(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記介在と、前記介在を挟み込むように配置される一対の前記防護壁の少なくとも一方との間には、前記介在と前記防護壁とが接触しない隙間が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7は、従来の光ファイバケーブル100を示す断面図である。光ファイバケーブル100は、光ファイバ心線103、防護壁105、テンションメンバ107、支持線111等が、外被101で一体に形成される。
【0006】
光ファイバ心線103は、例えば3段に俵積みされる。すなわち、複数列×複数段に最密に配置される。俵積みされた光ファイバ心線103の上下方向には、一対の防護壁105が設けられる。防護壁105は、俵積みされた最上段または最下段の光ファイバ心線103と接触する。防護壁105は、例えばナイロンテープ製である。防護壁105は、敷設後にセミの産卵から内部の光ファイバ心線103を保護するものである。また、防護壁105によって、後述する光ファイバ心線103分岐時に、内部の光ファイバ心線103の取り出し性を高めるものである。
【0007】
光ファイバ心線103の両側方には、一対のテンションメンバ107が設けられる。テンションメンバ107は、光ファイバケーブル100の張力を負担する。テンションメンバ107は、例えば亜鉛メッキ鋼線を使用することができる。
【0008】
光ファイバ心線103が設けられるケーブル部には支持線部が連結され、支持線部には、支持線111が設けられる。支持線111は、光ファイバケーブル100を敷設する際に、光ファイバケーブル100を支持するためのものである。支持線111は、例えば亜鉛アルミニウムメッキ鋼線を使用することができる。
【0009】
光ファイバ心線103、防護壁105、テンションメンバ107、支持線111は、外被101によって一体化される。外被101は、例えばLLDPE(直鎖状短鎖分岐ポリエチレン)等を使用することができる。外被101には、ノッチ109が形成される。ノッチ109は、例えばケーブル分割工具などによって、光ファイバケーブル100を分割する起点部となる。
【0010】
図8は、光ファイバケーブル100を分割する方法を示す図である。まず、
図8(a)に示すように、支持線部とケーブル部とを分割する。また、ノッチ109には、分割工具の切断刃113が配置される。
【0011】
この状態から、切断刃113を防護壁105まで挿入して、外被101のノッチ109を長手方向に切断する。このようにすることで、
図8(b)に示すように、防護壁105と、防護壁105の上下の外被101が分割され(図中矢印H方向)、テンションメンバ107を含む外被101が光ファイバ心線103と分割される(図中矢印G方向)。
【0012】
ここで、防護壁105は、外被101とは接着または融着することがないため、容易に分割することができる。しかし、俵積みされた光ファイバ心線103の両側部に配置される光ファイバ心線103は、断面において、外周の180°以上を外被101で覆われる。したがって、外被101を分割する際に、光ファイバ心線103の一部が、外被101に埋まった状態で、分割される懸念がある(図中矢印I方向)。
【0013】
このように、光ファイバケーブル100を分割する際に、内部の光ファイバ心線103の一部が外被101に埋まってしまうと、外被101から光ファイバ心線103を取り出す必要があるため、作業工数が増加する。また、分割された外被101は切除されて、内部の光ファイバ心線103の分岐作業が行われるが、外被101を切断する際に、誤って光ファイバ心線103を切断してしまう恐れがある。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、分岐作業性に優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達するために第1の発明は、光ファイバ心線と、断面において、前記光ファイバ心線を挟み込むように配置される一対の防護壁と、前記防護壁の間であって、前記光ファイバ心線の両側方から挟み込む介在と、前記介在の両側方に設けられるテンションメンバと、前記防護壁、前記介在および前記テンションメンバを覆うように設けられる外被と、を具備し、前記介在は、前記介在の軸方向に垂直な方向に圧縮して外径が90%となる際の反発力が、48N/100mm以上であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0016】
