(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロトン性極性溶媒が、水、アルコールおよびアミンよりなる群から選択される溶媒である、請求項4または5に記載のプロトン性極性溶媒に対する応答性を有するポリカーボネート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートおよびその製造方法について、以下、詳細に説明する。
【0021】
本発明にかかるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートは、二酸化炭素とエポキシドとを触媒存在下で重合することにより製造することができる。
【0022】
本発明において、「プロトン性極性溶媒に対して応答性を有する」とは、ポリカーボネートがプロトン性極性溶媒に全く応答せず、その形態を変化させない場合以外であることを意味する。従って、ポリカーボネートがプロトン性極性溶媒に完全に溶解する場合の他、ポリカーボネートの一部がプロトン性極性溶媒に溶解する場合、ポリカーボネートがプロトン性極性溶媒に溶解するわけではないが溶解しないとまではいえない膨潤する場合も含まれる。
【0023】
本発明において、「プロトン性極性溶媒」とは、一般に、プロトン供与性を有する溶媒であり、具体的には、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−デカノール等の炭素数1〜10の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール;およびトリイソプロパノールアミン等のアミンが含まれる。
【0024】
本発明にかかるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートは、一般式(1):
【0026】
(式中、R
1およびR
2は、同一または異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、カルバモイル基、シアノ基またはグリコール単位より構成される基を示す。ただし、R
1およびR
2のいずれか一方はグリコール単位より構成される基である。)で表されるエポキシドと二酸化炭素を構成単位として含む。
【0027】
本明細書において、グリコール単位とは、置換もしくは非置換の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素の2つの炭素原子のそれぞれが一つの水酸基で置換されたジオール化合物から2つの水素原子が引き抜かれた二価の残基を意味する。得られるポリカーボネートがプロトン性極性溶媒に対して応答性である限り、グリコール単位の由来となるジオール化合物として、限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等を含む。
【0028】
グリコール単位への置換基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基およびn−デシル基等のアルキル基、メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基、メタノイル基およびエタノイル基等のアルカノイル基、カルバモイル基またはシアノ基等が挙げられる。
【0029】
本発明にかかるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートは、(i)R
1およびR
2のいずれか一方がグリコール単位より構成される基である、エポキシドを構成単位とする場合、(ii)R
1およびR
2の両方がグリコール単位より構成される基である、エポキシドを構成単位とする場合ならびに(iii)前記(i)および(ii)の両タイプのエポキシドを構成単位とする場合がある。
【0030】
前記(i)の場合、構成単位とするエポキシドにおいてR
1およびR
2のいずれか一方は、水素原子、メチル基、エチル基、n−ブチル基およびn−デシル基等のアルキル基、メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基、メタノイル基およびエタノイル基等のアルカノイル基、カルバモイル基またはシアノ基等であるが、得られるポリカーボネートのプロトン性極性溶媒に対する応答性が優れる観点から、水素原子が好適に用いられる。
【0031】
前記(ii)の場合、構成単位とするエポキシドにおいてR
1およびR
2は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、グリコール単位より構成される基である。
【0032】
前記(iii)の場合、前記(i)のタイプのエポキシドおよび前記(ii)のタイプのエポキシドを任意の混合比率で用いて、構成単位とする。
【0033】
前記(i)、(ii)および(iii)において、グリコール単位の繰り返し回数nは、1〜50回、好ましくは、1〜30回、より好ましくは、高い反応性を有する観点から1〜15回である。
【0034】
本発明では、このグリコール単位により構成されるグリコール鎖がプロトン性極性溶媒に対する応答に寄与している部位であり、一ユニットのエポキシド分子構造に対し、グルコール鎖の構造が占める割合が十分に大きい場合、それ以外の置換基が存在しても同様の効果を奏すると考えられる。
【0035】
前記(i)で表されるエポキシドは、例えば、下式に示すように、エピクロロヒドリンとエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類とを用いる方法(Journal of Organic Chemistry 1983, 48, p.1117)により製造することができる。
【0037】
