性基を表し、Z
1〜Z
4環は、それぞれ独立して、5員環若しくは6員環のアリール基、又は5員環若しくは6員環のヘテロアリール基を表す。
【0096】
下記一般式(I
1−1)としては、下記一般式(I
1−1−1)〜(I
1−1−6)で表される化合物が好ましく、下記一般式(I
1−2)としては、下記一般式(I
1−2−1)〜(I
1−2−12)で表される化合物が好ましく、下記一般式(I
2−1)としては、下記一般式(I
2−1−1)〜(I
2−1−6)で表される化合物が好ましく、下記一般式(I
2−2)としては、下記一般式(I
2−2−1)〜(I
2−2−12)で表される化合物が好ましい。
【0103】
一般式(I
1−1−1)〜(I
1−1−6)、(I
1−2−1)〜(I
1−2−4)、(I
1−2−7)〜(I
1−2−10)、(I
2−1−1)〜(I
2−1−6)、(I
2−2−1)〜(I
2−2−4)、及び(I
2−2−7)〜(I
2−2−10)中、Y
11及びY
12は、互いに独立して、酸素原子又は硫黄原子を表し、Y
21及びY
22は、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。一般式(I
1−1−1)等で表される化合物としては、Y
11及びY
12は同種の原子であることが好ましく、Y
21及びY
22は同種の原子であることが好ましい。
【0104】
一般式(I
1−1−1)〜(I
1−1−6)、(I
1−2−1)〜(I
1−2−12)中、Q
11は、水素原子又は電子求引性基を表す。電子求引性基としては、前記R
gで挙げられた基と同様のものが挙げられる。一般式(I
1−1−1)等で表される化合物としては、Q
11がトリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、又は置換基を有してもよいフェニル基である化合物が好ましく、トリフルオロメチル基又は置換基を有してもよいフェニル基である化合物がより好ましい。
【0105】
一般式(I
1−1−1)〜(I
1−1−2)、(I
1−2−1)〜(I
1−2−2)、(I
1−2−6)、(I
2−1−1)〜(I
2−1−2)、及び(I
2−2−1)〜(I
2−2−2)、(I
2−2−6)中、Xは、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルコキシ基、アリールオキシ基、又はアシルオキシ基を表す。
【0106】
XがC
1-20アルコキシ基の場合、当該アルコキシ基のアルキル基部分としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0107】
Xがアリールオキシ基の場合、当該アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、インデニルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0108】
Xがアシルオキシ基の場合、当該アシルオキシ基としては、アルキルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基が好ましい。当該アルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基(アセトキシ基)、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、イソアミルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ノニルカルボニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ウンデシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。当該アリールカルボニルオキシ基としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基(ベンゾイルオキシ基)、ナフチルカルボニルオキシ基、インデニルカルボニルオキシ基、ビフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0109】
一般式(I
1−1−1)〜(I
1−1−2)、(I
1−2−1)〜(I
1−2−2)、(I
1−2−6)、(I
2−1−1)〜(I
2−1−2)、(I
2−2−1)〜(I
2−2−2)、及び(I
2−2−6)のいずれかで表される化合物としては、Xがいずれもハロゲン原子であるものが好ましく、Xがいずれもフッ素原子であるものが特に好ましい。
【0110】
一般式(I
1−1−3)〜(I
1−1−4)、(I
1−2−7)、(I
1−2−9)、(I
1−2−11)、(I
2−1−3)〜(I
2−1−4)、(I
2−2−7)、(I
2−2−9)、及び(I
2−2−11)中、m1は、0又は1を表す。
【0111】
一般式(I
1−1−5)〜(I
1−1−6)、(I
1−2−3)〜(I
1−2−6)、(I
1−2−8)、(I
1−2−10)〜(I
1−2−12)、(I
2−1−5)〜(I
2−1−6)、(I
2−2−3)〜(I
1−2−6)、(I
2−2−8)、及び(I
2−2−10)〜(I
2−2−12)中、P
11〜P
14及びP
17は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を表す。当該P
11〜P
14におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。P
11〜P
14及びP
17としては、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることが好ましく、生体に対する安全性の点からC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることがより好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0112】
一般式(I
1−1−5)〜(I
1−1−6)、(I
1−2−3)〜(I
1−2−6)、(I
1−2−8)、(I
1−2−10)〜(I
1−2−12)、(I
2−1−5)〜(I
2−1−6)、(I
2−2−3)〜(I
1−2−6)、(I
2−2−8)、及び(I
2−2−10)〜(I
2−2−12)中、n11〜n14及びn17は、互いに独立して、0〜3の整数を表す。一分子中に、P
11が複数個存在した場合(すなわち、n11が2又は3の場合)、複数のP
11はいずれも同種の官能基であってもよく、異種類の官能基であってもよい。P
12〜P
14及びP
17についても同様である。
【0113】
一般式(I
1−1−1)〜(I
1−1−6)、(I
1−2−1)〜(I
1−2−4)、(I
1−2−6)〜(I
1−2−12)、(I
2−1−1)〜(I
2−1−6)、(I
2−2−1)〜(I
2−2−4)、及び(I
2−2−6)〜(I
2−2−12)中、A
11〜A
14は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、及びジアルキルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、及びジアルキルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。当該ヘテロアリール基としては、前記一般式(I
3)のR
l、R
m、R
n、又はR
oと同様のものが挙げられ、チエニル基又はフラニル基が好ましい。当該フェニル基又は当該ヘテロアリール基が有していてもよい置換基におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。A
11〜A
14としては、無置換のフェニル基、1若しくは2個のC
1-20アルコキシ基を置換基として有するフェニル基、又はヘテロアリール基が好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-20アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がより好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-10アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がさらに好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-6アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がよりさらに好ましい。また、一般式(I
1−1−1)等で表される化合物としては、A
11〜A
14はいずれも同種の官能基であることが好ましい。
【0114】
本発明に係る近赤外蛍光色素としては、特に、下記一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(3−1)〜(3−37)、(4−1)〜(4−7)、(5−1)〜(5−2)のいずれかで表される化合物が好ましく、下記一般式(1−1)〜(1−12)、(1−25)〜(1−31)、(2−1)〜(2−7)、(3−25)〜(3−31)のいずれかで表される化合物がより好ましく、下記一般式(1−1)、(1−3)、(1−4)、(1−6)、(1−25)、(1−27)、(2−1)、(3−1)、(3−3)、(3−4)、(3−6)、(3−25)、(3−27)、(4−1)のいずれかで表される化合物がさらに好ましい。
【0126】
一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(3−1)〜(3−37)、(4−1)〜(4−7)、(5−1)〜(5−2)中、P
1〜P
4及びP
18は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を表す。当該P
1〜P
4におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。P
1〜P
4及びP
18としては、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることが好ましく、生体に対する安全性の点からC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることがより好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0127】
一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(3−1)〜(3−37)、(4−1)〜(4−7))、(5−1)〜(5−2)中、n1〜n4及びn18は、互いに独立して、0〜3の整数を表す。一分子中に、P
1が複数個存在した場合(すなわち、n1が2又は3の場合)、複数のP
1はいずれも同種の官能基であってもよく、異種類の官能基であってもよい。P
2〜P
4及びP
18についても同様である。
【0128】
一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、及び(5−1)中、Qは、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表し、トリフルオロメチル基又は置換基を有してもよいフェニル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基又は無置換のフェニル基であることがより好ましい。フェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0129】
一般式(1−1)〜(1−31)及び(3−1)〜(3−31)中、Xは、一般式(I
1−1−1)等と同じである。一般式(1−1)等で表される化合物としては、Xがハロゲン原子であるものが好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
【0130】
一般式(1−32)〜(1−34)及び(3−32)〜(3−34)中、m2は、0又は1である。一般式(1−32)等で表される化合物としては、m2は1であることが好ましい。
【0131】
一般式(1−1)〜(1−37)、(2−1)〜(2−7)、(5−1)で表される化合物としては、P
1〜P
4及びP
18が互いに独立して、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であり、n1〜n4及びn18が互いに独立して、0〜2であり、Qがトリフルオロメチル基又はフェニル基であるものが好ましい。同様に、一般式、(3−1)〜(3−37)、(4−1)〜(4−7)、(5−2)で表される化合物としては、P
1〜P
4及びP
18が互いに独立して、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であり、n1〜n4及びn18が互いに独立して、0〜2であるものが好ましい。
【0132】
本発明に係る近赤外蛍光色素としては、極大蛍光波長がより長波長であるため、下記一般式(I
3−1)〜(I
3−6)のいずれかで表される化合物、又は一般式(I
4−1)〜(I
4−6)のいずれかで表される化合物も好ましい。
【0135】
一般式(I
3−1)〜(I
3−6)及び一般式(I
4−1)〜(I
4−6)中、R
23、R
24、R
25、及びR
26は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
23、R
24、R
25、又はR
26が表すハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、前記一般式(I
3)のR
l、R
m、R
n、又はR
oと同様のものが挙げられる。一般式(I
3−1)〜(I
3−6)のいずれかで表される化合物又は一般式(I
4−1)〜(I
4−6)のいずれかで表される化合物としては、化合物の熱安定性が高いことから、R
23、R
24、R
25、及びR
26がハロゲン原子、無置換のアリール基、又は置換基を有するアリール基が好ましく、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基がより好ましく、高い発光効率と熱安定性を兼ね備える化合物が得られることから、フッ素原子又は無置換のフェニル基が特に好ましい。
【0136】
一般式(I
3−1)〜(I
3−6)及び一般式(I
4−1)〜(I
4−6)中、R
27及びR
28は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R
27又はR
