(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CMP(化学的機械研磨)においては、研磨パッドの表面形状や状態は研磨性能に与える影響が大きく、種々の測定方法により研磨パッドの表面形状、状態を測定して、ドレッシング条件や研磨条件に反映させることが提案されている。
上記非特許文献1及び2には、研磨パッドの表面にレーザ光を照射し、その散乱反射光を光学的FFT解析することにより研磨パッドの表面形状特性を測定可能であることが示唆されている。
研磨パッドの表面にレーザ光を照射し、その散乱反射光を用いて研磨パッドの表面形状や表面状態などの表面性状を測定するにあたって、種々の外乱等の影響があるため、散乱反射光を適切にセンシングすることが重要である。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、種々の外乱等の影響を抑制して研磨パッドの表面性状を正確に測定することができる研磨パッドの表面性状測定装置および当該測定装置を備えた研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明の研磨パッドの表面性状測定装置の第1の態様は、基板に摺接して基板の被研磨面を研磨する研磨パッドの表面性状測定装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、研磨パッドから反射散乱された散乱光を受光素子で受光することで光学的フーリエ変換により研磨パッドの表面形状に基いた空間波長スペクトルに相当する強度分布を得る受光素子を備え、
前記光源から出射された前記レーザ光は、
前記研磨パッドの表面に直接入射され、かつ、前記研磨パッド表面に形成されたポア底部に到達しない入射角で照射されることを特徴とする。
本発明
の実施形態によれば、研磨パッドの表面性状測定装
置は、基板に摺接して基板の被研磨面を研磨する研磨パッドの表面性状測定装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、研磨パッドから反射散乱された散乱光を受光素子で受光することで光学的フーリエ変換により研磨パッドの表面形状に基いた空間波長スペクトルに相当する強度分布を得る受光素子を備え、前記レーザ光は、前記研磨パッド表面での反射率が50%以上となる入射角で照射される
。
本発明
の他の実施形態によれば、研磨パッドの表面性状測定装
置は、基板に摺接して基板の被研磨面を研磨する研磨パッドの表面性状測定装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、研磨パッドから反射散乱された散乱光を受光素子で受光することで光学的フーリエ変換により研磨パッドの表面形状に基いた空間波長スペクトルに相当する強度分布を得る受光素子を備え、前記レーザ光は、S偏光されて前記研磨パッド表面へ照射される
。
上記他の実施形態において、前記レーザ光は、前記S偏光の前記研磨パッド表面での反射率が50%以上となる照射角度で照射される
。
【0011】
本発明によれば、レーザ光源から出射されたレーザ光は、研磨パッド表面に形成されたポア底部に到達しない入射角で照射される。これにより、ポアの存在による影響を抑制することができ、外乱等の影響を抑制して研磨パッドの表面性状を正確に測定できる。
本発明の好ましい態様は、前記入射角は、45°以上であることを特徴とする。
さらに、本発明の好ましい態様は、前記入射角は、80°以上であることを特徴とする。
上記実施形態によれば、レーザ光源から出射されたレーザ光は、研磨パッド表面での反射率が50%以上となる入射角で照射され、または、S偏光されて前記研磨パッド表面へ照射される。これにより、レーザ光の研磨パッド内部への透過光による影響を抑制することができ、外乱等の影響を抑制して研磨パッドの表面性状を正確に測定できる。
【0012】
本発明の研磨装置は、研磨対象物である基板を保持し前記研磨パッドに押圧するキャリアと、前記研磨パッドを保持し、回転させる研磨テーブルと、前記研磨パッドのドレッシングを行うドレッサーと、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の研磨パッドの表面性状測定装置とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の研磨パッドの表面性状測定装置で得られる研磨パッドの表面性状を現す数値を用いて以下のような態様をとることができる。
