(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記医療品が、前記発光剤を表面に塗布した発光可能な縫合針、前記発光剤を樹脂素材に混練した合成糸から形成した発光可能な縫合糸、前記合成糸を織り込んだ発光可能な布状消耗品、前記合成糸を織り込むことなく含んだ発光可能な不織布状消耗品、発光剤を表面に含むハサミ、または発光剤を表面に含むピンセットである、請求項7に記載の医療品の使用状況確認装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、医療品の現在位置を確認することによって医療品の遺残事故を防止することを目的としており、医療品の破損を確認することはそもそもできない。また、存否を確認する対象となる医療品が、RFIDタグを取り付けることが可能な大きさを有する医療品に限定されてしまう。
【0008】
このように、医療品の構成部材における一部が破損にともなって分離片となるような医療品を使用する状況において、医療品の破損状況を、医療品の使用状況として確認できるようした技術は提案されていないのが実情である。また、縫合針や縫合糸などのようにRFIDタグを取り付けることができないぐらい小さい医療品の存否を、医療品の使用状況として確認できるようした技術は提案されていないのが実情である。
【0009】
なお、特許文献3の技術においては、インプラントを識別し易くするために、インプラントに蛍光材料のコーティングを施している。しかしながら、使用されている蛍光は、目視で視認可能な蛍光、すなわち可視光蛍光である。特許文献3には、近赤外蛍光を利用する技術は開示されていない。
【0010】
特許文献4の技術においては、医療品である注射針の針と血管との位置関係を、平面画像としてモニターに出力するために、近赤外線光源を有する近赤外線カメラで血管を可視化している。しかしながら、使用される注射針の形状が予め特定されることを前提としており、皮下に挿入された注射針の先端位置を推定しているにすぎない。特許文献4には、皮下に挿入された注射針を可視化する技術は開示されていない。
【0011】
本発明は、医療品の構成部材における一部が破損にともなって分離片となるような医療品を使用する状況における医療品の破損状況、または縫合針や縫合糸などのように比較的小さい医療品の存否といった、医療品の使用状況を確実に確認できるようした、近赤外蛍光を発する医療品、および医療品の使用状況確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の近赤外蛍光を発する医療品は、
波長が600nm〜1400nmの近赤外励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な構成部材を少なくとも1つ備えている。構成部材における一部が破損にともなって分離片として構成部材から分離された場合にも、発光剤が分離片の表面にも含まれている。
構成部材は、皮下埋め込み型ポートや密封容器において用いられ針が挿通されるセプタム、または、留置針における硬質の内針が挿通される軟質の外針である。
【0013】
また、本発明の近赤外蛍光を発する医療品は、
波長が600nm〜1400nmの近赤外励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な医療品であって、前記発光剤を表面に塗布した発光可能な縫合針、前記発光剤を樹脂素材に混練した合成糸から形成した発光可能な縫合糸、前記合成糸を織り込んだ発光可能な布状消耗品
、前記合成糸を織り込むことなく含んだ発光可能な不織布状消耗品
、発光剤を表面に含むハサミ、または発光剤を表面に含むピンセットである。
【0014】
上記目的を達成する本発明の医療品の使用状況確認装置は、
波長が600nm〜1400nmの近赤外励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な構成部材を少なくとも1つ備え、前記構成部材における一部が破損にともなって分離片として前記構成部材から分離された場合にも前記発光剤が前記分離片の表面にも含まれる医療品と、
前記発光剤を励起させる
前記近赤外励起光を出射する光源を備え、
生体外から前記構成部材に向けて前記光源から出射された
前記近赤外励起光を照射する照射部と、
前記近赤外励起光を遮断するとともに前記発光剤が発
し生体外に達する近赤外蛍光を透過させる光学フィルターと、
前記光学フィルターを透過した近赤外蛍光を受光する撮像部と、
前記撮像部によって撮影した画像を表示する表示部と、を有している。前記表示部には、前記構成部材の近赤外蛍光に基づく画像が表示されるとともに、前記構成部材に破損が生じた場合に前記分離片の近赤外蛍光に基づく画像が表示される。
医療品の使用状況確認装置は、さらに、近赤外蛍光に基づく画像において第1の発光領域と前記第1の発光領域よりも面積が小さい第2の発光領域とを検出した場合に、前記構成部材に破損が生じたことを報知する制御部を有している。
【0015】
また、本発明の医療品の使用状況確認装置は、
波長が600nm〜1400nmの近赤外励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な医療品と、
前記発光剤を励起させる
前記近赤外励起光を出射する光源を備え、
生体外から前記医療品の存否を確認する術野に向けて前記光源から出射された
前記近赤外励起光を照射する照射部と、
前記近赤外励起光を遮断するとともに前記発光剤が発
し生体外に達する近赤外蛍光を透過させる光学フィルターと、
前記光学フィルターを透過した近赤外蛍光を受光する撮像部と、
