(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
〔実施形態1〕
図1は本発明によるディスク積層体及びディスクカートリッジの実施形態1が適用されたディスクチェンジャの概略構成を説明するための斜視図である。
図1に示されるように、ディスクチェンジャ10が設置されている床面に直交する方向をZ軸方向とし、床面に平行な面内で互いに直交する2つの方向をX軸方向とY軸方向とする。
【0017】
このディスクチェンジャ10は、ディスク搬送機構100、ディスクカートリッジ700、4台のドライブ装置800、及び制御装置(図示省略)などを備えている。
【0018】
上記制御装置は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムの各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、上位装置(例えば、パソコン)との通信を制御する通信インターフェースなどを有している。
【0019】
図2はディスクカートリッジ700のディスクトレイ710を引き出した状態を説明するための斜視図である。
図2に示されるように、ディスクカートリッジ700は、一例として上下方向(Z軸方向)に積み上げられた10段のディスクトレイ710を有している。また、ディスクカートリッジ700は、上下方向に回動して各ディスクトレイ710の正面側(+X軸方向側)を開閉する扉730が設けられている。また、ディスクトレイ710には、ディスク積層体20が載置される円形凹部からなる載置部712と、正面側から中心付近に延在するU字状の開口部714とが設けられている。尚、本発明によるディスク積層体20は、後述するように各薄型ディスク同士が密着しないように各薄型ディスク間にスペーサを挟んで積層されている。
【0020】
図1に示されるように、各ディスクトレイ710は、水平方向(X軸方向)に移動可能に設けられ、ディスクカートリッジ700の筐体720内の記録再生位置に収容可能であるとともに、該筐体720から引き出したディスク交換位置に移動することが可能である。さらに、ディスクカートリッジ700は、ディスクトレイ710の引き出し方向(X軸方向)に各ドライブ装置800が対向配置されている。
【0021】
ディスク交換を行う際は、任意のディスクトレイ710がドライブ装置800のドライブトレイ810に近接する方向(+X軸方向)に引き出される。そして、ディスク搬送機構100は、ディスクトレイ710に載置されたディスク積層体20の最上位の薄型光ディスクを吸着してドライブ装置800から引き出されたドライブトレイ810に搬送する。
【0022】
図3はディスク積層体20を説明するための側面図である。
図3に示されるように、ディスク積層体20は、一例として10枚の薄型光ディスク(薄型ディスク)21とスペーサ22とが交互に積層されている。また、ディスク積層体20は、ディスクトレイ710に接する最も最下位(−Z軸方向側)にもスペーサ22が配置されている。そのため、ディスクトレイ710の載置部712に載置されたディスク積層体20は、最下位のスペーサ22が載置部712に接することになり、最下位の薄型光ディスク21がディスクトレイ710に直接接触しないように構成されている。尚、本実施形態では、薄型光ディスクを用いた場合を一例として説明するが、これに限らず、例えば、磁気ディスクからなる薄型ディスクでも良い。
【0023】
図4は薄型光ディスクを上方からみた平面図である。
図4に示されるように、薄型光ディスク21は、一例として外径L11の円板状に形成され、円盤状平面21aの中心部に直径L12の中心孔21bを有している。本実施形態では、一例として、薄型光ディスク21の外径がL11=120mm、中心孔21bの内径がL12=15mmとしている。
【0024】
この薄型光ディスク21は、厚さが約0.2mmのプラスチックフィルムに記録膜を積層して形成したものであり、通気性はない。また、円盤状平面21aは、表面が凹凸の無い平滑面に形成されている。
【0025】
図5は本発明の実施形態1で作製したスペーサを説明するための平面図である。