前記介在の外周には接着層が設けられ、前記介在と前記外被の接触部では、両者が一体化していることが望ましい。
【0017】
前記介在と、前記介在を挟み込むように配置される一対の前記防護壁の少なくとも一方との間には、前記介在と前記防護壁とが接触しない隙間が形成されることが望ましい。前記隙間は、0.01mm〜0.21mmであることが望ましい。
【0018】
前記介在の外径を、複数の前記光ファイバ心線を最密に配置した際の高さよりも小さくしてもよい。
【0019】
第1の発明によれば、光ファイバ心線の両側部に介在が設けられる。このため、介在によって、光ファイバ心線と外被との接触を防止することができる。したがって、光ファイバ心線が外被に埋まることがない。このため、光ファイバケーブルを分割する際に、光ファイバ心線を外被から取り出す作業が不要であり作業性が良い。また、光ファイバ心線を誤って外被とともに切断することがない。
【0020】
また、介在を軸方向に垂直な方向に圧縮して、その外径が90%となる際の反発力が、48N/100mm以上であるため、外被の押し出し成型時に、介在が過剰につぶれることを防止することができる。したがって、外被の押し出し時に外被から受ける力を、光ファイバ心線に確実に伝えることができる。このため、光ファイバ心線を確実に俵積みに整列させることができる。
【0021】
また、介在の外周に接着層を設けることで、介在と外被と確実に一体化することができる。このため、光ファイバケーブルを分割する際に、介在と外被とが一体で分割されるため、分割片が増えることがない。このため、作業性が優れる。
【0022】
なお、接着層は、接着剤や熱可塑性樹脂等で構成される。すなわち、介在と外被との一体化は、接着剤による接着や、外被押し出し時の熱により、熱可塑性樹脂と外被とを融着するものを含む。
【0023】
また、介在と防護壁との間に隙間が形成されることで、外被の押し出し時に上下方向から防護壁が受ける力を、介在が受け止めることがない。このため、外被の押し出し時に外被から受ける力を、光ファイバ心線に確実に伝えることができる。このため、光ファイバ心線を確実に俵積みに整列させることができる。
【0024】
また、この際の隙間が、0.01mm〜0.21mmであれば、防護壁からの力を、確実に光ファイバ心線に伝えることができるとともに、隙間から外被が光ファイバ心線側に侵入することを防止することができる。
【0025】
また、介在の外径を、複数の光ファイバ心線を最密に配置した際の高さよりも小さくすることで、確実に介在と防護壁との間に隙間を形成することができる。
【0026】
第2の発明は、第1の発明にかかる光ファイバケーブルを用い、前記防護壁に対応する位置の前記外被の外周部には、ノッチが形成され、前記ノッチから、前記外被を破断させることで、前記外被と前記防護壁と前記光ファイバ心線とを分離して、前記光ファイバ心線を取り出し、前記介在は、前記外被と一体で除去されるとともに、前記光ファイバ心線は、前記外被に対して埋め込まれずに分離可能であることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法である。
【0027】
第2の発明によれば、光ファイバケーブルの分割作業において、光ファイバ心線が外被に埋まることがなく、容易に分岐作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、分岐作業性に優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、光ファイバケーブル1の断面図であり、
図1(a)は全体図、
図1(b)は
図1(a)のA部拡大図である。光ファイバケーブル1は、外被3、介在5、光ファイバ心線7、テンションメンバ9、防護壁13、支持線15等により構成される。
【0031】
介在5、光ファイバ心線7、防護壁13、テンションメンバ9、支持線15は、外被3によって一体化される。外被3は、例えばポリオレフィン系樹脂製であり、望ましくはLLDPE(直鎖状短鎖分岐ポリエチレン)等を使用することができる。外被3の外周には、ノッチ11が形成される。ノッチ11は、例えばケーブル分割工具などによって、光ファイバケーブル1を分割する起点部となる。
【0032】
光ファイバケーブル1の断面略中央位置には、複数の光ファイバ心線7が配置される。光ファイバ心線7は、例えば、複数列×複数段に俵積みされる。ここで、俵積みとは、各列の光ファイバ心線7が接触させて複数段に配置され、全体として最密に配置するものをいう。すなわち、上下に隣接する各段の光ファイバ心線7が幅方向に半ピッチずれて、一方の段の光ファイバ心線7の間に、他方の段の光ファイバ心線7がはまるように配置される。なお、
