特許第6099042号(P6099042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099042
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】液晶性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/34 20060101AFI20170313BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20170313BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C09K19/34
   C09K19/54 Z
   G02F1/13 500
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-29970(P2013-29970)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159504(P2014-159504A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋
(72)【発明者】
【氏名】物部 浩達
(72)【発明者】
【氏名】井上 薫
(72)【発明者】
【氏名】松下 武司
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/022040(WO,A1)
【文献】 特開2008−013539(JP,A)
【文献】 特開2012−031159(JP,A)
【文献】 物部浩達、清水洋,非対称ジアルキルチエニルナフタレン(8TNAT8)混合物の液晶性と電荷輸送特性,日本液晶学会討論会講演予稿集,日本,2012年 8月20日
【文献】 清水洋、ハインリッヒ ベノア、ギヨン ダニエル、城始勇、及川一摩、物部浩達、中山健一,ジチエニルナフタレンコアを持つメソフェーズ半導体のメソフェーズ及び結晶構造,日本液晶学会討論会講演予稿集,日本,2008年 9月 8日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スメクチック相及びそれに関連する層状構造を形成するような分子配向秩序を持ち、そのキャリヤ移動度が10−2cm−1−1以上である、棒状π電子共役系部分を有する液晶性を有する棒状の有機半導体化合物と、棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体との混合系であることを特徴とする液晶性組成物であって、
該棒状π電子共役系部分の構造又は部分構造が下記の化学式で表される構造又は部分構造から選択される1種以上であり、
【化1】
該長鎖誘導体がアクリレート基もしくはメタクリレート基を有する、液晶性組成物
【請求項2】
該長鎖誘導体が長鎖官能基とその末端に1個または2個のアクリレート基もしくはメタクリレート基を有し、該長鎖官能基がアルキル又はアルキレンである、請求項に記載の液晶性組成物。
【請求項3】
該液晶性を有する棒状の有機半導体化合物は棒状π電子共役系部分に1つないし2つの長鎖の置換基を持つことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶性組成物。
【請求項4】
前記長鎖置換基がアルキルまたはアルコキシである請求項に記載の液晶性組成物。
【請求項5】
棒状π電子共役系部分を有し、かつ、その末端に光重合性官能基を有する1つないし2つの長鎖置換基を持つことを特徴とする第3の成分をさらに含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶性組成物。
【請求項6】
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物と長鎖誘導体を有する請求項1に記載の液晶性組成物であって、液晶性化合物が長鎖置換基を有し、該長鎖置換基がアルキル基であり、長鎖誘導体が長鎖官能基とその末端に1個または2個のアクリレート基もしくはメタクリレート基を有し、該長鎖官能基がアルキル又はアルキレンである、液晶性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの溶媒可溶(インク化できる)で塗布して薄膜を形成できる有機半導体の成分は1成分であった(特許文献1〜3)。これは、高いキャリヤ移動度を実現するためには1成分であることが必要であると考えられていたためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-031159
【特許文献2】特開2011-236299
【特許文献3】特開2011-236143
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機半導体成分が単一成分であると、その成分の溶媒に対する溶解度により塗布条件としての溶液粘度や塗布後の熱安定性等が決められてしまうため、これらの物性を制御可能な新たな材料が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、キャリヤ移動度が10−2cm−1−1以上である該化合物と棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体との混合系を使用することで、高いキャリヤ移動度を維持しながら塗布条件としての溶液粘度や塗布後の熱安定性を調整できることを見出した。
【0006】
