特許第5988100号(P5988100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988100
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】モード合分波器
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   G02B6/12 311
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-273680(P2012-273680)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-119556(P2014-119556A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】半澤 信智
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰志
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】辻川 恭三
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
(72)【発明者】
【氏名】小柴 正則
【審査官】 廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−157506(JP,A)
【文献】 特開2007−127748(JP,A)
【文献】 特表2012−530386(JP,A)
【文献】 2012年電子情報通信学会総合大会, B−13−47 551頁
【文献】 2012年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会,C−3−85 202頁
【文献】 OFC/NFOEC Technical Digest ,OTu1I.4 p.1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00 − 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路幅が互いに異なる複数の単一モード導波路と、
前記単一モード導波路の本数よりも多いモード数の多モード光を伝搬し、複数の前記単一モード導波路との結合部が長手方向に配列された1本のマルチモード導波路と、を備え、
複数の前記単一モード導波路は、それぞれ、前記マルチモード導波路と異なる導波路高であって、かつ基本モードの実効屈折率が前記マルチモード導波路の伝搬する互いに異なる1つのモードの実効屈折率と等しくなるような導波路幅を有し、
複数の前記結合部が、それぞれ、対応する前記単一モード導波路と前記マルチモード導波路との使用波長帯における結合効率が所望の値以上になるような相互作用長を有することにより、当該単一モード導波路を伝搬する基本モードと前記マルチモード導波路を伝搬する互いに異なる1つのモードとを相互に変換し、
前記複数の単一モード導波路は、
導波路幅及び導波路高が7.17μmの第1の単一モード導波路と、
導波路幅及び導波路高が4.35μmの第2の単一モード導波路と、を備え、
前記マルチモード導波路は、導波路幅及び導波路高が13.7μmであり、
前記第1の単一モード導波路と前記マルチモード導波路との相互作用長が1.6mmであり、
前記第2の単一モード導波路と前記マルチモード導波路との相互作用長が1.7mmである、
モード合分波器。
【請求項2】
波長多重信号を生成する複数の波長多重信号生成部と、
前記単一モード導波路のそれぞれと前記マルチモード導波路の一端に前記波長多重信号生成部が接続され、前記単一モード導波路及び前記マルチモード導波路の一端から入力された波長多重信号をモード多重して前記マルチモード導波路の他端から出力する、
請求項に記載のモード合分波器と、
を備える送信装置。
【請求項3】
モード多重された波長多重信号が前記マルチモード導波路の一端に入力され、当該入力信号をモードごとに分波した波長多重信号を、前記単一モード導波路のそれぞれと前記マルチモード導波路の他端から出力する請求項に記載のモード合分波器と、
前記単一モード導波路及び前記マルチモード導波路に出力された波長多重信号を、波長ごとに受信する波長多重信号受信部と、
を備える受信装置。
【請求項4】
モード多重された波長多重信号を送信する請求項に記載の送信装置と、
前記送信装置からのモード多重された波長多重信号を受信する請求項に記載の受信装置と、
前記送信装置及び前記受信装置を接続し、前記マルチモード導波路と同じかそれ以上のモード数が伝搬可能なマルチモード光ファイバと、
を備えるモード多重通信システム。
【請求項5】
請求項に記載のモード合分波器の設計方法であって、
使用波長帯において前記単一モード導波路の本数よりも多いモード数を伝搬するように、マルチモード導波路の導波路幅を決定するステップと、
