【文献】
物部浩達、清水洋,非対称ジアルキルチエニルナフタレン(8TNAT8)混合物の液晶性と電荷輸送特性,日本液晶学会討論会講演予稿集,日本,2012年 8月20日
【文献】
清水洋、ハインリッヒ ベノア、ギヨン ダニエル、城始勇、及川一摩、物部浩達、中山健一,ジチエニルナフタレンコアを持つメソフェーズ半導体のメソフェーズ及び結晶構造,日本液晶学会討論会講演予稿集,日本,2008年 9月 8日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の液晶性組成物は、液晶性を有する棒状の有機半導体化合物と棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体の2つの成分を含有する。
【0010】
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物は、公知の化合物が全て使用でき、特に限定されないが、好ましい化合物としては、棒状π電子共役系部分に対し、置換基を1個又は2個以上、好ましくは2個有する。
【0011】
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物が有する棒状π電子共役系部分の構造又は部分構造を以下に示す。
【0013】
(式中、nは3以上の整数、例えば3〜10の整数を示す。Aは、2価の架橋基を示す。)
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物が上記の「部分構造」を有するとは、2以上の上記の部分構造が単結合で連結されるか、または縮合環を形成する場合を含む。上記の構造が棒状π電子共役系部分と同じ(1つの部分構造を含む)であってもよい。
【0014】
例えば2つのピリジンが単結合で連結されたビピリジル、ベンゼンとフランが縮合したベンゾフランはいずれも液晶性を有する棒状の有機半導体化合物の棒状π電子共役系部分に包含される。
【0015】
本発明の液晶性を有する棒状の有機半導体化合物は、2つの置換基を有する場合、その置換基の方向は180°の角度をなす場合が典型的であるが、5員環の1,3位、6員環の1,3位のように2つの置換基のなす角は120〜180°、或いは144〜180°であれば「棒状」の有機半導体化合物に包含される。なお、ナフタレン環の1,4位だけでなく、1,5位に置換基を有する場合、2つの置換基は同一直線上にはないが、180°の角をなす。
【0016】
Aで表される2価の架橋基としては、特に限定されないが、例えば以下の基を挙げることができる。
【0018】
(式中、mは1〜4の整数を示す。Xはメチル基、エチル基、フッ素原子または塩素原子を示す。)
上記の架橋基は、置換基の中に1個又は2個以上含まれていてもよく、2個以上の棒状π電子共役系部分を連結し、全体として1つの棒状π電子共役系部分を構成してもよい。
【0019】
本発明の液晶性を有する棒状の有機半導体化合物の置換基としては、、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、アルキルオキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニルオキシ、アラルキルオキシカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、アラルキルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。
【0020】
アルキル基としては、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシルなどの炭素数3〜22の直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
【0021】
アルケニル基としては、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、2−エチルヘキセニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、エイコセニル、ドコセニルなどの炭素数3〜22の直鎖または分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。
【0022】
アルキニル基としては、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、2−エチルヘキシニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ヘキサデシニル、オクタデシニル、エイコシニル、ドコシニルなどの炭素数3〜22の直鎖または分岐鎖のアルキニル基が挙げられる。
【0023】
アリール基としては、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味し、具体例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アントリル、ビフェニリル、テトラヒドロナフチル、クロマニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニル、インダニル及びフェナントリルが挙げられる。
【0024】
アラルキル基としては、ベンジル、ナフチルメチル、フルオレニルメチル、アントリルメチル、ビフェニリルメチル、テトラヒドロナフチルメチル、クロマニルメチル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルメチル、インダニルメチル及びフェナントリルメチル、フェネチル、ナフチルエチル、フルオレニルエチル、アントリルエチル、ビフェニリルエチル、テトラヒドロナフチルエチル、クロマニルエチル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルエチル、インダニルエチル及びフェナントリルエチルなどが挙げられる。
【0025】