28が表すハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、前記一般式(I
3)のR
p又はR
qと同様のものが挙げられる。一般式(I
3−1)〜(I
3−6)のいずれかで表される化合物又は一般式(I
4−1)〜(I
4−6)のいずれかで表される化合物としては、R
27及びR
28が水素原子又はアリール基であるものが好ましく、高い発光効率の化合物が得られることから、水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものが好ましく、水素原子、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものがより好ましく、高い発光効率で、樹脂への相溶性にも優れる化合物が得られることから、無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であるものが特に好ましい。
【0137】
一般式(I
3−1)〜(I
3−6)中、R
29及びR
30は、互いに独立して、水素原子、又は電子求引性基を表す。R
29又はR
30が表す電子求引性基としては、前記一般式(I
3)のR
r又はR
sと同様のものが挙げられる。一般式(I
3−1)〜(I
3−6)のいずれかで表される化合物としては、蛍光波長が長波長化することや高い発光効率の化合物が得られることから、R
29及びR
30が、強い電子求引性基として機能し得るフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アリール基であるものが好ましく、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又は置換基を有してもよいフェニル基であるものがより好ましく、高い発光効率で、樹脂への相溶性にも優れる化合物が得られることから、トリフルオロメチル基又はシアノ基であるものがより好ましい。
【0138】
一般式(I
3−1)及び一般式(I
4−1)中、Y
9及びY
10は、互いに独立して硫黄原子、酸素原子、窒素原子、又はリン原子を表す。一般式(I
3−1)又は一般式(I
4−1)で表される化合物としては、高い発光効率の化合物が得られることから、Y
9及びY
10が、互いに独立して硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子であるものが好ましく、互いに独立して硫黄原子又は酸素原子であるものがより好ましく、高い発光効率と熱安定性を兼ね備える化合物が得られることから、共に硫黄原子である若しくは共に酸素原子であるものがさらに好ましい。
【0139】
一般式(I
3−3)〜(I
3−6)及び一般式(I
4−3)〜(I
4−6)中、X
1及びX
2は、互いに独立して窒素原子又はリン原子を表す。一般式(I
3−3)〜(I
3−6)又は一般式(I
4−3)〜(I
4−6)で表される化合物としては、X
1及びX
2が、高い発光効率の化合物が得られることから、共に窒素原子又はリン原子であるものが好ましく、高い発光効率と熱安定性を兼ね備える化合物が得られることから、共に窒素原子であるものがより好ましい。
【0140】
一般式(I
3−1)及び一般式(I
4−1)中、R
31及びR
32は、下記(p4)又は(p5)を充足する。
(p4)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(p5)R
31及びR
32は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成する。
【0141】
一般式(I
3−1)及び一般式(I
4−1)中、R
33及びR
34は、下記(q4)又は(q5)を充足する。
(q4)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、又は
(q5)R
33及びR
34は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成する。
【0142】
一般式(I
3−2)〜(I
3−6)及び一般式(I
4−2)〜(I
4−6)中、R
35、R
36、R
37、及びR
38は、下記(p6)〜(p9)のいずれかを充足する。
(p6)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(p7)R
35及びR
36は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
37及びR
38は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(p8)R
36及びR
37は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
35及びR
38は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(p9)R
37及びR
38は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
35及びR
36は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0143】
一般式(I
3−2)〜(I
3−6)及び一般式(I
4−2)〜(I
4−6)中、R
39、R
40、R
41、及びR
42は、下記(q6)〜(q9)のいずれかを充足する。
(q6)互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(q7)R
39及びR
40は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
41及びR
42は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(q8)R
40及びR
41は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
39及びR
42は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
(q9)R
41及びR
42は共に、置換基を有していてもよい芳香族5員環又は置換基を有していてもよい芳香族6員環を形成し、R
39及びR
40は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0144】
前記(p4)、(p6)〜(p9)及び(q4)、(q6)〜(q9)におけるハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アリール基、及びヘテロアリール基としては、それぞれ、R
aとR
bにおいて「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」として例示されたものを用いることができる。
【0145】
前記(p5)、(p7)〜(p9)、(q5)、(q7)〜(q9)において、R
31及びR
32が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
33及びR
34が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
35及びR
36が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
36及びR
37が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
37及びR
38が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
39及びR
40が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
40及びR
41が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環、R
41及びR
42が共に形成する芳香族5員環又は芳香族6員環としては、前記一般式(C−1)〜(C−9)のいずれかで表されるものが好ましく、高い熱安定性の化合物が得られることから、前記一般式(C−9)で表されるものがより好ましい。
【0146】
前記(I
3−1)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;Y
9及びY
10が共に硫黄原子又は酸素原子であり;R
31及びR
32が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
31及びR
32が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し;R
33及びR
34が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
33及びR
34が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成する化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;Y
9及びY
10が共に硫黄原子又は酸素原子であり;R
31及びR
32が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
31及びR
32が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し;R
33及びR
34が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
33及びR
34が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成する化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0147】
前記(I
3−2)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;R
35、R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
37及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35及びR
36が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
41及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39及びR
40が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;R
35、R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
37及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35及びR
36が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
41及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39及びR
40が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0148】
前記(I
3−3)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
36が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
40が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
36が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
40が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0149】
前記(I
3−4)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
37が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
37が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
41が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
41が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
37が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
37が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
41が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
41が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0150】
前記(I
3−5)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0151】
前記(I
3−6)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、又はフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
29及びR
30が共にトリフルオロメチル基、ニトロ基、又はシアノ基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0152】
前記(I
4−1)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;Y
9及びY
10が共に硫黄原子又は酸素原子であり;R
31及びR
32が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
31及びR
32が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し;R
33及びR
34が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
33及びR
34が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成する化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;Y