本発明は、以下の液晶性組成物を提供するものである。
項1. スメクチック相及びそれに関連する層状構造を形成するような分子配向秩序を持ち、そのキャリヤ移動度が10−2cm−1−1以上である、棒状π電子共役系部分を有する液晶性を有する棒状の有機半導体化合物と、棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体との混合系であることを特徴とする液晶性組成物。
項2. 該長鎖誘導体が光重合性官能基を持つ化合物である、項1に記載の液晶性組成物。
項3. 該長鎖誘導体がアクリレート基もしくはメタクリレート基を有する項1又は2に記載の液晶性組成物。
項4. 該長鎖誘導体が長鎖官能基とその末端に1個または2個の光重合性官能基を有し、該長鎖官能基がアルキル又はアルキレンである、項2または3に記載の液晶性組成物。
項5. 該液晶性を有する棒状の有機半導体化合物は棒状π電子共役系部分に1つないし2つの長鎖の置換基を持つことを特徴とする項1〜4のいずれか一項に記載の液晶性組成物。
項6. 前記長鎖置換基がアルキルまたはアルコキシである項5に記載の液晶性組成物。
項7. 棒状π電子共役系部分を有し、かつ、その末端に光重合性官能基を有する1つないし2つの長鎖置換基を持つことを特徴とする第3の成分をさらに含有する項1〜6のいずれか一項に記載の液晶性組成物。
項8. 液晶性を有する棒状の有機半導体化合物と長鎖誘導体を有する項1に記載の液晶性組成物であって、液晶性化合物が長鎖置換基を有し、該長鎖置換基がアルキル基であり、長鎖誘導体が長鎖官能基とその末端に1個または2個の光重合性官能基を有し、該長鎖官能基がアルキル又はアルキレンである、液晶性組成物。
【発明の効果】
【0007】
半導体薄膜電子デバイスをフレキシブルなポリマー基板上に塗布して形成させるいわゆるプリンテッドエレクトロニクスの分野において、半導体自身も有機物からなる有機半導体を用いる研究がある。本発明では、溶媒可溶で自己組織化性の強い液晶性を有する棒状の有機半導体化合物において、温度特性等の実用性と塗布時の諸条件(溶液粘度等)を調整可能な新たな実用的な液晶性を有する棒状の有機半導体化合物を長鎖誘導体との混合系の液晶性組成物という形で材料化することが可能であることを見出した。これにより液晶性を利用した高品質な半導体薄膜の形成とその光重合固定化による半導体物性の温度特性を安定化させた薄膜電子デバイスの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】9TNAT9 (左)及び組成物9TNAT9:C6A=1:1(モル比)(右)のDSC曲線。
図2】9TNAT9:C6A (1:1)+ Irgacur651 (1wt%)(a)及びその光照射重合後試料(b)のDSC曲線。
図3】飛行時間計測法測定における9TNAT9:C6A(1:0.1モル比)試料の光電流過渡波形(110℃)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の液晶性組成物は、液晶性を有する棒状の有機半導体化合物と棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体の2つの成分を含有する。
【0010】
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物は、公知の化合物が全て使用でき、特に限定されないが、好ましい化合物としては、棒状π電子共役系部分に対し、置換基を1個又は2個以上、好ましくは2個有する。
【0011】
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物が有する棒状π電子共役系部分の構造又は部分構造を以下に示す。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、nは3以上の整数、例えば3〜10の整数を示す。Aは、2価の架橋基を示す。)
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物が上記の「部分構造」を有するとは、2以上の上記の部分構造が単結合で連結されるか、または縮合環を形成する場合を含む。上記の構造が棒状π電子共役系部分と同じ(1つの部分構造を含む)であってもよい。
【0014】
例えば2つのピリジンが単結合で連結されたビピリジル、ベンゼンとフランが縮合したベンゾフランはいずれも液晶性を有する棒状の有機半導体化合物の棒状π電子共役系部分に包含される。
【0015】
本発明の液晶性を有する棒状の有機半導体化合物は、2つの置換基を有する場合、その置換基の方向は180°の角度をなす場合が典型的であるが、5員環の1,3位、6員環の1,3位のように2つの置換基のなす角は120〜180°、或いは144〜180°であれば「棒状」の有機半導体化合物に包含される。なお、ナフタレン環の1,4位だけでなく、1,5位に置換基を有する場合、2つの置換基は同一直線上にはないが、180°の角をなす。
【0016】
Aで表される2価の架橋基としては、特に限定されないが、例えば以下の基を挙げることができる。
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、mは1〜4の整数を示す。Xはメチル基、エチル基、フッ素原子または塩素原子を示す。)
上記の架橋基は、置換基の中に1個又は2個以上含まれていてもよく、2個以上の棒状π電子共役系部分を連結し、全体として1つの棒状π電子共役系部分を構成してもよい。
【0019】