ヘテロアリール基としては、N、O及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5又は6員の芳香環からなる単環又は多環系の基を意味し、多環系の場合には少なくとも1つの環が芳香環であればよい。具体例としては、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリルなどが挙げられる。
【0026】
アルキルオキシとしては、(アルキル)オキシ(ここで「アルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0027】
アリールオキシとしては、(アリール)オキシ(ここで「アリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0028】
ヘテロアリールオキシとしては、(ヘテロアリール)オキシ(ここで「ヘテロアリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0029】
アラルキルオキシとしては、(アラルキル)オキシ(ここで「アラルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0030】
アルケニルオキシとしては、(アルケニル)オキシ(ここで「アルケニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0031】
アルキニルオキシとしては、(アルキニル)オキシ(ここで「アルキニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0032】
アルキルオキシカルボニルとしては、(アルキル)オキシカルボニル(ここで「アルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0033】
アリールオキシカルボニルとしては、(アリール)オキシカルボニル(ここで「アリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0034】
ヘテロアリールオキシカルボニルとしては、(ヘテロアリール)オキシカルボニル(ここで「ヘテロアリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0035】
アラルキルオキシカルボニルとしては、(アラルキル)オキシカルボニル(ここで「アラルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0036】
アルケニルオキシカルボニルとしては、(アルケニル)オキシカルボニル(ここで「アルケニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0037】
アルキニルオキシカルボニルとしては、(アルキニル)オキシカルボニル(ここで「アルキニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0038】
アルキルオキシカルボニルオキシとしては、(アルキル)オキシカルボニルオキシ(ここで「アルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0039】
アリールオキシカルボニルオキシとしては、(アリール)オキシカルボニルオキシ(ここで「アリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0040】
ヘテロアリールオキシカルボニルオキシとしては、(ヘテロアリール)オキシカルボニルオキシ(ここで「ヘテロアリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0041】
アラルキルオキシカルボニルオキシとしては、(アラルキル)オキシカルボニルオキシ(ここで「アラルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0042】
アルケニルオキシカルボニルオキシとしては、(アルケニル)オキシカルボニルオキシ(ここで「アルケニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0043】
アルキニルオキシカルボニルオキシとしては、(アルキニル)オキシカルボニルオキシ(ここで「アルキニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0044】
アルキルオキシカルボニルアミノとしては、(アルキル)オキシカルボニルアミノ(ここで「アルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0045】
アリールオキシカルボニルアミノとしては、(アリール)オキシカルボニルアミノ(ここで「アリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0046】
ヘテロアリールオキシカルボニルアミノとしては、(ヘテロアリール)オキシカルボニルアミノ(ここで「ヘテロアリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0047】
アラルキルオキシカルボニルアミノとしては、(アラルキル)オキシカルボニルアミノ(ここで「アラルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0048】
アルケニルオキシカルボニルアミノとしては、(アルケニル)オキシカルボニルアミノ(ここで「アルケニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0049】
アルキニルオキシカルボニルアミノとしては、(アルキニル)オキシカルボニルアミノ(ここで「アルキニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0050】
本発明の置換基は、2以上の置換基を架橋基(A)で連結したものであってもよい。例えば
−(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)、