図5に示されるように、スペーサ22は、一例として外径L21の円板状に形成され、円盤状平面22aの中心部に直径L22の中心孔22bを有している。本実施形態1では、一例として、スペーサ22の外径がL21=123mm、中心孔22bの内径がL22=15mmとしている。そのため、スペーサ22は、外径L21が薄型光ディスク21の外径L11より大きく(L21>L11)形成されており、薄型光ディスク21の円盤状平面21a全体を覆うことができるように形成されている。
【0026】
スペーサ22は、例えば、厚さが0.2mm以下の紙やポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリエステル、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ブチラール、エポキシ等の何れかの樹脂フィルムよりなる。
【0027】
さらに、スペーサ22は、中心孔22bの周囲に薄型光ディスク21と当該スペーサ22との間に空気を流入させるための複数の空気流入孔22cが設けられている。本実施形態1では、一例として中心から半径17mm(直径L24=34mm)の同心円上の位置に内径L23の空気流入孔22cが10個設けられている。また、各空気流入孔22cは、周方向に形成される同一半径上に等間隔で配置されており、本実施形態では、角度θ=36°の間隔で設けられている。尚、空気流入孔22cは、上記10個に限らず、少なくとも1個以上設けられていれば良い。
【0028】
この場合の各空気流入孔22cの内径L23は、5mmに設定されているので、全空気流入孔22cの開口総面積は、196.25mm
2であり、薄型光ディスク21の円盤状平面21aの面積に対する全空気流入孔22cの面積比は1.767%である。
【0029】
また、スペーサ22の円盤状平面22aに各空気流入孔22cを穿孔する工程としては、プレス機により複数の円柱形状の刃を有する治具を押圧する型抜き法やパンチング法による形成方法がより望ましい。この型抜き法またはパンチング法により各空気流入孔22cを打ち抜くことで、打ち抜き方向に各空気流入孔22cの周縁部分に沿うバリが発生する。すなわち、互いに積層された薄型光ディスク21の円盤状平面21aとスペーサ22の円盤状平面22aとの間には、各空気流入孔22cの周縁部分より積層方向に突出するバリの存在により微小な隙間(空気層)が形成される。よって、各スペーサ22は、各空気流入孔22cのバリが積層方向に突出することで積層される薄型光ディスク21との間の通気性が改善され、薄型光ディスク21との密着を抑制する。
【0030】
ディスク積層体20では、複数の薄型光ディスク21及び複数のスペーサ22は、平面視、それらの各中心孔21b、22bが一致するように積層されている。
【0031】
ここで、前述した
図1に戻り、ドライブ装置800について説明する。本実施形態では、4台のドライブ装置800が上下方向に重ねられている。そして、最上位のドライブ装置800の筐体820の上面には、ディスク積層体20から取出されたスペーサ22を一時的に保管するための円形凹部からなるスペーサストッカ400が設けられている。
【0032】
各ドライブ装置800は、それぞれ薄型光ディスク21が載置されるドライブトレイ810と、ドライブトレイ810を水平方向(X軸方向)に駆動する駆動機構(図示省略)とを有している。そして、各ドライブ装置800は、ディスクカートリッジ700の正面側に対向配置されており、ドライブトレイ810がディスクカートリッジ700に近接する方向(−X軸方向)に引き出されるように配置されている。
【0033】
図6はディスク搬送機構100の吸盤を説明するための斜視図である。
図6に示されるように、ディスク搬送機構100は、垂直方向(Z軸方向)に延在する昇降軸110、該昇降軸110の下端(−Z軸方向側端部)に取り付けられたブロック状の吸盤保持部材120、吸着搬送部材としての3つの吸盤(吸着搬送部材)130を有する。各吸盤130は、吸盤保持部材120の下面(−Z軸方向側の面)に下方(−Z軸方向)を向いて保持され、且つ上下方向の軸心に対して同一半径となるように配置されている。尚、本実施形態では、3つの吸盤130を配置した例を示すが、これに限らず、吸盤130を3つ以上配置しても良い。