9及びY
10が共に硫黄原子又は酸素原子であり;R
31及びR
32が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
31及びR
32が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し;R
33及びR
34が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
33及びR
34が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成する化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0153】
前記(I
4−2)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
35、R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
37及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35及びR
36が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
41及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
35、R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
37及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35及びR
36が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
41及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0154】
前記(I
4−3)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
36が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
40が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
36、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
36が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
40、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
40が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0155】
前記(I
4−4)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
37が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
37が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
36及びR
37が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
41が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
41が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
40及びR
41が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
37が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
37が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
36及びR
37が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
41が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、R
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
41が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
40及びR
41が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0156】
前記(I
4−5)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
35及びR
36が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
39及びR
40が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
36、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
35及びR
36が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
38が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
40、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
39及びR
40が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
42が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0157】
前記(I
4−6)で表される化合物としては、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子、無置換のフェニル基、又はC
1-10アルキル基若しくはC
1-10アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;R
27及びR
28が共に水素原子、無置換のフェニル基、又はC
1-20アルキル基若しくはC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に置換基を有していてもよいフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物が好ましく、R
23、R
24、R
25、及びR
26が共にハロゲン原子又は無置換のフェニル基であり;R
27及びR
28が共に無置換のフェニル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC
1-20アルコキシ基で置換されたフェニル基であり;X
1及びX
2が共に窒素原子であり;R
35、R
37、及びR
38が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
37及びR
38が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
35が水素原子若しくはC
1-20アルキル基であり;R
39、R
41、及びR
42が互いに独立して水素原子若しくはC
1-20アルキル基である、又はR
41及びR
42が共に無置換のフェニル基若しくはC
1-10アルキル基で置換されたフェニル基を形成し、R
39が水素原子若しくはC
1-20アルキル基である化合物は、発光効率が高く、樹脂に対する相溶性が優れるため、より好ましい。
【0158】
前記(I
3−1)〜(I
3−6)のいずれかで表される化合物としては、下記一般式(I
3−7)〜(I
3−9)のいずれかで表される化合物が好ましく、前記(I
4−1)〜(I
4−6)のいずれかで表される化合物としては、下記一般式(I
4−7)〜(I
4−9)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0160】
一般式(I
3−7)及び(I
4−7)中、Y
23及びY
24は、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。一般式(I
3−7)等中、Y
23及びY
24は同種の原子であることが好ましい。
【0161】
一般式(I
3−8)及び(I
4−8)中、Y
13及びY
14は、互いに独立して、酸素原子又は硫黄原子を表す。一般式(I
3−8)等中、Y
13及びY
14は同種の原子であることが好ましい。
【0162】
一般式(I
3−9)及び(I
4−9)中、Y
25及びY
26は、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。一般式(I
3−9)等中、Y
25及びY
26は同種の原子であることが好ましい。
【0163】
一般式(I
3−7)〜(I
3−9)中、R
47及びR
48は、互いに独立して、水素原子又は電子求引性基を表し、蛍光強度が高くなることからトリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、又はフェニル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基又はシアノ基であることが特に好ましい。一般式(I
3−7)等中、R
47及びR
48は同種の官能基であることが好ましい。
【0164】
一般式(I
3−7)〜(I
3−9)及び(I
4−7)〜(I
4−9)中、R
43、R
44、R
45、及びR
46は、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。当該アリール基としては、R
aとR
bにおいて「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」として例示されたものを用いることができる。また、当該アリール基が有していてもよい置換基としては、「化合物の蛍光を阻害しない任意の基」であればよく、例えば、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基等があげられる。一般式(I
3−7)〜(I
3−9)及び(I
4−7)〜(I
4−9)中、R
43〜R
46は、それぞれ異なる基であってもよいが、全て同種の基であることが好ましい。一般式(I
3−7)〜(I
3−9)及び(I
4−7)〜(I
4−9)のいずれかで表される化合物としては、R
43〜R
46が、全て同種のハロゲン原子である、又は全て同種の置換基を有してもよいフェニル基であるものが好ましく、全てフッ素原子又は無置換のフェニル基であるものがより好ましく、全てフッ素原子であるものが特に好ましい。
【0165】
一般式(I
3−7)〜(I
3−9)及び(I
4−7)〜(I
4−9)中、P
15〜P
16は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を表す。当該P
15〜P
16におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。P
15〜P
16としては、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることが好ましく、生体に対する安全性の点からC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることがより好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0166】
一般式(I
3−7)〜(I
3−9)及び(I
4−7)〜(I
4−9)中、n15〜n16は、互いに独立して、0〜3の整数を表す。一分子中に、P
15が複数個存在した場合(すなわち、n15が2又は3の場合)、複数のP
15はいずれも同種の官能基であってもよく、異種類の官能基であってもよい。P
16についても同様である。
【0167】
一般式(I
3−7)〜(I
3−9)及び(I
4−7)〜(I
4−9)中、A
15〜A
16は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、及びジアルキルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいフェニル基を表す。当該フェニル基が有していてもよい置換基におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。A
15〜A
16としては、無置換のフェニル基、1又は2個のC
1-20アルコキシ基を置換基として有するフェニル基が好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-20アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がより好ましく、無置換のフェニル基、又は1個のC
1-10アルコキシ基を置換基として有するフェニル基がさらに好ましい。また、一般式(I
3−7)等で表される化合物としては、A
15〜A
16はいずれも同種の官能基であることが好ましい。
【0168】
前記(I
3−1)〜(I
3−6)、(I
4−1)〜(I
4−6)のいずれかで表される化合物としては、下記一般式(6−1)〜(6−12)、(7−1)〜(7−12)のいずれかで表される化合物が挙げられる。一般式(6−7)〜(6−12)、(7−7)〜(7−12)中、Phは無置換のフェニル基を意味する。前記(I
3−1)〜(I
3−6)、(I
4−1)〜(I
4−6)のいずれかで表される化合物としては、特に、一般式(6−4)、(6−5)、(6−7)、(6−8)、(7−4)、(7−5)、(7−7)、(7−8)で表される化合物が好ましく、一般式(6−4)、(6−5)、(6−7)、(6−8)で表される化合物がより好ましい。
【0169】
一般式(6−1)〜(6−12)、(7−1)〜(7−12)中、P
5〜P
8は、互いに独立して、ハロゲン原子、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を表す。当該P
5〜P
8におけるC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基としては、それぞれ、前記R