図1(a)では、一列8本の光ファイバ心線7を3段に配置した例を示すが、光ファイバ心線7の配置数は特に限定されない。
【0033】
俵積みされた光ファイバ心線7の全体を上下方向から挟み込むように、一対の防護壁13が設けられる。防護壁13は、例えばナイロンテープ等であり、外被3との剥離性が良いものが使用される。防護壁13は、光ファイバ心線7の整列範囲よりも幅広に形成される。なお、防護壁13は、最上段および最下段の光ファイバ心線7と接触する。防護壁13は、敷設後にセミの産卵から内部の光ファイバ心線7を保護するものである。また、防護壁13によって、後述する光ファイバ心線7の分岐時に、内部の光ファイバ心線7の取り出し性を高めるものである。
【0034】
光ファイバ心線7の両側方には、一対のテンションメンバ9が設けられる。テンションメンバ9は、光ファイバケーブル1の張力を負担する。テンションメンバ9は、例えば鋼線、モノフィラメント、アラミド繊維、ガラス繊維、PET繊維等による繊維補強プラスチック等が使用でき、望ましくは亜鉛メッキ鋼線を使用することができる。
【0035】
光ファイバ心線7が設けられるケーブル部には、支持線部が連結される。支持線部には、支持線15が設けられる。支持線15は、光ファイバケーブル1を敷設する際に、光ファイバケーブル1を支持するためのものである。支持線15は、例えば亜鉛アルミニウムメッキ鋼線を使用することができる。
【0036】
光ファイバ心線7の両側方であって、防護壁13の間には、それぞれ介在5が設けられる。介在5は、俵積みされた光ファイバ心線7全体を両側方から挟み込むように設けられる。なお、一対の介在5と一対の防護壁13で囲まれた空間(光ファイバ心線7が積層される範囲)には、外被3は侵入せず、光ファイバ心線7は、外被3とは接触しない。
【0037】
図2は、介在5の断面図である。介在5は、例えば、FRP(繊維強化プラスチック)製である。介在5は、繊維17に、樹脂19を含浸させて形成される。樹脂19によって、繊維17のばらけなどが防止される。樹脂19の外周には接着層21が設けられる。
【0038】
接着層21は、たとえば熱可塑性樹脂で構成される。接着層21を構成する樹脂の軟化点が、外被3の押し出し温度よりも低ければ、外被3の押し出し時に、接着層21が軟化して、外被3と接着層とを融着により一体化することができる。
【0039】
図1(b)に示すように、介在5は、上下の一対の防護壁13の少なくとも一方の対向面との間に、若干の隙間が形成される。図に示す例では、上方の防護壁13との間に隙間B1が形成され、下方の防護壁13との間に、隙間B2が形成される。なお、隙間は、少なくとも一方に形成されればよいため、例えば、上方の防護壁13と介在が接触していても(B1=0)、下方の防護壁13との間に隙間B2(>0)が形成されればよい。
【0040】
なお、上下の防護壁13との隙間の内、隙間の大きな方の隙間は、0.01mm〜0.21mmの範囲であることが望ましい。隙間が0.01mm未満では、介在5の寸法ばらつきなどの影響により、部分的に介在5が上下の防護壁13と接触する恐れがある。また、隙間が0.21mmを超えると、外被3が、一対の介在5と一対の防護壁13で囲まれた空間(光ファイバ心線7が積層される範囲)に侵入する恐れがある。すなわち、外被3が光ファイバ心線7と接触する恐れがある。したがって、上下の防護壁13との隙間の内、隙間の大きな方の隙間を0.01mm〜0.21mmの範囲にすることが望ましい。
【0041】
このように、介在5と防護壁13との間に隙間を形成する方法としては、例えば、光ファイバ心線7を俵積みした際の理論上の高さ(すなわち、防護壁13同士の間隔)よりも介在5の外径を小さくすればよい。このようにすることで、介在5が両方の防護壁13と接触することを防止することができる。また、防護壁13が直線状ではなく、両側方に行くにつれて互いに離れる方向に反っているような場合には、必ずしも、介在5の外径が理論上の俵積み高さよりも小さくなくても、介在5と防護壁13との間に隙間を形成することができる。
【0042】
次に、光ファイバケーブル1の製造時の状態について説明する。
図3は、光ファイバケーブル1の断面図である。前述したように、光ファイバケーブル1は、各構成が配置された状態で、外周に外被3が押し出し被覆されて一体成型される。この際、外被3の押し出し圧によって、防護壁13が上下方向から圧力を受ける(図中矢印C方向)。同様に、介在5が幅方向から圧力を受ける(図中矢印D方向)。したがって、光ファイバ心線7の全体に対して、上下左右から力が加えられる。