1)請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の研磨パッドの表面性状測定装置で得られる研磨パッドの表面性状を現す数値に基づいて、ドレッシング条件を設定してドレッシングするドレッシング方法。
2)請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の研磨パッドの表面性状測定装置で得られる研磨パッドの表面性状を現す数値に基づいて、ドレッサーの寿命を検知するドレッサーの寿命検知方法。
3)請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の研磨パッドの表面性状測定装置で得られる研磨パッドの表面性状を現す数値に基づいて、パッドの寿命を検知するパッドの寿命検知方法。
4)請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の研磨パッドの表面性状測定装置で得られる研磨パッドの表面性状を現す数値に基づいて、パッドの表面性状に異常があることを検知するドレッシングの異常検知方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、種々の外乱等の影響を抑制して研磨パッドの表面性状を正確に測定することができる。そして、測定値を用いて以下のCMPの安定運用が可能となる。
(1)研磨パッドやドレッサーを無駄なく寿命の最後まで使い切ることでできるために消耗材コストを抑制できる。
(2)何らかのドレッシング異常による研磨パッドの表面性状の非定常状態を即座に検知して発報することができるために、CMP性能不良による半導体デバイスの製造不良を最低限に抑えることができる。
(3)研磨パッドの表面性状の変化に応じてドレッシング条件を変更することで、常に研磨パッドの表面性状をCMP性能の確保に必要な状態に維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る研磨パッドの表面性状測定装置の実施形態について
図1乃至
図13を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図13において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明に係る研磨パッドの表面性状測定装置を備えた研磨装置の全体構成を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨テーブル1と、研磨対象物である半導体ウエハ等の基板Wを保持して研磨テーブル上の研磨パッドに押圧するキャリア10とを備えている。研磨テーブル1は、テーブル軸1aを介してその下方に配置される研磨テーブル回転モータ(図示せず)に連結されており、テーブル軸1aの回りに回転可能になっている。研磨テーブル1の上面には研磨パッド2が貼付されており、研磨パッド2の表面が基板Wを研磨する研磨面2aを構成している。研磨パッド2には、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)製のSUBA800、IC1000、IC1000/SUBA400(二層クロス)等が用いられている。SUBA800は繊維をウレタン樹脂で固めた不織布である。IC1000は硬質の発泡ポリウレタンであり、その表面に多数の微細な孔(ポア)を有したパッドであり、パーフォレートパッドとも呼ばれている。研磨テーブル1の上方には研磨液供給ノズル3が設置されており、この研磨液供給ノズル3によって研磨テーブル1上の研磨パッド2に研磨液(スラリー)が供給されるようになっている。
【0018】
キャリア10は、シャフト11に接続されており、シャフト11は、キャリアアーム12に対して上下動するようになっている。シャフト11の上下動により、キャリアアーム12に対してキャリア10の全体を上下動させ位置決めするようになっている。シャフト11は、モータ(図示せず)の駆動により回転するようになっており、キャリア10がシャフト11の軸心の回りに回転するようになっている。
【0019】
