(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平面走査手段は、前記光ビーム偏向手段の前記電気光学結晶の前段あるいは後段、または、前記前段および前記後段の両方に、凹レンズを有することを特徴とする請求項1に記載の光干渉断層装置。
前記電気光学結晶は、直方体状に形成されており、前記直方体状の対向する前記電気光学結晶面上には、前記前記電気光学結晶に電圧を印加するための電極をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光干渉断層装置。
前記平面走査手段は、2つ以上の電気光学結晶を用いた光ビーム偏向手段により前記測定光を平面走査することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光干渉断層装置。
前記平面走査手段は、ガルバノミラーをさらに有し、該ガルバノミラーと前記電気光学結晶を用いた光ビーム偏向手段とにより前記測定光を平面走査することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光干渉断層装置。
前記ガルバノミラーは、ノコギリ波状であって、ミラーの動作折り返し点における印加電圧波形の変化が緩やかになっている駆動波形により駆動されることを特徴とする請求項8に記載の光干渉断層装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る光干渉断層装置(OCT装置)の実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の光干渉断層装置は、TD−OCTの低干渉光の光ビームを平面走査する手段(ビームスキャン部)として、KTNおよび1枚の凹レンズと、ガルバノミラー系とを有している構成である。
【0016】
<TD−OCTと3次元画像について>
まず、本実施形態に係る光干渉断層装置の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る光干渉断層装置の構成を示し、
図2は、
図1の破線で囲まれた部分であるビームスキャン部の構成例を示している。
図1に示すように、この光干渉断層装置は、光源1と、コリメータ2と、ビームスプリッタ3と、KTN素子(X)4と、X偏向用電極対5と、X偏向用KTN用電源6と、凹レンズ7と、試料用可動ミラー8と、対物レンズ9と、参照光用可動ミラー10と、PDなどの光検出器11と、信号処理部装置12とを備えて構成されている。ビームスキャン部は、ビームスプリッタ3と対物レンズ9との間の測定ビームの光路上に配置された、測定ビームを平面スキャン(平面走査)するための構成である。すなわち、本実施形態では、
図2に示すように、ビームスキャン部には、TD−OCTの低干渉光の光ビームを平面走査する手段として、KTN素子4および電極対5と、1枚の凹レンズ7と、ガルバノミラー系8とを有している。
【0017】
試料用可動ミラー8の一般的な動作機構はガルバノミラー方式であり、その動作速度は最速で1kHzである。参照光用可動ミラー10の一般的な動作機構はステッピングモーターであり、その動作速度は数10Hz程度である。
【0018】
光源1としてはSLD(Super Luminescent Diode)と呼ばれる光源を用いることができる。SLDは、直線偏光であり、その偏光方向がKTNに印加する電界と同じ向きになるように設置されている。光源1は低干渉性の光ビームを発生し、発生された光ビームはコリメータによりビーム径0.5mmの平行光になる。その後、ビームスプリッタ2によって測定用の光ビームと参照用の光ビームに分割される。
【0019】
測定用の光ビームはKTN素子4、凹レンズ7を通り、試料用可動ミラー8により試料に向けられた後、対物レンズ9によって集光され、試料Tに到達する。到達した光は、試料T内部の各反射面により反射光Sとして反射され、反射光Sは、対物レンズ9と、試料用可動ミラー8と、凹レンズ7と、KTN素子4と、ビームスプリッタ3とを経て測定光の光ビームとして光検出器(PD)11に入射する。
【0020】
