【文献】
Nat. Biotechnol.,2000年,Vol. 18,p. 1298-1302
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
植物由来のTIR1ファミリータンパク質遺伝子と、植物由来Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識された目的タンパク質を発現するキメラ遺伝子とを有する、オーキシン類により目的タンパク質の分解が誘導されるタンパク質分解誘導性の非植物真核細胞であって、該部分配列が、Aux/IAAファミリータンパク質のドメインII領域のN末端側及びC末端側に2〜5個ずつのLys残基を含むIAA17(65−132)(配列番号1)の領域からIAA17(1−132)の領域までからなる部分配列、又は該部分配列を2〜4個連結してなる配列であることを特徴とするタンパク質分解誘導性の非植物真核細胞。
宿主非植物真核細胞に、植物由来のTIR1ファミリータンパク質遺伝子と、植物由来Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識された目的タンパク質を発現するキメラ遺伝子を導入する、オーキシン類により目的タンパク質の分解が誘導されるタンパク質分解誘導性の非植物真核細胞の製造法であって、該部分配列が、Aux/IAAファミリータンパク質のドメインII領域のN末端側及びC末端側に2〜5個ずつのLys残基を含むIAA17(65−132)(配列番号1)の領域からIAA17(1−132)の領域までからなる部分配列、又は該部分配列を2〜4個連結してなる配列であることを特徴とするタンパク質分解誘導性の非植物真核細胞の製造法。
植物由来のTIR1ファミリータンパク質遺伝子と、植物由来Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識された目的タンパク質を発現するキメラ遺伝子とを有する、オーキシン類により目的タンパク質の分解が誘導されるタンパク質分解誘導性の非植物真核細胞用の遺伝子導入用ベクターであって、該部分配列が、Aux/IAAファミリータンパク質のドメインII領域のN末端側及びC末端側に2〜5個ずつのLys残基を含むIAA17(65−132)(配列番号1)の領域からIAA17(1−132)の領域までからなる部分配列、又は該部分配列を2〜4個連結してなる配列であることを特徴とするタンパク質分解誘導性の非植物真核細胞用の遺伝子導入用ベクター。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタンパク質分解誘導性非植物真核細胞は、(1)植物由来のTIR1ファミリータンパク質遺伝子と、(2)植物由来Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識された目的タンパク質を発現するキメラ遺伝子とを有する。このTIR1ファミリータンパク質遺伝子と、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識された目的タンパク質を発現するキメラ遺伝子との組み合せは、非植物真核細胞内で植物のユビキチン化酵素複合体に基づく分解経路を形成させたものである。すなわち、動物、植物、菌類等の種々の真核生物において、ユビキチン/プロテアソーム系のタンパク質分解が知られている。この分解システムは、ユビキチン活性化酵素(E1)−ユビキチン結合酵素(E2)−ユビキチンリガーゼ(E3)という3つの酵素によって、ターゲットタンパク質にユビキチンが結合され、ポリユビキチン化されたターゲットタンパク質がプロテアソームによって特異的に認識され、分解されるシステムである。このユビキチンリガーゼとして、E3ユビキチン化酵素複合体(SCF複合体)が報告されている。このSCF複合体は、F−boxタンパク質、Skp1タンパク質、Cullin−1タンパク質及びRbx1タンパク質という4つのサブユニットから構成されている。植物のSCF複合体について、F−boxタンパク質としてTIR1ファミリータンパク質を有し、これが成長ホルモンであるオーキシンの受容体となっており、オーキシンを受容することによって、オーキシン情報伝達系の抑制因子Aux/IAAファミリータンパク質を認識して、前記タンパク質を分解することが、近年解明された。そこで、本発明者は、オーキシンを誘導物質として、植物由来TIR1ファミリータンパク質により、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列を認識させ、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化した目的タンパク質を分解する系を、植物以外の真核細胞において機能させることに成功したのである。
【0017】
