【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
スペルミジン(Spd, 4.48 g, 22.7 mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF, 50 ml)に溶解し、トリエチルアミン(9.75 ml, 68.1 mmol )を加え、0℃に保ったところにBoc-ON(13.9 g, 56.5 mmol)を脱水THF(50 ml)に溶かした溶液を激しく攪拌しながら滴下し、0℃で一晩攪拌した。THFを減圧下留去したのち残渣に1M NaOH (50 ml)を加えてジクロロメタン(50 ml × 3)で抽出し、有機層を合わせて食塩水(50 ml)、H
2O(50 ml×2)で洗浄した。硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過して取り除きジクロロメタン/n-ヘキサン中で再結晶した。生じた結晶をn-ヘキサンで洗浄し、白色非晶質の結晶としてN
1,N
8-bis-Boc-Spd(6.68 g, 85.4%)を得た。
【0028】
得られたN
1,N
8-bis-Boc-Spdのうち 83 mg(0.234 mmol)をトリエチルアミン2%(v/v)を含んだジクロロメタン 10 ml に溶解し、ラウリル酸クロリド(200 μl, excess) を加えて室温で2時間攪拌した。ジクロロメタンを減圧留去して除いたのち、残渣にH
2O 10 ml を加えて酢酸エチル(10 ml×3)抽出し、食塩水(10 ml)、H
2O(10 ml×2)で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水した後溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムによって精製した(酢酸エチル:n-ヘキサン= 1:1 , v/v )。精製した化合物全量に対してトリフルオロ酢酸(TFA) 2 ml を加え、室温で 30分攪拌してから溶媒を減圧留去し、残渣にメタノールを少量入れてから再び真空中で十分に減圧留去した。残渣をn-ヘキサンによって数回洗い、1M NaOH 5 mlを加えて分液ロートに移し、ジクロロメタン(5 ml×4 )抽出し、食塩水(5 ml)、H
2O(10 ml×2)で洗浄し硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過して黄色オイル状の N
4-lauroyl-Spd( 62 mg, 81.0% )を得た。
他の
4N-アルカノイルスペルミジンも上記と同様の方法によって合成した。
【0029】
例2
ジアミノブタン(1.2 g, 13 mmol)をトリエチルアミン 10%(v/v)含有メタノール 10 ml に溶解し、0℃に保ったところに Boc
2O( 1.0 g, 4.6 mmol )をメタノール 2 ml に溶かした溶液を激しく攪拌しながら滴下し、0℃で30分攪拌してから室温にて一晩攪拌した。溶媒を減圧下留去してほぼ取り除いてからジクロロメタン( 20 ml )に再び溶解し、1M NaOH(20 ml)、H
2O(20 ml×2)洗浄した。硫酸ナトリウムを加えて脱水した後濾過し、黄色オイル状のN-Boc-ジアミノブタン (589 mg, 69.6%) を得た。
【0030】
得られたN-Boc-ジアミノブタンをアセトニトリル (20 ml)に溶解し、そこに炭酸カリウム(800 mg)を加えて攪拌しながらブロモプロピルフタルイミド(838 mg, 3.13 mmol)を加えた。その後、室温で15分攪拌してから45℃で一晩攪拌した。アセトニトリルを減圧下留去してから残渣にH
2O(20 ml)を加えてジクロロメタン(20 ml×2)抽出し、食塩水(10 ml)、H
2O(20 ml×2)洗浄してから硫酸ナトリウムによって脱水した後、濾過してから濃縮して無色オイル状の粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し(ジクロロメタン:メタノール=9:1, v/v)、無色オイル状のN
8-Boc-N
1-phtal-Spd ( 695 mg, 59.2% ) を得た。
【0031】
得られたN
8-Boc-N
1-phtal-Spdをトリエチルアミン 10% (v/v)含有メタノール 5 ml に溶解し、攪拌しているところに Boc
2O(0.56 g, 2.52 mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を減圧留去でほぼ取り除いてからH
2O(10 ml)を加えて酢酸エチル(10 ml×2)抽出し、有機層を合わせて食塩水(10 ml)、H