一方、参照用の光ビームは、参照光用可動ミラー10で反射され、ビームスプリッタ3を経て参照光の光ビームとして光検出器11に入射する。光検出器11は干渉光の光強度を検出し、検出した光強度を信号処理装置12に出力する。なお、参照用可動ミラー10の前に測定用ビームが通過する対物レンズ9と同様のものを挿入することで、測定用の光ビームとの光の分散を補償することが可能である。
【0021】
ここで、参照光用可動ミラー10を微小移動させ、参照光の光路長を僅かに変化させることによって、参照光と測定光との光路長が一致した深度での試料Tの情報を干渉光の光強度として得ることができる。すなわち、参照光用可動ミラー10を微小移動させることにより、試料T内の深さ方向(Z方向)の情報得ることができる。参照光用可動ミラー10を微小移動による深さ方向スキャンに加えてさらに、試料用可動ミラー8により試料Tに入射するビームを入射に対して垂直方向(X方向、Y方向)にスキャン(平面スキャン)することができれば、試料TのX方向、Y方向、及び、Z方向に情報を得ることができ、試料Tの3次元断層画像を構築できる。
【0022】
<KTN特性について>
次にKTNに関して説明する。タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa
1-xNb
xO
3(0<x<1):KTN)結晶や、さらにリチウムをドープした(K
1-yLi
yTa
1-xNb
xO
3(0<x<1、0<y<0.1):KLTN)結晶は、電気光学偏向器として機能すると共に凸レンズ機能(効果)を併せ持ち得る(非特許文献1参照)。例えば、KTNチップの上下面を一様なチタン電極にすると、DC電圧を印加することにより結晶中に電子が注入される。KTN結晶中には電子トラップが存在するため、DC電圧印加後も結晶中のトラップに捕獲された電子が存在する。ここではトラップに捕獲された電子は空間的に一様であると仮定し、その電荷密度をρとする。この状態でKTNチップに対して変調電圧を印加すると、ガウスの法則により、電極からの距離をxとした場合の電界分布E(x)は以下の式(1)で表される。式(1)においてρは電荷密度、εは比誘電率、dはKTN結晶の厚み、Vは電極に印加する電圧をそれぞれ示す。
【0024】
また、電気光学偏向器の屈折率分布Δn(x)は、式(2)で表すことができる。式(2)においてgijは電気光学係数、n0はDC電圧を印加する前の電気光学偏向器の屈折率である。
【0026】
図14は、KTN結晶内における屈折率分布を説明する図である。式(1)および式(2)からわかるように、KTN結晶4の両側に設けられた電極5に電圧を印加することにより、KTN結晶4内に発生する電界分布E(x)は、xの関数で線形であるが、屈折率変化Δnはxの二次関数となっている。従って、屈折率分布は、
図14の破線ではなく実線の二次関数状のプロファイルを持つ。
【0027】
屈折率分布プロファイルが破線の線形プロファイルであれば、ビームは発散したり、収束したりはしない。しかし、屈折率分布プロファイルが実線のようにプラス側に山の状態で傾斜すると、レンズでいう凸状態の屈折率の傾斜となる。これによりKTN結晶内のビームは、この屈折率のレンズ効果で収束するようになる。このように、チップ断面において屈折率分布が空間的に凸となり、KTN結晶自体が凸レンズの機能を持つ。
【0028】
KTNによる光の偏向効果は、KTN結晶4の両端面に設置された電極対5に電圧を印加することにより生じる。KTN結晶4を挟み込む形で直交する位置に設けたX偏向用電極5に電圧を印加すると、KTN結晶4内の屈折率状況が変化することにより、KTN結晶4に印加する電圧を変化させることにより、KTN結晶4に発現した凸レンズの焦点がx軸と水平に移動するため、光が偏向する。したがって、X偏向用電極に印加する電圧を変化させることによって、光をX方向にスキャンすることができる。
【0029】
この応答速度としては500MHzまでは可能との報告があり、一般的な機械式の可動装置よりも高速にスキャンすることができる。
【0030】
