(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ルート再選択ステップにおいて再設定された前記伝送ルートにおける前記無線局が、選択した前記伝送方法により、再設定された前記伝送ルートに従って、前記開始局と前記終了局との間のマルチホップ伝送を行うマルチホップ伝送ステップをさらに有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の伝送ルート決定方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による無線通信システムの構成図である。同図に示す無線通信システムにより実現される無線通信ネットワークは、複数の無線局10に構成され、マルチホップ伝送を行う。無線通信システムにおける無線局10のうち無線局T1及びT2は、無線通信ネットワークに属し、通信を行う任意の1つの無線局ペアである。無線局T1と無線局T2の通信方向は、無線局T1から無線局T2への方向でもよく、無線局T2から無線局T1への方向でもよく、あるいは無線局T1と無線局T2の双方向通信のいずれでもよい。また、無線通信システムにおける無線局10のうち無線局R1、R2、…、Rp(pは1以上の整数)は、無線通信ネットワークにおいて無線局T1と無線局T2の間の通信に協力する中継局である。また、無線局T1、T2、R1〜Rp以外の無線局10は、無線局T1と無線局T2の間の通信に協力せず、中継局として選ばれていない無線局である。なお、上記のいずれの無線局10も、AP(Access Point:アクセスポイント)、あるいは、STA(Station:端末)に限定する必要はない。
【0017】
図2は、無線局10の内部構成を示すブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみ抽出して示してある。同図に示すように、無線局10は、アンテナ11、無線通信部12、及び通信制御部13を備えて構成される。アンテナ11は、無線信号を送受信する。同図においては、アンテナ11を複数備える場合を示しているが、1つでもよい。無線通信部12は、無線信号の送信処理、受信処理、及び中継処理を行う。中継処理は、アンテナ11が受信した無線信号を受信処理によって復調・復号して得たデータを、送信処理によって符号化・変調してアンテナ11に出力してもよく、アンテナ11が受信した無線信号の増幅のみを行ってアンテナ11に出力してもよい。
【0018】
通信制御部13は、無線通信部12を制御し、ルート選択部14、通信権獲得部15、前処理部16、及び伝送制御部17を備えて構成される。ルート選択部14は、既存のルーティング技術によって、マルチホップ伝送の伝送ルートを決定する。通信権獲得部15は、既存の通信権獲得制御によって通信権を獲得する。
【0019】
前処理部16は、マルチホップ伝送の前処理として、ルート選択部14が決定したマルチホップ伝送の伝送ルートを再設定する。前処理部16は、伝送品質算出部161、ルート再選択部162、及び制御フレーム送信部163を備えて構成される。伝送品質算出部161は、ルート選択部14が決定したマルチホップ伝送の伝送ルートに沿ってリレーされた制御フレームや、伝送ルートには含まれない無線リンクにより受信した制御フレームに基づいて直接伝送の伝送品質を算出するとともに、中継伝送の伝送品質及び協力中継伝送の伝送品質を再帰的に算出する。ルート再選択部162は、伝送品質算出部161が算出した伝送品質に基づいて最も良い伝送方法を選択し、ルート選択部14が決定したマルチホップ伝送の伝送ルートを、選択した伝送方法に基づいて再設定する。制御フレーム送信部163は、ルート再選択部162が選択した伝送方法を用いた場合の伝送品質の情報を、制御フレームに設定して送信する。
伝送制御部17は、ルート再選択部162が再設定した伝送ルート及び選択した伝送方法に従って、マルチホップ伝送を行うよう無線通信部12を制御する。また、伝送制御部17は、マルチホップ伝送の成否を示す応答の伝送を制御する。
【0020】
図3は、本実施形態の無線通信ネットワークにおける全体処理の流れを示す図である。
予め、各無線局10のルート選択部14は、無線通信部12を制御してマルチホップ伝送の伝送ルートを選択するための制御フレームを送受信するなどして、マルチホップ伝送の伝送ルートを決定しておく。このマルチホップ伝送の伝送ルートの決定には、既存のルーティング技術を用いることができる。以下、この決定されたマルチホップ伝送の伝送ルートを、「既定ルート」と記載する。