前記撮像部によって撮影した画像を表示する表示部と、を有している。前記術野内に前記医療品が存在する場合には、前記医療品の近赤外蛍光に基づく画像が前記表示部に表示される。
医療品の使用状況確認装置は、さらに、近赤外蛍光に基づく画像を検出した場合に、前記術野内に前記医療品が存在することを報知する制御部を有している。
【発明の効果】
【0016】
近赤外蛍光を発する医療品は、
波長が600nm〜1400nmの近赤外励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な構成部材を少なくとも1つ備えている。そして、構成部材における一部が破損にともなって分離片として構成部材から分離された場合にも、発光剤が分離片の表面にも含まれている。
構成部材は、皮下埋め込み型ポートや密封容器において用いられ針が挿通されるセプタム、または、留置針における硬質の内針が挿通される軟質の外針である。したがって、医療品の使用状況確認装置を適用することによって、医療品における構成部材の位置を正確かつ簡単に確認することができる。さらに、構成部材に破損が生じたことや破損の状況を正確かつ簡単に確認することができ、医療品の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。
【0017】
近赤外蛍光を発する医療品は、
波長が600nm〜1400nmの近赤外励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含んだ、発光可能な縫合針、発光可能な縫合糸、発光可能な布状消耗品
、発光可能な不織布状消耗品
、発光可能なハサミまたはピンセットである。したがって、医療品の使用状況確認装置を適用することによって、医療品の存否を確認できる。表示部に近赤外蛍光に基づく画像が現れたときには、使用者は、医療品が術野に存在すること、およびそれらが存在する位置を正確かつ簡単に確認することができ、医療品を取り除く等の医療品の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。
【0018】
医療品の使用状況確認装置によれば、構成部材の近赤外蛍光に基づく画像が表示部に表示されるとともに、構成部材に破損が生じた場合に分離片の近赤外蛍光に基づく画像が表示部に表示される。
制御部は、近赤外蛍光に基づく画像において第1の発光領域と前1の発光領域よりも面積が小さい第2の発光領域とを検出した場合に、構成部材に破損が生じたことを報知する。したがって、医療品における構成部材の位置を正確かつ簡単に確認することができる。さらに、構成部材に破損が生じたことや破損の状況を正確かつ簡単に確認することができ、医療品の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。
【0019】
医療品の使用状況確認装置によれば、術野内に医療品が存在する場合には、医療品の近赤外蛍光に基づく画像が表示部に表示される。
制御部は、近赤外蛍光に基づく画像を検出した場合に、術野内に医療品が存在することを報知する。したがって、医療品が術野に存在すること、およびそれらが存在する位置を正確かつ簡単に確認することができ、医療品を取り除く等の医療品の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。さらに、近赤外蛍光に基づいて存否を確認するため、存否の確認の対象となる医療品の大きさに制限を受けることがない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医療品の使用状況確認装置10を示す説明図、
図2は、
図1に示される皮下埋め込み型ポート81を示す斜視図である。
【0023】
図1を参照して、使用状況を確認する対象となる近赤外蛍光を発する医療品80は、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な構成部材83を少なくとも1つ備えている。そして、構成部材83における一部が破損にともなって分離片83aとして構成部材83から分離された場合にも発光剤が分離片83aの表面にも含まれている。第1の実施形態に係る医療品の使用状況確認装置10は、概説すると、近赤外蛍光を発する上記医療品80と、発光剤を励起させる励起光を出射する光源32を備え医療品80に向けて光源32から出射された励起光を照射する照射部30と、励起光を遮断するとともに発光剤が発する近赤外蛍光を透過させる光学フィルター40と、光学フィルター40を透過した近赤外蛍光を受光するカメラ50(撮像部に相当する)と、カメラ50によって撮影した画像を表示するモニター60(表示部に相当する)と、を有している。この医療品の使用状況確認装置10にあっては、構成部材83の近赤外蛍光に基づく画像がモニター60に表示されるとともに、構成部材83に破損が生じた場合には分離片83aの近赤外蛍光に基づく画像がモニター60に表示される。以下、詳述する。
【0024】
図1に示される医療品80は、血管内に薬剤を注入するために皮膚20の下に埋め込まれる皮下埋め込み型ポート81である。皮下埋め込み型ポート81は、点滴などを繰り返す患者らに使用される。
図2にも示すように、皮下埋め込み型ポート81は、注液室82aを形成するハウジング82と、ハウジング82の上部に取り付けられたセプタム83と、ハウジング82に取り付けられたカテーテル84とを有している。カテーテル84の一端は注液室82aに連通し、他端は血管21の内部に挿入されている。セプタム83は、密閉性を高めるために圧縮力を受けるようにハウジング82に取り付けられている。セプタム83は、フーバー針などの注射針90が挿通される。
【0025】
