特許第6019518号(P6019518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019518水蒸気バリアフィルム、水蒸気バリアフィルム用分散液、水蒸気バリアフィルムの製造方法、太陽電池バックシート、及び、太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019518
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】水蒸気バリアフィルム、水蒸気バリアフィルム用分散液、水蒸気バリアフィルムの製造方法、太陽電池バックシート、及び、太陽電池
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20161020BHJP
   H01L 31/049 20140101ALI20161020BHJP
【FI】
   C08J5/18CFG
   H01L31/04 562
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-531223(P2013-531223)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2012071062
(87)【国際公開番号】WO2013031578
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-186506(P2011-186506)
(32)【優先日】2011年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-170039(P2012-170039)
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 誠二
(72)【発明者】
【氏名】見正 大祐
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 加瑞範
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 武雄
(72)【発明者】
【氏名】林 拓道
(72)【発明者】
【氏名】中村 考志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 学
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−343409(JP,A)
【文献】 特開2005−194415(JP,A)
【文献】 特開2003−313322(JP,A)
【文献】 特開2007−277078(JP,A)
【文献】 特開2011−001237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
H01L 31/049
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状ケイ酸塩鉱物と合成樹脂とを含有する水蒸気バリアフィルムであって、
前記層状ケイ酸塩鉱物として非膨潤性粘土鉱物と膨潤性粘土鉱物とを含有し、
前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量が水蒸気バリアフィルムの全重量に対して30重量%以上90重量%以下であり、かつ、
40℃、90%RHの環境下での水蒸気透過度が0.5g/m・day以下であり、
前記非膨潤性粘土鉱物は、膨潤力が5mL/2g未満であり、
前記膨潤性粘土鉱物は、膨潤力が5mL/2g以上である
ことを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
【請求項2】
非膨潤性粘土鉱物は、タルク、カオリン、及び、パイロフィライトからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項3】
膨潤性粘土鉱物は、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、及び、スチーブンサイトからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項4】
膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物の全重量に対して2重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項5】
合成樹脂は、耐熱性合成樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項6】
耐熱性合成樹脂は、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項7】
厚みが10μm以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の水蒸気バリアフィルムの製造に用いる水蒸気バリアフィルム用分散液であって、
分散媒と、不揮発成分である層状ケイ酸塩鉱物並びに合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有し、
前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量が不揮発成分の全重量に対して30重量%以上90重量%以下であることを特徴とする水蒸気バリアフィルム用分散液。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の水蒸気バリアフィルムを製造する方法であって、分散媒と、膨潤性粘土鉱物とを含有する膨潤性粘土鉱物分散液を調製する工程1と、分散媒と、非膨潤性粘土鉱物と、合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有する非膨潤性粘土鉱物分散液を調製する工程2と、
膨潤性粘土鉱物分散液と非膨潤性粘土鉱物分散液とを混合し、請求項8記載の水蒸気バリアフィルム用分散液を調製する工程3と、
調製した水蒸気バリアフィルム用分散液を基板上に展開して静置する工程4と、
基板上に展開した水蒸気バリアフィルム用分散液から分散媒を除去してフィルム状に成形する工程5とを有する
ことを特徴とする水蒸気バリアフィルムの製造方法。
【請求項10】
工程5において、分散媒を除去する際の温度が150℃以下であることを特徴とする請求項9記載の水蒸気バリアフィルムの製造方法。
【請求項11】
基板は、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、又は、ポリプロピレンからなることを特徴とする請求項9又は10記載の水蒸気バリアフィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の水蒸気バリアフィルムを用いてなることを特徴とする太陽電池バックシート。
【請求項13】
請求項1、2、3、4、5、6若しくは7記載の水蒸気バリアフィルム、又は、請求項12記載の太陽電池バックシートを用いてなることを特徴とする太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い機械的強度を有し、柔軟性、難燃性、及び、水蒸気バリア性に優れる水蒸気バリアフィルムに関する。また、本発明は、該水蒸気バリアフィルムの製造に用いる水蒸気バリアフィルム用分散液、該水蒸気バリアフィルムの製造方法、該水蒸気バリアフィルムを用いてなる太陽電池バックシート、該水蒸気バリアフィルム又は該太陽電池バックシートを用いてなる太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野で小型化、薄膜化、高機能化に伴いフレキシブルかつ耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、難燃性、不燃性、寸法安定性、水蒸気バリア性に優れた、高機能なフィルムが求められている。
これまで、電子デバイス用のフィルムは、主に、基材として有機高分子材料を用いて製造されてきた。ガスバリア性を有するフィルムとしては、高分子樹脂フィルムを基材として、該高分子樹脂フィルムの片面又は両面に、ガスバリア層を形成したフィルムが一般的であり、該ガスバリア層としては、酸化アルミ、酸化ケイ素、窒化ケイ素等からなるものが、CVD法、PVD法等の様々な方法により形成されている。
【0003】
耐熱性フィルムとしては、例えば、フッ素樹脂を用いたフィルムや薄板ガラスが開発されているが、フッ素樹脂は高価である上、寸法安定性に乏しく、水蒸気バリア性も低い。更に、最高使用温度が200℃前後と低く、高温での使用ができないという欠点がある。有機高分子材料の耐熱性は、最も高いエンジニアリングプラスチックで約350℃であり、更に高い温度でのガスバリア、水蒸気バリアが必要な用途には使用できなかった。また、薄板ガラスは安価で耐熱性や水蒸気バリア性は非常に優れるものの、柔軟性が充分ではなかった。そのため、高温におけるガスバリア性、水蒸気バリア性を有する材料としては、無機系シート又は金属シートを用いなければならなかった。
【0004】
無機系シートは、マイカやバーミキュライト等の天然又は合成鉱物をシート状に加工したものであり、これらは、高い耐熱性を有し、グランドパッキンとして、一応のガスシール部材として用いられている。しかし、これらの無機シートは、緻密に成型することが困難であり、微小なガス分子の流れるパスを完全に遮断できず、ガスバリア性がそれほど高くはなく、柔軟性もないという問題がある。
また、金属シートは、ガスバリア性には優れているものの、耐候性、電気絶縁性、耐薬品性等に難点があり、その用途が限られる。例えば、太陽電池等過酷な環境下で用いられるデバイスの保護膜や、バックシートでは、耐紫外線、耐湿、耐熱、耐塩害等の耐候性や、水蒸気バリア性、電気絶縁性、機械的強度、耐薬品性、封止材との接着性等が要求される。ガスバリア性に対しても、従来材料より、厳しい環境下で用いることが可能なフィルムが求められている。
【0005】
一般的に多く用いられているポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムは柔軟であるものの、水蒸気バリア性や耐熱性に乏しく、近年、合成樹脂と無機化合物との混合によって更に高機能なフィルムを作製する試みが多くなされている。しかしながら、無機化合物の配合量を増加させるにつれて耐熱性が向上するものの、反対に柔軟性や機械的強度に劣るものとなるため、柔軟性、水蒸気バリア性に優れ、高い機械的強度を有するフィルムを製造することは困難であった。
【0006】
また、ポリイミド樹脂に粘土等の無機化合物を配合したフィルムが報告されているが、無機化合物は一般的にポリイミド樹脂と均一に混合されず、無機化合物が分離するため均一なフィルムが得られない。特許文献1〜4には、ポリイミドと無機化合物の均一な分散液を得るために、添加物として粘土の層間イオンを有機イオンに交換したものを調製して作製したフィルムが開示されているが、粘土に有機物を含むため、作製されたフィルムは耐熱性が低く、炎にさらすと燃焼するという欠点がある。更に、水蒸気バリア性が高くないという欠点もある。
【0007】
また、特許文献5、6には、不揮発成分がフィルム用分散液の全体量の5重量%以下という希薄な分散液を用いて作製したフィルムが開示されているが、無機化合物含量が全不揮発成分の8重量%以下のフィルムしか得られておらず、有機成分が大多数を占めるため、耐熱性に劣るものであった。