【0021】
無線通信ネットワークにおいて、未送信の送信フレームを有する無線局10同士が、既存の媒体アクセス方式に従い通信権を競合する。例えば、無線LAN(Local Area Network)の場合、未送信の送信フレームを有する各無線局10の通信権獲得部15は、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance:搬送波感知多重アクセス)方式により通信権を競い合う。その結果、マルチホップ伝送を希望する無線局10の通信権獲得部15が、自局が属する無線通信ネットワークの中での通信権を獲得する(ステップS1)。例えば、
図1における無線局T1が、無線通信ネットワーク内での通信権を獲得する。
【0022】
次に、既定ルートを構成する無線局10は、通信権を獲得したマルチホップ伝送の無線局10である開始局(送信局)と、マルチホップ伝送の宛先の無線局10である終了局(受信局)との間で通信ができるように、マルチホップ伝送の前処理として、既定ルートに沿ってルート再選択手順を実施する。このルート再選択手順では、マルチホップ伝送の開始局(無線局T1)から途中の中継局(無線局R1、R2、…、Rp)および宛先の終了局(無線局T2)までの一部或いは全部の伝送ルートについて、伝送品質情報を再帰的に算出し、最も伝送品質の良い伝送ルートを再選択する(ステップS2)。
【0023】
ルート再選択手順の実施には、前処理用の制御フレーム(以下、「前処理制御フレーム」と記載する。)が用いられる。既定ルートの無線局10は、既定ルートに沿って前処理制御フレームを開始局から終了局までリレーする。既定ルートの無線局10の伝送品質算出部161は、前処理制御フレームをリレーする際に、無線リンク情報を用いて既定ルート以外に可能な伝送ルートについて伝送品質情報を再帰的に算出する。ルート再選択部162は、伝送品質算出部161が算出した伝送品質情報に基づいて最も伝送品質の良い伝送ルートを再選択する。制御フレーム送信部163は、終了局側の他の無線局10において伝送品質を算出可能するために、ルート再選択部162が再選択した伝送ルートの伝送品質情報を前処理制御フレームに設定して無線通信部12に送信を指示する。
【0024】
なお、ここでいう無線リンク情報とは、ある無線局ペア間の通信に利用できるさまざまな情報を意味する。例えば、無線リンク情報として、無線伝搬路情報(CSI:Channel State Information)、受信信号対雑音電力比(SNR:Signal to Noise power Ratio)情報、変調方式符号化方式(MCS:Modulation Coding Scheme)情報、トラフィック(TSI:Traffic State Information)情報などのさまざまな無線リンクに関連する情報が考えられる。無線伝搬路情報、受信信号対雑音電力比情報は、無線通信部12におけるトレーニング信号などの受信状態から間接的な情報として得ることができる。また、変調方式符号化方式は、送信元の無線局10が前処理制御フレームなどに設定した情報から直接得ることができる。また、トラフィック情報は、無線通信部12において受信した無線信号の送信元を監視することにより得ることができる。
また、ここでいう伝送品質情報とは、ある伝送ルートにおける伝送容量、伝送誤り率、伝送遅延などの伝送品質を評価する指標を意味する。
【0025】
なお、本実施形態では、使用する無線リンク情報および伝送品質情報の種類によって、その技術の適用範囲が制限されるものではない。従って、実システムへの応用の際には、上記で列挙した無線リンク情報および伝送品質情報に限定する必要はない。
【0026】
