【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(d1)において前記第一のビーズを前記反応槽内に配置した後、前記第二のビーズを前記反応槽に配置する請求項1又は請求項2に記載のタンパク質アレイの製造方法。
前記工程(g1)は、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製した後、更に、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写反応に供して、前記第二のビーズ上にmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を作製する工程を有する請求項4〜6のいずれか一項に記載のタンパク質アレイの製造方法。
前記工程(g2)は、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製した後、更に、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写反応に供して、前記第二のビーズ上にmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を作製する工程を有する請求項8に記載のタンパク質アレイの製造方法。
前記工程(g3)は、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製した後、更に、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写反応に供して、前記第二のビーズ上にmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を作製する工程を有する請求項12〜14のいずれか一項に記載のタンパク質アレイの製造方法。
前記工程(g4)は、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製した後、更に、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写反応に供して、前記第二のビーズ上にmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を作製する工程を有する請求項16に記載のタンパク質アレイの製造方法。
前記第一のビーズ及び前記第二のビーズは、磁気ビーズであり、前記ビーズ配置用基板は、磁気ビーズ配置用基板であり、前記工程(d1)、(d2)、(i1)及び(i2)は、前記磁気ビーズ配置用基板の下部に磁石を配置し、前記磁気ビーズを前記反応槽に誘導する工程を有する請求項1〜21のいずれか一項に記載のタンパク質アレイの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
進化分子工学的手法においては、スクリーニングの回数を増やすほど有用なタンパク質を得られる。従って、一連のサイクル数は多いほどよく、その一方でスクリーニングの精度の観点から、一サイクルにおける工程数は極力少ない方がよい。
そのためスクリーニング方法の更なる効率化が求められている。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、迅速に、かつ効率よくタンパク質アレイを製造できるタンパク質アレイの製造方法、及び該製造方法により製造されたタンパク質アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記の課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、核酸を固定化するための大きさの異なる2種類のビーズを用いることにより課題を解決できることを見出した。本発明の一実施態様は、下記(1)〜(
24)を提供するものである。
(1)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、
(a)DNAが固定化された第一のビーズを準備する工程と、
(b)前記DNAを転写してなるmRNAとハイブリダイズしうる配列と、タンパク質との連結部を有するアーム部と、を含む核酸リンカーが固定化された第二のビーズを準備する工程と、
(c1)複数の反応槽が配設されたビーズ配置用基板を準備する工程と、
(d1)前記工程(a)、(b)、及び(c1)の後、前記第一のビーズと前記第二のビーズとを前記反応槽内に配置する工程と、
(e1)前記工程(d1)の後、前記第一のビーズに固定化された前記DNAを転写し、mRNAを合成し、前記mRNAを前記第二のビーズに固定化された核酸リンカーにハイブリダイズさせる工程と、を有し、
前記タンパク質は、前記第一のビーズに固定化された前記DNAを転写してなる前記mRNAを翻訳してなるものであり、
前記第一のビーズは、前記第二のビーズより大きいことを特徴とする。
(2)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記反応槽の底面の直径又は一辺が前記第一のビーズの直径の1〜2倍であることが好ましい。
(3)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(d1)において前記第一のビーズを前記反応槽内に配置した後、前記第二のビーズを前記反応槽に配置することが好ましい。
(4)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、更に、
(f1)前記工程(e1)の後、前記第一のビーズ及び前記第二のビーズを回収する工程と、
(g1)前記工程(f1)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズにハイブリダイズされたmRNAを翻訳し、合成されたタンパク質を、前記核酸リンカーを介して前記第二のビーズに連結させ、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製する工程と、
(h)複数の第二のビーズ用反応槽が配設されたビーズ配置用基板を準備する工程と、(i1)前記工程(g1)及び(h)の後、前記第二のビーズを前記第二のビーズ用反応槽内に配置する工程と、を有し、
前記第一のビーズの直径は、前記第二のビーズ用反応槽底面の直径又は一辺よりも大きいことが好ましい。
(5)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(f1)は、前記第二のビーズを回収後洗浄する工程を有することが好ましい。
(6)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記第二のビーズ用反応槽の底面の直径又は一辺が、前記第二のビーズの直径の1〜2倍であることが好ましい。
(7)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(g1)は、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製した後、更に、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写反応に供して、前記第二のビーズ上にmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を作製する工程を有することが好ましい。
(8)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、更に、
(g2)前記工程(e1)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズにハイブリダイズされたmRNAを翻訳し、合成されたタンパク質を、前記核酸リンカーを介して前記第二のビーズに連結させ、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製する工程を有することが好ましい。
(9)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(g2)は、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製した後、更に、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写反応に供して、前記第二のビーズ上にmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を作製することが好ましい。