本発明の液晶性を有する棒状の有機半導体化合物の置換基としては、、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、アルキルオキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニルオキシ、アラルキルオキシカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、アラルキルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。
【0020】
アルキル基としては、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシルなどの炭素数3〜22の直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
【0021】
アルケニル基としては、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、2−エチルヘキセニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、エイコセニル、ドコセニルなどの炭素数3〜22の直鎖または分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。
【0022】
アルキニル基としては、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、2−エチルヘキシニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ヘキサデシニル、オクタデシニル、エイコシニル、ドコシニルなどの炭素数3〜22の直鎖または分岐鎖のアルキニル基が挙げられる。
【0023】
アリール基としては、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味し、具体例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アントリル、ビフェニリル、テトラヒドロナフチル、クロマニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニル、インダニル及びフェナントリルが挙げられる。
【0024】
アラルキル基としては、ベンジル、ナフチルメチル、フルオレニルメチル、アントリルメチル、ビフェニリルメチル、テトラヒドロナフチルメチル、クロマニルメチル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルメチル、インダニルメチル及びフェナントリルメチル、フェネチル、ナフチルエチル、フルオレニルエチル、アントリルエチル、ビフェニリルエチル、テトラヒドロナフチルエチル、クロマニルエチル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルエチル、インダニルエチル及びフェナントリルエチルなどが挙げられる。
【0025】
ヘテロアリール基としては、N、O及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5又は6員の芳香環からなる単環又は多環系の基を意味し、多環系の場合には少なくとも1つの環が芳香環であればよい。具体例としては、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリルなどが挙げられる。
【0026】
アルキルオキシとしては、(アルキル)オキシ(ここで「アルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0027】
アリールオキシとしては、(アリール)オキシ(ここで「アリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0028】
ヘテロアリールオキシとしては、(ヘテロアリール)オキシ(ここで「ヘテロアリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0029】
アラルキルオキシとしては、(アラルキル)オキシ(ここで「アラルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0030】
アルケニルオキシとしては、(アルケニル)オキシ(ここで「アルケニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0031】
アルキニルオキシとしては、(アルキニル)オキシ(ここで「アルキニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0032】
アルキルオキシカルボニルとしては、(アルキル)オキシカルボニル(ここで「アルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0033】
アリールオキシカルボニルとしては、(アリール)オキシカルボニル(ここで「アリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0034】
ヘテロアリールオキシカルボニルとしては、(ヘテロアリール)オキシカルボニル(ここで「ヘテロアリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0035】
アラルキルオキシカルボニルとしては、(アラルキル)オキシカルボニル(ここで「アラルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0036】