【0008】
更に、特許文献7、8には、無機化合物の含有量が全不揮発成分に対して80重量%以上であるフィルムが開示されている。しかしながら、得られたフィルムは破れやすく、機械的強度が低いためハンドリング性が悪く、扱いにくいという問題がある。さらに、フィルムに厚みを持たせることが困難で、40μmよりも厚いものを作製しようとすると、亀裂や割れが生じるという欠点があった。
【0009】
一方、特許文献9には、少なくとも2層以上の基材をポリウレタン系接着剤にて貼り合わせた積層体からなる太陽電池バックシートにおいて、85℃、85%RHでの促進試験において、ポリウレタン系接着剤の耐久性を向上する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献9に開示されている技術を用いても、接着剤を用いるため、耐久性は充分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−340919号公報
【特許文献2】特開2002−322292号公報
【特許文献3】特開2003−342471号公報
【特許文献4】特許第3744634号公報
【特許文献5】特表2010−533213号公報
【特許文献6】特表2010−533362号公報
【特許文献7】特開2006−77237号公報
【特許文献8】特開2011−1237号公報
【特許文献9】特開2008−4691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、高い機械的強度を有し、柔軟性、難燃性、及び、水蒸気バリア性に優れる水蒸気バリアフィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該水蒸気バリアフィルムの製造に用いる水蒸気バリアフィルム用分散液、該水蒸気バリアフィルムの製造方法、該水蒸気バリアフィルムを用いてなる太陽電池バックシート、該水蒸気バリアフィルム又は該太陽電池バックシートを用いてなる太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、層状ケイ酸塩鉱物と合成樹脂とを含有する水蒸気バリアフィルムであって、前記層状ケイ酸塩鉱物として非膨潤性粘土鉱物と膨潤性粘土鉱物とを含有し、前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量が水蒸気バリアフィルムの全重量に対して30重量%以上90重量%以下であり、かつ、40℃、90%RHの環境下での水蒸気透過度が0.5g/m・day以下であり、前記非膨潤性粘土鉱物は、膨潤力が5mL/2g未満であり、前記膨潤性粘土鉱物は、膨潤力が5mL/2g以上である水蒸気バリアフィルムである。
以下に、本発明を詳述する。
【0013】
本発明者らは、非膨潤性粘土鉱物と膨潤性粘土鉱物とを含有する層状ケイ酸塩鉱物を特定量配合することにより、高い機械的強度を有し、柔軟性、難燃性、及び、水蒸気バリア性に優れる水蒸気バリアフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
これまでの水蒸気バリアフィルムは、水蒸気バリア性を発揮させるために膨潤性粘土鉱物を用いていた。膨潤性粘土鉱物は層間イオンを有するために分散媒中で膨潤と剥離をし、分散媒除去中に徐々に積層し、水蒸気等のガスバリア性を発揮することが知られている。しかしながら、膨潤性粘土鉱物を用いたフィルム、例えば、膨潤性粘土鉱物と非膨潤性粘土鉱物と合成樹脂とのコンポジットフィルムは、均一な分散液の調製が難しく、均一なフィルムの形成が困難であった。また、通常、膨潤性粘土鉱物を用いたフィルムは厚くすることが困難であり、製膜過程で亀裂や割れが生じるため40μm以上の厚みのものを作製することが困難であった。
また、非膨潤性粘土鉱物は通常、板状結晶が高配向したフィルムを得ることができないため、非膨潤性粘土鉱物を用いて高い水蒸気バリア性を有するフィルムを作製することは困難であった。そこで、本発明者らは、まず、膨潤性粘土鉱物と非膨潤性粘土鉱物とを特定量含有する均一な分散液を、特定の混合方法を用いることにより調製できることを見出した。更に、驚くべきことに、非膨潤性粘土鉱物単一では板状結晶が高配向したフィルムにならないが、この均一な分散液を用いることで、非膨潤性粘土鉱物を含めてすべての粘土鉱物が高配向したフィルムとなり、高い水蒸気バリアを発揮することを見出した。これにより、高い機械的強度を有し、柔軟性、難燃性、及び、水蒸気バリア性に優れる水蒸気バリアフィルムを開発することに成功した。
【0014】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、層状ケイ酸塩鉱物を含有する。
本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記層状ケイ酸塩鉱物として、非膨潤性粘土鉱物と膨潤性粘土鉱物とを含有する。
なお、本明細書において、前記「非膨潤性」とは、水や有機溶媒に加えた際にほとんど膨潤しないことをいう。具体的には、膨潤力が5mL/2g未満であるものをいう。
前記「膨潤力」は、日本ベントナイト工業会標準試験方法JBAS−104−77、ベントナイト(粉状)の膨潤力測定方法に準じた方法で、水100mLの入った100mL容メスシリンダーに粘土鉱物の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読むことで測定することができる。
前記非膨潤性粘土鉱物を含有せず、膨潤力が5mL/2g以上の膨潤性粘土鉱物のみを含有する場合、分散媒への分散性が悪くなり、フィルムが表面の平坦性に劣るものとなる。前記非膨潤性粘土鉱物の膨潤力の好ましい上限は4mL/2g、より好ましい上限は3mL/2gである。特に限定されるわけではないが、実用上の観点から、好ましい下限は0.5mL/2gである。
【0015】
前記非膨潤性粘土鉱物としては、例えば、天然物又は合成物の雲母、タルク、カオリン、パイロフィライト等が挙げられる。なかでも、得られるフィルムの機械的強度や水蒸気バリア性の観点から、層電荷が0である粘土鉱物が好ましく、タルク、カオリン、パイロフィライトからなる群から選択される少なくとも一種がより好ましい。前記非膨潤性粘土鉱物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本明細書において、前記「膨潤性」とは、水や有機溶媒に加えた際に膨潤することをいう。前記膨潤性粘土鉱物の層間にはナトリウムイオン等のイオンが存在し、それらのイオンと溶媒の親和力により膨潤性粘土鉱物は膨潤する。具体的には、上述した「膨潤力」が5mL/2g以上であるものをいう。
前記膨潤性粘土鉱物を含有せず、膨潤力が5mL/2g未満の非膨潤性粘土鉱物のみを含有する場合、得られるフィルム中の粘土鉱物の積層化が悪くなり、水蒸気透過度が大きくなる。前記膨潤性粘土鉱物の膨潤力の好ましい下限は18mL/2g、より好ましい下限は50mL/2g、更に好ましい下限は80mL/2gである。特に限定されるわけではないが、実用上の観点から、好ましい上限は105mL/2gである。
【0017】
前記膨潤性粘土鉱物としては、例えば、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、ソマシフ(コープケミカル社製)、クニピア(クニミネ工業社製)等が挙げられ、クニピアが好ましく用いられる。なかでも、得られるフィルムの平滑性や水蒸気バリア性の観点から、層電荷が1/2単位胞あたり0.2〜0.6である粘土鉱物が好ましく、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、及び、スチーブンサイトからなる群から選択される少なくとも一種がより好ましい。前記膨潤性粘土鉱物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記膨潤性粘土鉱物は、分散液の分散性を向上させることを目的として、シリル化剤と反応させて変性したものであることが好ましい。
前記シリル化剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
前記膨潤性粘土鉱物は、膨潤性や耐水性を向上させることを目的として、層間陽イオンを交換したものであることが好ましい。
前記層間陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオン、アンモニウムイオン化合物、ホスホニウムイオン化合物等のオニウムイオン、水素イオン等に交換することが好ましく、層間イオンが1価である、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン化合物、ホスホニウムイオン化合物、水素イオン等がより好ましい。耐水性の効果を高める観点から、リチウムイオンに交換することが更に好ましい。
【0020】
前記層状ケイ酸塩鉱物の平均粒子径によっても、得られる水蒸気バリアフィルムの性質が変わるため、前記層状ケイ酸塩鉱物は、粒子径を選択した上で使用することが好ましい。
【0021】
前記膨潤性粘土鉱物の平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は50μmである。前記膨潤性粘土鉱物の平均粒子径が0.01μm未満であると、フィルム中の粘土鉱物の積層化が悪くなり、水蒸気透過度が大きくなることがある。前記膨潤性粘土鉱物の平均粒子径が50μmを超えると、得られるフィルムが表面の平坦性に劣るものとなることがある。前記膨潤性粘土鉱物の平均粒子径のより好ましい下限は0.05μm、より好ましい上限は20μm、更に好ましい下限は0.1μm、更に好ましい上限は15μmである。
また、前記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は50μmである。前記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径が0.1μm未満であると、得られるフィルムが機械的強度に劣るものとなることがある。前記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径が50μmを超えると、得られるフィルムが表面の平坦性に劣るものとなることがある。前記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径のより好ましい下限は0.2μm、より好ましい上限は20μm、更に好ましい下限は0.5μm、更に好ましい上限は15μmである。
なお、前記膨潤性粘土鉱物、前記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計等を用いて粒度分布を測定することにより求めることができる。
【0022】
前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量は、水蒸気バリアフィルムの全重量に対して、下限が30重量%、上限が90重量%である。前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量が30重量%未満であると、得られるフィルムの水蒸気透過度が高くなるだけでなく、耐熱性も悪くなる。前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量が90重量%を超えると、得られるフィルムが機械的強度に劣るものとなる。前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量の好ましい下限は35重量%、好ましい上限は85重量%、より好ましい下限は40重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい下限は50重量%、更に好ましい上限は70重量%、特に好ましい下限は60重量%である。