−(アルケニル)−(架橋基)−(アルケニル)、
−(アルキニル)−(架橋基)−(アルキニル)、
−(アリール)−(架橋基)−(アリール)、
−(ヘテロアリール)−(架橋基)−(ヘテロアリール)、
−(アラルキル)−(架橋基)−(アラルキル)、
−(アリール)−(架橋基)−(アリール)−(架橋基)−(アリール)、
−(アルキル)−(架橋基)−(アリール)−(架橋基)−(アルキル)、
−(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)、
−(アルキル)−(架橋基)−(ヘテロアリール)−(架橋基)−(アルキル)、
が挙げられる。上記は架橋基が1個又は2個の場合を示したが、架橋基は3以上であってもよい。
【0051】
上記において、末端の置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの1価の基であるが、非末端の置換基は、2価の基になるため、これらの置換基を本明細書でアルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、アリール部分、ヘテロアリール部分、アラルキル部分と呼ぶことがある。アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、アリール部分、ヘテロアリール部分、アラルキル部分は、対応するアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルから1個の水素原子を除いた基である。
【0052】
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物が有する棒状/長鎖の置換基(通常1個又は2個以上、好ましくは2個)の好ましい例示を以下に示す。
−OR, −R,−COOR,−OOCR,−OOCOR,−CX=CY−COOR, −NHR,−NHCOR,−COSR,−NR
2,−SR,−OCOSR,−COR
(式中、Rは前記の炭素数3〜22、好ましくは炭素数6〜20のアルキルを示す。)
本発明の液晶性を有する棒状の有機半導体化合物は、棒状/長鎖の置換基に加えて、棒状π電子共役系部分に他の置換基を有することができる。他の置換基としては、−C≡N,−NO
2、ハロゲン原子(Cl、F,Br,I),OH,N
3,NH
2,CF
3,CH
3、COCH
3、NHCOCH
3、NHCH
3,NH(CH
3)
2などが挙げられる。
【0053】
本発明の液晶性組成物は、棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体を含む。この長鎖誘導体は、液晶性を有する棒状の有機半導体化合物の置換基と相互作用できるような長鎖官能基を有する。
【0054】
長鎖誘導体としては、前記のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニルまたはアルキニレンを有するエステル、エーテル、ケトン、アミド、ウレタンなどが挙げられ、ジエステル、ジエーテル、ジケトン、ジアミド、ジウレタンであってもよい。長鎖誘導体としては、例えば以下の構造を有するものが挙げられる。
(アルキル)−O−(低級アルキル)、
(アルキル)−O−CO−(低級アルキル)、
(アルキル)−O−(低級アルケニル)、
(アルキル)−O−CO−(低級アルケニル)、
(アルキル)−O−(低級アルキニル)、
(アルキル)−O−CO−(低級アルキニル)、
(アルケニル)−O−(低級アルキル)、
(アルケニル)−O−CO−(低級アルキル)、
(アルケニル)−O−(低級アルケニル)、
(アルケニル)−O−CO−(低級アルケニル)、
(アルケニル)−O−(低級アルキニル)、
(アルケニル)−O−CO−(低級アルキニル)、
(アルキニル)−O−(低級アルキル)、
(アルキニル)−O−CO−(低級アルキル)、
(アルキニル)−O−(低級アルケニル)、
(アルキニル)−O−CO−(低級アルケニル)、
(アルキニル)−O−(低級アルキニル)、
(アルキニル)−O−CO−(低級アルキニル)、
(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)−O−CO−(低級アルケニル)、
(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)−CO−O−(低級アルケニル)、
(式中、アルキル、アルケニル、アルキニル、架橋基は上記に定義されるとおりである。低級アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどの直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基を示し、低級アルケニルはビニル、アリルを示し、低級アルキニルはエチニル、プロパルギルを示す。)
前記長鎖誘導体は、光重合性官能基を有するものが好ましく、より具体的には、以下の構造のものが挙げられる。
【0056】
(式中、alkylはアルキル基又はアルキレン基を、alkenylはアルケニル基又はアルケニレン基を、alkynylはアルキニル基またはアルキニレン基を各々示す。)
本明細書において、第3成分は、該有機半導体化合物の棒状π電子共役系部分を有し、かつ、その末端に光重合性官能基を有する一つないしは2つの長鎖置換基を持つ。棒状π電子共役系部分は、前記のものが挙げられる。光重合性官能基としては、アクリレート、メタアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタアクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステルなどが挙げられ、これらの光重合性官能基と棒状π電子共役系部分は、アルキレン基、架橋基などで連結される。具体的には、
(棒状π電子共役系部分)−{(架橋基)−(アルキレン基)−(光重合性官能基)}
s、(sは1〜3の整数を示す)−S−(アルキレン基)、(棒状π電子共役系部分)−CO−(アルキレン基)、