注射針90をセプタム83の上面に対して傾斜させて穿刺した場合などにおいて、注射針90のヒール部によってセプタム83の一部が削り取られて分離片としてのコア83aが生じる虞がある。皮下埋め込み型ポート81においては、発光可能な構成部材は、少なくともセプタム83である。コア83aが薬剤とともに血管21内に入ることがないようにするため、コアリングのような破損状況を、医療品80の使用状況として確認することが可能となるからである。さらに、セプタム83が近赤外蛍光を発することによって、皮下埋め込み型ポート81が埋め込まれている部位や、穿刺すべき位置を正確に確認することができるからである。なお、セプタム83に加えて、ハウジング82を発光可能にしたり、カテーテル84の一部または全部を発光可能にしたりしてもよい。
【0026】
構成部材としてのセプタム83は、発光剤が表面に塗布され、または発光剤が練り込まれた材料から形成されている。セプタム83自体を発光させることができ、さらには、セプタム83における一部が破損してコア83aが生じた場合に、発光剤がコア83aの表面に含まれることになり、コア83aも発光させることができる。図示例のセプタム83は、発光剤を練り込んだシリコーンゴムから形成されている。
【0027】
発光剤は、人体もしくは動物に使用可能な薬剤であって、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する限りにおいて適宜の材料を用いることができる。励起波長は、発光剤を発光させるのに適した波長域であり、かつ、近赤外光の波長領域であることが好ましく、600nm〜1400nmの波長域のものを使用することができる。近赤外光は、皮膚・脂肪・筋肉などの人体組織の透過性が高く、生体の組織表面下5mm〜20mm程度まで透過可能である。したがって、生体内に埋め込まれて用いられる皮下埋め込み型ポート81であっても、セプタム83が埋め込まれた位置まで励起光を透過させ、セプタム83および破損によって生じたコア83aを発光させることができる。
【0028】
具体的には、発光剤は、励起光の照射により近赤外蛍光を発するインドシアニングリーン(ICG)、あるいは本件出願人による特願2010−23479号(特開2011−162445号公報)に開示されるようなアゾ−ホウ素錯体化合物を用いることができる。インドシアニングリーンは、約800nmの波長域の近赤外励起光を吸収して励起され、約850nmの近赤外蛍光を発する色素である。アゾ−ホウ素錯体化合物は、ヒドラゾン化合物をホウ素錯体化することによって、光吸収特性と発光特性とを向上させ、強い近赤外蛍光を放出できるようにした化合物である。アゾ−ホウ素錯体化合物は、高分子樹脂に分散させることも容易であり、樹脂に分散させて蛍光フィルムを作製した場合にも、化合物単独の場合と同様に、優れた光吸収特性と発光特性とを発揮する。アゾ−ホウ素錯体化合物の光吸収特性および発光特性の一例を挙げると、化合物単独の場合には、吸収極大波長が674nm、蛍光極大波長が743nmであり(公開公報における表1の実施例1(2)の行を参照)、蛍光フィルムを作製した場合には、吸収極大波長が662nm、蛍光極大波長が702nmである(公開公報における表2の実施例1(2)の行を参照)。
【0029】
照射部30は、シャーシ31と、シャーシ31内に配置され発光剤を励起させる励起光を出射する光源32と、を有している。シャーシ31は、励起光を透過しないアルミなどの金属材料などから形成されている。光源32から発した励起光は、生体内に埋め込まれた皮下埋め込み型ポート81に向けて照射される。光源32は、例えば、600nm〜1400nmの波長域の近赤外励起光を発するLEDなどを使用することができる。
【0030】
光学フィルター40は、カメラ50内の撮像素子とレンズとの間に挿入したり、カメラ50の前に配置したりすることができる。光学フィルター40は、可視光に対する透過率を近赤外蛍光に対する透過率よりも低く設定することが好ましい。微弱な近赤外蛍光像を可視光像上に明瞭に表示することができるからである。
【0031】
カメラ50は、光学フィルター40を透過した近赤外蛍光を撮影する近赤外線用のCCDカメラや、CMOSカメラなどが適用される。CCDカメラは、Charge Coupled Device素子からなるカメラであり、CMOSカメラは、Complementary Metal Oxide Semiconductorを利用したカメラである。近赤外線CCDカメラなどで取り込んだデータは、ノイズ処理、エッジ処理、コントラスト強調などの画像処理および画像解析が施され、モニター60に表示する画像用データに変換される。
【0032】
カメラ50は、セプタム83の発光剤が発する近赤外蛍光を受光素子によって受光することにより、セプタム83の全体を撮像可能である。セプタム83の発光剤が発する近赤外蛍光が生体組織を透過し、これをカメラ50が受光しセプタム83を撮影する。カメラ50はまた、人体の輪郭等も同時に撮影する。
【0033】
なお、カメラ50による撮像はモノクロームであってもよいし、カラーであってもよい。カメラ50は、そのレンズの周りに上記の光源32が環状に設けられたものであってもよい。これにより、医療品80をより適正に撮影することが可能となる。
【0034】
モニター60は、カメラ50によって撮影した画像を表示し得る限りにおいて特に限定されない。卓上型のディスプレイでもよいし、ヘッドマウント型のディスプレイでもよい。表示する画像は、モノクロームまたはカラーのいずれでもよい。モニター60には、セプタム83の近赤外蛍光に基づく画像が表示され、セプタム83に破損が生じた場合にはコア83aの近赤外蛍光に基づく画像が表示される。使用者は、モニター60に表示される画像を見て、皮下埋め込み型ポート81におけるセプタム83の位置、セプタム83に破損が生じたことや破損の状況を確認する。