(10)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、
(a)DNAが固定化された第一のビーズを準備する工程と、
(b)前記DNAを転写してなるmRNAとハイブリダイズしうる配列と、タンパク質との連結部を有するアーム部と、を含む核酸リンカーが固定化された第二のビーズを準備する工程と、
(c2)連通孔を有する仕切りで仕切られ、底面の直径又は一辺の異なる2種類の微小反応槽を含む、複数の反応槽が配設されたビーズ配置用基板を準備する工程と、
(d2)前記工程(a)、(b)、及び(c2)の後、前記第一のビーズと前記第二のビーズのうち、大きいビーズを大きい微小反応槽内に配置した後、小さいビーズを小さい微小反応槽内に配置する工程と、
(e2)前記工程(d2)の後、転写系を用いて、前記第一のビーズに固定化されたDNAを転写し、合成されたmRNAを、前記第二のビーズに固定化された核酸リンカーにハイブリダイズさせる工程と、を有し、
前記大きい微小反応槽の底面の直径又は一辺が前記大きいビーズの直径の1〜2倍であり、
前記小さい微小反応槽の底面の直径又は一辺が前記小さいビーズの直径の1〜2倍であることを特徴とする。
(11)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記小さい微小反応槽の底面の直径又は一辺は、前記大きいビーズの直径よりも小さいことが好ましい。
(12)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、更に、
(f2)前記工程(e2)の後、前記第二のビーズを回収する工程と、
(g3)前記工程(f2)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズにハイブリダイズされたmRNAを翻訳し、合成されたタンパク質を、前記核酸リンカーを介して前記第二のビーズに連結させ、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製する工程と、
(h)複数の第二のビーズ用反応槽が配設されたビーズ配置用基板を準備する工程と、
(i2)前記工程(g3)及び(h)の後、前記第二のビーズを前記第二のビーズ用反応槽内に配置する工程と、を有することが好ましい。
(13)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(f2)は、前記第二のビーズを回収後洗浄する工程を有することが好ましい。
(14)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記第二のビーズ用反応槽の底面の直径又は一辺が、前記第二のビーズの直径の1〜2倍であることが好ましい。
(15)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(g3)は、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製した後、更に、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写反応に供して、前記第二のビーズ上にmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を作製する工程を有することが好ましい。
(16)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、更に、
(g4)前記工程(e2)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズにハイブリダイズされたmRNAを翻訳し、合成されたタンパク質を、前記核酸リンカーを介して前記第二のビーズに連結させ、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製する工程を有することが好ましい。
(17)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(g4)は、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製した後、更に、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写反応に供して、前記第二のビーズ上にmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を作製する工程を有することが好ましい。
(18)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(a)において、エマルジョン1個あたり平均1分子以下のDNAと平均1個以下の第一のビーズが含まれるように油中水型エマルジョンを調製する工程と、
前記エマルジョン内で核酸増幅反応を行い、固相結合部位が付加されたDNAを前記ビーズに固定化する工程と、を有することが好ましい。
(19)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記第一のビーズに固定されるDNAは一種類であることが好ましい。
(20)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記第一のビーズに多分子のDNAを固定することが好ましい。
(21)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記第二のビーズに多分子の核酸リンカーを固定することが好ましい。
(22)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイの製造方法は、前記第一のビーズ及び前記第二のビーズは、磁気ビーズであり、前記ビーズ配置用基板は、磁気ビーズ配置用基板であり、前記工程(d1)、(d2)、(i1)及び(i2)は、前記磁気ビーズ配置用基板の下部に磁石を配置し、前記磁気ビーズを前記反応槽に誘導する工程を有することが好ましい。
(
23)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイは、タンパク質が配置された複数の反応槽を備えたタンパク質アレイであって、前記反応槽にはそれぞれ、
DNAが固定化された第一のビーズと、
前記DNAを転写したmRNAとハイブリダイズし、前記mRNAに基づき翻訳されたタンパク質とアーム部において連結した核酸リンカーが固定化され、前記第一のビーズより小さい第二のビーズと、が配設されたことを特徴とする。
(
24)本発明の一実施態様におけるタンパク質アレイは、タンパク質が配置された複数の反応槽を備えたタンパク質アレイであって、
前記反応槽には、DNAが固定化された第一のビーズと、
前記第一のビーズとはサイズが異なり、前記DNAを転写したmRNAとハイブリダイズし、前記mRNAに基づき翻訳されたタンパク質とアーム部において連結した核酸リンカーが固定化された第二のビーズと、が配設され、
前記反応槽は連通孔を有する仕切りで仕切られた第一の微小反応槽と、
第一の微小反応槽よりも底面の直径又は一辺の大きい第二の微小反応槽と、から成り、
前記第一の微小反応槽には、
前記第一のビーズと、
前記第二のビーズのうち小さいビーズと、が配設され、
前記第二の微小反応槽には、
前記第一のビーズと、
前記第二のビーズのうち大きいビーズと、が配設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、DNAマイクロアレイから、mRNAアレイ、及びタンパク質アレイを迅速に、かつ効率よく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪タンパク質アレイの製造方法≫
[第1実施形態]
本実施形態のタンパク質アレイの製造方法は、タンパク質が配置された複数の反応槽を備えたタンパク質アレイの製造方法であって、
(a)前記タンパク質をコードするDNAが固定化された第一のビーズを準備する工程と、
(b)前記DNAを転写してなるmRNAとハイブリダイズしうる配列と、前記タンパク質との連結部を有するアーム部と、を含む核酸リンカーが固定化された第二のビーズを準備する工程と、
(c1)ビーズ配置用基板に配設された複数の反応槽を準備する工程と、
(d1)前記工程(a)、(b)、及び(c1)の後、前記第一のビーズを前記反応槽内に配置した後、前記第二のビーズを前記反応槽内に配置する工程と、
(e1)前記工程(d1)の後、転写系を用いて、前記第一のビーズに固定化されたDNAを転写し、合成されたmRNAを、前記第二のビーズに固定化された核酸リンカーにハイブリダイズさせる工程と、を有し、