【0043】
このように、俵積みされた光ファイバ心線7全体に外周から均一に力が加えられることで、光ファイバ心線7同士の間に隙間が形成されず、最密に配置することができる。ここで、光ファイバケーブル1に曲げ変形が付与された場合には、曲げ内周側に位置する光ファイバ心線7には、圧縮方向の力が付与される。この際、光ファイバ心線7同士の間に隙間が形成されていると、光ファイバ心線7が座屈するように波打ち状に変形する恐れがある。このように光ファイバ心線7が波形状に変形すると、光損失が大きくなる。
【0044】
これに対し、光ファイバ心線7が互いに完全に最密に配置されていれば光ファイバ心線は座屈することができなくなり、このような波形状への変形が抑制される。したがって、光損失の増加を抑制することができる。このため、外被3の押し出し時には、光ファイバ心線7の全体に確実に圧力を伝達して、光ファイバ心線7を最密に配置する必要がある。すなわち、光ファイバ心線7の上下には、確実に防護壁13が接触し、光ファイバ心線7の両側方には、確実に介在5が接触する必要がある。
【0045】
なお、前述したように、介在5と防護壁13との間には隙間が形成される。したがって、上下の防護壁13が介在5に対して力を伝達することがない。すなわち、外被3から上下の防護壁13が受ける力を確実に光ファイバ心線7に伝達することができる。したがって、光ファイバ心線7を最密に配置することができる。
【0046】
これに対し、介在5が防護壁13からの力を受けてしまうと、光ファイバ心線7へ伝達される力が減少する。このため、光ファイバ心線7の整列に乱れが生じる恐れがある。したがって、介在5と防護壁13との間には隙間が形成されることが望ましい。なお、少なくとも一方に隙間が形成されれば、介在5は容易に移動して、防護壁13からの力を受け止めることがない。
【0047】
また、介在5によって、光ファイバ心線7の全体に両側方から確実に力を伝達するためには、介在5にはある程度の剛性が必要となる。例えば、外被3の押し出し圧力に対して、介在5が容易に変形してつぶれてしまうと、クッション層となり、光ファイバ心線7の両側方から付与される力が減少する。このため、光ファイバ心線7の整列に乱れが生じる恐れがある。
【0048】
このため、介在5の長手方向に対して垂直な方向の圧縮力に対して、外径が90%となる際の反発力が、48N/100mm以上であることが望ましい。このようにすることで、外被3の押し出し時に、介在5がつぶれてしまい、光ファイバ心線7の両側方から付与される力が減少することを抑制することができる。なお、例えば、Φ0.25mmの光ファイバ心線7を3段積み程度まで俵積みした場合に用いられる介在を考慮すると、外径が90%となる際の反発力が概ね220Nを超えると、ケーブルの可撓性に悪影響がでる。このため、外径が90%となる際の反発力は、220N/100mm以下とすることが望ましい。
【0049】
なお、前述したように、介在5の外周面には、接着層21が形成される(
図2参照)。したがって、介在5が光ファイバ心線7の押し付けられた際に、接着層21が軟化して変形し、光ファイバ心線7が接着層21に埋め込まれてしまう恐れがある。すなわち、断面において光ファイバ心線7の180°以上の範囲に接着層21が回りこむと、接着層21に光ファイバ心線7が埋め込まれてしまう。したがって、接着層21に厚みは、光ファイバ心線7の外径の1/2未満とすることが望ましい。例えば、Φ0.25mmの光ファイバ心線7であれば、接着層21の厚みは、0.05mm〜0.1mm程度とすればよい。
【0050】
次に、本発明にかかる光ファイバケーブル1を用いた分岐方法について説明する。まず、
図4(a)に示すように、支持線部とケーブル部とを分割する。また、ノッチ11には、分割工具の切断刃23が配置される。
【0051】
この状態から、切断刃23を防護壁13まで挿入して、外被3のノッチ11を長手方向に切断する。このようにすることで、
図4(b)に示すように防護壁13と、防護壁13の上下の外被3が分割され(図中矢印F方向)、テンションメンバ9および介在5を含む外被3が光ファイバ心線7と分割される(図中矢印E方向)。
【0052】
このように、本発明によれば、防護壁13は、外被3等とは接着または融着することがないため、容易に分割することができる。また、前述したように、介在5と外被3とは、接着層21によって一体化する。また、介在5は、光ファイバ心線7とは一体化せず容易に分離することができる。このため、光ファイバケーブル1を分割した際に、内部の光ファイバ心線7が外被3に埋め込まれることがない。したがって、光ファイバ心線7の分岐作業が容易である。また、光ファイバ心線7が確実に最密配置されるため、曲げ損失の増加も抑制することができる。