【0036】
図1に示すように、発光可能なセプタム83を備える皮下埋め込み型ポート81は、予め、患者の体内に埋め込まれている。
【0037】
皮下埋め込み型ポート81を介して血管21内に薬剤を注入するとき、照射部30によって、光源32から発した近赤外励起光を皮下埋め込み型ポート81に向けて照射する。近赤外励起光が生体を透過してセプタム83に照射されると、セプタム83が近赤外蛍光を発する。発光剤としてインドシアニングリーンを用いる場合は、発光剤は、約800nmの波長域の近赤外励起光を吸収して励起し、約850nmの近赤外蛍光を発する。
【0038】
セプタム83が発した近赤外蛍光は、光学フィルター40を透過し、カメラ50によって受光され、モニター60にセプタム83の近赤外蛍光に基づく画像が表示される。また、生体の表面で反射する反射光もカメラ50に受光されることにより、生体の輪郭画像もモニター60上にセプタム83とともに表示される。使用者は、モニター60に表示される画像を見て、皮下埋め込み型ポート81におけるセプタム83の位置を正確かつ簡単に確認することができる。セプタム83の位置は注射針90を穿刺する位置であるので、使用者は、穿刺位置を正確かつ簡単に確認することができる。
【0039】
注射針90をセプタム83に挿通するときにも、近赤外励起光を皮下埋め込み型ポート81に向けて照射している。
【0040】
注射針90のヒール部によってセプタム83の一部が削り取られてコア83aが生じることがある。発光剤がコア83aの表面に含まれていることから、コアリングが生じた場合、近赤外励起光がコア83aに照射されると、コア83aが近赤外蛍光を発する。
【0041】
コア83aが発した近赤外蛍光は、光学フィルター40を透過し、カメラ50によって受光され、モニター60にコア83aの近赤外蛍光に基づく画像が表示される。使用者は、モニター60に表示される画像を見て、セプタム83に破損が生じたことや破損の状況を正確かつ簡単に確認することができる。セプタム83の使用状況に応じて薬剤の注入を中止することによって、コア83aが薬剤とともに血管21内に入ることを未然に防止することができる。
【0042】
医療品の使用状況確認装置10は、医療品80の使用状況の確認にX線を使用していないことから、術者および患者がX線の被曝を受けるという問題は根本的に発生しない。しかも、X線を透過する樹脂製やゴム製の医療品80であっても、使用状況を確認することができる。
【0043】
以上説明したように、第1の実施形態の近赤外蛍光を発する皮下埋め込み型ポート81は、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能なセプタム83を備えている。そして、セプタム83における一部が破損にともなってコア83aとしてセプタム83から分離された場合にも発光剤がコア83aの表面にも含まれている。したがって、本実施形態の医療品の使用状況確認装置10を適用することによって、皮下埋め込み型ポート81におけるセプタム83の位置、穿刺位置を正確かつ簡単に確認することができる。さらに、セプタム83に破損が生じたことや破損の状況を正確かつ簡単に確認することができ、医療品80の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。
【0044】
セプタム83は、発光剤が表面に塗布され、または発光剤が練り込まれた材料から形成されているので、セプタム83自体を発光させることができ、さらには、セプタム83における一部が破損してコア83aが生じた場合に、発光剤がコア83aの表面に含まれることになり、励起光が照射されることによってコア83aも発光させることができる。
【0045】
第1の実施形態の医療品の使用状況確認装置10によれば、セプタム83の近赤外蛍光に基づく画像がモニター60に表示されるとともに、セプタム83に破損が生じた場合には、コア83aの近赤外蛍光に基づく画像がモニター60に表示される。したがって、皮下埋め込み型ポート81におけるセプタム83の位置、穿刺位置を正確かつ簡単に確認することができる。さらに、セプタム83に破損が生じたことや破損の状況を正確かつ簡単に確認することができ、医療品80の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。
【0046】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る医療品の使用状況確認装置11の構成を示す概略ブロック図である。第1の実施形態と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は一部省略する。
【0047】
第2の実施形態に係る医療品の使用状況確認装置11は、第1の実施形態と同様に、近赤外蛍光を発する皮下埋め込み型ポート81と、照射部30と、光学フィルター40と、カメラ50と、モニター60と、を有し、セプタム83の近赤外蛍光に基づく画像がモニター60に表示されるとともに、セプタム83に破損が生じた場合にはコア83aの近赤外蛍光に基づく画像がモニター60に表示される。
【0048】
第2の実施形態にあってはさらに、医療品の使用状況確認装置11は、近赤外蛍光に基づく画像において第1の発光領域と第1の発光領域よりも面積が小さい第2の発光領域とを検出した場合に、セプタム83に破損が生じたことを報知するコントローラー70(制御部に相当する)を有している。
【0049】