本発明のタンパク質分解誘導性非植物細胞であれば、オーキシン類の添加によって、任意の時期に、発現した目的タンパク質を分解できる。つまり、本発明のタンパク質分解誘導性非植物真核細胞によれば、例えば、植物由来TIR1ファミリータンパク質を含むSCF複合体及びAux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化された目的タンパク質が発現する。このため、オーキシン類の共存下であれば、前記SCF複合体の植物由来のTIR1ファミリータンパク質がオーキシン類を受容し、これによってTIR1ファミリータンパク質によるAux/IAAファミリータンパク質の部分配列の認識、ならびに、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列へのポリユビキチン化が生じる。そして、プロテアソームによって、ポリユビキチン化Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化された目的タンパク質が分解される。このため、例えば、オーキシン類の添加、無添加によって、発現した目的タンパク質の分解を制御することが可能である。
【0018】
本発明に用いられるTIR1ファミリータンパク質遺伝子は、植物由来のものである。ここで植物の種類は制限されないが、例えばシロイヌナズナ、イネ、ヒャクニチソウ、マツ、シダ、ヒメツリガネゴケ等が挙げられる。なお、宿主細胞が哺乳類細胞の場合は、イネが好ましい。当該植物由来のTIR1ファミリータンパク質遺伝子としては、TIR1遺伝子、AFB1遺伝子、AFB2遺伝子、AFB3遺伝子、FBX14遺伝子、AFB5遺伝子が挙げられるが、TIR1遺伝子が特に好ましい。より具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)に登録されているアクセッションNo.NM_001059194(GeneID:4335696)、Os04g0395600もしくは同データベース登録の、アクセッションNo.EAY93933、OsI_15707の遺伝子が好ましい。
【0019】
前記植物由来TIR1ファミリー遺伝子は、例えば、前記の植物、例えばイネ、シロイヌナズナ等から抽出した天然のDNAでもよいし、遺伝子工学によって合成したDNAであってもよい。また、前記TIR1ファミリー遺伝子は、例えば、エキソンとイントロンを含むDNAでもよいし、エキソンからなるcDNAであってもよい。前記TIR1ファミリー遺伝子は、例えば、ゲノムDNAにおける全長配列又はcDNAにおける全長配列であってもよい。また、前記TIR1ファミリー遺伝子は、発現したタンパク質が、TIR1ファミリータンパク質として機能する範囲において、ゲノムDNAにおける部分配列又はcDNAにおける部分配列であってもよい。本発明において、「TIR1ファミリータンパク質として機能する」とは、例えば、オーキシン類の存在下で、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列を認識することを意味する。植物由来TIR1ファミリータンパク質がAux/IAAファミリータンパク質の部分配列を認識できれば、前述のようにAux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化された目的タンパク質を分解できるからである。この際、本発明のタンパク質分解誘導性非植物真核細胞においては、植物由来TIR1ファミリータンパク質が、他のサブユニット(Skp1タンパク質、Cullinタンパク質及びRbx1タンパク質)とともに、SCF複合体(E3ユビキチン化酵素複合体)を形成していると推測される。
【0020】
本発明のタンパク質分解誘導性非植物真核細胞は、前記植物由来TIR1ファミリー遺伝子の転写を制御するプロモーター配列をさらに有することが好ましい。これによって、より確実に植物由来TIR1ファミリータンパク質を発現できる。前記プロモーターは、制限されず、例えば、細胞の種類等に応じて適宜決定できる。
【0021】
本発明において、前記キメラ遺伝子は、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化された目的タンパク質を発現するキメラ遺伝子である。発現した目的タンパク質は、前記Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化されていればよく、その形態は制限されないが、例えば、目的タンパク質とAux/IAAファミリータンパク質の部分配列とを含む融合タンパク質であることが好ましい。Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列は、例えば、目的タンパク質のN末側及びC末側のいずれに付加されてもよい。
【0022】
また、目的遺伝子とAux/IAAファミリー遺伝子の部分配列の位置関係は、制限されず、発現した目的タンパク質が、前記Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化されるように、両遺伝子が機能的に配置されていればよい。具体例として、前記Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列は、前記目的遺伝子の上流(5’側)又は下流(3’側)に隣接して配置されていることが好ましい。目的タンパク質が発現され、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化される限りにおいて、例えば、目的遺伝子の内部に、前記Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列が介在してもよい。
【0023】