【0053】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
例えば介在5の断面形状は、必ずしも円形である必要はない。また、介在5の断面構成等は、
図2に示した例に限られない。前述した圧縮強度等を満足すれば、その材質や構造は、特に限定されない。例えば、ある程度の剛性を有する棒状の介在としては、鋼線などの金属製、ポリオレフィン樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV樹脂、繊維FRPなどのプラスチック製のものを用いることができる。
【実施例】
【0055】
各種の介在を用いて、断面における光ファイバ心線7の配列(構造安定性)と、分岐容易性を評価した。
図5は、介在の圧縮強度を評価する方法を示す図で、
図5(a)は正面図、
図5(b)は
図5(a)のH部におけるG−G線断面図である。試験に使用する介在5を平板25aの上に配置し、上部に平板25bを配置する。すなわち、平板25a、25bで介在5を挟み込む。
【0056】
介在5の長手方向に対する平板25bの長さ(図中J)は、100mmとした。また、平板25aの長さは、平板25bに対して十分に長いものを用いた。平板25bの上方から荷重をかけて介在5に常温で圧縮力を付与した。この際、介在5の径(平板25aと25bの間隔)が、荷重を付与する前の介在5の外径の90%となる際の荷重(反発力)を測定した。なお、初期の外径は、介在をまっすぐに伸ばした状態での外径とした。
【0057】
各種の介在を用いて光ファイバケーブルを製造し、光ファイバ心線の配列(構造安定性)を確認した。光ファイバ心線は、光ファイバケーブルの断面をマイクロスコープで観察し、光ファイバ心線の配列の規則性・偏心量や、防護壁の偏心量を観察した。
【0058】
なお、光ファイバケーブルは、Φ0.25mmの光ファイバ心線を用いた4心間欠テープ心線を6枚用い、8列×3段の24心とした。防護壁は、0.2mm厚×3.1mm幅のナイロンテープを用いた。テンションメンバは、Φ0.5mmの亜鉛メッキ鋼線とした。支持線は、Φ2.6mm亜鉛アルミメッキ鋼線とした。外被は、LLDPEを用いた。外被は、JISK7210の溶融性試験(190℃、2.16kg)の結果は、MFR0.35g/10分であった。
【0059】
また、それぞれの光ファイバケーブルを30cm取り出し、常温にて外被に分割工具によって切れ込みを入れ、光ファイバケーブルを分割した。この際、介在と外被とが一体化しているかどうかを確認した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1〜実施例7は、それぞれ、Φ0.7mmの介在を用いた。なお、実施例1と実施例2は、それぞれFRPの繊維をガラス繊維とアラミド繊維とした。なお、実施例1と実施例2の最外周には接着層を設けた。実施例3と実施例4は、ポリエチレンナフタレート(PEN)製とし、実施例3には、接着層を形成しなかった。実施例5は、LDPE(低密度ポリエチレン)製であり、コルデル(丸棒)とした。実施例6は、スチレン系のエラストマー製とした。
【0062】
比較例1〜4は、すべてPP(ポリプロピレン)ヤーンを用いた。比較例1は、2000D(デニール:1デニールは9000mの糸の質量をグラム単位で表したもの)、比較例2、3は、1000D、比較例4は500Dとした。なお、比較例3は、5回/mの撚り線とした。
【0063】
90%圧縮時の反発力は、
図5に示した方法において、100mm長さに対する圧縮力(反発力)をロードセルで測定した。構造安定性は、光ファイバ心線が俵積みされ、介在の変形のなかったものを「○」とした。また、光ファイバ心線は俵積みされたが、介在に変形が見られたものを「△」とした。また、光ファイバ心線の積層配置が崩れていたり、光ファイバ心線同士の間に隙間が見られたものを「×」とした。また、介在と外被の一体化は、光ファイバケーブルを分解した際に、介在と外被が一体化されていたものを「○」とし、外被と介在とが分離していたものを「×」とした。
【0064】
実施例1〜実施例6は、90%圧縮時の反発力が48N/100mm以上であった。このため、外被押し出し時に、確実に光ファイバ心線に外被の押し出し圧力を伝達することができた。この結果、全ての実施例で光ファイバ心線を俵積みすることができた。特に、実施例1〜実施例5は、90%圧縮時の反発力が73N/100mm以上であり、介在のつぶれも見られなかった。実施例6は、光ファイバ心線が俵積みされたものの、介在の90%圧縮時の反発力が48N/100mmであり、介在の変形が見られたため、構造安定性の評価が「△」となった。