コアリングによって生じるコア83aの大きさは、セプタム83の大きさに比べて非常に小さい。このため、コア83aの近赤外蛍光に基づく画像の面積は、セプタム83の近赤外蛍光に基づく画像の面積に比べて非常に小さい。したがって、近赤外蛍光に基づく画像の中に第1の発光領域と第1の発光領域よりも面積が小さい第2の発光領域とが存在する場合には、コアリングによってコア83aが生じたと判断することができる。第1の発光領域がセプタム83の近赤外蛍光に基づく領域であり、第2の発光領域がコア83aの近赤外蛍光に基づく領域である。
【0050】
コントローラー70は、近赤外蛍光に基づく画像データに対して画像処理および画像解析を施し、発光領域を抽出し、複数個の発光領域を検出した場合にはそれぞれの発光領域の面積を算出する。コントローラー70は、面積が大きい方の発光領域を第1の発光領域と特定し、面積が小さい方の発光領域を第2の発光領域と特定する。コントローラー70は、第1の発光領域の面積に対して第2の発光領域の面積が予め設定されたしきい値(例えば、数%)以下であったときに、セプタム83に破損が生じたと判断する。そして、コントローラー70は、セプタム83に破損が生じたことを使用者に報知する。報知は、モニター60への表示や、警告音の発生によって行う。
【0051】
第2の実施形態の医療品の使用状況確認装置11によれば、近赤外蛍光に基づく画像において第1の発光領域と第1の発光領域よりも面積が小さい第2の発光領域とを検出した場合にセプタム83に破損が生じたことを報知するコントローラー70をさらに有しているので、第1の実施形態の作用効果に加えて、セプタム83に破損が生じたことや破損の状況を一層正確かつ簡単に確認することができ、医療品80の使用状況に応じた適切な措置をより迅速に施すことが可能となる。
【0052】
(医療品80の改変例)
近赤外蛍光を発する医療品80として、皮下埋め込み型ポート81のセプタム83を発光可能に構成した第1と第2の実施形態について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、例えば
図4、
図5に示すような医療品80にも適用可能である。
【0053】
図4に示される医療品80は、輸液製剤などが入れられた密封容器85である。このような密封容器85も、その構成部材として、注射針91が挿通されるセプタム86を有している。このセプタム86においてもコアリングが生じ得る。したがって、密封容器85におけるセプタム86も、発光剤を表面に塗布したり、発光剤が練り込まれた材料から形成したりすることが好ましい。セプタム86における一部が破損してコア86aが生じた場合に、発光剤がコア86aの表面に含まれることになり、コア86aを発光させることができるからである。
【0054】
そして、上述した医療品の使用状況確認装置10、11を適用することによって、密封容器85のセプタム86に破損が生じたことや破損の状況を正確かつ簡単に確認することができ、医療品80の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。特に、セプタム86と輸液製剤とが同色系のときや、輸液製剤が透明ではないときにはコア86aを目視確認し難いことから、医療品の使用状況確認装置10、11の適用が有利なものとなる。
【0055】
図5に示される医療品80は、針先を血管内に留置する留置針87であり、例えば人工透析における対外循環を行うときや、点滴により血管内に輸液するときなどに使用される。留置針87は、硬質の内針88と、内針88が挿通される軟質の外針89とを有している。内針88の先端を外針89の先端から突出させて穿刺するが、内針88の先端によって軟質の外針89の一部が削り取られることがある。削り取られた分離片89aが薬剤とともに血管内に入ることがないようにするため、留置針87における軟質の外針89の使用状況を確認する必要がある。
【0056】
そこで、このような留置針87にあっては、構成部材としての軟質の外針89を発光可能に構成する。軟質の外針89は、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含んでいる。発光剤を含む表面は、硬質の内針88が摺動する内表面、および外表面の両方であることが好ましい。外針89における一部が破損にともなって分離片89aとして外針89から分離された場合にも、発光剤が分離片89aの表面にも含まれるようにしてある。外針89は、発光剤を表面に塗布したり、発光剤が練り込まれた材料から形成したりすることが好ましい。外針89における一部が破損して分離片89aが生じた場合に、発光剤が分離片89aの表面に含まれることになり、分離片89aを発光させることができるからである。
【0057】
そして、上述した医療品の使用状況確認装置10、11を適用することによって、皮下埋め込み型ポート81のセプタム83の場合と同様にして、血管に穿刺された留置針87における軟質の外針89に破損が生じたことや破損の状況を正確かつ簡単に確認することができ、医療品80の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。
【0058】
なお、本発明は上述した医療品80(81、85、87)に限定されるものではなく、破損する虞があり、その使用状況を確認にしたい医療品80に広く適用することができる。その医療品80は、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な構成部材を少なくとも1つ備え、構成部材における一部が破損にともなって分離片として構成部材から分離された場合にも発光剤が分離片の表面に含まれるものであればよい。
【0059】
(近赤外蛍光の発光状況の観察例)
励起光が照射されることによって、医療品が近赤外蛍光を発する状況について説明する。
図6は、医療品が皮下に埋め込まれていない場合において、医療品が近赤外蛍光を発する状況を示す図であり、