2O(10 ml×2)洗浄した。硫酸ナトリウムを加え脱水した後濾過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することで(酢酸エチル:n-ヘキサン = 1:3, v/v)、無色オイル状のN
4,N
8-bis-Boc-N
1-phtal-Spd(332 mg, 81.2%)を得た。
【0032】
得られたN
4,N
8-bis-Boc-N
1-phtal-Spdをエタノール(1 ml)に溶かし、ヒドラジン一水和物(0.2 ml)を加えて室温にて一晩攪拌した。H
2O(10 ml)を加えてジクロロメタン(10 ml)抽出し、H
2O(5 ml× 2)洗浄した。硫酸ナトリウムを加えて脱水してから濾過し、溶媒を減圧下留去して無色オイル状のN
4,N
8-bis-Boc-Spd (225 mg, 93.4%)を得た。
【0033】
83 mg(0,234 mmol)の N
4,N
8-bis-Boc-Spdをトリエチルアミン2%(v/v)含有ジクロロメタン 10 ml に溶解し、ラウリル酸クロリド(200 μl, excess )を加えて室温で2時間攪拌した。ジクロロメタンを減圧留去して除いたのち、残渣にH
2O 10 ml を加えて酢酸エチルで抽出し(10 ml×3)、食塩水(10 ml)、H
2O(10 ml×2回)によって洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水した後溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムによって精製した(酢酸エチル:n-ヘキサン= 1:1 ,v/v)。精製した化合物全量に対してTFA 2 ml を加え、室温で 30分攪拌してから溶媒を減圧留去し、残渣にメタノールを少量入れてから再び真空中で十分に減圧留去した。残渣をn-ヘキサンによって数回洗い、1M NaOH 5 mlを加えて分液ロートに移し、ジクロロメタン(5ml × 4)抽出し、食塩水(5 ml)、H
2O(10 ml × 2)洗浄し硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過して黄色オイル状の
1N-lauroyl-Spd( 62 mg, 81.0% )を得た。
他の
1N-アルカノイルスペルミジンも上記と同様の方法によって合成した。
【0034】
【表1】
【0035】
4N-hexanoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 0.90 (3H, t, J
H,H = 7.0 Hz, H
2-6'), 1.26-1.49 (6H, m, H
2-3'〜5'), 1.54-1.73 (6H, m, H
2-2,6,7), 2.29 (2H, m, H
2-2'), 2.64-2.77 (4H, m, H
2-1,8), 3.21-3.46 (4H, m, H
2-3,5)
4N-nonanoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 0.88 (3H, t, J
H,H = 6.5 Hz, H
2-9'), 1.22-1.36 (10 H, m, H
2-4'〜8'), 1.45 (2H, m, H
2-3'), 1.53-1.73 (6H, m, H
2-2,6,7), 2.29 (2H, m, H
2-2'), 2.64-2.76 (4H, m, H
2-1,8), 3.21-3.44 (4H, m, H
2-3,5)
4N-lauroylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 0.88 (3H, t, J
H,H = 6.8 Hz, H
2-12'), 1.26-1.30 (16H, m, H
2-4'〜11'), 1.45 (2H, m, H
2-3'), 1.50-1.73 (6H, m, H
2-2,6,7), 2.29 (2H, m, H
2-2'), 2.64-2.76 (4H, m, H
2-1,8), 3.24-2.42 (4H, m, H
2-3,5)
【0036】
4N-stearoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 0.88 (3H, t, J
H,H = 7.0 Hz, H
2-18'), 1.20-1.35 (28H, m, H
2-4'〜17'), 1.46 (2H, m, H
2-3'), 1.54-1.74 (6H, m, H
2-2,6,7), 2.29 (2H, m, H
2-2'), 2.66-2.76 (4H, m, H
2-1,8), 3.23-3.45 (4H, m, H
2-3,5)
4N-benzoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 1.45-1.86 (6H, m, H