次に、既定ルートの無線局10は、ステップS2における処理でルート再選択部162が再選択した伝送ルート(以下、「再選択ルート」と記載する。)及び伝送方法に従って、マルチホップ伝送および成否応答を実施する(ステップS3)。つまり、開始局の伝送制御部17は、送信フレームをマルチホップ伝送の無線フレームとして送信するよう無線通信部12に指示し、アンテナ11は、送信フレームを無線により送信する。中継局の伝送制御部17は、再選択ルートに沿って開始局側の他の無線局10(開始局または他の中継局)から送信され送信フレームを受信し、受信した送信フレームを中継処理して終了局側の他の無線局10に送信するよう無線通信部12に指示する。これを繰り返すことにより、宛先の無線局10がマルチホップ伝送により送信フレームを受信する。さらに、終了局の伝送制御部17は、成否応答を無線フレームとして送信するよう無線通信部12に指示し、アンテナ11は、成否応答を無線により送信する。この成否応答のフレームは、既定ルートを逆に辿った伝送ルート、再選択ルートを逆に辿った伝送ルート、あるいは、他の方法により選択された伝送ルートを用いて、開始局まで中継される。成否応答は、送信フレームと比較してデータ量が少ないため、そのデータ量に応じた伝送ルートを用いることができる。例えば、再選択ルートを逆に辿った伝送ルートは、ルート再選択終了後に既定ルートの逆順で終了局から開始局方向に制御フレームを送信することにより通知することができる。
【0027】
最後に、開始局の通信権獲得部15は、マルチホップ伝送および成否応答が完了した後、無線通信ネットワークに通信権を解放する(ステップS4)。
【0028】
続いて、ルーティングで決定したマルチホップ伝送の既定ルートに沿って、前処理により伝送ルートを再選択するステップS2の処理の詳細について説明する。
ステップS2において、既定ルートの無線局10は、以下のように動作する。
(1) 既定ルートの無線局10は、ルーティング技術で決定されたマルチホップ伝送の既定ルートに沿って、前処理制御フレームをリレーする。
(2) 既定ルートの各中継局は、自局において最も品質の良い伝送ルートを選択し、選択した伝送ルートの伝送品質情報Cを制御フレームに格納してリレーする。
【0029】
伝送品質情報Cは、以下の式(1)のように表される。なお、maxは、{}内に列挙した要素のうち、最大の要素を選択することを示す。直接伝送品質は、開始局からの直接伝送の伝送品質であり、中継伝送品質は、開始局側の他の中継局を経由した中継伝送の伝送品質であり、協力中継伝送品質は、開始局及び開始局側の他の中継局のうち2以上を用いた協力中継伝送の伝送品質である。
【0030】
C=max{直接伝送品質,中継伝送品質,協力中継伝送品質} …(1)
【0031】
ここで、中継局が5個であり、開始局から終了局の間に6ホップあるマルチホップ伝送について、前処理によるルート再選択の方法を説明する。なお、任意の中継局数およびホップ数あるマルチホップ伝送についても、ここで説明した前処理を適用する方法は自明であり、本実施形態の説明の範疇を超えるものではない。
【0032】
図4は、マルチホップ伝送の構成例を示す図であり、中継局が5個の場合の例を示している。ここでは、ルーティング技術によって決定されたマルチホップ伝送の既定ルートに沿って、マルチホップ伝送に参加するすべての無線局10を開始局から終了局まで順番に並べている。以下では、開始局である無線局10を開始局1、既定ルートにおける中継局である無線局10を中継局2〜中継局6、終了局である無線局10を終了局7と記載する。
【0033】
最適な伝送ルートを選択するには、開始局1から終了局7までのすべての所望リンクおよび傍聴リンクの情報を終了局7に集約し、それらの情報に基づいて伝送品質情報を算出するのは一般的な手法である。ここでいう所望リンクとは、既定ルート上にある無線リンクであり、傍聴リンクとは、既定ルート上にない無線リンクである。例えば、
図4の実線で示している無線リンクLk12は開始局1と中継局2との間の所望リンクであり、点線で示している無線リンクLk13は開始局1と中継局3との間の傍聴リンクである。また、伝送品質情報Ci(i=2〜6)は、中継局iにおいて式(1)により算出した伝送品質情報Cである。
【0034】
マルチホップ伝送のホップ数の増加に伴い、傍聴リンクの数は急激に増加するため、傍聴リンクの情報を全てマルチホップ伝送の終了局7に伝達することはかなりのオーバヘッドが生じる。それを回避するため、以下に示す再帰的な方法で、前処理制御フレームのリレーと共に、潜在ルートにおける伝送品質情報の算出を行う。
【0035】
開始局1、中継局2〜6、及び終了局7は、ルート再選択の実施に用いられる前処理制御フレームを、ルーティング技術で決定された既定ルートに沿って、開始局1から終了局7までリレーする。