図1に示すように、キャリア10は、その下面に半導体ウエハなどの基板Wを保持できるようになっている。キャリアアーム12は旋回可能に構成されており、下面に基板Wを保持したキャリア10は、キャリアアーム12の旋回により基板の受取位置から研磨テーブル1の上方に移動可能になっている。キャリア10は、下面に基板Wを保持して基板Wを研磨パッド2の表面(研磨面)に押圧する。このとき、研磨テーブル1およびキャリア10をそれぞれ回転させ、研磨テーブル1の上方に設けられた研磨液供給ノズル3から研磨パッド2上に研磨液(スラリー)を供給する。研磨液には砥粒としてシリカ(SiO
2)やセリア(CeO
2)を含んだ研磨液が用いられる。このように、研磨液を研磨パッド2上に供給しつつ、基板Wを研磨パッド2に押圧して基板Wと研磨パッド2とを相対移動させて基板上の絶縁膜や金属膜等を研磨する。絶縁膜としてはSiO
2が挙げられる。金属膜としてはCu膜、W膜、Ta膜、Ti膜が挙げられる。
【0020】
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2をドレッシングするドレッシング装置20を備えている。ドレッシング装置20は、ドレッサーアーム21と、ドレッサーアーム21に回転自在に取り付けられたドレッサー22とを備えている。ドレッサー22の下部はドレッシング部材22aにより構成され、ドレッシング部材22aは円形のドレッシング面を有しており、ドレッシング面には硬質な粒子が電着等により固定されている。この硬質な粒子としては、ダイヤモンド粒子やセラミック粒子などが挙げられる。ドレッサーアーム21内には、図示しないモータが内蔵されており、このモータによってドレッサー22が回転するようになっている。ドレッサーアーム21は図示しない昇降機構に連結されており、この昇降機構によりドレッサーアーム21が下降することでドレッシング部材22aが研磨パッド2の研磨面2aを押圧するようになっている。研磨テーブル1、キャリア10、ドレッシング装置20等の各装置類は、制御装置(図示せず)に接続されており、制御装置により研磨テーブル1の回転速度、キャリア10の回転速度および研磨圧力、ドレッシング装置20のドレッサー22の荷重や揺動速度等が制御されるようになっている。
【0021】
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2の表面形状や表面状態などの表面性状を測定する研磨パッドの表面性状測定装置30を備えている。研磨パッドの表面性状測定装置30は、レーザ光を出射するレーザ光源31と、研磨パッド2の表面と略平行にレーザ光が進行するようにレーザ光を導くための導光空間32と、研磨パッド2の表面と略平行に進行するレーザ光を研磨パッド2の表面に略垂直方向に進行方向を変更するミラー34と、研磨パッド2の表面で反射散乱した散乱光を受光する受光素子35とを備えている。レーザ光源31は408nmの波長のレーザ光を出射するように構成されている。
図1に示す実施形態では、レーザ光源31はキャリアアーム12に固定されており、レーザ光源31から出射されたレーザ光は、ミラー33によって導光空間32に導かれるようになっている。すなわち、レーザ光源31から略垂直方向に出射されたレーザ光は、ミラー33で光路が変更されて導光空間32に導かれ、導光空間32においてレーザ光は研磨パッド2の表面と略平行に進行し、その後レーザ光はミラー34で光路が変更されて略垂直方向から研磨パッド2に入射するようになっている。研磨パッド2の表面で反射散乱した散乱光を受光する受光素子35は、エリアセンサからなり、CMP性能に及ぼす影響が大きい低波長領域まで検出できるように、研磨パッド2の表面の上方に配置されている。受光素子35は、CMOS,フォトダイオードアレイ,フォトマルアレイでもよい。
【0022】
研磨パッドの表面性状測定装置30は、受光素子35で受光した散乱光の強度分布を特定の演算方法によりCMP性能と相関ある数値に換算する演算機能を有した演算処理装置36を備えている。演算処理装置36は受光素子35に接続されている。演算処理装置36は、散乱光強度分布(スペクトル)を特定の演算方法によりCMP性能と相関ある数値に換算する演算機能も備えている。また、演算処理装置36は、散乱光強度分布やCMP性能と相関ある数値を表示する表示機能を備えている。演算処理装置36はCMPの制御装置に組み込んでもよい。演算処理装置36からの信号はCMPの制御装置へ入力される。