KTNによる光を偏向できる角度、すなわち、スキャン角は電気光学結晶の中でも非常に大きい。4×4×1.5mmのKTN素子に、1.5mmの間隙に波長1300nm帯の近赤外光を入射させ、4mm角の両面に形成された電極に、初期電圧としてDC±500Vを印加した後、AC電圧±400Vを印加した場合、±5度程度光ビームが偏向した。
【0031】
<凹レンズの挿入>
ここで初期電圧DC±500Vをすることにより、KTNには、前述したような凸レンズ効果が発現した。この時の凸レンズ効果は、レンズの焦点距離にしてf=15mm程度であった。KTNのレンズ効果については、結晶ごとの個体差や印加電圧差に対する依存性はあるが、概ねf4〜20程度が発現する。また初期電圧条件に対する凸レンズ効果は、同じ結晶であれば、毎回異なることは無く、再現する。
【0032】
KTN素子の光出射面から試料までの距離、すなわち作動距離は、装置設計にもよるが、試料固定部品などの大きさを考慮すると少なくとも50mm程度は必要と考えられる。発現する凸レンズ効果による焦点距離に比べて2倍以上長い距離となるため、KTNを出射した光が試料に到達する時のビーム径は、出射した時に比べて広がっている。このように試料に照射された時のビーム径が十分に集光されていない場合、試料からの反射光強度が十分に得られず、また、反射点が広範囲にわたるため画像がぼける原因になる。
【0033】
そこで、KTN素子の前、もしくは後、もしくは前後に、前述のレンズ効果を補償できるような凹レンズを挿入し、さらに試料表面にて集光するための対物レンズを試料の近傍に挿入する。なお、本実施形態においては、凹レンズ7は、KTN素子4の後ろ(試料用可動ミラー側)に挿入している構成を示している。本構成により、KTN素子に凸レンズ効果が発現したとしても、挿入した凹レンズにより平行光とし、試料近くの対物レンズの調整により光を試料上で十分に集光する。このため、KTN素子から試料までの作動距離を十分に確保することができる。
【0034】
KTN素子の後ろ(試料用可動ミラー側)に凹レンズを挿入した場合、平行光にするだけでなく、偏向角を広げる効果もある。4×4×1.5mmのKTN素子に、1.5mmの間隙に波長1300nm帯の近赤外光を入射させ、4mm角の両面に形成された電極に、初期電圧としてDC±500Vを印加した後、AC電圧±400Vを印加した場合において、f=−20mmレンズを挿入した場合の偏向角は±10度程度に拡大した。このため、凹レンズをKTN素子の後ろに挿入することにより、光の偏向角を増加させることができる。
【0035】
挿入される凹レンズは、平行光がKTN素子に入力されたときに凹レンズからコリメート光が出力されるように配置する。なお、この時挿入する凹レンズは、平凹レンズである場合、調整が容易となる。すなわち、平凹レンズは片面が平面部となっており、挿入する場合、平凹レンズの平面部とKTN素子端面が向き合うように配置するためにそれぞれの位置を簡便に定めることが可能となる。
【0036】
<KTNによる光偏向特性について>
KTNによる光の偏向効果は、KTNに入射する光ビームのうち、内部電界方向の偏光成分、すなわちTEモードのみに影響を与える。このためKTNより、測定用の光の進行方向を効率よく偏向させるためには、KTNに入射する光ビームは直線偏光であり、且つ、その偏光方向はKTNに加える電界方向と同方向が望ましい。このため、光源の偏光成分はTEモードのみであること、または、光源から出射直後に偏光子を透過させることが望ましい。なお、本実施形態では、光源はKTNに印加する電界方向を同じ方向の直線偏光の光を出射する。
【0037】
<KTN−TD−OCTの測定について>
本実施形態では、KTN4に振幅±400V、200kHzで周期的に変動する電圧を印加し、試料用可動ミラー8を1kHz駆動させて、光を偏向させて試料Tをスキャンする。これにより、平面方向の2次元スキャンができる。さらに、前述したように参照光用ミラー10を10Hz程度で駆動することにより深さ方向の情報を得ることができ、信号処理装置12は、光検出器11が検出した光強度、X偏向用電極5の電圧、試料用可動ミラー8の駆動電圧、参照光用可動ミラー10の位度に基づいて試料Tの情報を整理し、画像を再構成し表示する。これにより3次元画像を撮像することができる。
【0038】
<KTNの印加電圧波形>