前記Aux/IAAファミリー遺伝子は、植物由来のAux/IAAファミリー遺伝子であれば、その種類は制限されない。前記植物の種類は、制限されないがシロイヌナズナIAA17遺伝子が好ましい。Aux/IAAファミリー遺伝子の具体例としては、例えば、IAA1遺伝子、IAA2遺伝子、IAA3遺伝子、IAA4遺伝子、IAA5遺伝子、IAA6遺伝子、IAA7遺伝子、IAA8遺伝子、IAA9遺伝子、IAA10遺伝子、IAA11遺伝子、IAA12遺伝子、IAA13遺伝子、IAA14遺伝子、IAA15遺伝子、IAA16遺伝子、IAA17遺伝子、IAA18遺伝子、IAA19遺伝子、IAA20遺伝子、IAA26遺伝子、IAA27遺伝子、IAA28遺伝子、IAA29遺伝子、IAA30遺伝子、IAA31遺伝子、IAA32遺伝子、IAA33遺伝子及びIAA34遺伝子等が挙げられる。前記タンパク質分解誘導性非植物真核細胞は、いずれか一種の前記Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列を有していてもよいし、二種類以上を有していてもよい。例えば、シロイヌナズナ由来のAux/IAAファミリー遺伝子の配列は、TAIR(the Arabidopsis Information Resource)に登録されており、各遺伝子のアクセッションナンバーは、次のとおりである。IAA1遺伝子(AT4G14560)、IAA2遺伝子(AT3G23030)、IAA3遺伝子(AT1G04240)、IAA4遺伝子(AT5G43700)、IAA5遺伝子(AT1G15580)、IAA6遺伝子(AT1G52830)、IAA7遺伝子(AT3G23050)、IAA8遺伝子(AT2G22670)、IAA9遺伝子(AT5G65670)、IAA10遺伝子(AT1G04100)、IAA11遺伝子(AT4G28640)、IAA12遺伝子(AT1G04550)、IAA13遺伝子(AT2G33310)、IAA14遺伝子(AT4G14550)、IAA15遺伝子(AT1G80390)、IAA16遺伝子(AT3G04730)、IAA17遺伝子(AT1G04250)、IAA18遺伝子(AT1G51950)、IAA19遺伝子(AT3G15540)、IAA20遺伝子(AT2G46990)、IAA26遺伝子(AT3G16500)、IAA27遺伝子(AT4G29080)、IAA28遺伝子(AT5G25890)、IAA29遺伝子(AT4G32280)、IAA30遺伝子(AT3G62100)、IAA31遺伝子(AT3G17600)、IAA32遺伝子(AT2G01200)、IAA33遺伝子(AT5G57420)及びIAA34遺伝子(AT1G15050)。
【0024】
本発明は、前記Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列として、Aux/IAAファミリータンパク質のドメインII領域のN末端側及びC末端側に少なくとも2個ずつのLys残基を含む領域からなる配列、又は該配列を2個以上連結してなる配列を使用する点に特徴がある。このような特定の部分配列を使用することにより、Aux/IAAファミリータンパク質全長やドメインII領域等を使用する場合に比べて、目的タンパク質の分解誘導能が向上し、かつ細胞の死亡が抑制され、安定した目的タンパク質分解誘導性が得られる。
【0025】
Aux/IAAファミリータンパク質は、
図1に示すように全長25KDa程度のタンパク質であり、N末端側からドメインI、ドメインII、ドメインIII及びドメインIV等を有する。このうち、ドメインIIだけでも目的タンパク質の分解誘導能の向上はみられず、N末端からドメインIIまでの配列でも目的タンパク質の分解誘導能の向上はみられない。これに対し、ドメインIIのN末端側とC末端側に少なくとも2個ずつのLys残基を含む領域であって、ドメインIを含まず、ドメインIIIは一部含んでいてもよい領域からなる配列を使用すれば、目的タンパク質の分解誘導能が顕著に向上する。また、当該配列を2個以上連結した配列を使用すると、目的タンパク質の分解誘導能がさらに向上する。
【0026】
このような部分配列としては、32〜80アミノ酸残基が好ましく、50〜80アミノ酸残基がより好ましく、50〜75アミノ酸残基がさらに好ましく、50〜70アミノ酸残基がさらに好ましい。
【0027】
前記部分配列としては、Aux/IAAファミリータンパク質のドメインII領域のN末端側及びC末端側に2〜5個ずつ、より好ましくは2〜4個ずつのLys残基を含む32〜80アミノ酸残基からなる配列がより好ましい。
【0028】
ここでIAAファミリータンパク質のうち、IAA17、IAA16、IAA14、IAA9、IAA27、IAA4、IAA1、IAA2、IAA3、IAA8、IAA5及びIAA6の部分配列の例を
図2及び配列番号1〜12に示す。本発明においては、これらの配列番号から選ばれる配列を含む50〜80アミノ酸残基からなる配列がさらに好ましく、50〜75アミノ酸残基からなる配列がさらに好ましい。なお、IAA17の全アミノ酸配列を配列番号23に示す。
【0029】
また、該配列の連結数は2〜5個が好ましく、2〜4個がより好ましく、2又は3個がさらに好ましい。
【0030】
本発明のタンパク質分解誘導性非植物真核細胞は、さらに、前記キメラ遺伝子の転写を制御するプロモーター配列を有することが好ましい。これによって、より確実に、前記Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化された目的タンパク質を発現できる。前記プロモーターは、制限されず、例えば、細胞の種類等に応じて適宜決定できる。