2-2,6,7), 2.48-2.73 (4H, m, H
2-1,8), 3.18-3.63 (4H, m, H
2-3,5), 7.32-7.44 (5H, m, Ph)
4N-cinnamoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 1.47-1.79 (6H, m, H
2-2,6,7), 2.71-2.80 (4H, m, H
2-1,8), 3.41-3.57 (4H, m, H
2-3,5), 6.84-7.00 (1H, dd, J
H,H = 68.1 Hz, 15.6 Hz, CHPh), 7.21-7.52 (5H, m, Ph), 7.68-7.72 (1H, dd, J
H,H = 15.3 Hz, 5.5 Hz, CHCO)
【0037】
1N-hexanoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 0.89 (3H, t, J
H,H = 6.8 Hz, H
2-6'), 1.31 (4H, m, H
2-4',5'), 1.48-1.70 (8H, m, H
2-2,6,7,3'), 2.15 (2H, t, J
H,H =7.6 Hz, H
2-2'), 2.62 (2H, t, J
H,H =6.8 Hz, H
2-8), 2.72 (4H, m, H
2-3.5), 3.34 (2H, dt, J
H,H =6.1 Hz, 6.1 Hz, H
2-1), 6.88 (1H, s, -NHCO-)
1N-nonanoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 0.88 (3H, t, J
H,H = 6.9 Hz, H
2-9'), 1.21-1.34 (10H, m, H
2-4'-8'), 1.44-1.69 (8H, m, H
2-2,6,7,3'), 2.14 (2H, t, J
H,H =7.6 Hz, H
2-2'), 2.61 (2H, t, J
H,H =6.9 Hz, H
2-8), 2.71 (4H, m, H
2-3.5), 3.34 (2H, dt, J
H,H =6.1 Hz, 6.1 Hz, H
2-1), 6.69 (1H, s, -NHCO)
1N-lauroylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 0.88 (3H, t, J
H,H = 6.9 Hz, H
2-12'), 1.22-1.33 (16H, m, H
2-4'-11'), 1.46-1.70 (8H, m, H
2-2,6,7,3'), 2.15 (2H, t, J
H,H =7.6 Hz, H
2-2'), 2.62 (2H, t, J
H,H =6.9 Hz, H
2-8), 2.72 (4H, m, H
2-3,5), 3.35 (2H, dt, J
H,H =6.1 Hz, 6.1 Hz, H
2-1), 6.70 (1H, s, -NHCO)
【0038】
1N-stearoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 0.88 (3H, t, J
H,H = 7.0 Hz, H
2-18'), 1.20-1.32 (28H, m, H
2-4'-17'), 1.46-1.69 (8H, m, H
2-2,6,7,3'), 2.14 (2H, t, J
H,H =7.6 Hz, H
2-2'), 2.61 (2H, t, J
H,H =6.9 Hz, H
2-8), 2.72 (4H, m, H
2-3,5), 3.34 (2H, dt, J
H,H =6.0 Hz, 6.0 Hz, H
2-1), 6.68 (1H, s, -NHCO)
1N-benzoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), 1.43-1.58 (4H, m, H
2-6,7), 1.78 (2H, qi, H
2-2), 2.65 (2H, t, J
H,H =7.0 Hz, H
2-8), 2.69 (2H, t, J
H,H =6.9 Hz, H
2-5), 2.83 (2H, t, J
H,H =5.8 Hz, H
2- 3), 3.58 (2H, dt, J
H,H =5.7 Hz, 5.7Hz, H
2-1), 7.41 (2H, m, H
ph-3,5), 7.48 (1H, m, H
ph-4), 7.80 (2H, m, H
ph-2,6), 8.20 (1H, s, -NHCO)
1N-cinnamoylspermidine
1H NMR (500MHz CDCl
3), δ 1.48-1.59 (4H, m, H