【0023】
図2は、
図1のII部の拡大図である。レーザ光源31から出射されたレーザ光である入射光は、ミラー33(
図1参照)で光路が変更されて導光空間32に導かれる。
図2に示すように、導光空間32においてレーザ光は研磨パッド2の表面と略平行に進行し、その後、レーザ光はミラー34で光路が変更されて、略垂直方向から研磨パッド2に入射する。そして、研磨パッド2の表面で反射散乱した散乱光は受光素子35により受光される。
【0024】
図3は、
図1および
図2に示す研磨パッドの表面性状測定装置30において実行される撮像(受光)して数値を演算するプロセスを模式的に示す図である。なお、
図3においては、受光素子35の形状・配置などは模式化して示しており、またレーザ光源31,ミラー34,演算処理装置36は図示を省略している。
図3に示すように、表面性状測定装置30において以下のステップが実行される。
(1)表面形状u(x,y)を持つ研磨パッド2にレーザ光を照射する。
(2)研磨パッド表面で反射散乱した散乱光を受光素子35で受光し、散乱光強度分布を得る。散乱光強度分布は、研磨パッドの表面形状をその空間波長でフーリエ変換した分布に相当する。
(3)演算処理装置36において、所定の演算を経て、パッド表面指数を求める。
ここで所定の演算とは、
・特定空間波長領域の散乱光強度の積分値
・第一の空間波長領域の積分値に対する、第二の空間波長領域の積分値の比
などである。
【0025】
次に、上記(1)〜(3)のステップを実行する具体的な方法及び装置構成について説明する。
1)研磨パッドからの散乱光強度分布
図4は、レーザ光を研磨パッドに照射した時に発生するパッド表面形状によって散乱した光の強度分布を示す模式図である。
図4に示すように、レーザ光(波長λ)を研磨パッドに照射した時に発生するパッド表面形状によって散乱した光の強度分布I(p)を受光素子で観察するとする。その時、受光素子上の各位置1/pは、各々の表面凹凸である空間波長pのスペクトルを示す。いわば、光強度分布は研磨パッドの表面形状の空間的フーリエ変換のスペクトルを示すことになる。例えば、比較的長い空間波長p
1の場合は、受光素子の1/p
1の位置(空間周波数領域)にそのスペクトルが現れる。一方、比較的短い空間波長p
2の場合も、同様である。
図4において、各記号を以下のように定義する。
θ:入射角
d:レーザビーム径
β:回折角(回折した光が正反射光から偏角した角度)
L:受光素子−パッドの距離
p:研磨パッド表面形状の空間波長
偏角回折角(β)を決定する式は、式(1)に示され、適用する波長λ、設定入射角θ、凹凸の空間波長pで決定される。ただし、式(1)の条件は、Far−field回折の状態である必要がある。Far−field回折は、式(2)で示すように観察する受光素子が研磨パッドから十分な距離L離れていることが必要である。また、式(1)から、式(3)で示すように空間波長pがレーザ波長λより小さくなると、回折角が90°より大きくなり、研磨パッド表面から反射しなくなり、いわゆる吸収される現象になる。
pcosθsinβ+psinθ(1−cosβ)=λ ・・・(1)
far−field回折の条件:L>>(pcosθ)
2/2λ ・・・(2)
空間波長とレーザ光波長の条件;p/λ>1 ・・・(3)
【0026】
2)受光素子とパッド距離およびレーザスポット径の検討
図5は、受光素子とパッドとの距離およびレーザスポット径の関係を示す模式図である。
図5中の各記号は
図4で定義したとおりである。
式(2)において、例えば、θ=45°とし、Lがp
2/4λの100倍より大きいとすると、受光素子とパッドとの距離Lは式(2.1)に示される条件を満たす必要がある。
L>100(p
2/4λ) ・・・(2.1)
次に、レーザビーム径d
0の領域内では、回折光(β<β
0の領域)が正反射光(幅d
0)と重なるため評価不能となる。そのため、回折角β
0(受光素子上では、相当するパッド表面凹凸の空間波数1/p
0)より大きい回折角β(空間波長波数1/p)が評価可能領域(β>β
0または1/p>1/p
0)になる。
ここで、正反射光の境目では、AB/OA=tanβ
0=d
0/2L
ただし、L>>d
0のため、(d
02+4L
2)
1/2≒2Lとすると、
sinβ
0≒d