基本モードの実効屈折率が前記マルチモード導波路の伝搬する高次モードの1つの実効屈折率と等しくなるように、各単一モード導波路の導波路幅を決定するステップと、
使用波長帯における結合効率が所望の値以上になるように、前記結合部の相互作用長を決定するステップと、
を有するモード合分波器の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝搬モード数が2以上である光ファイバケーブルにおいて伝搬モードそれぞれをキャリアとして利用する多重方法であるモード多重伝送に必要なモード合分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光ファイバネットワークにおけるトラフィックは増大しており、伝送速度の高速化や波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術による波長多重数の増加、多値変調など様々な手法を用いて伝送容量の拡大を図ってきた。しかし、将来的に既設の伝送路、従来の伝送方式を用いての伝送容量の拡大が困難になると予想されるため、波長領域の拡大、新たな伝送ファイバ、及び新たな伝送方式が検討されている。
【0003】
波長領域を拡大する方法として、現在利用されていない波長帯を利用して、広波長域のWDMを実現し伝送容量を増大させる検討もなされている。しかし、伝送損失が波長帯により異なるため、使用できる波長帯は限定されると考えられ、さらに、広波長域にわたり増幅が可能な光増幅器も実現が困難なため、広波長域のWDMが実用に至るためには多くの課題がある。
【0004】
新たな伝送ファイバに関しては、ファイバ非線形による波形歪を抑圧するために実効断面積(Aeff)が拡大できるファイバ構造が提案されている。ファイバ非線形の抑圧はファイバへ入力できる入力パワーの増加につながり、入力パワーの増加が可能になれば伝送速度の高速化、更なる多値化が可能になるなどの優位性が得られる。しかし、非特許文献1に示されるようにAeffの拡大は単一モード動作を前提としているため、曲げ損失と単一モード動作がトレードオフの関係にあることからAeffの大幅な拡大が困難という課題がある。
【0005】
新たな伝送方式に関しては、非特許文献2に示されている無線の伝送方式において周波数利用効率を向上させるために利用されている直交した周波数成分を利用するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)や、非特許文献3に示されているようにMIMO(Multiple Input Multiple Output)をマルチモード光ファイバに適用することが検討されているが、送受信機において複雑な信号処理を必要とするため、演算処理の高速化などの課題がある。
【0006】
さらには、特許文献1に光ファイバの伝搬モードを利用した多重方法も提案されているが、所望の高次モードを励振する方法が提案されておらず、単一波長で利用することを前提としているため、大容量化の実現が困難という課題がある。光ファイバの伝搬モードを利用するためのモード分波器として非特許文献3に示されるように受光する位置を変化させてモードの分波を行う方法が提案されているが、多くの高次モードが存在する状況では、モード間の漏話が大きくなり、受光器の設計も複雑になるため、伝搬モードをキャリアとして利用するモード多重伝送においての利用については好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−288911号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】松井 他、“Single−mode photonic crystal fiber with low bending loss and Aeff of > 200 μm2 for ultra high−speed WDM transmission”、OFC2010、PDPA2.
【非特許文献2】Benn C. Thomsen、“MIMO enabled 40 Gb/s transmission using mode division multiplexing in multimode fiber”、OFC2010、OThM6.
【非特許文献3】C. P. Tsekrekos、他、“Mode−selective spatial filtering for increased robustness in a mode group diversity multiplexing link”、OPTICS LETTERS、Vol.32、No.9、2007.
【非特許文献4】R.Ryf、他、“Optical Coupling Components for Spatial Multiplexing in Multi−Mode Fibers”、ECOC2011、Th.12.B.1.