前記第一のビーズは、前記第二のビーズより大きく、
前記反応槽の底面の直径又は一辺が前記第一のビーズの直径の1〜2倍である。
以下、
図1A〜
図1Eを参照しながら、各工程について説明する。
【0016】
工程(a)は、タンパク質33をコードするDNA13が固定化された第一のビーズ14を準備する工程である(
図1A、
図2参照)。
固定化には、アビジン−ビオチン結合を利用する方法の他、DNA13をアミノ基、ホルミル基、SH基、などの官能基で修飾し、固相をアミノ基、ホルミル基、エポキシ基などを有するシランカップリング剤で表面処理したものを利用する方法などを用いることができ、特に、アビジン−ビオチン結合を利用した方法が好ましい。
【0017】
工程(a)において、前記固相は、第一のビーズ14である。ビーズは、後にDNA13を容易に回収でき、かつ、球体であるために、基板と比べて、表面積が大きく、基板上にDNA13を固定する場合より多分子数のDNAを固定できる観点から優れている。更に、第一のビーズ14は、後述するビーズ配置用基板11中の各反応槽12に、短時間で配列させることが可能であるという観点から磁気ビーズであることが好ましい。
【0018】
DNA13は、cDNAでもゲノムDNAでもよく、進化分子工学的観点から、ランダム変異が導入されたものであることが好ましい。
ランダム変異を導入したDNA13からなるDNAマイクロアレイを製造する際には膨大な分子数の変異DNAライブラリーを用いて、DNAマイクロアレイ上の1スポットに1種類のDNA分子を固定する。
このような固定化を容易にするものとして、1分子エマルジョンPCR法を利用することが好ましい。
1分子エマルジョンPCR法とは、乳化剤が混和した油の中に水を攪拌して逆ミセルコロイド(water−in−oil(W/O)エマルジョン )を形成させることで限られた反応空間の中に1分子変異DNAを容易に隔離することを可能とする方法である。
DNA13が1分子封入されたエマルジョン内で核酸増幅反応を行えば、1個のエマルジョン中には増幅された1種類のDNA13のみが存在することになる。
【0019】
各々の変異DNAを解析する必要性の観点から、1個のエマルジョン中に複数の変異DNAが混在することは適切ではないため、本実施形態においては、エマルジョン1個あたり平均1分子以下のDNAが含まれるように油中水型エマルジョンを調製する工程を有することが好ましい。
【0020】
従って、前記工程(a)は、エマルジョン1個あたり平均1分子以下のDNA13と平均1個以下の第一のビーズ14が含まれるように油中水型エマルジョンを調製する工程を有することが好ましい。
【0021】
前記工程(a)では、鋳型として用いられる変異DNA(以下、鋳型DNA)や核酸増幅に必要な試薬等が調製されている水性成分に、油、乳化剤を混合して油中水型エマルジョンを調製することが好ましい。これによって、複数個の鋳型DNAが複数のエマルジョン(逆ミセル)によって区画化される。即ち、鋳型DNAを内包する複数のエマルジョン(逆ミセル)が得られる。
エマルジョンの調製には、攪拌処理(磁気攪拌子、プロペラ式などの使用)、ホモジナイズ(ホモジナイザー、乳鉢などの使用)、超音波処理(ソニケーターなどの使用)などを利用できる。
エマルジョンの大きさは特に限定されないが、エマルジョン1個の体積は、エマルジョンの平均粒径を基に算出できる。エマルジョンの平均粒径は、1μm〜100μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましく、10μm〜30μmが特に好ましい。
エマルジョン粒子の数は前記水性成分の体積からエマルジョン1個の体積を割ることにより算出される。よって、エマルジョン1個あたり平均1分子以下のDNAが含まれるように油中水型エマルジョンを調製するためには、全体におけるエマルジョンの数以下の分子数のDNAを用意すればよい。
【0022】
エマルジョンとしては、熱安定性に優れているものが好ましい。熱安定性に優れたエマルジョンを用いれば、PCR法などの高温処理を伴う核酸増幅反応の間、エマルジョンを維持することができる。従って、各ミセル間でコンタミネーションが起こることを防止でき、効率よく核酸増幅が行われる。これによって、各ミセル内に鋳型DNAが一分子含まれるように条件設定すれば、各ミセル内において鋳型一分子に由来する核酸分子を多分子数得ることが可能となる。
従って、エマルジョンを用いた核酸増幅反応を行うことにより、高密度化したDNAマイクロアレイを製造することができる。さらにかかるDNAマイクロアレイを用いて製造されたタンパク質アレイもまた各スポットに多分子のタンパク質が固定化された高密度なものとすることができ、特定の活性を有するタンパク質を選択する際の検出感度が向上する。
かかるエマルジョンに用いられる乳化剤としては、ゴールドシュミット社製ABIL(登録商標)WE09、ABIL(登録商標)WS08、ABIL(登録商標)EM90等が挙げられる。
【0023】
工程(a)では、油中水型エマルジョンに平均1個以下の第一のビーズ14が含まれるように調製することが好ましい。
エマルジョンの数は、上記計算により算出され、全体におけるエマルジョンの数以下の個数の第一のビーズ14を用意すればよい。各エマルジョンに含まれる第一のビーズ14の数が2個以上の場合、核酸増幅反応後の第一のビーズ14の1個当たりが固定するDNA13の分子数が減少することになる。これは、高密度DNAマイクロアレイを作製するという観点から適切ではない。また、同じ種類のDNAが固定化されたビーズが複数存在する確率が高くなるため、スクリーニング効率の観点からも適切ではない。
【0024】
このようにDNA13の固相担体として第一のビーズ14を用いれば、基板上にDNA13を直接固定する場合より多分子数のDNA13を固定することができる。
【0025】
前記工程(a)において、膨大な分子数の変異DNAを準備することが好ましいため、鋳型DNAは、変異DNAライブラリー由来のcDNAであることが好ましい。
変異DNAライブラリーとしては、Error−prone PCR(エラープローンPCR)を利用したライブラリー、Gene assembly mutagenesisを利用したライブラリー、Random insertion and deletion mutagenesisを利用したライブラリー、DNA shufflingを利用したライブラリー、Family shufflingを利用したライブラリー、Staggered Extension Process in vitro recombinationを利用したライブラリー、ITCHY Hybrid protein libraries、SCRATCHY Hybrid Protein Libraries、Sequence Homology−independent Protein Recombinationを利用したライブラリー等が挙げられる。
【0026】
エラープローンPCR法とは、PCR反応中に人為的にランダムなエラーを発生させる方法である。該エラープローンPCR法においては、プルーフリーディング(校正)機能のないTaqDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。エラープローンである該TaqDNAポリメラーゼの本来の性質を利用したものである。更に、1突然変異が有用な頻度で起こるようにするために、反応液中にMn
2+を添加することや、dNTP濃度を不均衡にすることがより好ましく、かかる処理により、Taq DNAポリメラーゼのエラー発生率が増加する。
【0027】
工程(a)における前記エマルジョン内での鋳型DNAの核酸増幅反応としては、PCR(Polymerase Chain Reaction)、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)、NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)、ICAN(Isothermal and Chimerical primer−initiated Amplification of Nucleic acids)、TRC(Transcription Reverse−Transcription Concerted)、SDA(Strand Displacement Amplification)、TMA(Transcription Mediated Amplification)、SMAP(SMart Amplification Process)、RPA(Recombines polymerase amplification)、HDA(Helicase−dependent amplification)などが挙げられ、PCR法による増幅反応を利用することが好ましい。