図6(A)は励起光がオフのときを示し、
図6(B)は励起光がオンのときを示す図である。また、
図7は、医療品が皮下に埋め込まれた場合において、医療品が近赤外蛍光を発する状況を示す図であり、
図7(A)は励起光がオフのときを示し、
図7(B)は励起光がオンのときを示す図である。
【0060】
図6(A)(B)のそれぞれにおいて、2本のチューブ101、102のうち図中左側のチューブ101は、一般的に用いられる静脈用留置針の構成部材である軟質の外針である。図中右側のチューブ102は、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な近赤外蛍光チューブである。発光剤には、上述した公開公報(特開2011−162445号公報)における実施例1のアゾ−ホウ素錯体化合物を用いた。
【0061】
図6(A)(B)を比較すれば明らかなように、励起光を照射することによって、図中右側の近赤外蛍光チューブ102は近赤外蛍光を発し、近赤外蛍光に基づく画像がモニターに鮮明に表示された。
【0062】
図7には、医療品の構成部材が皮下において破損した状況を想定した例が示されている。マウスの皮下に、上記の近赤外蛍光チューブ102の断片103を埋め込んだ。
図7(A)(B)を比較すれば明らかなように、励起光を照射することによって、皮下に存在する近赤外蛍光チューブ102の断片103が近赤外蛍光を発し、その断片103の近赤外蛍光に基づく画像がモニターに鮮明に表示された。したがって、医療品の構成部材の破損状況を、医療品の使用状況として経皮的に簡単に確認できることがわかった。
【0063】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係る医療品の使用状況確認装置110を示す説明図である。
【0064】
図8を参照して、存否を確認する対象となる近赤外蛍光を発する医療品180は、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含んでいる。第3の実施形態に係る医療品の使用状況確認装置110は、概説すると、近赤外蛍光を発する上記医療品180と、発光剤を励起させる励起光を出射する光源132を備え医療品180の存否を確認する術野120に向けて光源132から出射された励起光を照射する照射部130と、励起光を遮断するとともに発光剤が発する近赤外蛍光を透過させる光学フィルター140と、光学フィルター140を透過した近赤外蛍光を受光するカメラ150(撮像部に相当する)と、カメラ150によって撮影した画像を表示するモニター160(表示部に相当する)と、を有している。この医療品の使用状況確認装置110にあっては、術野120内に医療品180が存在する場合に、医療品180の近赤外蛍光に基づく画像がモニター160に表示される。以下、詳述する。なお、第1の実施形態と共通する事項についての説明は一部省略する。
【0065】
図8に示される医療品180は、発光剤を表面に塗布した発光可能な縫合針181、およびこの縫合針181に固定された縫合糸185である。縫合糸185は、発光剤を樹脂素材に混練した合成糸から形成している。
【0066】
縫合針181は、所定の断面形状を有する胴部182と、胴部182から鋭利な針先183に向かって先細りとなるテーパ部184とを有している。胴部182の基端部には、止まり穴が形成されている。縫合針181の基材としては、ステンレススチールなどが用いられる。基材の表面に発光剤を塗布して薄膜の発光層を形成することによって、発光可能な縫合針181としている。なお、縫合針181の全体を発光可能にするほか、基材の表面の一部に発光剤を塗布して縫合針181の一部だけを発光可能に構成してもよい。
【0067】
縫合糸185は、発光剤を樹脂素材に混練した、ナイロン、ポリジオキサノン、ポリグリコール酸などの合成糸からなる。縫合糸185は、編み糸でもよいし、モノフィラメントでもよい。縫合糸185は、その先端が縫合針181の止まり穴に挿入されている。胴部182の基端部をかしめることによって、縫合糸185は縫合針181の基端部に固定される。
【0068】
発光剤は、第1の実施形態と同様に、人体もしくは動物に使用可能な薬剤であって、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する限りにおいて適宜の材料を用いることができる。励起波長は、発光剤を発光させるのに適した波長域であり、かつ、近赤外光の波長領域であることが好ましく、600nm〜1400nmの波長域のものを使用することができる。近赤外光は、皮膚・脂肪・筋肉などの人体組織の透過性が高く、生体の組織表面下5mm〜20mm程度まで透過可能である。したがって、発光可能な医療品180が生体内に存在する場合にも、その位置まで励起光を透過させ、医療品180を発光させることができる。
【0069】
具体的には、発光剤は、第1の実施形態と同様に、励起光の照射により近赤外蛍光を発するインドシアニングリーン(ICG)、あるいは本件出願人による特願2010−23479号(特開2011−162445号公報)に開示されるようなアゾ−ホウ素錯体化合物を用いることができる。
【0070】
照射部130は、シャーシ131と、シャーシ131内に配置され発光剤を励起させる励起光を出射する光源132と、を有している。シャーシ131は、励起光を透過しないアルミなどの金属材料などから形成されている。光源132から発した励起光は、医療品180の存否を確認する術野120に向けて照射される。術野120は、生体のみならず、手術室内のベッド上、床面上など、医療品180が存在し得る場所のすべてを含んでいる。光源132は、例えば、600nm〜1400nmの波長域の近赤外励起光を発するLEDなどを使用することができる。