【0023】
前記膨潤性粘土鉱物の含有量は、層状ケイ酸塩鉱物全重量に対して、好ましい下限が2重量%、好ましい上限が80重量%である。前記膨潤性粘土鉱物の含有量が2重量%未満であると、得られるフィルムの水蒸気透過度が高くなることがある。前記膨潤性粘土鉱物の含有量が80重量%を超えると、得られるフィルムが機械的強度に劣るものとなることがある。前記膨潤性粘土鉱物の含有量のより好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は70重量%、更に好ましい下限は10重量%、更に好ましい上限は60重量%、特に好ましい下限は20重量%、特に好ましい上限は50重量%である。
即ち、前記非膨潤性粘土鉱物と前記膨潤性粘土鉱物との比は、重量比で98:2〜20:80であることが好ましい。前記非膨潤性粘土鉱物の比率が20%未満であると、得られるフィルムが機械的強度に劣るものとなることがある。前記非膨潤性粘土鉱物の比率が98%を超えると、得られるフィルムの水蒸気透過度が高くなることがある。
【0024】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、合成樹脂を含有する。
前記合成樹脂は特に限定されず、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等が挙げられる。なかでも、耐熱性の観点から、前記合成樹脂は、耐熱性合成樹脂が好ましく、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)が好ましい。
前記耐熱性合成樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等が挙げられる。なかでも、得られる不燃フィルムの製膜性、耐熱性、及び、機械的強度が特に優れるものとなることから、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂が好適に使用される。
【0025】
前記ポリイミド樹脂は、下記式(1)の繰り返し構造を有する化合物であり、前記ポリアミドイミド樹脂は、下記式(2)の繰り返し構造を有する化合物である。
【0026】
【化1】
【0027】
式(1)中、Rは4価であり、ベンゼン環を一つ又は二つ有する有機基である。なかでも、Rは下記式(3)に示す構造であることが好ましく、前記ポリイミド樹脂は、Rとして下記式(3)に示す構造を単独で有するものであってもよいし、2種類以上有する共重合体であってもよい。
【0028】
【化2】
【0029】
式(2)中、Rは3価であり、ベンゼン環を一つ又は二つ有する有機基である。なかでも、Rは下記式(4)に示す構造であることが好ましく、前記ポリアミドイミド樹脂は、Rとして下記式(4)に示す構造を単独で有するものであってもよいし、2種類以上有する共重合体であってもよい。
【0030】
【化3】
【0031】
式(1)及び式(2)中、Rは2価でありベンゼン環を一つ又は二つ有する有機基である。なかでも、Rは下記式(5)に示す構造であることが好ましく、前記ポリイミド樹脂及び前記ポリアミドイミド樹脂は、Rとして下記式(5)に示す構造を単独で有するものであってもよいし、2種類以上有する共重合体であってもよい。
【0032】
【化4】
【0033】
なかでも、得られる水蒸気バリアフィルム支持層が安価で機械的強度に優れるものとなることから、R、R、及び、Rは、下記式(6)に示す構造であることが好ましい。前記ポリイミド樹脂は、R、Rとして下記式(6)に示す構造を単独で有するものであってもよいし、2種類以上有する共重合体であってもよい。また、前記ポリアミドイミド樹脂は、R、Rとして下記式(6)に示す構造を単独で有するものであってもよいし、2種類以上有する共重合体であってもよい。
【0034】
【化5】
【0035】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、機械的強度を上げるため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤を含有していてもよい。
前記シラン系カップリング剤としては、例えば、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メタクリル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤及びイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。
前記チタネート系カップリング剤としては、例えば、少なくとも炭素数1〜60のアルキレート基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスファイト基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤もしくはアルキルパイロホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
前記カップリング剤は、事前に層状ケイ酸塩鉱物と混合させて作用させておいてもよいし、後述する水蒸気バリアフィルム用分散液に混合してもよい。
【0036】
前記カップリング剤の使用量は、層状ケイ酸塩鉱物の全重量に対して好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は3.0重量%である。前記カップリング剤の使用量が0.1重量%未満であると、カップリング剤を使用する効果が充分に発揮されないことがある。前記カップリング剤を、3.0重量%を超えて使用しても、使用量に見合った効果が得られないことがある。前記カップリング剤の使用量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は2.0重量%である。
【0037】
本発明の水蒸気バリアフィルムの厚みは、10μm以上であることが好ましい。水蒸気バリアフィルムの厚みが10μm未満であると、水蒸気バリア性が低下するだけでなく、機械的強度が低くなり、取り扱いが困難になることがある。水蒸気バリアフィルムの厚みは、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることが更に好ましく、45μm以上であることが更により好ましく、50μm以上であることが特に好ましい。
また、本発明の水蒸気バリアフィルムの厚みは、250μm以下であることが好ましい。水蒸気バリアフィルムの厚みが250μmより大きいと、硬くなり曲げ強度が低下することがある。水蒸気バリアフィルムの厚みは200μm以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、40℃、90%RHの環境下での水蒸気透過度が0.5g/m・day以下である。前記40℃、90%RHでの水蒸気透過度が0.5g/m・dayを超えると、電気材料等の用途に用いることが困難となる。前記40℃、90%RHでの水蒸気透過度は、0.2g/m・day以下であることが好ましく、0.1g/m・day以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、UL94規格薄手材料垂直燃焼試験(VTM試験)において、燃焼性分類がVTM−0であることが好ましい。なお、前記VTM試験は、フィルム試験片を円筒状に巻き、クランプに垂直に取付け、20mmの大きさの炎による3秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動により表1に示した燃焼性分類の判定を行うものである。
本発明の水蒸気バリアフィルムにおいて、UL94規格VTM試験を行う際のフィルム厚みは200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0040】
【表1】
【0041】
また、本発明の水蒸気バリアフィルムは、UL94規格垂直燃焼試験(V試験)において、燃焼性分類がV−0であることが好ましい。なお、前記V試験は、試験片クランプに垂直に取付け、20mmの大きさの炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動により表2に示した燃焼性分類の判定を行うものである。
【0042】
【表2】
【0043】
更に、水蒸気バリアフィルムは、UL94規格125mm垂直燃焼試験(5V試験)において、燃焼性分類が5V−A又は5V−Bであることが好ましい。なお、前記5V試験は、短冊試験片をクランプに垂直に取付け、125mmの大きさの炎による5秒間接炎を5回行い、その燃焼挙動により燃焼性分類の判定を行い、更に、平板試験片を水平に保持し、下方から125mmの大きさの炎の5秒間接炎を5回行い、その燃焼挙動により表3に示した燃焼性分類の判定を行うものである。
【0044】
【表3】
【0045】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、国土交通省令第151号「鉄道に関する技術上の基準を定める法令」に基づく鉄道車両用材料燃焼試験の「不燃性」に該当するものであることが好ましい。
【0046】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量がサンプル面積に対して8MJ/m以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度が、サンプル面積に対して300kW/m以下であり、かつ、試験開始から着火するまでの時間が60秒以上であることが好ましい。
【0047】
本発明の水蒸気バリアフィルムの引裂強度は、25N/mm以上であることが好ましい。前記引裂強度が25N/mm未満であると、フィルムが破れやすくなり、取扱いが困難となる。前記引裂強度は、30N/mm以上であることがより好ましく、40N/mm以上であることが更に好ましい。
なお、本明細書において前記引裂強度は、JIS K7128−1に準拠した測定法によって求められる値である。
【0048】
本発明の水蒸気バリアフィルムの引張強度は、25N/mm以上であることが好ましい。前記引張強度が25N/mm未満であると、フィルムが破れやすくなり、取扱いが困難となる。前記引張強度は、30N/mm以上であることがより好ましく、40N/mm以上であることが更に好ましい。
なお、本明細書において前記引張強度は、JIS K7127−1に準拠した測定法によって求められる値であり、引張強度試験機を用い、つかみ間隔80mm、引張速度20mm/分の条件で測定される。
【0049】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、JIS K5600−5−1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、フィルムの割れの起こるマンドレル直径が20mm以下であることが好ましい。前記フィルムの割れの起こるマンドレル直径が20mmを超えると、柔軟性に劣るものとなることがある。前記フィルムの割れの起こるマンドレル直径は、15mm以下であることがより好ましく、12mm以下であることが更に好ましく、10mm以下であることが特に好ましい。