【0028】
前記エマルジョン内での鋳型DNAの核酸増幅反応に用いられる試薬は、採用する核酸増幅反応に合わせて適当な核酸増幅反応用試薬を使用することが好ましい。例えば、核酸増幅反応としてPCRを採用する場合には、PCRを構成する各反応に必要な試薬、即ちdNTP及びDNAポリメラーゼが用いられる。DNAポリメラーゼとしては、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼ等の熱安定性DNAポリメラーゼを用いることが好ましく、試験開始前の伸長を防ぐためにホットスタート機能を持つDNAポリメラーゼや、プルーフリーディング(校正)機能を持つDNAポリメラーゼを使用することがより好ましい。これらの試薬は市販されており、容易に入手可能である。
【0029】
鋳型DNAや核酸増幅に必要な試薬等を含む水性成分は、核酸増幅反応に適した溶液として調製される。例えば、PCR反応が良好に進行するように、トリス−塩酸等のバッファーを用いて、pH7.0〜pH9.0程度の溶液とする。
【0030】
また、工程(a)は、エマルジョン内で核酸増幅反応を行い、固相結合部位が付加されたcDNAをビーズに固定化する工程を有することが好ましい。
本実施形態では、鋳型DNAの特定領域をPCR反応で増幅可能な一対のプライマーセット(以下、便宜上「第1プライマーと第2プライマー」と称する)が用いられることが好ましい。この態様において片方のプライマー(第2プライマー)を固相化しておけば、第2プライマーを介して固相担体(第一のビーズ14)に結合した状態で増幅産物を得ることができる。
【0031】
前記第2プライマーと前記第一のビーズ14との結合としては、上述したように、アビジン−ビオチン結合を利用する方法の他、前記第2プライマーをアミノ基、アルデヒド基、SH基、などの官能基で修飾し、固相をアミノ基、アルデヒド基、エポキシ基などを有するシランカップリング剤で表面処理したものを利用する方法などを用いることができ、特に、アビジン−ビオチン結合を利用した方法が好ましい。
【0032】
エマルジョンPCRを行った後、DNA固定化ビーズを取出すためにエマルジョンを破壊させることが好ましい。該エマルジョンの破壊は、当技術分野で公知の任意の手段によって可能であり、例えば、Triton X100やノニデット(Nonidet)P40等の界面活性剤を加えることにより行われる。
【0033】
工程(b)は、DNA13を転写してなるmRNA23とハイブリダイズし得る配列50と、タンパク質33との連結部2aを有するアーム部60と、を含む核酸リンカー2が固定化された第二のビーズ24を準備する工程である(
図1B、
図2参照)。
上述した様に、用いられるビーズは、球体であり、基板と比べて表面積が大きいため、固相担体として第二のビーズ24を用いることにより、固定化する核酸リンカー2の分子数を増やすことができる。固定化された核酸リンカー2の分子数は、後記工程(e1)において、第二のビーズ24が固定化するmRNA23の分子数、及び後記工程(g1)において、無細胞翻訳系を用いて合成されるタンパク質33の分子数に反映されるため、本実施形態によれば、1スポット当たりに多分子数のタンパク質を固定することができる。
【0034】
以下、本実施形態において用いられる核酸リンカー2の構造について、
図2を用いて説明する。
なお、核酸リンカーは、後述するように、前記DNAを転写してなるmRNAとハイブリダイズし得る配列と、前記タンパク質との連結部を有するアーム部と、ビーズへの固定化に用いられる基を含む構造のものであればよく、
図2の構造に限定されるものではない。
【0035】
(核酸リンカー)
工程(b)において用いられる核酸リンカー2は、mRNA23と、これらがコードするタンパク質33とを連結するためのリンカーである。
図2中、Pはピューロマイシン、Fはfluorescein(フルオロセイン)を示している。
【0036】
核酸リンカー2は、3’側の領域にスクリーニングすべきmRNA23の3’末端側の配列とハイブリダイズし得る配列50(以下、配列50)と、タンパク質33との連結部2aを末端に有するアーム部60を有する。
【0037】
配列50は,DNAであってもPNA(ポリヌクレオペプチド)などの核酸誘導体であってもよく、ヌクレアーゼ耐性が付与された修飾DNAが好ましい。修飾DNAとしては、ホスホロチオエートなどのヌクレオシド間結合を有するDNA、2’−フルオロ、2’−O−アルキルなどの糖修飾を有するDNAなど,当該技術分野において知られる修飾DNAのいずれを用いてもよい。
【0038】
アーム部60は、mRNA23とタンパク質連結部2aとを所望の距離に保持するスペーサーとして機能する。アーム部60の5’末端は、配列50の3’末端側の箇所で配列50と結合し、アーム部60の3’末端はタンパク質連結部2aを有する。
【0039】
配列50とアーム部60との連結は、配列50上の連結箇所に存在する修飾ヌクレオチド(例えばアミノ基がスペーサーを介して塩基部分に導入されたヌクレオチド)と、アーム部60の末端に存在する修飾ヌクレオチド(例えばチオールを5’末端にもつヌクレオチド)とを二官能性試薬を用いて架橋することにより行うことができる。
後述するようにスクリーニングすべきタンパク質をコードするmRNAを逆転写させる必要がある場合には、アーム部60の5’末端は、配列50の3’末端から数塩基5’側の位置で配列50と結合し、T字型の構造を形成していることが好ましい。逆転写の際に配列50の3’末端がプライマーとして機能するからである。
【0040】
3’末端を除くアーム部60は、標識物質を用いて標識されてもよい。標識物質は、蛍光色素や放射性物質等から適宜選択される。本実施形態においては、
図2に示されるように、3’末端を除くアーム部60がフルオロセイン2dで修飾されている。かかる修飾により核酸リンカー2が蛍光標識され、mRNA23−核酸リンカー2複合体、又は、mRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を容易に検出することができる。
【0041】
アーム部60の3’末端にはタンパク質33の連結部2aが存在する。タンパク質連結部2aとは,所定の条件下でリボソーム上の伸張中のタンパク質33のC末端に特異的に結合する性質を有する構造を意味し、ピューロマイシンが代表的である。
ピューロマイシンは、アミノアシル−tRNAの3’末端と類似する構造を有するタンパク質合成阻害剤である。タンパク質33の連結部2aとしては、伸張中のタンパク質33のC末端に特異的に結合する機能を有する限り、任意の物質を用いることができ、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(PANS−アミノ酸)、または3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(AANS−アミノ酸)などのピューロマイシン誘導体を用いることができる。
PANS−アミノ酸としては、アミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、バリンのPANS−Val、アラニンのPANS−Ala、又はアミノ酸部が全ての各アミノ酸に対応するPANS−アミノ酸混合物を挙げることができる。
AANS−アミノ酸としては、アミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、バリンのAANS−Val、アラニンのAANS−Ala、又はアミノ酸部が全アミノ酸の各アミノ酸に対応するAANS−アミノ酸混合物を挙げることができる。
ピューロマイシン以外に好適に使用できるアミノアシルtRNA3’末端アナログとしては、リボシチジルピューロマイシン(rCpPur)、デオキシジルピューロマイシン(dCpPur)、デオキシウリジルピューロマイシン(dUpPur)などを挙げることができる。
【0042】
アーム部60は、スペーサーとして機能するものであれば、核酸や核酸誘導体から構成されていてもよく、ポリエチレングリコールなどの高分子から構成されていてもよい。アーム部60にはさらに、ピューロマイシンの安定性を高めるための修飾や、複合体の検出のための標識が付加されていてもよい。
【0043】
本実施形態に用いられる核酸リンカー2は、切断部位2c1,2c2を含む。切断部位2c1,2c2としては、光切断性部位または1本鎖核酸切断酵素切断部位が挙げられる。