【0031】
本発明において、前記目的タンパク質の遺伝子は、非植物真核細胞のゲノムに存在する内在の遺伝子でもよいし、非植物真核細胞に導入された外来の遺伝子であってもよい。また、前記外来遺伝子は、例えば、ゲノムDNAに組み込まれてもよいし、組み込まれていなくてもよい。前者の場合、例えば、外来遺伝子を連結した遺伝子導入ベクター等によって、ゲノムDNA中に組み込まれた状態である。また、後者の場合、例えば、前記遺伝子導入用ベクター等が、プラスミドとして存在している状態であり、前記遺伝子導入用ベクターにおいて、前記目的遺伝子は、複製起点に機能的に連結されていることが好ましい。
【0032】
本発明において、宿主細胞は、植物以外(非植物)の真核生物の細胞であればよく、例えば、動物、菌類、原生生物等の細胞が挙げられる。動物としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ等の哺乳類、ゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル等の魚類や両生類、C.elegansやショウジョウバエ等の無脊椎動物が挙げられる。また、その細胞の種類も制限されず、例えば、Hela細胞、CHO細胞、MCF、HEK293、HepG2、NIH3T3、COS細胞、DT40等の培養細胞;初代培養細胞;造血幹細胞;B細胞、T細胞、白血球、単球・マクロファージ、赤血球、血小板等の血球系細胞、血液細胞;受精卵母細胞;ES細胞等が挙げられる。また、その他の各種組織細胞等でもよい。また、菌類としては、例えば、出芽酵母、分裂酵母等が挙げられる。
【0033】
本発明において、哺乳類細胞を用いる場合は、Skp1遺伝子、Cullin遺伝子、及び、Rbx1遺伝子を有することが好ましい。これらの各遺伝子は、哺乳類細胞の内在遺伝子であることが好ましい。本発明のタンパク質分解誘導性哺乳類細胞では、これらの遺伝子から発現したタンパク質(すなわち、Skp1タンパク質、Cullinタンパク質及びRbx1タンパク質)と、イネ由来TIR1ファミリー遺伝子から発現したTIR1ファミリータンパク質とから、SCF複合体が構成されると推測される。
【0034】
本発明のタンパク質分解誘導性非植物真核細胞の製造方法は、例えば(1)宿主である真核細胞に、植物由来TIR1ファミリー遺伝子を導入する工程、(2)宿主である真核細胞に、植物由来Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列を導入し、前記Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化された目的タンパク質を発現するキメラ遺伝子を形成する工程によって行うことができる。
【0035】
本発明において、前記工程(1)及び工程(2)の順序は制限されず、同時に行ってもよい。前記工程(1)における植物由来ファミリー遺伝子の導入と、前記工程(2)におけるAux/IAAファミリー遺伝子の部分配列の導入とは、例えば、それぞれ別個のベクターを用いて行ってもよいが、前記植物由来ファミリー遺伝子及び前記Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列が挿入された一つのベクターを用いて行うのが好ましい。
【0036】
本発明において、目的遺伝子は、前述のように、真核細胞のゲノムDNAに存在する内在遺伝子でもよいし、外来遺伝子であってもよい。前記内在遺伝子の場合、前記工程(2)において、例えば、Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列を哺乳類細胞に導入し、内在の目的遺伝子に機能的に連結させることによってキメラ遺伝子を形成できる。また、Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列と目的遺伝子とを連結させたキメラ遺伝子を形成し、これを真核細胞に導入し、ゲノムとの組換えによりキメラ遺伝子をゲノムに挿入してもよい。
【0037】
目的遺伝子が外来遺伝子の場合、例えば、Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列の導入に先立って、外来遺伝子を前記真核細胞に導入してもよい。また、目的遺伝子が外来遺伝子の場合、例えば、Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列とともに、真核細胞に導入してもよい。具体的には、予め、Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列と目的タンパク質の遺伝子とが機能的に連結したキメラ遺伝子を作製し、これを真核細胞に導入することもできる。
【0038】
目的遺伝子が外来遺伝子であり、ベクターを用いた組換えによって、TIR1ファミリー遺伝子とキメラ遺伝子とを導入する例について説明する。
【0039】
まず、植物由来TIR1遺伝子をベクターに組み込み、TIR1遺伝子導入用ベクターを作製する。ベクターの種類は、制限されず、例えば、真核細胞の種類等に応じて適宜決定できる。具体例として、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。前記プラスミドベクターとしては、例えば、pCMV、pcDNA、pACT等が挙げられ、前記ウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルス発現系等が挙げられる。