図4に示す例では、前処理制御フレームを開始局1・中継局2・中継局3・中継局4・中継局5・中継局6・終了局7の伝送ルートでリレーし、合計で6個のホップと対応する6個の時間ステップを使用する。以下、j番目の時間ステップを、時間ステップ#j(j=1〜6)と記載する。
【0036】
時間ステップ#1、すなわち、ホップ1・2において、開始局1は、前処理制御フレームを無線送信する。既定ルートにおいて開始局1との所望リンクを有する中継局2と、傍聴局である中継局3〜6、及び終了局7(以下、「傍聴局3〜7」と記載する。)は、この前処理制御フレームを受信する。つまり、開始局1の制御フレーム送信部163は、前処理制御フレームの送信を無線通信部12に指示し、無線通信部12は、トレーニング信号を含んだ前処理制御フレームを生成してアンテナ11から無線により送信させる。中継局2と傍聴局3〜7は、アンテナ11により前処理制御フレームを受信し、無線通信部12は、前処理制御フレームの受信処理を行う。中継局2と傍聴局3〜7の伝送品質算出部161は、無線通信部12により受信処理された前処理制御フレームに含まれるトレーニング信号を利用して、開始局1と自局の間の無線リンク情報を推定する。中継局2が推定した開始局1と自局の間の無線リンク情報を所望無線リンク情報L−12とし、傍聴局3、4、5、6、7が推定した開始局1と自局の間の無線リンク情報をそれぞれ、傍聴無線リンク情報L−13、L−14、L−15、L−16、L−17とする。ただし、開始局1からの距離や障害物などが原因で推定できない無線リンク情報も存在し得る。
【0037】
中継局2の伝送品質算出部161は、得られた所望無線リンク情報L−12を用いて、以下の式(2)に示すように、自局における開始局1との直接伝送による伝送品質情報を算出し、伝送品質情報C2とする。
【0039】
なお、f()は、無線リンク情報をパラメータとして用い、直接伝送の伝送品質情報を算出する関数である。中継局2の制御フレーム送信部163は、開始局1から受信した前処理制御フレームに伝送品質情報C2を追加し、次の中継局3に知らせる準備をしておく。
【0040】
同様に、傍聴無線リンク情報L−1i(i=3,4,5,6,7)の推定ができた傍聴局iの伝送品質算出部161も、傍聴無線リンク情報L−1iを用いて、自局における開始局1との直接伝送による伝送品質情報を算出する。これにより、傍聴局3、4、5、6、7の伝送品質算出部161はそれぞれ、開始局1との直接伝送による伝送品質情報f(L−13)、f(L−14)、f(L−15)、f(L−16)、f(L−17)を得る。
【0041】
時間ステップ#2、すなわち、ホップ2・3において、中継局2は、前処理制御フレームをリレーする。つまり、中継局2の制御フレーム送信部163は、伝送品質情報C2を追加した前処理制御フレームを送信するよう無線通信部12に指示する。無線通信部12は、前処理制御フレームの送信処理を行い、アンテナ11から無線により送信させる。
【0042】
既定ルートにおいて中継局2との所望リンクを有する中継局3と、傍聴局である中継局4、5、6、及び終了局7(以下、「傍聴局4〜7」と記載する。)は、中継局2が送信した前処理制御フレームをアンテナ11により受信し、無線通信部12は、前処理制御フレームの受信処理を行う。中継局3と傍聴局4〜7の伝送品質算出部161は、無線通信部12により受信処理された前処理制御フレームに含まれるトレーニング信号を利用して、中継局2と自局の間の無線リンク情報を推定する。中継局3が推定した中継局2と自局の間の無線リンク情報を所望無線リンク情報L−23とし、傍聴局4、5、6、7が推定した中継局2と自局の間の無線リンク情報をそれぞれ、傍聴無線リンク情報L−24、L−25、L−26、L−27とする。
【0043】
中継局3の伝送品質算出部161は、得られた所望無線リンク情報L−23と、中継局2から受信した前処理制御フレームに設定されている伝送品質情報C2とを用いて、以下の式(3)に示すように、自局における中継局2を中継した中継伝送による伝送品質情報を算出する。
【0044】
中継局3における中継局2を中継した中継伝送による伝送品質情報=g(C2,L−23) …(3)
【0045】
なお、g()は、無線リンク情報と伝送品質情報をパラメータとして用い、中継伝送の伝送品質情報を算出する関数である。この関数g()により、現在のラストホップまでの伝送品質情報(ここでは、伝送品質情報C2)と、現在のラストホップとの無線リンク情報(ここでは、所望無線リンク情報L−23)の両者によって中継伝送の伝送品質情報を一意に決定できる。