前記(i)で表されるエポキシドの具体例としては、2−(2−ヒドロキシエトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−メトキシエトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−ヒドロキシエトキシ)メチル−3−メチルオキシラン、2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)メチル−3−メチルオキシラン、2−(2−メトキシエトキシ)メチル−3−メチルオキシラン、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチル−3−メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン、2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、高い反応性を有する観点から、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチルオキシランおよび2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシランが好適に用いられる。
【0039】
前記(ii)で表されるエポキシドは、例えば、エピクロロヒドリンに代えて、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンを用いて、同様にして、R
1およびR
2に、非置換のエチレングリコール単位より構成される基を導入することができる。
【0040】
前記(ii)で表されるエポキシドの具体例としては、2,3−ビス((2−ヒドロキシエトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−メトキシエトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン、2,3−ビス((2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシラン等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、高い反応性を有する観点から、2,3−ビス((2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチル)オキシランおよび2,3−ビス((2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)オキシランが好適に用いられる。
【0042】
一方、二酸化炭素は、気体のまま反応容器に導入して反応に使用する。反応容器内の二酸化炭素の圧力は、0.01〜6MPaであることが好ましく、より好ましくは、0.1〜3.0MPaである。反応に使用するエポキシドと二酸化炭素のモル比は、典型的には1:0.1〜1:10であるが、好ましくは1:0.5〜1:3.0、より好ましくは1:1.0〜1:2.0である。
【0043】
なお、本発明にかかるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートを製造する際に、以下に記載の一般的なエポキシドをモノマーとして加えても良い。
【0044】
一般的なエポキシドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ペンテンオキシド、2−ペンテンオキシド、1−ヘキセンオキシド、1−オクテンオキシド、1−ドデセンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキサンオキシド、3−フェニルプロピレンオキシド、3,3,3−トリフルオロプロピレンオキシド、3−ナフチルプロピレンオキシド、3−フェノキシプロピレンオキシド、3−ナフトキシプロピレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、3−ビニルオキシプロピレンオキシドおよび3−トリメチルシリルオキシプロピレンオキシド等が挙げられる。中でも、高い反応性を有する観点から、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが特に好ましい。
【0045】
一般的なエポキシドの使用量としては、得られるポリカーボネートがプロトン性極性溶媒に対して応答性を有する限り、特に限定されるものではないが、一般式(1)で表されるエポキシド1モルに対して、一般に20モル以下とすることができ、10モル以下であることが好ましく、5モル以下であることがより好ましい。
【0046】
前記重合で用いられる触媒としては、例えば、特開2010−1443号公報記載のような、特定の置換基を有した、下記式(2):
【0050】
(式中、R
3およびR
4は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の芳香族基、または置換もしくは非置換の芳香族複素環基であるか、または2個のR
3もしくは2個のR
4が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、R
5、R
6およびR
7はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル二ル基、置換もしくは非置換の芳香族オキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基であるか、または隣り合う炭素原子上のR
6とR
7とが互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環または芳香環を形成してもよく、ZはF
−、Cl
−、Br
−、I
−、N
3−、CF
3SO
3-、p−CH
3C
6H
4SO
3-、BF
4-、NO
2-、NO
3-、OH
-、PF
6-、BPh
4-、SbF
6-、ClO
4-、OTf
-、OTs
-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、および芳香族オキシドからなる群より選択されるアニオン性配位子である。)で表されるコバルト錯体を用いることができる。
【0051】
より具体的には、前記コバルト錯体が、一般式(4):
【0053】
(式中、R
3およびR
4は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の芳香族基、または置換もしくは非置換の芳香族複素環基であるか、または2個のR
3もしくは2個のR
4が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、複数のR
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換もしくは非置換の芳香族基、ハロゲン原子から選択され、ZはF