アルケニルオキシカルボニルとしては、(アルケニル)オキシカルボニル(ここで「アルケニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0037】
アルキニルオキシカルボニルとしては、(アルキニル)オキシカルボニル(ここで「アルキニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0038】
アルキルオキシカルボニルオキシとしては、(アルキル)オキシカルボニルオキシ(ここで「アルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0039】
アリールオキシカルボニルオキシとしては、(アリール)オキシカルボニルオキシ(ここで「アリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0040】
ヘテロアリールオキシカルボニルオキシとしては、(ヘテロアリール)オキシカルボニルオキシ(ここで「ヘテロアリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0041】
アラルキルオキシカルボニルオキシとしては、(アラルキル)オキシカルボニルオキシ(ここで「アラルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0042】
アルケニルオキシカルボニルオキシとしては、(アルケニル)オキシカルボニルオキシ(ここで「アルケニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0043】
アルキニルオキシカルボニルオキシとしては、(アルキニル)オキシカルボニルオキシ(ここで「アルキニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0044】
アルキルオキシカルボニルアミノとしては、(アルキル)オキシカルボニルアミノ(ここで「アルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0045】
アリールオキシカルボニルアミノとしては、(アリール)オキシカルボニルアミノ(ここで「アリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0046】
ヘテロアリールオキシカルボニルアミノとしては、(ヘテロアリール)オキシカルボニルアミノ(ここで「ヘテロアリール」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0047】
アラルキルオキシカルボニルアミノとしては、(アラルキル)オキシカルボニルアミノ(ここで「アラルキル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0048】
アルケニルオキシカルボニルアミノとしては、(アルケニル)オキシカルボニルアミノ(ここで「アルケニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0049】
アルキニルオキシカルボニルアミノとしては、(アルキニル)オキシカルボニルアミノ(ここで「アルキニル」は前記に定義されるとおりである)が挙げられる。
【0050】
本発明の置換基は、2以上の置換基を架橋基(A)で連結したものであってもよい。例えば
−(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)、
−(アルケニル)−(架橋基)−(アルケニル)、
−(アルキニル)−(架橋基)−(アルキニル)、
−(アリール)−(架橋基)−(アリール)、
−(ヘテロアリール)−(架橋基)−(ヘテロアリール)、
−(アラルキル)−(架橋基)−(アラルキル)、
−(アリール)−(架橋基)−(アリール)−(架橋基)−(アリール)、
−(アルキル)−(架橋基)−(アリール)−(架橋基)−(アルキル)、
−(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)、
−(アルキル)−(架橋基)−(ヘテロアリール)−(架橋基)−(アルキル)、
が挙げられる。上記は架橋基が1個又は2個の場合を示したが、架橋基は3以上であってもよい。
【0051】
上記において、末端の置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの1価の基であるが、非末端の置換基は、2価の基になるため、これらの置換基を本明細書でアルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、アリール部分、ヘテロアリール部分、アラルキル部分と呼ぶことがある。アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、アリール部分、ヘテロアリール部分、アラルキル部分は、対応するアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルから1個の水素原子を除いた基である。
【0052】
液晶性を有する棒状の有機半導体化合物が有する棒状/長鎖の置換基(通常1個又は2個以上、好ましくは2個)の好ましい例示を以下に示す。
−OR, −R,−COOR,−OOCR,−OOCOR,−CX=CY−COOR, −NHR,−NHCOR,−COSR,−NR,−SR,−OCOSR,−COR
(式中、Rは前記の炭素数3〜22、好ましくは炭素数6〜20のアルキルを示す。)