【0046】
更に、中継局3の伝送品質算出部161は、以下の式(4)により、開始局1と中継局2を用いた協力中継伝送による伝送品質情報を次のように算出する。算出には、1つ前のホップで計算した開始局1との直接伝送による伝送品質情報f(L−13)と、式(3)により算出した中継局2を中継した中継伝送による伝送品質情報g(C2,L−23)が用いられる。
【0047】
中継局3における開始局1と中継局2を用いた協力中継伝送による伝送品質情報=h(f(L−13),g(C2,L−23)) …(4)
【0048】
なお、h()は、協力中継伝送の伝送品質情報を算出する関数である。この関数h()により、直接伝送による伝送品質(ここでは、f(L−13))と、中継伝送による伝送品質(ここでは、g(C2,L−23))との組合せによって、協力中継伝送の伝送品質情報を一意に決定できる。
【0049】
最後に、中継局3のルート再選択部162は、開始局1からの直接伝送と、中継伝送と、協力中継伝送の3者の中から最も伝送品質が良い伝送方法を選択し、選択した伝送方法に対応する伝送ルートおよびその伝送方法を記憶する。ルート再選択により決定した中継局3の伝送品質情報C3は、以下の式(5)のように表せる。
【0050】
C3=max{f(L−13),g(C2,L−23),h(f(L−13),g(C2,L−23))} …(5)
【0051】
中継局3の制御フレーム送信部163は、受信した前処理制御フレームに算出した伝送品質情報C3を追加し、次の中継局4に知らせる準備をしておく。
【0052】
同様に、傍聴無線リンク情報L−2i(i=4,5,6,7)の推定ができた傍聴局iも、自局における伝送品質情報を算出する。つまり、傍聴局iの伝送品質算出部161は、f(L−2i)、g(C2,L−2i),h(f(L−1i),g(C2,L−2i))を算出する。
【0053】
時間ステップ#3、ホップ3・4〜時間ステップ#6、ホップ6・7まで、上記と同様に、各中継局4〜6及び終了局7は、前処理制御フレームをリレーし、直接伝送、中継伝送、協力中継伝送による伝送品質情報を算出し、既定ルートにおいて1ホップ前(自局と所望リンクを有する1つ開始局側)の中継局から前処理制御フレームを受信した場合は、算出した伝送品質情報に基づいて最もよい伝送方法を選択し、選択した伝送方法に基づいて伝送ルートを再設定する。中継局の場合、選択した伝送ルートとその伝送方法を記憶した上、選択した伝送方法に対応する伝送品質情報を前処理制御フレームに追加して、終了局側の中継局または終了局に送信する。
【0054】
例えば、時間ステップ#3、ホップ3・4において、中継局4,5,6及び終了局7はそれぞれ、中継局3が送信した前処理制御フレームを受信し、伝送品質情報f(L−34)、f(L−35)、f(L−36)、f(L−37)を算出する。続いて、中継局4,5,6及び終了局7はそれぞれ、中継局3が前処理制御フレームに設定した伝送品質情報C3を用いて、中継伝送の伝送品質情報g(C3,L−34)、g(C3,L−35)、g(C3,L−36)、g(C3,L−37)を算出する。さらに、中継局4,5,6及び終了局7はそれぞれ、取り得る協力中継伝送の伝送品質情報を算出する。取り得る協力中継伝送は、開始局1と中継局2、開始局1と中継局3、中継局2と中継局3、開始局1と中継局2と中継局3を用いたものである。中継局4は、開始局1からの直接伝送の伝送品質情報f(L−14)、中継伝送の伝送品質情報g(C2,L−24)、g(C3,L−34)、及び取り得る協力中継伝送の伝送品質情報の中から最もよい伝送品質情報を選択する。中継局4は、選択した伝送品質情報に対応する伝送ルートおよびその伝送方法を記憶し、次の時間ステップ#4において、選択した伝送品質情報をC4として追加した前処理制御フレームを送信する。
【0055】
また、例えば、時間ステップ#4、ホップ4・5において、中継局5,6及び終了局7はそれぞれ、中継局4が送信した前処理制御フレームを受信し、伝送品質情報f(L−45)、f(L−46)、f(L−47)を算出する。続いて、中継局5,6及び終了局7はそれぞれ、中継局4が前処理制御フレームに設定した伝送品質情報C4を用いて、中継伝送の伝送品質情報g(C4,L−45)、g(C4,L−46)、g(C4,L−47)を算出する。さらに、中継局5,6及び終了局7はそれぞれ、取り得る協力中継伝送の伝送品質情報を算出する。中継局5は、開始局1からの直接伝送の伝送品質情報f(L−15)、中継伝送の伝送品質情報g(C2,L−25)、g(C3,L−35)、g(C4,L−45)、及び取り得る協力中継伝送の伝送品質情報の中から最もよい伝送品質情報を選択する。中継局5は、選択した伝送品質情報に対応する伝送ルートおよびその伝送方法を記憶し、次の時間ステップ#5において、選択した伝送品質情報をC5として追加した前処理制御フレームを送信する。