−、Cl
−、Br
−、I
−、N
3−、CF
3SO
3-、p−CH
3C
6H
4SO
3-、BF
4-、NO
2-、NO
3-、OH
-、PF
6-、BPh
4-、SbF
6-、ClO
4-、OTf
-、OTs
-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、および芳香族オキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
【0056】
(式中、R
3およびR
4は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の芳香族基、または置換もしくは非置換の芳香族複素環基であるか、または2個のR
3もしくは2個のR
4が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、複数のR
5は、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換の芳香族オキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基であり、複数のR
9は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換の芳香族オキシ基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシ基であるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR
5とR
7とが互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環を形成してもよく、ZはF
−、Cl
−、Br
−、I
−、N
3−、CF
3SO
3-、p−CH
3C
6H
4SO
3-、BF
4-、NO
2-、NO
3-、OH
-、PF
6-、BPh
4-、SbF
6-、ClO
4-、OTf
-、OTs
-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、および芳香族オキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表される。
【0057】
R
3およびR
4の置換もしくは非置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0058】
R
3およびR
4の置換または非置換の芳香族基としては、炭素数6〜10の置換または非置換の芳香族基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等の置換または非置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。該芳香族基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0059】
R
3およびR
4の置換または非置換の芳香族複素環基としては、炭素数5〜10の置換または非置換の芳香族複素環基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の置換または非置換の芳香族複素環基が挙げられる。該芳香族複素環基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0060】
また、2個のR
3同士または2個のR
4同士は、互いに結合して置換または非置換の脂肪族環または芳香環を形成してもよく、好ましくは炭素数4〜10の置換または非置換の脂肪族環を形成してもよい。例えば、R
3およびR
4が−(CH
2)
4−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0061】
さらに、R
5、R
6およびR
7は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、アシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換の芳香族オキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基である。
【0062】
R
5、R
6およびR
7の置換または非置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0063】
R
5、R
6およびR
7の置換または非置換のアルケニル基としては、炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基、例えば、ビニル基、2−プロペニル基等が挙げられる。該アルケニル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0064】
R
5、R
6およびR
7の芳香族基としては、炭素数6〜10の置換または非置換の芳香族基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等の置換または非置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。該芳香族基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0065】
R
5、R
6およびR
7の置換または非置換の芳香族複素環基としては、炭素数5〜10の置換または非置換の芳香族複素環基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の置換または非置換の芳香族複素環基が挙げられる。該芳香族複素環基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子基、ニトロ基、シアノ基等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0066】
R
5、R
6およびR
7の置換または非置換のアルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基が挙げられる。該アルコキシ基は、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0067】