切断部位2c1,2c2により、タンパク質33と対応づけられるmRNA23(またはcDNA43)を回収することができる。
光切断性部位とは,紫外線などの光を照射すると切断される性質を有する基をいい、かかる基を用いたものとして、例えば、PC Linker Phosphoramidite(Glen research社)、フラーレンを含有してなる核酸の光切断用組成物(核酸の光切断用組成物:特開2005−245223)などが挙げられる。
光切断性部位としては、当該技術分野において市販されているか、または知られているいずれの基を用いてもよい。また、1本鎖核酸切断酵素切断部位とは、デオキシリボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼなどの1本鎖核酸切断酵素により切断されることができる核酸基をいい、ヌクレオチドおよびその誘導体が含まれる。
【0044】
本実施形態においては、核酸リンカー2は、第二のビーズ24と固定するための固相結合部位2bを有する。また、第二のビーズ24は、核酸リンカー2と結合するための固相結合部位認識部位24aを有する。
核酸リンカー2の固定化には、工程(a)におけるDNA13を第一のビーズ14に固定化する場合と同様に、アビジン−ビオチン結合を利用する方法の他、核酸リンカー2をアミノ基、ホルミル基、SH基、などの官能基で修飾し、第二のビーズ24をアミノ基、ホルミル基、エポキシ基などを有するシランカップリング剤で表面処理したものを利用する方法などを用いることができ、特に、アビジン−ビオチン結合を利用した方法が好ましい。
また、第二のビーズ24は、後述するビーズ配置用基板11中の反応槽12に、短時間で配列させることが可能であるという観点から磁気ビーズであることが好ましい。
このように、工程(b)において、核酸リンカー2が固定化された第二のビーズ24を準備する(
図1B参照)。
【0045】
工程(c1)は、ビーズ配置用基板11に配設された複数の反応槽12を準備する工程である(
図1C参照)。
ビーズ配置用基板11の表面及び反応槽12内壁を、DNA等生体分子の非特異吸着防止用ブロッキング剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)や2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)で好適にコーティングすることができる。かかるブロッキング剤をコーティングすることで、ビーズ配置用基板11表面や反応槽12の内壁への生体分子の非特異吸着を抑制することができる。
【0046】
ビーズ配置用基板11に用いられる基板材料は、透明なガラス又はポリマー材であることが好ましく、リークを抑える目的からは、ポリジメチルシロキサンなどのエラストマー材料であることがより好ましい。なお、ビーズ配置用基板11に用いられる基板材料にエラストマー材料を用いる場合、微小なゴミなどの粒子が反応槽12とビーズ配置用基板11との間に挟まれた時に生じる反応槽12全体のビーズ配置用基板11との密着性に及ぼす悪影響がエラストマーの局所的な変形により回避される利点がある。
【0047】
本実施形態において、第一のビーズ14及び第二のビーズ24として磁気ビーズを用いる場合には、ビーズ配置用基板11に用いられる基板材料下に、磁性体板が配設されていることが好ましい。
かかる構造のビーズ配置用基板11を用いることにより、反応槽12に第一のビーズ14及び第二のビーズ24を容易にかつ確実に配置することができる。
【0048】
工程(d1)は、前記工程(a)、(b)、及び(c1)の後、第一のビーズ14を反応槽12内に配置した後、第二のビーズ24を反応槽12内に配置する工程である(
図1D参照)。本実施形態においては、第一のビーズ14が第二のビーズ24より大きいものである。
反応槽12の底面は、正方形又は円であり、かかる底面の直径又は一辺は、前記第一のビーズの直径の1〜2倍である。そのため、第一のビーズ14を先に反応槽12内に配置させることにより、反応槽12内に第一のビーズ14が1個配置される。
これにより、後記工程(e1)において、1種類のDNA由来のmRNAが第二のビーズ24に固定化される。
【0049】
上述したように、第一のビーズ14及び第二のビーズ24は、磁気ビーズであることが好ましく、ビーズ配置用基板11は、磁気ビーズ配置用基板であることが好ましい。かかる場合、工程(d1)は、磁気ビーズ配置用基板の下部に磁石を配置し、磁気ビーズを反応槽12に誘導する工程を有することが好ましい。
具体的には、先ず、ビーズ配置用基板11(磁気ビーズ配置用基板)の下部に磁石を配置し、ビーズ配置用基板11(磁気ビーズ配置用基板)上に、DNA13を固定化した第一のビーズ14(磁気ビーズ)を分散させた分散液を滴下する。第一のビーズ14(磁気ビーズ)及び磁性体薄膜による磁力の作用により、反応槽12内へ第一のビーズ14(磁気ビーズ)が誘引されることにより配置されやすくなる。さらに磁石を適宜基板に対し平行方向に動かすことで第一のビーズ14(磁気ビーズ)が分散し、反応槽12内への充填率が向上する。
次いで、反応槽12内にDNA13が固定された第一のビーズ14を配置した後、核酸リンカー2が固定化された第二のビーズ24を配置する。
具体的な配置方法は、第一のビーズ14の配置方法と同様である。反応槽12内には、既に第一のビーズ14が1個充填されており、反応槽12内の残りの空間に、第二のビーズ24が少なくとも1個充填される。反応槽12に先に大きいビーズ(第一のビーズ14)を配置した後に、小さいビーズ(第二のビーズ24)を配置することにより、1つの反応槽12には、1個の第一のビーズ14と少なくとも1個の第二のビーズ24がそれぞれ配置される。
【0050】
磁石によりビーズ配置用基板に印加する磁場の強さは、所望の効果を得る上で、好ましくは100〜10000ガウスである。
また、磁石を取り除いた後も磁性体板の磁化は残るため、磁気ビーズは安定した配置を保持し続けることが可能となる。
【0051】
かかる磁性体の材料としては、ニッケル、ニッケル合金、鉄および鉄合金などの金属を好適に用いることができ、本実施形態においては残留磁化の大きな磁性材料を用いることが好ましい。
【0052】
反応槽12は、親水化されていることが好ましく、反応槽12を酸素プラズマ照射などにより親水化処理することにより、反応槽12内部への磁気ビーズを分散させた液の充填が容易になり、充填率が向上する。
【0053】
工程(e1)は、前記工程(d1)の後、転写系を用いて、第一のビーズ14に固定化されたDNA13を転写し、合成されたmRNA23を、第二のビーズ24に固定化された核酸リンカー2にハイブリダイズさせる工程である(
図1E参照)。
従来は、ビーズ間のmRNAの移送として、第一のビーズに固定化されたDNAを転写して合成されたmRNAを、ピペット等を用いて、核酸リンカーが固定化されている第二のビーズが充填されている反応槽に移し変えるしかなく、作業の迅速性、及び、mRNAの移送効率の面で問題があった。
本実施形態においては、同一の反応槽12内に、第一のビーズ14に固定化されたDNA13と、第二のビーズ24に固定化された核酸リンカー2が配置されているため、転写系を用いて、DNA13を転写してmRNA23が合成されると同時に、合成されたmRNA23がビーズ間(第一のビーズ14から第二のビーズ24へ)を拡散し、核酸リンカー2にハイブリダイズする。従って、本実施形態によれば、迅速に、且つ、効率よく、第二のビーズ24上にmRNA23−核酸リンカー2複合体が形成される。
【0054】
工程(e1)における転写系としては、RNAポリメラーゼにより転写させる従来公知のものが挙げられる。RNAポリメラーゼとしては、例えばT7RNAポリメラーゼが挙げられる。
また、工程(e1)において、mRNA23の3’末端と核酸リンカー2の5’末端とをライゲーションさせる工程を有することが好ましい。ライゲーションに際し、mRNA23の3’末端を、T4ポリヌクレオチドキナーゼ等の酵素を用いて、リン酸化させておく必要がある。ライゲーションに用いる酵素としては、RNAリガーゼが好ましく、例えばT4RNAリガーゼが挙げられる。
【0055】
本実施形態のタンパク質アレイの製造方法は、更に、
(f1)前記工程(e1)の後、前記第一のビーズ及び前記第二のビーズを回収して洗浄する工程と、
(g1)前記工程(f1)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズにハイブリダイズされたmRNAを翻訳し、合成されたタンパク質を、前記核酸リンカーを介して前記第二のビーズに連結させ、前記第二のビーズ上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を作製する工程と、