【0040】
TIR1遺伝子導入用ベクターは、前記TIR1ファミリー遺伝子の転写を制御するプロモーター配列を有することが好ましい。前記プロモーターとしては、制限されず、例えば、真核細胞の種類等に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、CMVプロモーター、SV40プロモーター、GAL4結合配列等が挙げられる。前記プロモーターは、通常、TIR1ファミリー遺伝子の上流(5’側)に機能的に連結することが好ましい。さらに、細胞種特異的、器官特異的プロモーターでもよい。また、プロモーター配列をもたないTIR1ファミリー遺伝子を、例えば、宿主細胞や宿主動物個体における内在プロモーターの下流に組み込んでも良い。この場合、TIR1ファミリー遺伝子を、例えば、特定遺伝子にターゲッティングしてもよいし、ランダムに組み込んでもよい。
【0041】
また、真核細胞への導入の有無を確認できることから、TIR1遺伝子導入用ベクターは、さらに、選択マーカーコード配列を有してもよい。前記選択マーカーコード配列としては、制限されず、公知の薬剤耐性マーカー、蛍光タンパク質マーカー、細胞表面レセプターマーカー等のマーカーをコードする配列が挙げられる。前記薬剤耐性マーカーとしては、制限されず、例えば、ネオマイシン耐性マーカー、ピューロマイシン耐性マーカー、ハイグロマイシン耐性マーカー等が挙げられる。前記蛍光タンパク質マーカーとしては、例えば、GFP(Green Fluorescent Protein)、EGFP(変異型GFP:Enhanced GFP)等が挙げられる。また、酵素マーカーとしては、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。これらの選択マーカーコード配列は、その配列にしたがってPCR等により合成してもよいし、前記選択マーカーコード配列を有する市販のベクターから調製することもできる。なお、TIR1遺伝子導入用ベクターと後述するキメラ遺伝子導入用ベクターとを併用する場合、前記TIR1遺伝子導入用ベクターにおける選択マーカーと、キメラ遺伝子導入用ベクターにおける選択マーカーは、異なるマーカーであることが好ましい。さらに、TIR1ファミリー遺伝子は、例えば、他のタンパク質遺伝子又はタグ配列と機能的に連結させ、前記タンパク質とTIR1タンパク質とを含むタンパク質(例えば、融合タンパク質)として、また、タグで標識化されたTIR1タンパク質として、発現させてもよい。
【0042】
他方、目的遺伝子及び植物由来Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列をベクターに連結して、キメラ遺伝子の導入用ベクターを作製する。キメラ遺伝子とは、前述のように、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で標識化された目的タンパク質を発現する遺伝子である。前記ベクターにおいて、前記目的遺伝子とAux/IAAファミリー遺伝子の部分配列との位置は、制限されず、前述のように、標識化タンパク質を発現できる関係であればよい。具体例として、前記Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列は、前記目的遺伝子の上流(5’側)又は下流(3’側)に隣接して配置されてもよく、目的遺伝子の内部に、Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列が介在してもよい。
【0043】
前記ベクターとしては、制限されず、前述と同様のものが挙げられる。また、キメラ遺伝子導入用ベクターは、前記キメラ遺伝子の転写を制御するプロモーター配列を有することが好ましい。前記プロモーターとしては、前述のようなものが挙げられる。また、真核細胞への導入の有無を確認できることから、キメラ遺伝子導入用ベクターは、さらに、前述のような選択マーカーコード配列を有してもよい。
【0044】
そして、宿主細胞である真核細胞に、前述のTIR1遺伝子導入用ベクター、ならびに、キメラ遺伝子導入用ベクターを導入する(工程(1)及び工程(2))。前記両ベクターの導入順序は、制限されない。
【0045】
ベクターの導入方法は、特に制限されず、例えば、使用するベクターの種類や宿主細胞の種類等に応じて、適宜決定できる。導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、DEAEデキストラントランスフェクョン法、エレクトロポレーション法が挙げられ、この他にも、レトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター等を用いた方法が挙げられる。
【0046】