【0065】
一方、比較例1、2は、繊維量1000〜2000Dのストレート状態のヤーンであるため、外被押し出し時に、形が変形して(ばらけて)しまった。このため
図6(a)に示すように、光ファイバ心線7の隙間に介在5(ヤーン)の一部が進入し、光ファイバ心線7の配列異常となり、さらに介在および防護壁13の偏心量異常となった。
【0066】
比較例3は、介在(ヤーン)の形状が保持されるように5回/mで捻回したものである。このため、比較例1、2と比較すると設計に近く製造することができた。しかし、
図6(b)に示すように、比較例1、2と同様に、介在5(ヤーン)の圧縮強度が不足するため、光ファイバ心線7が完全に俵積みとならず、光ファイバ心線同士の間に、隙間が形成され、配列異常となった。
【0067】
比較例4は、繊維量が少ないため、
図6(c)に示すように、光ファイバ心線7の側面を完全にカバーすることができなかった。したがって、光ファイバ心線7の配列異常が生じるとともに、光ファイバ心線7と外被3とが接触した。
【0068】
なお、実施例3では、介在の外周面に接着層が形成されていないため、介在と外被とが一体化せず、光ファイバケーブルを分割した際に、介在と外被とが分離した。このため、分割片のパーツ数が増加した。したがって、光ファイバ心線7の分岐時に介在5について注意が必要である。一方、他の実施例では、介在と外被とは一体化された。また、比較例1〜4は、介在がヤーンであるため、外被とヤーンとは一体化した。
【0069】
次に、介在と防護壁との隙間の影響について調査した。介在の径を変化させて、外被を押し出し被覆した。外被にはLLDPEを用いた。外被のJISK7210の溶融性試験(190℃、2.16kg)の結果は、MFR0.35g/10分であった。製造された光ファイバケーブルの防護壁と介在の隙間(両方の隙間の内、大きい方の隙間)をマイクロスコープによって観察した。介在は、すべて、アラミド繊維FRPを用いた。他の構造は、前述したものと同様である。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
曲げ試験は、まず、光ファイバケーブルを曲げ半径100mmで1ターン曲げた状態で、+30℃〜+70℃のヒートサイクル試験を実施した。この際の光損失の増加量(波長1.55μm)を測定した。また、マイクロスコープによって、外被と光ファイバ心線との接触の有無を観察した。
【0072】
実施例7〜12は、介在と防護壁との隙間が0.01mm以上あるため、防護壁による光ファイバ心線の押さえ込みに対して、介在が悪影響を及ぼすことがない。このため、光ファイバ心線が確実に俵積みされて、光ファイバ心線同士の隙間が形成されることがない。このため、曲げ試験において、すべて0.1dB以下となった。
【0073】
また、実施例7〜12は、介在と防護壁との隙間が0.21mm以下あるため、介在と防護壁との隙間から、外被樹脂が流れ込むことがなく、外被と光ファイバ心線とが接触することがなかった。この結果、光ファイバケーブルを分割した際に、光ファイバケーブルが外被に埋め込まれることがなく、光ファイバ心線の分岐作業性が優れる。
【0074】
一方、比較例5〜7は、防護壁と介在との隙間が大きすぎるため、介在と防護壁の隙間から外被樹脂が光ファイバ心線側に流入した。このため、光ファイバ心線と外被とが接触した。この結果、光ファイバケーブルを分割する際に、外被に光ファイバが埋め込まれる恐れがある。
【0075】
また、比較例8〜10は、介在と防護壁との間に隙間がなく、上下の防護壁が介在と接触した。このため、介在が防護壁の上下方向の力を受け止めてしまい、光ファイバ心線に対して力がうまく伝達されなかった。このため、光ファイバ心線の配列異常が発生した。この結果、曲げ試験において、光損失増加が0.5dB以上であった。
【0076】
次に、外被樹脂を変更して同様の試験を行った。外被樹脂としては、難燃ポリエチレンであり、JISK7210の溶融性試験(190℃、2.16kg)の結果は、MFR3.67g/10分であった。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
その結果、外被樹脂を変更しても、表2と同様の結果が得られた。したがって、外被樹脂によらず、介在と防護壁との隙間は、0.01mm〜0.21mmの範囲であることが望ましい。