2-6,7), 1.74 (2H, qi, J
H,H = 6.3 Hz, H
2-6), 2.64 (2H, t, J
H,H =7.0 Hz, H
2-5), 2.72 (2H, t, J
H,H =6.5 Hz, H
2- 3), 2.77 (2H, dt, J
H,H =6.0 Hz, 6.0 Hz, H
2- 3), 3.48 (2H, m, H
2-1), 6.38 (1H, dd, J
H,H = 15.5 Hz, CHPh), 7.22-7.51 (5H, m, Ph), 7.59 (1H, dd, J
H,H = 15.5 Hz, CHCO)
【0039】
例3
末端に水酸基を1個導入したラウロイル基を1位又は4位に結合させた化合物を下記のように合成した。
【化1】
【0040】
12-hydoroxylauric acid(225 mg, 1.04 mmol)にジクロロメタン10 ml を加え、窒素ガス雰囲気下においてEDCI(200 mg, 1.04 mmol), DMAP(127 mg, 1.04 mmol)を入れて全体が溶けるまで攪拌した。そこに
1N,
8N-diBoc-spermidine(300 mg, 0.870 mmol)をジクロロメタン 5 ml に溶解して加えて窒素ガス雰囲気下に室温で3d攪拌した。
【0041】
攪拌終了後、10 ml のクエン酸水溶液(10%, w/w)を反応溶液に加えて5分間攪拌して反応を停止してからジクロロメタン(10ml×3)で抽出し、硫酸ナトリウムで脱水後に溶媒を減圧留去して無色オイル状の粗生成物 0.62 g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(酢酸エチル:n-ヘキサン = 4:1)して無色オイル状の
1N,
8N-diBoc-
4N-(12-hydoroxylauroyl)-spermidine(155 mg, 32.8%)を得た。
1H NMR (500MHz, CDCl
3), δ 1.28 (16H, s, H
2-4'-11'), 1.44 (20H, m, 2 x Boc, H
2-3'), 1.56-1.69 (6H, m,H
2-2, 6, 7), 2.34 (2H, t, J
H,H = 7.5 Hz, H
2-2'),3.07-3.40 (9H, m, H
2-1, 3, 5, 8, -OH), 3.62 (2H, t, J
H,H = 6.5 Hz, H
2-12')
【0042】
これをトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(20% v/v)10 ml 中で1時間攪拌し、トリフルオロ酢酸をメタノールと共沸させて減圧留去した後 1M NaOH 5 ml を加えて分液ロートに移し、ジクロロメタン(5ml×4)で抽出し、蒸留水(5 ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水後に溶媒を減圧留去して白色非晶質の結晶として
4N-(12-hydoroxylauroyl)-spermidine( 73 mg, 24.5% ) を得た。
【0043】
12-hydoroxylauric acid(300 mg, 1.39 mmol)にジクロロメタン15 ml を加え、窒素ガス雰囲気下においてEDCI(275 mg, 1.39 mmol), DMAP(170 mg, 1.39 mmol)を入れて全体が溶けるまで攪拌した。そこに
4N,
8N-diBoc-spermidine(400 mg, 1.16 mmol)をジクロロメタン 5 ml に溶解して加えて窒素ガス雰囲気下に室温で3日間攪拌した。
【0044】
攪拌終了後、10 ml のクエン酸水溶液(10%, w/w)を反応溶液に加えて5分間攪拌して反応を停止してからジクロロメタン(10ml×3)で抽出し、硫酸ナトリウムで脱水後溶媒を減圧留去して無色オイル状の粗生成物 0.68 g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(酢酸エチル:n-ヘキサン = 4:1 )、無色オイル状の
4N,
8N-diBoc-
1N-(12-hydoroxylauroyl)-spermidine( 311 mg, 49.3% )を得た。
1H NMR (500MHz, CDCl
3), δ1.27 (16H, s, H
2-4'-11'), 1.44 (20H, m, 2 x Boc, H
2-3'), 1.51-1.64 (6H, m,H
2-2, 6, 7), 2.18 (2H, t, J
H,H = 7.8 Hz, H
2-2'), 3.13-3.28 (9H, m, H
2-1, 3, 5, 8, -OH), 3.63 (2H, m, H
2-12')
【0045】