【0050】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、絶縁破壊電圧が20kV/mm以上であることが好ましい。前記絶縁破壊電圧が20kV/mm未満であると、電気材料等の用途に用いることが困難となる。前記絶縁破壊電圧は、25kV/mm以上であることがより好ましく、30kV/mm以上であることが更に好ましい。
【0051】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、IEC61730−2:2004 11.1項に準じた部分放電試験を行った際の部分放電電圧が少なくとも700V以上であることが好ましい。前記部分放電電圧が700V以下であると、電解集中が起こりフィルムの局所的な劣化が起こるため、電気材料に用いることが困難となる。前記部分放電電圧は1000V以上が好ましく、1500V以上であることがより好ましく、2000V以上であることが更に好ましい。
【0052】
本発明の水蒸気バリアフィルムにおける、40℃の水に24時間浸漬した後の吸水率は、2.0重量%以下であることが好ましい。前記吸水率が2.0重量%を超えると、電気材料等の用途に用いることが困難となる。前記吸水率は、1.0重量%であることがより好ましい。
【0053】
本発明の水蒸気バリアフィルムにおける、40℃、RH90%の環境下に24時間放置した後の吸湿率は、2.0重量%以下であることが好ましい。前記吸湿率が2.0重量%を超えると、電気材料等の用途に用いることが困難となる。前記吸湿率は、1.0重量%以下であることがより好ましい。
【0054】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、85℃、85%RHの環境下に保管する耐候性試験で、少なくとも500時間保管しても表面や断面に変色や剥離の変化が無いことが好ましい。前記耐候性試験において、500時間以下で変化が現れるものは、太陽電池等、屋外用途での使用が困難となる。前記耐候性試験で表面や断面に変色や剥離の変化が現れる時間は、1000時間以上であることがより好ましく、2000時間以上であることが更に好ましく、3000時間以上であることが特に好ましい。
【0055】
本発明の水蒸気バリアフィルムの製造に用いる水蒸気バリアフィルム用分散液であって、分散媒と、不揮発成分である層状ケイ酸塩鉱物並びに合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有し、前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量が不揮発成分の全重量に対して30重量%以上90重量%以下である水蒸気バリアフィルム用分散液もまた、本発明の1つである。
【0056】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、分散媒と、膨潤性粘土鉱物とを含有する膨潤性粘土鉱物分散液を調製する工程1と、分散媒と、非膨潤性粘土鉱物と、合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有する非膨潤性粘土鉱物分散液を調製する工程2と、膨潤性粘土鉱物分散液と非膨潤性粘土鉱物分散液とを混合し、本発明の水蒸気バリアフィルム用分散液を調製する工程3と、調製した水蒸気バリアフィルム用分散液を基板上に展開して静置する工程4と、基板上に展開した水蒸気バリアフィルム用分散液から分散媒を除去してフィルム状に成形する工程5とを有する方法により、製造することができる。このような水蒸気バリアフィルムの製造方法もまた、本発明の1つである。
膨潤性粘土鉱物分散液と、非膨潤性粘土鉱物分散液を混合することにより、本発明の水蒸気バリアフィルム用分散液を調製する本発明の水蒸気バリアフィルムの製造方法によれば、従来は困難であった、高い機械的強度を有し、柔軟性、難燃性、及び、水蒸気バリア性に優れる水蒸気バリアフィルムを製造することができる。
【0057】
本発明の水蒸気バリアフィルムの製造方法は、分散媒と、膨潤性粘土鉱物とを含有する膨潤性粘土鉱物分散液を調製する工程1を有する。
【0058】
前記工程1の膨潤性粘土鉱物分散液の調製において、膨潤性粘土鉱物と分散媒とを混合する前に、前記膨潤性粘土鉱物をシリル化剤と反応させて変性し、更に、層間陽イオンを交換することが好ましい。
前記膨潤性粘土鉱物をシリル化剤と反応させる方法としては、例えば、膨潤性粘土鉱物とシリル化剤とをボールミル処理する方法、自転公転ミキサーで混合する方法等が挙げられる。
前記膨潤性粘土鉱物の層間陽イオンを交換する方法としては、例えば、膨潤性粘土鉱物と交換する陽イオンを含有する水溶液とを振とうにより混合分散させる方法、攪拌機で撹拌する方法、自転公転ミキサーで混合分散させる方法等が挙げられる。
【0059】
前記工程1の膨潤性粘土鉱物分散液の調製では、膨潤性粘土鉱物と分散媒とを混合することにより、膨潤性粘土鉱物がゲル化し、更に分散媒を加えることにより、膨潤性粘土鉱物分散液が得られる。前記工程1において、膨潤性粘土鉱物分散液とせずにゲル化した状態のまま用いると、得られる水蒸気バリアフィルム用分散液にダマが発生し、均一な水蒸気バリアフィルムを作製することができなくなる。
【0060】
前記工程1において調製される膨潤性粘土鉱物分散液における前記膨潤性粘土鉱物の含有量は、膨潤性粘土鉱物分散液の全重量に対して、好ましい下限が1重量%、好ましい上限が20重量%である。前記膨潤性粘土鉱物の含有量が1重量%未満であると、分散媒が多くなり、分散媒の除去に時間を要することがある。前記膨潤性粘土鉱物の含有量が20重量%を超えると、水蒸気バリアフィルム用分散液の粘性が高くなり、製膜できなくなることがある。前記膨潤性粘土鉱物の含有量のより好ましい下限は1.5重量%、より好ましい上限は15重量%である。
【0061】
前記膨潤性粘土鉱物分散液における分散媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン等の炭化水素系溶媒や、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル−イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒や、ジエチルエーテル、メチル−tertブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒や、ベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、o−クレゾール等のベンゼン系溶媒や、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の含硫黄系溶媒、水等を使用することができる。なかでも、合成樹脂の溶解性が高くなることから、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、スルホラン、及び、水からなる群のうち少なくとも一種であることが好ましい。これらの分散媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
本発明の水蒸気バリアフィルムの製造方法は、分散媒と、非膨潤性粘土鉱物と、合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有する非膨潤性粘土鉱物分散液を調製する工程2を有する。
【0063】
前記工程2において調製される非膨潤性粘土鉱物分散液における不揮発成分の含有量は、非膨潤性粘土鉱物分散液の全重量に対して、好ましい下限が18重量%、好ましい上限が65重量%である。前記不揮発成分の含有量が18重量%未満であると、水蒸気バリアフィルム用分散液が不均一になり、均一なフィルムが得られなくなることがある。前記不揮発成分の含有量が65重量%を超えると、水蒸気バリアフィルム用分散液の粘度が高くなり、製膜できなくなることがある。前記不揮発成分の含有量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は55重量%である。
なお、本明細書において前記「不揮発成分」とは、常圧で沸点を持たない、又は、沸点が300℃以上の成分を意味する。不揮発成分の割合は、熱重量測定(TG)や示差熱−熱重量同時測定(TG−DTA)やエバポレーター等を用いて真空蒸発により分散媒を除去し、残存した固形物の重量から求めることができる。
【0064】
本発明の水蒸気バリアフィルム用分散液における膨潤性粘土鉱物、非膨潤性粘土鉱物については、本発明の水蒸気バリアフィルムと同様のものであるため、その説明を省略する。
【0065】
本発明の水蒸気バリアフィルム用分散液における合成樹脂としては、上述した本発明の水蒸気バリアフィルムと同様のものが挙げられる。
前記合成樹脂の前駆体としては、例えば、ポリアミド酸が挙げられ、該ポリアミド酸をイミド化することにより、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が得られる。
前記ポリアミド酸をイミド化する方法としては、例えば、ポリアミド酸を加熱閉環してイミド化する方法、ポリアミド酸を化学閉環してイミド化する方法が挙げられる。
【0066】
前記ポリアミド酸を加熱閉環してイミド化する方法は特に限定されず、例えば、前記ポリアミド酸を分散媒中に分散させて、120〜400℃で0.5〜24時間加熱する方法が挙げられる。
【0067】
前記非膨潤性粘土鉱物分散液における分散媒としては、前記膨潤性粘土鉱物分散液における分散媒と同様のものを用いることができる。
【0068】
本発明の水蒸気バリアフィルムの製造方法は、膨潤性粘土鉱物分散液と非膨潤性粘土鉱物分散液とを混合し、本発明の水蒸気バリアフィルム用分散液を調製する工程3を有する。
【0069】
本発明の水蒸気バリアフィルム用分散液における前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量は、不揮発成分の全重量に対して、下限が30重量%、上限が90重量%である。前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量が30重量%未満であると、得られるフィルムの水蒸気透過度が高くなる。前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量が90重量%を超えると、得られるフィルムが機械的強度に劣るものとなる。前記層状ケイ酸塩鉱物の含有量の好ましい下限は35重量%、好ましい上限は85重量%、より好ましい下限は40重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい下限は50重量%、更に好ましい上限は70重量%、特に好ましい下限は60重量%である。
【0070】
前記工程4において、分散液を基板上に展開する方法としては、ドクターブレードやバーコーター等を用いて膜状に塗布する方法等が挙げられる。
【0071】
前記工程4において、基板上に展開する分散液の厚みは100μm以上であることが好ましい。前記分散液の厚みが100μm未満であると、得られる水蒸気バリアフィルムが薄くなり、機械的強度が低くなることがある。前記分散液の厚みのより好ましい下限は150μm、更に好ましい下限は200μmである。
【0072】
前記分散液を展開する基板としては、分散液と基板との相溶性や濡れ性、乾燥後の剥離性の観点から、ガラス製、ポリエチレンテレフタレート製、ポリイミド製、ポリエチレン製、又は、ポリプロピレン製のものが好ましい。
【0073】