gや(p1)〜(p3)、(q1)〜(q3)で挙げられたものと同じものが挙げられる。P
5〜P
8としては、C
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、(無置換の)フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることが好ましく、生体に対する安全性の点からC
1-20アルキル基、C
1-20アルコキシ基、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、チエニル基、又はフラニル基であることがより好ましく、C
1-20アルキル基又はC
1-20アルコキシ基であることがさらに好ましく、C
1-10アルキル基又はC
1-10アルコキシ基であることがよりさらに好ましく、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、これらの置換基以外の置換基であっても、さらに適当な置換基を導入することにより安全性を向上させることもできることから、これらの置換基に限定されるものではない。
【0170】
一般式(6−1)〜(6−12)、(7−1)〜(7−12)中、n5〜n8は、互いに独立して、0〜3の整数を表す。一分子中に、P
5が複数個存在した場合(すなわち、n5が2又は3の場合)、複数のP
5はいずれも同種の官能基であってもよく、異種類の官能基であってもよい。P
6〜P
8についても同様である。
【0175】
一般式(6−1)〜(6−12)、(7−1)〜(7−12)で表される化合物としては、P
5〜P
8が互いに独立してC
1-20アルキル基又はC
1-20アルコキシ基であり、n5〜n8が互いに独立して0〜2であるものが好ましく、P
5及びP
6が互いに独立してC
1-20アルキル基であり、n5及びn6が互いに独立して0〜2であり、P
7及びP
8が互いに独立してC
1-20アルコキシ基であり、n7及びn8が互いに独立して0〜1であるものがより好ましく、P
5及びP
6が互いに独立してC
1-20アルキル基であり、n5及びn6が互いに独立して1〜2であり、P
7及びP
8が互いに独立してC
1-20アルコキシ基であり、n7及びn8が1であるものがさらに好ましい。
【0176】
一般式(6−1)〜(6−12)で表される化合物としては、具体的には、下記の式(6−1−1)〜(6−12−1)で表される化合物が挙げられる。「λ」は各化合物の吸収スペクトルのピーク波長であり、「Em」は蛍光スペクトルのピーク波長である。
【0179】
<樹脂成分>
本発明に係る樹脂組成物が含有する樹脂成分は、特に限定されるものではなく、配合させる近赤外蛍光色素の種類、成形体を形成した際に要求される製品品質等を考慮して、公知の樹脂組成物やその改良物から適宜選択して用いることができる。例えば、当該樹脂成分は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。成形体に使用する場合には、熱硬化樹脂は溶融混練時に硬化する可能性があることから、本発明に係る樹脂組成物が含有する樹脂成分としては、熱可塑性樹脂であることが好ましい。本発明において用いられる樹脂成分としては、1種のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上を混合する場合には、相溶性の高い樹脂同士を組み合わせて用いることが好ましい。
【0180】
本発明において用いられる樹脂成分としては、例えば、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のウレタン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリトリメチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリブチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂;ナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン(PS)、イミド変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合(SAN)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、シクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂;ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、イソシアヌレート系エポキシ樹脂、ヒダントイン系エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂;メラミン系樹脂やユリア樹脂等のアミノ系樹脂;フェノール系樹脂;不飽和ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0181】
本発明に係る樹脂組成物が含有する樹脂成分としては、本発明に係る近赤外蛍光色素の分散性が高いことから、樹脂成分としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂又はアクリル系樹脂が好ましく、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び塩化ビニル系樹脂がより好ましい。特に、本発明に係る樹脂組成物を医療用材料として用いる場合には、血液などの体液への溶解性が低く、使用環境下において溶出し難い点や生体適合性を考慮すると、PTFE、テフロン(登録商標)、シリコーン、PU、TPU、PP、PE、PC、PET、PS、ポリアミド、PVCが好ましく、TPU、PU、PP、PE、PET、PSがより好ましい。
【0182】
なお、本発明に係る樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物の場合、樹脂成分としては、樹脂成分全体として熱可塑性樹脂であればよく、少量の非熱可塑性樹脂を含有していてもよい。同様に、本発明に係る樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物の場合、樹脂成分としては、樹脂成分全体として熱硬化性樹脂であればよく、少量の非熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
【0183】
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂成分に本発明に係る近赤外蛍光色素を混合・分散させることにより製造できる。本発明に係る樹脂組成物が含有する本発明に係る近赤外蛍光色素は、1種類のみであってもよく、2種類以上を含有していてもよい。
【0184】
樹脂組成物中の本発明に係る近赤外蛍光色素の含有量は、当該近赤外蛍光色素が樹脂に混合し得る濃度であれば特に限定されるものでは無いが、蛍光強度とその検出感度の観点からは0.0001質量%以上が好ましく、濃度消光や蛍光の再吸収による検出感度の観点からは1質量%以下が好ましく、0.001〜0.5質量%の範囲がより好ましく、0.001〜0.05質量%の範囲がさらに好ましい。また、本発明に係る近赤外蛍光色素は、樹脂中においても高いモル吸光係数と高い量子収率を有しているため、樹脂中での色素濃度が比較的低くても、その発光をカメラ等で十分視認できる。色素濃度が低いことは、溶出する可能性が低くなること、樹脂組成物から加工された成形体からブリードアウトする可能性が低くなること、透明性が要求される成形体を加工できる等の点から望ましい。
【0185】
本発明に係る近赤外蛍光色素を樹脂成分に混合・分散する方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法で行ってもよく、さらに添加剤を併用しても構わない。例えば、樹脂組成物に本発明に係る近赤外蛍光色素を添加して溶融混練させ、本発明に係る樹脂組成物を得ることができる。こうして樹脂中に本発明に係る近赤外蛍光色素が均一に分散された状態の樹脂組成物が得られる。これら公知の混合・分散法のなかでも、実生産に適した溶融混練が好ましい。
【0186】
なお、樹脂と蛍光材料を溶融混練することによって蛍光材料を熱可塑性樹脂等に分散させる場合に、蛍光材料の分解点未満の温度で溶融混練を行った場合でも、樹脂や蛍光材料の種類及び混練条件によっては、分散不良を起こしてしまったり、蛍光材料が分解してしまうなどの原因によって蛍光を発しないことがある。そのため、蛍光材料が熱可塑性樹脂等に分散できるか否かは、蛍光材料の熱物性等から予測するのは困難である。
【0187】
これに対して、本発明に係る近赤外蛍光色素は、様々な樹脂成分に均一に混合・分散させることが可能であり、樹脂中においても高い量子収率で蛍光を発することが出来る。その理由は明らかではないが、以下のように推察できる。溶融混練等の方法で色素を分散させる場合、凝集等を起こしてしまうと濃度消光により蛍光の量子収率は低くなることが考えられる。そこで、該色素が蛍光を効率よく発するためには、樹脂と相溶性が高く、均一に分散できることが望ましい。相溶性が高いかどうかの1つの指標としてSP値が挙げられる。色素のSP値と樹脂のSP値の差が小さければ、相溶性が高く均一に分散させることができる。一方、SP値等が異なる場合にも、他の物性パラメーターで説明することもできる。例えば、色素の溶解度、分配係数、比誘電率、分極率等の計算値、又は実測値から、樹脂との相溶性を説明できる。また、樹脂と蛍光色素の相溶性は、樹脂の結晶性によっても異なる場合がある。
【0188】
その他にも、樹脂と蛍光色素との相溶性は、蛍光色素の分子自体が有する官能基によって制御できる。例えば、ポリプロピレンやポリエチレンのような脂溶(疎水)性のポリオレフィン系樹脂に分散させる場合は、蛍光色素分子が疎水性基を有していることが好ましい。例えば、脂環式アルキル基、長鎖アルキル基、ハロゲン化アルキル基、又は芳香環等の疎水性基を色素分子に導入することにより、樹脂との相溶性を向上させることができる。ただし、これらの官能基に限定されるわけではない。また、ポリウレタンやポリアミド等の極性の高い樹脂に分散させる場合は、蛍光色素分子がカルボキシル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、エステル、アミド等の親水性基を有していることが好ましい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0189】
樹脂との相溶性を高めるためには、色素分子の凝集を抑える必要がある。蛍光色素の場合、共役系の伸張や平面性の確保から分子に芳香環や複素環の導入が行なわれる。しかし、これらの環の導入により、平面性が高くスタッキングを起こしやすく、凝集しやすい傾向にある。本発明に係る近赤外蛍光色素は、ホウ素原子を中心とした広い共役平面からなる色素骨格を有しているため、凝集しやすいが、電子供与性基や電子求引性置換基を導入して分極させることや嵩高い官能基を導入することにより色素の凝集が抑えられており、様々な樹脂への相溶性が実現できていると推測される。
【0190】
相溶性の指標となる分配係数やSP値は、市販ソフトから計算で得られる「ハンセンの溶解性パラメーター」から、水/オクタノール分配係数やヒルデブランドのSP値として見積もることができる。例えば、本発明に係る近赤外蛍光色素のうち、下記化合物(8−1)〜(8−8)で表される化合物の分配係数とSP値は以下の通りである。
【0192】
本発明に係る近赤外蛍光色素は、PP等の樹脂成分と溶融混練して均一に分散・混合させることが可能であり、混練された樹脂組成物や当該樹脂組成物から加工された成形体は、高い発光量子収率で安定して近赤外蛍光を発することができる。本発明に係る近赤外蛍光色素が、他の多くの有機近赤外蛍光色素と異なり、樹脂組成物と溶融混練した場合でも高い発光特性を示す理由は明らかではないが、本発明に係る近赤外蛍光色素は、広い共役平面からなる堅牢な色素骨格を有しているため、耐熱性が高く、かつ樹脂への相溶性が優れるためと推察される。なお、BODIPY色素及びDPP系ホウ素錯体が、溶融混練のように負荷の高い処理によっても蛍光特性が損なわれないことは、本発明者らが初めて見出した知見である。
【0193】
励起光によるノイズカットのためのフィルターが備えられている一般的な発光検出器を用いる場合、本発明に係る樹脂組成物の極大吸収波長と極大蛍光波長の差(ストークスシフト)が小さいと、蛍光がフィルターによりカットされるため、高感度で検出することが難しい。そのため、本発明に係る樹脂組成物は、極大吸収波長と極大蛍光波長の差が10nm以上のものが好ましく、20nm以上のものがより好ましい。ストークスシフトが大きいほど、励起光によるノイズカットのためのフィルターが備えられている一般的な検出器を用いた場合でも、当該成形体から発される蛍光をより高感度で検出することが可能である。
【0194】
ただし、ストークスシフトが小さい場合でも、以下のような条件では、本発明に係る樹脂組成物からの近赤外蛍光を高感度に検出可能である。例えば、極大吸収波長よりも短波長光で励起することができれば、ノイズカットをしても蛍光を検出することが可能である。また、蛍光スペクトルがブロードの場合には、ノイズカットしても十分に蛍光を検出することが可能である。一方で、蛍光色素の中には蛍光ピークを複数有しているものもある。その場合は、ストークスシフトが小さくても、より長波長側に蛍光ピーク(第2のピーク)があれば、ノイズカットによるフィルターが備えられている検出器を用いた場合でも高感度で検出することが可能である。本発明に係る樹脂組成物が複数の蛍光を有している場合における長波長側の蛍光ピーク波長は、極大吸収波長との差が30nm以上であればよく、50nm以上であれば好ましい。なお、励起光源やカットフィルターなどを適切に選択すれば、上述した条件に限定されるものではない。
【0195】
本発明に係る樹脂組成物は、近赤外領域の励起光で励起しても目視状態で色彩が変わらず、かつ、不可視の近赤外領域の蛍光を発し、検出器で検出できる。したがって、近赤外領域の励起光に対しては極大吸収波長が600nm以上であればよいが、吸収効率の観点からは、極大吸収波長が励起光の波長に近い方が好ましく、650nm以上がより好ましく、680nm以上であることが特に好ましい。更に、インプラントなどの医療用具として使用する場合には、700nm以上が好ましい。
【0196】