R
5、R
6およびR
7のアシル基としては、炭素数1〜20のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基等の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、3,5−ジメチルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,4,6−トリメトキシベンゾイル基、2,6−ジイソプロポキシベンゾイル基、1−ナフチルカルボニル基、2−ナフチルカルボニル基、9−アントリルカルボニル基等の芳香族アシル基等が挙げられる。
【0068】
R
5、R
6およびR
7の置換または非置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20の置換または非置換のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられる。該アルコキシカルボニル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0069】
R
5、R
6およびR
7の置換または非置換の芳香族オキシカルボニル基としては、炭素数7〜20の置換または非置換の芳香族オキシカルボニル基が好ましく、例えば、フェノキシカルボニル基が挙げられる。該芳香族オキシカルボニル基は、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子基、ニトロ基、シアノ基等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0070】
R
5、R
6およびR
7の置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20のアラルキルオキシカルボニル基が好ましく、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基等が挙げられる。該アラルキルオキシカルボニル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基、アルコキシアルキレンオキシ基、例えばメトキシエチレンオキシ基等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0071】
さらに、R
6およびR
7は、互いに結合して環を形成してもよく、好ましくは炭素数4〜10の置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成してもよい。例えば、R
6およびR
7が−(CH
2)
4−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。R
6およびR
7が4個の炭素原子を介して結合し、ベンゼン環を形成してもよい。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0072】
ZはF
−、Cl
−、Br
−、I
−、N
3−、CF
3SO
3-、p−CH
3C
6H
4SO
3-、BF
4-、NO
2-、NO
3-、OH
-、PF
6-、BPh
4-、SbF
6-、ClO
4-、OTf
-、OTs
-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、および芳香族オキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。Zの具体例としては、F
−、Cl
−、Br
−、I
−、N
3−、CF
3SO
3-、p−CH
3C
6H
4SO
3-、BF
4-、NO
2-、NO
3-、OH
-、PF
6-、BPh
4-、SbF
6-、ClO
4-、OTf
-、OTs
-、CF
3CO
2−、CH
3CO
2-、OBz
-、OBzF
5-、OBz(3
,5CF
3)
-、OBz(3
,5Cl)
-、OBz(4Me
2N)
-、OBz(4tBu)
-等が挙げられ、好ましくOBzF
5-、OBz
-、NO
3-、OCOCF
3-、またはI
-である。
【0074】
におけるR
8の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec―ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基、F、Cl、Br、I等が挙げられる。
【0075】
一般式(4)で表されるコバルト錯体の中で特に好ましいものの具体例としては、次の式(4−1)〜(4−5)のものが挙げられる。
【化9】
【0078】
におけるR
9の具体例として、R
5,R
6,R
7で説明したようなアルキル基、アルケニル基、芳香族基、芳香族複素環基およびアルコキシ基に加えて、炭素数6〜20の芳香族オキシ基、例えばフェノキシ基、炭素数6〜20のアラルキルオキシ基、例えばベンジルオキシ基フェネチルオキシ基等が挙げられる。また、隣り合う炭素原子上のR
5とR
9とが互いに結合して脂肪族環を形成すると、オキソシクロペンテン環、オキソシクロヘキセン環等になる。
【0079】
一般式(5)で表されるコバルトケトイミナト錯体の中で特に好ましいものの具体例としては、次の式(5−1)〜(5−8)のものが挙げられる。
【化11】
【0080】
触媒の使用割合は、エポキシド1モルに対して、0.05モル以下であることが好ましく、0.01モル以下であることがより好ましい。また、反応時間が長くなることから、0.00001モル以上であることが好ましく、0.00002モル以上であることがより好ましい。
【0081】
前記重合において、さらに助触媒を使用することができる。用いられる助触媒としては、ビス(トリフェニルホスフォラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)、ピペリジン、ビス(トリフェニルホスフォラニリデン)アンモニウムフルオリド(PPNF)、ビス(トリフェニルホスフォラニリデン)アンモニウムペンタフルオロベンゾエート(PPNOBzF
5)、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド(nBu