【0034】
ディスク搬送機構100は、昇降軸110をZ軸方向に移動(昇降)させるための駆動系(図示省略)、吸盤130を真空引きする真空ポンプ(図示省略)、真空ポンプと各吸盤130とを繋ぐ配管(図示省略)、配管の途中に設けられた電磁弁(図示省略)などからなる吸着機構を有する。
【0035】
上記ディスク搬送機構100は、吸着用電磁弁を開とすることによって、各吸盤130に真空ポンプによる負圧が導入され、薄型光ディスク21又はスペーサ22を真空吸着することができる。また、ディスク搬送機構100の吸着用電磁弁を閉とすることによって、各吸盤130に大気が導入され、薄型光ディスク21又はスペーサ22の吸着を解除することができる。
【0036】
更に、ディスク搬送機構100は、水平方向に移動させるためのアーム機構(図示省略)を有する。このアーム機構は、ディスクトレイ710又はドライブトレイ810に載置された薄型光ディスク21又はスペーサ22を吸着又は吸着解除する際にディスク搬送機構100をディスクトレイ710又はドライブトレイ810の上方へ移動させる。
【0037】
また、ディスク搬送機構100は、各ディスクトレイ710をディスクカートリッジ700の筐体720に対して出し入れする機構(図示省略)を更に有している。
【0038】
図7は薄型光ディスク21における吸盤接触領域を説明するための平面図である。
図7に示されるように、薄型光ディスク21における中心孔21bの周縁部となる直径L13〜L14のリング状の領域は、情報の記録・再生に用いられない領域である。そして、ディスク搬送機構100の各吸盤130は、薄型光ディスク21における直径L13〜L14のリング状領域を吸盤接触領域21cとして吸着するように配置されている。
【0039】
尚、本実施形態の吸盤接触領域21cは、一例として内側境界が中心から半径20mmの位置、外側境界が半径25mmの位置に設定される。すなわち、吸盤接触領域21cは、直径L13(=40mm)〜L14(=50mm)に設定される。また、吸盤接触領域21cの設定範囲は、上記直径40mm〜50mmの範囲に限らず、薄型光ディスク21に対する記録再生の規格に応じて適宜設定される。
【0040】
図8は本発明の実施形態1で作製したスペーサ22における吸盤接触領域を説明するための平面図である。
図8に示されるように、スペーサ22は、上記薄型光ディスク21の吸盤接触領域21cに対応する吸盤接触領域22dが設定される。吸盤接触領域22dは、薄型光ディスク21の吸盤接触領域21cと同様に、一例として内側境界が中心から半径20mmの位置、外側境界が半径25mmの位置に設定される。
【0041】
また、スペーサ22は、吸盤接触領域22dより中心側となる円心部近傍領域22eに10個の空気流入孔22cが円周方向に等間隔で設けられている。各空気流入孔22cは、吸盤接触領域22dがディスク搬送機構100の各吸盤130に吸着された際、薄型光ディスク21の円盤状平面21aとスペーサ22との間に空気を流入する。そのため、各吸盤130に押圧された際に、スペーサ22は、薄型光ディスク21の円盤状平面21aに密着しない。よって、スペーサ22は、ディスク搬送機構100が上昇すると共に、薄型光ディスク21から簡単に剥がされ、薄型光ディスク21から分離する。また、薄型光ディスク21をディスク搬送機構100により吸着搬送する場合も同様に、薄型光ディスク21の下面側にスペーサ22が密着することも抑制される。
【0042】
次に、上記ディスク搬送機構100による搬送手順について、
図9〜
図13を参照して詳細に説明する。
A.〔ディスクカートリッジ700のディスク積層体20から薄型光ディスク21を全てのドライブ装置800に搬送し、薄型光ディスク21に対して、記録あるいは再生を行う場合の搬送手順〕
(手順A1)ディスクカートリッジ700からディスクトレイ710を引き出す。
(手順A2)引き出されたディスクトレイ710の上方(+Z軸方向側)にディスク搬送機構100を移動させる。
(手順A3)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を下降させ、3つの吸盤130でディスク積層体20の最上位にある薄型光ディスク21を吸着する。このように、薄型光ディスク21の吸盤接触領域21c(