本発明に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体は、極大蛍光波長が650nm以上のものである。被照射物の色彩が変わらず、かつ、検出感度を考慮すると、極大蛍光波長が650nm以上であれば実用的には問題がないが、700nm以上であることが好ましく、720nm以上であることがより好ましい。蛍光ピークを複数有する場合には、極大蛍光ピークの波長が720nm以下であっても、740nm以上に充分な検出感度を有する蛍光ピークがあればよい。その場合、長波長側の蛍光ピーク(第2のピーク)の強度が極大蛍光波長の強度に対して、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
【0197】
本発明に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体としては、650nm〜1500nmの範囲に強い吸収があり、この範囲で強い蛍光を発することが好ましい。650nm以上の光は、ヘモグロビンによる影響を受けにくく、1500nm以下の光は、水の影響を受けにくい。つまり、650nm〜1500nmの範囲内の光は、皮膚透過性が高く、生体内の夾雑物質の影響を受けにくいため、皮下などに埋め込まれている医療用インプラントを可視化するために用いられる光の波長領域として好適である。極大吸収波長と極大蛍光波長が650nm〜1500nmの範囲にある場合、本発明に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体は、650nm〜1500nmの範囲内の光による検出に適しており、生体内で使用される医療用具等として好適である。
【0198】
本発明に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、前記樹脂成分と近赤外蛍光色素以外の他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、結晶化促進剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0199】
<成形体>
本発明に係る樹脂組成物を加工することにより、近赤外蛍光による検出が可能な成形体が得られる。成形方法は、特に限定されないが、キャスティング(注型法)、金型を用いた射出成形、圧縮成形及びTダイ等による押し出し成形、ブロー成形などが挙げられる。
【0200】
成形体の製造において、本発明に係る樹脂組成物のみから形成してもよく、本発明に係る樹脂組成物とその他の樹脂組成物を原料として用いてもよい。例えば、成形体の全部を本発明に係る樹脂組成物により成形してもよく、成形体の一部分のみを本発明に係る樹脂組成物により成形してもよい。本発明に係る樹脂組成物は、成形体の表面部分を構成する原料として用いられることが好ましい。例えば、カテーテルを成形する場合、カテーテルの先端部のみを本発明に係る樹脂組成物により成形し、残りの部分を近赤外蛍光色素を含有していない樹脂組成物により成形することにより、先端部のみが近赤外蛍光を発するカテーテルが製造できる。また、本発明に係る樹脂組成物と近赤外蛍光色素を含有していない樹脂組成物とを交互に積層して成形することにより、ストライプ状に近赤外蛍光を発する成形体が製造できる。その他、成形体の視認性を高めるための表面コーティングを行ってもよい。
【0201】
蛍光検出は、市販されている蛍光検出装置等を使用し、常法により実施することができる。蛍光検出に用いる励起光としては、任意の光源を使用でき、波長幅が長い近赤外線ランプの他、波長幅が狭いレーザー、LEDなどを使用することができる。
【0202】
本発明に係る近赤外蛍光色素を含有する樹脂組成物から得られた成形体は、近赤外領域の光を照射しても色彩が変わらず、従来よりも高感度に検出可能な近赤外蛍光を発するため、当該成形体は、特に、患者の体内に挿入したり留置したりする医療用具に好適である。
【0203】
本発明に係る近赤外蛍光色素を含有する樹脂組成物から得られた成形体を蛍光検出する場合には、近赤外領域の励起光を照射することが好ましいが、被照射物の色彩が多少赤みを帯びても構わない場合には、必ずしも近赤外線領域の励起光を使用する必要はない。例えば、励起光を照射して体内の医療用具を蛍光検出しようとした場合、皮膚などの生体に対する透過性の高い波長領域で励起光を使用することが必要となるが、この場合には、生体透過性の高い650nm以上の励起光を使用すればよい。
【0204】
当該医療用具としては、例えば、ステント、コイル塞栓子、カテーテルチューブ、注射針、留置針、ポート、シャントチューブ、ドレーンチューブ、インプラント等が挙げられる。
【実施例】
【0205】
以下、実施例及び比較例等を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0206】
[製造例1]近赤外蛍光色素Aの合成
アルゴン気流下、500mL容三口フラスコに4−メトキシフェニルボロン酸(2.99g、19.7mmol)を入れ、トルエン(120mL)に溶解し、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン複合体(1:1)(100mg)、エタノール30mL、5−ブロモ−2−フラルデヒド(3.46g、19.8mmol)及び2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(20mL)を加え、80℃で14時間撹拌した。反応終了後、有機相を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、乾燥剤をろ別して溶媒を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=19/1→4/1)で分離精製することにより、5−(4−メトキシフェニル)−フラン−2−カルボアルデヒド(a−1)を薄黄色液体として得た(収量:3.39g、収率:84.8%)。
【0207】
次に、1L容三口フラスコにアルゴン気流下、化合物(a−1)(3.39g、16.8mmol)とアジド酢酸エチル(8.65g、67.0mmol)をエタノール(300mL)に溶解させた後、得られた溶液に、20質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液(22.8g、67.0mmol)を0℃氷浴中でゆっくり滴下し、2時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてpHを弱酸性に調整した後、水を加えて吸引ろ過を行い、得られたろ物を乾燥することにより、2−アジド−3−[5−(4−メトキシフェニル)−フラン−2−イル]−アクリル酸エチルエステル(a−2)の黄色固体を得た(収量:3.31g、収率:63.1%)。
【0208】
さらに、200mL容ナスフラスコに化合物(a−2)(3.31g、10.6mmol)を入れ、トルエン(60mL)に溶解させた後、1.5時間還流撹拌した。還流撹拌後の溶液を減圧濃縮した後、得られた粗生成物を再結晶(溶液:ヘキサン、酢酸エチル)させた後に吸引ろ過し、得られたろ物を乾燥することにより、2−(4−メトキシフェニル)−4H−フロ[3.2−b]ピロール−5−カルボン酸エチルエステル(a−3)の茶色結晶を得た(収量:2.32g、収率:76.8%)。
【0209】
次いで、300mL容フラスコに化合物(a−3)(1.90g、6.66mmol)を入れ、エタノール(60mL)、水酸化ナトリウム(3.90g、97.5mmol)を水30mLに溶解した水溶液を加え、1時間還流撹拌した。還流撹拌後の溶液は、放冷した後に6mol/L塩酸水溶液を加えて酸性に調整した後に、水を加えて吸引ろ過を行い、得られたろ物を真空乾燥することにより、2−(4−メトキシフェニル)−4H−フロ[3.2−b]ピロール−5−カルボン酸(a−4)の灰色固体を得た(収量:1.56g、収率:91%)。
【0210】
続いて、200mL容三口フラスコに化合物(a−4)(327mg、5.52mmol)、トリフルオロ酢酸(16.5mL)を入れ、45℃で攪拌した。化合物(a−4)が溶解した後、発砲がおさまるまで、15分間撹拌した。撹拌後の溶液に、無水トリフルオロ酢酸(3.3mL)を加えて80℃で1時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び氷を加えて溶液を中和した後、吸引ろ過を行い、ろ物を真空乾燥することにより、化合物(a−5)の黒色固体を得た(収量:320mg)。化合物(a−5)は、精製せずにそのまま次の反応に用いた。
【0211】
アルゴン気流下、化合物(a−5)(320mg)を200mL容三口フラスコに入れ、トルエン(70mL)、トリエチルアミン(1.0mL)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.5mL)を滴下し、30分間加熱還流した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、有機相を回収した。当該有機相は、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤をろ別して溶媒を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=20/1(体積比))で分離精製し、近赤外蛍光色素Aの緑色結晶を得た(収量:20mg、収率:6%)。
【0212】
【化49】
【0213】
[実施例1]
TPUペレット(製品名:Tecoflex EG85A、Lubrizol社製)(100g)と、製造例1で合成した近赤外蛍光色素A(5mg)を混合し、ペレット表面に色素を付着させた。次いで、当該ペレットをラボプラストミルに投入し、設定温度190℃で10分間溶融混練(kneading)した。その後、混練された色素含有樹脂を取り出し、フィルム化した。
フィルム化は、以下のようにして行った。まず、溶融混練された色素含有樹脂を200℃に熱した鉄板で挟みながら5分間加熱し、当該鉄板を冷却しながら、5〜10mPaでプレスした。
【0214】
得られたフィルムの吸収スペクトルをSHIMADZU社製の紫外可視近赤外分光光度計「UV3600」で測定し、発光スペクトルを浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率測定装置「Quantaurus−QY C11347」で測定したところ、極大吸収波長が730nm、極大蛍光波長が755nmであり、その他に823nmに蛍光ピークが観測された。このときの蛍光量子収率は26%であった。また、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性は高かった。
【0215】
[実施例2]
実施例1において、TPUペレットに代えて、PPペレット(製品名:PC630A、サンアロマー社製)を使用し、PPペレット(100g)と製造例1で合成した近赤外蛍光色素A(10mg)を混合し、ペレット表面に色素を付着させた以外は実施例1と同様にして、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られたフィルムの蛍光スペクトルを実施例1と同様にして測定したところ、極大蛍光波長が810nmであり、蛍光量子収率は24%であった。また、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性は高かった。
【0216】
[実施例3]
近赤外蛍光色素Aを含有する樹脂フィルムからの近赤外蛍光色素Aの溶出性について調べた。
実施例1において、近赤外蛍光色素Aを100mg使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、近赤外蛍光色素Aの色素濃度が0.1質量%である膜厚約300μmの色素含有TPUフィルムを製造した。
得られた色素含有TPUフィルムについて、溶出試験を行った。フィルムの溶出操作は、ISO10993−10AnnexEに従って、以下の通り行った。まず、色素含有TPUフィルム5gを2×2cm以下の大きさに裁断し、100mLのメタノールと共に300mL容の三角フラスコに添加し、25℃の室温で8時間振とうした。次いで、一旦メタノールをろ過し、同じフィルム細片を使用して更に2回、同量のメタノールで抽出した。合計3回の操作で得たメタノール抽出液をエバポレーターで濃縮し、残渣をジクロロメタン5mLに溶解して試験液とした。
得られた試験液の吸収スペクトルと発光スペクトルを測定したところ、近赤外蛍光色素Aに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Aがほとんど溶出しないことが明らかとなった。近赤外蛍光色素Aがほとんど溶出しなかったことから、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得る。
【0217】
[製造例2]近赤外蛍光色素Bの合成
近赤外蛍光色素Bは、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照にして、以下のように行なった。
【0218】
2L容四口フラスコに4−ヒドロキシベンゾニトリル(25.3g、212mmol)、アセトン800mL、炭酸カリウム(100g、724mmol)、1−ブロモオクタン(48g、249mmol)を入れ、終夜加熱還流した。無機塩をろ過後、アセトンを減圧除去し、得られた残渣に酢酸エチルを加え、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで処理した。硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、4−オクトキシベンゾニトリル(b−1)の無色透明液体を得た(収量:45.2g、収率:92%)。
【0219】
次に、アルゴン気流下、500mL容四口フラスコにtert−ブチルオキシカリウム(25.18g、224.4mmol)、tert−アミルアルコール160mLを入れた。そこへ、先に合成した化合物(b−1)(14.8g、64mmol)をtert−アミルアルコール7mLと混合した溶液を加えた。加熱還流下、コハク酸ジイソプロピルエステル(6.5g、32mmol)をtert−アミルアルコール10mLに混合した溶液を約3時間かけて滴下し、滴下終了後、6時間加熱還流した。室温に戻した後、粘性の高い反応液を酢酸:メタノール:水=1:1:1の溶液に入れ、加熱還流を数分行うと赤い固体が析出した。固体をろ別し、加熱したメタノール、及び水で洗浄することによって3,6−(4−オクチルオキシフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン(b−2)の赤色固体を得た(収量:5.6g、収率:32%)。
【0220】