前記工程5において、基板上に展開した水蒸気バリアフィルム用分散液から分散媒を除去する方法としては、種々の固液分離方法、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥、加熱蒸発法や、これらの方法の組み合わせが可能である。これらの方法のうち、例えば、分散液を容器に流し込む加熱蒸発法を用いる場合、基板上に塗布された分散液を、水平を保った状態で、強制送風式オーブンで20〜150℃の温度条件下、好ましくは、30〜120℃の温度条件下で0.5〜24時間程度、好ましくは2〜12時間乾燥することにより、フィルムが得られる。
なお、作製するフィルムの欠陥を無くす観点から、前記工程5において、分散媒を除去する際の温度は150℃以下であることが好ましい。
【0074】
本発明の水蒸気バリアフィルム用分散液に合成樹脂の前駆体を配合した場合は、得られたフィルムを更に電気炉等を使用し加熱することにより、水蒸気バリアフィルムを得ることができる。具体的には例えば、合成樹脂の前駆体としてポリアミド酸を配合した場合、前記で得られたフィルムを120〜400℃で0.5〜24時間熱処理することにより、水蒸気バリアフィルムを得ることができる。
【0075】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、柔軟性、耐湿性、及び、高い機械的強度を有することから、太陽電池バックシートに使用することができる。このような太陽電池バックシートもまた、本発明の1つである。
【0076】
本発明の水蒸気バリアフィルム又は本発明の太陽電池バックシートを用いてなる太陽電池もまた、本発明の1つである。本発明の水蒸気バリアフィルム及び本発明の太陽電池バックシートは柔軟性、耐湿性、及び、高い機械的強度を有するため、これを用いた本発明の太陽電池は、耐久性、耐候性に優れるものとなる。また、通常、太陽電池バックシートは、複数の樹脂層からなる多層構造を有するため、長期に亙って使用すると樹脂層間を接着する接着剤層等が劣化するという問題があった。しかしながら、本発明の水蒸気バリアフィルムは単層または2層以上積層させ一体化した積層体で太陽電池バックシートに用いることができるため、このような太陽電池の経年劣化を抑制することができる。
【0077】
本発明の太陽電池の一例を表す断面模式図を図1に示す。
図1に示すように、本発明の太陽電池1は、光起電力により光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子2を有しており、該太陽電池素子2は封止剤3によって封止されている。また、本発明の太陽電池1は、太陽光を受ける側の表面に光透過性基板4を有し、光透過性基板4と反対側の面に、本発明の太陽電池バックシート5を有する。
【0078】
また、本発明の太陽電池の別の一例を表す断面模式図を図2に示す。
図2では、図1と同様に、本発明の太陽電池1は、太陽電池素子2が封止剤3によって封止されている。本発明の太陽電池1は、太陽光を受ける側の表面に光透過性基板4を有し、光透過性基板4と反対側の面に、本発明の水蒸気バリアフィルム6を有する。
【0079】
前記太陽電池素子2としては、光起電力により光エネルギーを電気エネルギーに変換できるものであれば特に限定されず、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体(3−5族、2−6族、その他)等を用いることができ、なかでも、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、CIGS(銅、インジウム、ガリウム、セレン)が好ましい。
【0080】
前記封止剤3としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、あるいはこれらのけん化物等を含む封止剤が挙げられる。
【0081】
前記光透過性基板4は太陽電池1の太陽光を受ける側の最表層に位置するため、透明性に加え、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度等に優れることが好ましい。
前記光透過性基板4の材料としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂製の基板や、ガラス基板等が挙げられ、なかでも、耐候性及び耐衝撃性に優れ、安価に作製することができることからガラス基板が好ましい。また、特に耐侯性が優れることから、フッ素樹脂も好適に用いられる。
【0082】
本発明の太陽電池1を製造する方法は特に限定されないが、例えば、光透過性基板4、太陽電池素子2が封止された封止剤3、本発明の太陽電池バックシート5の順に重ねて真空ラミネートする方法や、光透過性基板4、封止剤3、本発明の水蒸気バリアフィルム6上に形成された太陽電池素子2の順に重ねて真空ラミネートする方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0083】
本発明によれば、柔軟性及び耐湿性に優れ、高い機械的強度を有する水蒸気バリアフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該水蒸気バリアフィルムの製造に用いる水蒸気バリアフィルム用分散液、該水蒸気バリアフィルムの製造方法、該水蒸気バリアフィルムを用いてなる太陽電池バックシート、該水蒸気バリアフィルム又は該太陽電池バックシートを用いてなる太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】本発明の太陽電池の一例を表す断面模式図である。
図2】本発明の太陽電池の別の一例を表す断面模式図である。
図3】実施例1〜4及び比較例1で作製したフィルムの断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0086】
(実施例1)
(リチウム交換変性粘土の作製)
天然の精製ベントナイトであり、モンモリロナイト(1/2単位胞あたりの層電荷0.2〜0.6、平均粒子径1.1μm)を主成分とするクニピアF(クニミネ工業社製)を、オーブンで110℃以上の温度で、充分に乾燥させた。当該ベントナイト300gを、アルミナボールとともに、ボールミル用ポットに入れた。次に、ポット内にシリル化剤(チッソ社製、「サイラエースS330」)6gを加え、ポット内を窒素ガスに置換し、1時間ボールミル処理を行うことにより、変性粘土を得た。
得られた変性粘土24gを、0.5規定の硝酸リチウム水溶液400mLに加え、振とうにより、混合分散させた。2時間、振とう分散して、粘土の層間イオンをリチウムイオンに交換し、分散物を得た。
次に、得られた分散物について、遠心分離により固液分離し、得られた固体を280gの蒸留水と120gのエタノールの混合溶液で洗浄し、過剰の塩分を除いた。この洗浄操作を、二回以上繰り返した。得られた生成物を、オーブンで、充分に乾燥させた後、解砕して、リチウム交換変性粘土(1/2単位胞あたりの層電荷0.2〜0.6)を得た。
【0087】
(リチウム交換変性粘土の膨潤性評価)
水100mLの入った100mL容メスシリンダーに、作製したリチウム交換変性粘土の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、全量を添加した後1時間静置し、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読んだところ、膨潤力は85mL/2gであった。
【0088】
(膨潤性粘土鉱物ゲルの調製)
得られたリチウム交換変性粘土10gを秤量し、容器に入れ、純水20mLを加え、10分程度放置し、該リチウム交換変性粘土に純水をなじませた。その後、ステンレス製スパチュラで軽く混練した。次いで、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)を用い、混合モード(2000rpm)にて10分間混合処理を行った。これに、再度、純水20mLを加え、全体に純水が行き渡る様に、混練し、全体が一つにまとまる程度まで練り込んだ。
次に、自転公転ミキサーを用い、混合モード(2000rpm)にて10分間混合処理を行った。1回目の混合処理に比べ、全体がまとまった粘土プレゲルになった。そこへ、純水50mLを加え、ステンレス製スパチュラでよく混練した。大きなダマ(ゲルの塊)があれば極力つぶし、再度、自転公転ミキサーを用い、混合モード(2000rpm)にて10分間混合処理を行い、膨潤性粘土鉱物ゲルを得た。
【0089】
(膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
容器にN−メチル−2−ピロリドン350gを入れ、ホモジナイザー(IKA社製、「ULUTRA TURRAX T50」)で撹拌しながら、膨潤性粘土鉱物ゲル10gを加えた。約7000rpmで約30分間撹拌を続け、膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
【0090】
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」、層電荷0、平均粒子径14μm)4.4g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)33.0gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対するタルクの割合が41.9重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が28.1重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
なお、「U−ワニスA」に含まれるポリアミド酸は、下記式(7)の繰り返し構造単位を有する芳香族系ポリアミド酸である。
【0091】
【化6】
【0092】
(タルクの膨潤性評価)
水100mLの入った100mL容メスシリンダーに「非膨潤性粘土鉱物分散液の調製」に用いたタルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、全量を添加した後1時間静置し、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読んだところ、膨潤力は2mL/2gであった。
【0093】
(水蒸気バリアフィルム用分散液の調製)
膨潤性粘土鉱物分散液49.5gと非膨潤性粘土鉱物分散液37.4gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が47.4重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が層状ケイ酸塩鉱物全重量の20.0重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
【0094】
(フィルムの作製)
得られた水蒸気バリアフィルム用分散液を、底面が平坦であり、底面の形状が長方形であるポリプロピレン製シートに、ドクターブレードを用いて厚みが2000μmとなるように塗布した。ポリプロピレン製シートを水平に保った状態で強制送風式オーブン中50℃の温度条件で10時間乾燥して、ポリプロピレン製シート上にフィルムを形成した。このフィルムをポリプロピレン製シートから剥離し、順に、120℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、350℃で12時間熱処理して、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が47.4重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が層状ケイ酸塩鉱物全重量の20.0重量%である厚さ90μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0095】