0/2L、cosβ
0=2L/(d
02+4L
2)
1/2≒2L/(4L
2)
1/2=1と近似される。そして、式(1)より、評価可能な空間波数1/pの範囲は、
1/p
0=(cosθsinβ
0+sinθ(1−cosβ
0))/λ<1/pのため
次の条件が得られる。
pcosθ×(d
0/2L)<λ ・・・(4)
i)受光素子とパッドとの距離Lの選定
例えば、研磨パッドがIC1000の場合は、パッドのポア径は、40〜60μmのため、p<p
0=30μmとして空間波長を評価する。また、レーザ波長λ=0.532μmとすると、
L>100×(30μm)
2/4(0.532μm)≒43mmのため
例えば、受光素子とパッドとの距離L>50mmとすればよい。
ii)レーザスポット径d
0の選定
評価不能領域の境界条件では、スポット径
d
0<4(50mm)(0.532μm)/2
1/2(30μm)=2.5mm
例えば、スポット径d<2mmとすればよい。
【0027】
3)照射レーザ光の波長選定
図6は、レーザ波長(λ〔nm〕)と測定可能な空間波長(p〔μm〕)との関係を示すグラフである。
受光素子とパッドとの距離Lとレーザスポット径d
0を決定するには、レーザ波長を選定する必要がある。
図6に示すように、基本的にレーザの波長λが短いほど測定可能な研磨パッド形状の空間波長の限界p(式(1)のθ=0,β=90°の時でp≒λ)は小さくなる。
しかし、レーザ波長が短くなると、大気による光の散乱(レイリー散乱強度y∝λ
−4)のため、光強度の減光率が大きくなり、被測定表面からの散乱光に対しての外乱になる恐れがある。
そこで、図に矢印で示すように、光強度の減少率を13.5%以下にしようとすると、測定に用いるレーザ波長を450nm(0.45μm)以上にする必要があり、その際に測定可能な空間波長は、θ=0とすると約0.45μm以上となる。また、同様に光強度の減少率を25%以下にするには、測定に用いるレーザ波長を400nm(0.4μm)以上にすればよい。
例えば、小型半導体レーザを用いれば、波長が450nmより大きく、最も近い波長で、一般的よく使われる532nmのレーザ光を使用できる。
【0028】
4)波長構成比
図7は、レーザ光を研磨パッドに照射した時のパッドの表面で反射散乱した散乱光の強度分布を示す模式図である。
図7中の各記号は
図4で定義したとおりである。
図7に示す空間波長p
3から空間波長p
4までの第一の空間波長領域の散乱光強度の積分値に対する、空間波長p
1から空間波長p
2までの第二の空間波長領域の散乱光強度の積分値の比を次式で求める。
【数1】
上記の比を波長構成比と定義する。
【0029】
5)波長構成比と研磨レート(MRR)との相関結果
図8(a),(b)は、本手法で得られた光強度分布に基づき、各々の空間波長(横軸)範囲の光強度の積分値と観察領域全体の光強度の積分値(30μmまで)の比(波長構成比)と研磨レート(MRR)の相関値(縦軸)を示すグラフである。
図8(a),(b)は、異なったドレッサ(#325と#100)でドレッシングされた研磨パッドを用いて、最も測定範囲の広い30〜1.8μm、次に測定範囲の広い30〜2.8μm、測定範囲を狭くした30〜4μmの観察領域の場合の相関値の特性をまとめたものである。
図8(a),(b)に示すように、30〜1.8μmの広い空間波長範囲で演算した方が30〜2.8μmや30〜4μmの空間波長範囲で演算したものより、相関値が高くなる傾向が見られた。したがって、30〜1.8μmの空間波長範囲でのスペクトルの積分値をとった方が良い結果が得られることが分かる。
【0030】
6)表面指数演算のための空間波長範囲の特定
図9(a),(b)は、本手法で得られた光強度分布に基づき、各々の空間波長(横軸)範囲の光強度の積分値と観察領域全体の光強度の積分値(30μmまで)の比(波長構成比)と研磨レート(MRR)の相関値(縦軸)を示すグラフである。
パッド性状を把握するには相関係数値が0.7以上が望ましい。
図9(a),(b)において高い相関係数である0.7以上で考慮すると、より広範囲での測定(1.8μm)のほうが、比較的に幅広い波長領域、およびより小さい空間波長pの相関係数が高い傾向にある。
したがって、
図9(a),(b)に示す例では、空間波長範囲を以下の通りとする。
1.全体の空間波長領域は4〜30μmを含み、好ましくは、2〜30μmを含む。