【非特許文献5】N.Hanzawa、他、“Asymmetric parallel waveguide with mode conversion for mode and wavelength division multiplexing transmission”、OFC2012、OTu1l.4.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
伝搬モードが複数存在する光ファイバを利用して、光ファイバの伝搬モードそれぞれをキャリアとして利用するモード多重伝送において、既存のデバイスは基本モードでの動作が前提であるため、既存のファイバデバイスをそのまま用いてモード多重伝送を実現することは困難である。また、これまで提案されているモード合分波器は、分波効率が悪いため、長距離伝送や高速な信号の伝送が困難であり、また空間系を利用するため構成が複雑になるなどの課題がある。空間系を用いた方法では、非特許文献4に記載されているようにモードごとに高い分波効率を実現することが可能であるが、挿入損失が8dB以上と大きくデバイスの小型化が困難であるなどの課題もある。
【0010】
近年、非特許文献5に示されるように非対称平行導波路を用いた2モード合分波器が提案されており、非対称平行導波路を用いることで送受信端では基本モードのみで信号を扱うことが可能であり、既存のデバイスをそのまま用いることが可能になる。しかしながら、非特許文献5に記載の合分波器は2モードに限定されており、3モード以上の多重を実現するための合分波方法に関しては提案されていない。
【0011】
本発明は、2以上の任意の数の伝搬モードの合分波を高効率で行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のモード合分波器は、
導波路幅が互いに異なる複数の単一モード導波路と、
前記単一モード導波路の本数よりも多いモード数の多モード光を伝搬し、複数の前記単一モード導波路との結合部が長手方向に配列された1本のマルチモード導波路と、を備え、
複数の前記単一モード導波路は、それぞれ、前記マルチモード導波路と異なる導波路高であって、かつ基本モードの実効屈折率が前記マルチモード導波路の伝搬する互いに異なる1つのモードの実効屈折率と等しくなるような導波路幅を有し、
複数の前記結合部が、それぞれ、対応する前記単一モード導波路と前記マルチモード導波路との使用波長帯における結合効率が所望の値以上になるような相互作用長を有することにより、当該単一モード導波路を伝搬する基本モードと前記マルチモード導波路を伝搬する互いに異なる1つのモードとを相互に変換し、
前記複数の単一モード導波路は、
導波路幅及び導波路高が7.17μmの第1の単一モード導波路と、
導波路幅及び導波路高が4.35μmの第2の単一モード導波路と、を備え、
前記マルチモード導波路は、導波路幅及び導波路高が13.7μmであり、
前記第1の単一モード導波路と前記マルチモード導波路との相互作用長が1.6mmであり、
前記第2の単一モード導波路と前記マルチモード導波路との相互作用長が1.7mmである
【0013】
本発明のモード合分波器の設計方法は、
本発明に係るモード合分波器の設計方法であって、
使用波長帯において前記単一モード導波路の本数よりも多いモード数を伝搬するように、マルチモード導波路の導波路幅を決定するステップと、
基本モードの実効屈折率が前記マルチモード導波路を伝搬する高次モードの1つの実効屈折率と等しくなるように、各単一モード導波路の導波路幅を決定するステップと、
使用波長帯における結合効率が所望の値以上になるように、前記結合部の相互作用長を決定するステップと、
を有する。
【0014】
単一モード導波路における基本モードの実効屈折率をマルチモード導波路における高次モードのどの実効屈折率と等しく設計するかに応じて、任意の高次モードの合分波を行うことができる。また、使用波長帯における各単一モード導波路とマルチモード導波路との結合効率が所望の値以上になるような相互作用長を有するため、伝搬モードの合分波を高効率で行うことができる。したがって、本発明は、2以上の任意の数の伝搬モードの合分波を高効率で行うことができる。
【0015】
本発明の送信装置は、
波長多重信号を生成する複数の波長多重信号生成部と、
前記単一モード導波路のそれぞれと前記マルチモード導波路の一端に前記波長多重信号生成部が接続され、前記単一モード導波路及び前記マルチモード導波路の一端から入力された波長多重信号をモード多重して前記マルチモード導波路の他端から出力する、本発明のモード合分波器と、
を備える。
【0016】
本発明の受信装置は、
モード多重された波長多重信号が前記マルチモード導波路の一端に入力され、当該入力信号をモードごとに分波した波長多重信号を、前記単一モード導波路のそれぞれと前記マルチモード導波路の他端から出力する本発明のモード合分波器と、
前記単一モード導波路及び前記マルチモード導波路に出力された波長多重信号を、波長ごとに受信する波長多重信号受信部と、
を備える。
【0017】
本発明のモード多重通信システムは、