(h)ビーズ配置用基板配置用基板に配設された複数の第二のビーズ用反応槽であって、底面の直径又は一辺が前記第二のビーズの直径の1〜2倍であるものを準備する工程と、
(i1)前記工程(g1)及び(h)の後、前記第二のビーズを前記第二のビーズ用反応槽内に配置する工程と、を有し、
前記第一のビーズの直径は、前記第二のビーズ用反応槽底面の直径又は一辺よりも大きいことが好ましい。
以下、
図1F〜
図1Hを参照しながら、各工程について説明する。
【0056】
工程(f1)は、前記工程(e1)の後、第一のビーズ14及び第二のビーズ24を回収して洗浄する工程である(
図1F参照)。前記工程(e1)の後、転写系による反応槽12中の粘性が高いものとなっている。そこで、一度反応槽12から第一のビーズ14及び第二のビーズ24をバッチに回収し、洗浄により異物を取り除くことで、後記工程(g1)において前記第二のビーズ24にハイブリダイズされたmRNA23を翻訳する際、翻訳効率を上昇させることができる。
洗浄に用いられる洗浄液としては、後記工程(g1)で用いられる翻訳系のバッファー等を用いることが好ましい。洗浄方法としては、遠心分離による従来公知の方法が用いられる。
【0057】
工程(g1)は、前記工程(f1)の後、翻訳系を用いて、第二のビーズ24にハイブリダイズされたmRNA23を翻訳し、合成されたタンパク質33を、核酸リンカー2を介して第二のビーズ24に連結させ、第二のビーズ24上にmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製する工程である(
図1F参照)。
【0058】
工程(g1)における翻訳系とは、無細胞タンパク質合成系を意味する。
無細胞タンパク質合成系とは、適当な細胞から抽出されたタンパク質合成能を有する成分からなるタンパク質翻訳系であり、この系にはリボゾーム、翻訳開始因子、翻訳伸長因子、解離因子、アミノアシルtRNA合成酵素等、翻訳に必要な要素が含まれている。このようなタンパク質翻訳系として、大腸菌抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液、小麦胚芽抽出液等が挙げられる。
更に、上記翻訳に必要な要素が独立に精製された因子のみからなる再構成型無細胞タンパク質合成系が挙げられる。再構成型無細胞タンパク質合成系は、従来の細胞抽出液を使用する場合よりもヌクレアーゼやプロテアーゼの混入を容易に防ぐことができるため、翻訳効率を高めることができる。
このような翻訳系を用いることにより、第二のビーズ24にハイブリダイズされたmRNA23を翻訳し、タンパク質33が合成される。合成されたタンパク質33は、核酸リンカー2のタンパク質連結部2aに連結される。即ち、第二のビーズ24上にmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体が固定される。
【0059】
また、工程(g1)は、第二のビーズ24上にmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製した後、更に、mRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を逆転写反応に供して、第二のビーズ24上にmRNA23/cDNA43−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製する工程を有していてもよい(
図2参照)。逆転写に用いられる逆転写酵素としては、従来公知のものが用いられ、例えば、Moloney Murine Leukemia Virus由来の逆転写酵素等が挙げられる。
逆転写されたcDNA43はmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体のmRNA23とハイブリッドを形成する。mRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体中のmRNA23は、化学的に不安定であるほか、アプタマーとして非特異的相互作用する可能性が高いため、タンパク質間相互作用解析を行う場合には、このようなmRNA23/cDNA43−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製しておくことが好ましい。
また、スクリーニングにより、有用性の見出されたタンパク質をコードするcDNAを解析するためには、この複合体の作製が必須である。
【0060】
工程(h)は、ビーズ配置用基板61に配設された複数の第二のビーズ用反応槽62であって、底面の直径又は一辺が前記第二のビーズ24の直径の1〜2倍であるものを準備する工程である(
図1G、
図1H参照)。
ビーズ配置用基板61及び第二のビーズ用反応槽62の材質等については、ビーズ配置用基板11及び反応槽12の材質等と同様である。第二のビーズ24を、第二のビーズ用反応槽62へ効率よく充填させる観点から、ビーズ配置用基板61は、磁気ビーズ配置用基板であることが好ましい。
第二のビーズ用反応槽62の底面は、正方形又は円であり、かかる底面の直径又は一辺は、第二のビーズ24の直径の1〜2倍である。そのため、後記工程(i1)において、第二のビーズ用反応槽62内に第二のビーズ24が1個配置される。
【0061】
工程(i1)は、前記工程(g1)及び(h)の後、前記第二のビーズ24を前記第二のビーズ用反応槽62内に配置する工程である(
図1H参照)。
工程(g1)において、バッチ中の翻訳反応により得られたmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体が固定化された第二のビーズ24、及び第一のビーズ14を分散させた分散液を、ビーズ配置用基板61上に滴下する。
前記第一のビーズ14の直径は、第二のビーズ用反応槽62底面の直径又は一辺よりも大きいため、第二のビーズ24に固定されたmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を前記第二のビーズ用反応槽62内に配置する際には、第一のビーズ14は、第二のビーズ用反応槽62内に充填されることなく、第二のビーズ用反応槽62内に第二のビーズ24のみが充填される。
上述したように、第二のビーズ24を、第二のビーズ用反応槽62へ効率よく充填させる観点から、ビーズ配置用基板61は、磁気ビーズ配置用基板であり、磁気を利用することが好ましい。
【0062】
また、本実施形態のタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(f1)、(g1)、(h)及び(i1)に代えて、更に、前記工程(e1)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズ24にハイブリダイズされたmRNA23を翻訳し、合成されたタンパク質33を、前記核酸リンカー2を介して前記第二のビーズ24に連結させる工程(g2)を有していてもよい(
図1I参照)。
即ち、転写・翻訳カップリング反応液中、もしくは、転写反応を終えた反応槽12に翻訳系を重層し、転写系等の異物の混ざった翻訳反応液中で、第二のビーズ24上のmRNA23−核酸リンカー2複合体から、mRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を合成してもよい。
また、工程(g2)は、第二のビーズ24上にmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製した後、更に、mRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を逆転写反応に供して、第二のビーズ24上にmRNA23/cDNA43−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製する工程を有していてもよい。
【0063】
本実施形態のタンパク質アレイの製造方法によれば、ビーズ間のmRNAの移送を自動的に効率よく行えるため、工程数を削減することができ、作業の迅速化を図ることができる。
また、本実施形態のタンパク質アレイの製造方法によれば、DNAマイクロアレイから精度よく転写・翻訳されてなるタンパク質アレイを得ることができる。
さらに、本実施形態のタンパク質アレイの製造方法は、ビーズに固定されたDNAから、ビーズに固定された核酸リンカーを介してmRNA、タンパク質をビーズに固定する方法であるため、基板上に直接固定されたDNAから、転写・翻訳反応を介して、基板上に直接タンパク質を固定する場合よりも高密度のタンパク質アレイを得ることができる。