【0071】
光学フィルター140、カメラ150、およびモニター160のそれぞれは、第1の実施形態における光学フィルター40、カメラ50、およびモニター60と同様の構成を有している。
【0072】
カメラ150は、縫合針181および縫合糸185の発光剤が発する近赤外蛍光を受光素子によって受光することにより、縫合針181および縫合糸185を撮像可能である。縫合針181および縫合糸185が生体内に存在する場合であっても、縫合針181および縫合糸185の発光剤が発する近赤外蛍光が生体組織を透過し、これをカメラ150が受光し縫合針181および縫合糸185を撮影する。カメラ150はまた、人体の輪郭等も同時に撮影する。
【0073】
なお、カメラ150による撮像はモノクロームであってもよいし、カラーであってもよい。カメラ150は、そのレンズの周りに上記の光源132が環状に設けられたものであってもよい。これにより、術野120をより適正に撮影することが可能となる。
【0074】
モニター160は、カメラ150によって撮影した画像を表示し得る限りにおいて特に限定されない。卓上型のディスプレイでもよいし、ヘッドマウント型のディスプレイでもよい。表示する画像は、モノクロームまたはカラーのいずれでもよい。術野120内に縫合針181および縫合糸185が存在する場合には、縫合針181および縫合糸185の近赤外蛍光に基づく画像がモニター160に表示される。使用者は、モニター160に表示される画像を見て、縫合針181および縫合糸185の存否を確認し、近赤外蛍光に基づく画像が現れると、縫合針181および縫合糸185が術野120に存在すること、およびそれらが存在する位置を確認する。
【0076】
図8に示すように、縫合糸185が固定された縫合針181が、術野120に存在している。
【0077】
術野120に医療品180が存在するか否かを確認するとき、照射部130によって、光源132から発した近赤外励起光を術野120に向けて照射する。このとき、使用者は、照射部130を動かして、術野120を広範囲にわたって走査する。走査しているときに近赤外励起光が縫合針181および縫合糸185に照射されると、縫合針181および縫合糸185の表面の発光剤が励起して近赤外蛍光を発する。発光剤としてインドシアニングリーンを用いる場合は、発光剤は、約800nmの波長域の近赤外励起光を吸収して励起し、約850nmの近赤外蛍光を発する。
【0078】
縫合針181および縫合糸185が発した近赤外蛍光は、光学フィルター140を透過し、カメラ150によって受光され、モニター160に縫合針181および縫合糸185の近赤外蛍光に基づく画像が表示される。また、生体の表面で反射する反射光もカメラ150に受光されることにより、生体の輪郭画像もモニター160上に縫合針181および縫合糸185とともに表示される。モニター160に近赤外蛍光に基づく画像が現れることによって、使用者は、縫合針181および縫合糸185が術野120に存在すること、およびそれらが存在する位置を正確かつ簡単に確認することができる。
【0079】
医療品の使用状況確認装置110は、医療品180の存否の確認にX線を使用していないことから、術者および患者がX線の被曝を受けるという問題は根本的に発生しない。しかも、X線を透過する樹脂製やゴム製の医療品180であっても、存否を確認することができる。
【0080】
以上説明したように、第3の実施形態の近赤外蛍光を発する医療品180は、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な医療品であって、発光剤を表面に塗布した発光可能な縫合針181、および発光剤を樹脂素材に混練した合成糸から形成した発光可能な縫合糸185である。したがって、第1の実施形態の医療品の使用状況確認装置110を適用することによって、縫合針181および縫合糸185の存否を確認できる。モニター160に近赤外蛍光に基づく画像が現れたときには、使用者は、縫合針181および縫合糸185が術野120に存在すること、およびそれらが存在する位置を正確かつ簡単に確認することができ、縫合針181および縫合糸185を取り除く等の医療品の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。
【0081】
第1の実施形態の医療品の使用状況確認装置110によれば、術野120内に縫合針181および縫合糸185が存在する場合には、縫合針181および縫合糸185の近赤外蛍光に基づく画像がモニター160に表示される。したがって、縫合針181および縫合糸185が術野120に存在すること、およびそれらが存在する位置を正確かつ簡単に確認することができ、縫合針181および縫合糸185を取り除く等の医療品の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。さらに、近赤外蛍光に基づいて存否を確認するため、存否の確認の対象となる医療品180の大きさに制限を受けることがない。
【0082】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態に係る医療品の使用状況確認装置111の構成を示す概略ブロック図である。第3の実施形態と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は一部省略する。
【0083】
第4の実施形態に係る医療品の使用状況確認装置111は、第3の実施形態と同様に、近赤外蛍光を発する縫合針181および縫合糸185と、照射部130と、光学フィルター140と、カメラ150と、モニター160と、を有し、術野120内に縫合針181および縫合糸185が存在する場合に、縫合針181および縫合糸185の近赤外蛍光に基づく画像がモニター160に表示される。