モード多重された波長多重信号を送信する本発明の送信装置と、
前記送信装置からのモード多重された波長多重信号を受信する本発明の受信装置と、
前記送信装置及び前記受信装置を接続し、前記マルチモード導波路と同じかそれ以上のモード数が伝搬可能なマルチモード光ファイバと、
を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、2以上の任意の数の伝搬モードの合分波を高効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1のモード合分波器を説明する図である。
図2】基本モードから第4高次モードまでの実効屈折率の変化の一例を示す。
図3】各導波路幅の決定例を示す。
図4(a)】第1高次モードの結合効率の波長依存性の一例を示す。
図4(b)】第2高次モードの結合効率の波長依存性の一例を示す。
図5】導波路の設計方法の手順について示したフロー図を示す。
図6】実施形態2のモード合分波器を説明する図である。
図7】実施形態3のモード多重通信システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0021】
(実施形態1)
本実施形態においては、光ファイバ中の伝搬モードである基本モード、第1高次モード、第2高次モードを用いた3モード多重伝送について説明する。多重するモードの組み合わせは任意であり、例えば、基本モード、第1高次モード及び第3高次モードの組み合わせであってもよいし、基本モード、第2高次モード及び第3高次モードの組み合わせであってもよい。導波路中の伝搬モードに関しても任意の組み合わせが可能である。本実施形態では、便宜上、基本モード、第1高次モード、第2高次モードをそれぞれLP01、LP11、LP21モードとして説明する。
【0022】
本発明の実施形態1について説明する。図1は、本実施形態のモード合分波器を説明する図である。本実施形態のモード合分波器は、導波路111、導波路112及び導波路113を備える。導波路111及び導波路112は単一モード導波路であり、導波路113はマルチモード導波路である。本実施形態のモード合分波器は、相互作用長Lを有する導波路111と導波路113との結合部と、相互作用長Lを有する導波路112と導波路113との結合部とを有する。
【0023】
各結合部は、導波路113の長手方向に縦続に配列される。導波路111と導波路113との結合部では、非対称平行導波路を用いて、導波路111のLP01モードと導波路113のLP11モードを位相整合させる。導波路112と導波路113との結合部では、非対称平行導波路を用いて、導波路112のLP01モードと導波路113のLP21モードを位相整合させる。これにより、本実施形態のモード合分波器は、モード変換を行うモード合波器として機能するとともに、モード分波を行うモード分波器として機能する。非対称平行導波路は、導波路の大きさが異なるようにすれば、比屈折率差Δを等しくしてもよい。また、導波路の大きさが異なるだけではなく、導波路の比屈折率差が異なる場合も含む。
【0024】
本説明においては、LP01モード、LP11モード及びLP21モードの3モードに限定して説明を行うが、本モード合分波器はこれに限定されない。例えば、1本のマルチモード導波路は、単一モード導波路の本数よりも多いモード数の多モード光を伝搬すればよく、LP21モード以上の高次モードに対しても同様にモード合波およびモード分波が可能である。また、2以上の任意のモード数に適用することができ、例えば、単一モード導波路をN本とすれば(N+1)モードのモード合分波器を構成することができる。
【0025】
導波路111と導波路112と導波路113は比屈折率差Δが等しい平行導波路である。Δは、導波路の屈折率nと導波路周囲の媒質の屈折率nを用いて次式であらわされる。
【数1】
【0026】
導波路111と導波路112は、使用波長域において単一モードとなるような導波路幅wとwを有する。ここで遮断波長は、導波路の高さhと比屈折率差Δを決定し、導波路幅wと使用波長帯を決定し、例えば有限要素法などを用いて導波路解析を行うことで遮断波長を求める。本実施形態では、一例として、導波路の高さhは導波路幅と等しく設定した。
【0027】
導波路113は少なくともLP21モード以上の伝搬モードが伝搬可能であり、導波路幅wは導波路113のLP11モードと導波路111のLP01モードの実効屈折率が等しく設計し、かつ導波路113のLP21モードと導波路112のLP01モードの実効屈折率が等しくなるように設計する。以下に導波路111と導波路112と導波路113の設計方法を具体的に説明する。
【0028】
導波路111と導波路112は複数のモードが伝搬可能な状態でも前記記載の基本モードと高次モードの結合は可能であるが、本実施形態では単一モードで設計を行った。
【0029】