【0064】
[第2実施形態]
本実施形態のタンパク質アレイの製造方法は、タンパク質が配置された複数の反応槽を備えたタンパク質アレイの製造方法であって、
(a)前記タンパク質をコードするDNAが固定化された第一のビーズを準備する工程と、
(b)前記DNAを転写してなるmRNAとハイブリダイズしうる配列と、前記タンパク質との連結部を有するアーム部と、を含む核酸リンカーが固定化された第二のビーズを準備する工程と、
(c2)ビーズ配置用基板に配設された複数の反応槽内であって、連通孔を有する仕切りで仕切られ、底面の直径又は一辺の異なる2種類の微小反応槽からなるものを準備する工程と、
(d2)前記工程(a)、(b)、及び(c2)の後、前記第一のビーズと前記第二のビーズのうち、大きいビーズを大きい微小反応槽内に配置した後、小さいビーズを小さい微小反応槽内に配置する工程と、
(e2)前記工程(d2)の後、転写系を用いて、前記第一のビーズに固定化されたDNAを転写し、合成されたmRNAを、前記第二のビーズに固定化された核酸リンカーにハイブリダイズさせる工程と、を有し、
前記大きい微小反応槽の底面の直径又は一辺が前記大きいビーズの直径の1〜2倍であり、
前記小さい微小反応槽の底面の直径又は一辺が前記小さいビーズの直径の1〜2倍である。本実施形態において、第1実施形態の工程と同様のものについては説明を省略し、
図1A〜
図1Iのタンパク質アレイの製造方法の模式図に示されたものと同じ構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
工程(c2)は、ビーズ配置用基板11に配設された複数の反応槽12であって、連通孔を有する仕切り12aで仕切られ、径の異なる2種類の微小反応槽からなるものを準備する工程である(
図3A参照)。
複数の反応槽12は、連通孔を有する仕切り12aで仕切られ、大きい微小反応槽12bと小さい微小反応槽12cからなる。仕切り12aの有する連通孔の大きさは、mRNA23を通すことのできる大きさで、かつ、小さいビーズを通さない大きさであれば、特に限定されない。また、仕切り12aに設けられる連通孔の数についても特に限定されない。
【0066】
工程(d2)は、工程(a)、(b)、及び(c2)の後、第一のビーズ14と第二のビーズ24のうち、大きいビーズを大きい微小反応槽12b内に配置した後、小さいビーズを小さい微小反応槽12c内に配置する工程である(
図3B参照)。
ビーズ配置用基板11において、大きい微小反応槽12bの底面の直径又は一辺は、大きいビーズの直径の1〜2倍であり、小さい微小反応槽12cの底面の直径又は一辺は、小さいビーズの直径の1〜2倍である。
第一のビーズ14と第二のビーズ24のうち、どちらが大きい方であってもよいが、後記工程(i2)において、第二のビーズ24を第二のビーズ用反応槽62内に効率よく配置する観点から、本実施形態においては、第一のビーズ14を大きい方とする。
これにより、仮に後記工程(f2)において回収した第二のビーズ24に不純物として第一のビーズ14が混入していたとしても、後記工程(i2)において、大きさの大きい第一のビーズ14は、第二のビーズ用反応槽62内に充填されず、第二のビーズ24のみが第二のビーズ用反応槽62内に充填される。
【0067】
本実施形態におけるビーズの具体的な配置方法としては、先ず、大きいビーズである第一のビーズ14を、大きい微小反応槽12b内に配置する。
次いで、小さいビーズである第二のビーズ24を、小さい微小反応槽12c内に配置する。大きい微小反応槽12b内には、既に第一のビーズ14が1個充填されているため、第二のビーズ24が充填される余地はなく、第二のビーズ24は、小さい微小反応槽12cに1個充填される。
【0068】
工程(e2)は、前記工程(d2)の後、転写系を用いて、第一のビーズ14に固定化されたDNA13を転写し、合成されたmRNA23を、第二のビーズ24に固定化された核酸リンカー2にハイブリダイズさせる工程である。
本実施形態においては、隣接する微小反応槽12b,12c内に、1個の第一のビーズ14に固定化されたDNA13と、1個の第二のビーズ24に固定化された核酸リンカー2が仕切り12aを介して配置されている。そのため、転写系を用いて、DNA13を転写してmRNA23を合成すると同時に、合成されたmRNA23が連通孔を通って、ビーズ間(第一のビーズ14から第二のビーズ24へ)を拡散し、核酸リンカー2にハイブリダイズする。
従って、本実施形態によれば、所定の大きさのビーズを所定の微小反応槽に、1個ずつ配置することができるため、1個の第二のビーズ24上に、より多分子数のmRNA23−核酸リンカー2複合体が形成される。
【0069】
工程(e2)における転写系としては、工程(e1)における転写系と同様のものが挙げられる。
また、工程(e2)において、mRNA23の3’末端と核酸リンカー2の5’末端とをライゲーションさせる工程を有することが好ましい。工程(e1)と同様に、ライゲーションに際し、mRNA23の3’末端を、T4ポリヌクレオチドキナーゼ等の酵素を用いて、リン酸化させておく必要がある。ライゲーションに用いる酵素としては、RNAリガーゼが好ましく、例えばT4RNAリガーゼが挙げられる。
【0070】
本実施形態のタンパク質アレイの製造方法は、更に、
(f2)前記工程(e2)の後、前記第二のビーズを回収して洗浄する工程と、
(g3)前記工程(f2)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズにハイブリダイズされたmRNAを翻訳し、合成されたタンパク質を、前記核酸リンカーを介して前記第二のビーズに連結させる工程と、
(h)ビーズ配置用基板に配設された複数の第二のビーズ用反応槽であって、底面の直径又は一辺が前記第二のビーズの直径の1〜2倍であるものを準備する工程と、
(i2)前記工程(g3)及び(h)の後、前記第二のビーズを前記第二のビーズ用反応槽内に配置する工程と、を有することが好ましい。
以下、各工程について説明する。
【0071】
工程(f2)は、前記工程(e2)の後、前記第二のビーズ24を回収して洗浄する工程である。本実施形態においては、第一のビーズ14及び第二のビーズ24がそれぞれ別の微小反応槽12b,12cに配置されているため、微小反応槽12cから第二のビーズ24のみを回収することができる。また、工程(f1)と同様に、第一のビーズ14及び第二のビーズ24の両方を回収した後、工程(i1)で第二のビーズ24のみを選別して、第二のビーズ24を第二のビーズ用反応槽62内に配置してもよい。
【0072】
工程(g3)は、前記工程(f2)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズ24にハイブリダイズされたmRNA23を翻訳し、合成されたタンパク質33を、前記核酸リンカー2を介して前記第二のビーズ24に連結させ、第二のビーズ24上にmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製する工程である。工程(g3)は、前記工程(f2)の後に行われること以外は、前記工程(g1)と同様であるため、説明を省略する。
また、工程(g3)は、第二のビーズ24上にmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製した後、更に、mRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を逆転写反応に供して、第二のビーズ24上にmRNA23/cDNA43−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製する工程を有していてもよい。
【0073】
工程(i2)は、前記工程(g3)及び(h)の後、前記第二のビーズ24を前記第二のビーズ用反応槽62内に配置する工程である。
工程(f2)において、第一のビーズ14及び第二のビーズ24の両方を回収する場合には、前記第一のビーズ14の直径は、前記第二のビーズ24の直径の2倍以上であることが好ましい。第一のビーズ14の直径が係る場合には、第一のビーズ14は、第二のビーズ用反応槽62内に充填されることなく、第二のビーズ用反応槽62内に第二のビーズ24のみが充填される。
また、工程(f2)において、第二のビーズ24のみを回収する場合には、第一のビーズ14の直径についての上記限定は必要とされない。
【0074】