また、200mL容三口フラスコに4−tert−ブチルアニリン(10g、67mmol)、酢酸70mL、チオシアン酸ナトリウム(13g、160mmol)を入れた。系内を15℃以下に保ちながら、臭素(4.5mL、87mmol)を約20分間かけて滴下し、その後3.5時間15℃以下で攪拌した。反応液を28%アンモニア水150mLに入れ、しばらく攪拌し、析出した固体をろ別後、この固体をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水で洗浄した。ジエチルエーテルを減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル)で精製し、2−アミノ−6−tert−ブチルベンゾチアゾール(b−3)を淡黄色固体として得た(収量:10.32g、収率:69%)。
【0221】
次に、水冷下、1L容4つ口フラスコに水酸化カリウム(75.4g、1340mmol)、エチレングリコール(175mL)を入れた。系内をアルゴン雰囲気下にし、化合物(b−3)(7.8g、37.8mmol)を入れ、系内の酸素を除去するために、アルゴンでバブリングを行った後、110℃で18時間反応させた。反応液を40℃以下に水冷し、予めアルゴンバブリングをした2mol/L塩酸を系内に滴下して、中和を行った(pH7付近)。析出した白色固体をろ別し、水洗後、減圧乾燥した。白色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、4−tert−ブチル−2−メルカプトアニリン(b−4)の白色固体を得た(収量:2.39g、収率:35%)。
【0222】
更に、100mL容三口フラスコに酢酸(872mg、14.5mmol)、アセトニトリル30mLを入れ、系内をアルゴン雰囲気下にした。アルゴン雰囲気下、マロノニトリル(2.4g、36.3mmol)、化合物(b−4)(2.39g、13.2mmol)を加え、2時間加熱還流した。アセトニトリルを減圧除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで処理した。硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、2−(6−tert−ブチルベンゾチアゾール−2−イル)アセトニトリル(b−5)の単黄色固体を得た(収量:1.98g、収率:65%)。
【0223】
続いて、アルゴン気流下200mL容三口フラスコに化合物(b−2)(1.91g、3.5mmol)、化合物(b−5)(1.77g、7.68mmol)、トルエン68mLを加え、加熱還流した。加熱還流下、オキシ塩化リン(2.56mL、27.4mmol)をシリンジで滴下し、更に2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン40mL及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40mLを加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、前駆体(b−6)の緑色固体を得た(収量:1.56g、収率:46%)。
【0224】
最後に、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに前駆体(b−6)(1.52g、1.57mmol)、トルエン45mL、トリエチルアミン(4.35mL、31.4mmol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.88mL、62.7mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応液を氷冷し、析出した固体をろ別し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、50%メタノール水溶液及びメタノールで洗浄し、減圧乾燥させた。得られた残渣をトルエンに溶解し、メタノールを加えて、沈殿させることで近赤外蛍光色素Bの濃緑色固体を得た(収量:1.25g、収率:75%)。
【0225】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ7.90ppm(d、2H)、7.72−7.69(m、6H)、7.51(dd、2H)、7.08(d、2H)、4.07(t、4H)、1.84(m、4H)、1.52(s、18H)、1.35−1.32(m、24H)、0.92(t、6H)。
【0226】
【化50】
【0227】
[製造例3]近赤外蛍光色素Cの合成
近赤外蛍光色素CはJournal of Organic Chemistry、2011年、第76巻、4489〜4505ページ記載の方法に従って合成した。
【0228】
500mL容四口フラスコにアルゴン気流下、2−エチルチオフェン(11.2g、100mmol)、脱水THF(80mL)を加え、−78℃で撹拌した。この溶液にn−ブチルリチウム(68.8mL、1.6mol/Lヘキサン溶液)を滴下して同温で1時間撹拌後、エチルクロロホルメート(10.9mL、120mmol)の脱水THF溶液(50mL)を滴下して更に1時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(110mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン=6/4(体積比))で分離精製し、5−エチルチオフェン−2−カルボキシレート(c−1)の無色液体を得た(収量:15.4g、収率:83.7%)。
【0229】
次に、200mL容四口フラスコに化合物(c−1)(15.0g、81.5mmol)、エタノール(40mL)を加え、この溶液にヒドラジン1水和物(12.2g、244mmol)を滴下し、12時間還流撹拌した。反応液を冷却後、溶媒を減圧留去し、残渣をジクロロメタンに溶解し、水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシクロヘキサンで再結晶し、ろ集、乾燥することにより、5−エチルチオフェン−2−カルボヒドラジン(c−2)の白色固体を得た(収量:8.6g、収率:62.1%)。
【0230】
更に、50mL容三口フラスコに化合物(c−2)(8.5g、50mmol)、2−ヒドロキシ−4−メトキシアセトフェノン(7.5g、50mmol)を加え、75℃で1時間撹拌した。残渣をジクロロメタン/メタノールで再結晶し、ろ集、乾燥することにより、(E)−5−エチル−N‘−(1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)エチリデン)−チオフェン−2−カルボヒドラジン(c−3)の白色固体を得た(収量:12.4g、収率:78%)。
【0231】
続いて、500mL容四口フラスコに化合物(c−3)(9.5g、29.8mmol)、THF(300mL)を加え溶解させた後、この溶液に酢酸鉛(15.9g、35.9mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。反応液をろ過後、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣を水/ジクロロメタンで抽出した。有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をアルミナクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン=4/6(体積比))で分離精製し、(5−エチル−2−チエニル)(2−アセチル−5−メトキシ−1−フェニル)ケトン(c−4)の白色固体を得た(収量:7.6g、収率88.6%)。
【0232】
更に、500mL容四口フラスコにアルゴン気流下、化合物(c−4)(6.6g、22.8mmol)、酢酸(48mL)、エタノール(240mL)を加えて65℃で撹拌し、この溶液に塩化アンモニウム(1.22g、22.8mmol)と酢酸アンモニウム(10.7g、139mmol)を添加した後、30分間還流撹拌した。反応液をろ過後、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣を水/ジクロロメタンで抽出した。有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で分離精製し、化合物(c−5)の濃青色固体を得た(収量:2.1g、収率:35.2%)。
【0233】
最後に、アルゴン気流下、2L容フラスコに、化合物(c−5)(2.0g、3.8mmol)とジクロロメタン(250mL)を加え、室温で5分間撹拌した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.48g、11.5mmol)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(3.27g、23mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で分離精製し、近赤外蛍光色素Cの濃緑色固体を得た(収量:1.66g、収率:76%)。
【0234】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3/CCl
4=1/1):δ7.85(s,2H),δ7.64(d,2H),δ7.39(s,1H),δ7.29(s,2H),δ6.98(m,4H),δ3.86(s,6H),δ2.98(q,4H),δ1.43(t,6H)ppm。
【0235】
【化51】
【0236】
[製造例4]近赤外蛍光色素Dの合成
近赤外蛍光色素DはChemistry An Asian Journal、2013年、第8巻、3123〜3132ページ記載の方法に従って合成した。
【0237】
2L容四口フラスコにて、アルゴン気流下、5−ブロモ−2−チオフェンカルボキシアルデヒド(19.1g、0.1mol)とアジド酢酸エチル(51.6g、0.4mol)をエタノール(800mL)に溶解させた後、得られた溶液に、20質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液(136g、0.4mol)を0℃氷浴中でゆっくり滴下し、2時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてpHを弱酸性に調整した。更に、水を加え、沈殿物をろ集、乾燥することにより、2−アジド−3−(5−ブロモ−チオフェン−2−イル)−アクリル酸エチルエステルの黄色固体を得た(収量:18.4g、収率:61.3%)。
【0238】
次に、500mL容ナスフラスコに2−アジド−3−(5−ブロモ−チオフェン−2−イル)−アクリル酸エチルエステル(18.1g、60mmol)を入れ、o−キシレン(200mL)に溶解させた後、1.5時間還流撹拌した。還流撹拌後の溶液を減圧濃縮した後、得られた粗生成物を再結晶(溶液:ヘキサン、酢酸エチル)させた後に吸引ろ過し、得られたろ物を乾燥することにより、2−ブロモ−4H−チエノ[3.2−b]ピロール−5−カルボン酸エチルエステル(d−1)を得た(収量:12.1g、収率:73.8%)。
【0239】
更に、500mL容フラスコに化合物(d−1)(6.0g、22mmol)を入れ、エタノール(200mL)、水酸化ナトリウム(12.4g、310mmol)を水100mLに溶解した水溶液を加え、1時間還流撹拌した。還流撹拌後の溶液は、放冷した後に6mol/L塩酸を加えて酸性に調整した後に、水を加えて吸引ろ過を行い、得られたろ物を真空乾燥することにより、2−ブロモ−4H−チエノ[3.2−b]ピロール−5−カルボン酸(d−2)の灰色固体を得た(収量:4.1g、収率:75.8%)。
【0240】
続いて、300mL容三口フラスコに化合物(d−2)(4.0g、16.3mmol)、トリフルオロ酢酸(100mL)を入れ、40℃で攪拌した。化合物(d−2)が溶解した後、発泡がおさまるまで、15分間撹拌した。撹拌後の溶液に、無水トリフルオロ酢酸(36mL)を加えて80℃で4時間反応させた。反応終了後、氷を入れた飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に、反応液を加え、溶液を中和した後、吸引ろ過を行い、真空乾燥し、化合物(d−3)の粗製物を得た。
【0241】
更に、アルゴン気流下、2L容フラスコに、化合物(d−3)とジクロロメタン(1L)を加え、室温で5分間撹拌した。トリエチルアミン(12mL)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(16mL)を滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で分離精製し、2,8−ジブロモ−11−トリフルオロメチル−ジチエノ[2,3−b][3,2−g]−5,5−ジフルオロ−5−ボラ−3a,4a−ジチオ−s−インダセン(d−4)の濃青緑色固体を得た(収量:580mg、収率:13.4%)。
【0242】
最後に、アルゴン気流下、化合物(d−4)(200mg、0.378mmol)、4−メトキシフェニルホウ酸(240mg、1.6mmol)、炭酸ナトリウム(120mg、1.2mmol)、トルエン/THF/水=1:1:1(60mL)を200mL容三口フラスコに加え、アルゴンガスで30分間バブリングした後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(22mg)を加えて、80℃で4時間カップリング反応した。冷却後、反応液に水10mLを加え、ジエチルエーテルで3回抽出した。得られた有機相を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=20/1(体積比))で分離精製し、近赤外蛍光色素Dの濃緑色結晶を得た(収量:110mg、収率:49.8%)。
【0243】
1H−NMR(300MHz,CD
2Cl
2):δ7.76(d,4H),δ7.34(s,2H),δ7.32(s,2H),δ7.03(d,4H),δ3.91(s,6H)ppm。
【0244】
【化52】
【0245】
[製造例5]近赤外蛍光色素Eの合成
製造例4のカップリング反応において、4−メトキシフェニルホウ酸の代わりにチオフェン−2−ホウ酸(205mg、1.6mmol)を使用した以外は、製造例4と同様の操作を行い、近赤外色素Eの濃緑色結晶を得た(収量:94mg、収率:46.4%)。
【0246】
1H−NMR(300MHz,CD
2Cl
2):δ7.57(m,4H),δ7.54(d,2H),δ7.53(s,2H),δ7.34(s,2H),δ7.24(m,2H)ppm。
【0247】
【化53】
【0248】
[実施例4]近赤外蛍光色素Bの特性評価
実施例1において、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例2で合成した近赤外蛍光色素Bを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られた色素含有フィルムの吸収スペクトル、蛍光スペクトル、及び蛍光量子収率を実施例1と同様にして測定したところ、吸収スペクトルのピーク波長が739nmであり、蛍光スペクトルのピーク波長が758nm、833nmであり、蛍光量子収率は37%であった。さらに、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性を評価したところ、視認性は非常に良かった。