4NCl)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド(nBu
4NBr)、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド(nBu
4NI)、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート(nBu
4NOAc)、テトラ−n−ブチルアンモニウムナイトレート(nBu
4NO
3)、トリエチルホスフィン(Et
3P)、トリ−n−ブチルホスフィン(nBu
3P)、トリフェニルホスフィン(Ph
3P)、ピリジン、4−メチルピリジン、4−ホルミルピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、N−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、N−プロピルイミダゾール等が挙げられ、好ましくはPPNCl、PPNF、PPNOBzF
5およびnBu
4NClであり、より好ましくは、高い反応活性を有する観点からPPNClおよびPPNFである。
【0082】
必要に応じて使用される助触媒の使用割合は、前記触媒1モルに対して、0.1〜10モルであることが好ましく、0.3〜5モルであることがより好ましく、0.5〜1.5モルであることがさらにより好ましい。
【0083】
前記重合において、必要に応じて溶媒を使用することができる。用いられる溶媒としては、使用されるエポキシド、二酸化炭素、触媒および助触媒と反応しないものであれば特に制限はなく、例えば、炭化水素類、エーテル類、エステル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられる。中でも、溶解性が高いことからエーテル類およびハロゲン化炭化水素類が好ましく、特に、1,2−ジメトキシエタンおよび塩化メチレンである。これら溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
溶媒を使用する場合の使用量としては、前記エポキシド100質量部に対して50〜10000質量部であることが好ましく、100〜5000質量部であることがより好ましい。
【0085】
前記重合は、加圧可能な公知の重合反応装置、例えば、オートクレーブを用いて行うことができる。重合の反応温度は、副生成物である環状カーボネートの生成反応を抑制する観点、および反応時間を短縮する観点から、0℃〜100℃であることが好ましく、10℃〜90℃であることがより好ましく、20℃〜60℃であることがさらにより好ましい。
【0086】
反応時間は、反応条件により異なるが、通常、1〜100時間である。
【0087】
前記重合は、酸素等の影響を排除するために不活性雰囲気下で実施することが好ましい。
【0088】
かくして得られるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートは、前記反応終了後、常法により濃縮、乾燥して単離することができる。また、カラムクロマトグラフィー等の周知の手段を用いて、前記プロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートをさらに精製してもよい。
【0089】
前記重合により得られるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;ポリスチレン換算)によって測定した典型的な数平均分子量(Mn)では、例えば1000〜2,000,000、好ましくは2,000〜1,000,000であり、より好ましくは3,000〜100,000である。
【0090】
また、前記重合により得られるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートは、比較的狭い分子量分布(Mw/Mn)を有し得る。具体的には、例えば4以下であり、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは、1.0〜1.6である。
【0091】
かくして得られるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートは、エチレングリコール単位より構成される側鎖を有しており、水に対する応答性のみならず、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−デカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール、およびトリイソルパノールアミン等のアミンに対する応答性が著しく向上する。
【0092】
本発明にかかるプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートは、セラミックス、特にファインセラミックス、ニューセラミックス等と称されるセラミックス成形用のバインダーとして使用することもできる。
【0093】
本明細書において、「バインダー」とは、プロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートを含んだもので、所望により、分散媒、分散剤、可塑剤等が含まれていても良い。
【0094】
セラミックス粉末は、当技術分野で通常用いられているセラミックス粉末であれば、特に制限されず用いることができる。上記セラミックス粉末としては、例えば、金属又は半金属の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物又はフッ化物、あるいはそれらの組み合わせから選択される。
【0095】
ここで、上記金属としては、例えば、Al、Mg、Zr、Ti、Pb、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd等を挙げることができる。また、半金属としては、Si、Ge、Se、Te等を挙げることができる。
【0096】
セラミックスの具体例としては、例えば、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2〜2Al
2O
3・SiO
2)粉末、アルミナ(Al
2O
3)粉末、ジルコニア(ZrO
2)粉末、チタン酸バリウム(BaTiO