(実施例2)
「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」において、実施例1で調製した膨潤性粘土鉱物分散液99.0gと非膨潤性粘土鉱物分散液37.4gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が52.0重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の33.3重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
実施例1と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が52.0重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の33.3重量%である厚さ110μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0096】
(実施例3)
「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」において、実施例1で調製した膨潤性粘土鉱物分散液148.5gと非膨潤性粘土鉱物分散液37.4gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が55.8重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の42.9重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
実施例1と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が55.8重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の42.9重量%である厚さ90μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0097】
(実施例4)
「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」において、実施例1で調製した膨潤性粘土鉱物分散液198.0gと非膨潤性粘土鉱物分散液37.4gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が59.1重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の50.0重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
実施例1と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が59.1重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の50.0重量%である厚さ70μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0098】
(実施例5)
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)2.2g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)47.8gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対するタルクの割合が19.8重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が22.2重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
【0099】
(水蒸気バリアフィルム用分散液の調製)
次に前記非膨潤性粘土鉱物分散液50.0gと実施例1の「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」で調製した膨潤性粘土鉱物分散液99.0gとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が33.1重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の50.0重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
【0100】
(フィルムの作製)
ドクターブレードを用いて厚みが1500μmとした以外は実施例1と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が33.1重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の50.0重量%である厚さ85μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0101】
(実施例6)
(リチウム交換粘土の作製)
天然の精製ベントナイトであり、モンモリロナイト(1/2単位胞あたりの層電荷0.2〜0.6、平均粒子径1.1μm)を主成分とするクニピアF(クニミネ工業社製)を、オーブンで110℃以上の温度で、充分に乾燥させた。乾燥粘土24gを、0.5規定の硝酸リチウム水溶液400mLに加え、振とうにより、混合分散させた。2時間、振とう分散して、粘土の層間イオンをリチウムイオンに交換し、分散物を得た。
次に、得られた分散物について、遠心分離により固液分離し、得られた固体を280gの蒸留水と120gのエタノールの混合溶液で洗浄し、過剰の塩分を除いた。この洗浄操作を、二回以上繰り返した。得られた生成物をオーブンで充分に乾燥させた後、解砕してリチウム交換粘土(1/2単位胞あたりの層電荷0.2〜0.6)を得た。
【0102】
(リチウム交換粘土の膨潤性評価)
水100mLの入った100mL容メスシリンダーに、作製したリチウム交換粘土の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、全量を添加した後1時間静置し、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読んだところ、膨潤力は90mL/2gであった。
【0103】
(膨潤性粘土鉱物ゲルの調製)
得られたリチウム交換粘土20gを秤量し、容器に入れ、純水40mLを加え、10分程度放置し、該リチウム交換粘土に純水をなじませた。その後、ステンレス製スパチュラで軽く混練した。次いで、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)を用い、混合モード(2000rpm)にて10分間混合処理を行った。これに、再度、純水40mLを加え、全体に純水が行き渡る様に、混練し、全体が一つにまとまる程度まで練り込んだ。
次に、自転公転ミキサーを用い、混合モード(2000rpm)にて10分間混合処理を行い、膨潤性粘土鉱物ゲルを得た。
【0104】
(膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
容器にN−メチル−2−ピロリドン350gを入れ、ホモジナイザー(IKA社製、「ULUTRA TURRAX T50」)で撹拌しながら、膨潤性粘土鉱物ゲル100gを加えた。約7000rpmで約30分間撹拌を続け、膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
【0105】
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)4.0g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)33.0gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対するタルクの割合が39.6重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が27.3重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
【0106】
(水蒸気バリアフィルム用分散液の調製)
膨潤性粘土鉱物分散液68.0gと非膨潤性粘土鉱物分散液37.0gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が53.4重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が層状ケイ酸塩鉱物全重量の42.9重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
【0107】
(フィルムの作製)
得られた水蒸気バリアフィルム用分散液を、底面が平坦であり、底面の形状が長方形であるポリプロピレン製シートに、ドクターブレードを用いて厚みが1500μmとなるように塗布した。ポリプロピレン製シートを水平に保った状態で強制送風式オーブン中50℃の温度条件で10時間乾燥して、ポリプロピレン製シート上にフィルムを形成した。このフィルムをポリプロピレン製シートから剥離し、順に、120℃で1時間、150℃で1時間、200℃で2時間、350℃で12時間熱処理して、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が53.4重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が層状ケイ酸塩鉱物全重量の42.9重量%である厚さ80μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0108】
(実施例7)
(水蒸気バリアフィルム用分散液の調製)
実施例6の「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」で調製した膨潤性粘土鉱物分散液114.0gと非膨潤性粘土鉱物分散液37.0gを用いたこと以外は、実施例6と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が59.9重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の56.0重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
【0109】
(フィルムの作製)
得られた水蒸気バリアフィルム用分散液を用いて、実施例6と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が59.9重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の56.0重量%である厚さ100μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0110】
(実施例8)
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