【0056】
時間ステップ#5、ホップ5・6、時間ステップ#6、ホップ6・7においても同様の処理が行われる。なお、上記においては、トレーニング信号から推定される無線リンク情報を利用した例を示したが、他の無線リンク情報を代わりに用いて、あるいは、他の無線リンク情報を併せて利用してもよい。
【0057】
上述したように、各中継局及び終了局においては、前処理制御フレーム等に基づいて得られた所望無線リンク情報及び傍聴無線リンク情報と、前処理制御フレームに格納されている現時点でのラストホップまでの伝送品質情報を用いて、直接伝送・中継伝送・協力中継伝送による伝送品質情報の算出が可能となる。従って、膨大な所望無線リンク情報および傍聴無線リンク情報の伝送が回避でき、結果として、ルート再選択のオーバヘッドを大幅に削減することができる。
【0058】
しかし、上述したルート再選択手順に必要な情報量・演算量は、マルチホップのホップ数に比例して増加する。これは、ホップ数が後の中継局ほど、協力中継伝送のパターンが顕著に増加してしまうからである。そこで、ルート再選択手順に必要な情報量・演算量を減らすために、スライドウィンドウを導入してウィンドウ幅およびスライド幅を制御する。この制御により、マルチホップ伝送範囲を細分化し、各細分化された範囲において伝送ルートを再選択する。これによって、マルチホップ伝送のホップ数が増加しても、細分化によりルート再選択範囲を制御できるため、必要な情報量・演算量の増加はホップ数の増加に比例することはない。このように、スライドウィンドウを導入し、ウィンドウ幅とスライド幅を制御することで、上記実施形態の特性と、伝送品質情報Cの算出に必要な演算量のトレードオフを可能にする。
【0059】
図5は、
図4の例にスライドウィンドウを導入した場合を示す図である。ここでは、ウィンドウ幅Nw=3ホップ、スライド幅Ns=1ホップの場合と、ウィンドウ幅Nw=3ホップ、スライド幅Ns=3ホップの2つのパターンを示している。スライド幅Ns=1ホップの場合のように、スライド幅の設定によって制御範囲をオーバーラップさせてもよい。
【0060】
ウィンドウのスライドは既定ルートの開始局1から始まり、終了局7に到達するまでスライドし続ける。このように、すべての経路においてウィンドウ制御付きの協力中継伝送を考慮したルーティングを実現するため、ウィンドウを開始局から終了局の方向にスライドさせていく。毎回のスライドにおいては、ウィンドウの始端にある無線局10が送信した前処理制御フレームを、そのウィンドウの終端(ウィンドウ幅の範囲内)にある無線局10までが受信し、前記のように再帰的に直接伝送、中継伝送、協力中継伝送の伝送品質情報を算出する。これにより、協力中継伝送のパターンがウィンドウ幅の範囲内の開始局または中継局を用いたものに限定されるため、スライドウィンドウを導入しない場合と比べて、協力中継伝送のパターン数が顕著に減少する。従って、ウィンドウ幅Nwとスライド幅Nsによって伝送品質情報の計算に必要な情報量と演算量が制御される。
【0061】
ウィンドウ幅Nw=3ホップ、スライド幅Ns=1ホップの場合、最初にウィンドウの始端である開始局1が前処理制御フレームを送信する。この前処理制御フレームを、ウィンドウ幅Nw(=3ホップ)内の中継局2、3、4が受信し、直接伝送の伝送品質情報を算出する。
ウィンドウ内でスライド幅Ns(=1ホップ)分の前処理制御フレームの送信が終了したため、ウィンドウはスライド幅Nsだけ移動し、ウィンドウの始端が中継局2となる。よって、中継局2が伝送品質情報C2を設定した前処理制御フレームを送信すると、始端からウィンドウ幅Nw(=3ホップ)内の中継局3、4、5が受信して中継局2との直接伝送、及び中継局2を中継した中継伝送の伝送品質情報を算出し、前処理制御フレームを2以上受信した中継局3、4は、さらに協力中継伝送の伝送品質情報を算出する。中継局3は、算出した伝送品質情報に基づいて選択した伝送方法により既定ルートを再設定する。