3)粉末、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3)粉末、コーディエライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)粉末、硼珪酸塩バリウム粉末、珪酸鉄粉末、ルチル(TiO
2)、スピネル(Al
2O
3・MgO)、シリマナイト(Al
2O・SiO
4)、マグネシア(MgO)、ジルコン(ZrO
2・SiO
2)、ステアタイト(MgO・SiO
2)、フォルステライト(2MgO・SiO
2)、フェライト(M
2+O・Fe
2O
3、M=Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Mg,Cd等)、AlN、Si
3N
4、SiCおよびガラスセラミックス材料粉末を挙げることができる。
【0097】
セラミックスの成形において、プロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートおよびセラミックス粉末の他に、分散媒、ならびに所望による分散剤、可塑剤等を併用することができる。
【0098】
上記分散媒としては、特に制限されないが、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系分散媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系分散媒;酢酸エチル、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系分散媒;ジブチルカルビトール等のエーテル系分散媒、トルエン、キシレン等の芳香族系分散媒;ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン等の複素環系分散媒等が挙げられる。中でも、環境負荷の少ない水およびイソプロピルアルコールが好ましく、特に、より安全に取り扱うことが可能な水が好ましい。これらは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0099】
上記分散剤としては、グリセリン、ソルビタン等の多価アルコールエステル系、ポリエーテルポリオール系、ポリエチレンイミン等のアミン系、ポリアクリル酸等の高分子電解質、イソブチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体およびそのアミン塩等を用いることができる。
【0100】
上記可塑剤としては、ポリエチレングリコールの誘導体、フタル酸エステル系等が用いられる。
【0101】
焼結セラミックスの製造方法としては、特に限定されないが、セラミック粉末、バインダー、所望により、分散媒、分散剤、可塑剤等を、セラミックボールが充填されたミル等の装置に充填し、当該装置を回転、振動等させることによりスラリーを調製した後、前記スラリーを用いて成形体を成形する。
【0102】
具体的には、上記スラリーを、通常は水系スラリーを使用するスプレードライヤー等の装置で顆粒体に造粒し、冷間静水圧加圧成形、加圧成形、押し出し成形、テープ成形、射出・鋳込成形等を用いて成形される。
【0103】
次に、上記成形体を、加熱することにより上記プロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートを分解させ、かつ上記セラミックス粉末を焼結させることによって、焼結セラミックスを得ることができる。
【0104】
焼結の際の加熱は、生成されるセラミックスにより異なるが、一般的には、600℃以上、好ましくは800℃以上、そして2,300℃以下、好ましくは2,200℃以下の温度範囲で行われる。
【0105】
前記プロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートは、また、フィルム、ファイバー等の用途に使用できることに加えて、光ファイバー、光ディスク等の光学材料として用いることも可能である。
【0106】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
なお、本実施例等で得られたプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートの数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ジーエルサイエンス社製高速液体クロマトグラフィーシステムDG660B・PU713・UV702・RI631A)を用いて、THF中40℃にて測定し、標準ポリスチレンを基準にして算出した。
【0108】
また、本実施例等で得られたプロトン性極性溶媒に対して応答性を有するポリカーボネートの
1H NMRスペクトルの測定は、JEOL社製JNM−ECP500(500MHz)を用いて行った。
【実施例】
【0109】
グリコール単位を有するエポキシドは、既報(Journal of Organic Chemistry 1983, 48, p.1117)記載の方法に従って合成した。また、コバルトサレン錯体(4−3)は、US−B2−7674873(p.6)記載の方法に従って合成した。
【0110】
[合成例1]
ケトイミナトコバルトベンゾエート錯体(5−3)は、以下の方法に従って合成した。
【0111】
【化12】
【0112】
アルゴン雰囲気下、100mL容のシュレンク管にアセト酢酸メチル(1.16g,10mmol)、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(1.19g,10mmol)を入れ、80℃で4時間撹拌した。減圧下で揮発分を除き、残留した橙色オイルにメタノール(20mL)、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(0.57g,5mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。減圧下で揮発分を除き、残留物をろ過し、ろ液を濃縮して無色固体を3.22g得た(収率88%)。
【0113】
1H−NMR(CDCl
3)δ:10.98(s,2H),7.71(s,2H),3.72(s,6H),3.10−2.93(m,2H),2.43(s,6H),2.14−2.10(m,2H),1.86−1.74(m,2H),1.57−1.48(m,2H)ppm.