図7参照)がディスク搬送機構100の各吸盤130に吸着される際、薄型光ディスク21が下方に押圧される。しかし、下側のスペーサ22に設けられた各空気流入孔22cにより、薄型光ディスク21とスペーサ22との間に空気が流入する。そのため、薄型光ディスク21は、各吸盤130により下方に押圧されても下側のスペーサ22に密着せず、スペーサ22から微小隙間を介して浮いた状態となる。
(手順A4)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を上昇させ、吸着した薄型光ディスク21をディスク積層体20から分離する(
図9参照)。
(手順A5)ドライブトレイ810を引き出す。
(手順A6)薄型光ディスク21を吸着したディスク搬送機構100を、引き出されたドライブトレイ810の直上に移動させる(
図10参照)。
(手順A7)薄型光ディスク21を吸着しているディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を下降させ、真空を解除する。これにより、薄型光ディスク21はドライブトレイ810に載置される(
図11参照)。
(手順A8)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を上昇させる。
(手順A9)ドライブトレイ810をドライブ装置800の筐体820内に収容する。
(手順A10)引き出されているディスクトレイ710の上方(+Z軸方向側)にディスク搬送機構100を移動させる。
(手順A11)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を下降させ、3つの吸盤130をディスク積層体20の最上位にあるスペーサ22の吸盤接触領域22d(
図8を参照)に接触させ、当該スペーサ22を吸着する。このように、スペーサ22の吸盤接触領域22dがディスク搬送機構100の各吸盤130に吸着される際、各空気流入孔22cにより、薄型光ディスク21の円盤状平面21aとスペーサ22との間に空気が流入する。そのため、スペーサ22は、各吸盤130により下方に押圧されても薄型光ディスク21の円盤状平面21aに密着せず、薄型光ディスク21から微小隙間を介して浮いた状態となる。
(手順A12)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を上昇させ、吸着したスペーサ22をディスク積層体20から分離する。このとき、スペーサ22が薄型光ディスク21に密着していないため、ディスク搬送機構100の吸盤130によりスペーサ22のみが吸着されて搬送される。
(手順A13)スペーサ22を吸着したディスク搬送機構100をスペーサストッカ400の直上に移動させる(
図12参照)。
(手順A14)スペーサ22を吸着しているディスク搬送機構100を下降させ、吸盤130への真空引きを解除する。これにより、スペーサ22はスペーサストッカ400上に載置される(
図13参照)。
(手順A15)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を上昇させる。
(手順A16)次のドライブトレイ810のZ軸方向に関する位置に応じて、アームのZ軸方向に関する位置を調整する。
【0043】
以降、全てのドライブ装置800のドライブトレイ810に薄型光ディスク21がセットされるように、上記(手順A1)〜(手順A16)の処理を繰り返し行う。
【0044】
そして、各ドライブ装置800では、搬送された各薄型光ディスク21に対して、記録あるいは再生を行う。
B.〔記録あるいは再生が終了した薄型光ディスク21をディスクカートリッジ700に戻す場合の搬送手順〕
(手順B1)最も上方(+Z軸方向側)にあるドライブ装置800のドライブトレイ810のZ軸方向に関する位置に応じて、アームのZ軸方向に関する位置を調整する。ここでは、アームのZ軸方向に関する位置を最上位とする。
(手順B2)当該ドライブ装置800のドライブトレイ810を引き出す。
(手順B3)ディスク搬送機構100を当該ドライブトレイ810の上方(+Z軸方向側)に移動させる。