前述したように本実施形態では、光を制御する構成部分の動作速度は、KTN素子が200kHz、試料用可動ミラーが1kHz、参照光用可動ミラーが10Hzである。このため3次元画像を取得する場合、試料表面に沿ってスキャンした後、参照光用可動ミラーを動かし、再度表面をスキャンして次の層の情報をとるような方法での測定方法、信号処理が望ましい。これは、参照光用可動ミラーを徐々に動かし、試料のある一点での深さ方向を取得した後に平面方向に動かす場合、参照光用可動ミラーの動作速度がデータ取得速度を律速してしまうためである。
【0039】
図3は本実施形態のスキャン動作の処理流れを示すフロー図であり、
図4はスキャン動作を説明するための図である。本実施形態では、汗腺42を有する表皮41の表面に指紋40が形成された試料T(
図1参照)をスキャンする。スキャンは、指紋40の面と平行(X方向およびY方向)に平面スキャンした後、表皮41の深さ方向(Z方向)に移動して次の層について平面スキャンを行う。
図3に示すように、1層目についてKTN素子4と試料用可動ミラー8による平面スキャンを開始し(S1)、終了した(S2)後、参照光用可動ミラー10を1ステップ移動する(S3)ことによって次の層へと移動する。S1からS3と同様の動作を繰り返し、3次元スキャンすることができる。なお、参照光用可動ミラーの動作速度が他の動作速度に比べて著しく遅いため、同時に動かしたとしても上記同様の測定は可能である。
【0040】
本実施形態の場合、KTNによるスキャン方向の測定点数を200点としたとき、200点(X)×400点(Y)×100点(Z)の3次元画像データを0.1秒で取得することができる。このように、KTN素子、及び、試料用可動ミラーを駆動させて光を偏向させ、試料をスキャンすることによって、高速に3次元データを収集することができる。
【0041】
KTNは印加電圧波形の形状に応じた応答を示す。したがって、例えばAC電圧を印加した場合は、光は正弦波の速度で偏向する。
【0042】
一般的なOCT装置にて2次元画像、もしくは3次元画像を取得するため光ビームをスキャンする場合、測定サンプリングに用いるAD変換の間隔は一定であることから、試料のスキャン速度も一定速度でスキャンすることが望ましい。このため、KTNへの印加電圧波形は、ノコギリ波、三角波などが望ましい(
図5(a)参照)。
【0043】
また上記と同様に、ガルバノミラーの印加電圧波形も、一定速度でスキャン可能な、ノコギリ波や、三角波などが望ましい波形として使用できる。ただし、ノコギリ波のようにミラーの動作折り返し点において印加電圧波形が急激に変化するような場合、三角波のようにミラーの動作折り返し点において印加電圧波形が緩やかに変化するような場合に比べ動作応答が不安定になる。これは、印加電圧に高周波成分が重畳することが原因である。このため、ノコギリ波より三角波のほうがさらに望ましい(
図5(b))。若しくは、ノコギリ波状であって、ミラーの動作折り返し点における印加電圧波形の変化を緩やかにした形状を用いることが望ましい(
図5(c))。ミラーの動作折り返し点における印加電圧波形の変化を緩やかにすることにより、印加電圧の高周波成分の重畳を抑制することができるからである。
【0044】
しかしながら、仮に一定でなかった場合、試料の計測部分ごとに計測点数の差ができてしまう。この場合は、サンプリング間隔をKTNのスキャン速度に応じて変化させる必要がある。
【0045】
また、本実施例に係る光干渉断層装置を眼底撮像装置に用いることによって、患者の瞬きなどのモーションアーティファクトに起因する画像のボケや、姿勢保持のための患者の負担を減らすことができる。
【0046】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の光干渉断層装置は、TD−OCTの低干渉光の光ビームを平面走査する手段(ビームスキャン部)として、KTNおよび1枚の凹レンズと、ガルバノミラー系とを有し、光源の後段に偏向フィルタを有している構成である。
【0047】
まず、本実施形態に係る光干渉断層装置の構成について説明する。
図6は、本実施形態に係る光干渉断層装置の構成を示し、
図7は、