また、本実施形態のタンパク質アレイの製造方法は、前記工程(f2)、(g3)、(h)及び(i2)に代えて、更に、前記工程(e2)の後、翻訳系を用いて、前記第二のビーズ24にハイブリダイズされたmRNA23を翻訳し、合成されたタンパク質33を、前記核酸リンカー2を介して前記第二のビーズ24に連結させる工程(g4)を有していてもよい。工程(g4)は、前記工程(e2)の後に行われること以外は、前記工程(g2)と同様であるため、説明を省略する。
また、工程(g4)は、第二のビーズ24上にmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製した後、更に、mRNA23−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を逆転写反応に供して、第二のビーズ24上にmRNA23/cDNA43−核酸リンカー2−タンパク質33複合体を作製する工程を有していてもよい。
【0075】
本実施形態のタンパク質アレイの製造方法によれば、所定の大きさのビーズを所定の微小反応槽に、1個ずつ配置することができるため、1個の第二のビーズ24上に多分子数のmRNA23−核酸リンカー2複合体が形成される。従って、第1実施形態の効果に加えて、より高密度のタンパク質アレイを得ることができる。
【0076】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
(ビオチン修飾二本鎖DNAの調製)
5’側にT7、オメガ配列、Kozak配列、3’末端にリンカーのDNA部分と相補な配列をもち、終止コドンを削ったGFP遺伝子(配列番号1:889bp)を鋳型とし、ビオチン修飾されたプライマーを用いてPCRによりビオチン修飾二本鎖DNAを調製した。反応液を表1に記載の組成となるように調製し、98℃で2分間保持した後、98℃10秒、68℃10秒、72℃20秒の3ステップPCRを20サイクル行い、4℃で冷却した。
用いたプライマーの配列を以下に示す。
(1) Biotin−New Left (22mer)
[配列:5’−(B)−X−3’]
ここで、Xは以下の配列を表す。
GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGG(配列番号2:33mer)
(2)New Ytag to HGGS−R (33mer)
[配列:5’−TTTCCCCGCCGCCCCCCGTCCTGCTTCCGCCGTGATGAT−3’] (配列番号3:39mer)
【0078】
【表1】
【0079】
PCR産物に対してPAGE解析(4%非変性PAGE, SybrGold染色)を行い、889bpの目的産物の増幅を確認した。その結果を
図4に示す。上記PCR産物をQIAquick PCR purification column (Qiagen) で精製し、濃度2.9x10
−8Mのビオチン修飾二本鎖DNAを得た。
【0080】
(磁気ビーズの前処理)
Dynabeads MyOne streptavidin C1(10mg/ml, invitrogen) 100μlを、Solution A (0.1M NaOH, 0.05M NaCl) 100μlを用いて2回washし、SolutionB (0.1M NaCl)100μlを用いて1回washし、1x Binding buffer (10mM Tris−HCl,1 mM EDTA,1M NaCl, 0.1% Triton X−100) 100 μlに懸濁した。懸濁液を3本のエッペンドルフチューブに10μlずつ分注し、更に3本のエッペンドルフチューブに20μlずつ分注した。
【0081】
(ビオチン修飾二本鎖DNAの固定)
10μlずつ分注した懸濁液の上清を除去し、表2に記載された組成の溶液に懸濁し、室温で30分間攪拌した。懸濁液中の磁気ビーズを、1x Binding buffer 100 μlで3回washした後、1x T7 transcription buffer (promega) 20 μl に懸濁した。
【0082】
【表2】
【0083】
(核酸リンカーの固定)
20μlずつ分注した懸濁液の上清を除去し、表3に記載された組成の溶液に懸濁し、室温で30分間攪拌した。懸濁液中の磁気ビーズを、1x Binding buffer 100 μlで3回washした後、1x T7 transcription buffer (promega) 20 μl に懸濁した。
【0084】
【表3】
【0085】
表3中、SBP(I)とは、核酸リンカーを表す。
図5に、GFPのmRNAと核酸リンカー(SBP(I))をハイブリダイズさせたものの概略図を示す。
図5中、Pはピューロマイシン、FはFITC、EMCSは二価架橋剤、Bはビオチンを示す。(Spc18)は(18−O−Dimethoxytritylhexaethyleneglycol,1−[(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramidite)を示す。
大文字で示した部分はDNA部分、小文字で示した部分はmRNAを示す。Iはデオキシイノシンを示し、矢印はEndonucleaseVによる切断部位を示す。
【0086】
(転写反応)
ビオチン修飾二本鎖DNA固定化磁気ビーズ40μlと核酸リンカー固定化磁気ビーズ 80μlを混合した後、上清を除去し、表4に記載された組成の転写反応液に懸濁し、37℃で、2時間撹拌反応した。尚、In vitro転写キットとして、Ribomax large scale RNA production System (T7) (Promega)を使用した。
反応後の上清の一部をPAGE解析(8 M Urea 4% PAGE,SybrGold染色)した。結果を
図6に示す。レーンA,B,Cは、3連の結果を示す。
図6に示されるように、磁気ビーズ上に固定されたビオチン修飾二本鎖DNAをテンプレートにした転写反応によって、mRNAが生成されていることが確認された。
【0087】
【表4】
【0088】
(逆転写反応・EndonucleaseV処理)
懸濁液中の磁気ビーズを、1x Binding buffer 100 μlで3回washし、1x RT buffer(Toyobo) 20 μlで1回washした後、表5に記載された組成の溶液に懸濁し、42℃で30分間攪拌した。
【0089】
【表5】
【0090】
(EndonucleaseV処理)
懸濁液の上清を除去し、表6に記載された組成の溶液に懸濁し、37℃で1時間攪拌した。EndonucleaseV処理反応後の上清を回収し、回収された上清3μlに対してPAGE解析(4%非変性PAGE, SybrGold染色、およびFITC蛍光検出) を行った。結果を
図7に示す。レーンA,B,Cは、3連の結果を示す。
【0091】
【表6】
【0092】
図7中、逆転写反応後でEndonucleaseV処理反応前の上清(逆転写反応上清)、及び逆転写反応後でEndonucleaseV処理反応後の上清(EndonucleaseV処理後上清)の両レーンにおいて、SybrGold染色によりバンドが検出されたことから、逆転写反応によりcDNAが生成されていることが確認された。
更に、EndonucleaseV処理後上清のレーンでのみ、核酸リンカーに標識されたFITC蛍光が検出されたことから、mRNA/cDNA−核酸リンカー複合体が形成され、EndonucleaseV処理により、核酸リンカーの有する切断部位でmRNA/cDNA−核酸リンカー複合体が切断されていることが確認された。
【0093】
更に、EndonucleaseV処理後上清のPAGE(8M Urea 5% PAGE, SybrGold染色、およびFITC蛍光検出)解析を行った。結果を
図8に示す。
図8左は、SybrGold染色による解析結果を示し、
図8右は、FITC蛍光検出による解析結果を示す。
図8左において、逆転写処理後、未反応のmRNAが存在しないことから、核酸リンカー(SBP(I))にハイブリダイズしたmRNAは全て逆転写されていることが確認された。FITC蛍光検出像から、ハイブリダイズ効率は15−40%であった。
【0094】
以上の結果から、本実施形態のタンパク質アレイの製造方法によれば、ビーズ間のmRNAの移送を自動的に効率よく行えるため、工程数を削減することができ、作業の迅速化を図ることができる。また、本実施形態のタンパク質アレイの製造方法によれば、DNAマイクロアレイから精度よく転写・翻訳されてなるタンパク質アレイを得ることができる。
さらに、本実施形態のタンパク質アレイの製造方法は、ビーズに固定されたDNAから、ビーズに固定された核酸リンカーを介してmRNA、タンパク質をビーズに固定する方法であるため、基板上に直接固定されたDNAから、転写・翻訳反応を介して、基板上に直接タンパク質を固定する場合よりも高密度のタンパク質アレイを得ることができることが明らかである。