(手順B4)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を下降させ、3つの吸盤130でドライブトレイ810上の薄型光ディスク21の吸盤接触領域21c(
図7を参照)に接触させ、当該薄型光ディスク21を吸着する。このとき、薄型光ディスク21は、吸盤接触領域21cをディスク搬送機構100の各吸盤130に吸着される。
(手順B5)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を上昇させ、吸着した薄型光ディスク21をドライブトレイ810から分離する。
(手順B6)薄型光ディスク21が取り出されたドライブトレイ810をドライブ装置800の筐体820内に収容する。
(手順B7)薄型光ディスク21を吸着したディスク搬送機構100をディスクトレイ710の直上に移動させる。
(手順B8)薄型光ディスク21を吸着しているディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を下降させる。
(手順B9)薄型光ディスク21を吸着しているディスク搬送機構100の吸盤130の吸着を解除する。これにより、薄型光ディスク21はディスクトレイ710上に載置される。
(手順B10)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を上昇させる。
(手順B11)ディスク搬送機構100をスペーサストッカ400の直上に移動させる。
(手順B12)吸盤保持部材120を下降させ、3つの吸盤130でスペーサストッカ400上のスペーサ22を吸着する。このとき、各スペーサ22間には、各空気流入孔22cの周縁部分より積層方向に突出するバリにより微小な隙間(空気層)が形成される。よって、各スペーサ22同士は、各空気流入孔22cのバリにより密着することが防止されている。
(手順B13)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を上昇させ、吸着した最上位のスペーサ22のみをスペーサストッカ400から分離する。
(手順B14)一枚のスペーサ22を吸着したディスク搬送機構100をディスクトレイ710の直上に移動させる。
(手順B15)スペーサ22を吸着しているディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を下降させる。
(手順B16)スペーサ22を吸着しているディスク搬送機構100の吸盤130の真空を解除する。これにより、スペーサ22はディスクトレイ710上に載置されたディスク積層体20の最上位の薄型光ディスク21の上に載置される。
(手順B17)ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を上昇させる。
(手順B18)次のドライブトレイ810のZ軸方向に関する位置に応じて、アームのZ軸方向に関する位置を調整する。
【0045】
以降、全てのドライブ装置800の各ドライブトレイ810上の薄型光ディスク21、及びスペーサストッカ400上の全てのスペーサ22がディスクトレイ710上に載置されるように、上記(手順B1)〜(手順B18)の処理を繰り返し行う。
(手順B19)ディスクトレイ710をカートリッジ700に収納する。
【0046】
上記動作は、プログラム化され前記制御装置のROMに格納されている。すなわち、上記動作は、前記制御装置からの指示によって実行される。
【0047】
このように、ディスク搬送機構100により吸着されて搬送される薄型光ディスク21とスペーサ22は、ディスクトレイ710への収納時は重なって載置されているが、記録再生を行うときは個々に分離して一枚ずつ搬送される。
【0048】
従って、ディスク搬送機構100は、ディスク積層体20から薄型光ディスク21及びスペーサ22を1枚ずつ吸着しなければならない。ここでディスク搬送機構100による搬送動作は、大きく分けて2つある。1つは、ディスク搬送機構100が薄型光ディスク21を吸着するときの動作1であり、他の1つは、ディスク搬送機構100がスペーサ22を吸着するときの動作2である。
【0049】