実施例6の「非膨潤性粘土鉱物分散液の調製」において、タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)の代わりにタルク(日本タルク社製、「タルクGAT−40」、平均粒子径7.1μm)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、全不揮発成分に対するタルクの割合が39.6重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が27.3重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
【0111】
(タルクの膨潤性評価)
水100mLの入った100mL容メスシリンダーに「非膨潤性粘土鉱物分散液の調製」に用いたタルク(日本タルク社製、「タルクGAT−40」)の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、全量を添加した後1時間静置し、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読んだところ、膨潤力は2mL/2gであった。
【0112】
(水蒸気バリアフィルム用分散液の調製)
実施例6の「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」で調製した膨潤性粘土鉱物分散液114.0gと、前記非膨潤性粘土鉱物分散液37.0gを用いたこと以外は、実施例6と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が59.9重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の56.0重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
【0113】
(フィルムの作製)
得られた水蒸気バリアフィルム用分散液を用いて、実施例6と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が59.9重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の56.0重量%である厚さ80μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0114】
(実施例9)
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
実施例6の「非膨潤性粘土鉱物分散液の調製」において、タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)8.0g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)30.0gを用いたこと以外は実施例6と同様にして、全不揮発成分に対するタルクの割合が58.8重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が35.8重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
【0115】
(水蒸気バリアフィルム用分散液の調製)
実施例6の「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」で調製した膨潤性粘土鉱物分散液45.0gと前記非膨潤性粘土鉱物分散液19.0gを用いたこと以外は、実施例6と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が68.2重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の33.3重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
【0116】
(フィルムの作製)
得られた水蒸気バリアフィルム用分散液を用いて、実施例6と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が68.2重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の33.3重量%である厚さ90μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0117】
(実施例10)
(水蒸気バリアフィルム用分散液の調製)
実施例6の「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」で調製した膨潤性粘土鉱物分散液76.0gと実施例9の非膨潤性粘土鉱物分散液19.0gを用いたこと以外は、実施例6と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が72.6重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の46.0重量%である均一な水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
【0118】
(フィルムの作製)
得られた水蒸気バリアフィルム用分散液を用いて、実施例6と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が72.6重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の46.0重量%である厚さ100μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0119】
(実施例11)
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
実施例6の「非膨潤性粘土鉱物分散液の調製」において、タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)の代わりにカオリン(イメリス社製、「XP01−6100」、層電荷0、平均粒子径1μm)4.0gを用いたこと以外は、実施例6と同様にして、全不揮発成分に対するカオリンの割合が39.6重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が27.3重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
【0120】
(カオリンの膨潤性評価)
水100mLの入った100mL容メスシリンダーに「非膨潤性粘土鉱物分散液の調製」に用いたカオリン(イメリス社製、「XP01−6100」)の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、全量を添加した後1時間静置し、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読んだところ、膨潤力は2mL/2gであった。
【0121】
(フィルムの作製)
得られた水蒸気バリアフィルム用分散液を用いて、実施例6と同様にして「フィルムの作製」を行い、カオリンとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が53.4重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の42.9重量%である厚さ100μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0122】
(実施例12)
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
実施例6の「非膨潤性粘土鉱物分散液の調製」において、タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)の代わりに非膨潤性雲母(ヤマグチマイカ社製、「SJ−010」、層電荷0.6〜1.0、平均粒子径10μm)4.0gを用いたこと以外は、実施例6と同様にして、全不揮発成分に対する非膨潤性雲母の割合が39.6重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が27.3重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
【0123】
(非膨潤性雲母の膨潤性評価)
水100mLの入った100mL容メスシリンダーに「非膨潤性粘土鉱物分散液の調製」に用いた非膨潤性雲母(ヤマグチマイカ社製、「SJ−010」)の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、全量を添加した後1時間静置し、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読んだところ、膨潤力は2mL/2gであった。
【0124】
(フィルムの作製)
得られた水蒸気バリアフィルム用分散液を用いて、実施例6と同様にして「フィルムの作製」を行い、非膨潤性雲母とモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が53.4重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の42.9重量%である厚さ100μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0125】
(実施例13)
実施例6の「リチウム交換粘土の作製」で得られたリチウム交換粘土45gと水2955gを5000mLのプラスチック製ビーカーに入れ撹拌し、均一な分散液とした。これを500mL密閉容器6本に移し、遠心分離機(久保田商事株式会社製 高速大容量冷却遠心機 MODEL7000)を用い8000rpmで10分間遠心分離を行い、沈殿物を除去し、上澄みを回収した。この上澄みを偏光板2枚の間に置くと、虹色模様(クロスニコル透過光像)が見られ、液晶転移性を示すことを確認した。得られた上澄みをオーブンで充分に乾燥させた後、解砕して液晶転移性を示すリチウム交換粘土を25g得た。
以降は前記液晶転移性を示すリチウム交換粘土を用いたこと以外は実施例6と同様に「膨潤性粘土鉱物ゲルの調製」から「フィルムの作製」まで行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が53.4重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が層状ケイ酸塩鉱物全重量の42.9重量%である厚さ85μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0126】
(実施例14)
実施例13で得られた液晶転移性を示すリチウム交換粘土を用いたこと以外は実施例7と同様にして「フィルムの作製」まで行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が59.9重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が層状ケイ酸塩鉱物全重量の56.0重量%である厚さ100μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0127】
(比較例1)
タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)4.4g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)33.0gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対するタルクの割合が41.8重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が28.2重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
膨潤性粘土鉱物分散液を加えず、ドクターブレードを用いて厚みが400μmとなるように塗布した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作成し、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が41.8重量%であり、膨潤性粘土鉱物を含有しない厚さ80μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0128】
(比較例2)
実施例1で作製した膨潤性粘土鉱物ゲルを、膨潤性粘土鉱物分散液の調製を行わず、タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)4.4g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)33.0g、N−メチル−2−ピロリドン38.5g、膨潤性粘土鉱物ゲル11.0gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌した。しかし、得られた水蒸気バリアフィルム用分散液はダマが存在し、均一では無かったため、フィルムを作製することができなかった。
【0129】
(比較例3)
実施例1で作製した膨潤性粘土鉱物分散液120gと、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)4.8gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌し、非膨潤性粘土鉱物を含まない水蒸気バリアフィルム用分散液を得た。
実施例1と同様にして、ドクターブレードを用いて厚みが2000μmとなるように塗布し、乾燥させた。しかし、乾燥後のフィルムには多数の割れが生じ、均一なフィルムを得ることができなかった。乾燥後のフィルム厚みは40μmであり、焼成後も厚みは変わらなかった。
【0130】
(比較例4)
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
実施例5で調製した、非膨潤性粘土鉱物分散液50.0gと実施例1の「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」で調製した膨潤性粘土鉱物分散液25.0gとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が23.7重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の20.2重量%である均一な分散液を得た。
実施例1と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が23.7重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の20.2重量%である厚さ80μmのフィルムを得た。
【0131】
(比較例5)
(非膨潤性粘土鉱物分散液の調製)
タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)25.0g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)15.0g、N−メチル−2−ピロリドン18.0gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対するタルクの割合が89.9重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が47.9重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
次に前記非膨潤性粘土鉱物分散液40.0gと実施例1の「水蒸気バリアフィルム用分散液の調製」で調製した膨潤性粘土鉱物分散液40.0gとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、全不揮発成分に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が90.9重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の9.4重量%である均一な分散液を得た。
ドクターブレードを用いて厚みが750μmとした以外は実施例1と同様にして「フィルムの作製」を行い、タルクとモンモリロナイトとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が90.9重量%、膨潤性粘土鉱物の含有量が、層状ケイ酸塩鉱物全重量の9.4重量%である厚さ90μmの水蒸気バリアフィルムの作製を試みたが、乾燥後のフィルムは容易に割れが生じ、均一なフィルムを得ることができなかった。
【0132】
(比較例6)
タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)2.2g、非膨潤性雲母(ヤマグチマイカ社製、「SJ−010」)3.4g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)30.0gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対する非膨潤性粘土鉱物の割合が50.0重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が31.4重量%である均一な非膨潤性粘土鉱物分散液を得た。
膨潤性粘土鉱物分散液を加えず、ドクターブレードを用いて厚みが400μmとなるように塗布した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作成し、全重量に対する層状ケイ酸塩鉱物の割合が50.0重量%であり、膨潤性粘土鉱物を含有しない厚さ65μmの水蒸気バリアフィルムを得た。
【0133】
<評価>
実施例1〜14及び比較例1、4、6で得られた水蒸気バリアフィルムについて以下の評価を行った。結果を表4〜6に示した。
なお、比較例2ではフィルムを作製することができなかったため、以下の評価を行うことができず、比較例3、5ではフィルムに割れが生じたため、以下の評価は行わなかった。
【0134】
(水蒸気透過度)
JIS K 7126 A法(差圧法)に準じた差圧式のガスクロ法により、ガスや蒸気等の透過率や透湿度の測定が可能なガス・蒸気透過率測定装置を用いて、40℃、90%RHの条件で水蒸気バリアフィルムの水蒸気透過度の測定を行った。なお、ガス・蒸気透過率測定装置として、実施例1〜5及び比較例1、4、6では、GTR−30XA(GTRテック社製)を用い、実施例6〜14では、DELTAPERM(Technolox社製)を用いた。
【0135】
(VTM試験による燃焼性分類)
得られた水蒸気バリアフィルムについて、UL94規格による薄手材料垂直燃焼試験(VTM試験)を行った。
表1に示した各判定基準において、各試験片(長さ約200mm、幅50mm)を5枚使用した。炎の大きさは20mmとした。
なお、接炎時間は3秒間とし、接炎後の残炎時間をそれぞれ測定した。また、火が消えると同時に2回目の接炎を3秒間行って、1回目と同様にして、接炎後の残炎時間をそれぞれ測定した。更に、落下する火種により試験片の下に置いた綿が発火するか否かについても同時に評価した。また、標線は試験片の下端から125mmの位置にあり、標識用綿は試験片の下端から300mm下方に配置した。
VTM試験において、燃焼性分類としては、VTM−0が最高のものであり、VTM−1、VTM−2となるに従って難燃性が低下することを示す。ただし、VTM−0〜VTM−2のランクのいずれにも該当しないものは不合格とした。
【0136】
(耐屈曲性)
得られた水蒸気バリアフィルムについて、JIS−K5600−5−1に準拠した方法で耐屈曲性(円筒形マンドレル法)試験を実施した。試験方法は、1〜5mm径マンドレルを使用し、一つの試験片に対して大きい直径のマンドレルから小さいマンドレルへと順に試験し、フィルム割れやひび割れの初めて起こるマンドレル直径を示した。1mmのマンドレルでも割れの生じなかったフィルムについては1mm以下とした。
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
図3に、実施例1〜4及び比較例1で作製したフィルムの断面の電子顕微鏡写真を示す。図3において、(a)が実施例1で作製したフィルムの断面、(b)が実施例2で作製したフィルムの断面、(c)が実施例3で作製したフィルムの断面、(d)が実施例4で作製したフィルムの断面、(e)が比較例1で作製したフィルムの断面である。
【0141】
図3から、比較例1の非膨潤性粘土鉱物のみでは、明確な積層化が見られないのに対し、実施例1の膨潤性粘土鉱物を20重量%添加した写真においては、明らかに積層化していることがわかる。
また、実施例2〜4において、膨潤性粘土鉱物の割合を上げるに従って、更に積層化の状態が良くなっていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明によれば、柔軟性及び耐湿性に優れ、高い機械的強度を有する水蒸気バリアフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該水蒸気バリアフィルムの製造に用いる水蒸気バリアフィルム用分散液、該水蒸気バリアフィルムの製造方法、該水蒸気バリアフィルムを用いてなる太陽電池バックシート、該水蒸気バリアフィルム又は該太陽電池バックシートを用いてなる太陽電池を提供することができる。
更に、本発明の水蒸気バリアフィルムは、充分な機械的強度と優れた柔軟性を持つフィルムであり、様々な電気材料、機械材料等の部材、例えば、LCD用基板フィルム、有機EL用基板フィルム、電子ペーパー用基板フィルム、電子デバイス用封止フィルム、PDP用フィルム、LED用フィルム、ICタグ用フィルム、太陽電池用バックシート、太陽電池用保護フィルム等の電子デバイス関連フィルム、光通信用部材、その他電子機器用フレキシブルフィルム、燃料電池用隔膜、燃料電池用封止フィルム、各種機能性フィルムの基板フィルムとして、また、食品包装用フィルム、飲料包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、日用品包装用フィルム、工業製品包装用フィルム、その他各種製品の包装用フィルム、更に、二酸化炭素及び水素を含むガス種に対するガスバリアシールテープ、多層包装フィルム、抗酸化皮膜、耐食性皮膜、耐候性皮膜、不燃性皮膜、耐熱性皮膜、耐薬品性皮膜等、多くの製品に使用可能である。これらの分野に新素材を提供し、新技術への発展に貢献できる。
【符号の説明】
【0143】
1 太陽電池
2 太陽電池素子
3 封止剤
4 光透過性基板
5 太陽電池バックシート
6 水蒸気バリアフィルム
図1
図2
図3