【0249】
なお、近赤外蛍光検出カメラには、励起光源として中心波長740nmのLEDリング照明器を備え、800nmより長波長の光を透過する光学フィルタを挿入した一般的なCMOSカメラを使用した。
【0250】
また、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例2で合成した近赤外蛍光色素Bを使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、試験液から近赤外蛍光色素Bに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Bが溶出しないことが明らかとなった。この結果からも、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得ることが明らかである。
【0251】
[実施例5] 近赤外蛍光色素Cの特性評価
実施例1において、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例3で合成した近赤外蛍光色素Cを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られた色素含有フィルムの吸収スペクトル、蛍光スペクトル、及び蛍光量子収率を実施例1と同様にして測定したところ、吸収スペクトルのピーク波長が741nmであり、蛍光スペクトルのピーク波長が782nmであり、蛍光量子収率は14%であった。さらに、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性を評価したところ、視認性は良かった。
【0252】
また、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例3で合成した近赤外蛍光色素Cを使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、試験液から近赤外蛍光色素Cに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Cが溶出しないことが明らかとなった。この結果からも、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得ることが明らかである。
【0253】
[実施例6] 近赤外蛍光色素Dの特性評価
実施例1において、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例4で合成した近赤外蛍光色素Dを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られた色素含有フィルムの吸収スペクトル、蛍光スペクトル、及び蛍光量子収率を実施例1と同様にして測定したところ、吸収スペクトルのピーク波長が737nmであり、蛍光スペクトルのピーク波長が765nmであり、蛍光量子収率は17%であった。さらに、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性を評価したところ、視認性は良かった。
【0254】
また、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例4で合成した近赤外蛍光色素Dを使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、試験液から近赤外蛍光色素Dに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Dが溶出しないことが明らかとなった。この結果からも、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得ることが明らかである。
【0255】
[実施例7] 近赤外蛍光色素Eの特性評価
実施例1において、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例5で合成した近赤外蛍光色素Eを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られた色素含有フィルムの吸収スペクトル、蛍光スペクトル、及び蛍光量子収率を実施例1と同様にして測定したところ、吸収スペクトルのピーク波長が741nmであり、蛍光スペクトルのピーク波長が772nmであり、蛍光量子収率は11%であった。さらに、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性を評価したところ、視認できた。
【0256】
また、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例5で合成した近赤外蛍光色素Eを使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、試験液から近赤外蛍光色素Eに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Eが溶出しないことが明らかとなった。この結果からも、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得ることが明らかである。
【0257】
[実施例8] 近赤外蛍光色素Aと近赤外蛍光色素Bとの混合物の特性評価
実施例1において、近赤外蛍光色素A(5mg)に代えて、近赤外蛍光色素A(2.5mg)と製造例2で合成した近赤外蛍光色素B(2.5mg)の混合物を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られた色素含有フィルムの吸収スペクトル、蛍光スペクトル、及び蛍光量子収率を実施例1と同様にして測定したところ、吸収スペクトルのピーク波長が735nmであり、蛍光スペクトルのピーク波長が755nm、831nmであり、蛍光量子収率は32%であった。さらに、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性を評価したところ、視認性は非常に良かった。
【0258】
また、近赤外蛍光色素A(100mg)に代えて、近赤外蛍光色素A(50mg)と製造例2で合成した近赤外蛍光色素B(50mg)の混合物を使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、試験液から近赤外蛍光色素Eに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Eが溶出しないことが明らかとなった。この結果からも、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得ることが明らかである。
【0259】
[比較例1]
近赤外蛍光色素Aに代えて、下記式で表される近赤外蛍光色素IR−140(シグマアルドリッチジャパン(株)社製)を使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化し、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、得られた試験液は、IR−140に由来するピーク波長が812nmの吸収スペクトルと、発光ピーク波長が846nmの蛍光スペクトルを示した。以上の結果から、IR−140がフィルム中から溶出していることは明らかであり、当該色素は安全性の観点から医療用インプラントには応用困難であった。
【0260】
【化54】
【0261】
[製造例6]近赤外蛍光色素Fの合成
近赤外蛍光色素Fは、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照にして、以下のように行った。
【0262】
300mL容三口フラスコに、4−tert−ブチルアニリン(29.8g、0.2mol)、6mol/L塩酸(100mL)を加え、還流しながらクロトンアルデヒド(15.4g、0.22mol)を滴下し、さらに2時間還流した。還流を停止し、該300mL容三口フラスコ内の反応液に対して、熱いうちに塩化亜鉛(27.2g、0.2mol)を加えて、室温で一晩撹拌した。上澄み液を除き、黄色いシロップ状の残渣にイソプロパノールを加えて2時間還流した。得られた混合物を70℃に冷却し、石油エーテル(200mL)を加え、析出した結晶を濾集し、ジエチルエーテルで洗浄後、乾燥させることにより、亜鉛錯体を得た。この亜鉛錯体を水/アンモニア(120mL/60mL)の混合液に加え、ジエチルエーテルジエチルエーテル(80mL)で3回抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して6−tert−ブチル−2−メチル−キノリン(f−1)の黄色液体を得た(収量16.2g、収率41%)。
【0263】
次に、200mL容二口フラスコに、化合物(f−1)(16.0g、80mmol)、クロロホルム(50mL)を入れて撹拌し、トリクロロイソシアヌル酸(6.52g、28mmol)を分割しながら加えた。得られた混合物を1時間還流後、析出した固体を濾過、クロロホルムで洗浄し、得られた有機層を1mol/Lの硫酸で3回抽出した。回収された水層を合わせて、炭酸ナトリウム水溶液でpH3になるよう調整し、ジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して2−クロロメチル−6−tert−ブチル−キノリン(f−2)の単黄色結晶を得た(収量4.8g、収率25.7%)。
【0264】
さらに、100mL容三口フラスコに、化合物(f−2)(4.7g、20mmol)、シアン化ナトリウム(1.47g、30mmol)、少量のヨウ化ナトリウム、DMF(50mL)を入れ、60℃で2時間反応した。反応液を冷却後、水(200mL)/酢酸エチル(300mL)で抽出し、得られた酢酸エチル層をさらに水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮し、石油エーテルで再結晶し、2−(6−tert−ブチルキノリン−2−イル)アセトニトリル(f−3)の黄色結晶を得た(収量1.9g、収率42.4%)。
【0265】
続いて、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、製造例2で得られた化合物(b−2)(2.18g、4.0mmol)、化合物(f−3)(1.9g、8.5mmol)、脱水トルエン(68mL)を加え、加熱還流した。加熱還流下、オキシ塩化リン(2.62mL、28mmol)をシリンジで滴下し、さらに2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン(40mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にかけて不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、前駆体(f−4)の緑色固体を得た(収量:1.84g、収率:48%)。
【0266】
最後に、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、前駆体(f−4)(1.72g、1.8mmol)、トルエン(45mL)、トリエチルアミン(4.35mL、31.4mmol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.88mL、62.7mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応液を氷冷し、析出した固体を濾別後、当該固体を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、50%メタノール水溶液及びメタノールで洗浄し、減圧乾燥させた。得られた残渣をトルエンに溶解し、メタノールを加えて、沈殿させることにより、近赤外蛍光色素Fの緑色固体を得た(収量:1.10g、収率:58%)。
【0267】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=8.42(m、2H)、8.14(d、2H)、7.74(dd、2H)、7.72(d、4H)、7.66(m、4H)、7.06(m、4H)、4.08(t、4H)、1.85(m、4H)、1.53(m、4H)、1.45−1.2(m、16H)、1.36(s、18H)、0.91(t、6H)ppm。
【0268】
【化55】
【0269】
[製造例7]近赤外蛍光色素Gの合成
近赤外蛍光色素Gは、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照し、以下のように行った。
【0270】
アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、水素化ナトリウム(60%分散体、流動パラフィン)(4.0g、100mmol)、脱水DMF(40mL)を加え、0℃に冷却した。同温で撹拌しながらシアノ酢酸tert−ブチルエステル(11.9g、85mmol)をゆっくりと加え、室温で1時間撹拌した。次いで、2−クロロ−4,6−ジメチルピリミジン(10g、70mmol)を加えて、90℃で36時間反応した。反応液を5%塩化ナトリウム水溶液(200ml)が入った三角フラスコに注ぎ、酢酸で中和した。析出した黄色沈殿物を濾集し、水で洗浄後、乾燥させることにより、シアノ−(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)酢酸tert−ブチルエステル(g−1)を得た(収量9.8g、収率56.9%)。
【0271】
次に、300mL容三口フラスコに、化合物(g−1)(9.8g、40mmol)、ジクロロメタン(60mL)、トリフルオロ酢酸(30mL)を加え、室温で終夜反応した。反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液で中和し、ジクロロメタン層を分離後、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/5)で精製し、(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)アセトニトリル(g−2)の白色結晶を得た(収量0.85g、収率14.5%)。
【0272】