【0084】
第4の実施形態にあってはさらに、医療品の使用状況確認装置111は、近赤外蛍光に基づく画像を検出した場合に、術野120内に縫合針181および縫合糸185が存在することを報知するコントローラー170(制御部に相当する)を有している。
【0085】
コントローラー170は、近赤外蛍光に基づく画像データに対して画像処理および画像解析を施し、発光領域の抽出を行い、発光領域を抽出できなかったときには、術野120内に縫合針181および縫合糸185が存在しないと判断する。一方、コントローラー170は、発光領域を抽出できたときには、術野120内に縫合針181および縫合糸185が存在すると判断する。そして、コントローラー170は、術野120内に縫合針181および縫合糸185に破損が生じたことを使用者に報知する。報知は、モニター160への表示や、警告音の発生によって行う。
【0086】
第4の実施形態の医療品の使用状況確認装置111によれば、近赤外蛍光に基づく画像を検出した場合に術野120内に縫合針181および縫合糸185が存在することを報知するコントローラー170を有しているので、縫合針181および縫合糸185が術野120に存在すること、およびそれらが存在する位置を一層正確かつ簡単に確認することができ、縫合針181および縫合糸185を取り除く等の医療品の使用状況に応じた適切な措置をより迅速に施すことが可能となる。
【0087】
(医療品180の改変例)
近赤外蛍光を発する医療品180の形態としては、発光可能な縫合針181と発光しない一般的な縫合糸とが予め接続された形態、発光しない一般的な縫合針と発光可能な縫合糸185とが予め接続された形態でもよい。また、発光可能な縫合針181と、発光可能な縫合糸185とが分離している形態でもよい。
【0088】
また、医療品180は縫合針181や縫合糸185に限定されるものではなく、例えば
図10に示すような医療品180にも適用可能である。
【0089】
図10に示される医療品180は、発光剤を樹脂素材に混練した合成糸189を織り込んだ発光可能な布状消耗品186である。布状消耗品186は、たとえば、医療用のガーゼ186である。図示するガーゼ186は、複数の経糸187および緯糸188を構成糸として、これらを略等間隔で交互に交差するように平織りしたものである。このガーゼ186には、発光剤を樹脂素材に混練した合成糸189を、構成糸の1本として織り込んである。合成糸189の樹脂素材には、シリコン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、合成糸189を1本のみ図示するが、複数本の合成糸189を織り込んでもよい。織りの形態も平織りに限定されず、綾織りなどの形態でもよい。
【0090】
そして、上述した医療品の使用状況確認装置110、111を適用することによって、ガーゼ186の存否を確認できる。合成糸189が発光してモニター160に近赤外蛍光に基づく画像が現れたときには、使用者は、ガーゼ186が術野120に存在すること、およびガーゼ186が存在する位置を正確かつ簡単に確認することができ、ガーゼ186を取り除く等の医療品の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。特に、ガーゼ186などの布状消耗品は血液を吸収すると目視確認し難いことから、医療品の使用状況確認装置110、111の適用が有利なものとなる。
【0091】
医療品180は、布状消耗品186のほかに、上記の合成糸189を織り込むことなく含んだ発光可能な不織布状消耗品でもよい。不織布状消耗品は、たとえば、医療用の脱脂綿である。脱脂綿には、発光剤を樹脂素材に混練した合成糸189を、1本または複数本、織り込むことなく含めてある。
【0092】
そして、上述した医療品の使用状況確認装置110、111を適用することによって、脱脂綿の存否を確認できる。合成糸189が発光してモニター160に近赤外蛍光に基づく画像が現れたときには、使用者は、脱脂綿が術野120に存在すること、および脱脂綿が存在する位置を正確かつ簡単に確認することができ、脱脂綿を取り除く等の医療品の使用状況に応じた適切な措置を施すことが可能となる。特に、脱脂綿などの不織布状消耗品は血液を吸収すると目視確認し難いことから、医療品の使用状況確認装置110、111の適用が有利なものとなる。
【0093】
布状消耗品186や不織布状消耗品として、合成糸189を少なくとも1本含む消耗品について説明したが、発光剤を樹脂素材に混練した合成糸189のみを用いて布状消耗品186や不織布状消耗品を形成してもよい。
【0094】
なお、本発明は上述した医療品180(181、185、186)に限定されるものではなく、術野120に遺残する虞があり、その存否を確認にしたい医療品180に広く適用することができる。その医療品180は、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な医療品であればよい。したがって、ハサミ、ピンセット、カテーテル、注射針、チューブ類などの種々の医療品に発光剤を塗布したり、それら医療品を発光剤が練り込まれた材料から形成したりすることによって、それら医療品の存否を、医療品の使用状況として確認することが可能となる。
【0095】
本出願は、2012年6月1日に出願された日本特許出願番号2012−125710号、および2012年6月1日に出願された日本特許出願番号2012−125712号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。