例として、各導波路の比屈折率差Δを0.4%にした場合の導波路幅wに対する波長1530nmのLP01モードからLP02モード(光ファイバ中における第3高次モード)までの実効屈折率の変化を図2に示す。図2は導波路幅w(導波路の高さhはwに等しい)を横軸として、導波路の伝搬モードの実効屈折率を縦軸に示している。図2から、比屈折率差Δが0.4%では導波路幅wを12.0μm以上に設定することで3モード伝搬を実現できることがわかる。
【0030】
図3に導波路幅wと導波路幅wと導波路幅wを決定する図を示す。図3は例として波長1550nmでの伝搬モードの実効屈折率の値を示している。ここでは、導波路幅wは3モード以上伝搬可能な13.7μmとする。この時、導波路幅wと導波路幅wは単一モードとなる領域で幅を決定すれば良いので、導波路幅は8μm以下で設定すれば良い。導波路幅wは導波路113のLP11モードの実効屈折率と等しい幅に設定すれば良いので、wは7.17μmとなる。また、導波路幅wは導波路113のLP21モードと実効屈折率が等しくなれば良いので、wは4.35μmとなる。
【0031】
図3に示した導波路幅wとwとwを用いた場合に、導波路111のLP01モードを導波路113のLP11モードに変換するために必要な相互作用長Lと導波路112のLP01モードを導波路113のLP21モードに変換するために必要な相互作用長Lを例えばビーム伝搬法などにより計算し、導波路111のLP01モードが導波路113のLP11モードへの結合効率と導波路112のLP01モードが導波路113のLP21モードへの結合効率が最大となるように適切な相互作用長を設計する。ここで、導波路111と導波路113の導波路間隔gと導波路112と導波路113の導波路間隔gを4.0μmと等しい場合にビーム伝搬法によりLP11モード、LP21モードそれぞれの結合効率が最大となる相互作用長を求めるとLは1.6mm、Lは1.7mmであった。
【0032】
本実施形態では、LP21モードまでで設計を行ったが、本発明はこれに限定されることはなく、LP11モードとLP02モードを利用するなど、所望の伝搬モードの合分波器を実現することが可能である。
【0033】
導波路間隔g、gを4.0μm、導波路幅wを7.17μm、導波路幅wを4.35μm、導波路幅wを13.7μm、各導波路の比屈折率差Δを0.4%、各導波路の曲げ半径Rを50mm、相互作用長Lを1.6mm、相互作用長Lを1.7mmとした場合に得られる第1高次モードの結合効率の波長依存性を図4(a)に示し、第2高次モードの結合効率の波長依存性を図4(b)に示す。図4(a)は、導波路111に基本モードであるLP01モードの光を入射した場合に導波路113に第1高次モードであるLP11モードとして出力される結合効率(実線)と導波路111に基本モードであるLP01モードとして出力される結合効率(破線)を示している。図4(b)は、導波路112に基本モードであるLP01モードの光を入射した場合に導波路113に第2高次モードであるLP21モードとして出力される結合効率(実線)と導波路112にそのまま基本モードであるLP01モードとして出力される結合効率(破線)を示している。
【0034】
図4(a)及び図4(b)より、波長1530nmから1565nmの波長帯において95%以上の結合効率を有する非常に高効率な3モード合分波器を実現できることがわかる。ここで、3モード以上を伝搬可能な光ファイバとしてコア直径18μm、コアの比屈折率差Δを0.4%としたファイバを過程すると、光ファイバのLP01モードのモードフィールド径(MFD)は15.3μmで上記記載の導波路113のMFDは13.7μmでMFD不整合損失を下記記載の近似式(2)を用いて見積もると、およそ0.15dB程度であった。このことから、本発明の非対称平行導波路と伝送用ファイバとの接続損失は非常に小さいと予想され、伝送用ファイバと導波路のMFDが極端に異なる場合には、導波路とファイバとの接続部においてどちらか一方もしくは両者をテーパ状に加工するなどしてMFDの不整合を小さくすることで接続損失の低減を図ることも可能である。前記記載のMFDはファイバ、導波路ともにLP01モードのフィールドをガウシアン近似して算出している。
【0035】
【数2】
ここで、W,Wはそれぞれ光ファイバのMFD、導波路のMFDとし、ηは結合損失を示す。
【0036】
実施形態1は導波路のΔが等しく、導波路間隔が等しい条件下で設計を行ったが、本発明はこれに制限されることはなく、3つの導波路それぞれのΔが異なっていても良く、また導波路間隔gとgが異なっていても良い。
【0037】
次に、本発明のモード合分波器の設計方法について説明する。図5に、本実施形態に係る導波路の設計方法の手順について示したフロー図を示す。
はじめに、使用する波長帯を決定する(S101)。
次に、使用する波長帯において3モード動作以上となるように、比屈折率差Δと導波路幅wを決定する(S102、S103)。Δとwの決定には、例えば、有限要素法などの導波路解析を用いて遮断波長を求めることで決定する。以下のステップでは、使用波長帯の中心波長を用いて導波路解析を行い、導波路のパラメータを決定する。