2.#325でドレシングされたパッドの場合の空間波長領域:2(1.8)〜5μm
3.#100でドレシングされたパッドの場合の空間波長領域:9〜13μm
【0031】
次に、本手法で得られた散乱光強度分布で、一例として、
図7に示す空間波長領域(p
1〜p
2μm)における、波長構成比と研磨レート(MMR)との相関を求めた。この場合、#100と#325でドレッシングされたパッドにおいて、同一の空間波長領域で評価を行った。
図10は、上記評価結果を示し、各々の空間波長範囲(横軸)における波長構成比率と研磨レート(MRR)の相関係数値(縦軸)を示すグラフである。
図10に示す例においては、高い相関係数である相関係数値0.7以上で考慮した場合、研磨に寄与する微細凹凸の空間波長範囲を10〜15μmに限定するとよいことが分かる。
なお、
図8乃至
図10で示す実験結果は、
図1および
図2に示す装置構成で求めたものである。
【0032】
7)ポアとレーザ光入射角θの検討
以上のように、光学的FFTによるパッド表面形状の空間波長に対応した反射光強度スペクトルに基いて、研磨レート(MRR)と強い相関のある数値を演算することができることがわかる。ところで、研磨パッド表面にはドレッシングにより生じる微細形状のほか、元々の研磨パッド表面に形成された形状、ポアが存在し、本手法により得られる散乱光強度分布は、このポアの形状も反映したものとなる。
ポアの底部は研磨される基板と直接接触するわけではなく、研磨レート(MRR)や、ドレッシングの状況を把握するには、このポアの形状による影響をできるだけ排除したほうが良い場合がある。
【0033】
ポアの形状の影響をできるだけ排除するには、レーザ光の研磨パッドに対する入射角を寝かせて、レーザ光がポア底部に到達しないようにすればよい。ポア底部に到達しないようにするには入射角を45°以上とすることが必要で、更には、80°以上とすることが望ましい。ここでいう、レーザ光を到達させないポア底部とは、研磨中の基板と摺接することのない深さをもったポアの底部であり、ごく浅いポアは含まない。
【0034】
8)レーザ光の反射率と偏光の検討
レーザ光は研磨パッド表面で全て反射されるわけではなく、一部はパッド内部に透過する。内部に透過したレーザ光は、研磨パッド内部の構造(ポアなど)によって散乱反射し、その研磨パッド内部での散乱反射光の一部は、研磨パッド表面で反射された散乱反射光と一緒になってしまう。研磨パッドの表面性状を測定するためには、内部に透過したレーザ光の影響を小さくした方が望ましい。レーザ光の物質表面での反射率は、レーザ光の入射角によって変わり、入射角が大きくなるほど反射率が高くなる傾向がある。したがって、研磨パッド表面でのレーザ光の反射率が50%以上となる入射角にすることが望ましい。
【0035】
また、研磨パッド表面でのレーザ光の反射率について、S偏光は入射角の増加に伴って反射率が単調増加するのに対して、P偏光は入射角がブリュースター角に近づくに従って反射率が低下し、ブリュースター角を越えると増加する。したがって、研磨パッドに照射するレーザ光は、偏光板等によりS偏光させることで、研磨パッド表面での反射率を高めることができる。
【0036】
図11は、レーザ光の入射角を80°とした場合の機器構成の一例を示す。
図1と同様に、光源31から出射されたレーザ光は、2つのミラー33,34を介して研磨パッド2に照射されるようになっている。ミラー33,34は、光源31から出射されたレーザ光を反射して研磨パッド2に入射角が80°になるよう位置や角度が設定されている。すなわち、光源31から略垂直方向に出射されたレーザ光は、ミラー33(
図11では図示せず)で光路が変更されて研磨パッド2の表面と平行に進行し、さらにミラー34で光路が変更されて入射角80°で研磨パッド2に入射するようになっている。受光素子
35は、レーザ光の研磨パッド上での正反射が垂直にあたるよう設置されている。
【0037】
入射角が寝ているので、研磨パッドの厚さが変化すると、研磨パッド上のレーザ照射位置が比較的大きく変わってしまう。
図11の形態では、ミラー34が水平方向移動機構に取り付けられており、研磨パッド2の厚さの変化によらず、受光素子
35の面上の同じ位置にレーザ光の正反射が当たるように調整される。研磨パッドの厚さ、または、研磨パッドの表面の高さを測定する測定器(図示せず)を備え、その測定器の結果に基いて、水平方向移動機構を制御するように構成しても良い。