本発明の液晶性を有する棒状の有機半導体化合物は、棒状/長鎖の置換基に加えて、棒状π電子共役系部分に他の置換基を有することができる。他の置換基としては、−C≡N,−NO、ハロゲン原子(Cl、F,Br,I),OH,N,NH,CF,CH、COCH、NHCOCH、NHCH,NH(CHなどが挙げられる。
【0053】
本発明の液晶性組成物は、棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体を含む。この長鎖誘導体は、液晶性を有する棒状の有機半導体化合物の置換基と相互作用できるような長鎖官能基を有する。
【0054】
長鎖誘導体としては、前記のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニルまたはアルキニレンを有するエステル、エーテル、ケトン、アミド、ウレタンなどが挙げられ、ジエステル、ジエーテル、ジケトン、ジアミド、ジウレタンであってもよい。長鎖誘導体としては、例えば以下の構造を有するものが挙げられる。
(アルキル)−O−(低級アルキル)、
(アルキル)−O−CO−(低級アルキル)、
(アルキル)−O−(低級アルケニル)、
(アルキル)−O−CO−(低級アルケニル)、
(アルキル)−O−(低級アルキニル)、
(アルキル)−O−CO−(低級アルキニル)、
(アルケニル)−O−(低級アルキル)、
(アルケニル)−O−CO−(低級アルキル)、
(アルケニル)−O−(低級アルケニル)、
(アルケニル)−O−CO−(低級アルケニル)、
(アルケニル)−O−(低級アルキニル)、
(アルケニル)−O−CO−(低級アルキニル)、
(アルキニル)−O−(低級アルキル)、
(アルキニル)−O−CO−(低級アルキル)、
(アルキニル)−O−(低級アルケニル)、
(アルキニル)−O−CO−(低級アルケニル)、
(アルキニル)−O−(低級アルキニル)、
(アルキニル)−O−CO−(低級アルキニル)、
(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)−O−CO−(低級アルケニル)、
(アルキル)−(架橋基)−(アルキル)−CO−O−(低級アルケニル)、
(式中、アルキル、アルケニル、アルキニル、架橋基は上記に定義されるとおりである。低級アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどの直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基を示し、低級アルケニルはビニル、アリルを示し、低級アルキニルはエチニル、プロパルギルを示す。)
前記長鎖誘導体は、光重合性官能基を有するものが好ましく、より具体的には、以下の構造のものが挙げられる。
【0055】
【化3】
【0056】
(式中、alkylはアルキル基又はアルキレン基を、alkenylはアルケニル基又はアルケニレン基を、alkynylはアルキニル基またはアルキニレン基を各々示す。)
本明細書において、第3成分は、該有機半導体化合物の棒状π電子共役系部分を有し、かつ、その末端に光重合性官能基を有する一つないしは2つの長鎖置換基を持つ。棒状π電子共役系部分は、前記のものが挙げられる。光重合性官能基としては、アクリレート、メタアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタアクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステルなどが挙げられ、これらの光重合性官能基と棒状π電子共役系部分は、アルキレン基、架橋基などで連結される。具体的には、
(棒状π電子共役系部分)−{(架橋基)−(アルキレン基)−(光重合性官能基)}、(sは1〜3の整数を示す)−S−(アルキレン基)、(棒状π電子共役系部分)−CO−(アルキレン基)、
好ましい第3成分としては、以下のものが挙げられる。
【0057】
CH2=CH-COO−(アルキレン)−(棒状π電子共役系部分)
CH2=C(CH3)-COO−(アルキレン)−(棒状π電子共役系部分)
CH2=CH-COO−(アルキレン)−(棒状π電子共役系部分)−(アルキレン)-COO-CH=CH2
CH2=C(CH3)-COO−(アルキレン)−(棒状π電子共役系部分)−(アルキレン)-COO-C(CH3)=CH2
本発明の液晶性組成物は、液晶性を有する棒状の有機半導体化合物1モルに対し、棒状π電子共役系部分を持たない長鎖誘導体を好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.05〜0.5モル配合する。
【0058】
第3成分を有する場合、該第3成分は液晶性を有する棒状の有機半導体化合物1モルに対し、第2成分との総和が好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.05〜0.5モル配合する。
【0059】
本発明で使用する液晶性を有する棒状の有機半導体化合物のキャリヤ移動度は、1.0×10−2cm−1−1以上、好ましくは1.0×10−2〜1.0×10cm−1−1である。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づきより詳細に説明する。
【0061】
以下に、本実験に用いた材料を示す。
【0062】
【化4】
【0063】
参考例1