【0114】
アルゴン雰囲気下、20mL容のシュレンク管に上記で得た無色固体(0.322g,1mmol)、脱水メタノール(10mL)を入れ、50℃で4時間攪拌した。そこに、トリエチルアミン(0.28mL,2.2mmol)を加え、さらに、50℃で30分間撹拌した。その後、無水塩化コバルト(0.143g,1.1mmol)を加え、25℃に戻るまで撹拌した。水(10mL)を加え、生じた沈殿をろ過して回収し、50℃で4時間真空乾燥した。
【0115】
アルゴン雰囲気下、50mL容のシュレンク管に上記固体(0.366g,1.0mmmol)、塩化メチレン(20mL)を入れて溶液を得た後、安息香酸銀(0.251g、1.1mmol)加え、25℃、暗所で12時間撹拌した。生じた沈殿をろ過して除去し、ろ液を濃縮したところ、緑色粉末を0.51g得た(収率94%)。
【0116】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.72(s,2H),7.31−7.21(m,3H),7.18−7.11(m,2H),3.70(s,6H),3.00−2.90(m,2H),2.47(s,6H),2.00−1.85(m,2H),1.80−1.69(m,2H),1.55−1.40(m,2H)ppm.
【0117】
[実施例1]
500mL容のステンレス製オートクレーブに、コバルトサレン錯体(4−3)0.407g(0.5mmol)、PPNCl 0.287g(0.5mmol)を仕込み、窒素雰囲気に置換した後、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(MEEMO)88.1g(0.5mol)を加え、二酸化炭素を0.7MPaまで圧入して、圧力を一定に保ちながら25℃で24時間撹拌した。常圧に戻した後、内容物を塩化メチレンに溶解させ、1M塩酸で2回洗浄した後、揮発分を濃縮し、残留物をジエチルエーテルで2回洗浄した。その後、80℃で5時間真空乾燥を行い、無色ゴム状のポリマーを97g得た(収率90%)。
【0118】
M
n=72,400,M
w/M
n=2.03
1H―NMR(CDCl
3)δ 5.03(br,1H,CH),4.50−4.25(br,2H,CH
2CH),3.70−3.61(m,8H,CH
2CH
2O),3.54−3.43(m,2H,CH
2OCH
2CH
2),3.37(s,3H,CH
2CH
2OCH
3)ppm.
【0119】
[実施例2]
50mL容のステンレス製オートクレーブに、コバルトサレン錯体(4−3)8.1mg(0.01mmol)、PPNCl 5.7mg(0.01mmol)を仕込み、窒素雰囲気に置換した後、2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(MEEEMO)2.2g(10mmol)を加え、二酸化炭素を0.7MPaまで圧入して、25℃で24時間撹拌した。常圧に戻した後、内容物を塩化メチレンに溶解させ、1M塩酸で2回洗浄した後、揮発分を濃縮し、残留物をジエチルエーテルで2回洗浄した。その後、80℃で5時間、真空乾燥を行い、無色ゴム状のポリマーを2.21g得た(収率84%)。
【0120】
M
n=41,500,M
w/M
n=1.82,
1H―NMR(CDCl
3)δ 5.04(br,1H,CH),4.50−4.25(br,2H,CH
2CH),3.70−3.59(m,12H,CH
2CH
2O),3.54−3.43(m,2H,CH
2OCH
2CH
2),3.37(s,3H,CH
2CH
2OCH
3)ppm.
【0121】
[実施例3]
モノマーを、2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(Advanced Polymer Materials社製、商品名 mPEG350)4.07g(10mmol)に変え、重合時間を30時間にした以外は、実施例2と同様の方法で重合を行い、無色オイル状ポリマーを4.25g得た(収率90%)。
【0122】
M
n=25,500,M
w/M
n=1.35,
1H―NMR(CDCl
3)δ:5.00(br,1H,CH),4.45−4.15(br,2H,CH
2CH),3.70−3.60(m,28H,CH
2CH
2O),3.54−3.50(m,2H,CH
2OCH
2CH
2),3.34(s,3H,CH
2CH
2OCH
3)ppm.