次に、導波路111のLP01モードと導波路113のLP11モードの実効屈折率が等しくなるような導波路幅wを決定する(S104、S105)。wの決定においても、有限要素法などの導波路解析を用いて実効屈折率を算出する。
次に、導波路113のLP21モードの実効屈折率と導波路112のLP01モードの実効屈折率が等しくような導波路幅wを決定する(S106、S107)。
次に、導波路間隔g、gを決定し(S108)、決定した導波路間隔g、gを用いて相互作用長L、Lを決定する(S109)。相互作用長L、Lの算出にはビーム伝搬法などの伝搬解析を行い相互作用長を算出する。
相互作用長L、Lを算出したら、所望の結合効率を有するか否かを判定し(S110)、所望の結合効率を有さない場合はステップS108へ移行する。例えば使用波長帯において80%以上の結合効率を所望しており、それに満たない結合効率が得られた場合には、導波路間隔g、gを再設定し(S108)、相互作用長L、Lの算出を行う(S109)。所望の結合効率が得られたところで(S110においてYes)、モード変換特性又は分波特性を抽出する(S111)。所望のモード変換特性又は分波特性が得られていれば、これまで決定した各パラメータの確定となる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のモード合分波器は、Cバンド(1530nmから1565nm)の波長帯域において、基本モードと2つの高次モードの分波効率も95%以上を実現することが可能であることから、2以上の任意の数の伝搬モードを利用したモード多重伝送の高速・長距離化が可能になる。
【0039】
また、モード合波の前段、モード分波の後段、つまり伝送路以外の区間では、基本モードで伝搬されるため、ファイバデバイスについては基本モードで動作させることができることから、既存のファイバデバイスを利用して2以上の任意のモード数のモード多重伝送を実現することが可能になる。このため、簡易な構成で波長多重など既存の多重技術と併用した2以上の任意のモード数のモード多重伝送を実現することも可能になる。
【0040】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態では、実施形態1で示したモード合分波器の(2N+1)モード多重の使用例に関する(Nは自然数)。実施形態1で示したモード合分波器は2つの結合部を有する平行導波路であるため、実施形態1で示したモード合分波器を縦続に接続することで(2N+1)個のモード変換に対応できる。図6に、N=2であるときのLP31モード(光ファイバ中の第4高次モード)まで変換する構成例を示す。
【0041】
図6のモード合分波器は、モード合分波器600とモード合分波器601とが縦続に接続されている。モード合分波器600は、導波路611と、導波路612と、導波路613を備える。モード合分波器601は、導波路614と、導波路615と、導波路613を備える。導波路611〜615の導波路幅はそれぞれW〜Wであり、各導波路は幅と高さが等しい。導波路611と導波路613の導波路間隔はgであり、導波路612と導波路613の導波路間隔はgであり、導波路614と導波路613の導波路間隔はgであり、導波路615と導波路613の導波路間隔はgである。導波路611と導波路613の相互作用長はLであり、導波路612と導波路613の相互作用長はLであり、導波路614と導波路613の相互作用長はLであり、導波路615と導波路613の相互作用長はLである。
【0042】
モード合分波器600は、導波路611に入力したLP01モードが導波路613のLP11モードへ変換されるように導波路幅w、導波路間隔gと相互作用長Lが設定され、導波路612に入力したLP01モードが導波路613のLP21モードに変換されるように導波路幅w、導波路間隔gと相互作用長Lが設定されている。導波路613に入力されたLP01モードはそのままLP01モードで伝搬し、モード合分波器600の導波路613の出力からLP01モード、LP11モード及びLP21モードが出力され、モード合分波器601の導波路613へ入力される。
【0043】
ここで導波路613は5モード以上が伝搬可能な導波路設計になっているとする。モード合分波器601は、導波路614に入力したLP01モードが導波路613のLP02モードへ変換されるように導波路614の導波路幅w、導波路間隔g、相互作用長Lが設定され、導波路615に入力したLP01モードが導波路613のLP31モードへ変換されるように導波路615の導波路幅w、導波路間隔g、相互作用長Lが設定されている。モード合分波器601では、導波路613のLP01モード、LP11モード及びLP21モードが導波路614と導波路615のLP01モードと結合しないような導波路613の導波路幅wを設定する。これにより、LP31モードまでのモード変換が可能である。また、モード合波器の機能を説明したが、本実施形態のモード合分波器は、入出力を反転させることで、モード分波器として利用できる。
【0044】