本発明においては、TIR1遺伝子とキメラ遺伝子とが挿入された発現ベクターを用いるのが、効率的である。具体的には、ウイルス由来のプロモーターとIRES(mRNA内部のリボソーム結合サイト)を有するベクターに、これらの遺伝子を挿入して使用するのが好ましい。通常このようなpIRESベクターは、ウイルス由来のプロモーターとIRESの間に発現させようとする目的遺伝子を挿入して使用するように設計されている。しかし、本発明者は、ウイルス由来のプロモーターとIRESとの間にイネ由来のTIR1ファミリー遺伝子を連結し、その下流に前記キメラ遺伝子を連結してなる発現ベクターを作製することにより、効率良く、かつ迅速に目的タンパク質の分解が誘導されることを見出した(国際公開第2010/125620号パンフレット参照)。この発現ベクターのプロモーターとしてはCMVプロモーター、SV40プロモーター等が挙げられるが、CMVプロモーターが好ましい。
【0047】
また、目的遺伝子がゲノムDNA内に存在する場合、例えば、目的遺伝子が真核細胞の内在遺伝子である場合や、目的遺伝子が外来遺伝子であるが、すでに真核細胞のゲノムDNAに組み込まれている場合は、次のようにして製造できる。この場合、キメラ遺伝子導入用ベクターに代えて、Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列を挿入したAux/IAAファミリー遺伝子導入用ベクターを使用する。この遺伝子導入用ベクターは、例えば、真核細胞のゲノムDNAに対して、タンパク質発現の際、Aux/IAAファミリータンパク質の部分配列で目的タンパク質を標識化できる部位に、Aux/IAAファミリー遺伝子の部分配列が組み込まれる構造であることが好ましい。つまり、前記遺伝子導入用ベクターの構造は、ゲノムDNAとの組換えによって、ゲノムDNA内の目的遺伝子とAux/IAAファミリー遺伝子の部分配列とが機能的連結して、キメラ遺伝子を形成するものであればよい。このようにAux/IAAファミリーの部分配列が組み込まれることによって、Aux/IAAファミリーの部分配列で標識化された目的タンパク質を発現できる。なお、キメラ遺伝子導入用ベクターは、例えば、ゲノムDNAにおける目的遺伝子の遺伝子座やその配列等から、当業者であれば構築可能である。
【0048】
本発明のタンパク質分解誘導性真核細胞にオーキシン類を作用させれば、目的タンパク質の分解が誘導される。その目的タンパク質の分解は、確実でありかつ極めて速やかである。例えば、15〜30分でほぼ完全に分解される。
【0049】
目的タンパク質の分解誘導において、オーキシン類の添加量は、制限されず、例えば、オーキシン類の種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、1μM〜1mMであり、好ましくは20μM〜500μM培地に添加する。
【0050】
オーキシンとしては、例えば、1−ナフタレン酢酸(NAA)、インドール−3−酢酸等が挙げられる。また、この他にも、前記NAA等と同様の生理活性を有する化合物群が挙げられ、例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、4−クロロフェノキシ酢酸、(2,4,5−トリクロロフェノキシ)酢酸、1−ナフタレンアセトアミド、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、4−パラクロロ酢酸等がある。例えば、代謝によってオーキシンの生理活性を有することとなる前躯体も使用できる。例えば、宿主細胞におけるエステラーゼやβ−酸化酵素によりオーキシン活性を有する物質に変換される物質が好ましい。具体例としては、例えば、インドール−3−酢酸メチルエステルやインドール−3−酪酸等が挙げられる。
【0051】
オーキシン類の添加は、前記細胞を含有する培地に対して行えばよい。
【0052】
このように、オーキシン類の添加により目的タンパク質の分解が速やかに誘導できるので、オーキシン類を添加しない場合と対比することにより、目的タンパク質の影響を検討することができる。より具体的には、前記細胞にオーキシン類を添加して、発現した目的タンパク質の分解を誘導した後、前記オーキシン類を除去して、新たに発現した目的タンパク質の分解を抑制する方法;前記細胞にオーキシン類を添加して、発現した目的タンパク質の分解を誘導した後、オーキシン阻害物質を添加して、新たに発現した目的タンパク質の分解を抑制する方法等によって検討することができる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は下記の実施例により制限されない。
【0054】
参考例1
1.出芽酵母株の作製
分解目的のタンパク質をEGFPとし、NAA添加によってEGFPを分解する出芽酵母株を作製した。なお、使用した出芽酵母のプロモーター配列や遺伝子配列は、SGDウェブサイトhttp://www.yeastgenome.org/に登録されている。
【0055】
(1)シロイヌナズナTIR1発現酵母株(YNK2)
pRS306−GALプラスミドベクターをSal1及びXho1で切断し、セルフライゲーションさせた。pRS306−GALプラスミドベクターは、文献(L.Drury,G.Perkins and J.Diffley“The Cdc4/34/53 pathway targets Cdc6p for proteolysis in budding yeast”EMBO J 16,5966−5976,1997)に開示されている。これにより、前記プラスミドベクターのマルチクローニングサイトにあるSalIサイトを除去した。シロイヌナズナのTIR1遺伝子(TAIR accession No.AT1G04250.1)を、下記プライマーセット1を用いたPCRで増幅し(1785bp)、この増幅物を、前記プラスミドベクターのSpe1−Not1サイトにクローニングした。得られたベクターを、pMK26という。