これをトリフルオロ酢酸/CH
2Cl
2 (20% v/v) 10 ml 中で1時間攪拌し、トリフルオロ酢酸をメタノールと共沸させて減圧留去した後 1M NaOH 5 ml を加えて分液ロートに移し、ジクロロメタン(5ml×4)によって抽出し、蒸留水(5 ml)で洗浄して、硫酸ナトリウムで脱水後に溶媒を減圧留去して白色非晶質の結晶として
1N-(12-hydoroxylauroyl)-spermidine (160 mg, 40.2%) を得た。
【0046】
YIS12OH1N(スペルミジンの1位アミノ基に-CO-(CH
2)
10CH
2-OHを結合させた化合物)
1H NMR (500MHz, CDCl
3), δ 1.28 (16H, m, H
2-4'-11'), 1.44-1.67 (9H, m, H
2-2,6,7,3',-OH), 2.30 (2H, m, H
2-2'), 2.64-2.76 (4H, m, H
2-1,8), 3.00-3.47 (4H , m, H
2-3,5), 3.62 (2H, t, J
H,H = 6.5 Hz, H
2-1')
YIS12OH4N(スペルミジンの4位アミノ基に-CO-(CH
2)
10CH
2-OHを結合させた化合物)
1H NMR (500MHz CDCl
3) δ 1.28 (16H, m, H
2-4'-11'), 1.50-1.67 (9H , m, H
2-2,6,7,3',-OH), 2.14 (2H, t, J
H,H =7.5 Hz, H
2-2'), 2.61 (2H, t, J
H,H =6.8 Hz, H
2-8), 2.71 (4H, m, H
2-3,5), 3.35 (2H, dt, J
H,H =6.0 Hz, 6.0 Hz, H
2-1), 3.63 (2H, t, J
H,H =6.5 Hz, H
2-12), 6.73 (1H, s, -NHCO)
【0047】
例4
スペルミジンは葉身に対する処理でHR(Hypersensitive Response)様の細胞死斑を形成することが様々な植物種において知られている(Plant Physiol. 132(4), pp.1973-1981, 2009)。例1で得られたスペルミジン誘導体を1 mMの水溶液(Tween 20 を終濃度 0.1 %となるように添加)として播種後1月程度のイネ(日本晴)の葉身に 5μl ずつ滴下し、そのまま風乾してその後の細胞死の強度(Severity)を細胞死の重症度及び滴下部位に対する割合を指標として目視によって評価した(
図1及び2)。その結果、スペルミジン(Spd)自体とは異なる細かな細胞死斑の形成がNon、Lau、
1N Non、及び
1N Lau 等で認められた。また、Spd による細胞死が一部の処理葉のみで認められたのに対して、これらのスペルミジン誘導体ではスペルミジンよりも早い時期に多くの処理葉で細胞死斑を与えた。
【0048】
例5
ファイトアレキシンは植物の病害抵抗反応において産生される抗菌物質であり、ファイトカサンA〜E(PA〜PE)、モミラクトンA, B(MA, MB)などが知られている。イネ葉身よりリーフディスクを切り出し、スペルミジン又は例2において強い細胞死誘導効果を認めた Lau の0.5 mM水溶液を調製し、リーフディスクをこの水溶液に浸漬して 72時間後のファイトアレキシン産生量を測定した。その結果、ファイトアレキシン産生を誘導する物質として知られている塩化銅に比べると弱いもののLau 処理によって塩化銅特異的な反応であるリーフディスクの褐変及び明らかなファイトアレキシンの蓄積が認められた(
図3及び4)。
【0049】
例6
各スペルミジン誘導体を1 mM の水溶液とし、終濃度 0.01%のTween 20 を加えた。水耕で1週間育てたイネの葉身に対してこの水溶液をスプレーし、24時間後にRNAを抽出した。各サンプルにおけるイネ病害抵抗性マーカー遺伝子である OsPR1b、PBZ1、及びWRKY45 の発現をリアルタイムPCRを用いて測定した。その結果、これらのスペルミジン誘導体には抵抗性マーカー遺伝子の発現を誘導する傾向が認められた(
図5)。
【0050】
YIS12OH1N(1NHydLau)又はYIS12OH4N(HydLau)を1 mM の水溶液とし、終濃度 0.01%のTween 20 を加えた。水耕で1週間育てたイネの葉身に対してこの水溶液をスプレーし、24時間後にRNAを抽出した。各サンプルにおけるイネ病害抵抗性マーカー遺伝子である OsPR1b、PBZ1、及びWRKY45 の発現をリアルタイムPCRを用いて測定した。その結果、これらのスペルミジン誘導体には抵抗性マーカー遺伝子の発現を誘導する傾向が認められた(
図6)。
【0051】
例7
5葉期のイネにYIS12OH1N(1NHydLau)又はYIS12OH4N(HydLau)を1 mM又は5 mMの濃度で噴霧処理し、その翌日にいもち病菌(Kyu89-246, MAFF101506, race 003.0, 3.4x10