〔ディスク搬送機構100が薄型光ディスク21を吸着するときの動作1について〕
まず、薄型光ディスク21の直下に、空気流入孔22cが設けられていない従来のスペーサがある場合について説明する。薄型光ディスク21は極めて平滑な通気性のないフィルム状部材であるため、3つの吸盤130が薄型光ディスク21を吸着すると、前述した吸盤接触領域22d(
図8参照)より中心側となる円心部近傍領域22eが密閉され減圧する。そこで、吸盤保持部材120を上昇させると、薄型光ディスク21と直下のスペーサ22との間に負圧が発生し、両者が密着したままとなる。そのため、薄型光ディスク21の上昇に伴って直下のスペーサ22も一緒に上昇して所謂「連れ上がりエラー」と呼ばれる現象が発生する。例えば、ディスク搬送機構100の吸盤保持部材120を1秒以内に3センチ程度の速度で上昇させると、直下のスペーサ22も薄型光ディスク21と一緒に持ち上げられることがある。
【0050】
そこで、本実施形態のように、各吸盤130が接触する吸盤接触領域22dより中心側(円心側)に複数の空気流入孔22cを設けることにより、スペーサ22と薄型光ディスク21とを積層した場合の両者の密着による所謂連れ上がり現象が解消される否かを実験した。
【0051】
また、薄型光ディスク21としては、厚さ120μmのポリカーボネートフィルムに記録膜をスパッタリングで成膜し、紫外線硬化樹脂の保護膜を形成したものを用いた。
【0052】
さらに、本発明者らは、このエラー現象に対して静電気の影響も考慮して、コロナ帯電器による強制帯電を薄型光ディスク21やスペーサ22のそれぞれに実施した。しかし、帯電の有無と吸着現象との相関は無く、薄型光ディスク21やスペーサ22の電気抵抗は関与しないことを確認した。
【0053】
スペーサ22に穿孔された空気流入孔22cは、数が多いほど空気流入効果は増すが、その反面、スペーサ22の中心部の強度が低下したり、吸着搬送がし難くなるという問題が発生する。そこで、本発明者らは、様々な形状や面積を有する穴を設けて実験的に確認したところ、空気流入孔22cの開口総面積とディスク面積との比率で0.05〜15%の範囲で空気流入孔22cを穿孔することが好ましいことを確認した。この範囲より小さい場合(0.05%未満)は、空気流入孔22cの効果が得られにくく、またこの範囲以上(15%以上)ではスペーサ強度の低下や真空搬送に影響があることが判明した。尚、スペーサ22は、前述したように薄型光ディスク21の円盤状平面21aの面積に対する全空気流入孔22cの面積比は1.767%であるので、上記所望の0.05〜15%範囲内である。
【0054】
そこで、実験を行うに際して、薄型光ディスク21とスペーサ22を積層したディスク積層体20を10組作成した。ディスク積層体20をディスクトレイ710に載置し、ディスク搬送機構100によりディスク積層体20を3センチの高さまで0.4秒で持ち上げ、その後2秒間保持した。
【0055】
ここでは、ディスク搬送機構100により薄型光ディスク21を持ち上げたとき、スペーサ22が一緒に連れ上げられ、ディスク搬送機構100を静止させた後、スペーサ22が薄型光ディスク21に1秒以上密着していた場合を、スペーサ22の「連れ上がり有り」と判定する。その結果、ディスク移動回数1000回毎に連れ上がり発生回数を確認し、エラー率として求める。尚、実用上、エラー率は0.5%未満を使用可能範囲とした。
【0056】
今回の実験では、前述した
図5及び
図8に示す実施形態1のスペーサ22と、
図14,
図15に示す実施形態2、3のスペーサ22A、22Bについてのエラー率を確認した。
【0057】
〔空気流入孔の加工方法について〕
上記の各空気流入孔22c、22f、22gは、メカニカルドリリング、型抜き、パンチング、化学エッチング、サンドブラスト、電子線ビーム加工、放電加工、レーザー穿孔など公知の方法にて加工することが可能である。しかしながら、コスト高な特殊な加工法よりも安価な方法が好ましく、とりわけ穿孔後にバリが残りやすい型抜き法やパンチング法による形成方法がより望ましいことがわかった。これはバリの存在により薄型光ディスク21とスペーサ22と間に微小隙間が形成されて吸着時に減圧されにくくなり、両者が互いに密着し難くなるためと推定される。