図6の破線で囲まれた部分であるビームスキャン部の構成例を示している。
図6に示すように、この光干渉断層装置は、光出射部にコリメータ2を含んだ光源1と、偏光フィルタ13と、ビームスプリッタ3と、KTN素子(X)4と、X偏向用電極対5と、X偏向用KTN用電源6と、凹レンズ7と、試料用可動ミラー8と、対物レンズ9と、参照光用可動ミラー10と、PDなどの光検出器11と、信号処理部装置12とを備えて構成される。また、本実施形態では、
図7に示すように、ビームスキャン部には、TD−OCTの低干渉光の光ビームを平面走査する手段として、KTN素子4および電極対5と、1枚の凹レンズ7と、ガルバノミラー系8とを有している。
【0048】
光源1は、KTN素子に印加する電界方向を同じ方向、すなわちTEモードだけでなく、TMモードも含んでいる。
【0049】
偏光フィルタ13はKTN素子に印加する電界方向を同じ方向の直線偏光の光を出射する。
【0050】
参照光用可動ミラー10の一般的な動作機構はステッピングモーターであり、その動作速度は数10Hz程度である。
【0051】
動作方法、KTNの特性などについては第1の実施形態と同様なので割愛する。
【0052】
偏光フィルタ13にてKTNの偏向方向に無関係なTMモードも含まれていた場合、TMモードによる干渉成分が所望の信号に対してノイズとして計測されることになり、その結果、SN比を劣化させてしまうことになる。偏光フィルタ13により、KTNによって偏向されない成分をフィルタし、測定のSN比を向上させる。
【0053】
また、本実施形態に係る光干渉断層装置を眼底撮像装置に用いることによって、患者の瞬きなどに起因する画像のボケや、姿勢保持のための患者の負担を減らすことができる。また、本実施形態に係る光干渉断層装置の光ビーム偏向部分を血管内視鏡に用いることによって、血管壁を観察するための微小ミラーを機械的に回転させる機構が不要となり、空間分解能を低下させずに血管内を3次元撮影することができる。
【0054】
光を制御する構成部分の動作速度などについては実施例1と同じなので割愛する。
【0055】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の光干渉断層装置は、TD−OCTの低干渉光の光ビームを平面走査する手段(ビームスキャン部)として、2個のKTNと、λ/2板と、2枚の平凹レンズ系とを有している構成である。
【0056】
まず、本実施形態に係る光干渉断層装置の構成について説明する。
図8は、本実施形態に係る光干渉断層装置の構成を示し、
図9は、
図8の破線で囲まれた部分であるビームスキャン部の構成例を示している。
図8に示すように、この光干渉断層装置は、光出射部にコリメータ2を含んだ光源1と、ビームスプリッタ3と、KTN素子(X)4aと、X方向偏向用電極5aと、X偏向用KTN用電源6aと、凹レンズ7aと、偏光子14と、KTN素子(Y)4bと、Y方向偏向用電極5bと、X偏向用KTN用電源6bと、凹レンズ7bと、対物レンズ9と、参照光用可動ミラー10と、PDなどの光検出器11と、信号処理部装置12とを有する。また、本実施形態では、
図9に示すように、ビームスキャン部には、TD−OCTの低干渉光の光ビームを平面走査する手段として、2組のKTN素子4a、4bおよび電極対5a、5bと、λ/2板14と、2枚の凹レンズ7a、7bとを有している。
【0057】
光源1はKTN素子(X)4aに印加する電界方向と同じ方向の直線偏光の光を出射する。
【0058】
参照光用可動ミラー10の一般的な動作機構はステッピングモーターであり、その動作速度は数10Hz程度である。
【0059】
動作方法、KTNの特性などについては第1の実施形態と同様である。
【0060】
前述したKTN素子4a、4bに発現する凸レンズ効果は、X軸、及び、Y軸の凸レンズ効果を補償できるような凹レンズを、それぞれのKTN素子4a、4bの直後、若しくは、直前、若しくは、両側に挿入することにより補償する。なお、本実施形態では、それぞれのKTN素子4a、4bの直後に挿入している。
【0061】