9TNAT9は文献( Yo Shimizu 等、Advanced Materials誌, 2007年、19巻、1864ページ)を基本手法として合成及び精製を行った。具体的には、2-Nonyllthiophene (40.0 mmol)及び脱水THF (20 mL)を、アルゴンガス置換を行った200 mLの反応器に入れ、ドライアイス-アセトンバスで-50 ℃まで冷却した。アルゴンガスを流しながらn-butyllithium溶液 (15.4 mL of a 2.6 mol/L hexane solution, 40.0 m mol)を内温-40〜-50℃を維持しながら徐々に滴下した。全てのn-butyllithium溶液を滴下後、室温で4時間撹拌した。ドライアイス-アセトンバスで-50℃まで冷却した後、Trimethylborate (15.6 mL, 140 mmol)を内温-40〜-50℃を維持しながら反応容器内にゆっくりと加え、更に室温で16時間撹拌した。2,6-Dibromonaphthalene (10.0 mmol) 、脱水1,2-Dimethoxyethane (65 mL) 及びPd(PPh3)4 (0.0418 mmol)を順次仕込み、2M-Na2CO3aq (10.0 mL, 20.0 mmol)を滴下。アルゴン雰囲気下、内温約69℃で23時間反応した。
【0064】
氷水(1:1)300gに反応マスを排出し30分撹拌し濾過、水洗、風乾して粗製品2.62g(81.9%)を得た。風乾物をChloroform (300 mL)でスラッジングし、更にHexane (150 mL)で洗浄。カラムクロマトグラフィー(silica gel, Hot THF, Rf=0.83)で精製し目的物を得た。更に、Acetone (1900 mL)で再結晶した。白色結晶、収率46%。1H-NMR δH (CDCl3, TMS, 500 MHz) 0.89 (t, 6H), 1.34 (m, 24H) , 1.72 (m, 4H) ,2.84 (t, 4H) , 6.79 (d, 2H), 7.25 (d, 2H), 7.70 (dd, 2H), 7.79 (d, 2H), 7.94 (s, 2H)
またC6A及びHDAは市販の試薬を用いた。
【0065】
実施例1:混合系の調製と熱相転移
(実験)9TNAT9及びC6Aをモル比で1:1になる様に秤量し、塩化メチレン溶液として混合した。混合溶液は減圧下溶媒を留去して、混合物試料とした。図1に9TNAT9単一組成試料及び9TNAT9:C6A=1:1 (モル比)の組成比を持つ試料のDSC測定の結果を示す。1:1混合系では9TNAT9の高温側液晶相であるスメクチックC相は消滅するが、高速のホール移動度を示す低温側中間相は維持されることが判った。また、この混合組成物にIrgacur651 (登録商標、1wt%)を加えても相転移挙動は変化が見られなかった。さらにこの混合物の20−30ミクロン厚のフィルムに21Jcm-2の紫外光を1時間照射し、光重合を十分行わせた後のDSC測定では光照射以前の相転移とほぼ同様であり、光重合により相転移の変化示さなかった(図2)。光照射後の試料は同じ温度領域で中間相を示したが、スパチュラ接触ではその粘性は増大していた。これらの傾向は9TNAT9:C6A=1:0.1 (モル比)の組成物でも同様であった。また、C6Aの代わりにHADを用いた場合も同様の結果を得た。
【0066】
(混合系のホール移動度)
先に調製した混合系9TNAT9:C6A=1:0.1 (モル比)について中間相温度である110℃で飛行時間計測法によるドリフトホール移動度測定を行った。飛行時間計測法によるドリフトホール移動度測定は、例えばJournal of Materials Chemistry誌、2007年、17巻、p2607の記載に従い実施することができる。液晶性半導体に典型的な性質である印加電圧の非依存性が確認され、そのホール移動度は7.5 x 10-2 cm2V-1 s-1と見積もられた(図3)。9TNAT9単一組成の試料では同一温度で7.5 x 10-2 cm2 V-1s-1であり、C6Aの存在はキャリヤ輸送過程、即ち分子中心のπ電子共役系のパッキング状態に影響を与えていないことが示唆された。このことから、C6A分子は層状構造をなして配向する9TNAT9分子の層間となるアルキル鎖同士の積層部分に局在しており、光重合により生成したポリマーネットワークは隣接層間にシート上に発達しているものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明では、、液晶性有機半導体nTNATnについて、その粘性の制御性や熱安定性を獲得するために光重合性官能基であるアクリレート基を持つアルカンを添加して、その半導体特性(キャリヤ移動度)を計測したところ、添加前に比べて大きく減少しないということを見出した。
【0068】
液晶性半導体の中で、棒状の分子が形成する液晶相ではスメクチック相に代表される液晶分子が層状に配向した構造が電荷の効率的輸送という観点から重要で、電荷はその層状構造(2次元平面構造)中のπ電子共役系部分を流れる。この相を塗布型有機半導体として活用するには、この層状構造中のπ電子共役系部分の層状配向を阻害せずにその両側のアルキル基部分にのみ配置されるような別の非共役系分子で光重合等でその混合系の分子配向構造を塗布後の薄膜として固化安定化させることができれば、実用的な温度範囲を制御でき、かつ対応する高速のキャリヤ移動度を持つ高性能薄膜形成用材料が可能となる。
【0069】
今般、アモルファスシリコン並みの高速ホール移動度を示す液晶性半導体nTNATnを長鎖アルキルアクリレートと混合系を作製し、そのキャリヤ移動度を評価したところ、ホール移動度を落とさないで混合することが可能であることを見出したことから、長鎖アクリレート、長鎖メタクリレートは重合性化合物として適合するものであり、それらの2成分系は実用上有効な材料となる。
図1
図2
図3