【0058】
なお、スペーサ22の厚さが0.2mmより厚くなると、ディスク積層体20の積層厚さ(高さ)がより大きくなり、ディスクトレイ710に収納できる薄型光ディスク21の枚数が減って、ディスクカートリッジ700の1個あたりの総記録容量が減ることになる。そのため、スペーサ22の厚さには、上限がある。実際上は薄型光ディスク21の厚さと同等ないし、2倍程度までと考えられるので、厚さ0.2mmのスペーサ22が実用上適していると考えられる。
【0059】
【表1】
〔ディスク搬送機構100がスペーサ22を吸着するときの動作2について〕
本実施形態の各スペーサ22(22A、22B)の通気性は、JIS−L−1096A法の通気性定義に定められているフラジールA法の評価に準拠している。すなわち、圧力差が125Paになったときの通過流量を通気性としている。このとき、スペーサ22の直下には薄型光ディスク21がある。スペーサ22の通気性が大きいと、吸盤130による真空吸着が不可能となり、ディスク搬送機構100はスペーサ22を持ち上げることができない。
【0060】
また、真空ポンプの排気能力を大きくすると、負圧がスペーサ22の直下に積層された薄型光ディスク21にまで及び、スペーサ22を吸着したときに直下の薄型光ディスク21も吸着するおそれがある。
【0061】
その結果、スペーサ22の通気性は、1cm
3/cm
2/秒以下が好ましく、さらに約0.5cc/cm
2/secが好適である。この実施形態の場合は、薄型光ディスク21の連れまわりによるエラー発生率は0.1%だった。
【0062】
これに対し比較例として、通気性が2cm
3/cm
2/秒のポリエステル不織布からなるスペーサ22を敢えて作成し、上記実験と同条件での実験を行うとエラー率は0・8%であり、薄型光ディスク21の搬送に支障をきたすことがわかった。
【0063】
〔実施形態2〕
図14は本発明の実施形態2で作製したスペーサを説明するための平面図である。
図14に示されるように、実施形態2のスペーサ22Aは、3つの吸盤130が接触する吸盤接触領域22dより中心側(円心側)に1つの空気流入孔22fを設ける。中心孔22bと空気流入孔22fとの中心間距離L26は、15mmに設定されている。また、空気流入孔22fは、内径がL25=8mmに設定されているので、空気流入孔22fの開口総面積は、50.24mm
2であり、薄型光ディスク21の円盤状平面21aの面積に対する空気流入孔22fの面積比は0.446%である。
【0064】
尚、スペーサ22Aにおける薄型光ディスク21の円盤状平面21aの面積に対する全空気流入孔22cの面積比は0.446%であるので、上記所望の0.05〜15%範囲内である。
【0065】
〔実施形態3〕
図15は本発明の実施形態3で作製したスペーサを説明するための平面図である。
図15に示されるように、実施形態3のスペーサ22Bは、3つの吸盤130が接触する吸盤接触領域22dより中心側(円心側)に3つの空気流入孔22gが設けられている。各空気流入孔22gは、中心より半径15mm(L28=30mm)の位置に120°間隔で設けられている。また、空気流入孔22gは、内径がL27=6mmに設定されているので、各空気流入孔22gの開口総面積は、84.78mm
2であり、薄型光ディスク21の円盤状平面21aの面積に対する空気流入孔22fの面積比は0.756%である。
【0066】
尚、スペーサ22Bにおける薄型光ディスク21の円盤状平面21aの面積に対する全空気流入孔22cの面積比は0.756%であるので、上記所望の0.05〜15%範囲内である。また、空気流入孔22gの数は、3つ限らず、3つ以下でも3つ以上でも良い。また、各空気流入孔22gの配置間隔は、等間隔に限らず、不規則的の異なる間隔毎に配置しても良い。
【0067】
〔実施形態の効果〕
以上説明したように、本実施形態に係るディスクチェンジャ10においては、ディスク搬送機構100、ディスクカートリッジ700、4台のドライブ装置800、及び制御装置などを備えている。また、ディスクカートリッジ700のディスクトレイ710には、各薄型光ディスク21間にスペーサ22を挿入して複数の薄型光ディスク21が積層されたディスク積層体20が載置され、収納されている。