【0123】
[実施例4]
50mL容のステンレス製オートクレーブに、ケトイミナトコバルトベンゾエート錯体(5−3)5.7mg(0.01mmol)、PPNCl 5.7mg(0.01mmol)を仕込み、窒素雰囲気に置換した後、MEEMO 1.70g(10mmol)を加え、二酸化炭素を0.7MPaまで圧入して、25℃で24時間撹拌した。常圧に戻した後、内容物を塩化メチレンに溶解させ、1M塩酸で2回洗浄した後、揮発分を濃縮し、残留物をジエチルエーテルで2回洗浄した。その後、80℃で5時間、真空乾燥を行い、無色ゴム状のポリマーを1.5g得た(収率70%)。
【0124】
M
n=51,600,M
w/M
n=1.77,
1H―NMR(CDCl
3)δ 5.03(br,1H,CH),4.50−4.25(br,2H,CH2CH),3.70−3.61(m,8H,CH
2CH
2O),3.54−3.43(m,2H,CH
2OCH
2CH
2),3.37(s,3H,CH
2CH
2OCH
3)ppm.
【0125】
[実施例5]
50mL容のステンレス製オートクレーブに、コバルトサレン錯体(4−3)4.5mg(5.5μmol)、PPNCl 3.2mg(5.5μmol)を仕込み、窒素雰囲気に置換した後、プロピレンオキシド325mg(5.6mmol)、MEEMO 2.50g(11.2mmol)を加え、二酸化炭素を0.7MPaまで圧入して、25℃で24時間撹拌した。常圧に戻した後、内容物を塩化メチレンに溶解させ、1M塩酸で数回洗浄した後、揮発分を濃縮し、その後、80℃で5時間、真空乾燥を行い、無色ゴム状のポリマーを2.57g得た(収率71%)。
【0126】
M
n=14,200,M
w/M
n=2.36
1H―NMR(CDCl
3)δ:5.00(br,1H,CH of PPC and P(MEEM)C ),4.48−3.93(br,2H,CH
2CH of PPC and P(MEEM)C),3.70−3.59(m,8H,CH
2CH
2O of P(MEEM)C),3.54−3.43(m,2H,CH
2OCH
2CH2 of P(MEEM)C),3.37(s,3H,CH
2CH
2OCH
3 of P(MEEM)C),1.32(s,3H,CHCH
3 of PPC)ppm.
【0127】
コポリマー中のPPC含有率は42%であった。
【0128】
[比較例1]
500mL容のステンレス製オートクレーブにコバルトサレン錯体(4−3)0.407g(0.5mmol)、PPNCl 0.287g(0.5mmol)を仕込み、窒素雰囲気に置換した後、プロピレンオキシド58.0g(1.0mol)を加え、二酸化炭素を1.4MPaまで圧入して、圧力を一定に保ちながら25℃で24時間撹拌した。常圧に戻した後、内容物を塩化メチレンに溶解させ、1M塩酸で2回洗浄した後、揮発分を濃縮し、残留物をメタノールに注ぎ、ポリマーを析出させた。その後、80℃で5時間真空乾燥を行い、白色のプロピレンオキシドのホモポリマーを34g得た(収率33%)。
【0129】
M
n=34,000,M
w/M
n=1.11
1H―NMR(CDCl
3)δ:5.00(br,1H,CH ),4.30−4.09(br,2H,CH
2CH),1.32(s,3H,CHCH
3)ppm.
【0130】
[応答性の評価]
本発明で得たポリマーおよび合成例で得たポリプロピレンカーボネートについて、各溶媒に対する応答性を評価した。各溶媒に対して、それぞれの樹脂濃度が10質量%となるように混合して、25℃にて24時間攪拌した後、溶液の状態を目視で観察した。なお、評価基準は、樹脂が完全に溶解した場合を◎、樹脂が部分的に溶解した場合を○、樹脂が膨潤した場合を△、樹脂が溶解しない場合を×とした。これらの結果を表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
表1に示された結果から、実施例1〜5で得られたポリカーボネートは、比較例1で得られたプロピレンオキシドのホモポリマーと比較して、水およびアルコールに対する応答性が著しく向上することがわかる。