【0038】
上記ステップで得られたCMP性能と相関の強い数値を、予め定めた値と比較して、特定の条件を満たした場合に、研磨パッドやドレッサーの寿命や交換タイミング、またパッド表面性状やドレッシング状態の異常を、演算処理装置36の表示部に表示する。
また、演算処理装置36は、上記ステップで得られたCMP性能と相関の強い数値を、予め定めた条件に照らしてCMPパラメータ、特にドレッシング条件(面圧、回転数、揺動パターン)を変更する機能を持つ。例えば、上記の数値、ドレッシング条件、CMP性能の三者の相関を表わす式を予め得ておき、ドレッシング後に測定される上記の数値をその式に代入することで、CMP性能が常に一定になるようなドレッシング条件を算出し、その条件を次回のドレッシング時に適用する機能等である。
【0039】
図12(a),(b)は、
図4乃至
図10に示すプロセスで得られた数値を利用してドレッシング条件を変更する場合および警報を表示する場合の手順を示すフローチャートである。
図12(a)に示す例においては、基板を研磨した後に研磨パッド2をドレッシングし、パッド表面の測定を行う。次に、パッド表面指数を算出し、パッド表面指数が所定範囲内か否かを判断する。パッド表面指数が所定範囲内にない場合(NOの場合)には、次回のドレッシング条件を変更する。パッド表面指数が所定範囲内の場合(YESの場合)には、ドレッシング条件を変更せず、そのままの条件で次回のドレッシングを行う。
ドレッシング条件の変更例を表1に示す。
【表1】
【0040】
図12(b)に示す例においては、基板を研磨した後に研磨パッド2をドレッシングし、パッド表面の測定を行う。次に、パッド表面指数を算出し、パッド表面指数が正常範囲内か否かを判断する。パッド表面指数が正常範囲内にない場合(NOの場合)には、ドレッサー寿命、研磨パッド寿命、研磨パッド表面異常のいずれかの警報を表示する。この場合、予め、ドレッサー寿命、研磨パッド寿命、研磨パッド表面異常となるパッド表面指数の演算式と正常範囲を決めておく。パッド表面指数が正常範囲内の場合(YESの場合)には、プロセスを継続する。
【0041】
次に、
図1および
図2に示すように構成された研磨装置を用いて、基板の研磨、研磨パッドのドレッシングおよび研磨パッドの表面のモニタリングを行う場合の手順の一例を
図13を参照して説明する。
図13に示すように、基板の処理を開始して基板を研磨する。すなわち、研磨液供給ノズル3から研磨パッド2に研磨液(スラリー)を滴下し、キャリア10を回転させながら下降させて、基板Wを回転する研磨パッド2に所定の研磨圧力で押圧する。これによって、基板上の金属膜や絶縁膜の研磨を行う研磨工程を開始する。なお、研磨工程に併行してドレッシングを行うインサイチュウドレッシングを行ってもよい。
【0042】
次に、研磨液供給ノズル3からの研磨液の供給を停止した後、研磨パッド2に純水を供給して、基板の水ポリッシング(水研磨)などを行うことにより、基板を研磨パッド2上で洗浄する。その後、キャリア10により基板を研磨パッド2の外側に搬送し、研磨後の基板をプッシャ等の受渡し装置に受け渡す。
【0043】
次に、研磨パッド2をドレッシングする。すなわち、研磨パッド2を回転させるとともに、ドレッサー22を回転させ、次いでドレッサーアーム21を下降させ、ドレッサー22の下面のドレッシング部材22aを回転する研磨パッド2に押圧する。その状態で、ドレッサーアーム21を揺動(スイング)させる。研磨パッド2のドレッシング中は、研磨液供給ノズル3(
図1参照)からドレッシング液としての純水が研磨パッド2に供給される。
【0044】
次に、研磨パッドの表面性状測定装置30により研磨パッド2の表面をモニタリングをする。このモニタリング工程は、
図4乃至
図10において説明したように、パッド表面指数を算出し、
図12(a),(b)において説明したように、ドレッシング条件の変更、研磨パッド寿命や研磨パッド表面異常の警報を表示する等の所定の判断を行う。
前記モニタリング工程の終了後に基板処理を完了する。なお、モニタリング工程は、研磨工程中に行ってもよく、またドレッシング工程中に行ってもよい。
【0045】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。