続いて、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、製造例2で得られた化合物(b−2)(1.36g、2.5mmol)、化合物(g−2)(0.81g、5.5mmol)、脱水トルエン(50mL)を加え、加熱還流した。加熱還流下、塩化ホスホリル(2.34mL、25mmol)をシリンジで滴下し、さらに2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン(40mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にかけて不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=50/1)で精製し、前駆体(g−3)の緑色固体を得た(収量:0.54g、収率:27%)。
【0273】
最後に、アルゴン気流下、100mL容二口フラスコに、前駆体(g−3)(522mg、0.65mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(258mg、2.0mmol)、ジクロロメタン(20mL)を入れ、還流しながらクロロジフェニルボラン(600mg、3.0mmol)を加え、終夜反応した。反応液を水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をメタノールで洗浄後、カラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=100/1)で精製し、近赤外蛍光色素Gの緑色固体を得た(収量:0.24g、収率:32.6%)。
【0274】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.11(m、20H)、6.43(m、4H)、6.25(s、2H)、6.02(m、4H)、3.92(t、4H)、2.27(s、6H)、1.78(m、10H)、1.5−1.2(m、20H)、0.85(t、6H)ppm。
【0275】
【化56】
【0276】
[製造例8]近赤外蛍光色素Hの合成
近赤外蛍光色素Hは、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照し、以下のように行った。
【0277】
1−ブロモオクタン(48g、249mmol)に代えて、1−ブロモ−2−エチルヘキサン(48g、249mmol)を使用した以外は製造例2と同様の操作を行い、3,6−(4−(2−エチルヘキシル)オキシフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン(h−2)の赤色固体を得た(収量:4.6g)。
【0278】
次に、100mL容二口フラスコに、2−アミノ−4−tert−ブチルフェノール(5.24g、31.7mmol)、2−シアノ−アセチミディック酸エチルエステル塩酸塩(4.45g、33.3mmol)、ジクロロメタン(30mL)を加え、終夜還流した。反応液をジクロロメタン(100mL)で希釈し、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を留去して(5−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)−アセトニトリル(h−3)の黄色液体を得た(収量6.3g、収率88%)。
【0279】
続いて、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに、化合物(h−2)(1.64g、3.0mmol)、化合物(h−3)(1.41g、6.6mmol)、脱水トルエン(50mL)を加え、加熱還流した。加熱還流下、塩化ホスホリル(2.34mL、25mmol)をシリンジで滴下し、さらに2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン(40mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にかけて不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で精製し、前駆体(h−4)の青緑色固体を得た(収量:0.98g、収率:35%)。
【0280】
最後に、アルゴン気流下、100mL容二口フラスコに、前駆体(h−4)(973mg、1.0mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(387mg、3.0mmol)、ジクロロメタン(30mL)を入れ、還流しながらクロロジフェニルボラン(900mg、4.5mmol)を加え、終夜反応した。反応液を水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をメタノールで洗浄後、カラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で精製し、近赤外蛍光色素Hの緑色固体を得た(収量:0.42g、収率:35%)。
【0281】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.11(m、24H)、6.62(m、4H)、6.32(m、6H)、3.8−3.9(m、4H)、2.27(s、6H)、1.8(m、2H)、1.6−1.3(m、16H)、1.38(s、18H)、0.9−1.0(m、12H)ppm。
【0282】
【化57】
【0283】
[実施例9]近赤外蛍光色素Fの特性評価結果
実施例1において、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例6で合成した近赤外蛍光色素Fを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られた色素含有フィルムの吸収スペクトル、蛍光スペクトル、及び蛍光量子収率を実施例1と同様にして測定したところ、吸収スペクトルのピーク波長が764nmであり、蛍光スペクトルのピーク波長が776nm、865nmであり、蛍光量子収率は38%であった。
【0284】
また、近赤外蛍光色素Fの含有フィルムと色素不含フィルムを並べ、実施例4に記載の近赤外蛍光検出カメラで撮影した写真を
図1に、さらに、これらのフィルム上に厚さ2mmの豚肉を置いてカメラで撮影した写真を
図2に示した。結果より明らかなように、本発明に係る樹脂組成物からなるフィルムは、近赤外蛍光カメラでの視認性が優れ(
図1)、厚さ2mmの豚肉ごしでもはっきりと観察することができた(
図2)。
【0285】
さらに、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例6で合成した近赤外蛍光色素Fを使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、試験液から近赤外蛍光色素Fに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Fが溶出しないことが明らかとなった。この結果からも、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得ることが明らかである。
【0286】
[実施例10]近赤外蛍光色素Gの特性評価結果
実施例1において、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例7で合成した近赤外蛍光色素Gを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られた色素含有フィルムの吸収スペクトル、蛍光スペクトル、及び蛍光量子収率を実施例1と同様にして測定したところ、吸収スペクトルのピーク波長が756nmであり、蛍光スペクトルのピーク波長が778、870nmであり、蛍光量子収率は35%であった。さらに、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性を評価したところ、視認できた。
【0287】
また、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例7で合成した近赤外蛍光色素Gを使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、試験液から近赤外蛍光色素Gに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Gが溶出しないことが明らかとなった。この結果からも、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得ることが明らかである。
【0288】
[実施例11]近赤外蛍光色素Hの特性評価結果
実施例1において、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例8で合成した近赤外蛍光色素Hを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、色素含有樹脂を得、得られた色素含有樹脂をフィルム化した。得られた色素含有フィルムの吸収スペクトル、蛍光スペクトル、及び蛍光量子収率を実施例1と同様にして測定したところ、吸収スペクトルのピーク波長が744nmであり、蛍光スペクトルのピーク波長が787、865nmであり、蛍光量子収率は36%であった。さらに、当該フィルムの近赤外蛍光検出カメラでの視認性を評価したところ、視認できた。
【0289】
また、近赤外蛍光色素Aに代えて、製造例8で合成した近赤外蛍光色素Hを使用した以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた色素含有フィルムからの色素の溶出性を試験した。この結果、試験液から近赤外蛍光色素Hに由来する吸収及び蛍光は認められず、TPUフィルムから近赤外蛍光色素Hが溶出しないことが明らかとなった。この結果からも、本発明に係る樹脂組成物を用いて成形した医療用インプラントは、安全性の高いものになり得ることが明らかである。
【0290】
[実施例12]近赤外蛍光色素Aのカメラ視認性結果
実施例1において、近赤外蛍光色素Aを30mg使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、濃度が0.03質量%の近赤外蛍光色素Aを含有するフィルムを得た(色素A0.03%フィルム)。この色素A0.03%フィルムと、実施例1で得た濃度が0.005質量%の近赤外蛍光色素Aを含有するフィルム(色素A0.005%フィルム)、更に色素不含有のフィルム(色素不含フィルム)を並べ、実施例4に記載の近赤外蛍光検出カメラで撮影した写真を
図3に、また、これらのフィルム上に厚さ2mmの豚肉を置いてカメラで撮影した写真を
図4に示した。結果より明らかなように、本発明に係る樹脂組成物からなるフィルムは、近赤外蛍光カメラでの視認性が優れ(
図3)、厚さ2mmの豚肉ごしでもはっきりと観察することができた(
図4)。
【0291】
[実施例13]近赤外蛍光色素Bのカメラ視認性結果
実施例1において、近赤外蛍光色素A(5mg)に代えて、製造例2で合成した近赤外蛍光色素B(30mg)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、濃度が0.03質量%の近赤外蛍光色素Bを含有するフィルムを得た(色素B0.03%フィルム)。この色素B0.03%フィルムと、実施例4で得た濃度が0.005質量%の近赤外蛍光色素Bを含有するフィルム(色素B0.005%フィルム)、更に色素不含有のフィルム(色素不含フィルム)を並べ、実施例4に記載の近赤外蛍光検出カメラで撮影した写真を
図5に、また、これらのフィルム上に厚さ2mmの豚肉を置いてカメラで撮影した写真を
図6に示した。結果より明らかなように、本発明に係る樹脂組成物からなるフィルムは、近赤外蛍光カメラでの視認性が優れ(
図5)、厚さ2mmの豚肉ごしでもはっきりと観察することができた(
図6)。
【0292】
[実施例14]近赤外蛍光色素Bを含有するポリスチレンフィルムの評価
実施例4において、TPUペレットに代えてポリスチレン(ディックスチレン(商標)LP−6000、DIC社製)を使用し、さらに混練温度を230℃にした以外は実施例4と同様にして色素濃度0.005質量%のポリスチレンフィルムを作成し、実施例4と同様の評価を行い、結果を表1ならびに表2に示した。
【0293】
[実施例15]近赤外蛍光色素Bを含有するPETフィルムの評価
実施例4において、TPUペレットに代えてPET(バイロン(商標)SI−173C、東洋紡社製)を使用し、さらに混練温度を210℃にした以外は実施例4と同様にして色素濃度0.005質量%のPETフィルムを作成し、実施例4と同様の評価を行い、結果を表1ならびに表2に示した。
【0294】
[実施例16]近赤外蛍光色素Bを含有するポリエチレンフィルムの評価
実施例4において、TPUペレットに代えてポリエチレン(UBEポリエチレン(商標)F522N、宇部興産社製)を使用し、さらに混練温度を130℃にした以外は実施例4と同様にして色素濃度0.005質量%のポリエチレンフィルムを作成し、実施例4と同様の評価を行い、結果を表1ならびに表2に示した。
【0295】
[実施例17]近赤外蛍光色素Bを含有するPPフィルムの評価
実施例4において、TPUペレットに代えてPPペレット(製品名:PC630A、サンアロマー社製)を使用した以外は実施例4と同様にして色素濃度0.005質量%のPPフィルムを作成し、実施例4と同様の評価を行い、結果を表1ならびに表2に示した。
【0296】
[実施例18]近赤外蛍光色素Fを含有するPPフィルムの評価
実施例4において、近赤外蛍光色素Bに代えて近赤外蛍光色素Fを、TPUペレットに代えてPPペレット(製品名:PC630A、サンアロマー社製)を使用した以外は実施例4と同様にして色素濃度0.005質量%のPPフィルムを作成し、実施例4と同様の評価を行い、結果を表1ならびに表2に示した。
【0297】
実施例1、2、4〜11、及び14〜18の結果を表1に示す。表1の「カメラ視認性」の欄中、「◎」は視認性が非常に良い、「○」は視認性が良い、「△」は視認できる、「×」は視認性が悪い、をそれぞれ意味する。表1より、本発明の樹脂組成物から得られたフィルムは、何れも700nm以上に発光を有し、高い量子収率で、近赤外カメラによる視認性に優れることが明らかである。
【0298】
【表1】
【0299】
実施例3〜11、14〜18、及び比較例1の溶出試験の結果を表2に示す。表2より、本発明の樹脂組成物から得られたフィルムは、その溶出液から近赤外蛍光色素に起因する発光が観察できなかったことから、近赤外蛍光色素の溶出が無く、医療用途に使用できる安全なものであることが明らかである。これに対し、比較例1の樹脂組成物から得られたフィルムは、その溶出液から近赤外蛍光色素に起因する発光が観察され、色素が溶出することが明らかになった。
【0300】
【表2】