ウィンドウ内でスライド幅Ns(=1ホップ)分の前処理制御フレームの送信が終了したため、ウィンドウはスライド幅Nsだけ移動し、ウィンドウの始端が中継局3となる。よって、中継局3が伝送品質情報C3を設定した前処理制御フレームを送信すると、始端からウィンドウ幅Nw(=3ホップ)内の中継局4、5、6が受信し、中継局3との直接伝送、及び中継局3を中継した中継伝送の伝送品質情報を算出し、前処理制御フレームを2以上受信した中継局4、5は、さらに協力中継伝送の伝送品質情報を算出する。中継局4は、算出した伝送品質情報に基づいて選択した伝送方法により既定ルートを再設定する。
上記を繰り返し、ウィンドウを順にスライドさせていく。
【0062】
一方、ウィンドウ幅Nw=3ホップ、スライド幅Ns=3ホップの場合、最初にウィンドウの始端である開始局1が前処理制御フレームを送信する。この前処理制御フレームを、ウィンドウ幅Nw(=3ホップ)内の中継局2、3、4が受信し、直接伝送の伝送品質情報を算出する。
ウィンドウ内でスライド幅Ns(=3ホップ)分の前処理制御フレームの送信はまだ終了していないため、ウィンドウはスライドしない。よって、中継局2が伝送品質情報C2を設定した前処理制御フレームを送信すると、始端からウィンドウ幅Nw(=3ホップ)内の中継局3、4が受信し、直接伝送、中継伝送、及び協力中継伝送の伝送品質情報を算出する。中継局3は、算出した伝送品質情報に基づいて選択した伝送方法により既定ルートを再設定する。
ウィンドウ内でスライド幅Ns(=3ホップ)分の前処理制御フレームの送信はまだ終了していないため、ウィンドウはスライドしない。よって、中継局3が伝送品質情報C3を設定した前処理制御フレームを送信すると、始端からウィンドウ幅Nw(=3ホップ)内の中継局4のみが受信し、直接伝送、中継伝送、及び協力中継伝送の伝送品質情報を算出する。中継局4は、算出した伝送品質情報に基づいて選択した伝送方法により既定ルートを再設定する。
これにより、ウィンドウ内でスライド幅Ns(=3ホップ)分の前処理制御フレームの送信が終了したため、ウィンドウがスライド幅Nsだけ移動し、ウィンドウの始端が中継局4となり、上記と同様の処理を繰り返す。
【0063】
以上説明した実施形態によれば、従来のルーティング技術により決定したマルチホップ伝送ルートをルート再探索の土台として利用し、協力中継伝送の効果を考慮したマルチホップルートの再探索を実現する。その結果、最終的に本実施形態を適用した無線通信ネットワークにおいては、従来の無線通信ネットワークに比べ、より高いシステムスループット、短い伝送遅延などの向上した通信品質が実現できる。
【0064】
既存のルーティング技術では、ホップバイホップのマルチホップ伝送を想定して伝送ルートを選定しているため、協力中継伝送に適用しても、協力中継伝送を考慮した伝送ルートの最適化がなされていなかった。そこで、上述したように、本実施形態では、既存のルーティング技術によって構築された既定ルートに沿って、ルート再選択に必要なトレーニング信号等を含む制御フレームを送信し、各中継局において、直接伝送の伝送品質を算出するとともに、中継伝送および協力中継伝送の伝送品質を再帰的に算出する。そして、算出した伝送品質に基づいてその最も良い伝送方法を選択して既定ルートを再設定し、その伝送品質情報を含む制御フレームを次ホップ先に送信する。これにより、協力中継伝送を含めた伝送方法の中で、最適な伝送方法を選択して、マルチホップ伝送を行うことが可能となる。
また、スライドウィンドウ制御をさらに行うことでルート再選択の範囲を制限し、ルート再選択における演算量を削減することが可能となる。
【0065】
上述した実施形態における無線局10の無線通信部12及び通信制御部13の全てまたは一部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア(電子回路)を用いて実現されても良く、コンピュータで実現するようにしても良い。無線局10の無線通信部12及び通信制御部13の全てまたは一部の機能を、コンピュータで実現する場合、その機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0066】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。