<プライマーセット1>
Fプライマー7(配列番号13)
5’−AGCTAGACTAGTATGCAGAAGCGAATAGCCTT−3’
Rプライマー8(配列番号14)
5’−ATCGATGCGGCCGCAGATCTGCTAGTCGACTAATCCGTTAGTAGTAATGA−3’
【0056】
pYM18プラスミドベクターからSalI−Bgl II断片を切断して、9Mycタグ部分(435bp)を切り出し、これを、前記ベクターpMK26のSalI−BglIIサイトにクローニングした。pYM18プラスミドベクターは、文献(C.Janke,M.Magiera,N.Rathfelder,C.Taxis,S.Reber,H.Maekawa,A.Moreno−Borchart,G.Doenges,E.Schwob,E.Schiebel,and M.Knop.“A versatile toolbox for PCR−based tagging of yeast genes:new fluorescent proteins,more markers and promoter substitution cassettes.”Yeast 21,974−962,2004)に開示されている。得られたベクターをpMK27という。このベクターpMK27を、URA3マーカー内部にあるStu1で切断して、出芽酵母野生株W303−1aにトランスフォーメーションし、相同組換えによって、前記プラスミドベクターを出芽酵母ゲノム上のURA3部位に挿入した。得られた組換え体を、シロイヌナズナTIR1発現株「YNK2」とした。なお、YNK2において、TIR1遺伝子の上流には、ベクター由来のGAL1−10プロモーターが配置されている。
【0057】
野生株W303−1a及びYNK2の遺伝型を以下に示す。
W303−1a
MATa ade2−1 ura3−1 his3−11,15 trp1−1 leu2−3,112 can1−100
YNK2
MATa ade2−1 his3−11,15 trp1−1 leu2−3,112 can1−100
ura3−1:URA3−GAL1−10 promoter−シロイヌナズナTIR1(pMK27 integrated)
【0058】
イネTIR1発現酵母株作製法
イネTIR1遺伝子(NCBI、アクセッションNo.NM_001059194)は下記のプライマーセット2でイネcDNAライブラリーよりPCR増幅した。増幅した産物はpMK26をSpeIとSalIで処理してシロイヌナズナTIR1遺伝子を取り除いた部分にクローニングした。
<プライマーセット2>
Fプライマー
5’−GGGGATCCATGACGTACTTCCCGGAGGAGGT−3(配列番号15)
Rプライマー
5’−CCCGTCGACTAGGATTTTAACAAAATTTGGTG−3’(配列番号16)
シロイヌナズナTIR1を導入した際と同様の手法で出芽酵母にイネTIR1を導入した。
【0059】
<イネTIR1発現酵母株の遺伝型>
MATa ade2−1 his3−11,15 trp1−1 leu2−3,112 can1−100 ura3−1:URA3−GAL1−10 promoter−イネTIR1
【0060】
参考例2
1.出芽酵母株の作製
(1)内在性蛋白質Mcm4のAuxin degron(mcm4−ad)株
内在性タンパク質Mcm4を分解目的タンパク質とし、NAA添加によりこれを分解する株を作製した。内在性タンパク質Mcm4は、DNA複製に関与する必須タンパク質である。Nature Methods,Vol.6,No.12,p917(Dec.2009)に記載のPMK43を、下記プライマーセット3を用いてPCRにより増幅した。そして、得られた増幅物を用いて、直接、前記参考例1(1)で得られたTIR1発現株YNK2にトランスフォーメーションし、相同組換えによって、出芽酵母ゲノム上のMCM4 5’部分に、CUP1プロモーター−IAA17を導入した。この組換え体を、「YNK14」という。なお、ゲノムへの挿入はPCRにより確認した。
【0061】
<プライマーセット3>
Fプライマー180(配列番号17)
5’−TTGTCCTTGGCGAGGGTGTAAGGAGATCAGTTCGCCTGAATAACCGTGTCCGTACGCTGCAGGTCGAC−3’
Rプライマー181(配列番号18)
5’−TCAATCGAGCCTACATACAGTATTGAATAGTGTTACAAAGCATAAGGATGATCGATGAATTCGAGCTCG−3’
【0062】
YNK14の遺伝型を以下に示す。
YNK14
MATa ade2−1 his3−11,15 trp1−1 leu2−3,112 can1−100
ura3−1:URA3−GAL1−10 promoter−シロイヌナズナTIR1(pMK27 integrated)
mcm4:mcm4−ad(kanMX)
【0063】
2.出芽酵母株の生育実験
YNK4株を、NAA未添加のYPDCu寒天培地(2%ペプトン、1%酵母粉末、2%グルコース、0.1mM CuSO
4、2%寒天)及び、NAA添加のYPGNAA寒天培地(2%ペプトン、1%酵母粉末、2%ガラクトース、0.1mM NAA、2%寒天)に、プレート1枚あたりの細胞数が所定の数(5×10
5、5×10
4、5×10
3、5×10