【0068】
そして、スペーサ22は、薄型光ディスク21より大きな直径で、1cm
3/cm
2/秒以下の通気性を有する材質である。また、スペーサ22における3つの吸盤130が接する吸盤接触領域22dよりも中心側(円心側)の円心部近傍領域22eに各空気流入孔22c、22f、22gを穿孔して通気性を確保又は向上することができる。これにより、ディスク積層体20から薄型光ディスク21及びスペーサ22を1枚ずつ確実に分離することができ、同時に複数枚の薄型光ディスク21及びスペーサ22を搬送する際のトラブルを防止できる。
【0069】
また、スペーサ22の外径L21を薄型光ディスク21の外径L11より大きくすることで、薄型光ディスク21同士の擦れ合いを防ぐことができ、薄型光ディスク21同士の貼り付きや傷つきによるデータエラーの発生も防止できる。
【0070】
さらに、以下のような効果も得られる。
【0071】
(1)上記円心部近傍領域22eに各空気流入孔22c、22f、22gを穿孔して通気性を確保したスペーサ22、22A、22Bを用いることで、薄型光ディスク21を吸着して持ち上げるとき、薄型光ディスク21とスペーサ22との間の減圧吸着を抑制し、薄型光ディスク21の直下のスペーサ22の所謂連れ上がり現象を防止できる。
【0072】
(2)スペーサ22は、それ自体の通気性が低いために、吸盤130により真空吸着して、スペーサ22を吸着するとき、発生する負圧は吸盤130とスペーサ22との間のみに作用して負圧の作用範囲が限定される。そのため、その下の薄型光ディスク21には、負圧の影響を及ぼさない。従って、ディスク搬送機構100がスペーサ22を吸着して持ち上げるときに、その直下の薄型光ディスク21がスペーサ22とともに持ち上げられることはない。
【0073】
(3)スペーサ22が薄型光ディスク21より大きい外径を持つことにより、スペーサ22を介して複数枚の薄型光ディスク21を積層したときに薄型光ディスク21同士が直接触れ合うことはない。これにより、薄型光ディスク21同士の貼り付きを防ぐことができる。
【0074】
なお、上記実施形態では、各ディスク搬送機構100が3つの吸盤130を有する場合について説明したが、吸盤130の数は3つに限定されるものではない。そして、上記実施形態では、同じディスク搬送機構100の吸盤130が薄型光ディスク21とスペーサ22とを個別に吸着する場合について説明したが、これに限らず、ディスク用吸盤と、スペーサ用吸盤とを別個に設けた構成としても良い。
【0075】
例えば、各ディスク搬送機構100が、吸盤保持部材120の中心からの距離が第1の距離で、薄型光ディスク21を吸着する3つの吸盤と、吸盤保持部材120の中心からの距離が第2の距離で、スペーサ22を吸着する3つの吸盤とを有する構成としても良い。すなわち、薄型光ディスク21における円心部近傍領域21c及びスペーサ22における吸盤接触領域22dの、ディスク積層体20の中心からの距離が異なっていても良い。例えば、スペーサ22における吸盤接触領域22dは、上記実施形態では、内径が40mm、外径が50mmに設定された場合について説明したが、これに限らず、内径が70mm、外径が80mmであっても良い。
【0076】
また、上記実施形態では、各吸着機構が吸盤130を用いて薄型光ディスク21及びスペーサ22を吸着する場合について説明したが、これに限定されるものではない。薄型光ディスク21及びスペーサ22の吸着保持、吸着解除が可能であれば良い。
【0077】
また、上記実施形態では、ディスク積層体20が10枚の薄型光ディスク21を含んでいる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0078】
また、上記実施形態では、ディスクカートリッジ700が10段のディスクトレイ710を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0079】
また、上記実施形態では、薄型ディスクが薄型光ディスクの場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、薄型ディスクが薄型磁気ディスクであっても良い。