好ましい第3成分としては、以下のものが挙げられる。
【0057】
CH
2=CH-COO−(アルキレン)−(棒状π電子共役系部分)
CH
2=C(CH
3)-COO−(アルキレン)−(棒状π電子共役系部分)
CH
2=CH-COO−(アルキレン)−(棒状π電子共役系部分)−(アルキレン)-COO-CH=CH
2
CH
2=C(CH
3)-COO−(アルキレン)−(棒状π電子共役系部分)−(アルキレン)-COO-C(CH
3)=CH
2
本発明の液晶性組成物は、液晶性を有する棒状の有機半導体化合物1モルに対し、棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体を好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.05〜0.5モル配合する。
【0058】
第3成分を有する場合、該第3成分は液晶性を有する棒状の有機半導体化合物1モルに対し、第2成分との総和が好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.05〜0.5モル配合する。
【0059】
本発明で使用する液晶性を有する棒状の有機半導体化合物のキャリヤ移動度は、1.0×10
−2cm
2V
−1s
−1以上、好ましくは1.0×10
−2〜1.0×10
2cm
2V
−1s
−1である。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づきより詳細に説明する。
【0061】
以下に、本実験に用いた材料を示す。
【0062】
【化4】
【0063】
参考例1
9TNAT9は文献( Yo Shimizu 等、Advanced Materials誌, 2007年、19巻、1864ページ)を基本手法として合成及び精製を行った。具体的には、2-Nonyllthiophene (40.0 mmol)及び脱水THF (20 mL)を、アルゴンガス置換を行った200 mLの反応器に入れ、ドライアイス-アセトンバスで-50 ℃まで冷却した。アルゴンガスを流しながらn-butyllithium溶液 (15.4 mL of a 2.6 mol/L hexane solution, 40.0 m
mol)を内温-40〜-50℃を維持しながら徐々に滴下した。全てのn-butyllithium溶液を滴下後、室温で4時間撹拌した。ドライアイス-アセトンバスで-50℃まで冷却した後、Trimethylborate (15.6 mL, 140 mmol)を内温-40〜-50℃を維持しながら反応容器内にゆっくりと加え、更に室温で16時間撹拌した。2,6-Dibromonaphthalene (10.0 mmol) 、脱水1,2-Dimethoxyethane (65 mL) 及びPd(PPh3)4 (0.0418 mmol)を順次仕込み、2M-Na2CO3aq (10.0 mL, 20.0 mmol)を滴下。アルゴン雰囲気下、内温約69℃で23時間反応した。
【0064】
氷水(1:1)300gに反応マスを排出し30分撹拌し濾過、水洗、風乾して粗製品2.62g(81.9%)を得た。風乾物をChloroform (300 mL)でスラッジングし、更にHexane (150 mL)で洗浄。カラムクロマトグラフィー(silica gel, Hot THF, Rf=0.83)で精製し目的物を得た。更に、Acetone (1900 mL)で再結晶した。白色結晶、収率46%。
1H-NMR δ
H (CDCl
3, TMS, 500 MHz) 0.89 (t, 6H), 1.34 (m, 24H) , 1.72 (m, 4H) ,2.84 (t, 4H) , 6.79 (d, 2H), 7.25 (d, 2H), 7.70 (dd, 2H), 7.79 (d, 2H), 7.94 (s, 2H)
またC6A及びHDAは市販の試薬を用いた。
【0065】
実施例1:混合系の調製と熱相転移
(実験)9TNAT9及びC6Aをモル比で1:1になる様に秤量し、塩化メチレン溶液として混合した。混合溶液は減圧下溶媒を留去して、混合物試料とした。
図1に9TNAT9単一組成試料及び9TNAT9:C6A=1:1 (モル比)の組成比を持つ試料のDSC測定の結果を示す。1:1混合系では9TNAT9の高温側液晶相であるスメクチックC相は消滅するが、高速のホール移動度を示す低温側中間相は維持されることが判った。また、この混合組成物にIrgacur651 (登録商標、1wt%)を加えても相転移挙動は変化が見られなかった。さらにこの混合物の20−30ミクロン厚のフィルムに21Jcm
-2の紫外光を1時間照射し、光重合を十分行わせた後のDSC測定では光照射以前の相転移とほぼ同様であり、光重合により相転移の変化示さなかった(
図2)。光照射後の試料は同じ温度領域で中間相を示したが、スパチュラ接触ではその粘性は増大していた。これらの傾向は9TNAT9:C6A=1:0.1 (モル比)の組成物でも同様であった。また、C6Aの代わりにHADを用いた場合も同様の結果を得た。
【0066】
(混合系のホール移動度)
先に調製した混合系9TNAT9:C6A=1:0.1 (モル比)について中間相温度である110℃で飛行時間計測法によるドリフトホール移動度測定を行った。飛行時間計測法によるドリフトホール移動度測定は、例えばJournal of Materials Chemistry誌、2007年、17巻、p2607の記載に従い実施することができる。液晶性半導体に典型的な性質である印加電圧の非依存性が確認され、そのホール移動度は7.5 x 10
-2 cm
2V
-1 s
-1と見積もられた(
図3)。9TNAT9単一組成の試料では同一温度で7.5 x 10
-2 cm
2 V
-1s
-1であり、C6Aの存在はキャリヤ輸送過程、即ち分子中心のπ電子共役系のパッキング状態に影響を与えていないことが示唆された。このことから、C6A分子は層状構造をなして配向する9TNAT9分子の層間となるアルキル鎖同士の積層部分に局在しており、光重合により生成したポリマーネットワークは隣接層間にシート上に発達しているものと考えられる。