また、実施形態1で示したモード合分波器を縦続に接続していくことで、さらに高次のモードへの変換および分波が可能である。また、本実施形態では実施形態1に記載したモード合分波器を縦続に接続することで、(2N+1)モードの合分波が可能なモード合分波器を構成する例を示したが、マルチモードの導波路(図6の例では、導波路613)に結合させる単一モードの導波路(図6の例では、導波路611、612、614、615)の数が奇数となるように構成すれば、2Nモードの合分波が可能なモード合分波器を構成することも可能である。よって、本実施形態に係る発明により2以上の任意の数のモードの合分波が可能なモード合分波器を構成することが可能である。
【0045】
また、本実施形態では導波路の比屈折率差Δを一定としたが、導波路の比屈折率差Δ及び高さはこれに制限されるものではなく、それぞれが異なった値を持った導波路パラメータで設計しても良い。加えて、導波路613の導波路幅wをモード合分波器600とモード合分波器601で等しい大きさとして実施形態を記載したが、モード合分波器600と601の中間で導波路613をテーパ状にするなどして所望の伝搬モード数を維持できる範囲で導波路の大きさを変化させても良い。導波路の大きさをモード合分波器間で変化させることにより、モード合分波器間の導波路613の結合部で所望のモード以外の結合を抑制する設計が容易になる。
【0046】
(実施形態3)
本発明の実施形態3について説明する。実施形態1で示したモード合分波器の使用例に関する。本発明のモード合分波器は波長多重通信システム(WDM)および偏波多重通信システム(PDM)とモード多重通信システムの3つの多重方法を組み合わせて使用することができる。これらは、3つの多重方式を個別に使用することや2つの多重方式のみを使用することも考えられ、いずれの方法にも適用できる。図7にWDMとPDMに3モード多重を行うためのシステムの構成例を示す。本発明のモード合分波器の使用例は図7のこれに限定されるものではない。また、ある波長λの光源に関しては、1つの光源をパワー分岐して使用しても良く、同一波長の光源を複数用意して波長λの信号を生成しても良い。
【0047】
図7に示すように、偏波多重波長多重モード多重伝送システムは、送信装置511及び受信装置520を備える。送信装置511は、3つの波長多重信号生成部と、実施形態1に記載の伝搬モードを合波(モード変換)するモード合波器518と、により構成されている。各波長多重信号生成部は、λからλのN個の光源512とN個の波長それぞれの光を2分岐する光分波器513と、N個の波長の基本モードそれぞれを変調する光変調器514と、偏波を調節するための偏波コントローラ515と、それぞれの波長の基本伝搬モードを合波する光合波器516と、N個の波長を合波するための波長合波器517とにより構成されている。
【0048】
また、受信装置520は、合波された3個の伝搬モードを分波する実施形態1に記載のモード分波器521と、モードごとに分波されたN個の波長多重信号を受信する波長多重信号受信部と、により構成されている。波長多重信号受信部は、モードごとに分波されたN個の波長をそれぞれの波長に分波するための波長分波器522と、波長分波器522により分波されたそれぞれの波長において偏波を分離するための偏波分波器523と、分波された信号光を受光して電気信号に変換する受光回路524とにより構成されている。
【0049】
送信装置511のモード合波器518と受信装置520のモード分波器521とは、マルチモード伝送路519により接続されている。実施形態1のモード合分波器を使用することにより、送信装置および受信装置中では基本伝搬モードで処理を行い、伝送路中でのみ高次モードに変換して信号を伝送している。そのため、本発明のモード合分波器を利用することにより、従来の光デバイスをそのまま利用することができる。伝送路中で信号の増幅が必要な場合には、本発明のモード合分波器を利用して、高次モードを基本モードに変換して光増幅器による増幅を行い、その後、モード合分波器を利用して高次モードに変換して伝送することにより、長距離伝送も可能となる。
【0050】
本実施形態は、3モード多重に限定して記載したが、本発明によれば、実施形態2で説明したように2以上の任意の数のモードの合分波が可能なモード合分波器を構成できるので、3モード多重に限定されず、2以上の任意のモード数のモード多重伝送が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
111、112、113、611、612、613、614、615:導波路
511:送信装置
512:光源
513:光分波器
514:光変調器
515:偏波コントローラ
516:光合波器
517:波長合波器
519:マルチモード伝送路
520:受信装置
521:モード分波器
522:波長分波器
523:偏波分波器
524:受光回路
600、601:モード合分波器
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7