2、5×10個)となるようにスポットし、24℃で2日間培養した。そして、細胞の生育を観察した。
【0064】
実施例1
参考例2において、IAA17の全長タグ(1−229)(配列番号23)に代えて、IAA17(1−132)、IAA17(1−34)、IAA17(ドメインII)、IAA17(128−132)及びIAA17(65−132)(配列番号1)を導入した組換体を作製した。
得られた組換体を、参考例2(2)と同様にして、オーキシン未添加及びオーキシン添加の場合のタンパク質の分解誘導能(細胞の成育性)を観察した。
【0065】
これらの結果を
図3に示す。同図は、24℃における培養結果であり、各株について、左から、スポットした細胞数が5×10
5、5×10
4、5×10
3、5×10
2、5×10個である。また、図中の左側の図は、オーキシン未添加、中央の図はオーキシン添加の場合の細胞の成育像である。右側は、キメラ遺伝子の設計概略図である。
【0066】
図3から、IAA17の全長を分解タグにした場合に比べて、IAA17(1−94)やIAA17(ドメインII)では、分解能が明らかに低下した。一方、IAA17(1−132)、IAA17(28−132)及びIAA17(65−132)では、IAA17全長と同等又はそれ以上の分解能がみられ、その中ではIAA17(65−132)は、一番短いIAA17の一部をコードしている。
【0067】
実施例2
出芽酵母の染色体複製に関与するPsf2のC末端に、全長のIAA17もしくはIAA17(65−132)を付加した。付加するためには、下記プライマーセットを用いて全長IAA付加にはpMK43、IAA17(65−132)付加にはpMK43と同様の配列をもつが、全長IAA17部分がIAA17(65−132)に改変されているpMK68を鋳型としてPCRによりDNA増幅を行った。
【0068】
5’−CAGCATCTCTTACCGCTGGTACTGAAAATGATGAAGAAGAATTCAATATTCGTACGCTGCAGGTCGAC−3’(配列番号19)
5’−AAATACATTCTATGCCCATTAACTAGGATACCACAACAAGTACATATATAATCGATGAATTCGAGCTCG−3’(配列番号20)
【0069】
得られたDNAを精製した後、YNK2株にトランスフォーメーションし、相同組換えによりPSF2遺伝子の下流に目的のDNAを挿入した。ゲノムへの挿入はPCRにより確認を行った。
しかしながら、全長IAA17を持つ株は作成することができなかった。このことはタグ付加が致死性を引き起こす可能性を示している。一方、同様の方法でIAA17(65−132)の付加は問題無く行うことができた。また、得られたPsd2−IAA17(65−132)を発現する株はプレート1枚あたりの細胞数が所定の数(5×10
5、5×10
4、5×10
3、5×10
2、5×10個)となるようにスポットし、24℃で2日間培養した。そして、細胞の成育を観察した。その結果、Psd2−IAA17(65−132)を発現する株はNAAを添加した培地では成育することができなかった(
図4、+auxin)。このことは、細胞内でPsf2−IAA17(65−132)が分解されていることを示している。
【0070】
実施例3
複数連結したIAA17(65−132)がより機能するかどうか試すために、出芽酵母の染色体複製に関与するSld3のC末端に
図5に示す様々な改変型IAA17を付加した。付加には下記のプライマーを用いて、全長IAA付加にはpMK43、IAA17(65−132)付加にはpMK68、複数個のIAA17(65−132)付加にはpMK43と同様であるが全長IAA17部分に2×IAA17(65−132)をもつpMK74、3×IAA17(65−132)をもつpMK77を鋳型として用いた。
【0071】
5’−ATAGCTCAAAAAGGAGAGTAAGAAGACGTTTATTTGCTCCAGAATCCACACGTACGCTGCAGGTCGAC−3’(配列番号21)
5’−TTTAATTGTATACTCAAAGGCCCCCGAAGTGCGAAATTGTTGTAGCTTAGATCGATGAATTCGAGCTCG−3’(配列番号22)
【0072】
得られたDNAを精製した後、YNK2株にトランスフォーメーションし、相同組換えによりSLD2遺伝子の下流に目的のDNAを挿入した。ゲノムへの挿入はPCRにより確認を行った。
【0073】
得られた株を、NAAを含む培地(+auxin)もしくはNAAを含まない培地(−auxin)においてプレート1枚あたりの細胞数が所定の数(5×10
5、5×10
4、5×10
3、5×10
2、5×10個)となるようにスポットし、24℃で2日間培養した。そして、細胞の成育を観察した。
【0074】
その結果、
図5に示すように、全長IAA17ならびにIAA17(65−132)を付加した株は弱い生育阻害しか観察されなかった。このことは、細胞内において、Sld2−IAA17ならびにSld2−IAA17(65−132)の分解が十分に効率的ではないことを示している。一方、2×IAA17(65−132)、3×IAA17(65−132)を付加した場合、その数の増加に応じて生育阻害が強くなることが明らかになった。このことは、複数個のIAA17(65−132)がもとの全長IAA17やIAA17(65−132)よりも分解効率が高いということを示している。