5 spores/ml)を接種して感染させた。接種後6日の病斑数を測定した結果を
図7及び
図8に示す。被験化合物無しでの噴霧処理(mock)ではいもち病に感染し多くの病斑が出現しているのに対して、5 mMの濃度でYIS12OH1N又はYIS12OH4Nを処理すると、いもち病抵抗性を示した。YIS12OH1Nは1mM処理でも抵抗性を示した。なお、被験化合物の噴霧のみ(5 mM)では細胞死斑は認められなかった。同様にして5葉期のイネにYIS12OH1N(1NHydLau)又はYIS12OH4N(HydLau)を1 mMの濃度で噴霧処理し、その翌日にいもち病菌(Kyu89-246, MAFF101506, race 003.0, 3.4x10
5 spores/ml)を接種して感染させた。接種後6日の病斑数を測定した結果を
図9に示す。
【0052】
例8
直径6 mmのろ紙にYIS12OH1N(1NHydLau)又はYIS12OH4N(HydLau)の水溶液(1 mM、5 mM、又は10 mM)20μlを染みこませて風乾し、このろ紙を用いていもち病菌(Kyu89-246, MAFF101506, race 003.0)に対しての阻止円の形成を評価した。28℃で遮光下に5-6日培養した後に阻止円の形成は認められなかったことから(
図10)、これらの化合物自体は10 mM濃度においてもいもち菌に対する抗菌活性を有しないことが確認された。
【0053】
例9
OsAT1過剰発現体のイネからLN
2で凍結粉砕した葉身をメタノール抽出し1M NaOH-CH
2Cl
2で溶媒分画後、1M HClで有機層から回収してOasis(登録商標)カラムによって精製して試料を調製し、LC/MSMSにより合成標品のYIS12OH4Nを用いてイネ中に存在する天然型のYIS12OH4Nを同定した。結果を
図11に示す。OsAT1を過剰発現しているイネ中にYIS12OH4Nが存在することが確認された。LC/MSの測定条件は以下のとおりである。
Waters Acquity UPLC
カラム:AQUITIY C18BEH 1.7 μm 2.1×50 mm column
流速:0.2 mL/min
移動相 A:0.1%ギ酸水溶液 / B:0.1%ギ酸メタノール
グラジエント条件
min flow A B
0 0.2 70 30
1 0.2 70 30
10 0.2 0 100
【0054】
Waters Xevo(登録商標) TQ MS
キャピラリー電圧:3.0 kV
コーン電圧:34 V
ソース温度:150℃
デソルベーション温度:400℃
コーンガス流量:50 L/Hr
デソルベーションガス流量:800 L/Hr
検出モード:MRMモード(positive)
コリジョン電圧:22/16 V (Ch1/Ch2)
チャンネル条件:344.46>256.30 / 344.46>273.34 (CH1/Ch2)
データ解析:MassLynx(登録商標)
【0055】
例8
例4と同様の方法でYIS12OH1N又はYIS12OH4Nを用いて細胞死斑の形成及び細胞死の強度を調べた。細胞死強度の結果を
図12、細胞死斑の形成を
図13に示す。ラウロイル基の末端炭素原子に水酸基を1個導入した化合物(HydLau:YIS12OH4N、1NHydLau:YIS12OH1N)は水酸基を導入していない化合物(Lau又は
1N Lau)に比べて細胞死の強度がそれぞれ増強されていた。
【0056】
例9
例6と同様の方法でYIS12OH4N(HydLau) 3 mMによるイネ病害抵抗性マーカー遺伝子 OsPR1b、PBZ1、WRKY45、及びOsNPR1 の発現をポリアミンオキシゲナーゼ(PA)阻害剤であるグアザチン(GAZ) 5 mMの共存下で検討した。結果を
図14に示す。グアザチンの共存下においてYIS12OH4N(HydLau)によるイネ病害抵抗性マーカー遺伝子の発現促進がさらに高められた。
【0057】
例10
例4と同様の方法により双子葉類であるシロイヌナズナに対してYIS12OH1N(1NHydLau)、YIS12OH4N(HydLau)、1N Non、Bnz、及びスペルミジン(Spd)による処理を行ない、肉眼により細胞死の観察を行った。結果を
図15に示す。シロイヌナズナに対しても1NHydLau、HydLau、及び1N Nonは強い細胞死を惹起した。YIS12OH1N(1NHydLau)とYIS12OH4N(HydLau)を用いてPR1遺伝子発現促進作用を検討した結果を
図16に示す。24時間後及び82時間後においてHydLauは1NHydLauに比べて3倍程度のPR1遺伝子促進作用を発揮した。
【0058】
なお、本明細書に記載の引用文献に記載の内容は全て本明細書中に参照として取り込まれるものとする。