挿入される凹レンズ7a、7bは、補償するべきKTNの凸レンズパワー、KTN素子から凹レンズまでの距離に基に選定される。挿入されるレンズの種類としては、球面平凹レンズや、球面両凹レンズや、シリンドリカルレンズ、GRINレンズなどが望ましい。本実施形態では、2つのシリンドリカルレンズにより、2つそれぞれのKTNの凸レンズパワーを補償している。
【0062】
本実施形態では、2つのKTNを用いて2軸(X軸、Y軸)に対してスキャンする。それぞれのKTNの電極対は、もう一方のKTNの電極対と直交する側面に設置されており、2軸(X軸、Y軸)に対してスキャンする場合は、2対の電極に印加する電圧を制御することで所望の部分にビームを導く。
【0063】
前述したように、KTNによる光の偏向はKTNの電圧方向と同方向、すなわちTMモードのみである。このため、2つのKTN4a、4bを用いてビームをスキャンする場合は、2つのKTN4a、4bの間に、λ/2板のような偏光子14を挿入し、光を偏向させる方向に偏向成分を回転させる必要がある。仮に、2つのKTN4a、4b間にλ/2板のような偏光子14が挿入されていない場合は、片一方のKTN4a、4bによる光の偏向は得られないため、2軸のスキャンはできない。
【0064】
<KTNの印加電圧波形>
前述したように本実施例では、光を制御する構成部分の動作速度は、KTN素子(X)が200kHz、KTN素子(Y)が1kHz、参照光用可動ミラーが10Hzである。このため3次元画像を取得する場合、試料表面に沿ってスキャンした後、参照光用可動ミラーを動かし、再度表面をスキャンして次の層の情報をとるような方法での測定方法、信号処理が望ましい。これは、参照光用可動ミラーを徐々に動かし、試料のある一点での深さ方向を取得した後に平面方向に動かす場合、参照光用可動ミラーの動作速度がデータ取得速度を律速してしまうためである。
【0065】
図10は本実施形態のスキャン動作の処理流れを示すフロー図であり、
図11はスキャン動作を説明するための図である。本実施形態では、汗腺42を有する表皮41の表面に指紋40が形成された試料T(
図8参照)をスキャンする。スキャンは、指紋40の面と平行(X方向およびY方向)に平面スキャンした後、表皮41の深さ方向(Z方向)に移動して次の層について平面スキャンを行う。
図11に示すように、1層目についてKTN素子4と試料用可動ミラー8による平面スキャンを開始し(S1)、終了した(S2)後、参照光用可動ミラー10を1ステップ移動する(S3)ことによって次の層へと移動する。S1からS3と同様の動作を繰り返し、3次元スキャンすることができる。なお、参照光用可動ミラーの動作速度が他の動作速度に比べて著しく遅いため、同時に動かしたとしても上記同様の測定は可能である。
【0066】
本実施例の場合、KTNによるスキャン方向の測定点数を200点としたとき。200点(X)×400点(Y)×100点(Z)の3次元画像データを0.1秒で取得することができる。このように、KTN素子、及び、試料用可動ミラーを駆動させて光を偏向させ、試料をスキャンすることによって、高速に3次元データを収集することができる。
【0067】
KTNは印加電圧波形の形状に応じた応答を示す。したがって、例えばAC電圧を印加した場合は、光は正弦波の速度で偏向する。
【0068】
一般的なOCT装置にて2次元画像、もしくは3次元画像を取得するため光ビームをスキャンする場合、測定サンプリングに用いるAD変換の間隔は一定であることから、試料のスキャン速度も一定速度でスキャンすることが望ましい。このため、KTNへの印加電圧波形は、ノコギリ波、三角波などが望ましい(
図12参照)。
【0069】
しかしながら、仮に一定でなかった場合、試料の計測部分ごとに計測点数の差ができてしまう。この場合は、サンプリング間隔をKTNのスキャン速度に応じて変化させる必要がある。
【0070】
また、本実施形態に係る光干渉断層装置を眼底撮像装置に用いることによって、患者の瞬きなどに起因する画像のボケや、姿勢保持のための患者の負担を減らすことができる。また、本実施形態に係る光干渉断層装置の光ビーム偏向部分を血管内視鏡に用いることによって、血管壁を観察するための微小ミラーを機械的に回転させる機構が不要となり、空間分解能を低下させずに血管内を3次元撮影することができる。